JPH1173682A - 光記録媒体、光ヘッド及び光記録装置 - Google Patents

光記録媒体、光ヘッド及び光記録装置

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JPH1173682A
JPH1173682A JP9244844A JP24484497A JPH1173682A JP H1173682 A JPH1173682 A JP H1173682A JP 9244844 A JP9244844 A JP 9244844A JP 24484497 A JP24484497 A JP 24484497A JP H1173682 A JPH1173682 A JP H1173682A
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optical recording
optical
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lubricating
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JP9244844A
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English (en)
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Satoru Onuki
悟 大貫
Toshinori Sugiyama
寿紀 杉山
Takeshi Maro
毅 麿
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Maxell Holdings Ltd
Original Assignee
Hitachi Maxell Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光ヘッドと記録媒体との衝突による記録媒体
表面への摺動傷をなくし、エバネッセント光による高密
度記録を実現する。 【解決手段】 光磁気記録媒体400は、基板56と反
対側の最上層に自己潤滑性を有する保護膜51が形成さ
れ、保護膜56側から記録または再生光が入射される。
保護膜56の厚さ及び屈折率は、エバネッセント光を保
護膜56内を伝播させるか否かで所定条件にて選択され
る。エバネッセント光を利用して高密度記録及びその再
生が可能となる。光ヘッドのスライダ底面の光記録媒体
と対向する面にも自己潤滑性を有する保護膜を形成する
ことができる。光ヘッドが光記録媒体表面上に接触して
も、光ヘッドが記録媒体表面上を滑るため摺動傷が生じ
にくくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体イマージョン
レンズを用いた光ヘッド及びそれを用いて記録再生が行
われる光記録媒体に関し、さらに詳細には、特に固体イ
マージョンレンズを用いた光ヘッドと光記録媒体との耐
摺動性が向上した光ヘッド及び光記録媒体並びに該光ヘ
ッドを装着した光記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、情報記録装置のマルチメディア化
に対応して、大容量のデータを高密度で記録し、迅速に
再生ができる情報記録装置として光記録装置が使用され
ている。この光記録装置には、CD、レーザーディスク
のようにディスク作製時に情報をディスク上にスタンピ
ングしてあり情報再生だけが可能な再生専用ディスクを
用いたもの、CD−Rのように一度だけ記録が可能な追
記型ディスクを用いたもの、光磁気記録方式や相変化記
録方式を用いて何度でもデータの書き換え消去が可能な
書換え型ディスクを記録媒体として用いたものがある。
これら、光記録装置では、データの記録・再生はレーザ
ー光をレンズで回折限界にまで絞り込んだ光スポットを
用いて行われる。この光スポットのサイズdは、レーザ
ーの波長をλ、レンズの開口数をNAとすると、d=λ
/NAとなる(角田義人監修、「光ディスクストレージ
の基礎と応用」:社団法人電子情報通信学会(199
5)、P65)。
【0003】光記録媒体に情報を一層高密度に記録する
には、記録用のレーザースポットサイズを小さくして微
小なピットや磁気マークを形成する必要がある。光スポ
ットを小さくするするためには、上式よりレーザー波長
(λ)を小さくするか、あるいはレンズの開口数(N
A)を大きくすればよい。現在用いられている光ディス
ク再生用の半導体レーザーの波長は主に780〜680
nmであり、これより短波長の650nmの橙色レーザ
ーは、デジタルバーサタイルディスク(DVD−RO
M)等において使用され始めている。しかしながら、橙
色レーザーより短波長の緑、青色発光の短波長レーザー
については未だ開発途上であり、レーザー波長を小さく
することでスポットサイズを小さくすることには限界が
ある。
【0004】一方、レンズの開口数(NA)は、図1に
示すようにレンズの絞り半角をφとするとNA=sin
φとあらわされ、1より小さい値となる。現在使用され
ているレンズのNAが0.5程度であり、理論上限界に
近いNA=0.9を達成したとしてもレーザースポット
サイズはせいぜい1/1.8にしか縮小することができ
ない。一方、NAを大きくするとレンズ系の焦点深度が
浅くなり、記録面上で焦点を維持するための制御系が複
雑になるという問題が生じるため、NAをむやみに大き
くすることはできず、通常の光記録装置では最大でNA
=0.6程度のレンズが用いられている。
【0005】レーザー光のスポットサイズを小さくする
ため固体イマージョンレンズ(Solid Immersion Lens)
を使用して実効的にレンズのNAを上げる方法が提案さ
れている(日経エレクトロニクス、686号、13〜1
4ページ、1997.4.7)。図2(a)に示すよう
に半球状の固体イマージョンレンズを用いレーザー光を
レンズ表面に対し垂直に入射させた場合、光学系の等価
なNAは固体イマージョンレンズの屈折率をnとすると
n×NAとなる。また、図2(b)に示したように超半
球状(Super Spherical)固体イマージョンレンズを用
いレーザービームを超半球レンズの底面で焦点を結ばせ
るように入射した場合は、等価のNAはn2×NAにな
る。固体イマージョンレンズをガラスで作成した場合、
ガラスの屈折率は約1.8程度であることから、半球状
の固体イマージョンレンズを用いたときには、スポット
サイズは1/1.8に、また超半球状の固体イマージョ
