JP4108466B2 - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輌、弱電、OA機器等に使用できる熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ABS樹脂、ASA樹脂及びAES樹脂等に代表されるゴム強化樹脂は、耐衝撃性、剛性等の機械特性や加工性、表面外観に優れており、車輌、弱電、OA機器等広範な用途に使用されている。
近年、このような用途(例えば筐体など)では、薄肉軽量で複雑な形状の成形品を使用することがあるが、薄肉で複雑な形状にすると耐衝撃性が低下しやすくなる傾向にあった。そこで、耐衝撃性の低下を回避するために、ゴム質重合体量の多いゴム強化樹脂を成形品の原料として用いることがあった。
しかしながら、ゴム質重合体量の多いゴム強化樹脂を用いると、加工性、表面外観、引張強度、曲げ強度などの機械的特性等が低下した。
【0003】
加工性、表面外観、機械的特性を低下させずに、耐衝撃性を向上させる方法については、これまで多数の提案がなされており、例えば、ゴム強化樹脂にシリコーンオイルを添加する方法が数多く提案されている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、ゴム強化樹脂にシリコーンオイルを添加すれば、耐衝撃性の向上のみならず、表面外観、難燃性、摺動性の向上、フィッシュアイ、ブロッキング、シルバー、色ムラの防止等、多岐にわたる効果が発揮されるとされている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−279045号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1を含めたこれまでの提案では、シリコーンオイルをゴム強化樹脂のラテックス又は粉体に添加しているため、分散性が低くなりやすかった。その結果、特許文献1に記載されている様に、シリコーンオイルの分散形態が1μmを超える場合には、この樹脂を用いた成形品に黒条痕、シルバーストリーク、色ムラ等の表面外観不良現象が顕著に生じることがあった。また、シリコーンオイルをゴム強化樹脂のラテックス又は粉体に添加する場合には、特別な手段を必要とする上に、微細に分散させようとすると生産性が低下した。
本発明の目的は、引張強度、曲げ強度等の機械特性および加工性を低下させずに、耐衝撃性が向上し、成形品の表面外観に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。さらには、その熱可塑性樹脂組成物を簡便かつ高生産性で製造できる製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法を発明した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、ゴム質重合体(a)およびシリコーンオイル(s)の存在下で、芳香族ビニル化合物(b)と、シアン化ビニル化合物(c)とのいずれか1種以上を含有する原料単量体を重合する重合工程を有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
(a)〜(c)成分の合計を100質量%とした場合に、ゴム質重合体(a)が30〜80質量%、芳香族ビニル化合物(b)が0〜70質量%、シアン化ビニル化合物(c)が0〜40質量%であり、
(a)〜(c)成分の合計100質量部に対してシリコーンオイル(s)量が0.06〜6質量部であることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法の一実施形態例について説明する。この実施形態例における熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、まず、溶解工程において、原料単量体の少なくとも一部にシリコーンオイル(s)を溶解させ、次いで、含浸工程において、シリコーンオイル(s)が溶解した原料単量体をゴム質重合体(a)中に含浸させる。そして、重合工程において、ゴム質重合体(a)およびシリコーンオイル(s)の存在下で原料単量体を重合して熱可塑性樹脂組成物を得る。
【0008】
溶解工程において、シリコーンオイル(s)を溶解させる原料単量体は、芳香族ビニル化合物(b)と、シアン化ビニル化合物(c)と、(a)〜(c)成分の少なくとも1種と共重合可能な他のビニル化合物(d)とのいずれか1種以上を含有するものである。
ここで、芳香族ビニル化合物(b)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物(c)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
(a)〜(c)成分の少なくとも1種と共重合可能な他のビニル化合物(d)としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらは、1種又は2種以上用いることができる。
【0009】
