JP4111184B2 - ハイブリッド変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Description
かかるハイブリッド変速機においては、モータ/ジェネレータをバッテリからの電力により駆動するが、この駆動に際しては、通常の電気機器を駆動する場合と同様にモータ/ジェネレータをバッテリの定格電力以下で駆動する必要がある。
この従来技術は、バッテリの充放電を伴って駆動するモータを動力源とした電気自動車を前提とするが、バッテリ残存容量あるいはバッテリ電圧が基準値以下に低下したり、バッテリ温度が基準値以上に上昇するなどして、バッテリ状態量が基準以上の変化を生じた時に、モータの駆動力指令に対する力制御の応答速度を遅くしてバッテリの早期劣化を防止しようとするものである。
かように変速速度(入力回転加速度)が希望する方向とは逆のものになると、運転者が運転操作から予期しているとは逆の入力回転速度変化(エンジン回転速度変化)を生じて、運転者に違和感を抱かせる変速となる可能性があり、変速品質の低下を招くという問題が懸念される。
この修正を、変速速度が運転者の予期している方向とは逆になることのないように行って、上記した変速品質の低下に関する懸念を払拭し得るようにしたハイブリッド変速機の変速制御装置を提案することを主たる目的とする。
先ず前提となるハイブリッド変速機を説明するに、これは、
共線図上に配置される回転メンバとして複数個の回転メンバを有し、これら回転メンバのうち2個のメンバの回転状態を決定すると他のメンバの回転状態が決まる2自由度の差動装置を具え、前記複数個の回転メンバにそれぞれ、主動力源からの入力、駆動系への出力、および複数個のモータ/ジェネレータを結合し、これらモータ/ジェネレータからの動力を加減することにより、主動力源および駆動系間における変速比を無段階に変更可能なハイブリッド変速機である。
静的目標駆動力演算手段は、運転状態に応じた前記駆動系への静的目標駆動力を演算するもので、
初期過渡目標駆動力演算手段は、この静的目標駆動力を基に、所定の時系列変化で駆動系への駆動力を該静的目標駆動力に向かわせるための初期過渡目標駆動力を演算するものである。
目標変速状態演算手段は、運転状態に応じた、主動力源および駆動系間の目標変速状態を演算するもので、
最低変速速度演算手段は、この目標変速状態へ実変速状態を収束させる変速速度の最低値を規定した最低変速速度を演算するものである。
そして過渡目標値実現手段は、上記過渡目標駆動力を実現すると共に上記変速速度可能範囲内の変速速度で前記目標変速状態および実変速状態間の変速状態偏差を減らすよう主動力源およびモータ/ジェネレータを制御するものである。
上記過渡目標駆動力を実現すると共に上記変速速度可能範囲内の変速速度で前記目標変速状態および実変速状態間の変速状態偏差を減らすよう主動力源およびモータ/ジェネレータを制御するため、
実現可能領域から外れた初期過渡目標駆動力をそのまま主動力源およびモータ/ジェネレータの制御に資する場合に生ずるバッテリの劣化を防ぐことができると共に、
上記過渡目標駆動力を実現すると共に上記変速速度可能範囲内の変速速度で前記目標変速状態および実変速状態間の変速状態偏差を減らすよう主動力源およびモータ/ジェネレータを制御しても、駆動力および変速速度が運転者の予期している方向とは逆になることがなく、
運転者が運転操作から予期しているとは逆の駆動力変化や変速速度変化を生ずる事態を回避し、運転者に違和感を抱かせる変速となる懸念を払拭することができる。
最低変速速度を含むこの変速速度可能範囲で、目標変速状態および実変速状態間の変速状態偏差のみを考慮したロバストな制御系が、滑らかで且つ変速状態偏差を確実に減らすような変速速度を設定することができ、これにより、目標変速状態および実変速状態間のずれが大きくなってしまうような懸念をなくし得る。
つまり、駆動力にエネルギーを使いすぎ変速速度の不足により最低変速速度を実現できなくて実変速状態を目標変速状態に近づけることができなくなったり、実変速状態が目標変速状態から離れてしまう虞をなくし得る。
逆に、変速制御機構の変速速度可能範囲を超えて変速用のエネルギーを多く与えすぎ、そのため駆動力用のエネルギーが不足して駆動力不足を生ずるようなこともない。
