JP4106080B2 - エキスの抽出方法及びエキス - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、糖及び/又は糖アルコールを用いて、乾物からエキス成分を抽出する方法である。更に詳しくは、対象となる乾物に水分を添加し、乾物に水分を吸収させて乾物を膨潤させた後、糖及び/又は糖アルコールを添加することで乾物からのエキス成分の抽出を行うものである。
【0002】
【従来の技術】
乾物とは、太陽熱、風、寒気などの自然環境を利用した乾燥方法や、送風、減圧、凍結乾燥などの人工的な乾燥方法により、水分含有量の多い食品から水分を除く処理を施して作られた食品である。
【0003】
この様にして得られた乾物は、保存性、輸送性、貯蔵性が優れているだけでなく、栄養価が高められる、風味が良くなる、などの好ましい効果も有している。このことから、乾燥させた海藻類、魚介類、椎茸類などは古くより良質な調味素材や食品素材として用いられ、現在の食生活においても欠かすことができないものとなっており、特に乾物から抽出されるエキス成分は、良質な風味を有したダシとして広く活用されている。
【0004】
近年、このようなエキス成分を含有した調味料は、取り扱いの容易さから飲食店や食品加工メーカーでその使用量が増えており、多くのユーザーから味質の優れたエキスの提供を求められていた。
【0005】
乾物からエキス成分を抽出する最も一般的な方法として、乾物を水中又は加熱した温水中に浸漬する方法や、他にも節類を原料とする節類エキスの抽出方法として、醗酵調味液を抽出溶媒として使用する方法(特許文献1参照)がある。
【0006】
しかしながら、乾物を水中や抽出溶媒中に浸漬しエキス分を抽出する方法では、抽出に多大な時間を要すること、乾物に対して大量の液体が必要となること、大量の液体を用いるため装置が大型化してしまうこと、等の問題点がある。
【0007】
更に、加熱した熱水や温水を用いてエキス分を抽出する方法では、抽出時の加熱操作や温度管理が必要となること、抽出対象となる乾物が熱ダメージを受け好ましくない成分が溶出したり熱に弱い成分が分解し易くなってしまうこと、抽出されたエキスに焦げ臭が付き易いこと、乾物原料から旨みや香りの良好なダシを得るには熟練した技術や手間の要する作業を有すること、等の問題点がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭60−62955号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は乾物原料から、大量の液体を用いたり多大な時間を要することなく、品質の良好な乾物由来のエキスの抽出方法及びエキスを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために鋭意検討した結果、対象となる乾物原料に水分を添加して乾物を膨潤させた後、糖及び/又は糖アルコールを添加することで、効率的な乾物由来のエキス成分の抽出を可能とした。また、本発明を実施して得られるエキスは、エキス成分を抽出するまでの工程で実質的に加熱処理を伴わなくても、濃厚な味わいのエキスとすることが可能であるため、加熱による焦げ臭が少なく、エキスの風味や味質が劣化しにくいなど、優れた品質のエキスとすることができた。
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明は第一に、乾物に水分を添加し膨潤させる第一工程、膨潤した乾物に糖及び/又は糖アルコールを添加し、エキス成分を抽出する第二工程、以上の工程を逐次経由するエキスの製造方法である。
第二に、第二工程を40℃未満で実施する、第一に記載のエキスの製造方法である。
第三に、水分が40℃未満である、第一又は第二に記載のエキスの製造方法である。
第四に、乾物1重量部に対して、0.8〜10重量部の水分を添加する、第一〜第三の何れか一つに記載のエキスの製造方法である。
第五に、添加する水分1重量部に対して、0.2〜2.5重量部の糖及び/又は糖アルコールを添加する、第一〜第四の何れか一つに記載のエキスの製造方法である。
第六に、糖及び/又は糖アルコールに、無機塩、有機酸、有機酸塩、アミノ酸、アミノ酸塩、からなる群から選ばれる何れか一種又は二種以上を含有させる、第一〜第五の何れか一つに記載のエキスの製造方法である。
