JP4114129B2 - 温感性塗料組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人が手で触ったとき、吸湿により発熱する塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
冬季になると、住宅の床、家電製品の外装、外気に晒されている玄関ドアノブや自動車の内装などは非常に冷たくなり、触れるのは不快なものである。このような不快感を解消する方法のひとつとして、これらの表面塗装に使用する塗料に工夫を加え、温感を付与することが考えられる。
【0003】
このような塗料としては、まず第1に発熱塗料が考えられる。これらの塗料は従来より開発が進められてきており、特開平6−157948号公報、特開平4−329292号公報や特開平1−108276号公報など数多くの技術が開示されている。しかし、これらの技術の多くは、加熱や保温を目的として開発されているものであり、塗料中に金属粉や炭素粉などの導電性微粒子を添加し、通電することにより発熱するものである。従って、発熱塗料には電源が必要不可欠であり、しかもその発熱温度は数十℃から数百℃程度でかなり高いものである。このため、このような塗料を家電製品の外装やドアノブなどに温感を付与する目的で使用するのは困難である。
【0004】
また、特開平11−033481号公報や特開平6−73307号公報などに開示されているようなスエード調塗料に代表される塗膜表面に凹凸を形成する塗料では、皮膚との接点が少なくなるため、冷感は若干和らぐ。しかし、これらの塗料は、本来、外観の意匠性を高めることを目的として開発されたものであるから、自ら発熱することはなく、温感を付与するものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、家電製品の外装やドアノブなどに温感を付与する目的に対して、適当な塗料が存在しないのが実状である。そこで本発明者はかかる目的を達成すべく、鋭意検討を進めた結果、吸湿発熱性微粒子を塗料に添加することによって、人体から発散される汗などの湿気を吸収して瞬時に発熱する塗膜を開発するに至った。本発明の目的は、電気エネルギー源を必要とせず、基材に塗布するだけで温感性を発揮する塗膜を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は、繊維でなる基材を除いた基材に対し、ベース塗料に、塩型カルボキシル基を1.0〜10.0meq/g含有しかつ架橋構造を有する有機高分子微粒子を吸湿発熱性微粒子として含有せしめた温感性塗料組成物を塗布してなる塗膜であって、前記吸湿発熱性微粒子は前記塗膜内に埋没して存在し、該塗膜は下記の吸湿発熱温度差(T)を示すことを特徴とする温感性塗膜により達成される。
T=T(サンプル)−T(ブランク)≧0.5℃
T(サンプル):試料塗膜を絶乾し、絶乾状態のまま20℃に調温した後、20℃、相対湿度90%の環境に置いた際の10秒後の塗膜の表面温度。
T(ブランク):吸湿発熱性微粒子を含有しないこと以外は上記試料と同様である塗膜を絶乾し、絶乾状態のまま20℃に調温した後、20℃、相対湿度90%の環境に置いた際の10秒後の塗膜の表面温度。
【0007】
さらに本発明の目的は、前記Tが1℃以上であること、吸湿発熱性微粒子が温感性塗膜中の全固形分の5〜90重量%を占めることにより、高度に達成される。
【0008】
上述の通り、本発明の吸湿発熱性微粒子は、塩型カルボキシル基を1.0〜10.0meq/g含有し、かつ架橋構造を有する有機高分子微粒子であって、無機微粒子はこれに含まれない。
【0009】
以上の手段に加えて、ベース塗料が、JIS K5400 8.17による水蒸気透過度として10g/m・24H以上を有する塗膜を形成する塗料であること、および/または、スエード調塗料であることによって、さらに高度に目的を達成することができる。
【0010】
また、本発明のさらなる詳細は、上述してきた塗膜についての以下の記述により、より明らかとなろう。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳述する。まず、本発明においてベース塗料とは、家庭用や工業用として直ちにあるいは適宜に稀釈や添加物の添加をした後に塗装に供されるいわゆる「塗料」をいう。かかる塗料は、一般に少なくとも呈色成分と造膜成分からなり、多くの場合これら成分を分散させる分散媒が加わった組成物というべきものである。しかし本発明物についての温感性塗料組成物なる表記との混乱を避けるため、かかる表記として区別したものである。また、本発明においては、「−COO」に対イオンが結合している官能基を「カルボキシル基」、対イオンが水素イオンであることを「H型」、水素イオン以外のイオンであることを「塩型」と表現する。たとえば、「−COOH」は「H型カルボキシル基」と表現される。
【0012】
