JP4102921B2 - オーキシン前駆体を利用した遺伝子組換え植物の効率的作成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、遺伝子工学的手法を用いて効率的に遺伝子組換え植物を作成する方法、及び、その方法に用いるベクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
目的遺伝子を対象植物に導入し、遺伝子組換え植物を作成するには、(1)目的遺伝子の植物細胞への導入、(2)目的遺伝子が導入された細胞のみからなる植物組織(目的遺伝子導入組織)の選抜、(3)選抜された植物組織からの植物体の再生、の3段階を必ず経ることになる。このうち目的遺伝子導入組織の選抜にあたっては、一般に、細胞培養の段階で、目的遺伝子の発現のみを指標としてかかる組織を選抜することは容易ではないため、目的遺伝子は、その発現が容易に検出できる選抜マーカー遺伝子と共に植物細胞に導入され、目的遺伝子導入組織は、この選抜マーカー遺伝子の発現の有無によって選抜される。このような選抜マーカー遺伝子としては、抗生物質耐性を付与するカナマイシン抵抗性遺伝子(NPTII:ネオマイシンリン酸化酵素遺伝子)やハイグロマイシン抵抗性遺伝子(HPT:ハイグロマイシンリン酸化酵素遺伝子)、農薬耐性を付与するスルフォニルウレア系抵抗性遺伝子(ALS:アセトラクテート合成酵素遺伝子)等、薬剤耐性に関与する遺伝子が実用的に多く用いられている。
【0003】
薬剤耐性に関与する遺伝子を選抜マーカー遺伝子として用いた場合には、これらの薬剤を含む培地で、遺伝子導入処理後の細胞を培養して選抜マーカー遺伝子の発現の有無、つまりはかかる薬剤に対する耐性を評価し、これを指標として選抜を行うこととなる。これらの薬剤は、もともと植物細胞に対し毒性を有しているため、選抜マーカー遺伝子(ひいては目的遺伝子)が導入されていない植物細胞は、かかる培地で培養を行うことにより枯死するからである。しかし、この場合において耐性がある、即ちかかる薬剤の存在下で植物細胞が増殖するといっても、これは程度の問題であり、このような薬剤の存在下での培養が、植物細胞にとって好ましからぬ影響を与えることは避け難く、現実に、植物細胞の活性低下に伴う目的遺伝子導入組織の増殖率や再分化率の低下等が問題となっている。
【0004】
かかる問題を解決すべく、本願出願人は、先に特開平9−154580において、新規な植物への遺伝子導入用ベクター、及び、このベクターを用いて行う植物への遺伝子導入方法を提案した。このベクター及び方法を用いて植物への遺伝子導入を行えば、植物細胞の活性を低下させる薬剤を用いずに、遺伝子導入処理後の植物組織の形態変化のみを指標として、目的遺伝子導入組織を選抜することが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した特開平9−154580に開示のベクター及び方法では、選抜マーカー遺伝子として植物ホルモン合成遺伝子等の形態異常誘導遺伝子を用いており、目的遺伝子導入組織は、遺伝子導入処理を行った組織から再分化する不定芽や不定根として得ることができる。しかし、こうして得られる不定芽や不定根の中には、目的遺伝子が導入されていないもの(以下、エスケープとも呼ぶ。)もかなり多く存在していた。これは、目的遺伝子と共に形態異常誘導遺伝子を導入した細胞中で産生される植物ホルモン等が、その周囲の細胞にも移行して影響を与え、その影響を受けた非遺伝子導入細胞からも形態異常を示す組織が分化・増殖してくるためであると考えられる。一般に遺伝子導入が難しいとされる植物においては、そもそも不定芽等の再分化率が悪い上に、このエスケープの存在のため目的遺伝子導入組織の選抜効率が非常に悪く、その向上が特に望まれていた。
【0006】
本願発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、植物細胞の活性を低下させる薬剤を用いずに目的遺伝子導入組織を選抜することができ、しかも、その選抜効率が改善された、遺伝子組換え植物の効率的作成方法と、この方法に用いるベクターを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは鋭意研究の結果、目的遺伝子が導入された細胞内で合成されるオーキシン量を人為的に調節することにより、上記目的が達成されることを見出し、本願発明を完成した。
【0008】
すなわち、本願発明は、遺伝子組換え植物を作成する方法であって、次の過程(A)、(B)、(C)をからなる方法を提供する。
【0009】
(A)目的遺伝子、及び、選抜マーカー遺伝子としてオーキシン前駆体からオーキシンを合成する酵素の遺伝子(以下、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子という。)を含む、植物への遺伝子導入用ベクターを植物細胞に導入する過程