第七に、第一から第六の何れか一つに記載の方法で得られるエキスである。
【0012】
本発明で使用することができる乾物とは、海藻類、魚介類、茸類、畜肉類、果実類、野菜類、香草類等、通常食用に用いられている食物を、太陽熱、風、寒気などの自然環境を利用した乾燥方法、送風、減圧、凍結乾燥などの人工的な乾燥方法、塩漬け、薫製など、水分含有量の多い食品から水分を取り除く種々の乾燥手段により得られる乾燥した食品類を指す。
【0013】
海藻類の場合では、例えばコンブ、ワカメ、ヒジキ、モズク、ノリ、アオサ、テングサ等、各種海藻類を乾燥したものが挙げられる。
【0014】
魚介類の場合では、例えばカツオ節、鯖節、宗田節等の節類、煮干し、干しエビ、干しイカ、干しタコ、干し貝、フカヒレ、エイヒレ、あご、鯵の干物等、各種魚介類を乾燥したものが挙げられる。
【0015】
茸類の場合では、例えば椎茸、マイタケ、シメジ等、各種茸類を乾燥したものが挙げられる。
【0016】
畜肉類の場合では、例えばニワトリ、カモ、ハト、スズメ、ダチョウ、ガチョウ、七面鳥、キジ、ウズラ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イノシシ等、各種畜肉類を乾燥したものが挙げられる。
【0017】
果実類の場合では、例えばプルーン、マンゴー、パパイア、アンズ、リンゴ、梨、洋梨、ブドウ、バナナ、キウイフルーツ、イチゴ、柿、スイカ、オリーブ等、各種果物類を乾燥したものが挙げられる。
【0018】
野菜類の場合では、例えば大根、キャベツ、キュウリ、ピーマン、玉ねぎ、ニンジン等、各種野菜類を乾燥したものが挙げられる。
【0019】
香草類の場合では、例えばパセリ、タイム、バジル、ローズマリー、ミント、クローブ、ローリエ、茶葉等、各種香草類や各種茶葉類を乾燥したものが挙げられる。
【0020】
本発明に係る第一工程では、乾物に水分を添加し膨潤させるが、添加する水分量は乾物1重量部に対して0.8〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは2〜6重量部である。
【0021】
添加する水分量が乾物1重量部に対して0.8重量部未満の場合、乾物中に吸収される水分量が少なく乾物が十分に軟化しないことがあるため、その後の抽出段階での操作性が悪くなってしまうこと、抽出されるエキスの量が少なく効率的ではないこと、などの理由で好ましくない。
【0022】
添加する水分量が乾物1重量部に対して10重量部より多い場合、乾物に吸収されない水分が膨潤した乾物の周囲に大量に残存することがあるため、糖及び/又は糖アルコールを添加した時の抽出効率が低下すること、抽出されるエキス成分が希釈されてしまうこと、などの理由で好ましくない。
【0023】
乾物中へ水分を吸収させるために要する時間は、乾物の種類や品質、使用する水分の温度、乾物に吸収させる水分量にもよるが、乾物への水分の吸収が進行し十分な量のエキスが抽出できること、衛生的な問題が生じにくいこと、製造効率上好ましいこと、などの理由から、水分を添加して5分〜24時間が好ましく、更に好ましくは1〜8時間程度である。
【0024】
乾物へ添加する水分は、本発明の実施を妨げない範囲であればその温度を適宜調節することが可能である。しかしながら、0℃以下になると乾物の膨潤に時間が掛かり易いこと、添加した水分が凍ってしまうなどの影響があり好ましくない。また、40℃以上となると乾物エキスに焦げ臭が付き始める恐れがあり、70℃より高くなると明らかに焦げ臭が付き始めるため好ましくない。
【0025】
乾物に添加する水分は、食品分野で一般に使用される衛生的なものであればその由来や種別による制限は特になく、水道水、蒸留水、脱イオン水、井戸水、海水、海洋深層水、電解水、天然水、超純水など、自由に選択し使用することができる。
【0026】
乾物への水分の添加方法に特に制限はなく、一度にもしくは数回に分けて水分を添加する方法、水分を噴霧する方法、断続もしくは連続的に水分を滴下する方法等、乾物への水分吸収を妨げない方法であればあらゆる方法が採用できる。
【0027】
乾物に添加する水分は、本発明の第二工程で実施されるエキス抽出を妨げない範囲であれば、他のエキス成分を含有するダシのようなものや、糖及び/又は糖アルコール、無機塩、有機酸やその塩、アミノ酸やその塩等、各種調味成分からなる群から選ばれる何れか1種又は2種以上を含有する水溶液などを用いても良い。