適合要素が過渡目標駆動力だけとなり、適合工数の削減によって適合性を大いに高めることができる。
図1(a)は、本発明の一実施例になる変速制御装置を適用可能なハイブリッド変速機を例示し、これを本実施例においては前輪駆動車(FF車)用のトランスアクスルとして構成する。
図において1は変速機ケースを示し、該変速機ケース1の軸線方向(図の左右方向)左側にラビニョオ型プラネタリギヤセット2を、また図の右側に複合電流2層モータ3を内蔵させる。
ラビニョオ型プラネタリギヤセット2の更に左側には、変速機ケース1の外側であるが、エンジン(主動力源)ENGを配置する。
ディファレンシャルギヤ装置7に左右駆動車輪8を駆動結合する。
第1のシングルピニオン遊星歯車組4はサンギヤS2およびリングギヤR2にそれぞれロングピニオンP2を噛合させた構造とし、
第2のシングルピニオン遊星歯車組5は、共有ピニオンP2の他に、サンギヤS1およびリングギヤR1と、これらに噛合した大径のショートピニオンP1を有し、当該ショートピニオンP1を共有ピニオンP2に噛合させた構造とする。
そして遊星歯車組4,5のピニオンP1,P2を全て、共通なキャリアCにより回転自在に支持する。
そして4個の回転メンバの回転速度順は、図1(b)の共線図に示すごとく、サンギヤS1、リングギヤR2、キャリアC、サンギヤS2の順番である。
環状コイル3sと内側ロータ3riとで内側のモータ/ジェネレータである第1のモータ/ジェネレータMG1を構成し、環状コイル3sと外側ロータ3roとで外側のモータ/ジェネレータである第2のモータ/ジェネレータMG2を構成する。
ここでモータ/ジェネレータMG1,MG2はそれぞれ、複合電流をモータ側が負荷として供給される時は供給電流に応じた個々の方向と速度(停止を含む)の回転を出力するモータとして機能し、複合電流を発電機側が負荷として印加した時は外力による回転に応じた電力を発生する発電機として機能する。
サンギヤS1は、これからエンジンENGと反対の後方へ延在する中空軸11を介して第1のモータ/ジェネレータMG1(ロータ4ri)に結合し、このモータ/ジェネレータMG1および中空軸11を遊嵌する中心軸12を介してサンギヤS2を第2のモータ/ジェネレータMG2(ロータ4ro)に結合する。
出力歯車14は、カウンターシャフト6上のカウンター歯車15に噛合させ、出力歯車14からの変速機出力回転が、カウンター歯車15を経由し、その後、カウンターシャフト6を経てディファレンシャルギヤ装置7に至り、このディファレンシャルギヤ装置により左右駆動車輪8に分配されるものとし、これらで車輪駆動系を構成する。
また共線図の縦軸は、各回転メンバの回転速度、つまりリングギヤR2へのエンジン回転数ωE(変速機入力回転数ωi)、サンギヤS1(モータ/ジェネレータMG1)の回転数ω1、キャリアCからの変速機出力(Out)回転数ωo、およびサンギヤS2(モータ/ジェネレータMG2)の回転数ω2を示し、2個の回転メンバの回転速度が決まれば他の2個の回転メンバの回転速度が決まる。
EVモードは、図1(b)にレバーEVにより例示するごとく、エンジンENGを停止した状態で、両モータ/ジェネレータMG1,MG2(または一方のモータ/ジェネレータ)からの動力のみにより駆動系への出力Outを決定する。
EIVTモードは、図1(b)にレバーEIVTにより例示するごとく、エンジンENGからの動力および両モータ/ジェネレータMG1,MG2(または一方のモータ/ジェネレータ)からの動力により駆動系への出力Outを決定する。
21は、エンジンENGおよびハイブリッド変速機の統合制御を司るハイブリッドコントローラ21で、このハイブリッドコントローラ21はエンジンENGの目標力T* Eおよび目標回転数ω* E(目標入力回転数ω* i)に関する指令をエンジンコントローラ22に供給し、エンジンコントローラ22はエンジンENGを当該目標値T* Eおよびω* E(ω* i)が達成されるよう運転させる。