ンレンズでは1/3.2に、それぞれ、通常の対物レン
ズを用いた場合に比べて小さくすることができる。
【0006】固体イマージョンレンズを用いる場合に
は、固体イマージョンレンズから浸み出るエバネッセン
ト光を用いて記録再生を行うが、エバネッセント光の減
衰距離は光源の波長の1/4程度であることから、上記
エバネッセント光の減衰距離以内になるように、固体イ
マージョンレンズを媒体に近接させる必要がある。例え
ば、光源として波長680nmの赤色レーザーを用いた
場合、減衰距離は170nmとなり、この値は通常の光
記録装置の光ヘッドと光記録媒体間の間隔の数mmと比
べるとはるかに小さい。このため、固体イマージョンレ
ンズとエバネッセント光を組み合わせて用いる場合に
は、固定型磁気ディスク(ハードディスク)の磁気ヘッ
ドで用いられているような浮上型のスライダーを用いる
ことが必要となる。図3にかかる浮上型のスライダーを
用いた光磁気記録媒体用の光ヘッドの構造の一例を示
す。光ヘッドは、浮上型スライダー102に、対物レン
ズ71、固体イマージョンレンズ100、及び記録用の
磁界発生コイル104が組み込まれて構成されている。
【0007】通常の光磁気記録装置では光磁気記録媒体
の透明基板を通じて光が記録層に照射される。しかしな
がら、固体イマージョンレンズを用いた光ヘッドでは、
前述のように固体イマージョンレンズと光記録媒体との
間隔が制限されることから、光磁気記録媒体は基板上に
反射層、第1誘電体層、光磁気記録層及び第2誘電体層
の順に積層した構造を採用するとともに、記録及び再生
光を基板と反対側から、すなわち、第2誘電体層側から
照射する必要がある。記録及び再生光を基板と反対側か
ら入射させるタイプの光記録媒体及び記録再生装置は、
例えば、米国特許第5,202,880号に開示されて
いる。
【0008】また、通常の光ディスクでは、基板と反対
側の記録膜表面側は記録膜を保護するため紫外線硬化型
樹脂や大気中で硬化するSi樹脂を塗布して保護膜を数
μm〜数十μm形成しているが、固体イマージョンレン
ズによるエバネッセント光を用いる方式では、この樹脂
保護膜がエバネッセント光の減衰距離より厚くなるため
樹脂保護膜を第2誘電体層上に形成することはできな
い。そのため、この方式では、固定型磁気ディスク装置
と同様に、最上層である第2誘電体膜上約100nmの
ところを記録再生光ヘッドが移動するため、光ヘッドが
移動中に浮上姿勢を変動すると第2誘電体膜と接触して
その表面に傷をつける場合がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】光磁気記録媒体の最上
層の第2誘電体膜は、窒化シリコン、酸化シリコン、窒
化アルミ、炭化シリコンなどの硬質な材料から形成さ
れ、その膜厚は50〜100nmと磁気ディスクに比べ
2〜5倍厚く、また記録再生用光ヘッドの浮上高さは、
固体イマージョンレンズによるエバネッセント光を用い
る場合には100〜150nmと磁気ディスクに比べ2
〜3倍程度高くできることから、光ヘッドの姿勢変動で
起こるイレギュラーな摺動で誘電体膜の表面に入る傷は
記録膜に達するほど深い傷とはならず、光ヘッド走行方
向に、数μmから数百μm程度の幅で、深さ数十nm程
度の擦ったようなすじ状の傷となって入る場合が主であ
る。通常の光磁気ディスク等の光ディスクでは、透明基
板を通して再生を行うため基板表面でのレーザースポッ
トサイズは小さくとも1mm程度あり、基板表面につい
た数μm〜数十μm程度の傷は記録再生には殆ど問題と
ならない。しかしながら、固体イマージョンレンズによ
るエバネッセント光を用いる方式では、回折限界にまで
絞り込んだレーザー光の滲み出しを利用するため、誘電
体膜表面上に生じた数μm幅の傷でも、その傷のエッジ
部分での干渉により反射光量すなわち再生光量が変動し
再生エラーとなりやすいという問題があった。
【0010】また、固定イマージョンレンズを用いてエ
バネッセント光により記録または再生を行う場合には、
光記録媒体の構造並びにそれに応じて固定イマージョン
レンズと光記録媒体との位置関係を適正に調整しなけれ
ばならないという問題もあった。
【0011】本発明は、前記従来技術の問題を解決する
ためになされたものであり、その目的は、光ヘッドと記
録媒体との衝突で記録媒体表面に傷が入りにくくすると
ともに、たとえ媒体表面に傷が入ったとしても再生時に
エラーとならない程度の傷となるようにした光記録媒体
を提供することにある。
【0012】更に、本発明の別の目的は、エバネッセン
ト光を利用して情報の記録または再生を良好に行わせる
ために、媒体の構造や媒体との位置関係を適正に調整さ
せた光記録媒体を提供することにある。
【0013】また、本発明は、光ヘッドと記録媒体との
衝突で記録媒体表面に傷が入りにくくするとともに、た
とえ媒体表面に傷が入ったとしても再生時にエラーとな
らない程度の傷となるようにした光ヘッド及びそれを用
いた光記録媒体のための記録再生装置を提供することに
ある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様に従
えば、基板上に記録層を有する光記録媒体において、基
板と反対側の最上層に自己潤滑性を有する固体保護層を
備え、自己潤滑性を有する固体保護層の側から記録光ま
たは再生光を入射させることを特徴とする光記録媒体が
提供される。
【0015】本発明の光記録媒体は、基板上に反射層、
第1誘電体層、記録層、第2誘電体層を有する構成にす
ることができ、光ヘッドと対向する第2誘電体層上には
自己潤滑性を有する固体保護層が積層されている。これ
により、光ヘッドの浮動位置が変動して光記録媒体表面
上を摺動しても、光ヘッドが記録媒体表面上を滑るため
該表面で引っかかることがなくなり摺動傷が生じにくく
なる。また、自己潤滑性を有する保護膜は層状に剥離し
やすいため、光ヘッドが記録媒体と激しく衝突(摺動)
しても、まず保護膜が層状に剥離することで光ヘッドや
第2誘電体層に鋭利な傷が発生することが防止される。
従って、光記録媒体の再生光照射側表面の傷が原因とな
る再生信号のエラー、欠陥を抑制することができる。
【0016】本発明の第2の態様に従えば、浮上型スラ
イダ内に固体イマージョンレンズを装着し且つ光記録媒
体を記録または再生するための光ヘッドにおいて、少な
くとも上記浮上型スライダの光記録媒体と対向する面
に、自己潤滑性を有する固体保護層が形成されてなるこ
とを特徴とする光ヘッドが提供される。
【0017】本発明の光ヘッドは、少なくとも浮上型ス
ライダの光記録媒体と対向する面上に自己潤滑性を有す