次に本発明にいう温感性とは、材料が外部から何らかの刺激を受け、その刺激により該材料を構成する成分の一部または全部が化学的もしくは物理的作用によって発熱し、材料の温度がその周辺の温度よりも高くなる特性のことをいう。この温感性の効果を実際に塗膜に触れることで感じるには、吸湿発熱性微粒子を含有するベース塗料からなる塗膜を絶乾し、絶乾状態のまま20℃に調温した後、20℃、相対湿度90%の環境に置いた際の10秒後の塗膜表面の温度と、吸湿発熱性微粒子を含有しないこと以外は前記と同様である塗膜に同様の操作を行った場合の塗膜表面の温度との間に0.5℃以上の温度差がある必要があり、1℃以上が好ましい。0.5℃未満の温度差では塗膜に触れても温かさを感じることができない。
【0013】
本発明の温感性塗料組成物中の吸湿発熱性微粒子含有量は、該吸湿発熱性微粒子の吸湿発熱性、塗装した後の塗膜強度や該塗膜の利用される環境などを勘案して、適宜選定されるべきものであり、特に限定されるものではないが、十分な温感性および塗膜強度を得るためには、該塗料組成物中の全固形分の5〜90重量%、好ましくは20〜60重量%とするのがよい。5重量%よりも少ない場合には十分な温感性が得られない場合があり、90重量%を越える場合には十分な塗膜強度が得られなくなる場合がある。
【0014】
また、塗膜として見た場合、塗膜厚さなどにより異なるが、塗膜厚さ40μmの場合で、概ね5〜35g/m、好ましくは10〜25g/mの吸湿発熱性微粒子を含有させるのがよい。5g/mよりも少ない場合には十分な温感性が得られない場合があり、35g/mを越える場合には十分な塗膜強度が得られなくなる場合がある。
【0015】
本発明にいう吸湿発熱性微粒子とは、下記する吸湿することによって発熱する微粒子であり、該微粒子の組成や形状および吸湿発熱するメカニズムなどは特に限定されるものではない。しかし、上述したように、本発明にいう塗膜は皮膚が触れた瞬間に温かさを感じさせるべきものであるから、吸湿発熱性微粒子の発熱速度および発熱量は大きいほどよいと言える。
【0016】
このような吸湿発熱性微粒子としては、有機高分子微粒子が挙げられる。
【0017】
また、吸湿発熱性微粒子として使用される有機高分子微粒子については、塩型カルボキシル基と架橋構造を有しているものが推奨される。塩型カルボキシル基には吸湿発熱性を発現させる、また、架橋構造には微粒子の硬度を上昇させ、塗膜強度を向上させる機能や、さらに微粒子の膨潤や変形も防止できるという効果がある。
【0018】
該有機高分子微粒子に含有される塩型カルボキシル基量は、1.0〜10.0meq/gが好ましく、より好ましくは2.0〜8.0meq/gである。該基の量は、本発明の温感性塗料組成物を塗布した際に形成される塗膜の温感性を強く支配する一因子であり、1.0meq/gに満たない場合は十分な温感性を発現できなくなる場合もある。一方、該基の量が10.0meq/gを超えると、架橋度が低くなることも影響して、吸湿時の膨潤が激しく乾燥しにくいといった高吸水性樹脂的な性質を帯びるようになり、実用上望ましくない。たとえば、水系のベース塗料を使用した場合などに、塗布直後では膨潤して大きくなっている微粒子が乾燥時に収縮して小さくなることで、塗膜に欠陥が発生して外観不良や強度低下を引き起こすといった問題や、塗膜が濡れた場合などに、容易に乾燥できなくなったり、有機高分子微粒子が溶出して塗膜が劣化したりするといった問題が発生することがある。
【0019】
カルボキシル基は塩型カルボキシル基でなければならないが、塩型の例としてはNa、K、Li塩等がありアルカリ土類金属塩も場合によっては採用し得る。また、これらの金属種は1種に限らず複数種併用してもよい。もちろん存在するカルボキシル基の全てが塩型カルボキシル基であるというのはpH的あるいは実用安全性の面で希有であり、前述した塩型カルボキシル基の量が満たされれば、残余のカルボキシル基がH型カルボキシル基であることは言うまでもない。
【0020】
有機高分子微粒子への塩型カルボキシル基の導入方法としては、特に限定は無く、例えば、塩型カルボキシル基を有する単量体を単独重合又は共重合可能な他の単量体と共重合することによって重合体を得る方法、H型カルボキシル基を有する重合体を得た後に該カルボキシル基を塩型カルボキシル基に変える方法、重合体に対して化学変性によりカルボキシル基を導入し、必要に応じ塩型カルボキシル基に変える方法等が挙げられる。
【0021】
塩型カルボキシル基を有する単量体を重合して塩型カルボキシル基を導入する方法としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のH型カルボキシル基を含有するビニル系単量体に対応する塩型単量体の単独重合、あるいは2種以上の該塩型単量体の共重合、あるいは、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合により、共重合体を得る方法が挙げられる。また、上記H型カルボキシル基を含有するビニル系単量体をそのままH型単量体として使用する場合には、上記と同様な方法により単独重合体、あるいは共重合体とした後、該重合体のH型カルボキシル基をイオン交換により塩型カルボキシル基とすることもできる。
