JP4108280B2 - 光情報記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報記録媒体に関し、さらに詳しくは、より小さい光スポット径で記録を行うことができ、その小さい領域に記録されている情報の再生を行うことができる光情報記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光情報記録媒体としては、コンパクトディスクに代表されるようにディスク状情報記録媒体が広く知られているが、マルチメディア、情報ネットワークの時代になり、一層の大容量の記録システムが必要とされている。
光情報記録媒体には、読み出し専用、追記型、書き換え型があり、読み出し専用としては、CD−ROM、DVD−ROM、追記型としてCD−R等、書き換え型としては、相変化記録方式、光磁気記録方式のものが実用化されている。
【0003】
高密度化のためには、情報が記録されている記録ピットを小さくする必要があるが、記録ピットを小さくすると、光のスポットの中に複数の記録ピットが入ってしまい、再生が困難になる。
また、情報を記録する際にも、光のスポットが大きいと小さい記録ピットを形成することが困難になる。
そこで、光をより小さく絞り、光のスポットを小さくする必要がある。
【0004】
光のスポット径は、波長をλ、レンズの開口率をNAとすると、λ/NAに比例するため、スポット径を小さくするためには、波長を小さくするか、開口率を大きくすることが考えられる。
光の波長は、レーザーダイオード等光の発生源に依存するので、光のスポット径を小さくする方法として、レンズの開口率NAを大きくする方法が比較的容易である。
そこで、NAを大きくする方法の例として、ソリッドイマージョンレンズ(SIL)を用いたもの(例えば、特開平8−212579号公報)がある。
【0005】
また、近接場光を用いて小さいピットを記録する試みもされている(例えば、特開平7−191046号公報等)。
近接場光を用いると、光スポットの収束限界以下のスポットを形成することが可能であり、小さいスポットを光磁気記録媒体上、相変化記録媒体上に形成できたという報告も散見される。
これらの方法を用いることにより、小さいピットが形成可能となってきたが、ソリッドイマージョンレンズを用いた場合には、開口率が大きくなり、光を小さく収束させるため、より精密にスポット位置を制御する必要があり、ヘッドと記録媒体との距離を小さくする必要があった。
また、近接場光記録においても、近接場光は、光の波長以下の微細開口の極近傍でのみ生じているため、ヘッドと記録媒体の距離を小さくする必要があった。
記録媒体と光ヘッドとの距離を近接させた状態で制御するため、光ヘッドをスライダに載せることも提案されれている(例えば、特開平9−198830号公報、特開平11−066658号公報等)。
【0006】
これらのように、高密度化を行おうとすると、ヘッドと記録媒体との距離を近づける必要があり、スライダを用いる等すると、ヘッドと媒体が記録再生の動作中に接触する可能性が生じてきた。
また、高密度化を行う場合、積極的にヘッドと媒体を接触する必要が生じ、その場合にも、媒体の耐摩耗性等の強度が必要となっていた。
【0007】
このように、高密度媒体を実現するため、記録媒体と記録ヘッドとの距離を近づけるか又は完全に接触させる必要が生じているが、そのため、媒体の強度を高め、耐摩耗性、耐衝撃性を向上させることと記録再生特性の両立を図らなければならないという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題をかかえる現状に鑑み、耐磨耗性、耐衝撃性に優れ、しかもヘッドと記録媒体との距離を小さくすることができ、かつ書換え特性の良好な光情報記録媒体を提供することをその課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、反射層、放熱層材料に着目して鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、基板上に、少なくとも反射放熱層、記録層、及び潤滑層をこの順に備えた光情報記録媒体において、前記反射放熱層材料として、W、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr及びNbから選ばれた少なくとも1種の元素又は該元素の合金を用いることを特徴とする光情報記録媒体が提供される。
また、情報に対応したピットが形成されている基板上に、少なくとも反射放熱層、記録層、及び潤滑層をこの順に備えた光情報記録媒体において、前記反射放熱層材料として、W、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr及びNbから選ばれた少なくとも1種の元素又は該元素の合金を用いることを特徴とする再生専用の光情報記録媒体が提供される。