る固体保護層を有する。これにより、光ヘッドの浮動位
置が変動して光ヘッドが光記録媒体表面上に接触して
も、光ヘッドが記録媒体表面上を滑るため該表面で引っ
かかることがなくなり光記録媒体表面または光ヘッドの
摺動面に摺動傷が生じにくくなる。また、自己潤滑性を
有する保護膜は層状に剥離しやすいため、激しく光ヘッ
ドと記録媒体が摺動しても、まず保護膜が層状に剥離す
ることで光ヘッドや光記録媒体表面に鋭利な傷が発生す
ることが抑制される。従って、光ヘッドや光記録媒体の
再生光照射側表面の傷が原因となる再生信号のエラー、
欠陥が減少する。
【0018】本発明において「自己潤滑性を有する」と
は、例えば、グラファイトや二硫化モリブデンのよう
に、材料自体が単独で潤滑性を有することを意味する。
本発明の光記録媒体及び光ヘッドに形成される自己潤滑
性を有する保護膜を構成する物質としては、カーボン
膜、二硫化モリブデン、酸化鉛、酸化カドニウム、酸化
ボロン等の無機物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ
エチレン、ナイロンなどの高分子化合物等を用いること
ができる。このうち、光記録媒体の記録膜が通常スパッ
タなどの物理的真空成膜法で形成されることから、保護
膜も同様に物理的真空成膜法で成膜しやすいものが望ま
しい。また、保護膜は記録再生時にレーザー光を減衰さ
せることなく透過させることが望ましいことから、消衰
係数が小さいカーボン膜またはダイヤモンドライクカー
ボン膜が好ましい。
【0019】本発明の光記録媒体は、固体イマージョン
レンズを搭載した光ヘッドを用い、固体イマージョンレ
ンズから滲み出るエバネッセント光を利用して記録また
は再生を行うことができる。本発明では、エバネッセン
ト光を利用した光記録媒体として、エバネッセント光の
伝播経路に応じて以下に示すような2つのタイプの光記
録媒体に分けられる。第1のタイプの光記録媒体とし
て、下記条件式(1)を満足する自己潤滑性を有する保
護膜を、基板と反対側の最上層に形成させたことを特徴
とする光記録媒体にすることができる。
【0020】
【数1】 1≦n0sinθ<n・・・・・・・・・・・・・・・(1) ここで、n0は固体イマージョンレンズの屈折率、nは
自己潤滑性を有する保護膜の屈折率、θは固体イマージ
ョンレンズの光射出面に対する光の入射角である。すな
わち、図2に示すように、固体イマージョンレンズ内に
入射した光が固体イマージョンレンズの光射出面に対し
て入射角θをなしている場合に、上記条件式(1)の1
≦n0sinθの関係を満足することにより、固体イマ
ージョンレンズの光射出面と空気層との界面で光の全反
射が起こるとともに、エバネッセント光が光射出面から
空気層側に滲み出る。エバネッセント光は空気層を伝播
して光記録媒体の保護層の表面に到達する。ここで、上
記条件(1)のn0sinθ<nを満足しているので、
保護層表面に到達したエバネッセント光は通常の光とな
って保護層内を伝播する。そのため、保護層の膜厚にか
かわらずヘッドの浮上量(空気層の厚み)をエバネッセ
ント光の減衰距離以内にすればよい。
【0021】第2のタイプの光記録媒体として、下記条
件式(2)、(3)を満足する自己潤滑性を有する保護
膜を基板と反対側の最上層に形成させたことを特徴とす
る光記録媒体にすることができる。
【0022】
【数2】 n≦n0sinθ・・・・・・・・・・・・・・(2) t≦(λ−4h)/4n・・・・・・・・・・・(3) ここで、n0は固体イマージョンレンズの屈折率、nは
自己潤滑性を有する保護膜の屈折率、θは固体イマージ
ョンレンズの光射出面に対する光の入射角、λは光源の
波長、hは固体イマージョンレンズの光射出面と保護膜
表面との距離である。自己潤滑性を有する保護膜の屈折
率nは1≦nであるので、上記条件式(2)において1
≦n0sinθを満足する。それゆえ、図2に示すよう
に、固体イマージョンレンズ内に入射した光が固体イマ
ージョンレンズの光射出面に対して入射角θをなしてい
る場合に、固体イマージョンレンズの光射出面と空気層
との界面で光の全反射が起こるとともに、エバネッセン
ト光が光射出面から空気層側に滲み出る。エバネッセン
ト光は空気層を伝播して光記録媒体の保護層の表面に到
達する。ここで、上記条件(2)のn≦n0sinθを
満足するため、空気層と保護膜表面との界面で全反射条
件が成立し、再びエバネッセント光が空気層と保護膜表
面との界面から保護膜側に滲み出る。ここで、固体イマ
ージョンレンズの光射出面から保護膜の底面までエバネ
ッセント光を伝播させるためには、それらの間の光路長
(h+nt)をエバネッセント光の減衰距離、すなわ
ち、光の波長の1/4以下にする必要がある。第2のタ
イプの光記録媒体は上記条件式(3)を満足しているの
で、エバネッセント光は保護膜内を伝播して保護膜の底
面まで到達する。その後は通常の光となって記録層に到
達して情報の記録または再生が行われる。
【0023】このように、固体イマージョンレンズとエ
バネッセント光を用いて情報の記録または再生を行う場
合、使用する固体イマージョンレンズの屈折率や保護層
の材質などによって、第1のタイプの光記録媒体を利用
するか第2のタイプの光記録媒体を利用するかを適宜選
択することができる。例えば、超半球状の固体イマージ
ョンレンズは半球状の固体イマージョンレンズと比較し
て、固体イマージョンレンズの表面に入射させた光の角
度よりも一層大きな角度で光射出面に集光させることが
できるので、NAが一層大きくなり、その結果スポット
サイズはより小さくなる。このため、超半球状の固体イ
マージョンレンズを用いれば半球状の固体イマージョン
レンズを用いた場合よりも小さな微小記録マークを形成
させることができ、より高密度記録が可能となる。しか
しながら、入射角θが大きくなることに伴って上記条件
式(1)を満足する固体保護層の材料の選定が困難にな
ってくる。したがって、超半球状の固体イマージョンレ
ンズを用いて高密度記録及びその再生を行うための光記
録媒体としては、第2のタイプの光記録媒体が好適であ
る。
【0024】また、本発明の光記録媒体においては、自
己潤滑性を有する保護膜とこの保護膜に接する第2誘電
体層の屈折率が大きく異なると、両者の界面でレーザー
光が反射されて有効にレーザー光が利用されないため、
保護膜の屈折率は第2誘電体層の屈折率との差の絶対値
が0.5以内にすることが望ましい。また、保護膜の消
衰係数は、レーザー光の減衰を抑制するため第2誘電体
層の消衰係数との差の絶対値が0.2以内にすることが
望ましい。