【0022】
化学変性によりカルボキシル基を導入する方法としては、例えば加水分解処理によりカルボキシル基に変性可能な官能基を有する単量体よりなる重合体を得た後に、該官能基を加水分解によってH型または塩型カルボキシル基に変性し、得られたカルボキシル基がH型カルボキシル基である場合は上記のような方法で塩型カルボキシル基にする方法が挙げられる。このような方法をとることのできる単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等の誘導体であり、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ノルマルプロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ノルマルブチル、アクリル酸ノルマルオクチル、アクリル酸一2一エチルヘキシル、ヒドロキシルエチルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ノルマルプロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ノルマルブチル、メタクリル酸ノルマルオクチル、メタクリル酸一2一エチルヘキシル、ヒドロキシルエチルメタクリレート等のエステル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、モノエチルアクリルアミド、ノルマル−t一ブチルアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、モノエチルメタクリルアミド、ノルマル−t一ブチルメタクリルアミド等のアミド化合物等が例示できる。
【0023】
上記加水分解処理については特に限定はなく、既知の加水分解条件を利用することができる。例えば、上述の加水分解処理によりカルボキシル基に変性可能な官能基を有する単量体よりなる重合体に、水酸化ナトリウムに代表されるアルカリ金属水酸化物やアンモニア等の塩基性水溶液、あるいは硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸、または蟻酸、酢酸等の有機酸を添加した混合物を加熱処理する手段などが挙げられる。本発明で推奨する塩型カルボキシル基量が1.0〜10.0meq/gとなる条件については、反応の温度、濃度、時間等の反応因子と導入される塩型カルボキシル基量の関係を実験で明らかにすることにより、決定することができる。
【0024】
化学変性によりカルボキシル基を導入する他の方法としては、二重結合、ハロゲン基、水酸基、アルデヒド基等の酸化可能な極性基を有する重合体に酸化反応によりカルボキシル基を導入する方法も用いることができる。この酸化反応については、通常用いられる酸化反応が用いられ、また、カルボキシル基を導入した後に上記と同様な方法により塩型カルボキシル基とすることができる。
【0025】
以上に述べてきた有機高分子微粒子への塩型カルボキシル基の導入方法において利用される上記の単量体と共重合可能な他の単量体としては特に限定はなく、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のビニリデン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびこれらの塩類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルイソブテニルケトン、メチルイソプロペニルケトン等の不飽和ケトン類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、モノフルオロ酢酸ビニル、ジフルオロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリルアミドおよびそのアルキル置換体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2―アクリルアミド−2一メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート、ビニルステアリン酸、ビニルスルフィン酸等のビニル基含有酸化合物、およびこれらの塩、無水物および誘導体等;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンおよびそのアルキルまたはハロゲン置換体;アリルアルコールおよびそのエステルまたはエーテル類;N−ビニルフタルイミド、N−ビニルサクシノイミド等のビニルイミド類;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン類等の塩基性ビニル化合物;アクロレイン、メタクリロレイン等の不飽和アルデヒド類;グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ビニル化合物を挙げることができる。
