JP4113611B2 - フェノール類のヒドロカルビルエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香環上に少なくとも1つの水酸基を有し、カルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有していてもよい芳香族化合物(以下、「フェノール類」ということがある)のヒドロカルビルエーテルを製造する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は芳香環上に少なくとも1つの水酸基を有し、カルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有していてもよい芳香族化合物と低級アルコールを反応させ、該芳香族化合物の芳香環上の置換されていない水素原子が低級アルコールのヒドロカルビル基で置換された該芳香族化合物のヒドロカルビルエーテルを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェノール類のヒドロカルビルエーテルは、医薬品、農薬、染料、合成高分子その他の合成原料、あるいは製品として広く利用されている欠くことのできない有機化合物である。なかでも、特に安息香酸類のアルキルオキシ置換体、例えばアニス酸およびその誘導体は医薬品、香料や感光剤の原料として、広く用いられている。
【0003】
従来、フェノール類のヒドロカルビルエーテルの製造法としては、種々の反応条件でフェノール性水酸基とジメチル硫酸を反応させてメチルエーテルを得る方法が最も一般的である。また、p−ヒドロキシ安息香酸メチルのアルカリ金属塩を120℃以上に加熱することにより、フェノール性水酸基をメチルエーテル化しアニス酸メチルを製造する方法が公知である(特公昭46−33947号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の公知の方法は、フェノール類に対して等量以上の酸またはアルカリの副生成物を生成するという問題を有する。
一方、超臨界状態の低級アルコールを用いる有機反応としては、例えば、有機カルボン酸のエステル化反応が知られている(ドイツ国特許第1186845号明細書)。
本発明の目的は、フェノール類と低級アルコールから、従来にない新しい方法で、該フェノール類のヒドロカルビルエーテルを製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の状況に鑑み、フェノール類と低級アルコールから、従来にない新しい方法で、該フェノール類のヒドロカルビルエーテルを製造する方法について鋭意研究を続け、超臨界状態を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、芳香環上に少なくとも1つの水酸基を有し、カルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有していてもよい芳香族化合物と、低級アルコールから、該芳香族化合物の芳香環上の水酸基の水素原子を低級アルコールのヒドロカルビル基で置換して該芳香族化合物のヒドロカルビルエーテルを製造する方法において、下記(A)または(B)の条件下、該芳香族化合物、低級アルコールまたは、カルボン酸の存在下においてはカルボン酸、の少なくとも一つが超臨界状態になる条件で反応させる該芳香族化合物のヒドロカルビルエーテルの製造方法 [以下、本発明製法(1)と記す]に関する。
(A)該芳香族化合物が芳香環上にカルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有する場合は、カルボン酸の存在下または非存在下
(B)該芳香族化合物が芳香環上にカルボキシル基およびヒドロカルビロキシカルボニル基を有しない場合は、カルボン酸の存在下
【0006】
また、本発明は、芳香環上に少なくとも1つの水酸基を有し、カルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有していてもよい芳香族化合物と、低級アルコールから、該芳香族化合物の芳香環上の水酸基の水素原子を低級アルコールのヒドロカルビル基で置換して該芳香族化合物のヒドロカルビルエーテルを不活性媒体の存在下で製造する方法において、下記(A)または(B)の条件下、該芳香族化合物、低級アルコール、カルボン酸の存在下においてはカルボン酸、または不活性媒体の少なくとも一つが超臨界状態になる条件下で反応させる該芳香族化合物のヒドロカルビルエーテルの製造方法[以下、本発明製法(2)と記す]に関するものである。
(A)該芳香族化合物が芳香環上にカルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有する場合は、カルボン酸の存在下または非存在下
(B)該芳香族化合物が芳香環上にカルボキシル基およびヒドロカルビロキシカルボニル基を有しない場合は、カルボン酸の存在下