【0011】
そして、この発明には、該基板材料として、W、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr及びNbから選ばれた少なくとも1種の元素又は該元素の合金を用いるものである光情報記録媒体、前記潤滑層の下側に硬質保護層を備えたものである光情報記録媒体、前記記録層が、下部保護層及び上部保護層により挟持されている光情報記録媒体、該上部保護層が、硬質保護層である光情報記録媒体、該硬質保護層が、炭素を主成分とするものである光情報記録媒体、該記録層が、相変化材料を用いるものである光情報記録媒体、該記録層が、有機色素材料を用いるものである光情報記録媒体、該記録層が、光磁気材料を用いるものである光情報記録媒体及び光が入射する側に存在する層の膜厚が100μm以下である光情報記録媒体が含まれる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、照射された光を反射するための反射層又は光照射により生じる熱を放熱するための放熱層としての役割を担う層を構成要素として有する光情報記録媒体(以下、単に媒体ということがある)において、この反射層又は放熱層として、W、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr及びNbの中から選ばれた少なくとも1種の元素又はこれらの元素を含む合金の中から選ばれた少なくとも1種の材料を用いた光情報記録媒体である。
【0013】
従来、再生専用光情報記録媒体において、光を反射するための反射層が設けられており、その反射層を構成する材料としては、Al、Au、Ag等が用いられていた。
これらの材料は比較的柔らかい金属であるため、光ヘッドを媒体表面に近づけて再生するような場合、接触する可能性があり、強度の面で好ましくないものであった。
また、追記型、書き換え型の光情報記録媒体においても、反射層又は熱を制御するための放熱層が設けられており、それらの材料にも、Al、Au、Ag等が用いられていた。
【0014】
そこで、光を反射するための反射層又は光照射により生じる熱を放熱するための放熱層としての役割を担う層を構成要素として有する光情報記録媒体において、この反射層又は放熱層として、比較的硬度が高い材料であるW、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr、Nbの中から選ばれた少なくとも1種又はこれらの元素を含む合金の中から選ばれた少なくとも1種の材料を用いることにより、強度的に優れた光情報記録媒体を実現可能としたのである。
W、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr、Nbの元素及びこれらの合金は、ビッカース硬さで硬度を評価すると、Agの2倍以上の値を示すことから、強度の高い光情報記録媒体を実現するためにきわめて有用である。
【0015】
本発明においては、W、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr、Nbの中から選ばれた少なくとも1種の元素又はこれらの元素を含む合金の中から選ばれた少なくとも1種類の材料からなる基板を用いた光情報記録媒体であることが好ましい。
基板としてこれらの材料を用いることにより、基板と反射層又は放熱層を兼ねることができるため、媒体を構成する層を一層減少させることができるからである。
層数を減少させることにより、媒体の強度は高くなるからである。
【0016】
本発明においては、基板上に形成した少なくとも一層以上の膜の最上面に、硬質保護層を設けた光情報記録媒体であることが好ましい。
光情報記録媒体の層構成は、基板上に保護層、記録層、放熱層等を積層した多層構造とすることが必要となる場合があり、また、多層構造とすることにより、良好な記録再生特性を実現している場合があるが、それらの多層構造の最表面に硬質保護層を設けるものである。
硬質保護層は、耐磨耗性、耐衝撃性を向上させるためのものであり、硬度が高く、化学的にも熱的にも安定であることが必要である。
【0017】
硬質保護層としては、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素膜、SiC等の炭化物、SiN、AlN等の窒化物や酸化物等比較的硬度の高い材料が挙げられる。
これらは、スパッタ法、蒸着法、CVD法により、容易に形成することができる。
このような硬質保護層を膜の最表面に形成することにより、媒体の強度を高めることができ、耐磨耗性、耐衝撃性の高い光情報記録媒体を実現することができる。
