JP4101903B2 - 酸化物超電導バルク材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、超電導バルク磁石、限流器等に利用される酸化物超電導バルク材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
YBa2Cu3Ox系に代表される希土類系超電導体(REBa2Cu3Oxと表記。REはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選ばれた1種以上の元素をさす。)は他の酸化物超電導体に比較して磁束ピンニング力が大きく、特に液体窒素温度(77K)に近い高温でも臨界電流密度が高いため、その利用が期待されている。しかしながら、この超電導体は結晶粒界が著しく臨界電流密度を低下させるため、結晶粒が高度に配向している必要がある。現在の技術では、結晶配向した希土類系超電導体を製造する方法として、格子定数の近い基盤上に成膜させる方法と溶融法が挙げられる。
【0003】
QMG法(特許登録番号01869884、および特開平5−193938号公報)で代表されるような溶融法は、一度RE2BaCuO5相とBa-Cu-Oを主成分とした液相が共存する温度領域まで昇温し、これをREBa2Cu3Oxが生成する包晶温度直上まで冷却し、この温度から徐冷をおこなうことにより結晶成長させ、大きな結晶粒を得る手法である。特に、特開平5−193938号公報に開示した包晶温度が高い結晶を種結晶として結晶成長させるシーディング法により、現在、約20cm2以上の結晶粒をもったバルク超電導材料を作製することができる。この材料の臨界電流密度は77K、1Tで10000A/cm2以上であり、臨界電流密度が優れている。臨界電流密度が高く、大型の材料が得られることからこれを磁気浮上、磁気シールド、バルク磁石等に使用することが期待されている。
【0004】
この材料の磁気的な性質は、材料の大きさと臨界電流密度で決定する。したがって、結晶粒が大きければ大きいほど磁石の特性が優れることになる。
【0005】
一方、この材料の場合、酸素量xには不定比性があり、xの値で6.5以下の場合は正方晶、6.5以上の場合は斜方晶構造となる。平衡する酸素量は温度に依存し、高温ではxの値が小さくなり、低温では大きくなる。例えば、大気中では900℃で6.1から6.2、700℃で6.5から6.6、500℃で約6.7であり、純酸素中では900℃で6.2から6.3、700℃で6.4から6.5、500℃で約6.8である。超電導体になるのは斜方晶構造のもので、良好な超電導特性を得るにはxの値で6.8から7.0が必要となる。例えば、YBa2Cu3Oxの場合、溶融法にて結晶成長が終了する温度は960℃から990℃であるが、この時点では正方晶構造であり、低温に冷却しても超電導体にはならない。これを最終的に超電導体とするためには酸素付加処理をする必要があり、通常は酸素雰囲気中にて500℃以下の温度でアニールをおこなう。
【0006】
上に示したような温度とxの関係はあくまでも平衡状態の場合であって、バルクが大きくなると、酸素の拡散に関わる問題が生じてくる。第一は材料が大きくなると酸素付加に大きな時間を要するようになる点である。低温になればなるほど酸素付加に要する時間がかかり、大きな試料では十分に酸素付加ができなくなる。第二は、酸素付加に伴うクラックの問題である。正方晶から斜方晶への転移は結晶構造を歪ませるため、これがクラックの発生と拡大の要因になっている。希土類型酸化物超電導材料の場合、c軸に垂直な面、すなわちab面で劈開割れを起こしやすいが、材料の大きさが大きいほどクラックが入りやすくなる。クラックが発生した部位は酸素が通りやすく、その部分が優先的に酸素付加されるため、場所による酸素量の不均一を拡大し、またそれが大きなクラック進展の引き金となる。これらの酸素の問題は、この材料を大型化すると共に大きくなり、特に半径が20mmを超えると大型化した分だけ磁石特性が向上しない問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明は酸素付加が均一かつ十分になされた半径が20mmを超えるような大型の希土類系酸化物超電導バルク材料とその製造方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段及び実施の形態】
本発明は上記の問題を解決するために、酸素付加前の配向したREBa2Cu3Ox系バルクをc軸に垂直に0.3から15mmの厚さにスライスした後、酸素付加をおこない斜方晶構造とし、再度c軸方向に積層しバルク体を再構成し、図1または図2に示すような構造とする手段を講じたものである。図1の構造は主としてバルク磁石として使用される。また図2に示す構造は主として磁気シールド体に使用される。本発明におけるバルク超電導材料とその製造方法においては以下の要件が必要である。
1.結晶配向したREBa2Cu3Ox系バルクが製造可能な組成であること。
2.切断前のバルク体は正方晶であること。
3.結晶配向しており、切断面がc軸に垂直であること。
【0009】
また、後に実施例で示すように本発明は半径20mm以上の酸化物超電導バルク材料で有効である。
【0010】