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では芳香環上に少なくとも1つの水酸基を有し、カルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有していてもよい芳香族化合物を出発原料のひとつとして用いる。
【0008】
芳香環としては、ベンゼン環、または、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などの縮合ベンゼン環、または、ピリジン環、フラン環、ピロール環、ベンゾフラン環、インドール環、カルバゾール環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、キノキサリン環などの複素芳香族環があげられ、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が好ましく、ベンゼン環がさらに好ましい。
【0009】
ヒドロカルビロキシカルボニル基としては、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基などがあげられる。
【0010】
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピロオキシカルボニル基、イソプロピロキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、ヘプチロキシカルボニル基、オクチロキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基などが例示され、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピロキシカルボニル基、イソプロピロキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基が好ましく、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基がさらに好ましい。
【0011】
アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基があげられる。
アラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジロキシカルボニル基、p−メチルベンジロキシカルボニル基などが例示され、ベンジロキシカルボニル基が好ましい。
アルケニルオキシカルボニル基としては、例えばアリロキシカルボニル基があげられる。
アルキニルオキシカルボニル基としては、例えば、エチニルオキシカルボニル基があげられる。
【0012】
フェノール類としては、水酸基を2つ以上有するものも使用できる。この場合には、反応条件を選ぶことにより、該水酸基のうち、全てをヒドロカルビルエーテルにしたものを製造することも、一部のみをヒドロカルビルエーテルにしたものも製造できる。
【0013】
フェノール類は、芳香環上に、ヒドロカルビル基等のような、反応に不活性な置換基を有していても良い。
【0014】
ヒドロカルビル基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基などがあげられる。
【0015】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、などが例示され、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましい。
アラルキル基としては、ベンジル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基などが例示され、ベンジル基が好ましい。
アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基があげられ、フェニル基が好ましい。
ここに、アラルキル基およびアリール基としては、芳香環上の水素原子が水酸基に置換された化合物も使用することができる。
アルケニル基としては、例えば、アリル基があげられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基があげられる。
【0016】
フェノール類の具体例としては、芳香環上にカルボキシル基を有するものとしては、 p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシナフトエ酸等があげられる。また、ヒドロカルビロキシカルボニル基を有するものとしては、 p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチルなどのp−ヒドロキシ安息香酸ヒドロカルビルエステル、6−ヒドロキシナフトエ酸メチル、6−ヒドロキシナフトエ酸エチル等の6−ヒドロキシナフトエ酸ヒドロカルビルエステルが用いられる。次に、カルボキシル基およびヒドロカルビロキシカルボニル基を有しないものとしては、フェノール、クレゾール、α−ナフトール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどが使用される。
【0017】
