JP4119228B2 - 排気管用支持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の排気管を車体に防振的に支持するための排気管用支持装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車には車体の下方において前後方向に延びる排気管が配設されており、この排気管はマフラーハンガーとも称される排気管用支持装置によって車体に対して防振的に支持されている。従来、このような排気管用支持装置としては、ゴム状弾性体により一体形成したもので、車体側のロッドが挿入される貫通孔を有する第1保持部と、排気管側のロッドが挿入される貫通孔を有する第2保持部とを、主として両者の貫通孔を平行にしてかつ上下に間隔をおいて相対向するように左右の湾曲した両側壁部により連結し、全体として略環状に構成したものが使用されている(例えば、特開2000−55127号公報)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−55127号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、搭載する車両やその組付け位置などの条件によっては、上記のようなロッドを挿入して取り付ける構造ではなく、車体側と排気管側にそれぞれ剛体の取付板を設けて、これらをボルトナットを用いて車体や排気管に取り付けるという構造が求められることがある。
【0005】
図5は、このようなボルトナットを用いて取り付けるタイプの排気管用支持装置100の一例を示したものである。この支持装置100は、車体110に取り付けられる上側取付板101と、排気管111にブラケット112を介して取り付けられる下側取付板102と、上側取付板101と下側取付板102との間に介設されて両者を結合するゴム状弾性体103とからなる。上側取付板101にはボルト104が上方に突設され、このボルト104とナット105を用いて上側取付板101が車体110に締め付け固定される。また、下側取付板102には下方に突出するボルト106が設けられ、このボルト106とナット107を用いて下側取付板102がブラケット112に締め付け固定される。
【0006】
この支持装置100では、ゴム状弾性体103が単なるブロック状の塊であるため、排気管用支持装置として振動を効果的に吸収できない。すなわち、排気管用支持装置は、排気管からの荷重によりある程度下方に引っ張られた状態で組付けられ、この引っ張られた状態で振動を吸収することが要求されるが、上記のようなブロック状のゴム状弾性体103は伸びにくいため、組付け時の引っ張られた状態から更に伸縮することが難しく、そのため振動を吸収しにくいという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために、上記ブロック状のゴム状弾性体103に、図5において2点鎖線で示すように厚み方向に貫通する空洞108を設けることが考えられる。このように空洞108を設けることによりゴム状弾性体103をある程度伸びやすくすることはできるが、この場合でもゴム状弾性体103には上下方向に伸びるための伸び代が確保されていないことから、必ずしも十分な振動吸収特性が得られず、また、耐久性にも問題がある。更に、この場合、左右方向(X軸方向)に変形しやすいという問題もある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、車体側に取り付けられる上側取付板と排気管側に取り付けられる下側取付板とを備える排気管用支持装置において、振動吸収特性と耐久性に優れるものを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る排気管用支持装置は、車体側に取り付けられる上側取付板と、排気管側に取り付けられる下側取付板と、これら上側取付板と下側取付板との間に介設されて両者を結合するゴム状弾性体とを備えてなり、前記ゴム状弾性体は、上側取付板と下側取付板との中間位置に配された中央部と、該中央部の左右両端から上下に二股状に分岐して延びる上下の側壁部であって、上側の側壁部が上側取付板に、下側の側壁部が下側取付板にそれぞれ結合された上下の側壁部とを備え、該上下の側壁部を外側にアーチ状に張り出した形状としたものである。
【0010】