【0028】
本発明に係るエキス抽出方法では、糖及び/又は糖アルコールがエキス抽出剤として作用する。即ち、水分を含んで膨潤した乾物に糖及び/又は糖アルコールを添加することで、膨潤した乾物中に含まれる水分がエキス成分を伴って抽出され、本発明に係るエキスを得ることができる。
【0029】
水分を吸収し膨潤した乾物からエキス抽出を行う第二工程は、添加された糖及び/又は糖アルコールによる浸透圧作用により、効率的にエキス成分を抽出しているものと考えられるため、この工程で使用される糖及び/又は糖アルコールは、飽和に近い状態の水溶液、過飽和状態の水溶液、固形物、のいずれかの状態で膨潤した乾物に添加することが望ましい。特に効率的なエキス成分の抽出を行うのであれば、固形物の状態で添加することが好ましく、更に好ましい形状は粉末状である。
【0030】
第二工程で粉末状の糖及び/又は糖アルコールを使用する場合、結晶品や含蜜結晶品の粉末、あるいは非晶質物質を粉末にしたものも使用可能であるが、粉末そのものの取り扱いの容易さや、入手の容易さなどから、結晶品や含蜜結晶品の粉末が好ましい。
【0031】
粉末状の糖及び/又は糖アルコールを使用する際、粉末の粒径について特に制限はないが、膨潤した乾物からのエキスの抽出効率や、膨潤した乾物に添加した時の攪拌のし易さなどから、20メッシュの篩を通過する程度の粉末の使用が好ましく、更に好ましくは50メッシュの篩を通過する程度の粉末である。
【0032】
本発明で使用することができる糖類としては、フラクトース、グルコース、マルトース、キシロース、リボース、アラビノース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、キシロビオース、マルトトリオース、キシロトリオース、マルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、澱粉加水分解物、デキストリン、分岐デキストリン、等の各種糖類が挙げられる。
【0033】
本発明で使用することができる糖アルコール類としては、上記糖類を水素化したものが使用でき、例えば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、キシロビイトール、マルトトリイトール、キシロトリイトール、水素化マルトオリゴ糖、水素化キシロオリゴ糖、還元澱粉加水分解物、水素化デキストリン、水素化分岐デキストリン、等の各種の水素化された糖類が挙げられる。
【0034】
本発明で使用する糖類や糖アルコール類は、その由来、種類、品質、などに特に制限されることはなく、一般に市販されている程度の品質で十分である。
【0035】
本発明の第二工程では、上述の糖類や糖アルコール類を単独もしくは任意に組合せて使用しても良いが、それらの中でも水に対する溶解性が高いこと、水に溶解したときの粘性が高くなりにくいこと、味質が良いこと、等の性質を有したものが更に有利に採用可能であり、これらの性質を有した好ましい糖及び/又は糖アルコール類としてフラクトース、ラクチトール、スクロース、グルコース、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、デキストリン、分岐デキストリン、水素化デキストリン、水素化分岐デキストリンが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ソルビトールとマルチトールであり、最も好ましいのはマルチトールである。
【0036】
本発明の第二工程では、エキスの抽出に糖及び/又は糖アルコールを使用するが、抽出されたエキスの風味を高めたり、抽出効率を改善する目的で、更に無機塩類、有機酸類、有機酸塩類、アミノ酸類、アミノ酸塩類、からなる群から選ばれる何れか一種または二種以上を組合せたものを、糖及び/又は糖アルコール中に任意の割合で配合しても良い。
【0037】
