JP4119539B2 - ポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法及びその押出発泡体、押出発泡体の熱成形方法 - Google Patents

ポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法及びその押出発泡体、押出発泡体の熱成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法及びその押出発泡体、押出発泡体の熱成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
長尺形状の発泡体や、容器等を成形するためのシート状発泡体を製造するための方法として、熱可塑性樹脂を押出機内で発泡剤と溶融混練した後、低圧下に押出して発泡せしめる押出発泡法が広く採用されている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂の押出発泡法においては、樹脂と発泡剤との溶融混練物を押出機内から低圧下に押出した際に、溶融混練物中の発泡剤が膨張することにより発泡が行われるが、樹脂の温度を高くすると粘度が急激に低下してしまい樹脂が発泡剤を保持できず樹脂中から逃散して連続気泡の発泡体となり、逆に樹脂の粘度を高くするために樹脂温度を低くすると樹脂の結晶化が進行し、その結果、充分且つ均一に発泡しなくなって発泡体表面が凹凸となってしまうため、押出発泡は充分に均一な発泡が行われるとともに発泡剤を樹脂中に保持し得る粘弾性を樹脂が有する温度で行う必要がある。発泡に適した粘弾性が得られる温度範囲は樹脂の種類によって異なっており、一般にこの温度範囲を発泡適正温度範囲と称している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低密度ポリエチレンに比べて結晶化度が高いポリプロピレン系樹脂の場合、樹脂の粘弾性が僅かな温度変化によって大きく変化し、発泡適正温度範囲は非常に狭い。このような狭い温度範囲内に樹脂温度を保持して押出発泡を行うことは非常に困難なことであり、押出発泡温度が変動して発泡適正温度範囲から外れた時に発泡した部分は連続気泡構造となったり表面が凹凸となったりし、全体が良好で均質な性状の発泡体は得難かった。従来、無架橋のポリプロピレン系樹脂の場合、比較的良好な発泡体を得ることができるのは、密度が0.2g/cm3 を超える低発泡倍率のものか、密度が0.013g/cm3 未満の高発泡倍率のものとされている。上記のような問題は、ポリプロピレン系樹脂の高い結晶性に起因するものと考えられており、密度が0.2g/cm3 を超える低発泡倍率の押出発泡体が比較的良好に得られるのは、発泡剤の量に比べて樹脂の割合が多いため、押出発泡時の樹脂温度をその樹脂の結晶化温度よりもかなり高い温度に設定することができることに起因するためと考えられる。また密度が0.013g/cm3 未満の高発泡倍率の発泡体を比較的良好に得ることができるのは以下の理由による。
【0005】
一般に、押出発泡途上にある発泡中のポリオレフィン系樹脂には冷却手段を用いて外部から冷却操作を施し、それによって、気泡壁を固化させて良好な発泡体を得ようとしている。しかし、ポリプロピレン系樹脂は低密度ポリエチレンに比べ結晶化度が高いため、結晶化の際の発熱量が大きい。この熱が上記冷却ひいては気泡壁の固化を妨げ、発泡途上にあるポリプロピレン系樹脂の気泡を破壊したり変形させたりする。そこで発泡剤を多量に配合して発泡することで、発泡剤の気化熱(膨張熱)を利用して発泡途上のポリプロピレン系樹脂の温度を急激に低下させ、これによって気泡壁の固化を促進させる。また多量の発泡剤は押出機中での樹脂の結晶化を遅らせる働きがある。その結果、比較的良好に発泡体が得られるのである。ただし、この場合、発泡剤を多量に配合する必要性から、得られる発泡体は必然的に密度が0.013g/cm3 未満の高発泡倍率のものとなる。また、この場合においても発泡適性温度範囲はわずか0.6℃程度に過ぎない。
【0006】
上記課題を解決するために種々の研究がなされており、例えばZ平均分子量と重量平均分子量との間に特定の関係を有するとともに、特殊な粘弾性パラメーター値を有するポリプロピレン樹脂を基材樹脂として用いる等の提案がされている(特表平5−506875号)。
【0007】
本発明者等も上記課題を解決するため鋭意研究した結果、メルトテンションの自然対数値と、メルトフローレイトの自然対数値との間に特定の関係が成立するポリプロピレン系樹脂が押出発泡性に優れ、従来、得られ難いとされていた密度が0.03〜0.2g/cm3 の押出発泡体であっても容易に得ることができることを見出した。しかしながら、押出発泡性に優れるポリプロピレン系樹脂樹脂から得られた発泡体は一般に脆く、特に低温下では脆さが著しいという問題があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、押出発泡性に優れ、脆性の改善された押出発泡体を得ることのできるポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法及びその押出発泡体を提供することを目的とする。また本発明はこの押出発泡体の熱成形方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、
