JP4104053B2 - ステータコイル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転電機におけるステータコイル及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
モータ等の回転電機は、中央孔を有するステータと、該ステータの中央孔内に配設されたロータとを備えている。
前記ステータは、ステータコアと、該ステータコアに、相別に電気接続された複数のステータコイルとを有している。
【0003】
従来から、前記ステータコイルとしては、一本の被覆導線を螺旋状に成形したタイプのものが一般的である。斯かる螺旋状ステータコイルは、前記ステータコアの内周面に径方向内方へ突出するように設けられたスロットに装着される。
【0004】
他方、設計自由度を向上させるべく、前記ステータコイルとして、複数の被覆導線を機械的且つ電気的に接合してなるタイプも使用されている。斯かるタイプのステータコイルは、ステータコアに形成された溝等の保持手段に装着される。
【0005】
ところで、複数の被覆導線からなるステータコイルにおいては、隣接する一の被覆導線及び他の被覆導線の対応端部における被覆を剥離して導線を露出させ、該露出部位同士を連結具により圧着するか、若しくは、溶接することにより、対応する被覆導線同士を機械的且つ電気的に接合させていた。
【0006】
しかしながら、前者の方法は、機械的強度の点で不十分であり、又、後者の方法は、加熱等の影響によって被覆導線の導電性部材が組織変化したり、及び/又は、該導線性部材にろう材等の異種物質が付着して合金化し、該導電性部材の導電率が変化するという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、複数の被覆導線が接合されてなるステータコイルであって、機械的な接合強度を向上させることができ、且つ、接合部位における導電率の悪化を有効に防止し得るステータコイル及びその製造方法の提供を、一の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成する為に、ステータコアに装着されるステータコイルであって、導線性部材が絶縁性被膜によって被覆されてなる第1被覆導線と、導線性部材が絶縁性被膜によって被覆されてなる第2被覆導線と、前記第1及び第2被覆導線を機械的且つ電気的に接合する導電性の連結部材とを備えたステータコイルを提供する。
前記第1被覆導線は、一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材の少なくとも一部が切断されるような深さで且つ幅W1の第1切り欠きを有するものとされる。
前記第2被覆導線は、一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材の少なくとも一部が切断されるような前記第1切り欠きと同一深さ且つ同一幅W1の第2切り欠きを有するものとされる。
前記第1及び第2被覆導線は、前記第1及び第2切り欠きが長手方向同位置に位置し、且つ、該第1及び第2切り欠きの双方の少なくとも一部が互いの対向面以外に位置するように、重ね合わされており、前記連結部材は、前記第1及び第2切り欠きの幅W1と同一幅W2を有し、前記第1及び第2切り欠きにはめ込まれた状態でかしめられている。
前記第1及び第2切り欠きの幅W1並びに前記連結部材の幅W2は、前記第1切り欠きと前記連結部材との接触面積及び前記第2切り欠きと前記連結部材との接触面積が、前記第1及び第2被覆導線における前記導電性部材の断面積と同一又はそれ以上となるように、設定されている。
【0009】
好ましくは、前記連結部材は、前記第1及び第2切り欠きの深さと同一の厚みを有してものとされる。
より好ましくは、前記連結部材は、前記第1及び第2切り欠きと対向する面に突起を有するものとされる。
0010
又、本発明は、ステータコアに装着されるステータコイルであって、導線性部材が絶縁性被膜によって被覆されてなる第1被覆導線と、導線性部材が絶縁性被膜によって被覆されてなる第2被覆導線とを備え、前記第1及び第2被覆導線が導電性の連結部材によって電気的且つ機械的に連結されてなるステータコイルの製造方法であって、前記第1被覆導線の一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材の少なくとも一部が切断されるような深さで且つ幅W1の第1切り欠きを形成する工程と、前記第2被覆導線の一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材の少なくとも