JP4115088B2 - インサートに付着している乾燥ゲルを製造するためのゾル−ゲル法およびこれによって得られる製品 - Google Patents
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Description
発明の関する技術分野
本発明は、非圧縮性のインサートを有する製品を製造するためのゾル−ゲル法およびこれによって製造される製品に関する。
【0002】
特に本発明は、光ファイバーのためのプレフォームを製造するための方法およびこれによって製造されるプレフォームに関する。
【0003】
公知のとおり、光ファイバーは、異なった屈折率を有するガラス材料からなる少なくとも1つの中心部分と被覆部分とを有する。該ファイバーの2つの部分の間の屈折率の違いおよび光放射を該ファイバーの2つの部分の間の界面に衝突させる照角(the almost glancing angle)が、全反射の条件を決定し、これによって光放射は中心部分に制限される。屈折率におけるこの違いは、通常、該ファイバーの2つの部分の異なった化学組成によって達成され、かつ一般に屈折率の高い材料が中心部分にある。光ファイバーを製造するためにより一般的に使用される材料は、ファイバーの中心部分用には二酸化ケイ素/酸化ゲルマニウムの混合されたガラスであり、被覆用には高純度の二酸化ケイ素である。
【0004】
光ファイバーは、2つの同軸の円筒、つまり中心のコアと外側の被覆(それぞれ最終的な光ファイバーのコアとクラッドに相当する)とからなるいわゆる「プレフォーム」を紡糸することによって製造される。プレフォームの一般的な寸法は長さ約0.5〜1メートルの間で変化し、かつ直径は約5〜20センチメートルの間で変化する。コアの直径は、一般にプレフォームの全直径の約三分の一である。紡糸工程において、プレフォームを構成しているガラス状の酸化物の融点よりも低いが、しかし該プレフォームが軟化するためには充分な温度にプレフォームを加熱する。こうして、プレフォームを構成する部分の幾何学的関係を保持するためには充分な粘度でありながら、線引きによってファイバーを形成することができる程度の低い粘度を有する材料が得られる。
【0005】
発明の背景
通常、光ファイバーのためのプレフォームの製造は、すでに最終的な寸法と密度のガラス状コアから出発するが、該コアは、たとえば酸化物を溶融し、かつ引き続き固化させる通常の技術によって得られる。引き続き被覆の材料をコア上に堆積させるが、このためには一般に気相からの化学的な蒸着を行う「化学気相蒸着法」またはCVDとして従来技術で公知の技術を使用する。該方法は2種類以上の気体状の試薬を気相中、適切な温度で反応させることからなる。反応生成物が所望の材料である。光ファイバーの場合、四塩化ケイ素(SiCl4)および酸素を一般に使用し、以下の反応を行う:
SiCl4+O2→SiO2+2Cl2 (I)
こうして形成された二酸化ケイ素(SiO2)は、反応室中に存在するコア上に堆積する。このSiO2の被覆は最初は多孔質であり、その後の熱処理によって高密度化される。
【0006】
プレフォームの製造において長い間使用されているこの技術は、CVDのためのSiO2堆積段階が極めて長い時間を必要とするという欠点を有する。一般に、高密度化後に2cmとなる被覆厚さを得るためには約7時間を必要とする。
【0007】
この問題を克服するための、CVDに代わる技術が評価されてきた。特に一般に水アルコール溶液から出発することによってガラス状の材料が得られるゾル−ゲル技術は大いに研究されてきた。
【0008】
ゾル−ゲルという名称は一般に、手順の詳細または試薬の選択において異なる種々の幅広い方法を規定する。全てのゾル−ゲル法で次の段階は共通している:
− ゾルと呼ばれる水アルコール溶液中での、一般に前駆体と呼ばれており、Mカチオン(少なくとも三価および有利には四価)を有するMXn化合物の加水分解。そのガラス状酸化物を成形する必要がある。加水分解はM−OH基の形成につながる;
− 次の反応:
M−OH+M−OH→M−O−M+H2O (II)