本発明においては、(A)フェノール類が芳香環上にカルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有する場合は、カルボン酸の存在下または非存在下で反応を行うことができる。しかし、(B)使用するフェノール類が芳香環上にカルボキシル基およびヒドロカルビロキシカルボニル基を有しない場合は、カルボン酸の存在下で反応を行うことが必要である。
【0018】
本発明のカルボン酸は、反応条件下で不活性な官能基が置換しているものでも良く、1価でも2価以上のものでも使用できる。たとえば、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸などがあげられ、具体的には、安息香酸、ナフトエ酸、フタル酸、トリメリット酸等が好ましく使用できる。
【0019】
カルボン酸を使用する場合には、反応条件下で、該カルボン酸が使用した低級アルコールでエステル化されて、カルボン酸エステルを生成することがある。
【0020】
フェノール類に対するカルボン酸のモル比は使用する化合物により適宜決定されるが、一般に0.01から10であり、0.1から2が好ましく使用できる。
【0021】
フェノール類として芳香環上にカルボキシル基を有するフェノール類を用いる場合は、反応条件下で、カルボキシル基が使用した低級アルコールでエステル化されて、ヒドロカルビロキシカルボニル基に変化したヒドロカルビルエーテル体が生成する時がある。
【0022】
フェノール類が芳香環上にヒドロカルビロキシカルボニル基を有する場合、反応条件等により異なるが、芳香環上のヒドロカルビロキシカルボニル基が一部低級アルコールによりエステル交換反応を起こすばあいがあるので、ヒドロカルビロキシカルボニル基のヒドロカルビル基が低級アルコールのヒドロカルビル基と同一であることが好ましい。
【0023】
本発明で使用するもうひとつの出発原料である低級アルコールは、1価でも2価以上でも良い。本発明の1価の低級アルコールは一般式
【化1】
R−OH (1)
(Rは炭素数1から10のヒドロカルビル基を示す。)
で示される低級アルコールである。本発明においては、フェノール類の芳香環上の水酸基の水素原子を低級アルコールのヒドロカルビル基で置換して、目的のフェノール類の芳香核ヒドロカルビル置換体が生成する。
【0024】
Rとしては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基などがあげられる。
【0025】
Rがアルキル基である低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノールなどが例示される。この中で、炭素数1から5のものが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノールが好ましく、より好ましくはメタノール、エタノールであり、さらに好ましくは、メタノールである。
【0026】
Rがアラルキル基である低級アルコールとしてはベンジルアルコール、α−フェネチルアルコール、β−フェネチルアルコールが例示され、ベンジルアルコールが好ましい。
【0027】
Rがアルケニル基である低級アルコールとしては、アリルアルコール、1−メチルアリルアルコール、2−メチルアリルアルコール、3−ブテン−1−オ−ル、3−ブテン−2−オ−ルなどが例示され、アリルアルコールが好ましい。
【0028】
Rがアルキニル基である低級アルコールとしては、2−プロピン−1−オール、2−ブチン−1−オ−ル、3−ブチン−1−オ−ル、3−ブチン−2−オ−ルなどが例示される。
【0029】
また、2価の低級アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−プロパンジオールなどがあげられる。
【0030】
フェノール類に対する低級アルコールのモル比は使用する化合物により適宜決定されるが、一般に2から500であり、2から100が好ましく使用できる。
【0031】
本反応は、不活性媒体の存在下でおこなうことができる[本発明製法(2)]。不活性媒体とは、フェノール類と低級アルコールを反応させる条件下において、フェノール類および低級アルコールと反応しない物質である。不活性媒体の例としては例えば、二酸化炭素、アルゴン、メタン等があげられ、二酸化炭素が好ましい。
【0032】
低級アルコールと不活性媒体の混合比に特に制限はないが、反応に用いるフェノール類の低級アルコールへの溶解度などを考慮して決定される。例えば、低級アルコールがメタノールと二酸化炭素の混合物の場合、メタノールと二酸化炭素の混合比は、10:90から90:10が好ましい。
【0033】
本発明においては、超臨界状態になる条件下で反応させることを特徴とするが、ここに本発明でいう超臨界状態とは次の状態をいう。
物質には、固有の気体、液体、固体の三態があり、さらに、臨界温度を超えかつ、臨界圧力を超えると、圧力をかけても凝縮しない流体相がある。この状態を超臨界状態という。このような状態にある流体は液体や気体の通常の性質と異なる性質を示す。超臨界状態の流体の密度は液体に近く、粘度は気体に近く、熱伝導率と拡散係数は気体と液体の中間的性質を示す、“液体ではない溶媒”であり、低粘性、高拡散性のために物質移動が有利となり、また高伝熱性のために高い熱移動性を得ることができる。