【0025】また、本発明の光記録媒体において、更に
摺動性を向上させるという理由から自己潤滑性を有する
保護膜上に更に潤滑層を形成させることができる。例え
ば、シリコン系の潤滑剤からなる層を1nm〜5nmの
膜厚で形成させてもよい。
【0026】本発明の光記録媒体及び光ヘッドにおいて
は、自己潤滑性を有する保護膜としてカーボン膜を用い
る場合には、カーボン膜に水素、窒素、フッ素などを含
有させることによって膜質の硬度及び光学特性を制御し
てもよい。自己潤滑性を有する保護膜の膜厚は、5nm
以上50nm以内とすることが望ましい、5nm未満で
は十分な摺動特性を得ることが困難である。摺動特性に
関して保護膜の膜厚の上限はないが、厚いと光学的な損
失の原因となり得るので、自己潤滑性を有する保護膜の
膜厚の上限は50nmとすることが望ましい。
【0027】光ヘッドに自己潤滑性を有する保護膜を設
ける場合には、光記録媒体と対向し且つ摺動する可能性
のある部分にのみ形成すれば十分である。固体イマージ
ョンレンズ部に保護膜が形成されないならば、光ヘッド
に設ける自己潤滑性を有する保護膜は、光透過性は問わ
ない。逆に、固体イマージョンレンズ部にも自己潤滑性
を有する保護膜を形成する場合には、前記記録媒体の最
上層に形成される自己潤滑性を有する保護膜と同様に光
透過性材料を用いることが望ましい。
【0028】本発明の光記録媒体は、CD、CD−RO
M、DVD−ROMのように、凹凸ピットや穴の有無、
結晶層とアモルファス相との反射率の違いから情報を再
生する再生専用の光記録媒体や、CD−Rのように有機
色素層やTe化合物などの無機物層にレーザーで穴を空
け記録する追記型光記録媒体や、TbFeCoやDyF
eCoなどの希土類金属と遷移金属の合金層を記録層と
する光磁気記録媒体及び、Ge合金やIn合金等の記録
膜を光照射により結晶相と非晶質相と間で可逆的に変化
させることができる相変化型光記録媒体のような書換え
型光記録媒体など何れの光記録媒体をも対象とする。
【0029】本発明の光記録媒体で用いられる基板は、
ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリメチルアクリ
レート、ポリスチレン、ナイロンなどの樹脂のほかに、
ガラス、シリコン、熱酸化シリコン、Al、Tiなどの
金属製ディスク基板を用いることができる。
【0030】本発明では自己潤滑性を有する保護層を、
少なくとも光ヘッドの光記録媒体と対向する面かあるい
は光記録媒体の光ヘッドと対向する面のいずれかに形成
することにより本発明の効果を奏することができるが、
自己潤滑性を有する保護膜を光ヘッド及び記録媒体の互
いに対向する面に形成することが一層好ましい。
【0031】本発明の第3の態様に従えば、光ヘッドを
備え、光記録媒体に情報を記録または再生するための光
記録装置において、上記光ヘッドが、浮上型スライダと
該浮上型スライダに装着された固体イマージョンレンズ
とを有し、少なくとも上記浮上型スライダの光記録媒体
と対向する面に自己潤滑性を有する固体保護層が形成さ
れてなることを特徴とする光記録装置が提供される。
【0032】本発明の光記録装置は、少なくとも浮上型
スライダの光記録媒体と対向する面に自己潤滑性を有す
る固体保護層が形成された光ヘッドを備えるため、光ヘ
ッドの浮動位置が変動して光ヘッドが光記録媒体表面上
で摺動しても、光記録媒体表面または光ヘッドの摺動面
に摺動傷が生じにくい。従って、本発明の光記録装置を
用いて光記録媒体を再生すれば、再生信号のエラーが極
めて少なく、良好なC/Nが得られる。
【0033】本発明の光記録装置は、光磁気記録媒体を
記録再生するための装置にすることができ、この場合、
上記光ヘッドが磁気コイル等の磁界印加手段を備える。
【0034】本発明の光ヘッド及び光記録装置におい
て、上記固体イマージョンレンズは、半球状の固体イマ
ージョンレンズまたは超半球状の固体イマージョンレン
ズにすることができる。本発明の光記録装置で記録また
は再生される光記録媒体としては、基板上に、反射層、
第1誘電体層、記録層、第2誘電体層を順次有し且つ第
2誘電体側から情報記録または再生光が照射される光記
録媒体であって、上記第2誘電体層上に自己潤滑性を有
する固体保護層が形成されてなる光記録媒体であること
が好ましい。これにより、光ヘッドの浮動位置が変動し
て光ヘッドが光記録媒体表面上で摺動しても、光記録媒
体表面または光ヘッドの摺動面に摺動傷が生じることが
一層抑制される。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の光記録媒体、光ヘ
ッド及び光記録装置の実施の形態及び実施例について図
面を用いて具体的に説明する。
【0036】実施例1 図4は、本発明の光記録媒体の一具体例を示す光磁気記
録媒体400の断面図である。この構造の光磁気記録媒
体400は、以下に示した方法で作製した。最初に、射
出圧縮成形機でポリカーボネートを射出成形してポリカ
ーボネート樹脂ディスク基板56を作製した。基板56
は、直径95mm、厚さ1.2mm、内径25mmであ
った。次いで、基板56上に、インライン式DCマグネ
トロンスパッタ装置を用いて、AlTi合金反射層55
を50nm、窒化シリコン層54(第1誘電体層)を3
0nm、TbFeCo合金層53(記録層)を25n
m、再度、窒化シリコン層52(第2誘電体層)を80
nmの膜厚でそれぞれ成膜した。次いで、同マグネトロ
ンスパッタ装置にて、自己潤滑性を有する保護膜として
ダイヤモンドライクカーボン層51を20nmの膜厚で
成膜した。
【0037】上記スパッタリングにおいて、AlTi反
射膜55は、Ti含有量が2at%のAlTi合金ター
ゲットを用い、スパッタガスとしてのArガスを流量8
0sccm(真空度1.2Pa)で流し、投入パワー2
kWで成膜した。窒化シリコン層54,52(第1及び
第2誘電体層)は、シリコンターゲットを用い、Ar−
N2 混合ガス (混合比1:1)を80sccm(真
空度1.2Pa)の流量で用いて、投入パワー2kWで
成膜した。TbFeCo合金層53は、Tb23Fe67
10(at%)合金ターゲットを用い、Arガスを流量
100sccm(真空度1.5Pa)で流して、投入パ
ワー500Wの条件で成膜した。ダイヤモンドライクカ
ーボン層51は、アモルファスカーボンターゲットを用
い、Ar−メタン混合ガス(混合比1:1)をガス流量
300sccm(真空度5Pa)で流し、投入パワー2
kWで成膜した。このとき、基板側に200WのRF電
力を印加して基板側にも負のバイアス電圧が印加され、
