JP4118217B2 - 遠心流体分注治具、及び流体の遠心分注方法 - Google Patents

遠心流体分注治具、及び流体の遠心分注方法 Download PDF

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Description

本発明は、複数本の筒状ケースの開口端部に流体を振り分けて注入可能な遠心流体分注治具、及び遠心分注方法に関する。
従来の技術を、代表的な遠心流体分注治具であって、ホローファイバー型ダイアライザー、血漿分離器等の中空糸型モジュール(中空糸型血液浄化器)を製造する際に用いられるポッティング治具を例に挙げて説明する。
中空糸型モジュールは、中空糸束を円筒状のケース内に装填後、中空糸束の両端をウレタン樹脂系等の接着剤を用いて固定することにより製造する。この場合、ケースをポッティング治具に取り付けた状態で回転し、遠心力を利用したポッティング処理により流体である接着剤をケースの両端開口部から導入して中空糸束の端部にのみ供給するようにしている。そして、供給した接着剤が硬化するまで回転し続け、硬化後にポッティング治具からケースを取り外す。
このポッティング処理を一度に複数のケースに対して施すには、各ケースの側面から突出したポートに接着剤分注用タンク(液体分注用タンク)をチューブ等でそれぞれ接続し、該接着剤分注用タンク内の接着剤を遠心力で振り分けてポートからケース内へ注入する(例えば、特許文献1参照。)。
特開平11−28411号公報(第4頁,第5図)
ところが、上記したポッティング治具や接着剤分注用タンクを用いて複数のケースにポッティング処理を行おうとすると、ポートと接着剤分注用タンクとの接続作業に手間が掛かってしまいがちであった。また、同時にポッティング処理を行うモジュール数を増やそうとすると、接着剤分注用タンクの分注数を増やす改造が必要となり、接着剤の分配精度が落ち易い。したがって、各モジュールの接着剤注入量にバラツキが生じてしまう虞があった。このように、品質の安定した中空糸型モジュールを効率よく生産する上で、改善の余地を残していた。
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケースのセット作業を簡単に行うことができ、また、流体の注入量のバラツキを少なくすることができる遠心流体分注治具、及び流体の遠心分注方法を提供しようとするものである。
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、中空糸束を装填した複数本の筒状ケースを寝かせてそれぞれ高さを異ならせた状態で各ケースの開口端部を一方のケースホルダと他方のケースホルダに装着して支持し、ケースをケースホルダと共に回転中心軸を中心にして水平方向に回転し、各ケースの開口端部の側面に開設した連通孔から当該開口端部の内側に流体を注入する遠心流体分注治具であって、
前記ケースホルダは、側面に、ケースの開口端部を収納可能な凹状の窪部からなるケースキャップ空部を、高さを異ならせて複数形成し、上下に隣り合うケースキャップ空部の間には、中空糸束の端部が対向する面であるケースキャップ空部の底面から回転中心軸側に所定距離離隔した位置で両ケースキャップ空部を連通して上方のケースキャップ空部からオーバーフローした流体を下方のケースキャップ空部に供給する連通流路を形成し、
該連通流路は、その底面が、前記連通孔のうちケースの先端側に位置する開口縁よりも回転中心軸に近く、且つ連通孔のうち回転中心軸側に位置する開口縁よりも回転中心軸から遠い位置に配置されると共に、前記回転中心軸と平行な同一線上に位置することを特徴とする遠心流体分注治具である。
請求項2に記載のものは、最上位に位置するケースキャップ空部に連通させた状態で流体供給路を形成したことを特徴とする請求項1に記載の遠心流体分注治具である。
請求項3に記載のものは、前記ケースキャップ空部のうち、最下位に位置するケースキャップ空部に連通させた状態で残余流体回収路を形成し、該残余流体回収路を上記連通流路と同じ垂線上に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠心流体分注治具である。
請求項4に記載のものは、中空糸束を装填した複数本の筒状ケースを寝かせてそれぞれ高さを異ならせた状態で支持し、ケースを回転中心軸を中心にして水平方向に回転し、各ケースの開口端部の側面に開設した連通孔から当該開口端部の内側に流体を注入する流体の遠心流体分注方法であって、