【0026】
また、本発明における架橋構造としては、吸湿、放湿に伴い物理的、化学的に変性をうけない構造である限りにおいては特に限定はなく、共有結合やイオン結合などの架橋構造が利用できる。また、架橋を導入する方法においても、特に限定はないが、有機高分子微粒子製造のための重合段階で架橋性単量体を用いる方法や重合体を得た後に多官能性化合物と反応させることで架橋する方法(以下、後架橋法という)では、共有結合による強固な架橋を導入することが可能である。
【0027】
例えば、架橋性単量体を用いる方法では、既述の架橋性ビニル化合物を用い、カルボキシル基もしくはカルボキシル基に変性可能な官能基を有する単量体と共重合することにより共有結合に基づく架橋構造を有する有機高分子微粒子を得ることができる。しかし、カルボキシル基に変性可能な官能基を有する単量体を使用する場合には、カルボキシル基への変性を行う際に、得られた架橋構造が化学的な影響(例えば加水分解など)を受けない構造であることが望ましい。
【0028】
この様な方法により導入される架橋構造としては、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ビニル化合物により誘導されたものを挙げることができ、なかでもトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミドによる架橋構造は、カルボキシル基への変性を行うための加水分解等の際にも化学的に安定であるので望ましい。
【0029】
また、後架橋法としては、目的とする架橋構造が形成されている限りにおいては特に限定はなく、例えば、ニトリル基を有するビニルモノマーの含有量が50重量%以上であるニトリル系重合体の含有するニトリル基と、ヒドラジン系化合物またはホルムアルデヒドを反応させる後架橋法を挙げることができる。なかでもヒドラジン系化合物による後架橋法で形成される架橋構造は酸、アルカリに対しても安定で、しかも該架橋構造自体が親水性であるので吸湿性の向上に寄与できるといった点で極めて優れている。なお、該反応により得られる架橋構造に関しては、その詳細は同定されていないが、トリアゾール環あるいはテトラジン環構造に基づくものと推定されている。
【0030】
ここでいうニトリル基を有するビニルモノマーとしては、ニトリル基を有する限りにおいては特に限定はなく、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。なかでも、コスト的に有利であり、また、単位重量あたりのニトリル基量が多いアクリロニトリルが最も好ましい。
【0031】
ヒドラジン系化合物との反応により架橋構造を導入する条件としては、目的とする架橋構造が得られる限りにおいては特に制限はなく、例えば反応時のアクリロニトリル系重合体とヒドラジン系化合物の濃度、使用する溶媒、反応時間、反応温度などの反応因子を必要に応じて調整することで設定することができる。このうち反応温度については、あまりに低温である場合は反応速度が遅くなるため反応時間が長くなりすぎ、逆に、あまりに高温である場合はアクリロニトリル系重合体の可塑化が起こり、形状が破壊されるという問題を生じる場合がある。従って、好ましい反応温度としては、50〜150℃、さらに好ましくは80℃〜120℃である。また、使用するヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネート等のヒドラジンの塩類、およびエチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン等のヒドラジン誘導体が挙げられる。
【0032】
以上に述べてきた有機高分子微粒子合成方法における重合の方法としては特に限定は無く、通常採用される懸濁重合、乳化重合、沈殿重合、分散重合、塊状重合などの方法が挙げられる。重合の開始剤や連鎖移動剤等も適宜採用すればよい。
【0033】
ここまでは、ビニル系単量体を重合し、必要に応じて架橋処理やイオン交換処理を実施することで、直接的に有機高分子微粒子を合成する方法について述べてきたが、本発明の有機高分子微粒子を合成する方法としてはこれに限定されず、この他にも、グラフト共重合体合成方法に上述の塩型カルボキシル基の導入方法および架橋構造の導入方法を組み合わせて実施する方法などが適用できる。このような方法としては、たとえば、幹ポリマーを重合開始末端として、上述してきたH型カルボキシル基を含有するビニル系単量体やこれに対応する塩型単量体、加水分解処理によりカルボキシル基に変性可能な官能基を有する単量体、架橋性単量体およびこれらの単量体と共重合可能な単量体などのビニル系単量体を重合させて枝ポリマーとし、必要に応じて架橋処理やイオン交換処理を実施する方法や、上記のビニル系単量体を重合させて得た重合体を幹ポリマーに結合させ、必要に応じて架橋処理やイオン交換処理を実施する方法などが挙げられる。