シリコーンオイル(s)は、一般式が、−Si(R)2 −O−(Rは、メチル基、エチル基、プロピル基等のC1〜C6のアルキル基またはフェニル基を示す)の構造単位を有するものである。このようなシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル等が挙げられるが、これらの中でも、特に、ジメチルシリコーンオイルが好ましい。
【0010】
原料単量体にシリコーンオイル(s)を溶解させる際には、原料単量体の一部にシリコーンオイル(s)を溶解させてもよいし、原料単量体の全部にシリコーンオイル(s)を溶解させてもよい。また、シリコーンオイル(s)の一部を原料単量体に溶解させてもよいし、全部を原料単量体に溶解させてもよい。シリコーンオイル(s)の一部を原料単量体に溶解させた場合には、残部を含浸工程あるいは重合工程で添加する。
【0011】
含浸工程において、シリコーンオイルを溶解した単量体混合物を含浸させるゴム質重合体(a)としては、例えば、ポリブタジエン、ブタジエンおよびブタジエンと共重合可能なビニル化合物の共重合体、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルと共重合可能なビニル化合物の共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ブテン−非共役ジエン共重合体等が挙げられる。
【0012】
上述したゴム質重合体(a)の質量平均粒子径は、好ましくは50〜3000nmであり、より好ましくは80〜1500nmであり、更に好ましくは100〜1000nmである。ゴム質重合体の質量平均粒子径が50〜3000nmであれば、耐衝撃性および表面外観がより向上する。
【0013】
ゴム質重合体(a)のゲル含有率としては、好ましくは50〜99質量%であり、より好ましくは60〜96%である。ゲル含有率が50質量%未満であると、耐衝撃性および機械強度が低下することがあり、99質量%を超えると、耐衝撃性および表面外観が低下することがある。
【0014】
ゴム質重合体(a)の製造方法には特に制限はない。すなわち、粒子径の制御方法にも制限はなく、例えば、乳化重合によって得られた比較的小粒子径のゴム質重合体を酸等により化学的に凝集させる化学凝集法や、ホモミキサー等により物理的に凝集させる物理凝集法、長時間をかけて粒子径を大きくする方法などを採用できる。
【0015】
このようなゴム質重合体(a)中に、シリコーンオイル(s)を溶解させた原料単量体を含浸させる際の具体的方法としては、例えば、攪拌翼およびジャケット付き反応槽にゴム質重合体(a)を仕込み、これにシリコーンオイル(s)を溶解させた原料単量体を一括又は連続して滴下し、所定時間放置する方法などが挙げられる。この方法を採用した場合には、含浸工程の効率が向上することから、含浸温度を40〜80℃にすることが好ましい。また、同様の理由から、含浸時間を15〜120分間にすることが好ましく、30〜60分間にすることがより好ましい。
【0016】
ここで、各成分の割合は、ゴム質重合体(a)と原料単量体との合計(すなわち、(a)〜(d)成分の合計)を100質量%とした場合に、ゴム質重合体(a)が30〜80質量%、芳香族ビニル化合物(b)が0〜70質量%、シアン化ビニル化合物(c)が0〜40質量%、(a)〜(c)の少なくとも1種と共重合可能な他のビニル化合物(d)が0〜70質量%である。また、シリコーンオイル(s)の量は、ゴム質重合体(a)と原料単量体との合計(すなわち、(a)〜(d)成分の合計)100質量部に対して0.06〜6質量部であり、好ましくは0.1〜3.0質量部であり、より好ましくは0.2〜1.0質量部である。各成分が上記範囲にあることで、機械物性および加工性が低下することなく、衝撃強度が向上し、成形品の表面外観が良好になる。
【0017】
重合工程においては、重合開始剤を添加して全ての原料単量体を重合する。すなわち、一部の原料単量体にシリコーンオイル(s)を溶解させ、これをゴム質重合体(a)に含浸させた場合には、重合工程にて、残りの原料単量体および重合開始剤を添加して原料単量体を重合する。また、全部の原料単量体にシリコーンオイル(s)を溶解させ、これをゴム質重合体(a)に含浸させた場合には、重合工程にて、重合開始剤を添加して原料単量体を重合する。その際、重合開始剤としては、クメンヒドロパーオキサイドなどの公知の重合開始剤を使用できる。
このような重合工程によって、原料単量体の重合体とともにシリコーンオイル(s)をゴム質重合体(a)内に固定することができ、本実施形態例の熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0018】
このようにして製造された熱可塑性樹脂組成物には、さらに他の樹脂成分が混合されてもよい。他の樹脂成分としては、目的に応じて、従来から使用されている樹脂の中から任意に選択でき、例えば、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等を用いることができる。
他の樹脂成分を混合する場合には、他の樹脂成分の混合量が、熱可塑性樹脂組成物中の10質量%以上100質量%未満であることが好ましい。他の樹脂成分の混合量が上記範囲であれば、他の樹脂成分を混合したことの効果を発揮しつつ、耐衝撃性、機械特性を高くし、表面外観を良好にできる。