前記ケースの開口端部を凹状の窪部からなるケースキャップ空部に収納し、上下に隣り合うケースキャップ空部の間を、中空糸束の端部が対向する面であるケースキャップ空部の底面から回転中心軸側に所定距離離隔した位置に形成されて底面が前記連通孔のうちケースの先端側に位置する開口縁よりも回転中心軸に近く、且つ連通孔のうち回転中心軸側に位置する開口縁よりも回転中心軸から遠い位置に配置されると共に、前記回転中心軸と平行な同一線上に位置した連通流路により連通し、最上位に位置するケースキャップ空部から流体を供給し、当該ケースキャップ空部内に所定量の流体が溜まったならば連通流路からオーバーフローさせて下方に位置するケースキャップ空部へ流体を供給することを特徴とする流体の遠心分注方法である。
請求項5に記載のものは、前記ケースキャップ空部のうち、最下位に位置するケースキャップ空部から残余した流体を回収することを特徴とする請求項4に記載の流体の遠心分注方法である。
本発明によれば、次の効果を奏する。
すなわち、側面に連通孔が開設されたケースの開口端部を凹状の窪部からなるケースキャップ空部に収納し、上下に隣り合うケースキャップ空部の間を、中空糸束の端部が対向する面であるケースキャップ空部の底面から回転中心軸側に所定距離離隔した位置に形成されて底面が前記連通孔のうちケースの先端側に位置する開口縁よりも回転中心軸に近く、且つ連通孔のうち回転中心軸側に位置する開口縁よりも回転中心軸から遠い位置に配置されると共に、前記回転中心軸と平行な同一線上に位置した連通流路により連通し、最上位に位置するケースキャップ空部から流体を供給し、当該ケースキャップ空部内に所定量の流体が溜まったならば連通流路からオーバーフローさせて下方に位置するケースキャップ空部へ流体を供給するので、各ケースに注入された流体を連通させて、該流体の表面位置を揃えることができる。したがって、各ケースへ注入される流体の量や流体の層の厚さがばらつくのを抑えることができる。しかも、ケース毎に流体を供給するための配管を備える必要がない。このことから、分注を行うまでの準備作業を簡単にすることができ、作業負担の軽減を図ることができる。
また、前記ケースキャップ空部のうち、最下位に位置するケースキャップ空部から残余した流体を回収するので、流体を多く供給しても、ケースに注入されない余分な流体を回収することができる。したがって、流体量を厳密に計量してからケースに供給しなくても各ケース内における流体の表面位置を揃えることができ、流体の分注作業を迅速に行うことができる。
さらに、前記流体を、ケースの開口端部の側面に開設された連通孔を通じてケースの開口端部の内側に注入するので、連通流路に導かれた流体をケースへ注入し易くして、注入作業をスムーズに行うことができる。
以下、代表的な遠心流体分注治具である中空糸型モジュール(中空糸型血液浄化器)のポッティング治具を例に挙げ、本発明の実施の最良の形態を図面に基づき説明する。図1は、3本のケースをポッティング治具にセットした状態のポッティング装置1の概略図、図2はケースホルダ11およびケース3の断面図、図3はケースホルダ11の部分拡大断面図である。
ポッティング装置1は、中空糸束2を筒状のケース3内に装填し、このケース3の左右両側の開口端部4にて中空糸束2の両端部を液状の接着剤を硬化させることにより固定して中空糸型モジュールを製造する装置である。ポッティング装置1は、略水平方向に回転するターンテーブル6と、該ターンテーブル6上に取り付けられ、ケース3の開口端部4を両側から収納するポッティング治具7と、該ポッティング治具7間に配置されるポッティングタンク8とから概略構成されている。なお、ケース3は、開口端部4の側面に連通孔9を全周に亘って並ぶ状態で複数開設し、この連通孔9から接着剤をケース3の開口端部4の内側へ流れ込むように構成されている(図2および図3参照)。
ポッティング治具7は、一対の縦長なブロック状のケースホルダ11,11により構成されている。ケースホルダ11は、図2、図3および図4に示すように、ケース3あるいはターンテーブル6の回転中心軸Cと対向する側面(内側面)に、ケース3の開口端部4を収納するケースキャップ空部12を縦方向へ直線状に並ぶ状態、すなわち高さを異ならせた状態で複数(本実施形態では3つ)形成している。