バイアススパッタとなるようにした。
【0038】実施例2 図5に本発明の光ヘッド500の一具体例の要部構成断
面図を示す。光ヘッド500は、浮上型スライダ10
2、固体イマージョンレンズ100、磁気コイル104
及び浮上型スライダ102の光記録媒体との対向面(摺
動面)に形成された保護膜105から主に構成されてい
る。光ヘッド500は、以下に示したような方法で作製
することができる。最初に、浮上型スライダ102を作
製するために、Al23 −TiC複合セラミックウェ
ハを用意し、その片方の面に、図6に示すような凹凸パ
ターンの摺動面を形成する。このパターンは機械加工も
しくはエッチングで形成される。
【0039】パターン形成後、余分な部分を切断して光
ヘッドのスライダ102を切り出し、パターン形成面に
光磁気記録媒体上に保護膜を形成したのと同様にスパッ
タリングによりダイヤモンドライクカーボン保護膜10
5を10nmの厚みで成膜する。次に、固体イマージョ
ンレンズ100と記録磁界発生用コイル104を設置す
るための穴を機械加工もしくはエッチングで形成し、そ
こに固体イマージョンレンズ100と磁気コイル104
を図5に示すように設置する。ここに、固体イマージョ
ンレンズ100は超半球状の固体イマージョンレンズで
ある。
【0040】図6に示した摺動面のパターンは光ヘッド
の浮上特性が安定するよう、空気流を制御するために設
ける。このようなパターンは種々検討されており、光ヘ
ッドの大きさと浮上量にあわせて設計可能である。この
実施例では、スライダ102が負圧正圧併用型スライダ
となるようにした。図6のスライダ102の底面図、左
側側面図及びAA線断面図からわかるように、スライダ
102の底面81には底面81からわずかに突出し(図
6では紙面前方に突出)且つ図中矢印で示したディスク
(光磁気記録媒体)進行方向に延在する凸部80が形成
されている。凸部80はディスク進行方向に沿ってその
幅(ディスク進行方向と直交する方向の長さ)が変化す
るように形成されている。スライダ102に対してディ
スク(光磁気記録媒体)がターンテーブル等により回転
駆動したときに発生する気流は矢印Bに示すように凸部
80の間を通り抜ける。この際、気流は凸部80の幅広
(AA線上)部分80aに挟まれた狭い領域で圧縮され
た後、幅狭部分80bに挟まれた幅の広い領域に拡散す
るためにその圧力が低下する。この低下した圧力(負
圧)によりスライダ102にディスクからの吸引力が働
き、一方で、スライダ102には原盤の回転による浮力
が作用し、これらの力がバランスすることによりスライ
ダ102はディスクとの間で一定の間隔を維持すること
ができる。負圧正圧併用型スライダの詳細は、例えば、
「MR/GMRヘッド技術」、第112頁(トリケップ
ス出版)に記載の磁気ディスクへの適用例の欄を参照す
ることができる。
【0041】実施例1及び実施例2で作製した光磁気記
録媒体400及び光ヘッド500は、図7に示すように
光記録装置に組み込まれる。光ヘッド32は、ロータリ
ーアクチュエータ37に取り付けられたスウィングアー
ム35の先端に組み込まれる。光ヘッド500内の固体
イマージョンレンズにレーザー光を絞り込む対物レンズ
34は、同じロータリーアクチュエータ37に組み込ま
れ、且つスウィングアーム35と機械的に固定され一緒
に動くアーム36上に固定されている。スウィングアー
ム35及びアーム36は磁気ディスク装置の場合と同様
に板バネ等により構成することができる。対物レンズ3
4は、図8に示すように、常に、固体イマージョンレン
ズ100の底面上に焦点を結ぶよう、対物レンズ34と
固体イマージョンレンズ100の間隔を一定に維持する
ためのコイル44と磁石45を用いた駆動機構(ボイス
コイル型アクチュエータ)が設けられている。レーザー
光46を常に固体イマージョンレンズの底面上で焦点を
結ばせるためのフォーカシングサーボは、通常の光記憶
装置で常にレーザー光を光ディスク面上に焦点を合わせ
続けるために用いるフォーカシングサーボと同じ方法を
用いて、固体イマージョンレンズからの戻り光に対し
て、非点収差法、ナイフエッジ法などでフォーカスエラ
ー信号を作り出し、この信号を元にフォーカシングサー
ボをかければ良い。
【0042】記録または再生時に固体イマージョンレン
ズ100を光磁気記録媒体400の表面に対して所定の
間隔すなわち40nm〜60nmで隔離させて、エバネ
ッセント光を用いて記録または再生を行わせるために
は、浮上型スライダ500の底面(81)の高さ位置を
制御すればよい。この制御は、例えば、磁気ディスク装
置の場合と同様に、浮上型スライダ500の底面に形成
されたパターン(図6参照)及びディスクの回転数、デ
ィスクとスライダのなす角(スキュー)等をスライダが
ディスク表面に対して上記所定の間隔(浮上量)になる
ように設計または調整することによって実現することが
できる。
【0043】本発明の光記録装置の全体の光学系の具体
例を図9に示す。図9は光磁気記録装置の場合の光学系
である。図9中、固定光学系については通常の光磁気記
録媒体を記録・再生するためのドライブの同様の光学系
を使用することができる。すなわち、レーザー光源57
から射出されたレーザー光は、レンズ58、プリズム5
9a,59b、ビームスプリッタ60を通過し、ミラー
70,69で反射された後、対物レンズ71に入射し、
さらに固体イマージョンレンズ100で集光されて固体
イマージョンレンズ100の底面に焦点を結ぶ。固体イ
マージョンレンズ100の底面から滲み出した光は光磁
気記録媒体400の記録層に達して記録信号に応じた磁
気マークを形成する。なお、記録の際、光磁気記録媒体
400には記録用磁界が印加されており、光変調方式、
磁界変調方式、光磁界変調方式のいずれの方式でも記録
は可能である。
【0044】再生時に、光磁気記録媒体400からの反
射光は、ミラー69,70で反射された後、ビームスプ
リッタ60で反射されてビームスプリッタ61で2つの
ビームスプリッタ64,65に向かう光に分割される。
ビームスプリッタ65に入射した反射光はさらにそこで
分割されてフォーカシング検出用検出器68cとトラッ
キング信号検出用検出器68dにそれぞれ入射する。ま
た、1/2波長板63及びレンズ67を通過してビーム
スプリッタ64に入射した反射光は、互いに直交する偏
光成分の光を検出する光検出器68a,68bに入射
し、再生信号を検出する。
【0045】相変化方式、追記方式を用いる場合は、相
変化型光記録媒体及びCD−R等の追記型光記録媒体を
それぞれ記録・再生するためのドライブの同様の光学系