【0018】
本発明においては、基板上に形成した膜の最上面に潤滑層を設けた光情報記録媒体であることが好ましい。
本発明の光情報記録媒体は、基板上に記録層、保護層、反射層、等を積層した多層構成からなっているが、その最表面に潤滑層を設けることにより、ディスクとヘッドとの潤滑が改善され、接触しても媒体が損傷を受け難くなるからである。
また、接触させて使用する構成においても、動作が滑らかになる。
本発明は、上記したように様々な層構成に適用可能である。
潤滑層としては、炭化水素系潤滑剤とフッ素系潤滑剤が用いられる。
【0019】
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類、ステアリン酸ブチル等のエステル類、オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類、リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類、ステアリンアルコール、オレインアルコール等のアルコール類、ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類又はステアリルアミン等のアミン類等が好ましい。
さらに、フッ化系潤滑剤として、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部又は全部を、フルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤がより好ましい。
これらの潤滑層9は、ディッピング法、スプレー塗布法、スピンコート法等により、形成される。
特に、ダイヤモンドライクカーボンとフッ素系潤滑剤は、結合が強く、強固な保護層の形成が可能となるので好適である。
また、固体潤滑層として、弗化物、炭素化合物、硫化モリブデン等も例示できる。
【0020】
本発明においては、基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層の順に積層した層構成を含む多層構造を形成した光情報記録媒体であることが好ましい。
記録層を保護層で挟むことにより、記録時に記録層にかかる熱を制御でき、最適な記録を行うことができるようになるからである。
保護層は、その材質、膜厚等により熱を放熱する役割と熱を蓄える役割を同時に満たすことができるようになる。
また、記録時に記録層が溶融状態になる場合、保護層で挟み、それを保護することにより、媒体の繰り返し特性を向上させる効果もある。
【0021】
また、本発明においては、上部保護層を硬質保護層とする光情報記録媒体であることが好ましい。
上部保護層を硬質保護層とすることにより、媒体とヘッドとの接触による衝撃等から媒体を保護する効果と、記録層にかかる熱の放熱、蓄熱を制御し、最適な記録を行うという効果とを一つの層で兼用することができるからである。硬質保護層は、耐磨耗性、耐衝撃性を向上させるためのものであり、硬度が高く、化学的にも熱的にも安定であることが必要である。
硬質保護層としては、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素膜、SiC、SiN、AlN、Al23等炭化物、酸化物や窒化物等が例示できる。
これらはスパッタ法、蒸着法、CVD法等により、容易に形成することができる。
【0022】
さらに、本発明においては、硬質保護層の主成分が炭素からなる光情報記録媒体であることが好ましい。
主成分が炭素からなる材料としては、ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボン等が挙げられるが、これらは、作製条件等により様々な熱伝導率をもつ膜を作ることが可能であり、記録層に対し最適な熱伝導率をもつ膜を作ることができる。
また、光学的な特性も制御することが可能である。
作製条件で膜の硬度も変化するため、かなり硬い膜を作ることが可能である。
特に、ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる炭素膜は、硬度が高いため、ディスク表面に施すことにより、媒体の耐摩耗性、耐衝撃性を向上させることができる。
これらはCVD法、スパッタリング法等の気相成長法で作製できる。
特に、スパッタリング法は装置、作成法が容易であるため、好ましく、プラズマCVD法は、かなり薄い膜にであっても、特性の劣化がない膜が実現でき、膜形成速度が速く、生産性が高いため好適である。
【0023】
また、本発明においては、記録層として相変化材料を用いた光情報記録媒体であることが好ましい。