ケースキャップ空部12は、開放側をケース3の本体へ向けて、ケース3の開口端部4を収納可能な凹状の窪部であり、ポッティング治具7が回転して遠心力が加わったときに接着剤が貯留されるように構成されている。このケースキャップ空部12は、開口端部4の外周面を覆う環状の外周面カバー部14と、該外周面カバー部14のケース3とは反対側に形成され、外周面カバー部14よりも縮径して端部が閉塞した糸束端部収納部15とを備えている。また、ケースキャップ空部12は、外周面カバー部14と糸束端部収納部15との間に、リング状に凹んだ嵌合部16を備え、ケース3の開口端部4のうち、先端(開口端)および先端近くの外周面を、連通孔9を塞がない状態で当接できるように構成されている(図3参照)。したがって、ケースホルダ11は、ケース3の開口端部4をケースキャップ空部12に突き当てると、ケース3の先端が嵌合部16に嵌合して、ケース3の位置決めを行うことができる。このとき、外周面カバー部14とケース3の開口端部4との間には、接着剤が十分に流れる程度の隙間17が形成される。また、この隙間17は、ケース3の開口端部4の連通孔9に連通した状態で形成される。そして、隙間17は、開口端部4の全周に亘ってリング状に形成されて、ケース3をケースホルダ11にセットした状態で連通孔9がどの位置にあっても、接着剤が後述の接着剤供給路21や連通流路20から連通孔9へ流入できる、あるいは連通孔9から連通流路20や残余接着剤回収路22(後述)へ流出できるように構成されている(図4(b)参照)。なお、ケース3の軸回りの位置を合わせて連通孔9を上下に配置して、連通孔9と連通流路20、接着剤供給路21あるいは残余接着剤回収路22とが連通する状態でケース3をケースホルダ11にセットするのであれば、隙間17は形成されなくてもよい。すなわち、外周面カバー部14の内周とケース3の開口端部4の外周とを略同じ寸法にして外周カバー部14と嵌合部16との段差をなくすことで、開口端部4の周りに接着剤が流れ込まないようにしてもよい(図4(c)参照)。
さらに、各ケースキャップ空部12の嵌合部16は、いずれも同じ垂線上、言い換えると、ケース3の回転中心軸Cから等しい距離の場所に配置されている。このように各嵌合部16の位置を縦方向に揃えて、ポッティング治具7は、複数のケース3を開口端部4の位置が縦方向に揃った状態で支持することができる。
また、ケースホルダ11は、上下に隣り合うケースキャップ空部12の間に溝状の連通流路20を形成している。この連通流路20は、その底面(ケース3の回転中心軸Cと対向する面)をケースキャップ空部12の底面(すなわち糸束端部収納部15の閉塞面)から回転中心軸C側に所定距離離隔した位置、具体的にはケース3内における接着剤の注入境界位置Bと略同じ位置に配置した状態で両ケースキャップ空部12を連通している。さらに、連通流路20は、ケース3の連通孔9を介して開口端部4の内側に連通し、当該連通流路20の底面(すなわち注入境界位置B)がケース3の連通孔9の中間に位置する状態、具体的には、連通孔9のうちケース3の先端側に位置する開口縁よりも回転中心軸Cに近く、且つ連通孔9のうち回転中心軸C側に位置する開口縁よりも回転中心軸Cから遠い位置に配置されている。なお、各ケースキャップ空部12間にそれぞれ形成された連通流路20は、いずれも同じ垂線上、言い換えるとケース3の回転中心軸Cと平行な同一線上に配置されている。
ケースキャップ空部12のうち最上位に位置するケースキャップ空部12Uは、接着剤供給路21(本発明の流体供給路に相当)を備えている。この接着剤供給路21は、接着剤入口をケース3の回転中心軸Cに向かって開放し、接着剤出口を最上位のケースキャップ空部12Uの外周面カバー部14に開設して、ポッティングタンク8から接着剤を最上位のケースキャップ空部12Uへ導入できるように構成されている。
また、最下位に位置するケースキャップ空部12Lは、外周面カバー部14の最下部から残余接着剤回収路22(本発明の残余流体回収路に相当)を下方に向かって形成している。残余接着剤回収路22は、連通流路20と同じ垂線上に配置され、底面(ケース3の回転中心軸Cと対向する面)をケース3内における接着剤の注入境界位置Bと略同じ位置に形成している。さらに、残余接着剤回収路22は、接着剤の下流側となる下端にケースホルダ11の内側面に設けられた凹状空間の回収部23に連通している。したがって、接着剤が注入予定量よりも多く供給され、接着剤の液面が注入境界位置Bを越えても、ポッティング治具7は、注入境界位置Bを越えた分の接着剤を残余接着剤回収路22からオーバーフローさせて回収部23に回収して、各ケースキャップ空部12の接着剤の液面を注入境界位置Bに保つことができる。