によるM−OH基の重縮合。その際、ゲルと呼ばれる酸化物ポリマーが形成され、これは最初に溶液によって占有されていた体積全てを占有する。この段階は一般にゲル化と定義されている;
− ゲルを乾燥させて、乾燥した、多孔質のモノリスが得られ、その際、かさ密度(モノリスの幾何学的な体積で割った重さ)は、相応する非多孔質の酸化物の理論密度の1/12〜1/5の範囲内である。乾燥は、溶剤の蒸発を制御することによって行うことができ、従来技術において「キセロゲル」として公知のものが得られるか、または溶剤を超臨界抽出することによって「エーロゲル」が得られる;
− 熱処理による乾燥ゲルの可能な高密度化により、理論密度のガラス体が得られる。
【0009】
ゾル−ゲル技術は、光ファイバーのためのプレフォームを製造するための可能性を示している。というのは、これは比較的コストが低く、製造時間は製造するべきガラス体の寸法にほぼ無関係であり、かつ化学組成および最終的なガラス体の寸法を良好に制御できるからである。
【0010】
この技術はすでに、混合された二酸化ケイ素と酸化ゲルマニウム組成物の均質なガラスの中実な円筒体であるコアを製造するために使用されており、該コアはこの方法によって著しく簡単に得られる。
【0011】
中空の円筒体からなる被覆は、同一の容器の体積よりも小さい体積で円筒形の容器へゾルを挿入し、かつゲル化のために必要とされる全時間にわたって該容器をその軸を中心にして急速に回転させ、遠心力によってゾルを容器の円筒形の壁に付着させることによって、ゾル−ゲル法により容易に製造することができる。こうして得られたゲルは、遠心力の作用下に容器の内面に相応する円筒形の外面を有しており、かつ円筒形の内面はゾル自体の自由な平衡面に相応する。この方法によるガラス状の管状体の製造は、たとえばUS特許第4,680,045号に記載されている。
【0012】
US特許第4,775,401号は、その被覆がゾル−ゲル法により製造されており、かつ次いで別に製造されたコアの周囲で高密度化される光ファイバーのプレフォームを製造するための方法を記載している。
【0013】
ゾル−ゲル法によってコアと被覆とを別々に製造することが可能であるとしても、完全なプレフォームを製造するためのゾル−ゲル法が所望される。実際、2つの別々のボディから出発するプレフォームの形成は同じ問題、たとえば汚染粒子または気泡が、プレフォームを得るための高密度化の段階の間に2つの部分の間に閉じこめられる可能性を生む。これらの欠陥は、最終的な光ファイバー中に残り、かつ光の拡散源となるため、伝送における効率の損失という結果を招く。さらに、乾燥および高密度化の段階における2つの別々の部分の移動は、CVDによってコアの上に被覆を堆積させる場合に生じると同様に、プレフォームが一体化されたパーツからなる場合よりも困難である。
【0014】
しかし今日まで、すでに最終的な密度のコア上にゾル−ゲルによって被覆を堆積させることによって類似のプレフォームを製造することは不可能であった。その理由は、ゲル化段階において、シネレシスとして知られている現象が起こり、これによって形成中のゲルがゾルの体積と比較して、その体積を約1〜3%減少し、その際にその中心に向かって等方性の収縮が生じるからである。ゲルがその内部に、プレフォームの緻密なコアのような非圧縮性のボディを有している場合、半径方向での収縮は阻止されるが、しかし接線で生じるため、横方向の著しい牽引力が生じ、これはゲルの破壊につながる。
【0015】
US特許第4,786,302号は、シネレシスに対立する剛体に対するゲル化の問題を回避するプレフォームの全ての構成要素を製造するための方法を記載している。この方法によれば、第一の組成の中空円筒ゲルを、前記のUS特許第4,680,045号の方法によって遠心分離により製造する。第一の組成とは異なる第二の組成を有するゾルをこうして製造した中空の中へ注ぎ、かつゲル化させる。この方法で2つの同心の湿潤ゲルが得られ、次いで該ゲルを一緒に乾燥させ、かつ一緒に高密度化してプレフォームが得られる。しかしこの方法によってプレフォームの異なった部分のゲル化(およびそれぞれのシネレシス)の2つの段階が、連続する時間に生じる。特に(その内径が、湿潤ゲルが安定している寸法に達する)被覆のシネレシスが最初に起こる。引き続き、最初に外側のゲルの内径によって規定されている体積を占有する中空に第二のゾルを挿入するが、しかしシネレシスに引き続き、直径がわずかに小さいゲルが得られる。その結果、物理的に分けられた2つの同心体が得られるので、前記の不純物または気泡の存在による可能な問題は解決されない。
