JP4105359B2 - 配管構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型バスのトランクルームと後輪ホイールハウスとを仕切る隔壁板の配管構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
大型バスにおいては、ブレーキやクラッチ等の駆動源の媒体として空気圧又は油圧が用いられており、車両の前後方向にはブレーキやクラッチに空気圧又は油圧を供給するための配管が延設されている。配管は乗客室の床下に配設されるため、図5に示すように床下にトランクルーム101をそなえる車両100の場合には、配管102がトランクルーム101と車外に開口した面を有した後輪ホイールハウス103とを仕切る隔壁板(アウトリガ)104を貫通することになる。なお、従来、配管102としては金属パイプが用いられていた。
【0003】
このように配管102が隔壁板104を貫通する場合、後輪ホイールハウス103側からトランクルーム101内への水漏れを防止する必要がある。そこで、従来は、図6,図7に示すような配管構造を隔壁板104に設けることにより、トランクルーム101の防水を行なっていた。ここで、図6は図5中に示すVI部(配管102の貫通部)を拡大して示す図であり、図7は図6のVII−VII断面図である。
【0004】
図6,図7に示すように、従来の配管構造は、隔壁板104に貫通孔104aを設けるとともに隔壁板104の後輪ホイールハウス103側にラバー105を固設し、隔壁板104の貫通孔104aからラバー105を貫通させてトランクルーム101側から後輪ホイールハウス103側へ配管102を通している。ラバー105は図8に示すように上下2分割構造であり、上下から配管102を挟み込むようになっている。また、配管102とラバー105との隙間にはシール剤106が塗布されている。ラバー105の隔壁板104への固定は、ラバー105をブラケット107,108からなるケースの中に収容して、これらブラケット107,108を隔壁板104にボルトで締結することにより行なわれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、上記の配管102を金属パイプからナイロンチューブに代替させることが提案されている。配管102としてナイロンチューブを用いる場合、金属パイプに比較して軽量化やコストの低減が可能である。また、金属パイプで配管102を形成する場合には、配管経路に沿って複数の金属パイプをフレアナット(図7中の符号109参照)で連結していく必要があるが、ナイロンチューブの場合には配管経路に沿って一本のチューブを配設すればよいため、取り付け作業も容易になるという利点もある。
【0006】
しかしながら、上述した従来の配管構造にナイロンチューブに用いる場合には次のような課題がある。すなわち、従来の配管構造では、配管102とラバー105との隙間のシール性を確実にするためには、配管102を正確に位置決めしておいた状態でラバー105で挟み込むようにする必要がある。配管102が金属パイプの場合には、金属パイプは剛性が高く曲がることはないので位置決めは容易である。
【0007】
一方、配管102としてナイロンチューブを用いる場合、ナイロンチューブは柔軟性を有しているため、曲がったり撓んだりして正確な位置決めは難しい。このため、隔壁板104の前後においてクランプ等にて固定することによって位置決めすることが必要となる。
ところが、このように位置決めのためにクランプ等を用いるとなると、他の部材とのクリアランスを調整してクランプ等を配設するためのスペースを確保しなければならないという課題がある。また、クランプ等を設けることにより部品点数も増大してコスト増を招いてしまうという課題もある。
【0008】