【0034】
次に本発明の反応について具体的に説明する。
反応温度の上限は限定的ではないが、フェノール類が分解しないよう、380℃以下が好ましい。反応圧力の上限も限定的ではないが、反応装置の耐圧を増すために、コストがかかるので、25MPa以下であることが好ましい。
【0035】
本発明製法(1)においては、フェノール類、低級アルコールまたは、カルボン酸の存在下においてはカルボン酸、の少なくとも一つが超臨界状態になる条件下で反応させることが必要である。
「フェノール類、低級アルコールまたは、カルボン酸の存在下においてはカルボン酸、の少なくとも一つが超臨界状態になる条件」とは、以下に示す、(a)−(h)の条件を含む。
カルボン酸の存在下においては、
(a)フェノール類、低級アルコールおよびカルボン酸の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(b)低級アルコールとカルボン酸の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(c)低級アルコールが超臨界状態になる温度および圧力条件。
(d)フェノール類が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(e)カルボン酸が超臨界状態になる温度および圧力条件。
また、カルボン酸の非存在下においては、
(f)フェノール類と低級アルコールの混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(g)低級アルコールが超臨界状態になる温度および圧力条件。
(h)フェノール類が超臨界状態になる温度および圧力条件。
上記のうち、カルボン酸の存在下においては(a)、(b)または(c)の条件で反応を行うことが好ましく、(a)または(b)の条件で反応を行うことがさらに好ましい。カルボン酸の非存在下においては、(f)または(g)の条件で反応を行うことが好ましく、(f)の条件で反応を行うことがさらに好ましい。
【0036】
次に、低級アルコールとしてメタノールを、フェノール類としてフェノールを用い、カルボン酸として安息香酸の存在下で反応を行う場合について具体的に説明する。
メタノールは圧力が8.0MPaを越え、かつ温度が240℃を越える範囲で超臨界状態となる。一方、フェノールは、圧力が6.1MPaを超え、かつ温度が421℃を超える範囲で超臨界状態となる。また、安息香酸は圧力が4.6MPaを越え、かつ温度が479℃を越える範囲で超臨界状態となる。この場合、フェノールのメチルエーテルの製造には、圧力が8.0MPaを超え、かつ温度が240℃を超える範囲で反応を行うことが必要であり、圧力が15MPaを超え、かつ温度が250℃を超える範囲で反応を行うことが好ましい。
【0037】
温度は、380℃以下であることが好ましい。温度がこれより高くなると、フェノール類が分解し、収率が下がる。圧力は、25MPa以下であることが好ましい。圧力がこれより高くなると、反応装置の耐圧を増すために、コストがかかるので、好ましくない。
【0038】
次に、本発明製法(2)について説明する。本発明製法(2)においては、不活性媒体の存在下、フェノール類、低級アルコール、不活性媒体、またはカルボン酸の存在下においてはカルボン酸、の少なくとも一つが超臨界状態になる条件下で反応させることが必要である。
「フェノール類、低級アルコール、不活性媒体、またはカルボン酸の存在下においてはカルボン酸、の少なくとも一つが超臨界状態になる条件」とは、以下に示す、(i)−(z)の条件を含む。
カルボン酸の存在下においては、
(i)フェノール類、低級アルコール、不活性媒体、およびカルボン酸の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(j)低級アルコール、不活性媒体、およびカルボン酸の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(k)低級アルコールとカルボン酸の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(l)低級アルコールと不活性媒体の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(m)フェノール類と不活性媒体の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(n)フェノール類と低級アルコールの混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(o)低級アルコールが超臨界状態になる温度および圧力条件。
(p)カルボン酸と不活性媒体の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(q)不活性媒体が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(r)フェノール類が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(s)カルボン酸が超臨界状態になる温度および圧力条件。
