JP4116766B2 - 意匠模様入りスパンレース不織布、及び意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、意匠模様入りスパンレース不織布、それを製造するための突起部を有したメッシュベルト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパンレース不織布面に模様を成形する方法は従来より知られており、不織布を製造する際に繊維集合体を平織組織等のメッシュベルトで支持・搬送しながら高圧水流の噴射圧力によって繊維を三次元交絡させ、且つ該メッシュベルトを構成している経糸と緯糸の交錯点に形成されるナックル部やメッシュベルト上に固着された突起部で以て不織布面に凹凸模様又は開孔模様を成形するものである。スパンレース不織布面に規則的な開孔模様を形成するものとして、例えば特開昭62−69867号公報には、小透孔を備えた多数の半球体突起部を有した開孔不織布製造用支持体が開示されている。またスパンレース不織布面に意匠模様を形成するものとして、特開平4−327255号公報に不織布製造用ベルト本体の成形側表面に熱可塑性樹脂突起物を熱溶着し、不織布表面に文字等の種々な意匠模様(高低差の大きな、形状に応じた鮮明な凹凸模様、又は凹凸模様ではなく不織布に穴をあけた開孔模様)を形成する不織布製造用ベルトが開示されている。
【0003】
しかしながら、これらの従来からの不織布への模様付け成形を行うための支持体にあっては次のような不都合があった。例えば前記特開昭62−69867号公報記載の開孔不織布製造用支持体においては、不織布面に円形又は楕円形の開孔模様を規則的に明瞭に形成するには都合がよいが、不織布表面に任意の意匠模様を付与することは困難であった。また同公報記載の発明による支持体は、所要径、所要長さのシリンダー面(又は平面板面)に前記多数の小透孔を有する突起部を形成する必要があり、このようなシリンダー(又は平面板)は加工上の問題から広幅加工が困難であり広幅不織布用途への開孔模様付与には限界があった。さらに例えば何らかのトラブルにて一部の突起部が損傷するとその修繕が困難であり、支持体全体を交換する必要があるといった不都合や、該シリンダー(又は平面板)の作成には金型作成費用がかさむ等の経済的問題点を有していた。
【0004】
また、前記特開平4−327255号公報記載の不織布製造用ベルトは、不織布面に文字等の種々な凹凸による意匠模様を付与するには都合がよく、また広幅の不織布用途にも対応可能であるが、凹凸模様ではなく突起により不織布に穴をあけて孔の配列模様を以て開孔による意匠模様を形成するには、いったん不織布形成後に高圧水流をかけて意匠模様を付与するため、得られた不織布のソフト感や風合いが低下する不都合があった。
【0005】
上記の従来技術に例示される通り、一工程にてスパンレース不織布面に模様付けする方法としては、不織布面に穴をあけて開孔部を形成しその開孔部の配列で以て意匠模様を形成する方法、又は不織布面に穴をあけずに凹凸部を形成しその凹凸部の配列で以て意匠模様を形成する方法のどちらかであった。また、凹凸模様と開孔模様の双方で以て意匠模様を形成するには、開孔スパンレース不織布の成形前にエンボス加工を施し該不織布面に凹凸模様を付与する方法も特開昭55−6536号公報に開示されているが、このような方法においては加熱エンボスロール等でエンボス加工し、不織布面全体に部分的な圧着処理が施されるため、スパンレース不織布特有のソフト感や風合いが低下する不都合は避けられず、また得られる模様も不織布全面に施す点では都合が良いが、不織布面の任意の特定位置に所望の意匠模様を凹凸模様と開孔模様とを混在させて形成するには不適であった。また得られる意匠模様も意匠模様を構成する各凹凸部の輪郭部分が不鮮明になりやすいといったエンボス処理による特徴があった。