結晶配向したREBa2Cu3Ox系バルクの製造法は、現在のところ先に述べたような溶融法以外にはない。しかし、この材料はバリウムを含むため、半溶融時で反応性が高く、坩堝は使用できない。したがって、半溶融時は下面のみ原料の重さを支えなければならず、RE2BaCuO5相とBa-Cu-Oを主成分とした液相が共存する温度に加熱し半溶融状態になった時、形状を保持している必要がある。
【0011】
このための方法は半溶融時に固相であるRE2BaCuO5相の量を増加することである。この場合実施例で示すように、最終的にREBa2Cu3Oxバルク中にRE2BaCuO5相が5体積%以上残留するような組成である必要がある。しかし、REとBaとCuの比が1:2:3の比から大幅にずらしてRE2BaCuO5相を増加させるとBaとCuが欠乏するためずれ、結晶成長が阻害されるため、大型の結晶が製造できなくなる。最終的なRE2BaCuO5相の残留組成は35体積%以内であることが望ましい。実際は、実施例に示すように、現在の溶融法においては、これ以上の体積率のRE2BaCuO5相はREBa2Cu3Oxバルク中に残留できない。
【0012】
さらに、半溶融状態においてRE2BaCuO5相を微細化することであることが好ましい。半溶融状態においてRE2BaCuO5相を微細化する方法として白金またはロジウムを添加する方法がある。これを形状保持の目的に使用する場合はREBa2Cu3Ox系バルク超電導材料中に白金で0.1重量%、ロジウムで0.01重量%のロジウムが含まれている必要がある。上限は1.0重量%である。これは、これ以上増やすと臨界温度が劣化するためである。
【0013】
酸素をできるだけ均一に付加するためには、その表面積はなるべく大きい方がよいが、酸素付加前からクラックが存在していた場合、クラックの不均一な進展を招くため、酸素アニール前にはクラックは極力避ける必要がある。したがって、スライス前に、クラック発生の原因になる斜方晶への転移は避ける必要がある。現状の技術では、直接薄板試料を製造することは難しい。これは、材料製造時に材料を保持する支持基材との熱膨張差や反応等によって、薄板試料の高さ方向にクラックが発生してしまうからである。高さ方向の割れは電流の経路を遮断してしまうため避ける必要がある。したがって、半径に対して高さが1/2以上の材料を作製して、その後にスライスする方法が望ましい。
【0014】
この材料の場合、ab面方向の酸素の拡散係数がc軸方向の拡散係数に比較して圧倒的に大きいが、実際には酸素付加はc軸方向の厚さにも影響され、ab面方向の半径が20mmを超える場合、c軸方向の厚さが15mm以上になると十分な特性が得られないことがわかった。スライスは半導体の切断製造を利用できる。現在通常使用されているダイヤモンドブレードの刃厚は0.3mm程度であり、材料の切断厚さが薄くなると歩留まりが低下することから、0.3mm以下の薄さに切断することは現実的ではない。
【0015】
図1や図2の形のバルク超電導材料を磁性材料として使用する場合、磁場は円柱、あるいは円筒に垂直に印加し、超電導電流はその垂直な面を環流するように使用される。したがって、超電導電流が臨界電流密度の小さいc軸方向に流れるような使用法は避けることが望ましく、切断はc軸に垂直に切断する必要がある。またクラックはc軸に垂直に発生しやすいため、c軸に垂直に切断することはその意味でも合理的である。
【0016】
また、本発明は円柱状材料だけでなく、四角柱や六角柱状等の多角柱、あるいは円筒形等の様々な形状の大型バルク材料に適用できる。この場合もab面方向の半径相当径が約20mmを超え、c軸方向の高さが15mm以上になる大型バルク材料に適用される。
【0017】
c軸に垂直に切断し、酸素付加させ、c軸方向に再積層して固定したREBa2Cu3Oxバルク超電導体は、短時間の酸素アニールで酸素が均一かつ十分に付加される。このため、切断しないで酸素アニールしたREBa2Cu3Oxバルク超電導体に比較して、バルク全体の超電導特性をあらわす磁気特性に優れる。したがって、優れた特性を有するバルク磁石、磁気シールド体の製造が可能である。
【0018】
(参考例1)
半溶融時の形状保持に関する実験をおこなった。原料粉末として、Y2O3,BaO2,CuOおよび白金、ロジウム粉末を様々な組成に秤量し、半溶融時における形状保持の状態を調べた。YとBaとCuの比は1:2:3のものと1.05:1.95:2.9の2種類用意した。これらは、最終的にYBa2Cu3Oxバルク中にY2BaCuO5相が0mol%、および5mol%残留する組成である。白金とロジウムは0、0.005、0.01、0.1、0.2、0.5、0.8、1.0、1.5重量%をYとBaとCuの比が1.05:1.95:2.9の組成の粉末に対し添加した。したがって、本実施例において試験された原料粉末は19種類である。これらの原料粉末をアルミナ乳鉢中にてよく混練し、60mmΦの金型を用いて高さ20mmに成形し、その後2ton/cm2の圧力にて静水圧成形を施し、原料成形体とした。
【0019】
この原料成形体を加熱し、半溶融状態にした後、結晶成長熱処理をおこなった。始めに1150℃に加熱し、30分保持した後、1時間で1005℃に冷却した。その冷却過程1030℃で3mm角のSmBa2Cu3Oxの劈開面(ab面)を半溶融状態の成形体上面に接触させるシーディング操作をおこなった。その後、960℃まで0.3℃/hの冷却速度で徐冷し、この温度から室温までは8時間で炉冷した。