そして、ケースホルダ11は、各ケースキャップ空部12、連通流路20、残余接着剤回収路22および回収部23を備えたホルダ本体11aと、ケース3とは反対側に位置し、各ケースキャップ空部12および回収部23の底面部分を形成する蓋部11bとを重合して構成され、蓋部11bをネジ等の止着部材(図示せず)により着脱可能な状態で止着している。また、ケースホルダ11は、蓋部11bとホルダ本体11aとの間にパッキン(図示せず)を、ケースキャップ空部12および回収部23を囲う状態で挟み込んで、ケースキャップ空部12や回収部23に溜まった接着剤がホルダ本体11aと蓋部11bとの間からリークするのを防いでいる。なお、ケースホルダ11は、ホルダ本体11aと蓋部11bとに分割可能な構成に限らず、ホルダ本体11aと蓋部11bとを一体成型してもよい。
ポッティングタンク8は、接着剤を各ケースホルダ11に分配するためのタンクである。このポッティングタンク8は、複数のケース3の上方であって、ケース3の回転中心軸C上に配置されている。また、ポッティングタンク8は、上部中央に接着剤投入口25を開口し、側面下部に接着剤流出口26を両方のケースホルダ11の接着剤供給路21に対向する状態で外側へ向かって2箇所開口している。なお、接着剤流出口26は、チューブ27により接着剤供給路21に連通される。
次に、上記したポッティング装置1を使用してポッティング処理を行なう手順について説明する。なお、ポッティング処理の前工程で、各ケース3内に中空糸束2を装填しておく。また、以下の説明では、ケース3の一方の開口端部4についてのポッティング処理について説明するが、他方の開口端部4についても同様であるので、説明を省略する。
まず、各ケース3を横に向けた状態で一方の開口端部4を一方のケースホルダ11のケースキャップ空部12に、他方の開口端部4を他方のケースホルダ11のケースキャップ空部12にそれぞれ収納する。このようにしてケースホルダ11間に複数(3本)のケース3を挟み込んで装着し、このままケースホルダ11を立てると、ケース3は、横に寝た状態、且つそれぞれ高さを異ならせた状態でポッティング治具7に支持される。
次に、ターンテーブル6上にケース3が支持されたポッティング治具7を立てた状態で取り付ける。このとき、ポッティング治具7の中央、すなわちケース3の左右方向の中央がターンテーブル6の中央(回転中心)に位置する状態で適宜な固定部材(図示せず)により固定する。なお、両側のケースホルダ11をタイロッド(図示せず)で締め付けたり、ターンテーブル6上に予め装着したホルダ固定具(図示せず)の間にポッティング治具7を取り付けたりする等して、各ケース3がポッティング治具7から外れないようにしておく。
そして、最上段のケース3の長手方向(横方向)の中央にポッティングタンク8を載せ、このポッティングタンク8の接着剤流出口26とケースホルダ11の接着剤供給路21とをチューブ27で接続し、ポッティングタンク8内と接着剤供給路21および最上位のケースキャップ空部12U内とを連通する。
このようにポッティング治具7は、接着剤を供給する配管をケース3の開口端部4毎に備える必要がない。したがって、複雑な配管接続作業をすることなくポッティング作業の準備を簡単に行うことができ、作業負担を軽減することができる。
ターンテーブル6上にポッティング治具7およびケース3を固定し、ポッティングタンク8を接続したならば、ターンテーブル6を駆動して各ケース3をケースホルダ11およびポッティングタンク8とともに所定の回転数、例えば約800rpmの回転数で略水平方向に回転する。この回転状態で注入ノズル(図示せず)をポッティングタンク8の接着剤投入口25へ上方から差し込み、ポッティングタンク8内に接着剤を所定の注入速度で注入する。すると、ポッティングタンク8内の接着剤は、遠心力を受けて接着剤流出口26から圧送され、チューブ27および接着剤供給路21を介して最上位のケースキャップ空部12Uに流入する。