さらに開孔模様を形成するための工程と凹凸模様を形成するための工程の二工程が必要となり不経済であるのみならず、不織布面の任意の位置に開孔模様と凹凸模様を混在させて所望の意匠模様を形成するためには双方の模様がずれないように柄合わせする必要があり、二工程による該意匠模様の付与は極めて困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記のような問題点に鑑み、経済的で、ソフト感や風合いが低下することなく、開孔模様と凹凸模様を混在させて鮮明な意匠模様が付与された意匠模様入りスパンレース不織布、該不織布を得るための意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルト、及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高圧水流噴射圧によって繊維集合体が交絡され且つ再配列されることによって、不織布面の任意の位置に所望の意匠模様が付与されている意匠模様部とそれ以外のグランド部とから構成される意匠模様入りスパンレース不織布であって、該意匠模様部が開孔模様部と凹凸模様部とが混在して形成されていることを特徴とする意匠模様入りスパンレース不織布であり、また、該意匠模様部において、該開孔模様部を形成している個々の開孔部面積をA、該凹凸模様部を形成している個々の凹凸部面積をBとした時、(A/B)≦1の条件を満たすことが好ましい。また、該開孔模様部を形成している個々の開孔部の輪郭部分を構成する繊維集合体の密集度及び/又は凹凸模様部を形成している個々の凹凸部の輪郭部分を構成する繊維集合体の密集度が、該グランド部を構成している繊維集合体の密集度より密であり、且つ該凹凸部の底面部分を構成する繊維集合体の密集度が該グランド部を構成する繊維集合体の密集度より粗であることが好ましい。
【0008】
上記構成及び特徴を有する意匠模様入りスパンレース不織布を得るためには、スパンレース不織布製造装置に使用されるスパンレース不織布成形用ベルト本体の不織布成形面側に、不織布表面に意匠模様を形成するための意匠模様形成用突起が固着されたメッシュベルトを用い、該ベルト本体に固着された意匠模様形成用突起部を、高圧水流噴射圧によって繊維集合体が交絡され且つ再配列される際に、不織布表面に開孔模様を形成するための開孔模様形成用突起部と凹凸模様を形成するための凹凸模様形成用突起部とを混在して形成することにより達成される。また、該開孔模様形成用突起部においてその高さ寸法をHa、その底部面積をSa、凹凸模様形成用突起部においてその高さ寸法をHb、その底部面積をSbとした時、(Ha>Hb)及び/又は(Sb>Sa)とすることが好ましい。また、該不織布表面に開孔模様を形成するための開孔模様形成用突起部と凹凸模様を形成するための凹凸模様形成用突起部の縦断面形状において、該開孔模様形成用突起部の縦断面形状が尖状であり、該凹凸模様形成用突起部の縦断面形状が非尖状であることが好ましい。
【0009】
このような構成及び特徴を有するメッシュベルトは、ベルト本体の不織布成形面側に、不織布面の任意の位置に所望の意匠模様を形成するための意匠模様形成用突起部を固着するスパンレース不織布製造用メッシュベルトの製造方法において、メッシュベルト本体の表面に予め所望の複数の開孔部からなる意匠模様開孔部を形成した意匠模様開孔シートを載せ、該意匠模様開孔シート上に硬化性樹脂をコーティングし、該意匠模様開孔部に該硬化性樹脂を充填させた後、該硬化性樹脂が固化する前の易形状変形能を有する粘度にまで増粘した段階に適時該意匠模様開孔シートを該メッシュベルトから上方に向かって取り除き、取り除く際に該メッシュベルト表面上に、該意匠模様開孔部に充填された硬化性樹脂の一部を変形させて、その縦断面形状において尖状又は非尖状及び/又は高さの異なる突起群を同時に立体的に固着させることにより得られる。また、該硬化性樹脂に反応型硬化性樹脂を使用し、該硬化性樹脂の粘度が10000〜200000cpsの状態まで反応硬化増粘してきた後にコーティング又は意匠模様開孔シートを上方に向かって取り除くことにより、前記尖状・非尖状といった高低差及び/又は縦断面形状差のある突起部を同時に形成することが好ましい。該硬化性樹脂の粘度が10000cps未満であると樹脂を立体的に且つ形状変形させて固着することが困難となり、反対に200000cps越えであるとコーテーィングが困難となったり、前記開孔シートの開孔部に樹脂を充填させることが困難となる。また意匠模様開孔シート自体を上方に取り除くことが困難となる。より好ましくは該硬化性樹脂の粘度が40000〜70000cps程度の状態まで増粘硬化してきた後である。