ハイブリッドコントローラ21は、アクセルペダル踏み込み量APOおよび車速VSPから求め得る要求駆動力P* o、車速VSP、およびバッテリ25の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)から運転者が希望する運転状態を実現するように、モード選択を行うと共に選択モードに応じた変速制御を実行して、上記した目標エンジン力T* E、目標エンジン回転数ω* E(ω* i)、および目標モータ/ジェネレータ力T* 1,T* 2を決定して指令するものとする。
従って静的目標値演算手段101は、本発明における静的目標駆動力演算手段、および、目標変速状態演算手段(変速状態は、変速比に代表されるように、車速VSPを一定とすると入力回転であるエンジン回転数として捉えられるため)に相当する。
なお車速VSPは、例えば出力軸回転速度ωoから次式を用いて演算される。
VSP=kv・ωo・・・(1)
ここで、kvは、タイヤ半径やファイナルギヤ比により決まる定数である。
次に、次式を用いて目標駆動力T* Oと出力回転数ωoとから、目標駆動動力P* oを演算する。
P* o=ωo・T* O・・・ (1)
次に、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)から、例えば、SOCが高いほどバッテリ放電量を多くし、SOCが低いほどバッテリ充電量を多くするように、目標バッテリ充放電量P* Bを決める。
先ず、目標エンジンパワーP* Eと、目標駆動動力P* oと、目標バッテリ充放電量P* Bとが次式で表される関係になるよう目標エンジンパワーP* Eを設定する。
P* E=P* o+P* B・・・ (2)
次に、この目標エンジンパワーP* Eをエンジンで発生させるとき燃費最適となる目標エンジン回転速度ω* Eを、図5に示す燃費最適目標エンジン回転速度マップを用いて、目標エンジンパワーP* Eから検索する。
しかし、後述する目標値修正手段103により、変速過渡時においてエンジン回転加速度が制限される場合があり、この場合、目標エンジン回転数ω* Eが実現されなくなる。
このように目標エンジン回転数ω* Eが実現されない場合、目標エンジンパワーP* Eが得られなくなる。
そこで、目標エンジン力T* E0 は次式で表されるように、目標エンジンパワーP* E を実際のエンジン回転数ωiで除した値とする。
T* E0=P* E /ωi・・・(3)
ここで、定常時などのように目標エンジン回転数ω* Eと実際のエンジン回転数ωEとが合っていれば、エンジン力は燃費最適なエンジン力となる。
上記駆動力に関する所定の時系列変化は、実験やシミュレーションにより最適なものを予め求めておく過渡特性で、例えば車速VSPやアクセル開度APOに応じ時定数の異なる二次遅れのフィルタを用いて静的目標駆動力T* o0から初期過渡目標駆動力T* o1は求めることができる。
具体的には、例えば図6に例示するように、静的目標エンジン回転数ω* Eおよび実エンジン回転数ωE間におけるエンジン回転偏差ΔωE(=ω* E−ωE)、つまり変速状態偏差に関する変化特性として予め設定しておいた最低変速速度(最低エンジン回転加速度ΔωEmin)のデータマップを基にエンジン回転偏差ΔωEから検索して最低変速速度(最低エンジン回転加速度ΔωEmin)を求める。
具体的には、例えば図7に例示するように、静的目標エンジン回転数ω* Eおよび実エンジン回転数ωE間におけるエンジン回転偏差ΔωE(=ω* E−ωE)、つまり変速状態偏差に関する変化特性として予め設定しておいた理想変速速度(理想エンジン回転加速度ΔωEOPT)のデータマップを基にエンジン回転偏差ΔωEから検索して理想変速速度(理想エンジン回転加速度ΔωEOPT)を求める。
なお理想変速速度(理想エンジン回転加速度ΔωEOPT)は、前記の最低変速速度(最低エンジン回転加速度ΔωEmin)を下回らない値にすること勿論である。
図8の制御プログラムを以下に説明する。
ステップS101においては、以下の式における補正項d1,d2を演算する。
モータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクをそれぞれT* 1,T* 2とし、ハイブリッド変速機の諸元で決まる常数をb11,b12とし、エンジントルクや走行抵抗など、ハイブリッド変速機に作用するモータ/ジェネレータトルク以外のトルクによる外乱をd1とすると、過渡目標エンジン回転加速度Δω* Eは次式で表される。