【0016】
従って、これまでの技術では、被覆がゾル−ゲル法によって直接コア上に製造され、コアと一体となっている光ファイバーのためのプレフォームを製造することは不可能である。
【0017】
本発明の課題は、非圧縮性のインサートを有する製品を製造するためのゾル−ゲル法を提供し、かつこの方法によって得られる製品、特に光ファイバーのためのプレフォームを提供することである。
【0018】
発明の開示
前記課題は本発明により、次の工程:
a)非圧縮性インサートを準備する工程、
b)該非圧縮性インサートを確実に固定された位置に保持し、容器の内面と該インサートの外面との間の空間を規定し、かつ該インサートの軸を中心として回転させることができる容器を準備する工程、
c)該インサートが該容器と一体となって回転するように、該容器の内部へ該インサートを固定する工程、
d)ゾルにより該空間を充てんする工程、
e)該ゾルが完全にゲル化するために必要な全時間にわたって該インサートの軸を中心として該ゾルおよび該インサートを含有する該容器を回転させる工程、
f)該容器を開き、かつ該非圧縮性インサートに付着している湿潤ゲルからなる複合材を取り出す工程、
g)該湿潤ゲルを乾燥させる工程
からなる、非圧縮性インサートを有する製品を製造するためのゾル−ゲル法によって解決される。
【0019】
発明者らは意外にも、従来公知であった技術に対して、ゲルの破壊を引き起こすシネレシスを生じることなく、非圧縮性のインサートの周囲にゾル−ゲルのためのボディを製造することが可能であることを発見した。
【0020】
特に、有利に正多角形の断面を有するインサートを使用する場合に最もよい結果が得られることが判明した。さらに有利には、該インサートの断面は円形である、つまり実質的に円筒形である。
【0021】
さらに、ゲル化のために必要とされる全時間にわたって、インサートが円形の断面を有する場合には同一のインサートの半径に依存して、あるいはインサートが正多角形の断面を有する場合には、多角形の断面上の内接および外接する円周の半径に依存して、予め規定された速度でインサートの対称軸を中心にしてゾルを回転させる場合に最もよい結果が得られることが判明した。その理由は不明であるが、しかしこれらの条件でシネレシスはゾルに作用する遠心力によって相殺されうると考えられる。
【0022】
有利にはラジアン毎秒(rad/s)で測定される角速度ωと、センチメートル(cm)で測定されるインサートの半径rとの積Pが約20〜約250rad×cm/sの範囲であるような速度で容器を回転させる。
【0023】
有利には、かつ特に光ファイバーのためのプレフォームを得る場合には、ゲルの乾燥を超臨界的な手段によって実施する。この場合、該手段の最後の操作は次の工程を有している:
− 容器を開いて、湿潤ゲルと非圧縮性インサートとからなる複合材を、液体を含有する浴中で、湿潤ゲルの表面が空気にさらされないように取り出す工程、
− 液体および複合材の湿潤ゲル/非圧縮性インサートとを含有する浴をオートクレーブ中に挿入する工程、
−超臨界的な条件で溶剤を抽出し、非圧縮性インサートを有する乾燥ゲルによって構成されている製品を得る工程。
【0024】
容器中でゲルを覆っており、かつゲルの同一の孔中に本来含有されている液体は、ゾル−ゲル合成において使用される前駆体に応じて変化しうるアルコール残留物を含有する水性の液体である。たとえば、エタノールはテトラ−エチル−オルト−シリケート(TEOS)の加水分解による一般的なアルコール残留物であり、ゾル−ゲル合成において最も広範に使用されているアルコキシドの一つである。
【0025】
特に、ゲルをその中で浸漬する浴および該ゲルの細孔の中の両方に存在する液体は、超臨界抽出のために適切な液体によって置換される。