(B) このベクターにより遺伝子導入された植物細胞を、上記オーキシン前駆体及び/又はその類縁物質の存在下で培養して再分化組織を生成させ、この再分化組織を検出して選抜する過程
(C) 前記(B)で選抜した再分化組織を培養して植物個体を再生する過程
【0010】
また、本願発明は、目的遺伝子、選抜マーカー遺伝子としてiaaH(indoleacetamide hydrolase)遺伝子及びipt(isopentenyltransferase)遺伝子を含み、かつ、iaaM(tryptophan monooxygenase)遺伝子を含まない、植物への遺伝子導入用ベクターをも提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本願請求項1〜4に記載の方法(以下、本願発明の方法という。)は、選抜マーカー遺伝子として、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子を用いる。オーキシンとは植物ホルモンの1種であり、細胞の伸長生長と分裂を促進することが知られている。例えば、植物病原菌であるアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens、以下、単にA.ツメファシエンスという。)では、トリプトファンが酵素トリプトファンモノオキシゲナーゼ(tryptophan monooxygenase)により酸化されて、オーキシン前駆体であるインドールアセトアミド(IAM)となり、次いで、このIAMが酵素インドールアセトアミドヒドロラーゼ(indoleacetamide hydrolase)により加水分解されて、天然オーキシンであるインドール酢酸(IAA)となる。このとき、トリプトファンモノオキシゲナーゼをコードする遺伝子はiaaM遺伝子、インドールアセトアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子はiaaH遺伝子である(D. Inze、M. Van Montagu、Mol. Gen. Genet、194:265、1984)。iaaH遺伝子が単独で存在していても、オーキシンが合成されることはない(Harry Klee、Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol.、1991、42:529−51)。オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子として、このiaaH遺伝子は解析も相当に進んでおり、当業者が容易に取得可能であることから、本願発明に用いる遺伝子として好ましい。
【0012】
なお、選抜マーカー遺伝子としては、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子と共に、他の植物ホルモン合成遺伝子、例えば、上記iaaM遺伝子や、側芽の生長と細胞の分裂を促進する植物ホルモンである、サイトカイニンの合成遺伝子を用いることができる。特にサイトカイニン合成遺伝子を用いた場合には、本願発明の方法により目的遺伝子を導入した植物細胞からの再分化組織の生成が、これを培養する培地中のオーキシン前駆体及び/又はその類縁物質の濃度を調節するのみでコントロールすることができるようになる。サイトカイニン合成遺伝子して最も代表的な遺伝子はipt遺伝子(A. C. Smigocki、L. d. Owens、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85:5131、1988)である。この遺伝子も解析が相当に進み、当業者は容易にこれを取得することができるので、本願発明に用いる遺伝子として好ましい。
【0013】
本願発明の方法は、これらの植物ホルモン遺伝子からなる選抜マーカー遺伝子を、目的遺伝子と共に、植物への遺伝子導入用ベクターとして公知のものに組込んで、植物細胞に導入する。植物細胞へのベクターの導入は、植物に感染するウイルスや細菌を介して間接的に、あるいは、物理的・化学的手法によって直接的に行うことができる(I. Potrykus、Annu. Rev. Plant physiol. Plant Mol. Biol.、42:205、1991)。
【0014】
植物に感染するウイルスや細菌を介してベクターの導入を行う場合は、例えば、カリフラワーモザイクウィルス、ジェミニウイルス、タバコモザイクウイルス、ブロムモザイクウイルス等のウイルスや、A.ツメファシエンス、アグロバクテリウム・リゾジェネス等の細菌が使用できる。また、物理的・化学的手法によってベクターの導入を行う手法としては、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法、融合法、高速バリスティックベネトレーション法等を挙げることができる。
【0015】