相変化材料としては、TeO2等のようなTe系の材料からSb系の材料、GeSbTe系、AgInSbTe系のようなカルコゲン系の材料等が例示でき、これらは、スパッタ法、蒸着法、CVD法等の真空製膜法、電着法、ゾルゲル法等の湿式法等により形成される。
中でも、記録層として、少なくともAg、In、Sb、Teを含む材料を用いた光情報記録媒体又は少なくともGe、Sb、Teを含む材料を用いた光情報記録媒体は、記録感度、書き換え特性、記録密度、繰り返し特性等優れており、特に好ましいものである。
【0024】
本発明においては、記録層の材料として、有機色素材料を用いた光情報記録媒体であることが好ましい。
材料の例としては、シアニン系、フタロシアニン系、アゾ系等の有機色素を用いることができる。
これらは、スピンコート法、ディップ法等の塗布法により形成することができる。
【0025】
また、本発明においては、記録層の材料として、光磁気材料を用いた光情報記録媒体であることが好ましい。
光磁気材料としては、任意の希土類−遷移金属系の非晶質垂直磁化膜、バリウムフェライト系材料、PtCo系材料等が例示できるが、カー回転角が大きいこと等の理由から、Tb、Gd、Dy、Ndのうち、少なくとも1種の元素と、Fe、Co、Niのうち、少なくとも1種類の元素との合金が好ましい。
これらに添加元素を加えた合金系も用いることができる。
また、Pt、Pd、Au、Ag、Cuの元素の中から選ばれた少なくとも1種の元素と、Fe、Co、Niの中から選ばれた少なくとも1種類の元素との合金又はこれを主成分とする合金は、短波長に対応可能等の理由から、特に好ましいものである。
【0026】
さらに、本発明においては、記録層よりも光の入射側にある層の膜厚が100nm以下である光情報記録媒体であることが好ましい。
高密度記録を実現するため、スポット径を100nm程度の大きさに絞り込んだ光をヘッドから照射する。
この光はスポット径は、ヘッドから離れるにしたがい広がっていくため、小さいスポットを維持できる距離は100nm程度である。
100nm以下にすることにより、光情報記録媒体の内部に入射した光が効率よく記録層に入射し、光のスポット径が広がらずに記録層に照射されるため、より良好に記録でき、高密度記録可能な光情報記録媒体が実現可能となる。
【0027】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例によって本発明はなんら限定されるものではない。
【0028】
参考例1
再生専用媒体の例として、図1に示す光情報記録媒体を用いた。基板1としてガラス又はポリカーボネートのような樹脂等を用いることができるが、ここではガラス基板を用いた。その基板には、情報に対応したピットが形成されている。その基板上に、反射層としてW(タングステン)層を形成した。その上面に、保護層3を形成し、再生専用光情報記録媒体とした。保護層3としては、紫外線硬化樹脂のような樹脂やZnS・SiO2、SiN、AlN、ZnS、ZnO、MgF、SiO2等酸化物、窒化物、弗化物が挙げられるが、これらの中から線速等に対応した熱設計、光学設計によって選択することが好ましい。これらは、スピンコート法、スパッタ法、蒸着法、CVD等の真空製膜法、湿式法等により形成される。また、必要に応じて、不純物を含んでもよい。
【0029】
ここでは、保護層3としてSiNを用いた。
保護層3の上面から光を照射し再生を行った。
また、記録可能な媒体として、図2に示す構成の媒体を例示できる。
基板1上に、反射層2としてMo層を形成し、さらに記録層4、保護層3の順で形成した。
記録層4としては、有機材料、無機材料等特に限定はないが、色素材料、光磁気材料、相変化材料等が用いられる。
ここでは、記録層2としてTeを用い、保護層3としてSiNを用いた。
【0030】
図10は、反射放熱層2にAgを用いた場合と、Mo層を用いた場合の媒体表面への傷のつき難さを比較した実験の結果を説明するための図である。
実験は、荷重をかけた針によってAgを用いた媒体又はMoを用いた媒体の表面をひっかいた際に媒体表面についた傷(磨耗痕)の深さを測定することによって行っている。
図10の横軸は荷重の大きさを示し、縦軸は荷重の大きさに対応する磨耗痕を示している。
【0031】
また、図10中のプロット□は、Agを用いた媒体のデータを示し、プロット◇は、Moを用いた媒体のデータを示している。
図10によれば、各荷重をかけた針でそれぞれの媒体をひっかいた場合、磨耗痕の深さに違いが生じる。
この光情報記録媒体によれば、耐磨耗性、耐衝撃性に優れた強度の高い光情報記録媒体を提供することができた。
【0032】
参考例2