ケースキャップ空部12内に流入した接着剤は、遠心力を受けながら外周面カバー部14と開口端部4との隙間17を流れ、連通孔9から開口端部4の内側に流れ込む。そして、接着剤は、開口端部4の内面と中空糸束2との間隙や中空糸同士の間隙を通って糸束端部収納部15の内部に溜まる。この糸束端部収納部15内に溜った接着剤は遠心力の作用を受けているので、糸束端部収納部15の底部、すなわち中空糸束2の端部側から溜り始め、量が次第に増加するとレベル(液面)が上昇する(回転中心側に近付く)ので、中空糸束2の端部から次第に浸す長さを増し、接着剤層の厚さを増加させる。
そして、所定量の接着剤が最上位のケースキャップ空部12U内に供給されると、ケースキャップ空部12Uおよびケース3の開口端部4に注入境界位置Bまで接着剤が溜まる。さらに接着剤が最上位のケースキャップ空部12Uに流入すると、このケースキャップ空部12Uは、接着剤を下方の連通流路20からオーバーフローさせ、下に位置する(上から2番目の)ケースキャップ空部12およびケース3の開口端部4へ流入させる。引き続きポッティングタンク8から接着剤が供給されると、2番目のケースキャップ空部12およびケース3の開口端部4にも接着剤が注入境界位置Bまで溜まり、オーバーフローした接着剤が2番目のケースキャップ空部12の下に配置された連通流路20を通って、最下位のケースキャップ空部12Lに流入する。
さらに接着剤を各ケースキャップ空部12へ供給し続けて、最下位のケースキャップ空部12Lにも接着剤が注入境界位置Bまで溜まったならば、注入境界位置Bを越えた接着剤は、最下位のケースキャップ空部12Lの下に配置された残余接着剤回収路22へオーバーフローし、ケースホルダ11の下部に位置する回収部23に回収される。
このように、各ケースキャップ空部12の下方に連通流路20あるいは残余接着剤回収路22を、接着剤の注入境界位置Bに合わせて形成し、接着剤を連通流路20あるいは残余接着剤回収路22からオーバーフローさせるようにすれば、ケース3の開口端部4内に注入された接着剤を連通させて、液面を同じ注入境界位置Bに揃えながら、接着剤を各ケース3の開口端部4へ分注することができる。したがって、各ケース3へ注入される接着剤の量や接着剤層の厚さがバラつくのを抑えることができ、中空糸が接着剤に覆われる範囲をケース3の上下位置や製造ロットの違いに関係なく安定させることができる。このことから、ケース3の全長寸法を、接着剤層の厚さのバラツキを考慮せずに設定することができ、中空糸型モジュールの長さを短くして、ローコスト化を図ることができる。
また、ポッティング治具7は、接着剤を多めに供給しても、注入境界位置Bを越える余分な接着剤を各ケースキャップ空部12からオーバーフローさせ、回収部23に回収することができる。したがって、接着剤の供給量を厳密に計量しなくても各ケース3内の接着剤レベルのバラツキをなくすことができ、接着剤の分注作業を迅速に行うことができる。
そして、接着剤は、連通孔9を通ってケース3の開口端部4内に流れ込み易く、流出し易い。したがって、各ケース3内の接着剤の液面が均一になり易く、ポッティング作業をスムーズに行うことができる。
全てのケース3の開口端部4に接着剤が注入境界位置Bまで溜まったならば、注入ノズルからポッティングタンク8への接着剤の供給を停止する。そして、各開口端部4内の接着剤の液面が連通流路20および残余接着剤回収路22の底面の位置(すなわち注入境界位置B)に揃い、余分の接着剤が回収部23へ回収された状態で、接着剤が硬化すると、中空糸束2の端部のみをケース3の開口端部4の内周面に対して固定することができる。このとき、ケース3は、連通孔9のうち、注入境界位置Bよりも当該ケース3の先端側部分のみを接着剤により閉塞され、注入境界位置Bよりも回転中心軸C側(ケース3の長手方向中心側)を開口したままとなる。したがって、ケース3は、この連通孔9の開口部分を介して当該ケース3の外部と当該ケース3内の中空糸束2との間を連通することができる。すなわち、ケース3は、連通孔9の回転中心軸C側の開口部分を中空糸型モジュールにおける透析液(処理液)の流路として構成することができる。このことから、例えば、開口端部4をカバーするヘッダー側面に透析液用(処理液用)のポートを形成し(いずれも図示せず)、このポートと連通孔9の回転中心軸C側の開口部分とを連通すれば、ポートからの透析液を中空糸束2の周りへ導入することができる。