(1)メルトテンション:MT(gf)の自然対数値:lnMTと、メルトフローレイト:MFR(g/10分)の自然対数値:lnMFRとの間に、下記(1)式で示す関係が成り立つポリプロピレン系樹脂(A)95〜50重量%と、lnMTと、lnMFRとの間に下記(1)式で示す関係を有さず、且つ上記ポリプロピレン系樹脂(A)の融点よりも3〜30℃低い融点を有し、プロピレンと、エチレンとからなるプロピレン成分95.5〜99.0重量%、MT=2〜8gf、MFR=0.1〜3.0g/10分のプロピレン−エチレンランダム共重合体よりなるポリオレフィン系樹脂(B)50〜5重量%とからなる混合樹脂と、発泡剤とを押出機内で溶融混練した後、押出機内から押し出して発泡させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0010】
【数2】
lnMT > −0.83lnMFR + 2.82 (1)
【0013】
2)ポリプロピレン系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との混合物からなる基材樹脂の定常状態コンプライアンス:Jが、0.6×10−3/N以上、1.2×10−3/N未満である上記(1)記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0014】
3)ポリオレフィン系樹脂(B)の融点がポリプロピレン系樹脂(A)の融点より5〜17℃低いとともに、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との混合物からなる基材樹脂の定常状態コンプライアンス:Jが、0.6×10−3/N以上、1.2×10−3/N未満である上記(1)記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0015】
)上記(1)〜()のいずれかに記載の方法により得られた、厚み0.3〜10.0mm、幅300mm以上、密度0.5〜0.02g/cmのシート状又は板状のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
【0016】
)独立気泡率が50%以上である上記()記載のシート状又は板状のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
【0017】
)上記()記載の押出発泡体を加熱軟化させた後、所望の形状に熱成形することを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体の熱成形方法。
【0018】
)上記()記載の方法により得られた、厚み0.3〜7.0mm、幅300mm以上、密度0.06〜0.02g/cm3 、独立気泡率50%以上のシート状又は板状の押出発泡体を、加熱軟化させた後、型に密着させて所望の形状に成形することを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体の熱成形方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明において用いる基材樹脂は、下記ポリプロピレン系樹脂(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)との混合物からなる。
【0020】
ポリプロピレン系樹脂(A)(以下、単に樹脂(A)と呼ぶことがある。)としては、ポリプロピレンや、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体等のプロピレン系共重合体が挙げられる。プロピレン系共重合体は、通常、プロピレン成分含量50重量%以上のものをいうが、特に80重量%以上のものが好ましい。樹脂(A)は架橋、無架橋のいずれでも良いが、無架橋のものが好ましい。
【0021】
上記樹脂(A)は、メルトテンション:MT(gf)の自然対数値:lnMTと、メルトフローレイト:MFR(g/10分)の自然対数値:lnMFRとの間に、下記(1)式で示す関係を有し、図1に示す直線の上側部分のMTとMFRとを有するものである(図1は縦軸がlnMT、横軸がlnMFRの両対数グラフであり、直線はlnMT=−0.83lnMFR+2.82を示す。)。
【0022】
【数3】
lnMT = −0.83lnMFR + 2.82 (1)
【0023】
樹脂(A)としては、上記(1)式で示す関係が成り立つMTとMFRを有するもののなかでも、MT=10〜70gf、MFR=0.3〜12g/10分のものが好ましく、MT=15〜60gf、MFR=0.5〜8g/10分のものが特に好ましい。