【0010】
このように樹脂粘度に応じて適時前記開孔シートを上方に持ち上げると、メッシュベルトとの接触面積が小さな部分ほど充填樹脂自体の形態安定力に対し該開孔シートとの樹脂粘着力が勝り、結果として充填されていた充填樹脂が上方に引き延ばされ形態変化し、より高く且つ筆先に似た縦断面形状尖状の開孔模様部形成用突起部が形成される。反対にメッシュベルトとの接触面積が大きな部分ほど充填樹脂自体の形態安定力が勝り、該開孔シートとの粘着力の影響を受けにくくなり、該開孔シートを上方に持ち上げても充填樹脂が上方に引き延ばされることなく、結果として縦断面形状がドーム状、台形状、カルデラ状といった非尖状の凹凸模様形成用突起部を形成する。スパンレース不織布製造段階において、該尖状突起部に当接した繊維集合体の挙動としては、上方からの高圧水流圧によって該尖状突起部周辺へ繊維集合体が交絡しながら再配列され易くなるため、不織布面に開孔部を形成し、また該開孔部の輪郭部分の繊維集合体の密集度が高くなる。一方前記非尖状突起部に当接した繊維集合体の挙動は、前記高圧水流の影響を受けながらもその突起部形状から繊維集合体が再配列するための移動は少なく、該当接部分に相当する繊維集合体は交絡しながらもよりその底面部が密集度の粗な凹凸部を形成し、該底面部の繊維集合体が粗になった分該凹凸部の輪郭部分の繊維集合体の密集度が高くなる。このような繊維集合体の挙動をコントロールし得る意匠模様形成用突起部を固着したメッシュベルトによって本発明の意匠模様入りスパンレース不織布が得られ、これらを以て上記課題を解決するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について実施例の図に基づいて以下に詳細に説明する。図1及び図2は本発明の一形態である意匠模様入りスパンレース不織布の平面写真であり、図3は図2の意匠模様部2の拡大平面写真である。尚、図1〜図3においては白色の不織布の下に黒色紙を敷いた状態で該不織布上方より写真取りしたものである。
【0012】
本発明は、不織布面の任意の位置に所望の意匠模様が部分的に付与されている意匠模様部と該意匠模様部以外のグランド部とから成る意匠模様入りスパンレース不織布であって、該意匠模様部が開孔模様部と凹凸模様部とが混在して形成されていることを特徴とする意匠模様入りスパンレース不織布である。ここで言う意匠模様とは、視覚を通じて一種又は多種の任意の模様柄が不織布面を装飾していると認識される形象であり、例えば、不織布面の任意の位置に、花、樹木、葉等の植物模様、人、熊、ワニ、魚、蝶等の動物模様、山、月、建物等の風景模様、鉛筆、傘、靴等の物品模様、ローマ字、数字、符号等の文字模様、丸、四角、三角等の幾何学的模様、抽象的模様、ロゴマーク、サービスマーク等、又はこれらの組み合わせ模様等が対象となる。ただ単に不織布面全体に不織布支持体のナックル部等で形成される規則的な開孔模様や凹凸模様はこれに含まれない。また、ここで言うグランド部とは、前記意匠模様部以外の不織布表面部をさし、その表面形態を限定するものではない。例えば図1に例示するような公知の非開孔スパンレース不織布表面のような非開孔表面タイプであってもよいし、図2に例示するような公知の開孔スパンレース不織布表面のように規則的な小開孔を形成している小開孔表面タイプであってもよく、不織布用途に応じて適宜選択すればよい。
【0013】