Δω* E=d1+b11・T* 1+b12・T* 2・・・(5)
また、モータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクをそれぞれT* 1,T* 2とし、ハイブリッド変速機の諸元で決まる常数をb21,b22とし、エンジントルクや走行抵抗など、ハイブリッド変速機に作用するモータ/ジェネレータトルク以外のトルクによる外乱をd2とすると、過渡目標駆動力T* oは次式で表される。
T* o=d2+b21・T* 1+b22・T* 2・・・(6)
ステップS101では上式における補正項d1,d2を演算する。
先ず、(5)式の右辺における補正項d1を左辺に移したものに相当する式を次式のようにuiと定義する。
ui=ΔωE−d1=b11・T1+b12・T2・・・(7)
次に、この式を用いて次式で表されるように最低エンジン回転加速度ΔωEminから、これに相当する前記のuilowを求める。
uilow=ΔωEmin−d1・・・(8)
ステップS103では、(6)式の右辺における補正項d2を左辺に移したものに相当する式を次式のようにyと定義し、
y=To−d2=b21・T1+b22・T2・・・(9)
この式を用いて次式で表されるように初期過渡目標駆動力T* o1に相当するyiを求める。
yi=T* o−d2・・・(10)
モータ/ジェネレータMG1,MG2の実現可能なモータトルク範囲は、これら4頂点を持つ長方形で表される。
そして、モータトルクT1およびT2の二次元座標上の上記4頂点を、式(7)および式(9)を用いて前記のuiとyに関した二次元座標上に写像すると、モータ/ジェネレータMG1,MG2の実現可能なモータトルク範囲は図10に波線Aで例示するように、写像された4頂点の平行四辺形として変速速度(入力回転加速度)および駆動力の二次元座標上に表される。
バッテリ電力PBと、モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数N1,N2およびトルクT1,T2との関係は次式で表される。
PB=N1・T1+N2・T2・・・(11)
よってバッテリの最大放電量PBmaxおよび最小放電量PBminはそれぞれ次式で表される。
PBmax=N1・T1+N2・T2・・・(12)
PBmin=N1・T1+N2・T2・・・(13)
前記式(7)および式(9)を用いて式(13)および式(13)から、前記uiおよびyと、PBmaxおよびPBminとの関係が次式のように得られる。
PBmax=b1max(N1, N2)ui+b2max(N1, N2)y・・・(14)
PBmin=b1min(N1, N2)ui+b2min(N1, N2)y・・・(15)
ステップS107では、これら頂点のうち最も大きなuiをuimaxとし、最も小さなuiをuiminとし、これらの間のui可能範囲を演算する。
ステップS109では、ステップS106で求めた頂点のうち最も大きなyをymaxとし、最も小さなyをyminとし、これらの間のy可能範囲を演算する。
ステップS110では、前記のyiをy可能範囲内の値、つまり、ymax以下、ymin以上の値に修正してy0とする。
ステップS111では、y0でのuiの最大値uimaxおよびuiの最小値uiminを以下のようにして演算する。
y=y0の時のモータトルク範囲の最大値ui0mmaxを演算すると共に、式(14)および式(15)と、y=y0との交点のうち大きい方のui0pmaxを演算し、ui0mmaxとui0pmaxの小さい方をuimaxとする。
また、y=y0の時のモータトルク範囲の最小値ui0mminを演算すると共に、式(14)および式(15)と、y=y0との交点のうち小さい方のui0pminを演算し、ui0mminとui0pminの大きい方をuiminとする。
ステップS112においてui0がuimin≦ui0≦uimaxでないと判定した場合、ステップS114で、ui=uilowとしたときにモータトルク範囲内で、且つ、バッテリ電力範囲内であるyの最大値をymaxとし、最小値をyminとする。