【0024】
上記樹脂(A)としては、例えば市販されているモンテル社のPF814等が挙げられる。
【0025】
上記ポリプロピレン系樹脂(A)は押出発泡性に優れるため、樹脂(A)のみを基材樹脂として用いて押出発泡体を得ることは可能である。しかしながら、樹脂(A)のみを用いて得た発泡体は脆く実用性に劣る。このため本発明では、基材樹脂として上記樹脂(A)に、以下のポリオレフィン系樹脂(B)(以下、単に樹脂(B)と呼ぶことがある。)を混合して用いる。
【0026】
樹脂(B)としては、図1に示す直線上や直線の下側部分のMTとMFRとを有する、プロピレンと、エチレンとのランダム共重合体が挙げられる。樹脂(B)は、架橋したものでも無架橋のものでも良いが、無架橋のものが好ましい。
【0027】
本発明において上記樹脂(B)は、樹脂(A)の融点よりも3〜30℃低い融点を有することが必要である。樹脂(B)の融点が樹脂(A)の融点よりも3℃以上低くないと、押出発泡性に優れる樹脂(A)に適した押出発泡温度で押出発泡を行った場合、結晶化物が生じて良好な発泡体が得られず、樹脂(B)に適した押出発泡温度で押出発泡を行った場合には押出発泡性を向上できない。また樹脂(B)の融点が樹脂(A)の融点よりも30℃を超えて低くなると、得られる発泡体の耐熱性が悪化する等の問題を生じる。尚、樹脂(A)としては、融点が150℃以上のものが好ましく、155℃以上のポリプロピレン単独重合体が最も好ましい。
【0028】
本発明方法において基材樹脂として、上記樹脂(A)95〜50重量%と、樹脂(B)50〜5重量%との混合物を用いる。基材樹脂中の樹脂(B)の割合が5重量%未満の場合、得られる発泡体の脆性を改善することができず、樹脂(B)の割合が50重量%を超えると押出発泡体の製造が困難となる。上記樹脂(B)の基材樹脂中における配合割合は、好ましくは10〜40重量%である。
【0029】
本発明において、上記した樹脂(B)として用いる、プロピレンと、エチレンとからなるプロピレン成分含量90重量%以上のプロピレン−エチレンランダム共重合体は、樹脂(A)との均一混合性が特に良好であり、物性の均一な押出発泡体を得ることができる。
【0030】
また、樹脂(B)として、プロピレンと、エチレンとからなるプロピレン成分含量95.5〜99.0重量%、MT=2〜8gf、MFR=0.1〜3.0g/10分のプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いると、基材樹脂のMTの大きな低下が防止され、より高発泡の発泡体を得ることが容易となる。特に、樹脂(B)はMFR=0.1〜1.1g/10分のものが好ましい。
【0031】
従来、押出発泡性が良好なポリプロピレン系樹脂としては、Jが1.2×10−3/N以上であることが必要とされているが(特表平5−506875号公報)、このような樹脂は高価であるため製品コストが高くつく欠点がある。これに対して、樹脂(B)がプロピレンと、エチレンとからなるプロピレン成分含量95.5〜99.0重量%、MT=2〜8gf、MFR=0.1〜3.0g/10分のプロピレン−エチレンランダム共重合体であり、且つ樹脂(B)と樹脂(A)との混合物からなる基材樹脂の定常状態コンプライアンス:Jが、0.6×10−3/N以上、1.2×10−3/N未満である場合、上記の問題を解決することができるため好ましい。尚、基材樹脂のJを上記範囲にするには、通常、樹脂(A)50〜75重量%と、樹脂(B)50〜25重量%とを予め溶融混合しておけば良い。
【0032】
更にまた、上記したJ0 が、0.6×10-32 /N以上、1.2×10-32 /N未満であるような基材樹脂を用いる場合、樹脂(B)としては融点が樹脂(A)の融点より5〜17℃低いものを用いること好ましい。押出発泡体を加熱軟化させて成形する際、発泡体中の気泡が連通して連続気泡構造となり易いが、上記したように樹脂(A)の融点より5〜17℃低い融点の樹脂(B)を用いると、発泡体を加熱軟化させた際に、気泡が連通化する割合を低く抑えることができ、高物性の成形体を得ることができる。
【0033】
本発明は基材樹脂として、上記樹脂(A)と樹脂(B)との混合物を用いることを基本とするが、本発明の所期の目的を阻害しない範囲において、基材樹脂中にアイオノマーや、エチレン−プロピレンゴム等のエラストマーを含有せしめてもちいることもできる。
【0034】