【0026】
最終的に、上記の方法は最後の作業、つまり適切な熱処理による非圧縮性インサートの周囲の乾燥ゲルの高密度化によって完了することができる。
【0027】
図面の簡単な説明
ところで本発明を添付の図面を参照にして説明する。図面において、
− 図1は、本発明による方法において使用することができる容器の断面図であり、
− 図2は、本発明による方法により光ファイバーのためのプレフォームを製造するために適切な別の容器の断面図であり、
− 図3は、図2の容器中の非圧縮性インサートを固定する可能な手段の詳細を示しており、
− 4は、図1の容器を使用して本発明の方法により得られる製品の断面図であり、かつ
− 図5は、図2の容器を使用することによって得られる光ファイバー用のプレフォームを示す。
【0028】
本発明の実施方法
本発明の方法のために使用される容器は、ゾルと化学的に相容性があり、かつ変形または振動することなく高速回転の際の条件に耐えるために充分な機械的強度を有する任意の材料で製造することができる。
【0029】
ゾルは高い密度を有し、これは一般に約0.8〜1.6g/cm3の間で変動し、このために回転中の容器の側方部分のゲルによって働く圧力は高い。従って、金属は容器の製造のために有利な材料である。さらに、ゾルは一般的に、前駆体化合物MXnの加水分解を促進するために、少量の酸、一般にHClを含有する水アルコール溶液である。金属材料、たとえはスチールは、プラスチック材料、有利にはテフロン(Teflon (R))(デュポンの登録商標)の薄膜によって完全に被覆されており、従ってゾルによって容器の壁が化学的にエッチングされることを防止するために容器にとって有利である。プラスチック材料からなる内部の被覆を使用することは、容器の壁からの湿潤ゲルの分離も促進する。
【0030】
図1および2は、本発明による方法で使用される容器の2つの可能な実施態様を示す。
【0031】
図1は、容器の一般的な第一の実施形の断面図を示す。
【0032】
容器10は、主要な容器11およびカバー12からなり、該カバーはフランジ系統(図面に記載のとおり)によって、またはカバー12を容器11にねじ止めする(これらの2つの部分に適切な相互ねじが備えられている)ことによって、またはその他の公知の密閉法によって、容器11を密閉することができる。ガスケット(図面には記載されていない)、たとえばOリングタイプのものが、容器11およびカバー12の間の接触面の帯域に配置されており、これを使用して公知の方法により容器をさらに確実に密閉することができる。
【0033】
容器11およびカバー12は非圧縮性インサートを固定するための手段を有しており、これによって容器およびインサートが一体となってゲル化段階の間、回転するという条件が生じる。これらの固定手段は、多種多様である。図1は容器11の端部に存在する2つの歯12、13′、およびカバー12の中央にある2つの歯14、14′を示している。これらの歯は非圧縮性インサートの2つの底面の相応するリセスにかみ合う。しかし、歯およびリセスの数はこれよりも多くてもよいし、または別の位置にあってもよい(ただし容器およびインサートの位置は一致する)ことは明らかである。さらに、容器およびインサートを一体にして一緒に回転させることは、サイドロックによって確実にすることができ、これは図2を参照にして詳細に説明する。
【0034】
カバー12は、2つの同一の開口部15、15′を有しており、そのうちの1つを、その中にすでにゾルと共にインサートが存在する閉鎖された容器を充てんするために使用し、その一方でもう1つを、充てん中の空気抜きのために使用する。充てんが済んだら、任意の適切な部材によって2つの開口部を閉鎖する(たとえば金属プラグをねじ込むことによって)が、これは図面には記載されておらず、カバー上のその気密シールは、ガスケット(たとえばOリングタイプのもの)によって確実なものとなる。
【0035】