【0034】
該幹ポリマーとしては、特に限定は無く、天然ポリマー、半合成ポリマー及び合成ポリマーのいずれであってもよい。具体的なポリマーとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ABS樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、メラミン樹脂、ユリア樹脂、四フッ化エチレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びフェノール樹脂等のプラスチック系ポリマー;ナイロン、ポリエチレン、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、キュプラ、トリアセテート、ビニリデン等の一般の繊維形成性ポリマー;天然ゴム及びシリコーンゴム、SBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)、CR(クロロプレンゴム)、EPM(エチレン・プロピレンゴム)、FPM(フッ素ゴム)、NBR(ニトリルゴム)、CSM(クロルスルホン化ポリエチレンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(合成天然ゴム)、IIR(ブチルゴム)、ウレタンゴム及びアクリルゴム等の合成ゴム系のポリマー等があげられる。
【0035】
本発明に採用する吸湿発熱性微粒子の平均粒子径の上限は塗膜厚さの1倍以下であることが好ましい。この上限を超える粒子径を持つ粒子は、塗膜から大きく突出した状態となり、脱落しやすくなってしまうため、好ましくなく採用されない。このようにすることにより、前記微粒子は表面に突出せず塗膜厚さの中に納まった埋没状態となる。
【0036】
一方、平均粒子径の下限は限定することが困難である。何故ならば、いかに微粒子が微小径であっても発明の目的が達成され、さらに実際の粒子径は本発明の実施にあたって採用する吸湿発熱性微粒子そのものの作製方法およびベース塗料への添加方法に依存するからである。
【0037】
たとえば、吸湿発熱性微粒子として、アクリル系モノマーの重合によって有機高分子微粒子を作製する場合であれば、重合の方法によっては極めて微細な、たとえば0.01μmクラスの径のものも、分散媒中に分散した状態で得られるが、これを一旦粉末として乾燥状態にしてからベース塗料に添加しようとするケースでは0.01μmの径のままのものは得られず一次粒子が二次、三次と凝集した大形径のものとなってしまう。他方、前記分散状態のままで添加するケースでは分散媒中の粒子径がそのまま維持されるのである。このような理由から、平均粒子径の下限を強いて定めようとすれば、重合で得られる最小値0.01μmくらいとなる。
【0038】
吸湿発熱性微粒子をベース塗料に添加する方法としては、乾燥させた該微粒子を直接ベース塗料に添加する方法、該微粒子を分散させた分散液をベース塗料に添加する方法などが挙げられるが、該微粒子やベース塗料の性質を勘案して適切な方法で添加すればよい。なおここでは、ベース塗料がすでに在ってそれに吸湿発熱性微粒子を添加するというケースについて説明したが、発明の実施にあたってはこの態様に限られない。すなわちベース塗料の形成の段階において、吸湿発熱性微粒子も既述した呈色成分や造膜成分とともに混合すべき一原料として扱う態様も当然に採用し得る。
【0039】
本発明に採用するベース塗料は、JIS K 5400 8.17による水蒸気透過度が10g/m・24H以上、好ましくは15g/m・24H以上あることが望ましい。10g/m・24Hよりも低い場合には、塗膜内部の吸湿発熱性微粒子への水分の拡散が遅くなるために、十分な温感性が得られない場合がある。
【0040】
このようなベース塗料としては、エポキシ系、オレフィン系、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、エポキシポリエステル系、フッ素系、シリコーンポリエステル系、シリコーン系などの樹脂系塗料が挙げられ、必要に応じて抗菌剤、防かび剤、非粘着剤、汚れ防止剤、潤滑剤、耐摩耗性向上剤などの各種添加物を加えてもよい。
【0041】
また、ベース塗料としてスエード調塗料を使用した場合には、吸湿発熱性微粒子による温感性の効果に、凹凸のある塗膜表面による冷感を和らげる効果が加わるため、実感としてより温かく感じられる塗膜とすることができる。
【0042】
本発明の温感性塗料組成物の塗装方法は特に制限されず、ベース塗料に適した塗装方法で行えばよく、たとえば、ロールコート法、スプレー法、静電塗装などが利用できる。また、塗装される基材にも繊維でなる基材を除くほかは制限はなく、樹脂、金属、モルタル、コンクリートなど基材の種類にあわせてベース塗料を選択すればよい。