本発明の意匠模様入りスパンレース不織布は、複数の開孔部と凹凸部とで以てこれらを混在させて一つの意匠模様が形成されているため、複雑な意匠模様であっても、該開孔部と該凹凸部とを以てメリハリのある鮮明な意匠模様を醸し出すことが出来る。また該開孔部と凹凸部との構成比率を考慮して意匠模様を形成することにより、通気性や通液性といった不織布機能の制御にも有効な不織布と成り得る。
【0014】
また、意匠模様部において、開孔模様部を形成している個々の開孔部面積をA、凹凸模様部を形成している個々の凹凸部面積をBとした時、(A/B)≦1の条件を満たしていることが好ましい。上記A及びBについては図4に例示する通りであるが、要は開孔模様部4を凹凸模様部5に比べ平面視にて同等又は小さくすることが好ましい。何故ならば、スパンレース不織布製造の際にはメッシュベルト上の繊維集合体を搬送しつつ、該繊維集合体の上方から高圧水流を噴射して、該繊維集合体を交絡させ又該繊維集合体を再配列させて開孔模様や凹凸模様を成形するものであるから、複数の大きさの異なった凹み部の配列で以て意匠模様が形成され、一方のより小さな凹み部分を凹凸模様で形成すると視覚を通じて判別しにくい不鮮明な模様となり、反対に他方のより大きな凹み部分を開孔模様で形成すると開孔模様部の型くずれがしやすくなり、又不織布自体の寸法安定性が劣ったものとなりやすく不都合である。よってより小さな凹み部分は開孔模様で、より大きな凹み部分は凹凸模様で形成することが好ましい。また、本発明においては、平面視小さな開孔模様部と大きな凹凸模様部とを混在させて一つの意匠模様を形成したものであるから、視覚を通して意匠模様が全体的にバランスの取れた意匠模様として視認されるものとなる。このように所望の意匠模様に応じてより小さな開孔模様とより大きな凹凸模様とを組み合わせることにより従来にないメリハリの効いた独特の立体感と視認性を有した意匠模様と成り得る。
【0015】
また、開孔模様部を形成している個々の開孔部の輪郭部分を構成する繊維集合体の密集度及び/又は凹凸模様部を形成している個々の凹凸部の輪郭部分を構成する繊維集合体の密集度が、該グランド部を構成している繊維集合体の密集度より密であり、且つ該凹凸部の底面部分を構成する繊維集合体の密集度が該グランド部を構成する繊維集合体の密集度より粗であることが好ましい。このような構成とすることにより、平面視にて各開孔部及び各凹凸部をより鮮明に浮き出させより一層のメリハリ感を与えることが出来る。尚、本発明における凹凸部とは、図3、図5に例示されるものであり、不織布面上において凹みがあり且つ該凹み部底にブリッジ状繊維集合体等にて底面が形成されているものが凹凸部であり、該凹み部底がないものが開孔部である。
【0016】
本発明の意匠模様入りスパンレース不織布は様々な用途に展開可能であるが、スパンレース不織布独特のソフト感や風合い、また意匠模様が醸し出す美観、不織布表面の凹み(凹凸部と開孔部)、嵩高性、通気性・通液性等から、オムツバックシート、トップシート、パンティーライナー等の衛生材料表面材に好適である。またこれ以外の用途においても、化粧パフ、フェイスマスク、洗顔シート等のコスメティック材、ガーゼ等の医療材、家庭用ウエットワイプ、ドライワイプ、業務用ワイパー等、その他ヘッドレストカバー等にも有効である。また本発明の不織布は用途にもよるが、ワイパー材のように単一で使用する形態と衛生材料表面材のように他の不織布等との積層体で使用する形態であってもよい。
【0017】
また、本発明の意匠模様入りスパンレース不織布に使用される繊維素材は特に限定するものではなく、通常不織布に使用される天然繊維、再生繊維、合成繊維等が適用されるがステープル繊維が好ましい。その繊維長としては20〜80mmが好ましく、スパンレース法による繊維集合体の交絡及び再配列による開孔又は凹凸模様形成の点からより好ましくは30〜60mmである。またその繊度は0.5〜11dtexが好ましく、繊維ウエブ作成のためのカード機通過性や不織布面に意匠模様を付与する点から、より好ましくは1〜2.2dtexである。また用途によっては、熱接着性繊維と前記繊維との混綿により、スパンレース不織布形成後の熱風処理等にて各繊維同士を繊維間接着させてもよい。