最後に、2つの部材16、16′を、非圧縮性インサートの軸の軸対称に配置されるように位置づけし、これによって該部材は、容器を回転させるために使用される装置(たとえば旋盤)へ該容器を固定するために使用される。図1にはこれらの部材がそれぞれ突出した六角形の突起部16として(断面図ではなく平面図で)示されており、これは旋盤のチャックによってつかまれ、かつ中空部材16′(断面図を参照のこと)として、同一の旋盤の心押し台を受けとめる。図1はまた、非圧縮性インサートのアウトラインを破線によって示しており、これはインサートの外面と容器の内面との間の空間17を規定する。
【0036】
図2は、光ファイバーのプレフォームを製造するために適切な容器の断面図を示す。この場合、容器20は、円筒形であり、かつ主要な容器21およびカバー22からなる。この場合にはまた、容器21およびカバー22が、フランジによって接続されている図面において示されているが、しかしこれらは任意の公知の手段によって気密に接続してもよい。容器21およびカバー22の円筒形の底面は、容器の対称軸に対応して穿孔されている。
【0037】
この場合、非圧縮性インサートを容器中に固定するためのシステムを構成する、適切な直径のSwagelok(登録商標)リンク23e23′を、これらの孔に挿入する。またこの場合、図2はインサートのアウトラインを破線で示しており、これは容器の内壁との空間26を規定する。アメリカ、OH、Solon在Swagelok社から製造および販売されているSwagelok(登録商標)リンクは、広く知られており、かつ特にガスラインの連結部および接合部のために使用されており、かつ内径約1mm〜約45mmで入手可能である。この適用のためには、特に、通常は熱電対のために使用される「ボアード−スルー(Bored-Through)」タイプのリンクの使用が有利である。これらのリンクによってインサートを固定する方法を以下に記載する。容器10の場合は通常、カバー22が、ゾルによって空間26を充てんし、かつこの操作中に空気を抜くための開口部24、24′を有している。
【0038】
カバー22および容器21の円筒形の底面は、容器を回転させるために使用される装置へ接続するための部材(たとえば六角形の平坦な部材、そのうちの1つだけを図2に部材25として示す)であってもよく、これは種々の方法で(たとえばねじによって)容器21およびカバー22に固定することができ、かつリンク23および23′のための保護機能を有していてもよい。
【0039】
図3は、たとえばカバー22上に存在するリンクを用いてSwagelok(登録商標)リンクによってインサートを固定し、かつ芯出しする方法を示す。リンク23は主要部31からなり、カバー22にねじ止めされている(単純化のために、リンクとカバーとの間のねじ部分は図面で示されていない)か、または必要な場所では溶接されている。部分31の帯域32にはねじ切りが施されている。
【0040】
非圧縮性インサート33を部分31のスルーホールへと挿入し、かつフェルール34(これは金属、たとえばスチールまたは銅製であってもよいし、ポリマー材料、たとえばテフロン (R)またはナイロン製であってもよい)を前記インサート上で移動させて部分31と接触させる。ナイロンまたは銅がフェルールには有利である。
【0041】
最後に雌ねじを有する部分35を挿入し、かつ帯域32上のねじ山により部分31にねじ止めする。部分31上に部分35をねじ止めすることによって、フェルールは変形し、かつインサート33へと圧縮され、インサートを固定し、かつ容器の軸に対して芯出しする。
【0042】
本発明による方法において使用される容器は、ここで記載されるものとは形や構造の詳細が異なっていてもよい。しかし、このような容器の全ての構成要素(歯、リセス、バルブなど)を回転軸を中心として対称的に配置して、高速回転の間に、加重を均等に分布させ、かつ容器の可能な震動源を排除することが重要である。
【0043】
非圧縮性インサートは、最終的な製品の目的によって任意の材料から作られていてもよい。有利にはインサートは、ゲルへの付着がわずかなプラスチックであってはならない。エーロゲルが必要な場合、オートクレーブ中での超臨界乾燥の操作が必要であり、かつインサートの材料は、複合材である湿潤ゲル/インサートがその中で浸漬されている液体の超臨界条件に抵抗性でなくてはならない。これらの条件は、液体が液体CO2である約40℃の温度から、低級アルコールの場合には約300℃まで変化する。