次のステップSl16では、ステップSl12の判定結果がNoであってyOがyminとymaxとの間にないことは判っていることから、次にyOがymin〜ymaxに対し上方、下方のどちら側に外れているかをチェックする。
ステップSl16でyO<ymin(yOがymin〜ymaxに対し下方に外れている)と判定する場合は制御をステップSl17に進め、そうでなければ、つまりyO>ymax(yOがymin〜ymaxに対し上方に外れている)と判定する場合は制御をに進める。
なお、ここでの処理はステップS112でNoと判定した場合のものであることから、(uimax−ui)の符号と(uimin−ui)の符号とが同じであるため、ステップS117では(uimax−ui)の代わりに(uimin−ui)を用いてもよいことは勿論である。
従って、ステップSl17で最小エンジン回転加速度(最低変速速度)の符号と、差値(uimax−uiO)の符号とが異なると判定する場合には、ステップSl19においてyf=yminとすることにより最小エンジン回転加速度を確保し、
ステップSl17で最小エンジン回転加速度(最低変速速度)の符号と、差値(uimax−uiO)の符号とが同じであると判定する場合には、ステップSl18においてyf=(1-rto)×ymin+rto×y0の演算によりyfを求める。
この操作により、変速比の偏差が大きいほどエンジン回転加速度(変速速度)を速くすることができるし、また、後述するごとくエンジン回転偏差ΔωEが小さいときにyfがyOとyminの間でハンチングすることによる駆動力とエンジン回転数のハンチング現象を防止することができる。
このステップSl21で最小エンジン回転加速度(最低変速速度)の符号と、差値(uimax−uiO)の符号とが異なると判定する場合には、ステップSl23においてyf=ymaxとすることにより最小エンジン回転加速度を確保し、
ステップSl21で最小エンジン回転加速度(最低変速速度)の符号と、差値(uimax−uiO)の符号とが同じであると判定する場合には、ステップSl22においてyf=(1-rto)×ymax+rto×y0の演算によりyfを求める。
この操作により、変速比の偏差が大きいほどエンジン回転加速度(変速速度)を速くすることができるし、また、後述するごとくエンジン回転偏差ΔωEが小さいときにyfがyOとyminの間でハンチングすることによる駆動力とエンジン回転数のハンチング現象を防止することができる。
また、ステップS113またはステップS124でuifmaxまたはuifminを求めた後はステップS125で、式(9)の関係を用いてyfおよびd2から次式の演算により過渡目標駆動力T* oを求める。
T* o=yf+d2・・・(16)
次のステップS126においては、式(7)の関係を用いてuifmaxと、uifminと、d1とから次式の演算によりエンジン回転加速度上限値Δωimaxおよびエンジン回転加速度下限値Δωiminを求め、これらの間をエンジン回転加速度可能範囲Δuiする。
Δωimax=uifmax+d1・・・(17)
Δωimin=uifmin+d1・・・(18)
初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点が、図13にハッチングを付して示す実現可能領域(図10と同様なもの)を外れている場合、バッテリ定格電力内に収まらなくなってバッテリの寿命低下を生ずるから、以下に示すごとく初期過渡目標駆動力を修正して過渡目標駆動力を求める。
そして、初期過渡目標駆動力および理想変速速度が極性変化することなく、且つ、最低変速速度以上の変速速度を確保しつつ、初期過渡目標駆動力の最も小さな修正で初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点を実現可能領域内に持ち来す駆動力を、図13に例示するように基本修正駆動力D,Eとする。
Dは、初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点が変速比偏差正の時の基本修正駆動力を例示し、Eは、初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点が変速比偏差負の時の基本修正駆動力を例示する。