本発明で使用可能な無機塩類としては、例えば、食塩、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸マグネシウム等、各種無機塩類が挙げられる。本発明で使用可能な有機酸類や有機酸塩類としては、例えば、酢酸、アジピン酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イノシン酸等、各種有機酸類やそれらの塩類が挙げられる。本発明で使用可能なアミノ酸類やアミノ酸塩類としては、例えば、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、チロシン等、各種アミノ酸類やそれらの塩類が挙げられる。これらの中では、抽出効率が高まることや、入手が容易なこと、安価に調製できること、等の理由から食塩の使用が好ましい。
【0038】
本発明は、糖及び/又は糖アルコールを添加するだけで、通常よりも低い加熱温度、又は、実質的な加熱を伴わない条件であっても、乾物から効率的にエキス成分を抽出することが可能であるため、加熱によって生じる様々な影響を大幅に軽減し、風味の優れたエキスを抽出することができる。
【0039】
第二工程での糖及び/又は糖アルコールの添加量は、第一工程で添加された水分1重量部に対して好ましくは0.2〜2.5重量部であり、更に好ましくは0.5〜2.0重量部、最も好ましくは1.0〜1.8重量部である。
【0040】
第二工程での糖及び/又は糖アルコールの添加量が、第一工程で添加された水分1重量に対して0.2重量部未満の場合、膨潤した乾物に対する浸透作用が十分でないため、乾物からのエキス抽出効率が低下することや、抽出されるエキスの風味が低下することがあり好ましくない。
【0041】
第二工程での糖及び/又は糖アルコールの添加量が、第一工程で添加された水分1重量部に対して2.5重量部を超える場合、抽出されたエキスの甘味が強くなりすぎてしまい、得られたエキスの本来の風味を生かすことが難しくなってしまうことや、抽出されたエキスの粘度が極端に増加し、抽出されたエキスを効率的に回収することが困難になるため好ましくない。
【0042】
第二工程では、膨潤した乾物と添加した糖及び/又は糖アルコールが均一に混ざるよう、両者をよく攪拌することで、更に効率的にエキスの抽出を行うことが可能となる。
【0043】
本発明に係る第二工程は、膨潤した乾物に糖及び/又は糖アルコールを、添加した時点を起点とし、そのまま放置するかもしくは適宜攪拌するなどの抽出作業を、好ましくは5分〜24時間、更に好ましくは1〜12時間程度実施すれば良い。
【0044】
抽出時間が5分未満の場合、乾物からのエキスの抽出が十分に期待できないこと、抽出量が少なく経済的でないこと、等の理由で好ましくない。
【0045】
また抽出時間が24時間を超えても、乾物から抽出されるエキス成分の収量に大幅な増加が見込めず作業効率が低下すること、長時間に亘る抽出作業で衛生面で過度に注意を払う必要が生じること、等の理由で好ましくない。
【0046】
第二工程を実施する際の温度は、好ましくは0〜40℃、更に好ましくは10〜30℃である。抽出時の温度が0℃より低いと、糖及び/又は糖アルコールの溶解性が低くくなり十分な浸透圧が得られずエキスの抽出効率が低下してしまうこと、また抽出時の温度が40℃以上となると、乾物原料が熱ダメージを受ける恐れが有ること、好ましくない成分の溶出や熱に弱い成分の分解が生じ易くなること、得られたエキスに焦げ臭が付き始める恐れがあることなど、原料由来の風味を損ねてしまう恐れがあるため好ましくない場合が多い。
【0047】
本発明の製造方法により得られたエキスは、遠心分離や吸引ろ過、減圧濾過、プレスろ過等、常法の固液分離を実施することで、容易にエキス分だけを取り出すことが可能である。
【0048】
本発明の製造方法により得られたエキスは、その後、酵素処理、活性炭処理、フィルターや膜による濾過、殺菌、pH調整等、各種処理を適宜実施しても良い。
【0049】
本発明の製造方法により得られたエキスは、加熱に伴って生じる焦げ臭や風味の劣化が生じ難いという特徴を有しており、うどんつゆ、そばつゆ、そうめん、ラーメン、割り下、天丼、親子丼、ドレッシング、天ぷら用つゆ、お米を炊く水への添加、すし飯用の調味料、雑炊、パエリア、おでん、カレー、シチュー、ポトフ、ブイヤベース、漬物液、キムチの漬け込み、味噌汁、すまし汁、コンソメスープ、中華スープ、パスタスープ、煮物や惣菜の味付け、スナック菓子類の味付け、その他の各種つゆ類、各種ダシ類、液体調味料等、様々な食品の調製や味付けに利用可能である。