【0043】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明は何らこれらの記載に限定されるものではない。なお、以下の実施例に記載の部は、特に断りのない限り重量部であり、%は重量パーセントである。また、吸湿発熱性微粒子、温感性塗料組成物およびベース塗料について以下の評価を実施した。
【0044】
<吸湿発熱温度差の測定>
サンプルとして、温感性塗料組成物をABS樹脂板に塗布した塗装樹脂板を作成した。該塗装樹脂板を絶乾(乾燥条件:120℃、3時間)した後、デシケーターに入れ、20℃で10時間以上置くことで塗膜の調温を行い、その後、塗装樹脂板を20℃、相対湿度90%の環境に取り出して置いた際の10秒後の塗膜の表面温度T(サンプル)を日本アビオニクス株式会社製サーモグラフィー「TVS−8000」で測定した。また、ブランクサンプルとして、上記温感性塗料組成物に使用したベース塗料のみをABS樹脂板に塗布した塗装樹脂板を作成し、上記サンプルの場合と同様の方法でT(ブランク)を測定した。これらの測定結果から下記計算式により吸湿発熱温度差Tの値を算出した。
T=T(サンプル)−T(ブランク) 単位:℃
【0045】
<温感官能評価>
前項でサンプルとして作成した塗装樹脂板および塗装していないABS樹脂板を20℃、相対湿度50%の恒温恒湿器内に10時間以上静置した後、取り出した直後に手で触れたときの塗装樹脂板とABS樹脂板との感覚的な温かさの差を以下の4段階で官能評価した。
◎:サンプルのほうがABS樹脂板よりもかなり温かく感じる
○:サンプルのほうがABS樹脂板よりも温かく感じる
△:サンプルのほうがABS樹脂板よりもわずかに温かく感じる
×:サンプルとABS樹脂板に差は無い
【0046】
<塗膜厚さの測定>
塗装樹脂板の塗膜厚さは、マイクロメーターで塗装樹脂板および塗装する前のABS樹脂板の厚さを測定し、これらの測定値の差より求めた。
【0047】
<吸湿発熱性微粒子の平均粒子径の測定>
島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD−200V」を使用し、水を分散媒として測定した結果を、体積基準で表し、平均粒子径を求めた。
【0048】
<有機高分子微粒子の塩型カルボキシル基量の測定>
十分乾燥した試料1gを精秤し(Xg)、これに200mlの水を加えた後、50℃に加温しながら1N塩酸水溶液を添加してpH2とすることで、試料に含まれるカルボキシル基を全てH型カルボキシル基とし、次いで0.1NNaOH水溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。該滴定曲線からH型カルボキシル基に消費されたNaOH水溶液消費量(Yml)を求め、次式によって試料中に含まれる全カルボキシル基量を算出した。
(全カルボキシル基量 meq/g)= 0.1Y/X
別途、上述の全カルボキシル基量測定操作中の1N塩酸水溶液添加によるpH2への調整をすることなく同様に滴定曲線を求め、試料中に含まれるH型カルボキシル基量を求めた。これらの結果から次式により塩型カルボキシル基量を算出した。(塩型カルボキシル基量 meq/g)=(全カルボキシル基量)−(H型カルボキシル基量)
【0049】
<ベース塗料のみからなる塗膜の水蒸気透過度の測定>
300×300×2mmの離型紙を貼ったガラス板上の離型紙の上に濾紙を置き、該濾紙にベース塗料を塗布し、20℃、相対湿度65%の雰囲気下で7日間乾燥させた後、ベース塗料のみからなる塗膜の形成された濾紙を剥がして、直径70mmの円形に3枚切り取り、試験片とした。作成した3枚の試験片についてJIS K 5400 8.17に準じて測定を実施し、測定値の平均値を水蒸気透過度とした。
【0050】
<有機高分子微粒子Aの合成>
アクリロニトリル 390部、ジビニルベンゼン100部、p-スチレンスルホン酸ソーダ16部及び水1181部をオートクレーブ内に仕込み、更に重合開始剤としてジ-tert-ブチルパーオキサイドを単量体全量に対して 0.5%添加した後、密閉し、次いで撹拌下において 150℃の温度にて23分間重合せしめた。反応終了後、撹拌を継続しながら約90℃まで冷却し、原料微粒子の水分散体を得た。この原料微粒子の水分散体に、浴中濃度が10%となるようにNaOHを加え、 102℃で 5時間加水分解処理を行った後、セルロースチューブに入れて流水中で 1週間透析・脱塩し、表1に示す有機高分子微粒子Aの水分散体を得た。
【0051】
<有機高分子微粒子Bの合成>
メタクリル酸/p−スチレンスルホン酸ソーダ=70/30の水溶性重合体 300部及び硫酸ナトリウム 30部を 6595部の水に溶解し、櫂型撹拌機付きの重合槽に仕込んだ。次にアクリル酸メチル2700部およびジビニルベンゼン300部に2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル) 15部を溶解して重合槽に仕込み、400rpmの撹拌条件下、60℃で2時間懸濁重合を行い、重合率87%で原料微粒子を得た。該原料微粒子 100部を水 900部中に分散し、これに 100部のNaOHを添加し、90℃で2時間加水分解反応を行った後、得られた重合体を、洗浄、脱水、乾燥し表1に示す有機高分子微粒子Bを得た。
