JP4116402B2 - X線発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にX線非破壊検査のためのX線源として用いられるX線発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のX線発生装置には、二段コイル型(例えば、特許文献1参照)や単コイル型(例えば、特許文献2参照)といった構造を有するものがある。二段コイル型のX線発生装置は、コンデンサコイルとオブジェクトコイルという2つの電磁コイルを用いて、電子銃から出射された電子ビームをターゲットに集束させ、このターゲットからX線を放出させるものである。このような二段コイル型のX線発生装置によれば、ターゲット上における電子ビームの集束径を小さくすることができ、X線による解像度を向上させることが可能である。
【0003】
一方、単コイル型のX線発生装置は、1つの電磁コイルを用いて電子ビームをターゲットに集束させるものである。このような単コイル型のX線発生装置によれば、装置の小型化、操作の容易化を図ることができ、しかも、電子ビーム利用率(電子銃から出射された電子ビームのうちターゲットに到達する割合)が高いため、ターゲット電流を増加させることが可能である。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−124899号公報
【特許文献2】
特開2000−277042号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、二段コイル型のX線発生装置にあっては、電子ビーム利用率が低下するため、ターゲット電流を増加させることが一般的に困難である。また、単コイル型のX線発生装置にあっては、通常、二段コイル型に比べてターゲット上における電子ビームの集束径が大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ターゲット電流の低下を抑えつつ、ターゲット上における電子ビームの集束径を小さくすることのできるX線発生装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るX線発生装置は、電子銃から出射された電子ビームをターゲットに入射させて、ターゲットからX線を放出させるX線発生装置であって、磁性材料により形成され、電子銃とターゲットとの間に配置されて電子ビームが通過する内筒部と、内筒部を包囲する電磁コイルと、磁性材料により形成され、電磁コイルを包囲する外筒部と、内筒部とターゲットとの間に配置され、ターゲットを保持する保持部材とを備え、保持部材は、導電性且つ磁性材料により形成され、内筒部及び外筒部から離間すると共に、電磁コイルにより生じる磁束が通過する磁気回路を内筒部及び外筒部とにより構成することを特徴とする。
【0009】
このX線発生装置は、電子銃とターゲットとの間において電磁コイルによる電子レンズを形成することで、電子銃から出射された電子ビームをターゲットに集束させる。このX線発生装置において、ターゲットを保持する保持部材は、磁性材料により形成されて、電磁コイルの磁気回路の一部を構成している。そのため、保持部材が非磁性材料により形成された場合に比べ、ターゲットと電子レンズのレンズ中心との距離を短くすることができ、ターゲット上における電子ビームの集束径を小さくすることが可能になる。しかも、ターゲットとレンズ中心との距離を短くすることで焦点径の縮小化を図っているため、電子ビーム利用率の低下を防止することができ、ターゲット電流を維持することが可能になる。さらに、保持部材は、導電性を有すると共に内筒部及び外筒部から離間しているため、グランド電位である内筒部及び外筒部に対する保持部材の電位を測定することで、ターゲット電流を検出することが可能になる。
【0010】
また、本発明に係るX線発生装置においては、内筒部と保持部材との間に、非磁性材料により形成されたスペーサを介在させることが好ましい。磁気回路を構成する内筒部と保持部材との間に非磁性材料からなるスペーサを介在させることで、電子レンズとしての機能を適正に発揮させることが可能になる。
【0011】