【0019】
ここで、他の樹脂成分の例であるスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン等の単独重合体又はこれらの共重合体、スチレン、α−メチルスチレンとこれらと共重合可能な不飽和単量体との共重合体が挙げられる。このようなものとしては、例えば、一般ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、耐熱ポリスチレン(α−メチルスチレン重合体)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−フェニルマレイミド共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0020】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、(2,6−ジメチル−1,4フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーあるいはこれらをスチレン系樹脂で変性したものを用いることができる。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンの単独重合体又はこれらの共重合体、前記α−オレフィンとα−オレフィンと共重合可能な不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。
【0022】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルおよび塩化ビニルと共重合可能な不飽和単量体の共重合体が挙げられる。このようなものとしては、例えば、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
【0023】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、6−ナイロンや12−ナイロン等の環状脂肪族ラクタムを開環重合したもの、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等の脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とを縮重合させたもの、11−ナイロン等のアミン酸を縮重合させたものなどが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールとを縮重合させたものが挙げられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート等が挙げられる。
【0024】
ポリカーボネート系樹脂としては、4,4’−ジヒドロキシジアリルアルカン系ポリカーボネートが挙げられる。4,4’−ジヒドロキシジアリルアルカン系ポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールA系ポリカーボネート、変性ビスフェノールA系ポリカーボネート、難燃化ビスフェノールA系ポリカーボネート等が挙げられる。
【0025】
アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体等が挙げられ、これらを構成する単量体単位としては、メタクリル酸又はアクリル酸のメチル、エーテル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルエステル等が挙げられる。
【0026】
これら他の樹脂成分は、目的に応じて、1種または2種以上を用いてもよい。また、上述した他の樹脂成分の中でも、物性のバランスが特に優れることから、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−α−メチルスチレン共重合体、メタクリル酸エステル重合体およびその共重合体が好適である。
【0027】
さらに、熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、染料、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、補強剤、充填剤等の各種添加剤を、熱可塑性樹脂組成物の特性を損なわない範囲内で混合することができる。
このように、熱可塑性樹脂組成物に他の樹脂成分および/または添加剤を混合する場合には、各成分を均一にするために、押出機、バンバリーミキサーを用いることができる。
【0028】