【0052】
<有機高分子微粒子Cの合成>
アクリロニトリル 490部、p-スチレンスルホン酸ソーダ16部及び水1181部をオートクレーブ内に仕込み、更に重合開始剤としてジ-tert-ブチルパーオキサイドを単量体全量に対して 0.5%添加した後、密閉し、次いで撹拌下において 150℃の温度にて23分間重合せしめた。反応終了後、撹拌を継続しながら約90℃まで冷却し、原料微粒子の水分散体を得た。この原料微粒子の水分散体に、浴中濃度が35%となるようにヒドラジンを加え、102℃で 2.5時間架橋処理を行った。続いて浴中濃度が10%となるようにNaOHを加え、 102℃で 5時間加水分解処理を行った後、セルロースチューブに入れて流水中で 1週間透析・脱塩し、表1に示す有機高分子微粒子Cの水分散体を得た。
【0053】
<有機高分子微粒子Dの合成>
有機高分子微粒子Cの合成に用いたのと同じ原料微粒子の水分散体に浴中濃度が2%となるようにヒドラジンを加え、175℃で 5時間架橋処理を行った。続いて浴中濃度が15%となるようにLiOHを加え、 120℃で 5時間加水分解処理を行った後、セルロースチューブに入れて流水中で 1週間透析・脱塩し、表1に示す有機高分子微粒子Dの水分散体を得た。
【0054】
<有機高分子微粒子Eの合成>
メタクリル酸/p−スチレンスルホン酸ソーダ=70/30の水溶性重合体 300部及び硫酸ナトリウム 30部を 6595部の水に溶解し、櫂型撹拌機付きの重合槽に仕込んだ。次にメタクリル酸メチル2300部、メタクリル酸 250部、ジビニルベンゼン500部に2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル) 15部を溶解して重合槽に仕込み、400rpmの撹拌条件下、60℃で2時間懸濁重合を行い、原料微粒子を得た。該原料微粒子のカルボキシル基はH型カルボキシル基であるので、室温にて0.1NNaOH水溶液を用いpH=12に調整し、ナトリウム塩型とした。得られた微粒子を水中に分散し、洗浄、脱水、乾燥し表1に示す有機高分子微粒子Eを得た。
【0055】
【表1】
Figure 0004114129
【0056】
<実施例1〜6、比較例1〜3>
表2に示す割合となるように有機高分子微粒子Aの水分散体またはガラス粉末と、いずれも水系の表に示すベース塗料を混合し、粘度調整のため水で適宜稀釈して塗料組成物を作成した。ガラス粉末としては、直径約5μmのガラス繊維を乳鉢ですりつぶして粉末にしたもの(平均粒子径5μm)を使用した。なお、表中の配合量はそれぞれ微粒子の固形分およびベース塗料の固形分を基準とした数値である。これらの塗料組成物をABS樹脂板に塗布して得た塗膜について、吸湿発熱温度差と温感を評価した結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
Figure 0004114129
【0058】
実施例1〜6はいずれも0.5℃以上の吸湿発熱温度差を示し、官能評価でも温感が認められた。実施例3では吸湿発熱温度差自体は他の実施例と同程度であったが、実感としては他の実施例よりも温かく感じられた。これは、実施例3のベース塗料がスエード調塗料であり、塗膜表面に細かい凹凸があるためと考えられる。また、実施例4および5では吸湿発熱性微粒子の添加量が多いために、吸湿発熱温度差が1℃以上あり、かなり温かく感じられる塗膜が得られた。一方、比較例1では吸湿発熱性を持たないガラス粉末を使用しているため、吸湿発熱温度差は無く、温感も全く認められなかった。比較例2の温感性塗料組成物は膜状にすることはできるものの、得られた膜は亀裂やふくれを多く含み、一部は剥離するなど、塗膜とは言い難いもので、塗膜厚さと吸湿発熱温度差の測定および温感官能評価を実施することもできなかった。また、比較例3では有機高分子微粒子Aの添加量が少ないため、吸湿発熱温度差が小さく、温感も認められなかったが、実施例6のように水蒸気透過度の大きい塗膜を与えるベース塗料を使用した場合には、有機高分子微粒子Aの添加量が少なくても0.5℃以上の吸湿発熱温度差を示し、官能評価でも温感が認められるという結果となった。
【0059】
<参考例7,実施例8、比較例4>表3に示す割合で有機高分子微粒子Bとベース塗料を混合し、粘度調整のため適宜稀釈して塗料組成物を作成した。Vトップは有機溶剤系塗料であり、稀釈には専用のVトップシンナーを用いた。なお、表中の配合量はそれぞれ微粒子の固形分およびベース塗料の固形分を基準とした数値である。これらの塗料組成物をABS樹脂板に塗布して得た塗膜について、吸湿発熱温度差と温感を評価した結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