また、本発明に係るX線発生装置においては、スペーサは、電気的絶縁性材料により形成され、保持部材は、スペーサ上に載置されることが好ましい。これにより、内筒部及び外筒部との電気的な絶縁性を維持して、内筒部及び外筒部から離間した所定の位置に保持部材を確実且つ容易に設置することが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るX線発生装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1に示すように、X線発生装置1は、ターゲットユニットTや電子銃2のフィラメントFの交換が可能な開放型と称されるものである。このX線発生装置1は、電子銃2を収容する円筒形状の本体部3を有し、この本体部3の前端部(すなわち、電子銃2から出射される電子ビームEの進行方向側の端部)には、本体部3に対して着脱自在な円筒形状の開放部6がヒンジ部4を介して傾動自在に接続されている。よって、このヒンジ部4を介して開放部6を横倒しにすることで、本体部3の前端部を開放させることができ、フィラメントFを交換することが可能になる。
【0014】
開放部6は円筒形状の内筒部8を有し、この内筒部8には、電子ビームEの出射方向に延在する電子通路7が形成されたステンレス製のパイプ部材9が挿入されている。この電子通路7の後端は本体部3内と連通しており、これにより、電子銃2から出射された電子ビームEは、電子通路7を通過することになる。さらに、内筒部8は、アルミニウム製のボビン11にエナメル線を巻き付けてなる電磁コイル12によって包囲され、この電磁コイル12は外筒部13によって包囲されている。
【0015】
この外筒部13は、後端部において内筒部8と一体的に接続された断面L字状の第1の外筒部13aと、この第1の外筒部13aの前端部に固定ネジ14により接続された円錐台形状の第2の外筒部13bとを有している。これらの内筒部8及び外筒部13は、軟鉄等の磁性材料により形成されて、電磁コイル12により生じる磁束が通過する磁気回路の一部を構成する。
【0016】
図2に示すように、内筒部8の前端側の開口部には、ステンレス、真鍮或いは銅等の非磁性材料からなるアパーチャ部材17が挿入されており、このアパーチャ部材17によって、電子通路7を通過してきた電子ビームEの周辺部分がカットされる。アパーチャ部材17の前端部は、内筒部8の前端面8aから突出しており、この突出部分17aには、フランジ部(スペーサ)17bが一体的に形成されている。このフランジ部17bは、第2の外筒部13bの前端側の開口部を塞いで、固定ネジ18により第2の外筒部13bに固定されている。
【0017】
さらに、フランジ部17b上には、セラミックス等の電気的絶縁性材料からなるリング形状の絶縁部材19が載置され、この絶縁部材19上には、ターゲットユニットTを保持する円板形状の保持部材21が第2の外筒部13bの前端部上に達するよう載置されている。このように内筒部8と保持部材21との間にフランジ部17b及び絶縁部材19を介在させることで、保持部材21を内筒部8及び第2の外筒部13bから離間させ、第2の外筒部13bと保持部材21との間に隙間Sを生じさせている。
【0018】
この保持部材21は、アパーチャ部材17を通過した電子ビームEをターゲットユニットT側に通過させるための電子通過孔21aを有すると共に、固定ネジ22により第2の外筒部13bに固定されている。このとき、第2の外筒部13bと固定ネジ22との間にベークライト等の電気的絶縁性材料からなる円筒形状の絶縁カラー23を介在させることで、固定ネジ22を通じた第2の外筒部13bと保持部材21との間の電気の流れを絶っている。
【0019】
また、保持部材21は、軟鉄等の導電性且つ磁性材料により形成されると共に、内筒部8及び外筒部13と協働して、電磁コイル12により生じる磁束が通過する磁気回路を構成する。この磁気回路においては、第2の外筒部13bと保持部材21との間の隙間Sにより磁界のロスが生じるが、面同士を対向させて両者の対向部分の面積を広くとり、隙間Sを1mm程度と狭くすることで、磁界のロスを最小限に抑えている。
【0020】
さらに、保持部材21上には、ターゲットユニットTが載置されている。このターゲットユニットTは、保持部材21に当接する薄板状のステンレス製固定枠26を有し、この固定枠26には、ベリリウム製のX線出射板27が固定されている。このX線出射板27の裏面(後面)には、タングステンターゲット28が形成され、このターゲット28は、保持部材21の電子通過孔21aに臨んでいる。したがって、ターゲット28は、固定枠26及びX線出射板27を介して保持部材21により保持されることになる。また、ターゲットユニットTは、保持部材21の側面に螺合する袋ナット状のキャップ29により着脱自在とされている。