【0044】
最後に、最終的な乾燥ゲル高密度化処理が予定されるところで、一般に800℃〜1400℃の間で変化する温度が必要とされ、かつインサートを製造する材料は、これらの温度に耐えなくてはならず、ひいては、たとえば金属、融点の高いガラスまたはセラミックでなくてはならない。
【0045】
光ファイバーを製造する場合、非圧縮性インサートは、その他の元素の酸化物が添加された混合されたシリカベースのガラスからなる緻密な円筒体である。インサートガラスの一般的な化学組成は次の通りである:SiO2−GeO2、SiO2−P2O5−GeO2、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、SiO2−GeO2−Ln2O3、SiO2−P2O5−GeO2−Ln2O3、SiO2−Al2O3−Ln2O3およびSiO2−TiO2Ln2O3、この場合、Lnは、ランタノイドの任意の元素を表す。
【0046】
非圧縮性インサートを、図1の容器11(または図2の容器21)へ挿入し、次いでここへカバー12(または22)を固定し、かつ密閉し、かつインサートを容器に固定して、歯およびリセス13、13′、14および14′を一致させるか、または図2に示した容器を参照にして前記で説明したSwagelok(登録商標)リンクにより、これら2つを一つにして回転させる。
【0047】
次いで容器11(または21)の内壁およびインサートによって規定されている空間17(または26)をゾルによって充てんする。ゾルの製造に関しては、豊富な専門文献、その中でもたとえば上記の特許を参照されたい。ゾルは任意の化学組成を有していてもよいが、しかし、光ファイバーのためのプレフォームを製造する場合、これはできる限り高純度のSiO2が形成されるように行う。該容器を、図1のカバー12上の孔15または15′の1つを介してゾルで充てんするか、または図2のカバー22上の24または24′の1つを介して充てんする。空気抜き孔(たとえば、孔15を介して充てんする場合には孔15′)の存在は、利用可能な体積の完全な充てんを保証する。
【0048】
カバー上の開口部15および15′(または24および24′)を密閉した後で、インサートの軸を中心として回転させることを可能にする装置(たとえば旋盤)に容器を設置する。有利には回転軸は水平である。
【0049】
容器を予め設定された回転速度で、有利には約30秒〜1分の間の時間、回転させる。回転の角速度ωは、式:
P=ω×r
により、かつωをラジアン毎秒(rad/s)で、およびrをセンチメートルで測定する際に、Pの値は約20〜250rad×cm/sであるようにインサートの半径rと相関させる。上で規定した範囲以外のPの値では、ゲルは破損する。その理由は明らかではないが、これは約20rad×cm/sよりも低い値では、形成中にゲルに作用する遠心力がシネレシスを相殺するために充分ではなく、その一方で、約250rad×cm/sを越える値ではシステム中でおそらく振動が生じ、形成中のゲルの機械的安定性を危うくするのだと考えられる。ゲルを含有している容器を回転させておかなくてはならない全時間は少なくとも、同一の組成のゾルが完全にゲル化し、かつそのシネレシスを終える時間に等しい。この時間はゾルの化学組成、特にそのpHに依存し、かつ静止状態でゲル化する同一のゾルのサンプルのパラレル試験によって決定することができる。というのも、回転はゲル化時間を変化させないからである。
【0050】
回転の終了時に、容器を開けて非圧縮性インサートに付着している湿潤ゲルからなる複合材を取り出す。この複合材のゲル部分を、前記のとおり、キセロゲルが所望されるか、またはエーロゲルが所望されるかによって異なった方法によって乾燥させることができる。キセロゲルを得るためには一般に、溶剤蒸発パラメータを制御する、たとえばUS特許第4,660,046号ですでに引用されて記載されているように、ゲルをミクロ細孔容器へ挿入することによって蒸発時間を制限する必要がある。
【0051】