【0018】
本発明による意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトは、その素材として特に限定するものではないが、硬化性樹脂との接着耐久性を考慮すれば、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアミド、ポリオレフィン等のプラスチックモノフィラメントが好ましく、中でも耐摩耗性、耐屈曲性の点からポリエステルモノフィラメントから構成することが好ましい。該ベルトの織り組織、メッシュ数においても特に限定するものではなく、製造するスパンレース不織布に応じてまた製造条件に応じて適宜採用すればよい。
【0019】
本発明の意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトの一形態を図6、図7に例示するが、ベルト基布9に固着された意匠模様形成用突起部6が、不織布表面に開孔模様を形成するための開孔模様形成用突起部7と凹凸模様を形成するための凹凸模様形成用突起部8とが混在して形成されていることを特徴とする意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトであり、該開孔模様を形成するための開孔模様形成用突起部と凹凸模様を形成するための凹凸模様形成用突起部の平面形状や、縦断面形状を特定するものではない。
【0020】
また、本発明の意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルト10の製造方法において、使用される硬化性樹脂12としては、例えば、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ゴム系樹脂等が適宜採用可能であるが、メッシュベルト素材に対してそれ自体が接着し且つ耐水性のあるものが好ましい。中でも主剤と硬化剤との2液を混合させ反応硬化させる2液反応型硬化樹脂が好ましい。もちろんメッシュベルト素材が、プラスチック線であればプラスチック用を、金属線であれば金属用を適宜採用することは言うまでもない。このような2液反応型硬化樹脂としては、例えばイーテック社製の「マイティグリップ」(ウレタン系接着剤)が好適である。該反応型硬化樹脂を用いることにより、反応硬化具合による増粘程度によって前記開孔模様形成用突起部7と凹凸模様形成用突起部8とを適宜形成しやすくなる。また、該硬化性樹脂は、該メッシュベルト上に固着するものであり、この固着力はスパンレース不織布製造時において支障のない程度の最低限の固着力が確保されていればよく、ある程度以上の力にて剥離可能な樹脂が好ましい。このような樹脂としては例えば上記「マイティーグリップ」がある。こうした樹脂を採用することにより、剥がした跡のメッシュベルト表面を傷付けたり、少量の樹脂を残存したりすることがなく、ベルト基布の再利用が可能となる。また、意匠模様の変更や、該意匠模様を構成する突起部の大きさや高さ、形状を選択的に適宜形成可能なものとすることができる。こうして自在に突起部形状を変えることにより、前記開孔部と凹凸部の混在比率も自在に調整可能となり、形成される不織布の意匠形成相当部分は繊維集合体が存在しない開孔部、繊維集合体が粗な凹凸部、繊維集合体が密なグランド部の3段階の不織布形態を部分的に発現し、例えば衛生材料用途においてその表面材として使用することにより、該意匠部分から体液等が拡散しやすい通液性に優れた不織布と成り得る。本発明は、このように不織布面の任意の位置に任意の意匠模様が自在に容易に形成可能なものとなり、且つ意匠模様を構成する開孔模様部と凹凸模様部とを任意選択的に混在可能なものとすることにより、不織布自体の通液性等の不織布特性をも制御可能なものとなる。
【0021】