遺伝子導入処理を行った植物細胞は、オーキシン前駆体及び/又はその類縁物質の存在下で培養して不定芽等の再分化組織を生成させる。ここでオーキシン前駆体又はその類縁物質とは、選抜マーカー遺伝子として導入した、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子が発現することで、オーキシン又はオーキシンと同様な生理活性を持つ物質(以下、まとめてオーキシン様物質ともいう。)に変換される物質である。例えば、上記iaaH遺伝子が発現するとインドールアセトアミドヒドロラーゼが合成されるが、この酵素は、その本来の其質であるIAMの他に、ナフタレン酢酸アミド(NAM)もIAMと同様に加水分解し、合成オーキシンであるナフタレン酢酸(NAA)に変換する。従って、本願発明において、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子としてiaaH遺伝子を用いた場合には、オーキシン前駆体の類縁物質としてこのNAMも、オーキシン前駆体であるIAMと同様に用いることができる。
【0016】
なお、不定芽等の再分化組織の生成は、主として、サイトカイニンとオーキシンによってコントロールされることが知られている。即ち、サイトカイニン/オーキシン比が高い場合には芽の分化が誘導され、サイトカイニン/オーキシン比が低い場合には根の分化が誘導される(John D. HaMill、Aust. J. Plant Physiol.、20:405、1993)。
【0017】
一方、本願発明において目的遺伝子が導入された細胞には、選抜マーカー遺伝子としてオーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子も導入されている。従って、オーキシン前駆体及び/又はその類縁物質とサイトカイニンとをそれぞれ適当量添加した培地で遺伝子導入処理後の植物細胞を培養することにより、目的遺伝子が導入された不定芽等の再分化組織を生成させることができる。オーキシン前駆体等は、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子の働きにより、その添加量に応じ、目的遺伝子が導入された植物細胞内でオーキシン様物質に変換されるため、これらオーキシン前駆体等とサイトカイニンとをそれぞれ適当量添加した培地で培養すれば、目的遺伝子が導入された細胞においては、結局、オーキシンとサイトカイニンが適当量供給され、不定芽等の再分化に適正なサイトカイニン/オーキシン比となるからである。一方、目的遺伝子が導入されていない細胞は、このとき、目的遺伝子が導入された細胞とは異なった挙動をとる。この細胞は、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子が導入されていないため、オーキシン前駆体等をオーキシンとして利用する能力が極めて低く、培地中に添加されたオーキシン前駆体等とサイトカイニンのうち、主にサイトカイニンしか利用できないからである。
【0018】
さらに、本願発明の選抜マーカー遺伝子として、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子と共にサイトカイニン合成遺伝子を用いた場合には、前記したように、遺伝子導入処理後の植物細胞を、オーキシン前駆体及び/又はその類縁物質の濃度を適当に設定した培地で培養するだけで、目的遺伝子が導入された不定芽等を再分化させることができる。このとき目的遺伝子が導入された細胞内では、オーキシン前駆体等はその添加量に応じてオーキシン様物質に変換され、また、サイトカイニン合成遺伝子により、サイトカイニンを培地に添加しなくともサイトカイニンが活発に合成されるので、オーキシン前駆体等を適当量添加した培地で培養すれば、目的遺伝子が導入された細胞において、サイトカイニン/オーキシン比は不定芽等の再分化に適正なものとなるからである。一方、目的遺伝子が導入されていない細胞は目的遺伝子が導入された細胞とはかなり異なった挙動をとる。かかる細胞では、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子もサイトカイニン合成遺伝子も導入されていないため、こうした植物ホルモンが殆ど生産されないからである。
【0019】
以上より明らかなように、本願発明の方法によれば、再分化組織の生成にあたり、培地中に添加するオーキシン前駆体及び/又はその類縁物質やサイトカイニンの量をコントロールすることで、目的遺伝子が導入された不定芽等を優先的に再分化させ、エスケープの確率を減少させることができる。これは特に、選抜マーカー遺伝子として、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子と共にサイトカイニン合成遺伝子を用いた場合に、より大きな効果が得られる。
【0020】