を使用することができ、これらの光学系では信号検出の
ための検出器が1個で足り、検出器の直前のビームスプ
リッター64も不要となる。
【0046】比較例1 実施例1において窒化珪素膜52上に保護膜51を形成
しなかった以外は、実施例1と同様にして光磁気記録媒
体を作製した。
【0047】比較例2 実施例2において浮上型スライダ102の底面、すなわ
ち、光記録媒体と対向する面には保護膜105を形成し
なかった以外は、実施例2と同様にして光ヘッドを作製
した。
【0048】[光磁気信号の再生エラーの測定]光磁気
記録媒体の窒化珪素膜52(第2誘電体層)及び光ヘッ
ドのスライダ底面上に形成した自己潤滑性を有する保護
膜の効果を以下に示す方法で調べた。光記録装置に、表
1に示す組み合わせで光磁気記録媒体と光ヘッドを上述
した光記録装置に組み込み、半径25mmから半径45
mmの間でランダムに100,000回光ヘッドをシー
クさせた。表1中、実施例1で作製した光磁気記録媒体
をM1、実施例2で作製した光ヘッドをH1でそれぞれ
表し、比較例1で作製した光磁気記録媒体をM2、実施
例2で作製した光ヘッドをH2でそれぞれ表した。光記
録媒体上には、予めレーザー測長儀とフォーマッタを組
み合わせて、使用する光ヘッドで位置決めのためのアド
レス信号用パターンとトラッキングサーボを行うための
サンプルサーボ用パターンをトラックピッチ0.8μ
m、最短マーク長0.4μmで書き込んでおいた。光磁
気記録媒体の回転数は4500rpmとした。この時の
光ヘッドの浮上量は光磁気記録媒体表面から50nmと
なった。
【0049】
【表1】 光記録媒体 光ヘッド 実施例3 M1 H1 実施例4 M1 H2 実施例5 M2 H1 実施例6 M2 H2
【0050】各光ヘッドと媒体の組み合わせについて、
光ヘッドの100,000回ランダムシーク前後での欠
陥個数を測定した。欠陥は、半径30から40mmのあ
いだの全トラック(12500トラック)、マーク長1
μmの比較的長いパターンを書き込み、再生したときの
光磁気信号で振幅が65%以下(エラー信号)となる部
分を欠陥とした。測定中の周りの環境からの塵埃が媒体
上に付着する欠陥となることを防ぐため、測定はクリー
ン度100の測定室の中で、さらに測定に使用した光記
録装置自体をクリーンブースで覆い欠陥測定を行った。
【0051】
【表2】 欠陥の個数 ランダムシーク前 ランダムシーク後 欠陥の増加率 実施例3 1250 1500 1.20 実施例4 1400 1850 1.32 実施例5 1150 1780 1.54 実施例6 1250 3240 2.59
【0052】表中、欠陥の増加率は、次の式に従って求
めた。欠陥の増加率=(ランダムシーク後の欠陥の個
数)/(ランダムシーク前の欠陥の個数)。表2から分
かるように保護膜を設けなかった光ヘッドと光磁気記録
媒体の組み合わせで欠陥の増加率が最も高い。欠陥が発
生した箇所に相当する光磁気記録媒体の光照射側表面部
分を光学顕微鏡及び走査形電子顕微鏡(SEM)で調べ
たところ、欠陥個所の90%以上で幅数μmから数十μ
mに擦ったような跡が観察された。また、実施例6の光
ヘッドと光磁気記録媒体の組合せで記録再生した場合
に、発生した傷が最も角が鋭利で鋭かった。また、10
0,000回シーク後の光ヘッドの摺動面を光学顕微鏡
で観察したところ、実施例6で用いた光ヘッドでは極め
て多くの傷が観察された。それに対し、他の実施例3,
4,5では傷はほとんど観察されなかった。
【0053】この結果より、光磁気記録媒体あるいは光
ヘッドの光磁気記録媒体に対向する面の何れか少なくと
も一方にカ−ボン等の自己潤滑性を有する保護膜を設け
ることで、光ヘッドのシーク時の移動にともなうヘッド
の姿勢変動によるヘッドと光磁気記録媒体のイレギュラ
ーな摺動で生じる傷の発生を抑制し、傷の発生に伴う欠
陥を低減することができることが分かる。
【0054】実施例7 エバネッセント光を利用した本発明の第1のタイプの光
磁気記録媒体、すなわち、自己潤滑性を有する保護膜内
にエバネッセント光を伝播させることなく情報の記録ま
たは再生を行う光磁気記録媒体を製造した。該光磁気記
録媒体の製造においては、自己潤滑性を有する保護膜と
して屈折率n=1.8のカーボン膜を膜厚10nmで成
膜し、更に、潤滑層としてシリコン系潤滑剤を膜厚2n
mで該保護膜上に成膜した以外は実施例1と同様の方法
で光磁気記録媒体を作製した。
【0055】本実施例で作製した光記録媒体に情報を記
録または再生する光磁気記録装置として、実施例2で用
いた光磁気記録装置における超半球状の固体イマージョ
ンレンズ100を図2(a)に示したような半球状の固
体イマージョンレンズ1に置き換えた光磁気記録装置が
好適である。半球状の固体イマージョンレンズ1は、例
えば、直径1mm、屈折率n0が1.9のフリントガラ
ス製にすることができる。記録または再生光としては波
長680nmのレーザー光を用い、固体イマージョンレ
ンズの底面に対して約53°の入射角で入射させること
ができる。このとき、固体イマージョンレンズの底面か
ら滲み出たエバネッセント光は自己潤滑性を有する保護
膜に到達するが、自己潤滑性を有する保護膜の屈折率は
1.8であってn0sin53°=1.5よりも大き
い。すなわち、上記条件式(1)を満足するため、エバ
ネッセント光は保護膜内では通常の光として伝播し、第
2誘電体層を伝播して記録層に達する。この際、エバネ
ッセント光によるスポットサイズは通常の対物レンズを
用いた場合に比べて、1/1.9に縮小されているので
微小な磁気マークを再生することができる。
【0056】実施例8 エバネッセント光を利用した本発明の第2のタイプの光
磁気記録媒体、すなわち、自己潤滑性を有する保護膜内
にエバネッセント光を伝播させて情報の記録または再生
を行う光磁気記録媒体を製造した。該光磁気記録媒体の
製造においては、実施例1で自己潤滑性を有する保護膜
として屈折率n=1.5のカーボン膜を膜厚10nmで
成膜し、更に、潤滑層としてシリコン系潤滑剤を膜厚2
nmで該保護膜上に成膜した以外は同様の方法で光磁気
記録媒体を作製した。
【0057】本実施例においては、実施例2で示した光
磁気記録装置を使って、光磁気記録媒体に情報を記録ま
たは再生させることができる。この光磁気記録装置で使
用されている固体イマージョンレンズは、図2(b)に
示したような超半球状の固体イマージョンレンズ2であ
り、直径r=1mmの球の一部を切断して形成された屈
折率1.9のフリントガラス製の固体イマージョンレン
ズである。固体イマージョンレンズ2の切断面、すなわ