図3に示すCr合金を基板1として用い、記録層4と保護層3を形成した。記録層4としては、特に限定はなく参考例1で示したような材料を用いることができる。また、この基板は、同心円状、渦巻き状に溝を形成したものを用いることができる。また、情報信号に対応したピットを表面に形成することにより、再生専用媒体にも適用できる。保護層3の上面から光を照射し、記録、再生を行うことにより、高密度記録再生が可能である。この構成の光情報記録媒体を用いることにより、強度の高い光情報記録媒体が実現できた。
【0033】
参考例3
図4に示す層構成の媒体とした。基板1としてCr合金を用い、その上面に記録層4を、さらに硬質保護層5を形成した。硬質保護層5としては、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素やBN、等の窒化物、酸化物、SiC等の炭化物、窒化炭素等を用いることができる。
【0034】
ここでは、硬質保護層5として、ダイヤモンドライクカーボンを用いた媒体と硬質保護層5を用いない媒体の強度を比較した実験の結果を図11に示した。
実験は、荷重をかけた針によって媒体の表面をひっかいた際に表面についた傷(磨耗痕)の深さを測定することによって行っている。
図11の横軸は荷重の大きさを示し、縦軸は荷重の大きさに対応する磨耗痕を示している。
また、図11中のプロット□は、硬質保護層5のない媒体のデータを示し、プロット◇は、硬質保護層有りの媒体のデータを示している。
【0035】
図11によれば、200μg未満の荷重をかけた針でひっかいた場合、いずれにも同程度の比較的浅い磨耗痕が残る。
ただし、針にかかる荷重が200μg以上になった場合、残る磨耗痕の深さに違いが生じる。
この光情報記録媒体によれば、媒体表面が傷つくことが少ない光情報記録媒体を提供することができた。
【0036】
実施例4
図5に示す基板1上に、記録層4、保護層3、硬質保護層5、潤滑層6を形成した。
また、この基板1は、同心円状、渦巻き状に溝を形成したものを用いることができる。
硬質保護層5として、ダイヤモンドライクカーボン膜を形成した。
最上面に潤滑層6として、フッ素系潤滑剤を用いた。
特にダイヤモンドライクカーボンとフッ素系潤滑剤は結合が強く、強固な保護層の形成が可能となり好適である。
この媒体に潤滑層の上面から光を照射し記録、再生を行った。
この構成にすることにより、強度の高い光情報記録媒体を提供することができた。
【0037】
実施例5
図6に示す層構成の媒体とした。
基板1としてMo基板を用い、その上面に、下部保護層7、記録層4、上部保護層8をその順に形成した層構成とした。
さらに、硬質保護層5として、ダイヤモンドライクカーボン膜を形成し、最上面に潤滑層6を形成した。
この媒体に潤滑層6の上面から光を照射し、記録、再生を行った。
下部保護層7、上部保護層8としては、ZnS・SiO膜を用いた。
ZnS・SiO膜以外にも、ZnOのような酸化物、SiNのような窒化物等を用いることもできる。
この構成にすることにより、強度の高い光情報記録媒体を提供することができた。
【0038】
実施例6
図7に示す基板1上に、反射放熱層2、下部保護層7、記録層4、上部保護層8兼硬質保護層5、潤滑層6をその順に形成した。
上部保護層8は、硬質保護層5としてダイヤモンドライクカーボン膜を形成し、最上面に潤滑層6を形成することにより、耐磨耗性の高い光情報記録媒体とすることができた。
【0039】
実施例7
実施例4、5及び6で示したものと同様に硬質保護層5を用い、硬質保護層としては、スパッタリング法又はプラズマCVD法により形成したダイヤモンドライクカーボン層を用いた。この構成にすることにより、強度の高い光情報記録媒体を提供することができた。
【0040】
実施例8
図8に示す基板1上に、反射放熱層2、下部保護層7、記録層4、硬質保護層5、潤滑層6を形成した。
基板1としてガラス基板を用いた。反射放熱層2としてMoを用いた。
記録層4としては、AgInSbTe合金からなる相変化材料を用いた。
下部保護層7としては、ZnS・SiO2を用い、硬質保護層5としてダイヤモンドライクカーボンを用いた。
また、記録層4と硬質保護層5の間に保護層として、ZnS・SiO2からなる層を入れた層構成でも良好な特性を示す。
この層構成の光情報記録媒体によると、耐磨耗性、耐衝撃性の高い強度の高い光情報記録媒体を提供することが可能となった。
【0041】
実施例9
図9に示す基板1上に、反射放熱層2、記録層4、硬質保護層5、潤滑層6を形成した。
基板1、反射放熱層2、硬質保護層5、潤滑層6等は、実施例8と同様な材料を用いることができる。
その記録層4として、フタロシアニン系の有機色素をスピンコートで塗布し形成した。
この層構成の光情報記録媒体によると、耐磨耗性、耐衝撃性の高い強度の高い光情報記録媒体を提供することが可能となった。
【0042】
実施例10