さらに、近年では、部品を一つ一つ車体に組み付けていくのではなく、予め他の場所でユニットとして組み立てておき、そのユニットを車体に組み付けることによって取り付け作業の容易化が図られているが、従来の配管構造では、配管102を貫通孔104aに一本一本通さなければならないため、他の場所で予め配管102をユニットとして組み立てておいて車体に取り付けることは困難であるという課題もある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、ナイロンチューブのような柔軟性を有する配管部材を取付スペースの増加やコストの増加を招くことなく車体に容易に取り付けることを可能にした、配管構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明の配管構造では、車外に開口した面を有する第1の部屋と第1の部屋に隣接する第2の部屋とを隔てる隔壁板に開口部を設けるとともに、この開口部を貫通する柔軟性を有する複数の配管部材を設ける。また、第1の部屋から第2の部屋へ通じ且つ上記複数の配管部材の外径と略同径に穿設された複数の貫通孔部分の外周部が円柱形に設けられた弾性シール部材を上記開口部に嵌合させるとともに、これら複数の貫通孔のそれぞれに上記複数の配管部材を挿通し、さらに、バンド部材により、上記円柱状の外周部を径方向に締め上げて上記複数の配管部材と上記複数の貫通孔との隙間をシールする。
【0011】
好ましくは、弾性シール部材には、上記複数の貫通孔を同一円周上に配設する。
より好ましくは、上記複数の配管部材を第1の部屋及び第2の部屋の少なくとも一方の部屋の弾性シール部材の近傍において一まとめに結束する。
【0012】
【発明の実施形態】
図面により本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4は本発明の一実施形態としての配管構造について示すものである。ここでは、大型バスのトランクルーム(第2の部屋)と後輪ホイールハウス(第1の部屋)とを仕切る隔壁板(アウトリガ)を通してナイロン製の配管(ナイロンチューブ)を配設する場合の配管構造について説明する。
【0013】
本配管構造では、ナイロンチューブの隔壁板への取り付けに、トランクルーム側から後輪ホイールハウス側への貫通孔がレンコン状に穿設されたシールゴム(弾性シール部材)を用いている。まず、図1〜図3を用いて本配管構造にかかるシールゴム1の構成について説明する。
シールゴム1は、防水性のゴム材で形成されており、図1〜3に示すように円環状のグロメット部15に円柱状の胴部10を一体化した形状になっている。胴部10には、軸方向に向けて複数の貫通孔11が穿設されている。これらの貫通孔11はナイロンチューブを通すための孔であり、その内径は挿通すべきナイロンチューブ2の外径とほぼ同径に設定され、同一円周上に配設されている。また、胴部10の外周面には環状の凹部12が形成されている。凹部12は締結部材(バンド部材)としてのホースバンド20を取り付ける部分であり、少なくともホースバンド20の幅よりも広く形成されている。
【0014】
一方、グロメット部15は、その内径を胴部10の外径よりも大きく形成されている。また、グロメット部15の外周面には環状の溝16が形成されている。なお、環状の溝16の断面形状は、自由状態時において底部16aの幅が広い台形断面を有しており、入口部16bの幅は隔壁板の厚さよりも薄く、底部16aは隔壁板3の厚さよりも広く設定されている。
【0015】
本実施形態では、ナイロンチューブ2を車体に取り付ける際、図1に示すように予めナイロンチューブ2を上述のシールゴム1に組み付けてユニット8にしておくようになっている。このナイロンチューブ2のシールゴム1への組付け手順について説明すると、まず、シールゴム1の貫通孔11のそれぞれにナイロンチューブ2を挿通して、各ナイロンチューブ2のシールゴム1に対する前後方向長さを所定長さに調整する。そして、各ナイロンチューブ2が所定長さに調整されたところで胴部10の凹部12にホースバンド20を取り付け、ホースバンドの長手方向(周方向)に向いたネジ21を回して胴部10をホースバンド20により径方向に締め付けていく。これにより、シールゴム1の貫通孔11とナイロンチューブ2との隙間が塞がれて完全にシールされるとともに、ホースバンド20の締結力によりナイロンチューブ2はシールゴム1にしっかりと固定される。また、ネジ21の回転によると締結力の微調整が効き、トルク管理も容易となる。
【0016】