ち固体イマージョンレンズの光射出面は入射光の光軸に
対して垂直に切断されており、切断位置は球の中心から
約0.26mmの距離である。光磁気記録媒体に情報を
記録するために、レーザー光として波長680nmのレ
ーザー光を、固体イマージョンレンズの光射出面に対す
る入射角が約65°をなすように入射させる。固体イマ
ージョンレンズの光射出面と光磁気記録媒体の最上層面
との間隔(浮上高さ)は100nmである。このとき、
固体イマージョンレンズの底面から滲み出たエバネッセ
ント光は自己潤滑性を有する保護膜に到達する。自己潤
滑性を有する保護膜の屈折率nは1.5であってn0
in65°=1.7よりも小さいので、前記条件式
(2)を満足し、エバネッセント光は保護膜内を伝播し
て第2誘電体層に到達する。第2誘電体層の屈折率は通
常2.0程度であるので、全反射条件を満足せず通常の
光となって第2誘電体層を伝播して記録層に達する。こ
こでは、超半球状の固体イマージョンレンズを使ってい
るので、記録媒体上のスポット径を空気中で得られる最
小スポット径よりも1/3.61倍の大きさにすること
ができる。例えば、記録パワー5mWのレーザー光を用
いて、光磁界変調方式により上記光磁気記録媒体に記録
することにより、0.2μmのマーク長、トラックピッ
チ0.4μmの磁気マークを記録層上に形成することが
できる。
【0058】以上、本発明の光記録媒体及び光ヘッド並
びに光記録装置を、光磁気記録媒体を記録再生する場合
を例に挙げて具体的に説明してきたが、本発明の光記録
媒体は光磁気記録媒体に限定されず、相変化型の光記録
媒体や有機色素を記録層に持つ追記型の光記録媒体、あ
るいは再生専用光記録媒体等、任意の光記録媒体とする
ことができる。すなわち、本発明の対象とする光記録媒
体は、光照射により情報が記録または再生される光記録
媒体において、光記録媒体の光が照射される側の最上層
に自己潤滑性を有する固体保護層が形成されてなること
を特徴とする光記録媒体である。通常の光記録媒体は基
板上に保護層等を介してあるいは直接記録層を備えた構
造を有し、基板側から記録または再生光が照射される
が、本発明に従う光記録媒体では基板と反対側の最上層
に自己潤滑性を有する固体保護層が形成され、該固体保
護層の側から記録または再生層の光が照射される。
【0059】エバネッセント光を用いる第1、第2のタ
イプの光磁気記録媒体の具体例を実施例7及び8で説明
してきたが、自己潤滑性を有する保護層の材料や厚みな
どは条件式(1)または(2)及び(3)を満足する範
囲内で種々のものに変更し得る。また、光磁気記録媒体
の層構成を変更することも可能であり、磁性層や非磁性
層などを各層の間に設けてもよい。例えば、上記実施例
の光磁気記録媒体を、磁気超解像再生用または磁気拡大
再生用の光磁気記録媒体として用いるために、再生層や
中間層などの磁性層や非磁性層などの補助層を適宜追加
することができる。
【0060】また、上記実施例では、光ヘッドとして光
磁気記録媒体を記録再生のための光ヘッドを例を挙げて
説明してきたが、光ヘッドの構成は図に示した構造に限
定されず種々の構造を採用し得る。例えば、相変化型光
記録媒体、色素を記録層に含む追記型光記録媒体及び再
生専用光記録媒体を記録または再生する場合には、磁界
印加手段として磁気コイルは不要となる。
【0061】
【発明の効果】本発明では、光記録媒体若しくは光ヘッ
ドの光記録媒体に対向する面の何れか少なくとも一方に
カ−ボン等の自己潤滑性を有する保護膜を設けること
で、光ヘッドのシーク時の移動にともなうヘッドの姿勢
変動によるヘッドと媒体のイレギュラーな摺動で生じる
傷の発生を抑制し、傷の発生に伴う再生エラーを低減す
ることができる。それゆえ、本発明の光ヘッドを組み込
んだ光記録装置は、光記録媒体の高密度記録及びその再
生に好適である。
【0062】また、本発明の光記録媒体は、固体イマー
ジョンレンズの屈折率、レーザー光の入射角及び波長な
どに基づく条件から自己潤滑性を有する保護膜の膜厚や
材質が適宜調整されるので、エバネッセント光を利用し
て情報の記録または再生を確実に行うことができる。し
たがって、本発明の光記録媒体は固体イマージョンレン
ズを用いて記録再生することにより超高密度記録及びそ
の再生が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レンズによるレーザー光の絞り込みを説明する
図である。
【図2】固体イマージョンレンズを使用したときの光路
を説明する図であり、(a) は半球状の固体イマージョ
ンレンズを、(b) は超半球状の固体イマージョンレンズ
をそれぞれ示す。
【図3】固体イマージョンレンズとエバネッセント光を
利用した記録再生方式で用いるスライダー型光ヘッドの
構造を説明する概略断面図である。
【図4】本発明の光記録媒体の一具体例の概略断面であ
る。
【図5】本発明の実施例2で作製した光磁気ヘッドの概
略断面図である。
【図6】実施例2で作製した光ヘッドのスライダ底面に
形成する凹凸パターンを示す図である。
【図7】本発明の光記録装置の概略構造を示す図であ
る。
【図8】図7の光記録装置の対物レンズ部分の構造を拡
大した図である。
【図9】本発明の実施例の光記録装置で使用した光学系
を説明する図である。
【符号の説明】
1 半球状の固体イマージョンレンズ 2 超半球状の固体イマージョンレンズ 3 レーザー光 4 光記録媒体 33,69 ミラー 34,71 対物レンズ 35,36 スイングアーム 37 ロータリーアクチュエータ 38 光学系 39 ディスク回転軸 40 モータ 41 光磁気ディスク 43 対物レンズ支持体 44 アクチュエータコイル 45 アクチュエータ用永久磁石 46 レーザー光 57 レーザー光源 59a,b プリズム 60,61,64 ビームスプリッタ 63 1/2λ板 68a,b 光磁気信号検出器 69,70 ミラー 80 スライダ底面 71 対物レンズ 72,100 固体イマージョンレンズ 102 スライダ 104 磁気コイル 105 保護膜

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に記録層を有する光記録媒体にお
    いて、 基板と反対側の最上層に自己潤滑性を有する固体保護層
    を備え、自己潤滑性を有する固体保護層の側から記録光
    または再生光を入射させることを特徴とする光記録媒
    体。
  2. 【請求項2】 基板上に、反射層、第1誘電体層、記録
    層、第2誘電体層を順次有し、第2誘電体層上に上記自