【0050】
本発明の製造方法により得られたエキスは、必要に応じて若干の味付けをしても良いが、そのままの状態であっても、良好な風味を有したエキス含有調味料として使用することが可能である。
【0051】
本発明の製造方法により得られたエキスは、乾物に対して添加する水分量や、膨潤した乾物に添加する糖及び/又は糖アルコールの添加量を調節することで、必要に応じて更に濃縮を行っても良いが、そのままの状態であっても、取り扱いの容易な濃縮タイプのエキス含有調味料として使用することが可能である。
【0052】
本発明の製造方法により得られたエキスは、公知の方法で、より高濃度に濃縮することや、更に濃縮や乾燥を行いエキスを固形化あるいは粉末化した、固形状あるいは粉末状エキス調味料の如き形態とすることも可能である。
【0053】
本発明の製造方法により得られたエキスは、原料となる乾物からエキスを抽出するまでの間、通常よりも弱い加熱か、もしくは実質的な加熱を伴うことなくエキス成分の抽出が可能であるため、加熱によって生じる焦げ臭、好ましくない成分の溶出、熱に弱い成分の分解、加熱による乾物本体の軟化や液状化、それに伴う抽出エキスの濁り発生やろ過効率の低下など、乾物への熱ダメージやそれに伴う様々な悪影響の発生が少なく、結果として風味の優れたエキスを抽出することができる。
【0054】
本発明の製造方法により得られるエキスは、その他の具剤と共に加熱調理されるのが一般的な利用方法であることから、本発明の製造方法により得られたエキスの官能検査では、モデル加熱として味質を測定する前に5分間煮沸処理したものをサンプルとして、得られたエキスの味質を評価した。
【0055】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例及び比較例における室温とは20℃を指す。
【0056】
【実施例1】
(乾燥コンブ由来のエキス抽出)
▲1▼抽出用製剤の調製
エキスの抽出に使用する抽出用製剤として、マルチトール(商品名:アマルティMR−50、東和化成工業株式会社製)75重量部と、食塩((財)日本食塩工業製)25重量部を含有する粉末混合物を調製した。
▲2▼乾燥原料の膨潤
1cm×1cm程度に裁断した乾燥した日浦産マコンブ25gをボールに入れ、そこに蒸留水100gを添加し、室温で2時間放置し乾物を膨潤させた。
▲3▼抽出用製剤の添加
▲2▼で調製した水分を吸収し膨潤した乾燥コンブに、▲1▼で調製した抽出用製剤150gを添加し、添加した抽出用製剤が膨潤したコンブにまんべんなく行き渡り溶解するまで約10分間攪拌を行った後、攪拌を中止してそのまま室温で3時間放置した。
▲4▼固液分離
遠心濾過により、抽出されたエキスとコンブの固液分離を行い、乾燥コンブ由来のエキスを得た。
【0057】
【実施例2】
(乾燥コンブ由来のエキス抽出)
実施例1の▲1▼で調製した抽出用製剤の添加量を42.9 gとした以外は、実施例1と同様の方法で、乾燥コンブ由来のエキスを得た。
【0058】
【実施例3】
(乾燥コンブ由来のエキス抽出)
実施例1の▲1▼で調製した抽出用製剤の添加量を11.1gとした以外は、実施例1と同様の方法で、乾燥コンブ由来のエキスを得た。
得られたエキスをブリックス濃度計で2%になるよう調製し、5分間煮沸したものをサンプルとて官能検査を行ったところ、コンブ風味で焦げ臭の無い良好な味質のエキスであった。
【0059】
【実施例4】
(カツオ節由来のエキス抽出)
▲1▼抽出用製剤の調製
エキスの抽出に使用する抽出用製剤として、ソルビトール(商品名:ソルビットDP−50、東和化成工業株式会社製)50重量部、粉末還元澱粉糖化物(商品名:PO−10、東和化成工業株式会社製)23重量部、食塩((財)日本食塩工業製)27重量部を用いて、これらを含有する粉末混合物を調製した。
▲2▼乾燥原料の膨潤
カツオ節(一般市販品)25gをボールに入れ、そこに蒸留水100gを添加し、室温で2時間放置し、カツオ節を膨潤させた。
▲3▼抽出用製剤との混合
▲2▼で調製した水分を吸収し膨潤したカツオ節に、▲1▼で調製した抽出用製剤150gを添加し、添加した抽出用製剤が膨潤したカツオ節にまんべんなく行き渡り溶解するまで約10分間攪拌を行った後、攪拌を中止してそのまま室温で3時間放置した。
▲4▼固液分離