本発明の支持装置であると、上下の側壁部を外側にアーチ状に張り出した形状としたことによって、該側壁部により下方への引っ張りに対する伸び代が確保されている。すなわち、側壁部のアーチ状の湾曲によって、車両への組付け時の引っ張りによる初期変形のための自由長が確保される。そのため、車両への組付け後、ある程度引っ張られた状態からでも伸縮しやすく、振動吸収特性に優れる。また、このように側壁部がそのアーチ状の張り出し形状により伸びやすいため、応力が軽減されて耐久性にも優れる。更に、上記ゴム状弾性体は左右の側壁部が中央部で連結された形状となっているため、左右方向の剛性が高められており、左右方向への変形が抑制されている。
【0011】
本発明の排気管用支持装置においては、前記上側取付板と前記下側取付板が互いに平行に配され、前記中央部がこれら上側取付板と下側取付板に平行な水平壁部として形成されていることが好ましい。このように中央部を左右方向にある程度の広がりを持つ水平壁部として形成することにより、下側取付金具が上側取付金具に対して傾斜するような方向への変位に対し、該変位を抑えることができる。
【0012】
本発明の排気管用支持装置において、前記上側取付板には上方に突出するボルトが固設され、前記下側取付板には下方に突出するボルトが固設されてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の1実施形態に係る排気管用支持装置10について、図1〜4に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態に係る排気管用支持装置10は、車体1に取り付けられる金属製の上側取付板12と、排気管2にブラケット3を介して取り付けられる金属製の下側取付板14と、上側取付板12と下側取付板14の間に介設されて両者を結合するゴム状弾性体16とからなる。
【0015】
上側取付板12と下側取付板14は、同一の形状及び大きさを持つ矩形状の平板であり、所定の間隔をおいて互いに平行に相対向して配されており、かつともに水平に配されている。上側取付板12にはその中央部に貫通孔18が設けられている。そして、この貫通孔18に下方からボルト20が貫通されて、ボルト20が上方に突出した状態で上側取付板12に固定されている。同様に、下側取付板14にも中央部に貫通孔22が設けられ、この貫通孔22に上方からボルト24が貫通されて、ボルト24が下方に突出した状態で下側取付板14に固定されている。
【0016】
ゴム状弾性体16は、上側取付板12の下面を略全体にわたって覆う上壁部26と、下側取付板14の上面を略全体にわたって覆う下壁部28と、上側取付板12と下側取付板14との中間位置に配された中央部30と、中央部30の左右両端のそれぞれから斜め上下にY字状に分岐して延びて上壁部26と下壁部28にそれぞれ結合された左右一対の上下の側壁部32,34;32,34とからなり、全体として断面略8の字状をなしている。これにより、ゴム状弾性体16には、厚み方向(前後方向、Y軸方向)に貫通する上下2つの空洞部36,36が設けられている。ゴム状弾性体16は、左右方向(X軸方向)における中央を通る鉛直面に対して左右対称に、また、上下方向(Z軸方向)における中央を通る水平面に対して上下対称に形成されている。
【0017】
ゴム状弾性体16は、ゴム材料を加硫成形することで形成されており、上壁部26の上面で上側取付板12の下面に加硫接着され、下壁部28の下面で下側取付板14の上面に加硫接着されている。その際、上壁部26でボルト20の頭部20Aを埋設し、また下壁部28でボルト24の頭部24Aを埋設するように形成されている。
【0018】
中央部30は、上側取付板12及び下側取付板14に平行な水平壁部として形成されており、従って、左右方向にある程度の広がりを持つ肉厚板状をなしている。そのため、この中央部30とその端部から斜め上下に二股状に分岐する上下の側壁部32,34とによりY字状の分岐部が形成されている。
【0019】
上下の側壁部32,34は、それぞれ外側にアーチ状に張り出した形状に形成されている。詳細には、上側の側壁部32は、中央部30の端部から上方に向かって外側に広がりながら湾曲し、上壁部26の端部に接続されている。また、下側の側壁部34は、中央部30の端部から下方に向かって外側に広がりながら湾曲し、下壁部28の端部に接続されている。上下の側壁部32,34はともに、平面部分のない全て曲面状にて形成されている。
【0020】
上記のように側壁部32,34をY字状に分岐させたことにより、ゴム状弾性体16は、その上下方向の中央で左右両側部が内側に括れた形状となっている。そして、この括れ部38は、耐久性を高めるために断面円弧状に形成されている。このように括れ部38を断面円弧状に形成した上で、上下の側壁部32,34を略一定の厚みとするために、図1に示すように、上下の側壁部32,34は、中央部30への付け根部において、空洞部36側にわずかに膨出した形状40とされている。