以上説明した実施形態例では、シリコーンオイル(s)を原料単量体に溶解して、これをゴム質重合体(a)に含浸させるので、シリコーンオイル(s)を簡便かつ微細に分散させることができる。そのため、引張強度、曲げ強度等の機械特性および加工性を低下させずに、耐衝撃性を著しく向上させることができ、物性バランスを高めることができる上に、表面外観を良好にできる。しかも、シリコーンオイル(s)を微細に分散できるにもかかわらず、生産性が高い。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態例に限定されない。すなわち、本発明では、溶解工程および含浸工程が省略されていてもよい。このような場合には、ゴム質重合体およびシリコーンオイルの存在下で単量体混合物を重合する際に、シリコーンオイルの少なくとも一部が単量体混合物に溶解し、ゴム質重合体の内部に含浸する。あるいは、単量体混合物に溶解せずに、ゴム質重合体に含浸する。その結果、上述した効果と同様な効果を発揮する。ただし、溶解工程および含浸工程を有している方が十分にシリコーンオイルをゴム質重合体(a)内に含浸させることができる。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例、比較例において使用した原料は以下の通りである。また、以下の記載において「部」、「%」は質量基準である。
【0031】
<ゴム質重合体>
公知の重合方法及び凝集方法に従って肥大化した表1に記載のポリブタジエン、ランダムSBR(スチレン/ブタジエン=5/95)、PBA(ポリブチルアクリレート)を用いた。なお、表中の「平均粒子径」とは、質量平均粒子径のことである。
【0032】
【表1】
【0033】
<シリコーンオイル>
ジメチルシリコーンオイル(TSF451(登録商標)、東芝シリコーン(株)製)を用いた。
【0034】
<シリコーンオイル含有熱可塑性樹脂組成物>
(合成例1)
耐圧容器に、ポリブタジエン(a−1)50部、ロジン酸ナトリウム1.0部、水酸化ナトリウム0.02部、脱イオン水180部を仕込んだ。次いで、これらを60℃に加温しながら、予備混合した。
次いで、アクリロニトリル12.5部およびスチレン37.5部からなる原料単量体、ジメチルシリコーンオイル(TSF451)0.35部を耐圧容器内に一括で添加し、60℃で30分間放置させてポリブタジエン(a−1)中にジメチルシリコーンオイルを含む原料単量体を含浸させた。
その後、クメンハイドロパーオキサイド0.15部、硫酸第一鉄0.004部、ピロリン酸ナトリウム0.05部、結晶ブドウ糖0.15部を2時間にわたって滴下して原料単量体を重合させた。次いで、70℃に昇温し、その温度で1時間重合を継続した後、冷却して反応を終了させた。このようにして得られた重合体ラテックスに酸化防止剤を添加した後、硫酸を用いて凝固し、固液分離してシリコーンオイル含有熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0035】
(合成例2)
耐圧容器に、ポリブタジエン(a−1)50部、ロジン酸ナトリウム1.0部、水酸化ナトリウム0.02部、脱イオン水180部を仕込んだ。次いで、これらを60℃に加温しながら、予備混合した。
次いで、原料単量体の一部であるアクリロニトリル7.5部およびスチレン22.5部、ジメチルシリコーンオイル(TSF451)0.35部を耐圧容器内に一括で添加し、60℃で30分間放置させてポリブタジエン(a−1)中にジメチルシリコーンオイルを含む原料単量体を含浸させた。
その後、原料単量体の残部であるアクリロニトリル5部およびスチレン15部、クメンハイドロパーオキサイド0.15部、硫酸第一鉄0.004部、ピロリン酸ナトリウム0.05部、結晶ブドウ糖0.15部を2時間にわたって滴下して原料単量体を重合させた。次いで、70℃に昇温し、その温度で1時間重合を継続した後、冷却して反応を終了させた。このようにして得られた重合体ラテックスに酸化防止剤を添加した後、硫酸を用いて凝固し、固液分離してシリコーンオイル含有熱可塑性樹脂組成物を得た。つまり、この合成例では、原料単量体を分割して添加した。
【0036】
(合成例3,4,6,7,9〜11,13)
ゴム質重合体、シリコーンオイル、原料単量体の種類あるいは量を表2のように変更したこと以外は合成例1と同様にしてシリコーンオイル含有熱可塑性樹脂組成物を得た。
(合成例5,12,14)
ゴム質重合体、シリコーンオイル、原料単量体の種類および/または量を表2のように変更したこと以外は合成例2と同様にしてシリコーンオイル含有熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0037】
【表2】
【0038】
(合成例8)
耐圧容器に、ポリブタジエン(a−1)50部、ロジン酸ナトリウム1.0部、水酸化ナトリウム0.02部、脱イオン水180部を仕込んだ。次いで、これらを60℃に加温しながら、予備混合した。
次いで、原料単量体の一部であるアクリロニトリル7.5部およびスチレン22.5部、ジメチルシリコーンオイル(TSF451)0.21部を耐圧容器内に一括で添加し、60℃で30分間放置させてポリブタジエン(a−1)中にジメチルシリコーンオイルを含む原料単量体を含浸させた。
その後、原料単量体の残部であるアクリロニトリル5部およびスチレン15部、ジメチルシリコーンオイル0.14部、クメンハイドロパーオキサイド0.15部、硫酸第一鉄0.004部、ピロリン酸ナトリウム0.05部、結晶ブドウ糖0.15部を2時間にわたって滴下して原料単量体を重合した。次いで、70℃に昇温し、その温度で1時間重合を継続した後、冷却して反応を終了させた。このようにして得られた重合体ラテックスに酸化防止剤を添加した後、硫酸を用いて凝固し、固液分離してシリコーンオイル含有熱可塑性樹脂組成物を得た。つまり、この合成例では、原料単量体およびジメチルシリコーンオイルを分割して添加した。