基本修正駆動力がDで示すように最低変速速度駆動力Cよりも大きい場合(初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点が変速比偏差正の領域の場合)、変速比偏差が大きければ基本修正駆動力Dを過渡目標駆動力T* oと定めるが、変速比偏差が小さくなるにつれて基本修正駆動力Eに近い値を過渡目標駆動力T* oと定める。
過渡目標値演算手段105は、上記のよう初期過渡目標駆動力を修正して過渡目標駆動力T* oを求めた後、修正後の過渡目標駆動力T* oのもとで実現可能領域内に居続けるための変速速度可能範囲Δuiを求める。
エンジン制御手段108は、静的目標値演算手段101で前記のごとくに求めた静的目標エンジントルクT* E0、および、手段104で前記のごとくに求めた理想エンジン回転加速度ΔωEOPTを基に、理想エンジン回転加速度ΔωEOPTが実現された時のハイブリッド変速機の回転系に係わる運動エネルギーの変化量を算出し、この運動エネルギー量を補償するような目標エンジントルクT* Eを求める。
上記修正後の過渡目標駆動力を実現すると共に上記変速速度可能範囲内の変速速度で目標変速状態(目標変速比)および実変速状態(実変速比)間の変速状態偏差(変速比偏差)を減らすようエンジンおよびモータ/ジェネレータを制御するため、
実現可能領域から外れた初期過渡目標駆動力をそのまま主動力源およびモータ/ジェネレータの制御に資する場合に生ずるバッテリの劣化を防ぐことができると共に、
上記過渡目標駆動力を実現すると共に上記変速速度可能範囲内の変速速度で前記目標変速状態および実変速状態間の変速状態偏差を減らすよう主動力源およびモータ/ジェネレータを制御しても、駆動力および変速速度が運転者の予期している方向とは逆になることがなく、
運転者が運転操作から予期しているとは逆の駆動力変化や変速速度変化を生ずる事態を回避し、運転者に違和感を抱かせる変速となる懸念を払拭することができる。
最低変速速度を含むこの変速速度可能範囲で、目標変速状態および実変速状態間の変速状態偏差のみを考慮したロバストな制御系が、滑らかで且つ変速状態偏差を確実に減らすような変速速度を設定することができ、これにより、目標変速状態および実変速状態間のずれが大きくなってしまうような懸念をなくし得る。
つまり、駆動力にエネルギーを使いすぎ変速速度の不足により最低変速速度を実現できなくて実変速状態を目標変速状態に近づけることができなくなったり、実変速状態が目標変速状態から離れてしまう虞をなくし得る。
逆に、変速制御機構の変速速度可能範囲を超えて変速用のエネルギーを多く与えすぎ、そのため駆動力用のエネルギーが不足して駆動力不足を生ずるようなこともない。
適合要素が過渡目標駆動力だけとなり、適合工数の削減によって適合性を大いに高めることができる。
最低変速速度線上で実現可能領域内の最も大きな駆動力を最低変速速度駆動力Cとし、
初期過渡目標駆動力および理想変速速度が極性変化することなく、且つ、最低変速速度以上の変速速度を確保しつつ、初期過渡目標駆動力の最も小さな修正で初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点を実現可能領域内に持ち来す駆動力を基本修正駆動力D,Eとし、
基本修正駆動力Eが最低変速速度駆動力Cよりも小さい場合(初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点が変速比偏差負の領域の場合)、基本修正駆動力Eを過渡目標駆動力T* oと定め、
基本修正駆動力Dが最低変速速度駆動力Cよりも大きい場合(初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点が変速比偏差正の領域の場合)、変速比偏差が大きければ基本修正駆動力Dを過渡目標駆動力T* oと定めるが、変速比偏差が小さくなるにつれて基本修正駆動力Eに近い値を過渡目標駆動力T* oと定めることから、以下の作用効果が得られる。