接着剤が硬化したならば回転を停止してポッティング処理を終了し、ポッティング治具7をターンテーブル6から取り外す。そして、ケースホルダ11からケース3を取り出す。このとき、蓋部11bをホルダ本体11aから取り外せば、ケースキャップ空部12および回収部23は、ケース3とは反対側(図2中左側)も開放することができる。したがって、ポッティング処理後に硬化した接着剤を押し出してホルダ本体11aから簡単に取り外すことができ、把持して引き抜くことなくケース3を取り外せる。すなわち、接着剤とケース3との間に余計な負荷を与えることなく取り外すことができ、中空糸型モジュールの表面を損傷したり、ケース3と接着剤との接合強度を弱くしてしまったりする虞がない。また、回収部23に回収されて硬化した接着剤を容易に取り除くことができ、メンテナンス作業を迅速に行なうことができる。なお、回収部23内の接着剤は、ポッティング作業終了毎に取り除く必要は無く、ある程度溜まった段階で回収部23から取り除けばよい。
なお、ポッティング処理を終了したケース3は、ケース3の開口端部4から突出している中空糸束2の端部を接着剤とともに切断除去して各中空糸の端部を開口したり、あるいは接着剤のバリ(例えば、連通流路20上で硬化した薄膜状の接着剤)等を除去したりした後、次の工程に送られる。
上記実施形態では、ポッティング治具7は、ケース3の連通孔9の一部を接着剤で塞がず、開口した状態にして透析液の出入口として利用できるようにポッティング処理を施したが、本発明はこれに限らない。例えば、ケース3に透析液流出入用のポートを、注入境界位置Bよりも回転中心軸C側に予め設け、このポートによりケース3の内側と外側とを連通できれば、ポッティング治具7は、連通孔9の全部が接着剤の注入境界位置Bよりもケース3の先端側に位置するように連通流路20を配置して、ポッティング処理後に連通孔9が接着剤により閉塞されるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、ケース3の先端を嵌合部16に当接してケース3の位置を決めていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ケース3の開口端部4にフランジ29が設けてあれば、ポッティング治具7は、図5に示すように、このフランジ29を嵌合可能なフランジ収納部30を設け、該フランジ収納部30とフランジ29とを当接することでケース3の位置決めを行うようにしてもよい。このようにすれば、ポッティング治具7は、ケースキャップ空部12内に嵌合部16を形成しなくてもケース3の位置決めができる。すなわち、開口端部4とケースキャップ空部12とを接触させないで、接着剤の流路となる隙間17を開口端部4の先端まで形成して、ケース3の開口側から内側へ接着剤を供給することができる。したがって、ポッティング治具7は、開口端部4に連通孔9が開設していないケース3であってもポッティング処理を施すことができる。このとき、ケース3の側面に、空気抜き孔(小さな孔やポート等。図示せず。)を開設しておけば、開口端部4内に接着剤が入り込み易くなって好適である。なお、空気抜き孔は、ポッティング作業後に接着剤などで閉塞すればよい。
また、ポッティングタンク8が接着剤を適量(すなわち開口端部4を収納した一連のケースキャップ空部12を丁度注入境界位置Bまで満たすことができる量)だけケースホルダ11へ供給できれば、ポッティング治具7は、回収部23を形成しなくてもよい。
さらに、ポッティング治具7は、必ずしも接着剤供給路21を最上位のケースキャップ空部12Uに連通させて形成しなくてもよい。すなわち、最上段にセットしたケース3の連通孔9にチューブ27を直接連結して、ポッティングタンク8からケース3へ接着剤を供給できるようにしてもよい。
また、ポッティング装置1の回転を速くして、接着剤の流れが重力よりも遠心力によって引き起こされるのであれば、例えば、ポッティング装置1を横向きに置き、ケース3をその長手方向中央を回転中心にしてケースホルダ11と共に略垂直方向に回転して、ケース3の開口端部4に接着剤を注入してもよい。
そして、上記実施形態では、ケース3の長手方向中央を回転中心としてケースホルダ11と共にケース3を回転することで、ケース3の両端の開口端部4に接着剤を供給したが、端部あるいは途中を回転中心としてケースを回転して、片方の開口端部にのみ接着剤を注入してもよい。