尚、上記樹脂(A)のメルトテンション:MT(gf)は、株式会社東洋精機製作所製のメルトテンションテスターII型によって測定することができる。具体的には、オリフィス内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスを有するメルトテンションテスターを用い、上記オリフィスから樹脂温度230℃、ピストンの押出速度10mm/分の条件で樹脂を紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛けた後、5rpm/秒(紐状物の捲取り加速度:1.3×10-2m/秒2 )程度の割合で捲取り速度を徐々に増加させていきながら直径50mmの捲取りローラーで捲取る。本発明において、メルトテンション(MT)を求めるには、まず、張力検出用プーリーに掛けた紐状物が切れるまで捲取り速度を増加させ、紐状物が切れた時の捲取り速度:R(rpm)を求める。次いで、R×0.7(rpm)の一定の捲取り速度において紐状物の捲取りを行い、張力検出用プーリーと連結する検出器により検出される紐状物のメルトテンションを経時的に測定し、縦軸にメルトテンションを、横軸に時間をとったグラフに示すと、図2のような振幅をもったグラフが得られる。本発明におけるメルトテンションとしては、図2において振幅の安定した部分の振幅の中央値(X)を採用する。但し、捲取り速度が500rpmに達しても紐状物が切れない場合には、捲取り速度を500rpmとして紐状物を巻き取って求めたグラフより紐状物のメルトテンションを求める。尚、メルトテンションの経時的測定の際に、まれに特異な振幅値が検出されることがあるが、このような特異な振幅値は無視するものとする。
【0035】
一方、メルトフローレイト:MFR(g/10分)は、JIS K7210の表1の条件14で測定した値である。また樹脂(A)、樹脂(B)の融点は、原料樹脂3〜5mgを、示差走査熱量測定装置により、昇温速度10℃/分で室温から200℃まで昇温して1回目のDSC曲線を得た後、直ちに降温速度10℃/分で40℃まで降温し、その後もう一度昇温速度10℃/分で200℃まで昇温したときに得られる2回目のDSC曲線上の最も高温側に現れる主融解ピークの頂点の温度とする。
【0036】
更に基材樹脂の定常状態コンプライアンス:J0 は、次のようにして測定した値である。まず、樹脂(A)と樹脂(B)とを溶融混練した後、造粒した樹脂ペレットから、JIS K6758−1981に記載されている「試験片の作製」に従い、厚み2.0〜2.5mmのシートを作製し、このシートの気泡のない部分を選んで直径25mmの試験片を打ち抜く。この試験片に、レオメトリックファーイースト社製の動的粘弾性試験機SR200型(パラレルプレート使用)により、210±1℃で1000dyneの一定応力を所定時間加え、試験機のオート機能を使用して求められる定常状態コンプライアンスの3回の測定値の相加平均値をJ0 とする。
【0037】
尚、定常状態コンプライアンスの測定において、試験片を210±1℃に加熱されたパラレルプレート間に挟んで30〜60秒ほど経過すると、試験片は溶融して溶融樹脂がプレートの外側に一部はみ出してくるので、そのはみ出してきた樹脂をかき取り、その後パラレルプレート間隔を1.4mmに調整し(ここまでの操作は、試験片をパラレルプレート間に挟んでから2分以内に行う。)、更にそのパラレルプレート間隔及び上記温度を約13分間(パラレルプレート間に試験片を挟んでから14〜15分間)維持してから、上記測定を行う。またこの試験機に搭載されているソフトウェアーは、Rheometrics Integrated Operating Software(バージョン4)であり、そのソフトウェアー上の設定事項としては、ウインドウサイズは10とし、SLOPE TOLERANCE は10%とした(いずれもデフォルト値)。
【0038】
本発明方法において用いられる発泡剤としては、無機発泡剤、揮発性発泡剤、分解型発泡剤等が用いられる。無機発泡剤としては、二酸化炭素、空気、窒素等を用いることができる。揮発性発泡剤としてはプロパン、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、ジクロロテトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。また分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、重炭酸ナトリウム等を用いることができる。これらの発泡剤は適宜混合して用いることもできる。
【0039】
発泡剤の使用量は、発泡剤の種類、所望する発泡倍率等によっても異なるが、例えば密度0.5〜0.02g/cm3 程度の発泡体を得るための発泡剤の使用量の目安は、樹脂100重量部当たり揮発性発泡剤0.5〜25重量部(ブタン換算)程度である。また密度0.09g/cm3 を超える発泡体を得るための発泡剤の使用量の目安は、樹脂100重量部当たり、無機発泡剤の場合0.1〜10重量部程度、分解型発泡剤の場合0.1〜5重量部程度である。
【0040】