【0021】
以上よりなる支持装置10は、図4に示すように、上側取付板12がボルト20とナット42を用いて車体1の下面に締め付け固定され、また、下側取付板14がボルト24とナット44を用いて排気管2を保持するブラケット3の取付面部3Aに締め付け固定され、これにより車両に組付けられる。車両に組付けられると、支持装置10は、排気管2の荷重によりある程度下方に引っ張られた状態となる。そして、この状態において、エンジンの作動により排気管2側から伝達される振動や車体1側から伝達される振動を吸収して、車室内の騒音振動の悪化を防止する。
【0022】
本実施形態の支持装置10であると、上下の側壁部32,34を外側にアーチ状に張り出した形状としたので、上下方向(Z軸方向)のバネ定数が小さく、特に下方に伸びやすくなっている。そのため、車両への組付け後、ある程度引っ張られた状態からでも伸縮しやすく、振動吸収特性に優れる。また、このように上下方向に延びやすいため、ゴム状弾性体16にかかる応力が軽減されて耐久性にも優れる。更に、ゴム状弾性体16は、左右の側壁部32,34;32,34が中央部30で連結された形状となっているため、左右方向(X軸方向)の剛性が高められており、左右方向への変形が抑制されている。
【0023】
そのため、例えば、X軸方向におけるバネ定数を10N/mm、Y軸方向におけるバネ定数を13N/mm、Z軸方向におけるバネ定数を23N/mmとすることができ、各方向における要求特性を満足させることが可能となる。
【0024】
また、本実施形態の支持装置10であると、ゴム状弾性体16の中央部30を左右方向にある程度の広がりを持つ水平壁部としたことにより、下側取付金具14が上側取付金具12に対して傾斜するような方向(図4において矢印αで示す方向)への変位に対し、該変位を抑えることができる。
【0025】
更に、左右の側壁部32,34;32,34が中央部30で連結されているため、排気管2が上方に過大に変位しようとしたときに、中央部30がストッパとなってこのような過大変位を規制することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の支持装置であると、上下の側壁部を外側にアーチ状に張り出した形状としたことによって、車両への組付け後、ある程度引っ張られた状態からでも伸縮しやすく、振動吸収特性に優れる。また、このように側壁部がそのアーチ状の張り出し形状により伸びやすいため、応力が軽減されて耐久性にも優れる。更に、ゴム状弾性体は左右の側壁部が中央部で連結された形状となっているため、左右方向の剛性が高められ、左右方向への変形が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係る排気管用支持装置の縦断面図である。
【図2】該排気管用支持装置の側面図である。
【図3】該排気管用支持装置の上面図である。
【図4】該排気管用支持装置の車両への組付け状態を示す図、
【図5】従来の排気管用支持装置の車両への組付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
10……排気管用支持装置
12……上側取付板
14……下側取付板
16……ゴム状弾性体
30……中央部
32……上側の側壁部
34……下側の側壁部
Claims (3)
- 車体側に取り付けられる上側取付板と、排気管側に取り付けられる下側取付板と、これら上側取付板と下側取付板との間に介設されて両者を結合するゴム状弾性体とを備えてなる排気管用支持装置において、
前記ゴム状弾性体は、上側取付板と下側取付板との中間位置に配された中央部と、該中央部の左右両端から上下に二股状に分岐して延びる上下の側壁部とを備え、
該上下の側壁部を外側にアーチ状に張り出した形状とした
ことを特徴とする排気管用支持装置。 - 前記上側取付板と前記下側取付板が互いに平行に配され、前記中央部がこれら上側取付板と下側取付板に平行な水平壁部として形成されたことを特徴とする請求項1記載の排気管用支持装置。
- 前記上側取付板には上方に突出するボルトが固設され、前記下側取付板には下方に突出するボルトが固設されたことを特徴とする請求項1又は2記載の排気管用支持装置。
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