実際に培地中に添加すべきオーキシン前駆体等やサイトカイニンの具体的な量は、これら植物ホルモンの種類と、本願発明の方法により遺伝子組換え体を作成しようとする植物の種類に応じて、適宜決定することができる。この量を決定するには、例えば、本願発明において使用する選抜マーカー遺伝子と、GUS(β-D-glucronidase)遺伝子等のレポーター遺伝子とを含むベクターを用いて、遺伝子組換え体を作成しようとする植物に遺伝子導入処理を行う。遺伝子導入処理後の組織は、培地中のオーキシン前駆体等やサイトカイニンの種類と量を何段階かに変化させて培養し、不定芽等を再分化させてレポーター遺伝子の発現を調査する。この場合においてレポーター遺伝子を発現している不定芽等の再分化率が最も高くなるような条件が、目的遺伝子が導入された植物細胞の再分化組織生成に最も適した条件であるので、本願発明の方法により、目的遺伝子をその植物に導入して遺伝子組換え体を作成する際には、オーキシン前駆体等やサイトカイニンの種類と量に関してこの条件を採用すればよい。
【0021】
なお、上記再分化組織生成のための培地には、オーキシン前駆体等やサイトカイニン以外の、植物細胞の増殖と分化に必要な他の成分及び/又は植物細胞の増殖と分化には必要がない他の成分を、本願発明の目的を損ねない範囲で添加することができる。このような培地としては、例えば、MS(Murashige and Skoog Physiol. Plant、15:473-497、1962)、WPM(Loyd and McCown Prop. Int. Plant Prop. Soc.、30:421-427、1980)等のよく知られた基本培地そのものに、又は遺伝子組換え体を作成しようとする植物に適するようこれらの基本培地に若干の改変を加えたものに、オーキシン前駆体等やサイトカイニンを添加し、炭素原として1〜3w/v%のシュークロース、固形剤として0.5〜1.0w/v%の寒天又は0.1〜0.4w/v%のジェランガムを添加した固形培地を用いることができる。
【0022】
本願発明の方法は、以上のようにして得られた不定芽等の再分化組織を検出して選抜し、植物個体を再生することにより、目的遺伝子が導入された遺伝子組換え植物を作成する。ここで選抜される組織は、不定芽等の再分化組織であることから、特殊な試薬や器具を用いることなく肉眼で検出し、選抜することができる。さらに、選抜マーカー遺伝子として導入したオーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子と、再分化組織生成に用いる培地中に添加したオーキシン前駆体及び/又はその類縁物質との協働作用によって、このようにして選抜された再分化組織に目的遺伝子が導入されている確率は、従来と比べ高くなっている。従って、目的遺伝子導入組織の選抜効率が良く、こうして得られた再分化組織を定法に従って植物個体に再生することで、目的遺伝子が導入された遺伝子組換え植物を効率的に作成することができる。
【0023】
例えば、植物個体への再生は、得られた再分化組織が不定芽である場合には、この不定芽をそのまま、又はある程度増殖させてから切出し、発根培地に挿し付けて発根させることにより行うことができる。このとき、培養温度は15〜30℃、光強度は50μmol/m2/s未満が好ましい。発根培地としては、上記の基本培地又はこれを希釈したものに、植物ホルモンとしてNAAやインドール酪酸等のオーキシン類1種類以上を組合せ、更に炭素源としてシュークロース5〜30g/lを添加した液体培地又は寒天等にて固化させた固体培地を用いることができる。
【0024】
また、本願請求項5に記載のベクター(以下、本願発明のベクターという。)は植物への遺伝子導入用ベクターであって、植物染色体への遺伝子導入部位に、目的遺伝子、選抜マーカー遺伝子としてiaaH遺伝子及びipt遺伝子を含み、かつ、iaaM遺伝子を含まないことを特徴とする。本願発明の方法は、かかる構成のベクターを用いて行うことにより、その目的をより高いレベルで達成することが可能となる。
【0025】
本願発明の方法に用いるベクター及び上記本願発明のベクターには、本願発明の目的を損ねない範囲で、ここまでに述べた遺伝子以外の他の遺伝子や因子(特定の機能を有するDNA配列)を含んでいていも構わない。例えば、特開平9−154580にて本願出願人が提案しているように、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子やサイトカイニン合成遺伝子を脱離能を有するDNA因子と組み合わせて用いれば、再分化組織の選抜後、選抜マーカー遺伝子として用いたこれらの遺伝子を除去することができるので、選抜マーカー遺伝子の影響が全く排除された遺伝子組換え植物を得ることが可能となる。かかる脱離能を有するDNA因子は、トランスポゾンや部位特異的組換え系等より得ることができる。
【0026】
本願発明の方法及びベクターを適用することができる植物の種類に特に制限はない。しかし、木本植物等、遺伝子組換え体の作成が困難であるとされている植物に適用することにより、本願発明の方法及びベクターは特に大きな効果を発揮することができる。