上記基材樹脂と発泡剤とを押出機内で溶融混練した後、この溶融混練物を押出機先端に取り付けたダイスを通して低圧下に押出して発泡することにより発泡体が得られるが、シート状の発泡体を得るためには、環状のリップを有するサーキュラーダイスを用い、このダイスのリップより押出発泡してチューブ状の発泡体を得、次いで、このチューブを切り開いてシート状とする方法が通常採用される。また厚肉の押出発泡体を得るためには、大型の押出機を用いれば良いが、樹脂と発泡剤とを小型押出機内で溶融混練した後、該押出機よりも大きな吐出容量を持ち、溶融混練物に発泡が生じない圧力に保持されたアキュムレーター内に溶融混練物を押出して貯留した後、アキュムレーターの先端に取り付けたダイスを通して低圧下に押出して発泡し、成形装置にて押さえて所定厚みの板状の発泡体を得る方法を採用することもできる。
【0041】
押出機内で基材樹脂と発泡剤とを溶融混練する際に、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、タルク、シリカ等の無機粉末や多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム或いは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等の気泡調整剤、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム等の無機充填剤(タルク、シリカは気泡調整剤としての機能も有する。)、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤等が挙げられる。上記気泡調整剤は基材樹脂100重量部当たり13重量部程度以下添加することもできる(ただし、前記無機充填剤を樹脂に多量に含有させる場合は除く。)。
【0042】
本発明の発泡体は、上記した方法によって得られる、厚み0.3〜10.0mm、幅300mm、密度0.5〜0.02g/cm3 のシート状又板状の発泡体である。発泡体の厚みは例えばダイスのスリット間隙の大小によって調整することができ、幅はダイスのスリットの幅(或いはサーキュラーダイスの場合にはダイスのリップ径とブローアップ比)の大小によって調整することができる。また密度は、一般に発泡剤の添加量によって調整することができる。
【0043】
本発明発泡体としては、更に独立気泡率が50%以上のものが好ましい。独立気泡率50%以上の発泡体を得るには、ポリオレフィン系樹脂(B)として、プロピレンと、エチレンとからなるプロピレン成分95.5〜99.0重量%、MT=2〜8gf、MFR=0.1〜3.0g/10分のプロピレン−エチレンランダム共重合体を用い、且つポリオレフィン系樹脂(B)として、融点がポリプロピレン系樹脂(A)の融点より5〜17℃低いものを用いるとともに、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との混合物からなる基材樹脂の定常状態コンプライアンス:Jが、0.6×10−3/N以上、1.2×10−3/N未満であるものを使用し、密度0.06g/cm以下、好ましくは密度0.06〜0.02g/cmになるように押出発泡させれば良い。
【0044】
上記独立気泡率:S(%)は、ASTM D2856−70に記載されている手順Cに準拠し、東芝ベックマン株式会社製の空気比較式比重計930型を使用して測定される発泡体の真の体積:Vxから、下記(2)式より算出されるもので、3回の測定値の平均値として求めたものである。
【0045】
【数4】
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (2)
【0046】
但し、上記(2)式において、Vxは上記した方法で測定される真の体積(cm3 )で、発泡体を構成する樹脂の容積と、発泡体内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。その他、上記(2)式中の、Va、W、ρは以下の通りである。
【0047】
Va:測定に使用した発泡体の外寸法から計算される発泡体の見掛けの体積(cm3
W :測定に使用した発泡体の全重量(g)
ρ :発泡体を構成する基材樹脂の密度(g/cm3
【0048】
尚、試験片は、空気比較式比重計に付属のサンプルカップに非圧縮状態で収納されなければならないので、大きいサイズのものは見掛体積が14〜16cm3 となるようにカットしたものを使用し(できる限り、2.5cm×2.5cm×2.5cmの立方体形状に近づけるようにカットする。)、厚みの薄い小さいサイズのものは縦と横がそれぞれ2.3〜2.7cmになるようにカットし、見掛け体積が14〜16cm3 となるように複数枚を組み合わせて使用する。
【0049】