【0021】
なお、X線発生装置1の動作時には、本体部3内や電子通路7等の電子ビームEが通過する空間を真空引きする必要があるため、図1及び図2に示すように、本体部3と開放部6との間、アパーチャ部材17とパイプ部材9との間、フランジ部17bと絶縁部材19との間、絶縁部材19と保持部材21との間、及び保持部材21と固定枠26との間等には、気密用のOリング31が配されている。
【0022】
以上のように構成されたX線発生装置1においては、動作時に電磁コイル12により電子レンズが形成されて、電子銃2から出射された電子ビームEがターゲット28に集束され、ターゲット28からX線出射板27を介して前方にX線が放出される。このX線発生装置1において、ターゲット28を保持する保持部材21は、磁性材料により形成されて、電磁コイル12の磁気回路の一部を構成している。そのため、保持部材21が非磁性材料により形成された場合に比べ、ターゲット28は磁気回路に近接することになり、ターゲット28と電子レンズのレンズ中心C(図2参照)との距離を短くすることができる。したがって、ターゲット28上における電子ビームEの集束径を小さくすることが可能になる。
【0023】
これは、ターゲット28上における電子ビームEの集束径が、フィラメントFとレンズ中心Cとの距離及びレンズ中心Cとターゲット28との距離に依存し、フィラメントFとレンズ中心Cとの距離に対してレンズ中心Cとターゲット28との距離を短くすると、電子ビームEの焦点径を小さくすることができるからである。
【0024】
しかも、ターゲット28とレンズ中心Cとの距離を短くすることによって集束径を小さくしているため、電子銃2から出射された電子ビームEのうちターゲット28に到達する割合である電子ビーム利用率の低下を防止することができ、ターゲット電流を維持することが可能になる。
【0025】
さらに、保持部材21は、導電性を有すると共に内筒部8及び第2の外筒部13bから離間しているため、グランド電位である内筒部8及び外筒部13に対する保持部材21の電位を測定することで、ターゲット電流を検出することが可能になる。
【0026】
また、X線発生装置1においては、磁気回路を構成する内筒部8と保持部材21との間に非磁性材料からなるフランジ部17bを介在させているため、電子レンズとしての機能を適正に発揮させることが可能になる。
【0027】
[第2の実施形態]
次に、上記X線発生装置1とターゲットユニットTの周辺構成を異にするX線発生装置10について説明する。なお、図面の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
図3に示すように、X線発生装置10において、内筒部8の前端側の開口部には、セラミックス等の電気的絶縁性且つ非磁性材料からなる円筒形状の連結部材33が挿入されている。この連結部材33の前端部は、内筒部8の前端面8aから突出しており、この突出部分33aには、フランジ部(スペーサ)33bが一体的に形成されている。このフランジ部33bは、第2の外筒部13bの前端側の開口部を塞いで、固定ネジ18により第2の外筒部13bに固定されている。また、連結部材33内には、ステンレス等の非磁性材料からなるアパーチャ部材17が挿入され、セラミックス等の電気的絶縁性且つ非磁性材料からなる固定リング34により固定されている。
【0029】
さらに、連結部材33のフランジ部33b上には、ターゲットユニットTを保持する円板形状の保持部材21が第2の外筒部13bの前端部上に達するよう載置されている。このように内筒部8と保持部材21との間にフランジ部33bを介在させることで、保持部材21を内筒部8及び第2の外筒部13bから離間させ、第2の外筒部13bと保持部材21との間に隙間Sを生じさせている。
【0030】
この保持部材21は、軟鉄等の導電性且つ磁性材料により形成されると共に、内筒部8及び外筒部13と協働して、電磁コイル12により生じる磁束が通過する磁気回路を構成する。このとき、第2の外筒部13bと保持部材21との間の隙間Sによる磁界のロスを最小限に抑えるため、互いに面同士を対向させてそれぞれの対向部分の面積を広くとり、隙間Sを1mm程度と狭くしている。
【0031】
そして、上記X線発生装置1と同様に、保持部材21上にはターゲットユニットTが載置され、固定キャップ29により着脱自在とされている。なお、X線発生装置10においては、本体部3と開放部6との間、連結部材33とパイプ部材9との間、フランジ部33bと保持部材21との間、及び保持部材21と固定枠26との間等にOリング31が配され、電子通路7等の気密性が確保されている。