【0027】
また、本発明の方法及びベクターにより植物に導入する目的遺伝子も種類を問わない。農業的に優れた形質を付与できる遺伝子、農業的に優れた形質を付与するとは限らないが、遺伝子発現機構の研究に必要とされる遺伝子等、その目的に応じて種々選択することができる。
【0028】
【作用】
植物の組織培養において、培養組織から植物個体を再生するまでの過程には、植物ホルモンであるオーキシンとサイトカイニンがその各段階において深く関わっている。これは、不定芽等の再分化組織の生成についても例外ではない。前記したように、不定芽等の生成はサイトカイニン/オーキシン比によってコントロールされ、細胞内のサイトカイニン/オーキシン比が適正な値となって始めて、その細胞は不定芽等を生成する。
【0029】
従って、選抜マーカー遺伝子を単にサイトカイニン合成遺伝子及び/又はオーキシン合成遺伝子として、植物細胞に目的遺伝子を導入しても、目的遺伝子が導入された再分化組織が得られる確率は低い。この場合は目的遺伝子が導入された細胞において、これら選抜マーカー遺伝子の働きによってサイトカイニンとオーキシンが活発に生産されることとなるが、その生産量は人為的にコントロールすることができないので、これらの植物ホルモン遺伝子が導入された細胞、つまりは目的遺伝子が導入された細胞中のサイトカイニン/オーキシン比は必ずしも適正な値にならない。そのため、これらの細胞が、目的遺伝子が導入されていない細胞に対して優先的に再分化するとは限らないからである。
【0030】
そこで、本願発明においては、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子を選抜マーカー遺伝子として用い、これとオーキシン前駆体等との協働作用により、目的遺伝子が導入された細胞内で合成されるオーキシン量を人為的に調節する。即ち、目的遺伝子と共に、選抜マーカー遺伝子としてオーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子を用いて植物組織に遺伝子導入処理を行い、この植物組織をオーキシン前駆体及び/又はその類縁物質を添加した培地で培養する。すると、目的遺伝子が導入された細胞においては、培地中のオーキシン前駆体等の濃度に応じてオーキシンが生産されるので、培地へのオーキシン前駆体等の添加量を調節することで、細胞内のオーキシン量も調節できることとなる。このとき、もう一方の植物ホルモンであるサイトカイニンは、オーキシン前駆体等と共に培地中に添加するか、オーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子と共にサイトカイニン合成遺伝子を細胞中に導入することで、目的遺伝子が導入された細胞内に一定量が供給されるようにすれば、結局、細胞内のサイトカイニン/オーキシン比も調節されることとなる。
【0031】
本願発明は、このようにして、目的遺伝子導入細胞中のサイトカイニン/オーキシン比が不定芽等の再分化に最適となるよう調節することにより、この細胞からの再分化組織の生成を促進して、遺伝子導入処理後の植物組織から、目的遺伝子が導入された不定芽等を優先的に再分化させ、エスケープの確率を減少させる。この効果は特に、選抜マーカー遺伝子としてオーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子と共にサイトカイニン合成遺伝子を用いた場合に大きいと考えられる。この場合においては、選抜マーカー遺伝子としてオーキシン前駆体−オーキシン合成遺伝子のみを使用した場合と比べ、目的遺伝子が導入された細胞とこれが導入されていない細胞との間で、植物ホルモンに関する細胞内の生理的環境の差が大きい。このため、適当量のオーキシン前駆体等を培地に添加して培養した場合、目的遺伝子導入細胞がより優越的な不定芽分可能を示すと推測されるからである。
【0032】
【実施例】
以下に、本願発明を実施例に基づいて説明する。
【0033】
[実施例1]
目的遺伝子のモデルとしてGUS遺伝子、選抜マーカー遺伝子としてipt遺伝子とiaaH遺伝子を有するプラスミドpIAH6をベクターとして、本願発明の方法により、ユーカリ・グロビュラス(Eucalyptus globulus、以下、E.グロビュラスという。)への遺伝子導入を行い、遺伝子組換え体を作成した。
【0034】
pIAH6の構造のうち、植物染色体に組込まれることとなる領域(T−DNA領域)を図1に示す。図中、丸で囲んだP、Tは、それぞれipt遺伝子及びiaaH遺伝子自身のプロモーター及びポリアデニル化シグナルを示し、NOS−Pはノパリンシンセターゼ遺伝子のプロモーター、Tはノパリンシンセターゼ遺伝子のポリアデニル化シグナル、35S−Pはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターをを示す。また、図の両端の黒い鏃型は、T−DNA領域を画するRBサイトとLBサイトを表している。このプラスミドのT−DNA領域以外の部分は、市販の植物への遺伝子導入用ベクターpBI121(東洋紡績(株)製)の対応する部分と同様の構造をしている。