実現可能領域から外れた初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点がFで示すように変速比偏差負の時は、初期過渡目標駆動力および理想変速速度の極性変化防止上、および、最低変速速度の確保という目的のため、そして駆動力のできるだけ少ない修正で初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点Fを実現可能領域に持ち来す要求から、本実施例と同じく初期過渡目標駆動力をG点相当値に修正して過渡目標駆動力とするが、
初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点がHで示すように変速比偏差正の時は、初期過渡目標駆動力および理想変速速度の極性変化防止上、および、駆動力のできるだけ少ない修正で初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点Hを実現可能領域に持ち来す要求から、本実施例と異なり初期過渡目標駆動力を無条件にI点相当値に修正して過渡目標駆動力とする。
図17(a)に示すような目標変速比に対する実変速比の時系列的な大小変化(変速比偏差の正負切り替え)に呼応し、初期過渡目標駆動力を修正して求めた過渡目標駆動力が同図(b)に示すようにG点相当の駆動力およびI点相当の駆動力間で不連続となって、加減速感を伴う弊害を生ずる。
運転状態の変化(外乱を含む)により理想変速速度が例えば図10に示すF点とH点(図16に同じ)との間で最低変速速度の前後を往来し、そのとき変速速度方向(変速比偏差の正負)も切り替わる場合において、
この現象が、ほとんど定常運転でありながら、外乱などにより僅かな変速比偏差が発生するような運転状態で起こることから、初期過渡目標駆動力をH点相当値からG点相当値(図16に同じ)と殆ど同じJ点相当値に修正して過渡目標駆動力とすることになる。
これがため、図11に示すような目標変速比に対する実変速比の時系列的な大小変化(変速比偏差の正負切り替え)があっても、変速比偏差が小さい間は、初期過渡目標駆動力を修正して求めた過渡目標駆動力が図12に示すようにG点相当の駆動力近辺に落ち着いており、図17につき前述した、過渡目標駆動力がG点相当値およびI点相当値間で不連続となる問題を生ずることがない。
図15の瞬時t1における踏み込みにより初期過渡目標駆動力が図14の矢Kで示すように増大すると、目標変速比も図15(a)に示すように急増して、これと実変速比との偏差が正値を増大される結果、図14にHで例示する初期過渡目標駆動力および理想変速速度の組み合わせ点における初期過渡目標駆動力がI点相当値へと修正され、過渡目標駆動力と定められる。
そして踏み込み時t1以後、目標変速比への変速が図15(a)に示すように進行すると、バッテリ電力範囲PBmax〜PBminが図14に矢Lの方向へ二点鎖線で示すように変化することによる(モータトルク範囲Aも若干変化するが、図面の煩雑を避けるため図14では変化しないものとして示した)実現可能領域の変化で、上記のような過渡目標駆動力のもとでも変速速度0の点が実現可能領域内に位置して実変速比を目標変速比に保つことができる。
変速をエンジントルクがアシストすることとなり、過渡目標駆動力へのパワー不足を減ずることができ、より理想に近い駆動力と変速とをすることができる。
理想の駆動力に対する不足分をエンジントルクがアシストすることとなり、より理想に近い駆動力を出すことができる。
2 ラビニョオ型プラネタリギヤセット(差動装置)
3 複合電流2層モータ
ENG エンジン(主動力源)
4 第1のシングルピニオン遊星歯車組
5 第2のシングルピニオン遊星歯車組
6 カウンターシャフト
7 ディファレンシャルギヤ装置
8 駆動車輪
14 出力歯車
MG1 第1モータ/ジェネレータ
MG2 第2モータ/ジェネレータ
S1 サンギヤ
S2 サンギヤ
P1 ショートピニオン
P2 ロングピニオン
R1 リングギヤ
R2 リングギヤ
C キャリア
21 ハイブリッドコントローラ
22 エンジンコントローラ
23 モータコントローラ
24 インバータ
25 バッテリ
26 アクセル開度センサ
27 車速センサ
28 エンジン回転センサ
101 静的目標値演算手段
102 初期過渡目標駆動力演算手段
103 最低変速速度演算手段
104 理想変速速度演算手段