そして、本配管構造は、上記のように組み付けられたナイロンチューブ2とシールゴム1とからなるユニット8を、図2に示すようにトランクルーム4と後輪ホイールハウス5とを仕切る隔壁板3の開口部3aに取り付けることにより構成される。隔壁板3の開口部3aは円形に形成されており、その径はグロメット部15の溝16の径に応じた大きさに設定されている。上記ユニット8の取り付けは後輪ホイールハウス5側から行なわれ、シールゴム1のグロメット部15側をトランクルーム4側に向けた状態で、まず、ナイロンチューブ2の束を隔壁板3の開口部3aに通し、次いでグロメット部15の溝16を開口部3aに嵌合させることで完了する。
【0017】
また、組み付けの完了後、本配管構造では、さらに図3に示すようにナイロンチューブ2の束をシールゴム1の前後で結束バンド22によりひとまとめに結束するようになっている。ナイロンチューブ2の束の結束位置は、ナイロンチューブ2が折れ曲がったりしない程度にできるだけシールゴム1の近くにする。これにより、ナイロンチューブ2の束はシールゴム1を底面とし結束バンド22による結束位置を頂点とする円錐を形成する。
【0018】
次に、本実施形態にかかるナイロンチューブ2の連結方法について説明する。ナイロンチューブ2を配管として用いることによって、配管の先端から後端までを一本のナイロンチューブ2とすることができ、金属パイプを用いた場合のように配管をフレアナットで繋いでいく必要はなく、配管途中での繋ぎ合わせは不要となる。しかしながら、ナイロンチューブ2の先端部及び後端部における相手の装置又は部材への連結はなおも必要である。このとき、ナイロンチューブ2の端部に何らかの連結部材を取り付けたり加工を施したりすると、シールゴム1の貫通孔11を通らなくなったり、コスト増を招いてしまう虞がある。
【0019】
そこで、本実施形態では、図4に示すようなワンタッチ差込式のコネクタ30を相手の装置又は部材に取り付けるようにしている。このコネクタ30は、ナイロンチューブ2の内径とほぼ同径の外径を有する内管部31と、内管部31を取り巻く外管部32とをそなえており、外管部32の内側には環状のシール部材(ゴム)33と抜け止め34とが配設されている。このような構成のコネクタ30にナイロンチューブ2の先端を差し込むことにより、シール部材33によりナイロンチューブ2と外管部32との隙間がシールされ、さらに抜け止め34によりナイロンチューブ2のコネクタ30からの抜けが防止されるようになっている。
【0020】
本発明の一実施形態としての配管構造は上述のように構成されているので、シールゴム1とナイロンチューブ2とを予めユニット8にした状態で車体に取り付けることができるので、取り付け作業が容易になるという利点がある。
また、シールゴム1の貫通孔11によってナイロンチューブ2を支持することができるので、クランプ等の支持具を必要としない。このため、クランプ等の支持具を別途配設するために他の部品とのクリアランスを調整してスペースを設ける必要はなく、省スペース化を計ることができるという利点がある。また、クランプ等の支持具の不要により部品点数も増加しないため、コスト増も防ぐことができるという利点がある。
【0021】
また、本配管構造によれば、シールゴム1に貫通孔11を同一円周上に設けることにより、複数のナイロンチューブ2とシールゴム1とをホースバンド20により一様な力で締結することができるとともに、ナイロンチューブ2を円錐状に束ねやすくなるという利点もある。
また、シールゴム1の前後近傍でナイロンチューブ2の束を結束することにより、ナイロンチューブ2の束は結束位置を頂点としシールゴム1を底辺とする円錐を形成するので、曲がったり撓んだりしにくく、車体の振動が伝わっても振れにくい。したがって、ナイロンチューブ2の振動に伴う貫通孔11との間でのシール性の低下を防止することができるという利点もある。
【0022】
以上、本発明の実施の形態の一例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施形態では、ナイロンチューブ2で配管を形成した場合について説明したが、弾性シール部材の貫通孔に対して表面が滑らかで滑りやすく且つ柔軟性のある配管部材であれば、その材質はナイロンに限定されるものではない。
【0023】
また、上述の実施形態では、配管内をエアが流れるが、油等の液体が配管内を流れてもよいことは言うまでもない。