【0039】
<他の樹脂成分>
公知懸濁重合法によりアクリロニトリル(AN)とスチレン(ST)を共重合させて表3に示すアクリロニトリル−スチレン共重合体(b−1〜b−3)を得た。なお、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AN−ST共重合体)中のアクリロニトリルおよびスチレンの比率については、熱分解ガスクロマトグラフィー(島津製作所製)にて求めた。
また、アクリロニトリル−スチレン共重合体以外にも他の樹脂成分として、ポリメチルメタクリレート(b−4、(株)クラレ製HR1000L)、ポリスチレン(b−5、東洋スチレン(株)製G−20L)を用いた。
【0040】
【表3】
【0041】
<実施例1〜12、比較例1〜5>
上述した他の樹脂成分を、表4(実施例)および表5(比較例)に示す混合割合で、シリコーンオイル含有熱可塑性樹脂組成物に混合した。その際、熱可塑性樹脂組成物100部に対して0.5部の滑剤(PRN−208)を添加した。また、その混合では、230℃に設定した2軸押出し機((株)日本製鋼所製:TEX−44)により溶融混練し、ペレット化した。
なお、比較例4では、混合時にシリコーンオイルを0.1部添加した。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
熱可塑性樹脂組成物のペレットを4オンス射出成形機( (株) 日本製鋼所製)を用い、240℃で成形して必要な試験片を作製した。そして、下記の評価方法によって評価した。その結果を表4および表5に示す。
[評価方法]
(衝撃強度)ASTM−D256、常温
(引張強度)ASTM−D790、常温
(曲げ強度)ASTM−D790、常温
(表面外観)50×200×2(mm)の試験片を成形し、次の評価基準に基づいて判定した。
◎:極めて均一な光沢性を示した。
○:光沢ムラは僅かであり、実用できる。
△:部分的な光沢ムラがあり、実用に耐えない。
×:光沢ムラが顕著である。
(生産性)熱可塑性樹脂組成物の製造における生産性を、次の評価基準に基づいて評価した。
◎:極めて高い。
○:高い。
△:やや低い。
×:低い。
【0045】
実施例1〜12では、本願請求項1の範囲を満たすシリコーンオイル含有熱可塑性樹脂組成物を用いていたので、衝撃強度、引張強度、曲げ強度、表面外観、生産性に優れていた。
一方、比較例1では、シリコーンオイルの含有量が少なかったので、衝撃強度が低かった。
比較例2では、シリコーンオイルの含有量が多すぎたので、表面外観が低かった。
比較例3,5では、シリコーンオイルを含有していなかったので、衝撃強度が低かった。
比較例4では、シリコーンオイルを混練時に配合したが、微細に分散させるのに時間を要し、生産性が低かった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、引張強度、曲げ強度等の機械特性および加工性を低下させずに、耐衝撃性を著しく向上させることができ、物性バランスに優れている。しかも、成形品の表面外観を良好にできる。さらに、シリコーンオイルを簡便にかつ微細に分散させることができるので、品質のバラツキが小さくなり、生産性も向上する。このようなことから、本発明の熱可塑性樹脂組成物は工業的利用価値が極めて高い。
Claims (4)
- ゴム質重合体(a)およびシリコーンオイル(s)の存在下で、芳香族ビニル化合物(b)と、シアン化ビニル化合物(c)とのいずれか1種以上を含有する原料単量体を重合する重合工程を有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
(a)〜(c)成分の合計を100質量%とした場合に、ゴム質重合体(a)が30〜80質量%、芳香族ビニル化合物(b)が0〜70質量%、シアン化ビニル化合物(c)が0〜40質量%であり、
(a)〜(c)成分の合計100質量部に対してシリコーンオイル(s)量が0.06〜6質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 前記ゴム質重合体(a)は、質量平均粒子径が50〜3000nmであり、ゲル含有率が50〜99質量%であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 前記重合工程の前に、
原料単量体の少なくとも一部にシリコーンオイル(s)を溶解させる溶解工程と、
シリコーンオイル(s)が溶解された原料単量体をゴム質重合体(a)中に含浸させる含浸工程とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 前記含浸工程では、含浸温度を40〜80℃にすることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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