さらに、上記実施形態では、中空糸型モジュールのケース3の開口端部4に接着剤を注入するポッティング治具7を例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、流体を遠心力によりケースの開口端部に注入する分注治具、あるいは流体の分注方法であればどのようなものでもよい。
ポッティング装置の概略図である。 ケースホルダおよびケースの断面図である。 (a)はケースを装着した状態のケースホルダの部分拡大断面図、(b)はケースを外した状態のケースホルダの部分拡大断面図である。 (a)はケースホルダの正面図、(b)はケースの開口端部とケースキャップ空部の外周面カバー部との隙間を示した断面図、(c)は開口端部と外周面カバー部との隙間がない場合を示した断面図である。 連通孔のない開口端部を収納した第2実施形態のケースホルダの拡大断面図である。
符号の説明
1 ポッティング装置
2 中空糸束
3 ケース
4 開口端部
6 ターンテーブル
7 ポッティング治具
8 ポッティングタンク
9 連通孔
11 ケースホルダ
11a ホルダ本体
11b 蓋部
12 ケースキャップ空部
12U 最上位のケースキャップ空部
12L 最下位のケースキャップ空部
14 外周面カバー部
15 糸束端部収納部
16 嵌合部
17 隙間
20 連通流路
21 接着剤供給路
22 残余接着剤回収路
23 回収部
25 接着剤投入口
26 接着剤流出口
27 チューブ
29 フランジ
30 フランジ収納部

Claims (5)

  1. 中空糸束を装填した複数本の筒状ケースを寝かせてそれぞれ高さを異ならせた状態で各ケースの開口端部を一方のケースホルダと他方のケースホルダに装着して支持し、ケースをケースホルダと共に回転中心軸を中心にして水平方向に回転し、各ケースの開口端部の側面に開設した連通孔から当該開口端部の内側に流体を注入する遠心流体分注治具であって、
    前記ケースホルダは、側面に、ケースの開口端部を収納可能な凹状の窪部からなるケースキャップ空部を、高さを異ならせて複数形成し、上下に隣り合うケースキャップ空部の間には、中空糸束の端部が対向する面であるケースキャップ空部の底面から回転中心軸側に所定距離離隔した位置で両ケースキャップ空部を連通して上方のケースキャップ空部からオーバーフローした流体を下方のケースキャップ空部に供給する連通流路を形成し、
    該連通流路は、その底面が、前記連通孔のうちケースの先端側に位置する開口縁よりも回転中心軸に近く、且つ連通孔のうち回転中心軸側に位置する開口縁よりも回転中心軸から遠い位置に配置されると共に、前記回転中心軸と平行な同一線上に位置することを特徴とする遠心流体分注治具。
  2. 最上位に位置するケースキャップ空部に連通させた状態で流体供給路を形成したことを特徴とする請求項1に記載の遠心流体分注治具。
  3. 前記ケースキャップ空部のうち、最下位に位置するケースキャップ空部に連通させた状態で残余流体回収路を形成し、該残余流体回収路を上記連通流路と同じ垂線上に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠心流体分注治具。
  4. 中空糸束を装填した複数本の筒状ケースを寝かせてそれぞれ高さを異ならせた状態で支持し、ケースを回転中心軸を中心にして水平方向に回転し、各ケースの開口端部の側面に開設した連通孔から当該開口端部の内側に流体を注入する流体の遠心流体分注方法であって、
    前記ケースの開口端部を凹状の窪部からなるケースキャップ空部に収納し、上下に隣り合うケースキャップ空部の間を、中空糸束の端部が対向する面であるケースキャップ空部の底面から回転中心軸側に所定距離離隔した位置に形成されて底面が前記連通孔のうちケースの先端側に位置する開口縁よりも回転中心軸に近く、且つ連通孔のうち回転中心軸側に位置する開口縁よりも回転中心軸から遠い位置に配置されると共に、前記回転中心軸と平行な同一線上に位置した連通流路により連通し、最上位に位置するケースキャップ空部から流体を供給し、当該ケースキャップ空部内に所定量の流体が溜まったならば連通流路からオーバーフローさせて下方に位置するケースキャップ空部へ流体を供給することを特徴とする流体の遠心分注方法。
  5. 前記ケースキャップ空部のうち、最下位に位置するケースキャップ空部から残余した流体を回収することを特徴とする請求項4に記載の流体の遠心分注方法。
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