カルボン酸の非存在下においては、
(t)フェノール類、低級アルコール、および不活性媒体の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(u)低級アルコールと不活性媒体の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(v)フェノール類と不活性媒体の混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(w)フェノール類と低級アルコールの混合物が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(x)低級アルコールが超臨界状態になる温度および圧力条件。
(y)不活性媒体が超臨界状態になる温度および圧力条件。
(z)フェノール類が超臨界状態になる温度および圧力条件。
上記のうち、カルボン酸の存在下においては(i)、(j)、(k)、(l)または(m)の条件で反応を行うことが好ましく、(i)または(j)の条件で反応を行うことがさらに好ましい。カルボン酸の非存在下においては(t)、(u)または(v)の条件で反応を行うことが好ましく、(t)の条件で反応を行うことがさらに好ましい。
【0039】
次いで、低級アルコールとしてメタノールを、不活性媒体として二酸化炭素を、フェノール類としてフェノールを用い、カルボン酸として安息香酸の存在下で反応を行う場合について具体的に説明する。
二酸化炭素は圧力が7.4MPaを超え、かつ温度が31℃を超える範囲で超臨界状態となる。この場合、フェノールのメチルエーテルの製造には、二酸化炭素の臨界温度を超えかつ、臨界圧力を超えた条件で反応を行うことが必要であるが、メタノールと二酸化炭素の混合物が超臨界状態となる温度、圧力の範囲で反応を行うのが好ましい。例えばメタノールと二酸化炭素のモル比が75:25の混合物の場合、ジャ−ナル・オブ・ケミカル・ダイナミックス( Journal of Chemical Thermodynamics),第23巻、979頁(1991年)には、当該混合物の臨界温度は204℃、臨界圧力は12.75MPaであるとの記載がある。低級アルコールと不活性媒体の混合物が超臨界状態になる温度、圧力でフェノールのメチルエーテルの製造を行う場合には、例示された混合物が超臨界状態となる条件、すなわち圧力が12.75MPaを超えかつ温度が204℃を超えた範囲で行うことが好ましく、圧力が15MPaを超えかつ温度が250℃を超えた条件で行うことがより好ましい。
【0040】
本発明では反応をさらに促進させる目的で、必要に応じて、触媒を用いることができる。
【0041】
反応は種々の反応態様で実施できる。たとえば、回分方式で行っても良いし、流通方式で行っても良い。
【0042】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例における反応物および生成物の量は、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(島津製作所製)を用いて検出した各物質の全イオン量をもとに、面積百分率法を用いて求めた。
【0043】
実施例1
p−ヒドロキシ安息香酸メチル0.102gとメタノール5.425gをオートクレーブ(sus316製、内容積20ml、圧力系付属)に仕込み、オートクレーブ内の空気をアルゴンガスで置換した後、流動床加熱サンドバスにて350℃まで昇温し反応を開始した。反応時の圧力は15MPaであった。2時間後反応容器を急冷し、室温に戻った後に反応液をオートクレーブから取り出した。上記の方法により定量したところ、p−ヒドロキシ安息香酸メチルの転化率は35モル%で、p−メトキシ安息香酸メチルの選択率は100モル%であった。
【0044】
実施例2
p−ヒドロキシ安息香酸メチル0.243gとメタノール4.966gをオートクレーブ(sus316製、内容積20ml、圧力系付属)に仕込み、オートクレーブ内の空気をアルゴンガスで置換した後、流動床加熱サンドバスにて300℃まで昇温し反応を開始した。反応時の圧力は11MPaであった。2時間後反応容器を急冷し、室温に戻った後に反応液をオートクレーブから取り出した。上記の方法により定量したところ、p−ヒドロキシ安息香酸メチルの転化率は36モル%で、p−メトキシ安息香酸メチルの選択率は33モル%であった。
【0045】
実施例3
p−ヒドロキシ安息香酸メチル0.443gとメタノール5.494gをオートクレーブ(sus316製、内容積20ml、圧力系付属)に仕込み、オートクレーブ内の空気をアルゴンガスで置換した後、流動床加熱サンドバスにて300℃まで昇温し反応を開始した。反応時の圧力は12MPaであった。2時間後反応容器を急冷し、室温に戻った後に反応液をオートクレーブから取り出した。上記の方法により定量したところ、p−ヒドロキシ安息香酸メチルの転化率は31モル%で、p−メトキシ安息香酸メチルの選択率は48モル%であった。
【0046】
実施例4