一部が切断されるような前記第1切り欠きと同一深さ且つ同一幅W1の第2切り欠きを形成する工程と、前記第1及び第2切り欠きが長手方向同位置に位置し且つ該第1及び第2切り欠きの双方の少なくとも一部が互いの対向面以外に位置するように、前記第1及び第2被覆導線を重ね合わさた状態で、前記第1及び第2切り欠きの幅W1と同一幅W2を有する前記連結部材を前記第1及び第2切り欠きにはめ込んだ状態でかしめ加工を行う工程とを含み、前記第1及び第2切り欠きの幅W1並びに前記連結部材の幅W2は、前記第1切り欠きと前記連結部材との接触面積及び前記第2切り欠きと前記連結部材との接触面積が、前記第1及び第2被覆導線における前記導電性部材の断面積と同一又はそれ以上となるように、設定されているステータコイルの製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るステータコイルの好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施の形態に係るステータコイルの部分概略斜視図であり、図2は図1におけるII部拡大正面図である。又、図3及び図4は、それぞれ、図2におけるIII-III線及びIV-IV線断面図である。
【0012】
本実施の形態に係るステータコイル1は、回転電機のステータコアに相別に備えられるものである。例えば、3相モータ用のステータにおいては、ステータコアは、u相,v相及びw相毎に備えられる。
【0013】
より詳しくは、本実施の形態に係るステータコイル1は、複数の被覆導線と、該複数の被覆導線のうち隣接する被覆導線(第1及び第2被覆導線10,20)を電気的且つ機械的に接合する連結部材30とを備えている。
【0014】
図5に、図1におけるII部の拡大正面図であって、前記連結部材30を取り外した状態を示す。又、図6及び図7に、それぞれ、図5におけるVI-VI線及びVII-VII線断面図を示す。
【0015】
図3,4及び図6,7に示すように、前記複数の被覆導線10,20は、それぞれ、無酸素銅等の導電性部材51と、該導電性部材51を囲繞する絶縁性被膜52とを備えている。
【0016】
前記第1被覆導線10は、図6及び図7に示すように、一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材51の少なくとも一部が切断されるような深さの第1切り欠き11を有している。
【0017】
同様に、前記第2被覆導線20も、一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材51の少なくとも一部が切断されるような深さの第2切り欠き12を有している。
なお、本実施の形態においては、第1及び第2被覆導線10,20の導電性部材51を断面四角形状としており、前記第1及び第2切り欠き11,12は2面に設けられている。
【0018】
好ましくは、前記第1及び第2切り欠き11,12は、第1被覆導線10及び第2被覆導線20の強度の観点から、残存する導電性部材の厚みtが、他の部位における導電性部材の厚みTの1/3以上となるような深さとされる。
【0019】
前記第1及び第2被覆導線10,20は、前記第1及び第2切り欠き11,12を含む領域が互いに平行な状態でオーバーラップするように配置されている。
詳しくは、前記第1及び第2被覆導線10,20は、前記第1及び第2切り欠き11,12が長手方向同一位置に位置し、且つ、該第1及び第2切り欠き11,12の少なくとも一部が互いの対向面以外に位置するように、配置されている。
【0020】
なお、「第1及び第2切り欠き11,12の少なくとも一部が互いの対向面以外に位置する」には、種々の態様が包含される。
即ち、第1及び第2被覆導線10,20が断面四角形状であり、且つ、該第1及び第2被覆導線10,20の一面にのみ切り欠きが形成されている場合には、該切り欠きが形成された面が対向面以外に位置していることを意味する。
又、第1及び第2被覆導線10,20が断面四角形状であり、且つ、該第1及び第2被覆導線10,20の二面以上に切り欠きが形成されている場合には、切り欠きが形成されている面を対向面とする態様、並びに、切り欠きが形成されていない面を対向面とする態様の全ての態様が包含される。
【0021】
又、当然ながら、本発明は、第1及び第2被覆導線が断面四角形状である場合に限定されるものではなく、断面円形状又は断面三角形状等の種々の態様が含まれる。
さらに、「第1及び第2切り欠き11,12が長手方向同一位置に位置する」には、図1に示すように、第1被覆導線10及び第2被覆導線20の対応する一端部が同一方向を向く態様に加えて、図9に示すように、第1被覆導線10及び第2被覆導線20の対応する一端部が反対方向を向く態様も包含される。