上記押出発泡体は、加熱軟化させて所望の形状に熱成形することができる。発泡体の成形方法としては、発泡体を加熱軟化させて折り曲げ、箱状体等を形成する方法や、発泡体を加熱軟化させた後、型に密着させて所望の形状に成形する方法が挙げられる。後者の方法としては、例えば真空成形、圧空成形やこれらの応用として、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等やこれらを組み合わせた方法等を採用することができる。また後者の方法では、樹脂(B)が、プロピレンと、エチレンとからなるプロピレン成分含量が95.5〜99.0重量%、MT=2〜8gf、MFR=0.1〜3.0g/10分で、樹脂(A)の融点より5〜17℃低い融点を有するプロピレン−エチレンランダム共重合体で、基材樹脂の定常状態コンプライアンス:Jが0.6×10−3/N以上、1.2×10−3/N未満の樹脂を用いて得た、厚み0.3〜7.0mm、幅300mm、密度0.06〜0.02g/cm、独立気泡率が50%以上のシート状発泡体を成形に用いる。このような発泡体を用いた場合、基材樹脂中の樹脂(A)と樹脂(B)の融点が大きく離れていないために、成形時に発泡体を加熱した際に気泡が連通化する割合を低く抑えることができるため、物性に優れた成形体を得ることができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。実施例、比較例において使用した樹脂の物性を表1に示した。表1に示す共重合体のエチレン成分含量(重量%)は、IRスペクトル法により、下記(3)式により求めた。また表1に示した樹脂▲1▼(ポリプロピレン系樹脂(A))はMT=20.7gf、MFR=3.7g/10分であり、前記(1)で示す関係を満たすものである。尚、表1に示すMT、MFR、融点は前記した方法により測定したものであり、結晶化温度は、原料樹脂3〜5mgを、示差走査熱量測定装置により、昇温速度10℃/分で室温から200℃まで昇温した後、直ちに降温速度10℃/分で40℃まで降温したときに得られるDSC曲線上の最も高温側に現れる結晶化(発熱)ピークの頂点の温度とする。
【0051】
【数5】
エチレン成分含量(重量%)
=0.575{(K′733 c +(K′722 c } (3)
【0052】
上記式(3)は朝倉書店発行の「高分子分析ハンドブック」(1985年9月1日第2刷発行)の第256頁の「(i)ランダム共重合体」の項に記載されている白山の提案する式であり、上記(3)式中、(K′733 c は733cm-1における補正後の吸光係数、(K′722 c は722cm-1における補正後の吸光係数である。
【0053】
【表1】
Figure 0004119539
【0054】
実施例1〜、比較例1〜5、参考例
表1に示す樹脂(A)と樹脂(B)を表2に示す割合で混合して溶融混練した後、押出機からストランド状に押出し、次いで切断して樹脂ペレットを得、この樹脂ペレットを基材樹脂として用いて発泡体を製造した。この樹脂ペレット(基材樹脂)の定常状態コンプライアンス:J、MT(gf)の値を表2にあわせて示す。尚、表2に示すJ、MTの値は前記した方法により求めたものである。
【0055】
【表2】
Figure 0004119539
【0056】
上記樹脂ペレットを押出機内で表3に示す発泡剤、気泡調整剤とともに溶融混練した後(表3中の発泡剤、気泡調整剤の添加量は、樹脂、発泡剤、気泡調整剤の合計量に対する重量%である。)、径84mmφ、間隙0.3〜0.5mmのリップを有するサーキュラーダイスを通して押出し発泡させてチューブ状の発泡体を得、次いでこのチューブを切り開いてシート状発泡体を得た。押出発泡温度を表3にあわせて示す。また得られたシート状発泡体の諸物性を表4に示す。尚、比較例2〜5では、表面凹凸の激しい不良の発泡体しか得られなかったため、シート状発泡体の独立気泡率、平均気泡径、衝撃強度、伸びは測定しなかった。
【0057】
【表3】
Figure 0004119539
【0058】
【表4】
Figure 0004119539
【0059】
シート状発泡体の外観は、得られたシート状発泡体を目視により観察し、
○・・・表面平滑で外観良好。
△・・・結晶化物の発生は認められないが、やや外観不良。
×・・・結晶化物の発生が認められ、外観不良。
として評価した。
【0060】
シート状発泡体の衝撃強度は、JIS P8134に基づくバンクチャー衝撃試験により求めた。
【0061】
シート状発泡体の伸びは、JIS K6767の5.2.1項のA法に従って、引張速度10mm/分の条件で測定した。
【0062】
シート状発泡体の平均気泡径は、押出方向の垂直断面と幅方向(押出方向と直交するシート状発泡体の幅方向)の垂直断面を使用して求められる。具体的には、押出方向の垂直断面の厚みの略中央部における任意の気泡壁を始点として押出方向に直線を引き、20個の気泡壁を数えたところを直線の終点とし(直線の始点における気泡壁はカウントせず、終点における気泡壁はカウントする。)、その直線の長さ(mm)を気泡壁数20で除すことにより求まる数値を、押出方向の平均気泡径とする。同様にして幅方向の垂直断面を使用して求まる数値を、幅方向の平均気泡径とする。
【0063】
尚、表4に示すシート状発泡体の諸物性のうち、独立気泡率は前記した方法により求めた。
【0064】