また、上述の実施形態では、同一円周上に等間隔で貫通孔11を穿設しているが、貫通孔11の配置はこのような規則的な配置でなくてもよく、胴部10の任意の位置に貫通孔11を穿設することができる。ただし、少なくとも同一円周上に配置した場合にはナイロンチューブ2を束ねる上で有利である。この場合、同一円周上に加えて胴部10の中心にも貫通孔11を穿設してもよい。
【0024】
また、上述の実施形態では、本発明を大型バスのトランクルームと後輪ホイールハウスとを仕切るアウトリガを通してエアチューブを配設する場合の配管構造について例示したが、本発明は車室内と素車室外とを仕切る隔壁板を通してエアチューブを配設する配管構造一般に広く適用できるものである。
【0025】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の配管構造によれば、弾性シール部材と配管部材とを予めユニットにした状態で車体に取り付けることができるので、取り付け作業が容易になるという利点がある。また、弾性シール部材の貫通孔によって配管部材を支持することができるので、クランプ等の支持具を必要としない。このため、クランプ等の支持具を別途配設するために他の部品とのクリアランスを調整してスペースを設ける必要はなく、省スペース化を計ることができるという利点もある。また、クランプ等の支持具の不要により部品点数も増加しないため、コスト増も防ぐことができるという利点がある。
【0026】
弾性シール部材を円柱形に形成するとともに上記複数の貫通孔を同一円周上に配設した場合には、締結部材により各配管部材を均等な力で締め付けることができ、各配管部材と貫通孔との間のシール性を向上させることができるという利点がある(請求項1および2)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態として配管構造にかかるシールゴムへのナイロンチューブの取り付け状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態として配管構造にかかるシールゴムのアウトリガへの取り付け状態を示す側面図(一部断面図)である。
【図3】本発明の一実施形態として配管構造にかかるナイロンチューブの結束状態を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態として配管構造にかかるナイロンチューブのコネクタへの接続状態を示す側面図(一部断面図)である。
【図5】従来の配管構造にかかるバスの斜視図である。
【図6】図5のVI部の拡大図である。
【図7】図6のVII−VII矢視断面図である。
【図8】従来の配管構造にかかるラバーの分解斜視図である。
【符号の説明】
1 シールゴム(弾性シール部材)
2 ナイロンチューブ(配管部材)
3 アウトリガ(隔壁板)
3a 開口部
4 トランクルーム(第2の部屋)
5 後輪ホイールハウス(第1の部屋)
8 ユニット
10 胴部
11 貫通孔
12 凹部
15 グロメット部
16 溝
20 ホースバンド(締結部材)
22 結束バンド
30 コネクタ

Claims (3)

  1. 車外に開口した面を有する第1の部屋と、
    同第1の部屋と隔壁板で隔てられた第2の部屋と、
    上記隔壁板に設けられた開口部と、
    上記開口部を貫通する柔軟性を有する複数の配管部材と、
    上記開口部に嵌合し、上記第1の部屋から上記第2の部屋へ通じる上記複数の配管部材の外径と略同径に穿設された複数の貫通孔部分の外周部が円柱形に設けられた弾性シール部材と、
    上記複数の貫通孔のそれぞれに上記複数の配管部材が挿通された上記円柱形の外周部を径方向に締め上げ上記複数の配管部材と上記複数の貫通孔との隙間をシールするバンド部材とをそなえた
    ことを特徴とする、配管構造。
  2. 上記弾性シール部材には、上記複数の貫通孔を同一円周上に配設した
    ことを特徴とする、請求項1記載の配管構造。
  3. 上記複数の配管部材を該第1の部屋及び該第2の部屋の少なくとも一方の部屋の上記弾性シール部材の近傍において一まとめに結束した
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の配管構造。
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