本発明によれば、有利には超臨界的な方法でゲルを乾燥させ、エーロゲルが得られる。この場合、孔からの溶剤の最低限の蒸発さえも回避するために、湿潤ゲルを決して大気にさらしてはならない。溶剤の蒸発はゲルの表面破壊につながりうる。従って容器を開けて、複合材湿潤ゲル/非圧縮性インサートを取り出すことは、ゲルの孔中に存在する液体と同一か、または異なる液体を含有している容器中で実施しなくてはならない。溶剤の超臨界抽出は、反応と同じ溶剤、一般にはアルコール分の多い水アルコール混合物によって行ってもよく、これはプロセス水の画分を除去したものである。この場合、約300℃の温度および約70バールの圧力が必要とされる。エタノールの臨界温度および圧力は、それぞれ243℃および63気圧である。これらの条件に耐えることができるオートクレーブは複雑な構造なので、最初にゲルの孔中に存在する溶剤を交換し、約200〜280℃および30〜60バールの臨界値を有する塩素化溶剤との反応の水アルコール混合物、または約40℃および70〜80バールの臨界値を有する液体CO2と置換することが有利な場合がある。
【0052】
容器の開放および複合材の取り出しをその中で実施する液体を含有している浴は、溶剤の交換のため、およびいずれの場合でも、オートクレーブ中に導入される液体で覆われている複合材を含有している容器として使用してもよい。この溶剤交換および超臨界抽出の手順は、当業者に周知のものである。
【0053】
図4は、本発明の方法により図1の容器を使用することによって得られた製品40の断面図を示す。この製品は、部分41からなり、乾燥しているが、しかしまだ多孔質のゲルからなり、非圧縮性インサート42に付着している。容器の歯13、13′および14、14′を受け止めるリセスは、インサートの端部にみることができる。
【0054】
光ファイバーのためのプレフォームを製造する場合、乾燥ゲル(キセロゲルまたはエーロゲル)からなる製品は、SiO2層を高密度化する前にCVD技術により得られる製品に正確に相応する円筒形の非圧縮性インサートを有しており、これは今日までゾル−ゲル技術によっては得られなかったものである。
【0055】
こうして製造した製品を最後に乾燥ゲル部分の高密度化処理を施すことができる。高密度化はキセロゲルの場合、約800〜900℃の温度を必要とし、かつエーロゲルの場合、約1000〜1400℃を必要とする。熱処理の間、当業者に公知のように、たとえば温度が約300〜500℃の時に炉中へ酸素を含有する雰囲気を流通させて有機混合物を除去し、かつ約700〜800℃の温度で塩素化ガス、たとえばCl2、HClまたはCCl4を流通させて金属不純物を除去することによって、ゲルの清浄化処理を行ってもよい。高密度化の最終工程は、一般に不活性雰囲気、たとえば純粋なヘリウムまたは低いパーセンテージの酸素を含有している雰囲気中で実施する。
【0056】
光ファイバー用のプレフォームの場合、高密度化処理の製品は、ファイバーの紡糸のために準備されたプレフォームである。図5は、このようなプレフォーム50を示しており、その中で、被覆51は高密度化後の本発明による方法の結果であり、かつ部分52は、プレフォームのコアであり、これはこの場合、方法の開始時の非圧縮性のインサートからなる。
【0057】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明する。これらの実施例は限定的なものではない。これらの実施例は本発明の実施方法を当業者に教示するためのいくつかの実施態様を示し、かつ本発明を実現するために最善であると思われる方法を示すものである。
【0058】
例1
図2に示したタイプの特殊鋼の円筒形のダイを前処理した。その内寸は長さ30.7cmおよび直径9.3cmである。長さ37.0cmおよび直径0.8cmの石英円筒体からなる非圧縮性インサートをダイへ挿入し、これを上記の通り、Swagelok(登録商標)リンクを用いてダイに対して共軸の位置に固定する。
【0059】