【0032】
以上のように構成されたX線発生装置10においては、フランジ部33bが電気的絶縁性且つ非磁性材料により形成され、このフランジ部33b上に保持部材21が載置されるため、内筒部8及び第2の外筒部13bとの電気的な絶縁性を維持して、内筒部8及び第2の外筒部13bから離間させた所定の位置に保持部材21を確実且つ容易に設置することが可能になる。これにより、グランド電位である内筒部8及び外筒部13に対する保持部材21の電位を測定してターゲット電流を検出することが可能になる。しかも、内筒部8と保持部材21との間に非磁性材料からなるフランジ部33bを介在させるため、電子レンズとしての機能を適正に発揮させることが可能になる。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上述したX線発生装置1,10はいずれも単コイル型の構造を有するものであったが、本発明は、二段コイル型のX線発生装置にも適用可能である。この場合にも、ターゲット電流を維持しつつ、ターゲット上における電子ビームの集束径のさらなる縮小化を図ることができる。換言すれば、ターゲット上における電子ビームの集束径を従来と同程度に維持して、ターゲット電流を増加させることが可能になる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るX線発生装置によれば、ターゲット電流の低下を抑えつつ、ターゲット上における電子ビームの集束径を小さくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るX線発生装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すX線発生装置の要部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に係るX線発生装置の他の実施形態の要部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1,10…X線発生装置、2…電子銃、8…内筒部、12…電磁コイル、13…外筒部、13a…第1の外筒部、13b…第2の外筒部、17…アパーチャ部材、17b…フランジ部(スペーサ)、21…保持部材、28…ターゲット、33…連結部材、33b…フランジ部(スペーサ)、E…電子ビーム、T…ターゲットユニット。
Claims (6)
- 電子銃から出射された電子ビームをターゲットに入射させて、前記ターゲットからX線を放出させるX線発生装置であって、
磁性材料により形成され、前記電子銃と前記ターゲットとの間に配置されて前記電子ビームが通過する内筒部と、
前記内筒部を包囲する電磁コイルと、
磁性材料により形成され、前記電磁コイルを包囲する外筒部と、
前記内筒部と前記ターゲットとの間に配置され、前記ターゲットを保持する保持部材とを備え、
前記保持部材は、導電性且つ磁性材料により形成され、前記内筒部及び前記外筒部から離間すると共に、前記電磁コイルにより生じる磁束が通過する磁気回路を前記内筒部及び前記外筒部とにより構成することを特徴とするX線発生装置。 - 前記内筒部と前記保持部材との間に、非磁性材料により形成されたスペーサを介在させることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
- 前記スペーサは、前記電子ビームの周辺部分をカットするアパーチャ部材に一体的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のX線発生装置。
- 前記保持部材は、スペーサ上に載置された絶縁部材上に載置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のX線発生装置。
- 前記保持部材は、固定ネジにより前記外筒部に固定されており、
前記外筒部と前記固定ネジとの間には、電気絶縁性材料により形成された絶縁カラーが介在させられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のX線発生装置。 - 前記スペーサは、電気的絶縁性材料により形成され、
前記保持部材は、前記スペーサ上に載置されることを特徴とする請求項2に記載のX線発生装置。
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