【0022】
前記連結部材30は、導電性材料からなり、図2〜図4に示すように、前記第1及び第2切り欠き11,12のうち,互いに対向していない部分にはめ込まれた状態で、かしめられている。
このように、本実施の形態に係るステータコイル1においては、第1及び第2被覆導線10,20にそれぞれ形成された第1及び第2切り欠き11,12にはめ込まれた導電性連結部材をかしめることで、第1被覆導線10及び第2被覆導線20が連結されているので、該第1及び第2被覆導線10,20の導電性を確保しつつ、該第1及び第2被覆導線10,20の機械的な接続強度を向上させることができる。
【0023】
即ち、前記第1及び第2切り欠き11,12は、絶縁性被膜52を越えて導電性部材51に達するような深さを有している。そして、導電性の前記連結部材30が、斯かる第1及び第2切り欠き11,2にはめ込まれている。従って、第1被覆導線10の導電性部材51と第2被覆導線20の導電性部材51とは前記連結部材30を介して電気的に接続され、且つ、第1及び第2被覆導線10,20は該連結部材30によって機械的に連結されている。
【0024】
ところで、前記第1及び第2切り欠きの幅W1(図5参照)と前記連結部材の幅W2(図2参照)とは、ステータコイルの導電率に直接的に影響を与える。即ち、第1被覆導線10及び第2被覆導線20の間を流れる電流は、第1切り欠き11及び連結部材30の接触面から該連結部材30へ伝達され、そして、連結部材30及び第2切り欠き12の接触面から第2被覆導線20へ伝達される。
従って、第1及び第2切り欠き11,12と連結部材30とのそれぞれの接触面積が、第1及び第2被覆導線10,20における導電性部材51の断面積と同一又はそれ以上となるように、前記幅W1及びW2を設定することにより、接合部位における導電率の悪化を防止できる。
【0025】
好ましくは、図4に示すように、前記連結部材30を前記第1及び第2被覆導線10,20の全周に亘って巻き回されるように構成し、且つ、該連結部材30の両端部を溶接させることができ、これにより、第1及び第2被覆導線10,20の機械的接続強度をさらに向上させることができる。
【0026】
又、好ましくは、前記第1及び第2切り欠き11,12を略同一深さ及び略同一幅とし、且つ、前記連結部材30を前記第1及び第2切り欠き11,12の深さ及び幅と略同一の厚み及び幅とすることができる。このように構成することにより、第1及び第2被覆導線10,20の相対移動をより確実に防止することができる。
なお、好ましくは、前記連結部材30の外表面は、絶縁性樹脂等によってモールドされる。
【0027】
図8に、前記連結部材30の好ましい一例を示す。
図8に示すように、好ましくは、前記連結部材30は、第1及び第2被覆導線10,20への取付前においては、断面コの字状とされる。このように構成することにより、該連結部材30のかしめ作業の効率化を図ることができる。
【0028】
又、前記連結部材30における第1及び第2切り欠きとの当接面に突起31を設けることができる。斯かる突起31を設けることにより、連結部材30の第1及び第2被覆導線10,20への接触面積の向上、及び、第1及び第2被覆導線10,20の連結強度の向上を図ることができる。
【0029】
斯かる構成のステータコイルによれば、前記種々の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
即ち、複数の被覆導線を用いて形成しているので、一本の被覆導線を螺旋状に成形してなるタイプのステータコイルに比して、設計自由度を向上させることができる。
さらに、複数の被覆導線の導電性部材同士を溶接するのではなく、該複数の被覆導線間を連結部材によって機械的且つ電気的に接合している。従って、複数の被覆導線の導電性部材にろう材等の異種物質が付着することが無く、被覆導線間の導電率の悪化を有効に防止できる。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、複数の被覆導線からなるステータコイルにおいて、前記複数の被覆導線間の機械的な接合強度を向上させつつ、接合部位における導電率の悪化を有効に防止することができる。
即ち、本発明によれば、第1及び第2切り欠きの幅W1並びに連結部材の幅W2は、前記第1切り欠きと前記連結部材との接触面積及び前記第2切り欠きと前記連結部材との接触面積が、第1及び第2被覆導線における導電性部材の断面積と同一又はそれ以上となるように、設定されているので、接合部位における導電率の悪化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の好ましい一実施の形態に係るスタータコイルの部分斜視図である。