テトラ−エチル−オルト−シラン(TEOS)500gと、濃度0.01NのHCl水溶液700ccとを混合することによりシリカゾルを別に製造する。該ゾルをまず機械的な攪拌によって、次いで超音波によって6分均質化する。この段階でTEOSを水により加水分解し、TEOS1分子あたりエチルアルコールの分子が4つ生じる。Degussa GmbH社のコロイドシリカAerosil OX-50 250gをゾルに添加する。コロイドシリカのゾルへの混合は、強力な機械的攪拌によって促進され、次いで超音波により30分間処理し、かつ最後に2000rpmでさらに30分間遠心分離によって処理する。得られたゾルを図2に示されている開口部24を介して前処理したダイへと注入する。ダイの軸を中心として角速度ω125.6rad/sでダイを回転させるが、これは使用されるインサートに関して、50.24rad×cm/sのP値に相応する。回転を12時間持続させ、ゾルを完全にゲル化させる。次いでダイを開け、石英からなる円筒形の湿潤ゲルを取り出し、かつ浸漬によって3回連続して洗浄することによりゲルの孔中に存在する水をエタノールと交換する。エタノールの超臨界抽出を70バールおよび280℃でオートクレーブ中で実施する。オートクレーブから取り出された、石英の非圧縮性インサートを有するエアロゲルは、亀裂または破壊のような欠陥をその表面に示さなかった。エーロゲルを高密度化のための熱処理する。炉のチャンバは石英パイプからなり、該パイプはガスラインの末端に接続している。周囲温度で500℃まで30分間加熱する処理を行い、引き続き空気流中6時間、500℃を維持し、30分で500℃から800℃へ加熱し、かつ800℃で54時間保持する。42時間、無水HClを炉室に通過させ、かつ純粋なヘリウムを引き続き12時間通過させた。最後に、常時ヘリウム流中で、1時間で温度を800℃から1375℃へ上昇させ、かつこの温度で30分保持し、その後、炉を自然に冷却させた。最終生成物は、全体が表面欠陥を有してないシリカガラスからなる被覆と、方法の開始時にダイへ導入された、石英からなる非圧縮性インサートとからなり、該被覆がインサートの周囲に配置されている製品である。
【0060】
例2(比較)
例1の方法を繰り返したが、ゲル化段階でゾルの遠心分離を行わなかった(つまり、ωおよびPの値は0であった)。ゲル化の12時間後にダイを開け、石英製の非圧縮性インサートの周囲に存在するヒドロゲルの部分は、深い割れを示し、かつ部分的にインサートから分離していた。
Claims (5)
- シリカベースのガラスからなる非圧縮性インサートを有するガラス体製品を製造するためのゾル−ゲル法において、次の工程:
a)非圧縮性インサート(33;42;52)を準備する工程;
b)該非圧縮性インサートを確実に固定された位置に保持し、容器の内面と該インサートの外面との間に空間(17;26)を規定することができ、かつ該インサートの軸を中心として回転させることができる容器(10;20)を準備する工程;
c)該インサートが該容器と一体となって回転するように該容器の内部へ該インサートを固定する工程;
d)ゾルにより該空間を充てんし、かつ該容器を閉じる工程;
e)該ゾルが完全にゲル化するために必要な全時間にわたって該インサートの軸を中心として該ゾルおよび該インサートを含有する該容器を回転させる工程;その際、ラジアン毎秒(rad/s)で測定される角速度ωおよびセンチメートル(cm)で測定されるインサートの半径rの積Pが20〜250rad×cm/sであるような速度で容器を回転させる、
f)該容器を開き、かつ該非圧縮性インサートに付着している湿潤ゲルからなる複合材を取り出す工程;
g)該湿潤ゲルを乾燥させる工程
h)800〜1400℃の範囲の温度で熱処理することによって該非圧縮性インサートに付着している乾燥ゲルのガラス高密度化を行う工程
からなることを特徴とするゾル−ゲル法。 - 非圧縮性インサートが円筒形である、請求項1記載の方法。
- 容器が円筒形である、請求項1または2記載の方法。
- 工程f)における容器の開放および複合材の取り出しを、液体を含有している浴中で実施する、請求項1記載の方法。
- 工程f)を実施する際の液体を、アルコール、塩素化溶剤または液体CO2から選択する、請求項4記載の方法。
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