また、意匠模様開孔シートとしては、所望の意匠模様に応じた開孔模様を細工する際に、また該開孔シート上に硬化製樹脂をコーティング後に上方に取り除く際に、割れたり伸びたりしない素材のものを適宜採用することが出来る。例えば、穴開け用ポンチやカッターナイフ等にて容易に開孔模様が細工できる塩化ビニル等のプラスチックシートが手間がかからず好適である。また該シートの厚みは、メッシュベルト基布9上に立体的に硬化性樹脂を固着させ、且つスパンレース不織布製造時に開孔模様部と凹凸模様部を形成する上で上記粘度と共に重要なファクターであり、その厚みを0.2〜9mmとすることが好ましい。0.2mm以下であると、得られる意匠模様が不鮮明となるのみならず、前記尖状突起部の成形性に劣り開孔部形成が困難となる。また9mmを越えると不織布自体に皺が発生しやすく、意匠模様自体が崩れたものとなりやすい。より好ましくは0.4〜5mmである。また形成する開孔部の開孔径としては0.5mm以上が好ましい。0.5mm未満であるとメッシュベルトとの接着性に劣るのみならず、前記尖状突起部の形態安定性に欠け、突起部自体が傾いたり、先端部分が釣り針状に折れ曲がったりし易くなり、不織布製造時に繊維集合体に引っかかり、不織布とメッシュベルトとの剥離性が悪くなり、工程トラブルの原因や不織布表面に無用な毛羽立ち発生といった不織布欠点が発生し易くなる。
【0022】
以上、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造に種々の変更を加えてもよいことはいうまでもない。
【0023】
【実施例】
本発明を上記実施の形態にて説明した部分を含め、以下の実施例、比較例を以てより具体的に説明する。尚、本実施例による通気度測定は、JIS L 1096 6.27.1(A法)による。
【0024】
(実施例1) 厚み0.4mmの塩化ビニルシートに、2種類の穴開けポンチ及びカッターナイフを使用して、大小花弁部と細長形状の茎部からなる花柄の意匠模様図に沿って該シートに複数の開孔部13を形成し、該複数の開口部からなる意匠模様開孔部を形成した意匠模様開孔シート11を準備し、次ぎに、これを線径0.15mmのポリエステルモノフィラメントを経糸と緯糸に使用して綾織組織にて織成された90メッシュのメッシュベルト9上に載せ、次ぎにイーテック社製のウレタン系接着剤「マイティーグリップ」を使用し、イソシアートプレポリマーを主成分とした主剤とポリオールを主成分とした硬化剤とを1.5:1の混合割合で均一に混合した2液反応型硬化性樹脂12を準備し、これを図8(1)に示すように、ベルト9上に載置されている開孔シート11上にコーティング板14にて該硬化性樹脂12をコーティングし、該開孔シート11に予め形成された開孔部13に該硬化性樹脂を充填させ、該硬化性樹脂の粘度が2液反応硬化により徐々に増粘することをB型粘度計(東機産業社製)にて確認しながら粘度が約60000cpsになった時に、図8(2)に示すように開孔シート11を上方に持ち上げ、該ベルト9上に凹凸模様形成用突起部8と開孔模様形成用突起部7とを同時に立体的に固着させ、これを24時間放置し硬化性樹脂を固化させて、図6に示すような本発明の意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルト10を得た。得られたメッシュベルト10上に固着された各突起部の縦断面形状は、図7に示すように凹凸模様形成用突起部8はその縦断面が非尖状(8a部参照)で、開孔模様形成用突起部7はその縦断面が尖状(7a部参照)であった。形成された各突起部寸法は、開孔形成用花弁部7bの直径が約3.1mm、その高さが0.6〜0.8mmで、凹凸形成用花弁部8bの直径が約2.0mm、その高さが0.4〜0.6mm、凹凸形成用茎部8cは幅約1〜1.5mm、長さ約7〜8mm、その高さが0.4〜0.6mmであった。
【0025】