105 過渡目標値演算手段
106 エンジン回転サーボ制御手段
107 モータ制御手段
108 エンジン制御手段
Claims (5)
- 共線図上に配置される回転メンバとして複数個の回転メンバを有し、これら回転メンバのうち2個のメンバの回転状態を決定すると他のメンバの回転状態が決まる2自由度の差動装置を具え、前記複数個の回転メンバにそれぞれ、主動力源からの入力、駆動系への出力、および複数個のモータ/ジェネレータを結合し、これらモータ/ジェネレータからの動力を加減することにより、主動力源および駆動系間における変速比を無段階に変更可能なハイブリッド変速機において、
運転状態に応じた前記駆動系への静的目標駆動力を演算する静的目標駆動力演算手段と、
該手段により求めた静的目標駆動力を基に、所定の時系列変化で駆動系への駆動力を該静的目標駆動力に向かわせるための初期過渡目標駆動力を演算する初期過渡目標駆動力演算手段と、
運転状態に応じた、前記主動力源および駆動系間の目標変速状態を演算する目標変速状態演算手段と、
この目標変速状態へ実変速状態を収束させる変速速度の最低値を規定した最低変速速度を演算する最低変速速度演算手段と、
前記モータ/ジェネレータ、該モータ/ジェネレータ用のバッテリおよび前記主動力源の現状で実現可能な、駆動力および変速速度の組み合わせに関した、これら駆動力および変速速度の二次元座標上における実現可能領域内で前記最低変速速度以上の変速速度を確保できるように前記初期過渡目標駆動力を修正して過渡目標駆動力を求めると共に、該修正後の過渡目標駆動力のもとで前記実現可能領域内に居続けるための変速速度可能範囲を求める過渡目標値演算手段と、
前記過渡目標駆動力を実現すると共に前記変速速度可能範囲内の変速速度で前記目標変速状態および実変速状態間の変速状態偏差を減らすよう主動力源およびモータ/ジェネレータを制御する過渡目標値実現手段とを具備することを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。 - 請求項1に記載のハイブリッド変速機の変速制御装置において、
前記過渡目標値演算手段は、前記実現可能領域内で前記最低変速速度以上の変速速度が確保されることを条件に、前記初期過渡目標駆動力に最も近い駆動力を前記過渡目標駆動力とするものであることを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。 - 請求項1または2に記載のハイブリッド変速機の変速制御装置において、
前記過渡目標値演算手段は、前記最低変速速度が0近辺であり、運転状態の変化により変速速度が該最低変速速度の前後を往来するときに変速速度方向が切り替わる場合、一方の変速速度方向である時に求めた、前記初期過渡目標駆動力に最も近い第1の過渡目標駆動力と、他方の変速速度方向である時に求めた、前記初期過渡目標駆動力に最も近い第2の過渡目標駆動力とを比較し、第1の過渡目標駆動力が第2の過渡目標駆動力よりも前記初期過渡目標駆動力に近いなら、前記目標変速状態および実変速状態間の変速状態偏差が大きいほど前記過渡目標駆動力を第1の過渡目標駆動力に近い値とし、前記変速状態偏差が小さいほど前記過渡目標駆動力を第2の過渡目標駆動力に近い値とするものであることを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機の変速制御装置において、
前記変速速度の理想値を規定した理想変速速度を演算する理想変速速度演算手段を設け、
この手段で求めた理想変速速度が実現された時の前記モータ/ジェネレータおよび主動力源を含む伝動機構の回転運動エネルギーの変化量に相当するエネルギー量を主動力源に余分に指令するよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機の変速制御装置において、
前記初期過渡目標駆動力と過渡目標駆動力との差を補償するよう主動力源のトルクを補正するよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。
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