【図2】 図2は、図1におけるII部拡大図である。
【図3】 図3は、図2におけるIII-III線断面図である。
【図4】 図4は、図2におけるIV-IV線断面図である。
【図5】 図5は、図1におけるII部拡大図であり、連結部材を装着する前の状態を示している。
【図6】 図6は、図5におけるVI-VI線断面図である。
【図7】 図7は、図5におけるVII-VII線断面図である。
【図8】 図8は、連結部材の一例の正面図であり、装着前の状態を示している。
【図9】 図9は、本発明に係るステータコイルの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ステータコイル
10 第1被覆導線
11 第1切り欠き
20 第2被覆導線
21 第2切り欠き
30 連結部材
31 突起
51 導電性部材
52 絶縁性被膜

Claims (4)

  1. ステータコアに装着されるステータコイルであって、
    導線性部材が絶縁性被膜によって被覆されてなる第1被覆導線と、
    導線性部材が絶縁性被膜によって被覆されてなる第2被覆導線と、
    前記第1及び第2被覆導線を機械的且つ電気的に接合する導電性の連結部材とを備え、
    前記第1被覆導線は、一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材の少なくとも一部が切断されるような深さで且つ幅W1の第1切り欠きを有し、
    前記第2被覆導線は、一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材の少なくとも一部が切断されるような前記第1切り欠きと同一深さ且つ同一幅W1の第2切り欠きを有し、
    前記第1及び第2被覆導線は、前記第1及び第2切り欠きが長手方向同位置に位置し、且つ、該第1及び第2切り欠きの双方の少なくとも一部が互いの対向面以外に位置するように、重ね合わされており、
    前記連結部材は、前記第1及び第2切り欠きの幅W1と同一幅W2を有し、前記第1及び第2切り欠きにはめ込まれた状態でかしめられており、
    前記第1及び第2切り欠きの幅W1並びに前記連結部材の幅W2は、前記第1切り欠きと前記連結部材との接触面積及び前記第2切り欠きと前記連結部材との接触面積が、前記第1及び第2被覆導線における前記導電性部材の断面積と同一又はそれ以上となるように、設定されていることを特徴とするステータコイル。
  2. 前記連結部材は、前記第1及び第2切り欠きの深さと同一の厚みを有していることを特徴とする請求項1に記載のステータコイル。
  3. 前記連結部材は、前記第1及び第2切り欠きと対向する面に、突起を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のステータコイル。
  4. ステータコアに装着されるステータコイルであって、導線性部材が絶縁性被膜によって被覆されてなる第1被覆導線と、導線性部材が絶縁性被膜によって被覆されてなる第2被覆導線とを備え、前記第1及び第2被覆導線が導電性の連結部材によって電気的且つ機械的に連結されてなるステータコイルの製造方法であって、
    前記第1被覆導線の一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材の少なくとも一部が切断されるような深さで且つ幅W1の第1切り欠きを形成する工程と、
    前記第2被覆導線の一端部から長手方向内方へ離間された部位に、前記導電性部材の少なくとも一部が切断されるような前記第1切り欠きと同一深さ且つ同一幅W1の第2切り欠きを形成する工程と、
    前記第1及び第2切り欠きが長手方向同位置に位置し且つ該第1及び第2切り欠きの双方の少なくとも一部が互いの対向面以外に位置するように、前記第1及び第2被覆導線を重ね合わさた状態で、前記第1及び第2切り欠きの幅W1と同一幅W2を有する前記連結部材を前記第1及び第2切り欠きにはめ込んだ状態でかしめ加工を行う工程とを含み、
    前記第1及び第2切り欠きの幅W1並びに前記連結部材の幅W2は、前記第1切り欠きと前記連結部材との接触面積及び前記第2切り欠きと前記連結部材との接触面積が、前記第1及び第2被覆導線における前記導電性部材の断面積と同一又はそれ以上となるように、設定されていることを特徴とするステータコイルの製造方法。
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