    己潤滑性を有する固体保護層が形成されてなることを特
    徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  3. 【請求項3】 固体イマージョンレンズを搭載した光学
    ヘッドを用い、エバネッセント光を利用して情報の記録
    及び再生の少なくとも一方を行うことを特徴とする請求
    項1または2に記載の光記録媒体。
  4. 【請求項4】 上記固体イマージョンレンズの屈折率を
    0、上記固体イマージョンレンズの光射出面に対する
    光の入射角をθ、上記自己潤滑性を有する固体保護層の
    屈折率をnとしたとき、 1≦n0sinθ<nを満足することを特徴とする請求
    項3に記載の光記録媒体。
  5. 【請求項5】 上記固体イマージョンレンズの屈折率を
    0、上記固体イマージョンレンズの光射出面に対する
    光の入射角をθ、上記固体イマージョンレンズの光射出
    面と上記自己潤滑性を有する固体保護層の光入射面との
    距離をh、光の波長をλ、上記自己潤滑性を有する固体
    保護層の屈折率及び膜厚をそれぞれn及びtとしたと
    き、 n≦n0sinθ、t≦(λ−4h)/4nを満足する
    ことを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
  6. 【請求項6】 上記固体イマージョンレンズが超半球状
    の固体イマージョンレンズであることを特徴とする請求
    項5に記載の光記録媒体。
  7. 【請求項7】 上記自己潤滑性を有する固体保護層は、
    第2誘電体層の屈折率に対して差の絶対値が0.5以内
    である屈折率及び第2誘電体層の消衰係数に対して差の
    絶対値が0.2以内である消衰係数を有することを特徴
    とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光記録媒
    体。
  8. 【請求項8】 上記自己潤滑性を有する固体保護層の膜
    厚が、5nm〜50nmであることを特徴とする請求項
    1〜7のいずれか一項に記載の光記録媒体。
  9. 【請求項9】 上記自己潤滑性を有する固体保護層が、
    カーボンを主体とする材料から構成されていることを特
    徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光記録媒
    体。
  10. 【請求項10】 上記カーボンを主体とする材料から構
    成された自己潤滑性を有する固体保護層が、窒素、水素
    及びフッ素からなる群から選ばれた少なくとも一種を含
    むことを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体。
  11. 【請求項11】 上記自己潤滑性を有する固体保護層
    が、ダイヤモンドライクカーボン膜であることを特徴と
    する請求項1〜10のいずれか一項に記載の光記録媒
    体。
  12. 【請求項12】 上記自己潤滑性を有する固体保護層上
    にさらに別の潤滑層が形成されてなることを特徴とする
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の光記録媒体。
  13. 【請求項13】 光磁気記録媒体または相変化型光記録
    媒体である請求項1〜12のいずれか一項に記載の光記
    録媒体。
  14. 【請求項14】 浮上型スライダ内に固体イマージョン
    レンズを装着し且つ光記録媒体を記録または再生するた
    めの光ヘッドにおいて、 少なくとも上記浮上型スライダの光記録媒体と対向する
    面に、自己潤滑性を有する固体保護層が形成されてなる
    ことを特徴とする光ヘッド。
  15. 【請求項15】 上記自己潤滑性を有する固体保護層の
    膜厚が、5nm〜50nmであることを特徴とする請求
    項14に記載の光ヘッド。
  16. 【請求項16】 上記自己潤滑性を有する固体保護層
    が、カーボンを主体とする材料から構成されていること
    を特徴とする請求項14または15に記載の光ヘッド。
  17. 【請求項17】 上記カーボンを主体とする材料から構
    成された自己潤滑性を有する固体保護層が、窒素、水素
    及びフッ素からなる群から選ばれた少なくとも一種を含
    むことを特徴とする請求項16に記載の光ヘッド。
  18. 【請求項18】 上記自己潤滑性を有する固体保護層
    が、ダイヤモンドライクカーボン膜であることを特徴と
    する請求項14〜17のいずれか一項に記載の光ヘッ
    ド。
  19. 【請求項19】 上記自己潤滑性を有する固体保護層上
    にさらに別の潤滑層が形成されてなることを特徴とする
    請求項14〜18のいずれか一項に記載の光ヘッド。
  20. 【請求項20】 さらに、記録または再生用の磁界を印
    加するための磁気コイルを備えた請求項14〜19のい
    ずれか一項に記載の光ヘッド。
  21. 【請求項21】 光ヘッドを備え、光記録媒体に情報を
    記録または再生するための光記録装置において、 上記光ヘッドが、浮上型スライダと該浮上型スライダに
    装着された固体イマージョンレンズとを有し、少なくと
    も上記浮上型スライダの光記録媒体と対向する面に自己
    潤滑性を有する固体保護層が形成されてなることを特徴
    とする光記録装置。
  22. 【請求項22】 上記光ヘッドが磁界印加手段を備え
    て、光磁気記録媒体を記録再生することが可能であるこ
    とを特徴とする請求項21に記載の光記録装置。
  23. 【請求項23】 上記固体イマージョンレンズが、半球
    状の固体イマージョンレンズまたは超半球状の固体イマ
    ージョンレンズであることを特徴とする請求項21また
    は22に記載の光記録装置。
  24. 【請求項24】 上記光記録媒体が、基板上に、反射
    層、第1誘電体層、記録層、第2誘電体層を順次有し且
    つ第2誘電体側から情報記録または再生光が照射される
    光記録媒体であって、上記第2誘電体層上に自己潤滑性
    を有する固体保護層が形成されてなる光記録媒体である
    ことを特徴とする請求項21〜23のいずれか一項に記
    載の光記録装置。
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