【0035】
なお、このプラスミドpIAH6は、大腸菌(Escherichia coli)JM109株に導入し、この大腸菌をE. coli JM109 (pIAH6)として国内寄託に付している(受託番号FERM P−16882)。
【0036】
I.アグロバクテリウムへのプラスミドpIAH6の導入
A.ツメファシエンスEHA105株を、10mlのYEB液体培地(ビーフエキス5g/l、酵母エキス1g/l、ペプトン1g/l、シュークロース5g/l、2mM MgSO4、22℃でのpH7.2(以下、特に示さない場合、22℃でのpHとする。))に接種し、OD630が0.4から0.6の範囲に至るまで、28℃で培養した。この培養液を、6900×g、4℃、10分間遠心して集菌した後、菌体を20mlの10mM HEPES(pH8.0)に懸濁して、再度6900×g、4℃、10分間遠心して集菌し、次いでこの菌体を200μlのYEB液体培地に懸濁して、これをプラスミド導入用菌液とした。
【0037】
アグロバクテリウム菌体へのプラスミドpIAH6の導入は、このようにして調整されたプラスミド導入用菌液50μlと上記pIAH6 3μlを0.5mlチューブ(アシスト社製)内で混合し、これをエレクトロポレーション法(ジーンパルサーIIシステム(BIORAD社製))に供することにより行った。エレクトロポレーション後は、この混合液に200μlのYEB液体培地を加えて25℃で1時間振とうして培養し、得られた菌体を50mg/lカナマイシン添加YEB寒天培地(寒天1.5w/v%、他の組成は上記に同じ。)に播種して28℃で2日間培養を続け、A.ツメファシエンスの菌コロニーを形成させた。このコロニーの菌体からアルカリ法でプラスミドを抽出し、制限酵素HindIII、SmaI、及びEcoRIにより切断してアガロースゲル電気泳動にて分析することにより、A.ツメファシエンスEHA105株へのpIAH6の導入を確認した。
【0038】
II.ユーカリへのpIAH6の導入
チリ産E.グロビュラスの種子を、70%エタノールに約1分間浸漬し、さらに、2%次亜塩素酸ソーダ水溶液に約4時間撹拌しつつ浸漬して殺菌した後、無菌水でよく洗浄して、ゼアチン0.5mg/lを添加したMS寒天培地に播種し、発芽促進のため4℃の冷蔵庫で2日間保存してから、25℃、光強度約10μmol/m2/sの全明条件下で培養し、これを発芽させた。発芽用培地に種子を播種してから1〜2週間後、発芽苗の頂芽、子葉及び根を切取って胚軸を採取し、更にこの胚軸を約5mmに切断して遺伝子導入用試料とし、以下の実験に供した。
【0039】
上記IでプラスミドpIAH6を導入したA.ツメファシエンスEHA105株をYEB液体培地で一夜培養後、EG基本培地でOD630=0.5に希釈し、この菌液に上記のようにして調整した胚軸の切片を浸漬した。次いでこの切片を、余分な菌液を除去した上で、EG基本培地にゼアチン1.0mg/l、NAA0.05mg/l、アセトシリンゴン40mg/lを添加した寒天培地(寒天8.5g/l)で3日間、25℃、暗所にてアグロバクテリウム菌と共存培養することにより、これにpIAH6導入アグロバクテリウムを感染させた。なお、EG基本培地としては、アンモニア態窒素と硝酸態窒素の濃度比を1:3とした改変MS培地(NH4 5mM、NO3 15mM)にシュークロース20g/lを添加して用いた。
【0040】
感染培養後の切片は、ティカルシリン500mg/l、及び、オーキシン前駆体の類縁物質であるNAM1μM又は10μMを添加したEG基本寒天培地(寒天8.5g/l)に置床して、25℃、光強度30〜40μmol/m2/sの全明条件下で、2週間ごとに植え継ぎながら同培地で培養を続けた。置床した切片のうち、早いものはアグロバクテリウムの感染後2ヶ月頃から不定芽を再分化させた。
【0041】
アグロバクテリウムの感染から3ヶ月後、目的遺伝子のモデルとして用いたGUS遺伝子の発現を見るために、再分化してきた不定芽について、Jeffersonらの方法に準拠し、GUS染色試験を行い、染色される不定芽の数(目的遺伝子が発現している不定芽の数)を調べることで、目的遺伝子が導入された不定芽がどの程度得られているかを判定した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、不定芽の再分化率、選抜効率(再分化した不定芽に目的遺伝子が導入されている確率)、不定芽への遺伝子導入率(目的遺伝子が導入された不定芽が得られる率)を遺伝子導入用試料である切片基準で算出した場合、NAM濃度1μMの場合がそれぞれ35.0%、38.1%、13.3%、NAM濃度10μMの場合がそれぞれ4.2%、50.0%、2.1%であった。
【0044】