遠心濾過により、抽出されたエキスとカツオ節の固液分離を行い、カツオ節由来のエキスを得た。
【0060】
【実施例5】
(干し椎茸由来のエキス抽出)
▲1▼抽出用製剤の調製
エキスの抽出に使用する抽出用製剤として、マルチトール(商品名:アマルティMR−50、東和化成工業株式会社製)75重量部と、食塩((財)日本食塩工業製)25重量部を含有する粉末混合物を調製した。
▲2▼乾燥原料の膨潤
0.5cm×0.5cm程度に裁断した干し椎茸(一般市販品)25gをボールに入れ、そこに蒸留水100gを添加し、室温で1時間放置し、干し椎茸を膨潤させた。
▲3▼抽出用製剤の添加
▲2▼で調製した水分を吸収し膨潤した干し椎茸に、▲1▼で調製した抽出用製剤150gを添加し、添加した抽出用製剤が膨潤した干し椎茸にまんべんなく行き渡り溶解するまで約10分間攪拌を行った後、攪拌を中止してそのまま室温で3時間放置した。
▲4▼固液分離
遠心濾過により、抽出されたエキスと干し椎茸の固液分離を行い、干し椎茸由来のエキスを得た。
【0061】
【実施例6】
(乾燥コンブ由来のエキス抽出)
▲1▼抽出用製剤の調製
エキスの抽出に使用する抽出用製剤として、ソルビトール(商品名:ソルビットDP−50、東和化成工業株式会社製)を使用した。
▲2▼乾燥原料の膨潤
1cm×1cm程度に裁断した乾燥した日浦産マコンブ25gをボールに入れ、そこに蒸留水100gを添加し、室温で3時間放置し乾物を膨潤させた。
▲3▼抽出用製剤の添加
▲2▼で調製した水分を吸収し膨潤した乾燥コンブに、▲1▼で調製した抽出用製剤150gを添加し、添加した抽出用製剤が膨潤したコンブにまんべんなく行き渡り溶解するまで約10分間攪拌を行った後、攪拌を中止してそのまま室温で4時間放置した。
▲4▼固液分離
遠心濾過により、抽出されたエキスとコンブの固液分離を行い、乾燥コンブ由来のエキスを得た。
【0062】
【実施例7】
(乾燥コンブ由来のエキス抽出)
抽出用製剤として砂糖(商品名:グラニュー糖、明治製糖株式会社製)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で乾燥コンブ由来のエキスを得た。
得られたエキスをブリックス濃度計で2%になるよう調製し、5分間煮沸したものをサンプルとしたところ、焦げ臭さが無く、良好なコンブ風味を有したエキスであった。
【0063】
【実施例8】
(乾燥コンブ由来のエキス抽出)
抽出用製剤としてグルコース(商品名:日食結晶ぶどう糖、日本食品化工株式会社製)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で乾燥コンブ由来のエキスを得た。
得られたエキスをブリックス濃度計で2%になるよう調製し、5分間煮沸したものをサンプルとしたところ、焦げ臭さが無く、良好なコンブ風味を有したエキスであった。
【0064】
【実施例9】
(乾燥コンブ由来のエキス抽出)
抽出用製剤として分岐デキストリン(商品名:BLD、参松工業株式会社製)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で乾燥コンブ由来のエキスを得た。
得られたエキスをブリックス濃度計で2%になるよう調製し、5分間煮沸したものをサンプルとしたところ、焦げ臭さが無く、良好なコンブ風味を有したエキスであった。
【0065】
【実施例10】
(乾燥ホタテ貝柱由来のエキス抽出)
▲1▼抽出用製剤
抽出用製剤として実施例1の▲1▼で調製した抽出用製剤を用いた。
▲2▼乾燥原料の膨潤
直径が1〜2cmの乾燥ホタテ貝柱(一般市販品)25gをボールに入れ、そこに蒸留水100gを添加し、室温で1時間放置し、乾燥ホタテ貝柱を膨潤させた。
▲3▼抽出用製剤の添加
▲2▼で調製した水分を吸収し膨潤した乾燥ホタテ貝柱に、▲1▼で調製した抽出用製剤150gを添加し、添加した抽出用製剤が膨潤した乾燥ホタテ貝柱にまんべんなく行き渡り溶解するまで約10分間攪拌を行った後、攪拌を中止してそのまま室温で3時間放置した。
▲4▼固液分離
遠心濾過により、抽出されたエキスと乾燥ホタテ貝柱の固液分離を行い、乾燥ホタテ貝柱由来のエキスを得た。
▲5▼官能検査
得られたエキスをブリックス濃度計で2%になるよう調製し、5分間煮沸したものをサンプルとしたところ、焦げ臭さが無く、良好なホタテ風味を有したエキスであった。
【0066】
【実施例11】