上記実施例1、2で得られたシート状発泡体の両面をヒーターで加熱して軟化させた後、プラグアシスト真空成形法によってトレーを成形したところ、良好な成形品(トレー)が得られた。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように本発明方法は、特定のMTとMFRとを有するポリプロピレン系樹脂(A)と、このポリプロピレン系樹脂(A)の融点よりも一定の範囲で低い融点を有するポリオレフィン系樹脂(B)との特定の割合の混合物を基材樹脂として用いたことにより、押出発泡性に優れ、均質で優れた性状の押出発泡体を得ることができるとともに、得られた発泡体の脆性、特に低温での脆性を改善することができる。また樹脂(B)として、プロピレンと、エチレンとからなる、プロピレン成分90重量%以上のプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いたことにより、樹脂(A)と樹脂(B)との均一混合性に優れ、より物性の均一な発泡体を得ることができ、樹脂(B)として、プロピレン成分95.5〜99.0重量%で、MT、MFRが特定の範囲のものを用いたため、基材樹脂のMTの大きな低下が防止され、容易により高発泡の発泡体を得ることができる。更に、樹脂(B)と樹脂(A)との混合物からなる基材樹脂の定常状態コンプライアンスが特定の範囲にあるものを用いると、高価な樹脂を用いることなく、押出発泡性を改善できる。更にまた上記特定の定常状態コンプライアンスを有する基材樹脂を用いる場合、樹脂(B)の融点が樹脂(A)の融点よりも5〜17℃融点が低いものであると、発泡体を熱成形する際に気泡の連通化割合を低く抑えることができ、高い物性の成形品を得ることができる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂(A)のMTとMFRとの関係を示すグラフである。
【図2】メルトテンションテスターのオリフィスから樹脂を紐状に押出して、捲取り速度一定として紐状の樹脂を捲取りローラーで捲取った時のメルトテンション:MTの経時変化を示すグラフである。

Claims (7)

  1. メルトテンション:MT(gf)の自然対数値:lnMTと、メルトフローレイト:MFR(g/10分)の自然対数値:lnMFRとの間に、下記(1)式で示す関係が成り立つポリプロピレン系樹脂(A)95〜50重量%と、lnMTと、lnMFRとの間に下記(1)式で示す関係を有さず、且つ上記ポリプロピレン系樹脂(A)の融点よりも3〜30℃低い融点を有し、プロピレンと、エチレンとからなるプロピレン成分95.5〜99.0重量%、MT=2〜8gf、MFR=0.1〜3.0g/10分のプロピレン−エチレンランダム共重合体よりなるポリオレフィン系樹脂(B)50〜5重量%とからなる混合樹脂と、発泡剤とを押出機内で溶融混練した後、押出機内から押し出して発泡させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法。
    (数1)
    lnMT > −0.83lnMFR + 2.82 (1)
  2. リプロピレン系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との混合物からなる基材樹脂の定常状態コンプライアンス:Jが、0.6×10−3/N以上、1.2×10−3/N未満である請求項1記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  3. リオレフィン系樹脂(B)の融点がポリプロピレン系樹脂(A)の融点より5〜17℃低いとともに、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との混合物からなる基材樹脂の定常状態コンプライアンス:Jが、0.6×10−3/N以上、1.2×10−3/N未満である請求項1記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の方法により得られた、厚み0.3〜10.0mm、幅300mm以上、密度0.5〜0.02g/cmのシート状又は板状のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
  5. 独立気泡率が50%以上である請求項記載のシート状又は板状のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
  6. 請求項記載の押出発泡体を加熱軟化させた後、所望の形状に熱成形することを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体の熱成形方法。
  7. 請求項記載の方法により得られた、厚み0.3〜7.0mm、幅300mm以上、密度0.06〜0.02g/cm、独立気泡率50%以上のシート状又は板状の押出発泡体を、加熱軟化させた後、型に密着させて所望の形状に成形することを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体の熱成形方法。
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