[比較例1]
ティカルシリン500mg/l、及び、オーキシンであるNAAを0μM、1μM又は10μM添加したEG基本寒天培地(寒天8.5g/l)にてアグロバクテリウム感染後の胚軸切片を培養した他は、実施例1と同様にしてE.グロビュラスへの遺伝子導入実験を行った。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2から明らかなように、この場合はいずれも選抜効率が低く、最も良い値を示したNAA1μM添加の場合でも、切片基準で22.2%にしかならなかった。
【0047】
[比較例2]
選抜マーカー遺伝子としてipt遺伝子しか有していないプラスミドpIPT10をベクターとして、実施例1又は比較例1と同様にE.グロビュラスへの遺伝子導入実験を行った。なお、このベクターも目的遺伝子のモデルとして、GUS遺伝子を有している。
【0048】
このとき用いたpIPT10のT−DNA領域の構造を図2に、遺伝子導入実験の結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3から明らかなように、この場合も選抜効率が低く、最も良い値を示したNAA1μM添加の場合でも、切片基準で11.1%にしかならなかった。
【0051】
[実施例2]
実施例1で使用したプラスミドpIAH6をベクターとして、本願発明の方法により、交雑ヤマナラシ(ポプルス・シーボルディ×ポプルス・グランディタータ:Populus Sieboldii×Populus grandidentata)への遺伝子導入を行い、遺伝子組換え体を作成した。
【0052】
交雑ヤマナラシY63株(秋田十條化成(株)内実験林より採取)の無菌苗の茎を、節を含まないように長さ5mmに切断し、これを更に縦に二つ割にしたものに、pIAH6を導入したA.ツメファシエンスLBA4404株(CLONTECH社より購入)を感染させることにより、この交雑ヤマナラシY63株にpIAH6を導入した。即ち、実施例1と同様にしてpIAH6を導入したA.ツメファシエンスLBA4404株をYEB液体培地で一夜培養後、Y基本培地でOD630=0.5に希釈し、この菌液に上記のようにして調整した茎切片を浸漬した。次いでこの切片を、余分な菌液を除去した上で、Y基本培地にアセトシリンゴン40mg/lを添加した寒天培地(寒天8g/l)で3日間、25℃、暗所にてアグロバクテリウム菌と共存培養することにより、これにpIAH6導入アグロバクテリウムを感染させた。なお、Y基本培地としては、改変MS培地(NH4 10mM、NO3 30mM)にシュークロース20g/lを添加して用いた。
【0053】
感染培養後の切片は、ティカルシリン500mg/l、及び、オーキシン前駆体の類縁物質であるNAM1μM、5μM又は30μMを添加したY基本寒天培地(寒天8g/l)に置床して、25℃、光強度30〜40μmol/m2/sの全明条件下で培養を行った。2ヶ月後、再分化してきた不定芽を選抜して分離し、この不定芽について同条件で培養を続けて更に2ヶ月後(NAM存在下での培養を開始してから4ヶ月後)、培養されている組織の形態を観察することで、選抜された不定芽に目的遺伝子が導入されているか否かを判定した。このとき、選抜された不定芽に目的遺伝子が導入されていれば、これと共に導入されている選抜マーカー遺伝子(ipt遺伝子)の働きにより、培養されている組織は多芽状を示すが、目的遺伝子が導入されていなければ、つまり選抜された不定芽がエスケープであれば培養組織が多芽状を示すことはない。エスケープにはipt遺伝子が導入されておらず、これは単に、隣接して存在していた目的遺伝子導入細胞の影響を受けて不定芽を再分化したに過ぎないからである。
結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
表4から明らかなように、NAM濃度1μM及び5μMのとき、目的遺伝子が導入された不定芽が得られ、その選抜効率は切片基準で算出した場合、NAM濃度1μMの場合が50.0%、NAM濃度5μMの場合が40.0%であった。なお、表中には示していないが、このとき、NAM濃度1μMで再分化した不定芽の総数は67個であり、うち6個に目的遺伝子が導入されていた。また、NAM濃度5μMでは総数34個の不定芽が再分化し、やはり5個に目的遺伝子が導入されていた。
【0056】
[比較例3]
ティカルシリン500mg/lのみを添加したY基本寒天培地(寒天8g/l)にてアグロバクテリウム感染後の茎切片を培養した他は、実施例2と同様にして交雑ヤマナラシへの遺伝子導入実験を行った。結果を表4に示す。
【0057】
表4より明らかなように、この場合には不定芽は再分化せず、目的遺伝子が導入された再分化個体も得られなかった。
【0058】
[実施例3]
チリ産E.グロビュラスの高発根性クローンの定芽を、実施例2のY基本培地にゼアチン0.5mg/lを添加した培地を用いて無菌的に増殖させ、伸長してきた茎を5mmに切断して遺伝子導入用試料とし、実施例1と同様にしてプラスミドpIAH6導入アグロバクテリウムを感染させた。