(ビーフジャーキー由来のエキス抽出)
▲1▼抽出用製剤
抽出用製剤として実施例1の▲1▼で調製した抽出用製剤を用いた。
▲2▼乾燥原料の膨潤
1cm×1cm程度に裁断したビーフジャーキー(一般市販品)25gをボールに入れ、そこに蒸留水100gを添加し、室温で2時間放置し、ビーフジャーキーを膨潤させた。
▲3▼抽出用製剤の添加
▲2▼で調製した水分を吸収し膨潤したビーフジャーキーに、▲1▼で調製した抽出用製剤150gを添加し、添加した抽出用製剤が膨潤したビーフジャーキーにまんべんなく行き渡り溶解するまで約10分間攪拌を行った後、攪拌を中止してそのまま室温で3時間放置した。
▲4▼固液分離
遠心濾過により、抽出されたエキスとビーフジャーキーの固液分離を行い、ビーフジャーキー由来のエキスを得た。
▲5▼官能検査
得られたエキスをブリックス濃度計で2%になるよう調製し、5分間煮沸したものをサンプルとしたところ、焦げ臭さが無く、良好な風味を有したエキスであった。
【0067】
【比較例1】
実施例1の▲2▼の工程で、乾燥コンブへの膨潤に使用する水分を80℃の温水とし、実施例1の▲3▼の工程で実施するエキスの抽出を80℃に保って実施した以外は、実施例1と同様の方法で、乾燥コンブ由来のエキスを調製した。
【0068】
【比較例2】
実施例4の▲2▼の工程で、カツオ節への膨潤に使用する水分を80℃の温水とし、実施例4の▲3▼の工程で実施するエキスの抽出を80℃に保って実施した以外は、実施例4と同様の方法で、カツオ節由来のエキスを調製した。
【0069】
【比較例3】
実施例5の▲2▼の工程で、干し椎茸への膨潤に使用する水分を80℃の温水とし、実施例5の▲3▼の工程で実施するエキスの抽出を80℃に保って実施した以外は、実施例5と同様の方法で、干し椎茸由来のエキスを調製した。
【0070】
【比較例4】
実施例6の▲2▼の工程で、乾燥コンブへの膨潤に使用する水分を80℃の温水とし、実施例6の▲3▼の工程で実施するエキスの抽出を80℃に保って実施した以外は、実施例6と同様の方法で、乾燥コンブ由来のエキスを調製した。
【0071】
【試験例1】
(エキス抽出効率)
実施例1〜3で得られた抽出エキス重量、抽出残差重量、歩留まりを測定した。測定結果を表1に示す。なお、歩留まりは、以下の計算式1に従って求めた。
【0072】
【式1】
【0073】
【表1】
【0074】
【試験例2】
(エキスの官能検査)
実施例1〜2、実施例4、実施例5、実施例6で得られた各エキスと、水分吸収時とエキス抽出時の温度がそれぞれ80℃となるよう加熱処理を行って製造した比較例1〜4のエキスについて、抽出した原料別で味質を対比した。結果を表2〜表5に示す。
味質の比較では、得られたエキスをブリックス濃度計で2%に調製し、それを5分間煮沸したものについて官能検査を行った。
評価は、◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良、とした。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【発明の効果】
本発明を実施することにより、日常用いられる乾物から、通常よりも弱い加熱か、もしくは実質的な加熱を伴うことなく容易にエキス成分の抽出が可能であるため、焦げ臭が無く、香り、風味、旨みが非常に良好なエキスを得ることができる。
Claims (5)
- 乾物に0℃より高く40℃未満の温度の水分を添加し膨潤させる第一工程、
膨潤した乾物に糖及び/又は糖アルコールを添加し、エキス成分を抽出する工程を0℃以上40℃未満で実施する第二工程、
以上の工程を逐次経由するエキスの製造方法。 - 乾物1重量部に対して、0.8〜10重量部の水分を添加する、請求項1に記載のエキスの製造方法。
- 添加する水分1重量部に対して、0.2〜2.5重量部の糖及び/又は糖アルコールを添加する、請求項1または2に記載のエキスの製造方法。
- 糖及び/又は糖アルコールに、無機塩、有機酸、有機酸塩、アミノ酸、アミノ酸塩、からなる群から選ばれる何れか一種又は二種以上を含有させる、請求項1〜3の何れか一つに記載のエキスの製造方法。
- 請求項1から4の何れか一つに記載の方法で得られるエキス。
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