次ぎに、レーヨン繊維(繊度1.65dtex、繊維長40mm)からなる目付40g/m2 のパラレルカード揚がりウエブを、上記メッシュベルト10を採用して公知のスパンレース不織布製造方法にてスパンレース不織布化し、脱水、乾燥して、本発明の意匠模様入りスパンレース不織布1aを得た。該不織布1aは、目付が40g/m2 、厚みが0.47mm、通気度が320cc/cm2 /secであった。また該不織布表面は、図1に示す通り意匠模様部2とグランド部3とから成り、該意匠模様部2が開孔模様部4と凹凸模様部5とが混在して形成され、平面視個々の開孔部が個々の凹凸部より小さく、且つ個々の開孔部の輪郭部分を構成する繊維集合体の密集度と個々の凹凸部の輪郭部分を構成する繊維集合体の密集度が、グランド部を構成する繊維集合体の密集度より密になっていることにより各部が鮮明に視認されるものであった。また該凹凸部の底面部分はブリッジ状の複数の繊維束が横たわって底面を形成しており、グランド部を構成する繊維集合体の密集度に比し粗であった。(これは不織布の下に黒色紙を敷いて、不織布各部を構成する繊維集合体の密集度が密な部分程その色合いが白く、密集度が粗な程その色合いが黒ずみ、開孔部は該色紙の黒色が直接視認されることから判断したもの。)
【0026】
(実施例2) 実施例1において、ベルト9を線径0.5mmのポリエステルモノフィラメントを経糸と緯糸に使用して平織り組織にて織成された16メッシュのメッシュベルトを使用した以外は同様とし、本発明の意匠模様入りスパンレース不織布1bを得た。該不織布1bは、目付が40g/m2 、厚みが0.48mm、通気度が340cc/cm2 /secであった。得られた該不織布1bの平面写真を図2に示す。また図2の意匠模様部2の拡大写真を図3に示す。さらに図4及び図5はその構成を図式化したものである。
【0027】
前記不織布1aと前記不織布1bとの違いは、図1と図2の対比にて明らかなように、意匠模様以外のグランド部が小開孔表面タイプか非開孔表面タイプかの違いであり、いずれも意匠模様部が鮮明に視認されるものであった。また触感にて風合いを確認するも、スパンレース不織布特有のソフト感や風合いは変わらないものであった。
【0028】
(比較例1) 実施例1において、意匠模様開孔シートの厚みを0.2mmとし、硬化性樹脂にイーテック社製の「マイティーライト」を使用し、その粘度を10000cps未満とした以外は同様とし、意匠模様入りスパンレース不織布1cを得た。該不織布1cは、目付が40g/m2 、厚みが0.42mm、通気度が260cc/cm2 /secであった。尚、比較例1で得られた意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトの断面を実施例1の図7に対比させると図10に示す通りであり、いずれの突起部も縦断面形状がなだらかなドーム状の非尖状(8a部参照)で、突起部の高さはいずれも約0.2mm弱であった。得られた意匠模様入りスパンレース不織布1cは、図9に示す通り、大小花弁部、茎部のいずれもが凹凸模様で以て形成され、意匠模様自体が不鮮明なものであった。また開孔部が形成されていないため実施例1に比べ通気性に劣るものであった。
【0029】
【発明の効果】
本発明により、スパンレース不織布特有のソフト感・風合いを低下させることなく、不織布表面によりメリハリがあってバランスの取れた独特の意匠模様を付与することができ、且つ鮮明な視認し易い意匠模様と成り得る。またエンボス処理等の加工工程を経ず公知のスパンレース法によって開孔部と凹凸部とを同時に形成可能とするため経済的である。また開孔模様部と凹凸模様部との柄合わせをする必要もないため、複雑な意匠模様であっても任意の位置に所定の開孔模様部と凹凸模様部とを混在させて任意の意匠模様を形成可能となり得る。また、本発明では、開孔部と凹凸部の混在比率を自由に調整可能であり、通気性、通液性等に代表される不織布特性を意匠模様に制限されることなく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の意匠模様入りスパンレース不織布の一形態(1a)を示す平面写真である。(グランド部が非開孔表面タイプのものを例示)
【図2】 本発明の意匠模様入りスパンレース不織布の一形態(1b)を示す平面写真である。(グランド部が小開孔表面タイプのものを例示)