【0059】
感染培養後の切片は、ティカルシリン500mg/l、及び、オーキシン前駆体の類縁物質であるNAM1μMを添加したEG基本寒天培地(寒天8.5g/l)に置床して、25℃、光強度30〜40μmol/m2/sの全明条件下で、2週間ごとに植え継ぎながら同培地で培養を続けた。
【0060】
アグロバクテリウムの感染から4ヶ月後、Jeffersonらの方法に準拠してGUS染色試験を行い、再分化してきた不定芽について、目的遺伝子が導入された不定芽がどの程度得られているかを判定した。
【0061】
その結果、茎切片40片のうち、5切片から不定芽が分化し、このうち3切片由来の芽に目的遺伝子が導入されていることが確認された。即ち、遺伝子導入用試料である切片基準で、不定芽再分化率、選抜効率、不定芽への遺伝子導入率はそれぞれ12.5%、60.0%、7.5%であった。遺伝子が導入された不定芽が、遺伝子導入処理を行った試料に対して7.5%の確率で得られたというこの事実は、E.グロビュラスのクローン苗を遺伝子導入材料とする場合において、驚くべきことである。
【0062】
[比較例4]
プラスミドpIPT10をベクターとして、実施例3と同様にE.グロビュラスの高発根性クローンへの遺伝子導入実験を行った。しかし、この場合には不定芽は再分化せず、目的遺伝子が導入された再分化個体も得られなかった。
【0063】
【発明の効果】
本願発明によれば、目的遺伝子が導入された植物細胞内のサイトカイニン/オーキシン比を人為的にコントロールすることができる。従って、目的遺伝子導入細胞のサイトカイニン/オーキシン比を、不定芽等の再分化組織の生成に最も適するように調節してこの細胞の再分化を促進させ、この細胞から不定芽等を優先的に再分化させることができる。
【0064】
これにより本願発明は、いわゆるエスケープの確率を減少させて目的遺伝子導入組織の選抜効率を向上させ、遺伝子組換え体の取得率を向上させる。これは特に、遺伝子組換え体の作成が困難であるとされている植物に適用した場合に効果が大きい。従って、本願発明によれば遺伝子組換え植物を効率的に作成することができる。
【0065】
また、本願発明において、選抜マーカー遺伝子を脱離能を有するDNA因子と組み合わせて用いることにより、ここで用いた選抜マーカー遺伝子の影響が全く排除された遺伝子組換え植物も作成することが可能となる。
【0066】
すなわち、本願発明によれば、遺伝子組換え体の作成が困難な植物であっても効率的に遺伝子組換え体を作成することができ、しかも、選抜マーカー遺伝子の影響が全く排除され、目的遺伝子のみが導入された遺伝子組換植物を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】pIAH6ベクターのうち、植物染色体に組込まれることとなるT−DNA領域の構造を示す概念図である。
【図2】pIPT10ベクターのうち、植物染色体に組込まれることとなるT−DNA領域の構造を示す概念図である。
Claims (5)
- 遺伝子組換え植物を作成する方法であって、次の過程(A)、(B)、(C)からなることを特徴とする方法。
(A)目的遺伝子、及び、選抜マーカー遺伝子としてオーキシン前駆体からオーキシンを合成する酵素の遺伝子を含む、植物への遺伝子導入用ベクターを植物細胞に導入する過程
(B) このベクターにより遺伝子導入された植物細胞を、上記オーキシン前駆体及び/又はその類縁物質の存在下で培養して再分化組織を生成させ、この再分化組織を検出して選抜する過程
(C) 前記(B)で選抜した再分化組織を培養して植物個体を再生する過程 - オーキシン前駆体及び/又はその類縁物質として、インドールアセトアミド及び/又はナフタレン酢酸アミド、オーキシン前駆体からオーキシンを合成する遺伝子として、iaaH(indoleacetamide hydrolase)遺伝子である遺伝子導入用ベクターを用いて行う、請求項1に記載の遺伝子組換え植物の作成方法。
- 請求項1に記載の遺伝子導入用ベクターの選抜マーカー遺伝子として、オーキシン前駆体からオーキシンを合成する遺伝子と共に、サイトカイニン合成遺伝子を更に含むものを用いて行う、請求項1又は2に記載の遺伝子組換え植物の作成方法。
- サイトカイニン合成遺伝子がipt(isopentenyltransferase)遺伝子である、請求項3に記載の遺伝子組換え植物の作成方法。
- 目的遺伝子、選抜マーカー遺伝子としてiaaH(indoleacetamide hydrolase)遺伝子及びipt(isopentenyltransferase)遺伝子を含み、かつ、iaaM(tryptophan monooxygenase)遺伝子を含まない、植物への遺伝子導入用ベクター。
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