図8と同様の層構成の光情報記録媒体とした。
その記録層4としてTbFeCo合金からなる光磁気材料を用いた。
基板1、反射放熱層2、硬質保護層5、潤滑層6等は、実施例8と同様な材料を用いることができる。
この層構成の光情報記録媒体によると、耐磨耗性、耐衝撃性の高い強度の高い光情報記録媒体を提供することが可能となった。
【0043】
実施例11
図8又は図9と同様の層構成の光情報記録媒体とした。
硬質保護層5として、炭素膜を15nm、その上面に潤滑層6として、パーフルオロポリエーテル系の潤滑剤をディッピング法により厚み2nmで形成した。
記録層よりも光の入射側にある層の膜厚は17nm薄いものである。
また、上部保護層8を20nm挿入した構成とすると、記録層よりも光の入射側にある層の膜厚は37nmである。
これにより、光のスポットが広がらずに小さいスポット径を実現でき、強度が高い高密度記録に適した光情報記録媒体を提供可能となった。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、耐磨耗性、耐衝撃性に優れ、しかもヘッドと記録媒体との距離を小さくすることができ、かつ書換え特性の良好な光情報記録媒体が提供され、光情報記録分野に寄与するところはきわめて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】光情報記録媒体の構成例を示す断面図である。
【図2】基板に硬質金属基板を用いた光情報記録媒体の構成例を示す断面図せある。
【図3】光情報記録媒体の他の構成例を示す断面図せある。
【図4】硬質保護層を形成した光情報記録媒体の構成例を示す断面図である。
【図5】潤滑層を形成した光情報記録媒体の構成例を示す断面図である。
【図6】基板上に下部保護層、記録層、上部保護層の順に積層した層構成を含む多層膜を構成する光情報記録媒体の構成例を示す断面図である。
【図7】光情報記録媒体の別の構成例を示す断面図である。
【図8】潤滑油を形成した光情報記録媒体の他の構成例を示す断面図である。
【図9】潤滑油を形成した光情報記録媒体の別の構成例を示す断面図である。
【図10】反射放熱層を形成した場合の荷重と磨耗痕の関係を示す図である。
【図11】硬質保護層を形成した場合と形成しない場合の荷重と摩耗瘍の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 反射放熱層
3 保護層
4 記録層
5 硬質保護層
6 潤滑層
7 下部保護層
8 上部保護層

Claims (11)

  1. 基板上に、少なくとも反射放熱層、記録層、及び潤滑層をこの順に備えた光情報記録媒体において、前記反射放熱層材料として、W、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr及びNbから選ばれた少なくとも1種の元素又は該元素の合金を用いることを特徴とする光情報記録媒体。
  2. 情報に対応したピットが形成されている基板上に、少なくとも反射放熱層、記録層、及び潤滑層をこの順に備えた光情報記録媒体において、前記反射放熱層材料として、W、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr及びNbから選ばれた少なくとも1種の元素又は該元素の合金を用いることを特徴とする再生専用の光情報記録媒体。
  3. 前記基板材料として、W、Mo、Ta、Ti、Cr、Co、Ni、Zr及びNbから選ばれた少なくとも1種の元素又は該元素の合金を用いるものである請求項1〜2のいずれかに記載の光情報記録媒体。
  4. 前記潤滑層の下側に硬質保護層を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の光情報記録媒体。
  5. 前記記録層が下部保護層及び上部保護層により挟持されている請求項1〜4のいずれかにに記載の光情報記録媒体。
  6. 該上部保護層が、硬質保護層である請求項5に記載の光情報記録媒体。
  7. 該硬質保護層が、炭素を主成分とするものである請求項3〜6のいずれかにに記載の光情報記録媒体。
  8. 該記録層が、相変化材料を用いるものである請求項1〜7のいずれかにに記載の光情報記録媒体。
  9. 該記録層が、有機色素材料を用いるものである請求項1〜7のいずれかにに記載の光情報記録媒体。
  10. 該記録層が、光磁気材料を用いるものである請求項1〜7のいずれかにに記載の光情報記録媒体。
  11. 光が入射する側に存在する層の膜厚が、100μm以下である請求項1〜10のいずれかにに記載の光情報記録媒体。
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