【図3】 図2の意匠模様部の開孔模様部と凹凸模様部を説明するための拡大平面写真である。
【図4】 図3の開孔部、凹凸部を説明するためのハッチング入り説明図である。
【図5】 図4のc−c断面を説明するための断面略図である。
【図6】 本発明の意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトの一部平面写真である。
【図7】 図6のd−d矢視断面を説明するための断面略図である。
【図8】 本発明のメッシュベルト上に開孔模様形成用突起部と凹凸模様形成用突起部を同時に形成する方法を説明するための概念図である。
【図9】比較例1で得られた意匠模様入りスパンレース不織布1cの平面写真である。
【図10】比較例1で使用した意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトの突起部形状を説明するための断面略図である。
【符号の説明】
1 意匠模様入りスパンレース不織布
1c 凹凸模様による意匠模様入りスパンレース不織布
2 意匠模様部
3 グランド部
3a グランド部の開孔部
3b グランド部の非開孔部
4 開孔模様部
4a 開孔模様部の開孔部
4b 開孔模様部を形成している開孔部の輪郭部分
5 凹凸模様部
5a 凹凸模様部の凹部底面部分
5b 凹凸模様部を形成している凹凸部の輪郭部分
6 意匠模様形成用突起部
7 開孔模様形成用突起部
7a 縦断面尖状突起部
7b 開孔形成用花弁部
8 凹凸模様形成用突起部
8a 縦断面非尖状突起部
8b 凹凸形成用花弁部
8c 凹凸形成用茎部
9 メッシュベルト基布
10 意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルト
11 意匠模様開孔シート
12 硬化性樹脂
12a 意匠模様開孔シートに充填された硬化性樹脂
12b メッシュベルト上に立体的に固着された硬化性樹脂
13 意匠模様開孔シートに形成された開孔部
14 コーティング板
Claims (3)
- ベルト本体の不織布成形面側に不織布面の任意の位置に所定の意匠模様を形成するための意匠模様形成用突起部が固着されたスパンレース不織布製造用メッシュベルトの製造方法であって、メッシュベルト本体の表面に予め所定の複数の開孔部からなる意匠模様開孔部を形成した意匠模様開孔シートを載せ、該意匠模様開孔シート上に硬化性樹脂をコーティングし、該意匠模様開孔部に該硬化性樹脂を充填させた後、該硬化性樹脂が固化する前に該意匠模様開孔シートを該メッシュベルトから上方に向かって取り除き、該メッシュベルト表面上に該意匠模様開孔部に充填された硬化性樹脂を立体的に固着させることにより意匠模様形成用突起部を形成することを特徴とする意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトの製造方法。
- 意匠模様形成用突起部が、不織布表面に開孔模様を形成するための開孔模様形成用突起部と凹凸模様を形成するための凹凸模様形成用突起部とが混在して形成され、意匠模様開孔シートをメッシュベルトから上方に向かって取り除く際に該開孔模様形成用突起部と該凹凸模様形成用突起部とを同時に形成することを特徴とする請求項1記載の意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトの製造方法。
- 硬化性樹脂が反応型硬化性樹脂であり、該硬化性樹脂の粘度が10000〜200000cpsの状態まで反応硬化してきた後にコーティング又は意匠模様開孔シートを上方に向かって取り除くことにより、高低差及び/又は縦断面形状差のある突起部が混在した意匠模様形成用突起部を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の意匠模様入りスパンレース不織布製造用メッシュベルトの製造方法。
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