Figure 0004114129
【0061】
参考例7では実施例1のような有機高分子微粒子の水分散体ではなく、粉体状の有機高分子微粒子を使用しているが、実施例1と同様に0.5℃以上の吸湿発熱温度差と温感が得られた。しかしこれは、ベース塗料が比較例4に較べ薄くて水蒸気透過度に優れることに加え、吸湿発熱性微粒子が塗膜面から突出していることによると考えられ、本願発明を満たさない。一方、比較例4では吸湿発熱温度差が小さく、温感もわずかしか認められなかった。これは、比較例4では参考例7と同じ有機高分子微粒子Bを使用しているものの、ベース塗料であるVトップからなる塗膜の水蒸気透過度が低く、該微粒子の量は同じでも十分に吸湿できなかったことによるものと考えられる。しかし、実施例8のように有機高分子微粒子Bの添加量を増やした場合には、0.5℃以上の吸湿発熱温度差と温感を得られる結果となった。
【0062】
<参考例9,12、実施例10,11、比較例5>表4に示す割合となるように平均粒子径40μmのシリカゲル、有機高分子微粒子C、DまたはEの水分散体夫々をベース塗料に混合し、粘度調整のため適宜稀釈して塗料組成物を作成した。なお、表中の配合量はそれぞれ微粒子の固形分およびベース塗料の固形分を基準とした数値である。これらの塗料組成物をABS樹脂板に塗装して得た塗膜について、吸湿発熱温度差と温感を評価した結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
Figure 0004114129
【0064】
参考例9では無機微粒子であるシリカゲルを使用しているが、この場合にも0.5℃以上の吸湿発熱温度差を示し、温感が認められた。但し、吸湿発熱性微粒子として本発明は無機微粒子を採用しないので、本例は参考にとどまる。実施例10は、上述の実施例1から8とは異なり、ヒドラジン架橋を利用した有機高分子微粒子Cを使用しているが、塩型カルボキシル基量は同程度の水準であり、0.5℃以上の吸湿発熱温度差と温感を得られた。また、塩型カルボキシル基量の多い有機高分子微粒子Dを使用した実施例11では、より大きな吸湿発熱温度差を得られた。一方、比較例5では塩型カルボキシル基量が少ない有機高分子微粒子Eを使用しており、塗膜面から一部該微粒子が突出していても吸湿発熱温度差が小さく、温感も認められない結果となった。参考例12では比較例5に較べ有機高分子微粒子添加量を増やしているが、この場合には0.5℃以上の吸湿発熱温度差と温感を得られる結果となった。但しこれも、塗膜面からの微粒子突出を合わせての結果である。
【0065】
【発明の効果】
本発明の温感性塗膜は、人体から発散される汗などの湿気を吸収して瞬時に発熱するという、これまでにない特性を有する塗膜である。この特性から、発熱に電気エネルギー源を必要とせず、単に基材に塗布するだけで基材に温感性を付与することができるため、人間の手が直接触れる自動車の内装、家電製品の外装、ドアノブなどといったこれまで温感性を付与することが難しかった分野への利用が可能である。

Claims (5)

  1. 繊維でなる基材を除いた基材に対し、ベース塗料に、塩型カルボキシル基を1.0〜10.0meq/g含有しかつ架橋構造を有する有機高分子微粒子を吸湿発熱性微粒子として含有せしめた温感性塗料組成物を塗布してなる塗膜であって、前記吸湿発熱性微粒子は前記塗膜内に埋没して存在し、該塗膜は下記の吸湿発熱温度差(T)を示すことを特徴とする温感性塗膜。
    T=T(サンプル)−T(ブランク)≧0.5℃
    T(サンプル):試料塗膜を絶乾し、絶乾状態のまま20℃に調温した後、20℃、相対湿度90%の環境に置いた際の10秒後の塗膜の表面温度。
    T(ブランク):吸湿発熱性微粒子を含有しないこと以外は上記試料と同様である塗膜を絶乾し、絶乾状態のまま20℃に調温した後、20℃、相対湿度90%の環境に置いた際の10秒後の塗膜の表面温度。
  2. 前記Tが1℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の温感性塗膜。
  3. 吸湿発熱性微粒子の含有量が温感性塗膜中の全固形分の5〜90重量%であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の温感性塗膜。
  4. ベース塗料が、JIS K5400 8.17による水蒸気透過度として10g/m・24H以上を有する塗膜を形成する塗料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の温感性塗膜。
  5. ベース塗料がスエード調塗料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の温感性塗膜。
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