p−ヒドロキシ安息香酸メチル2.418gとメタノール5.515gをオートクレーブ(sus316製、内容積20ml、圧力系付属)に仕込み、オートクレーブ内の空気をアルゴンガスで置換した後、流動床加熱サンドバスにて300℃まで昇温し反応を開始した。反応時の圧力は11MPaであった。2時間後反応容器を急冷し、室温に戻った後に反応液をオートクレーブから取り出した。上記の方法により定量したところ、p−ヒドロキシ安息香酸メチルの転化率は23モル%で、p−メトキシ安息香酸メチルの選択率は25モル%であった。
【0047】
実施例5
フェノール0.126g、安息香酸0.108gとメタノール5.430gをオートクレーブ(sus316製、内容積20ml、圧力系付属)に仕込み、オートクレーブ内の空気をアルゴンガスで置換した後、流動床加熱サンドバスにて350℃まで昇温し反応を開始した。反応時の圧力は16MPaであった。2時間後反応容器を急冷し、室温に戻った後に反応液をオートクレーブから取り出した。上記の方法により定量したところ、フェノールの転化率は46モル%で、アニソールの選択率は8モル%であった。
実施例6
p−クレゾール0.114g、安息香酸0.109gとメタノール5.537gをオートクレーブ(sus316製、内容積20ml、圧力系付属)に仕込み、オートクレーブ内の空気をアルゴンガスで置換した後、流動床加熱サンドバスにて350℃まで昇温し反応を開始した。反応時の圧力は17MPaであった。2時間後反応容器を急冷し、室温に戻った後に反応液をオートクレーブから取り出した。上記の方法により定量したところ、p−クレゾールの転化率は32モル%で、p−メチルアニソールの選択率は12モル%であった。
【0048】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、フェノール類と低級アルコールから、従来にない新しい方法で、該フェノール類のヒドロカルビルエーテルを製造することができる。
Claims (6)
- 芳香環上に少なくとも1つの水酸基を有し、カルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有していてもよい芳香族化合物と、低級アルコールから、該芳香族化合物の芳香環上の水酸基の水素原子を低級アルコールのヒドロカルビル基で置換して該芳香族化合物のヒドロカルビルエーテルを製造する方法において、下記(A)または(B)の条件下、該芳香族化合物、低級アルコールまたは、カルボン酸の存在下においてはカルボン酸、の少なくとも一つが超臨界状態になる条件で反応させることを特徴とする該芳香族化合物のヒドロカルビルエーテルの製造方法。
(A)該芳香族化合物が芳香環上にカルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有する場合は、カルボン酸の存在下または非存在下
(B)該芳香族化合物が芳香環上にカルボキシル基およびヒドロカルビロキシカルボニル基を有しない場合は、カルボン酸の存在下 - 芳香環上に少なくとも1つの水酸基を有し、カルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有していてもよい芳香族化合物と、低級アルコールから、該芳香族化合物の芳香環上の水酸基の水素原子を低級アルコールのヒドロカルビル基で置換して該芳香族化合物のヒドロカルビルエーテルを不活性媒体の存在下で製造する方法において、下記(A)または(B)の条件下、該芳香族化合物、低級アルコール、不活性媒体、またはカルボン酸の存在下においてはカルボン酸、の少なくとも一つが超臨界状態になる条件下で反応させることを特徴とする該芳香族化合物のヒドロカルビルエーテルの製造方法。
(A)該芳香族化合物が芳香環上にカルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有する場合は、カルボン酸の存在下または非存在下
(B)該芳香族化合物が芳香環上にカルボキシル基およびヒドロカルビロキシカルボニル基を有しない場合は、カルボン酸の存在下 - 低級アルコールおよび/または不活性媒体が超臨界状態になる条件下で反応させることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
- 芳香環上に少なくとも1つの水酸基を有し、カルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有していてもよい芳香族化合物がp−ヒドロキシ安息香酸である請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
- 芳香環上に少なくとも1つの水酸基を有し、カルボキシル基および/またはヒドロカルビロキシカルボニル基を有していてもよい芳香族化合物がフェノールであり、カルボン酸が、安息香酸である請求項1または2に記載の製造方法。
- 低級アルコールがメタノールまたはエタノールである請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
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