【0020】
1150℃から1005℃まではY2BaCuO5相とBa-Cu-Oを主成分とした液が共存する半溶融状態になっている。シーディング時に炉内の半溶融状態にある原料成形体を観察すると、Y:Ba:Cuの比が1:2:3の比で粉末で白金とロジウムがどちらも無添加のものは、中央部が大きくへこみ、重力によって形が大きく歪んでいた。Y:Ba:Cuの比が1.05:1.95:2.9の組成のものは全て円柱形に形状を保持していた。
【0021】
室温に冷却後、試料を観察したところ、シーディング時に形状が歪んでいた1種類以外は円柱形が保持され、バルク全体にわたって結晶成長しており、またc軸が円柱の高さ方向を向いていることがわかった。最終的な大きさは直径45mm,高さは15mmであった。また、組織を偏光顕微鏡にて観察したところY:Ba:Cuの比が1:2:3の粉末を原料とした試料では、配向したYBa2Cu3Oxマトリックス中に局所的に5μm程度の大きさのY2BaCuO5相が観察されるが、Y2BaCuO5相の体積分率はほぼ0%であった。一方、Y:Ba:Cuの比が1.05:1.95:2.9の組成のものは、YBa2Cu3Oxマトリックス中のY2BaCuO5相の体積分率はほぼ5%であった。Y2BaCuO5相の大きさは、白金・ロジウムの添加量が増えるにしたがって小さくなっていたが、白金を0.1重量%添加したものとロジウムを0.01%添加したもので、2μm以下になっていた。形状保持の効果はY2BaCuO5相が微細化されたためと考えられる。
【0022】
以上、溶融法にて大型のYBa2Cu3Oxバルク体を製造するためには、YBa2Cu3Ox単相になる組成では形状を保持することができなく、5体積%程度Y2BaCuO5相が過剰に導入させる組成にする必要があることがわかった。形状保持の効果はロジウムの方が高く、白金では0.1重量%必要であるのに対し、ロジウムでは0.01重量%以上で形状保持効果が得られることがわかった。
【0023】
(参考例2)
次にY2BaCuO5相の組成を増やして大型試料を作製し、その超電導特性を調べた。参考例1と同じ原料粉末をもちいて、Y2BaCuO5相が15mol%、30mol%、45mol%残留する組成になるように秤量した。白金粉末はそれぞれ0.5重量%添加した。この添加量は、小試料を使用した臨界電流密度測定で得られた最適組成である。これら3つの組成から出発して作製したYBa2Cu3Oxバルク超電導体を15%211、30%211および45%211とする。
【0024】
熱処理方法は参考例1と同じであり、試料を表面から観察する限りにおいては、直径45mm厚さ15mmの円柱状バルクは1つのYBa2Cu3Oxバルク結晶粒から構成されていた。円柱試料の上面と下面を少し研磨して平行で平滑な面に仕上げ、上面のX線回折実験をおこない、c軸が円柱の高さ方向になっていることを確かめた。この後、酸素気流中にて450℃で240時間の酸素アニールを施し、酸素付加をおこなった。
【0025】
このようにして作製した3種類の試料について、室温でc軸方向に1.5Tの磁場を印加して、このまま液体窒素にて冷却した後、磁場を0に低下させた。その後、液体窒素中で上面の捕捉磁場分布をホール素子にて測定した。測定は面の垂直成分についておこなった。
【0026】
磁場の分布は中心部に向かって高くなっており、同心円、円錐状の分布をしていた。中心の最も捕捉磁場の大きくなっている磁場(B−trap)を表1に示した。
【0027】
次に、バルク試料の中心部から0.8×3×3mmの試料を切り出し、直流磁化測定法により臨界電流密度を測定した。磁場はc軸に平行な3mmの一辺に平行に印加した。この結果得られた1Tにおける臨界電流密度(Jc-before)を表1に示す。また、この測定試料を酸素気流中にて450℃で24時間酸素アニールを施して同様に直流磁化測定をおこない、この結果得られた1Tにおける臨界電流密度(Jc-after)も表1に示した。バルク試料を鏡面研磨して、その面の偏光顕微鏡写真から画像解析によって求めたY2BaCuO5相の体積率(V211)も同時に表1に示した。いずれの試料も配向したYBa2Cu3Oxバルク結晶粒中に1μm程度の大きさのY2BaCuO5相が分散していた。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示した結果から以下のことがいえる。捕捉される磁場の強さは15%211よりも30%211の方が大きかった。これは、臨界電流密度(Jc-before)の大きさの差によるものと考えられる。(Jc-before)の差は内部に分散するY2BaCuO5相の体積率によるものと考えられる。一方、30%211と45%211の捕捉磁場の大きさが変わらなかったのは臨界電流密度(Jc-before)がほとんど変わらなかったためである。これは、45%211のY2BaCuO5相の体積率が目的の組成になっておらず、30%211の組成とほとんど変わらなかったためと考えられる。したがって、結晶成長時に取り込まれるY2BaCuO5相の量は最大でも35%程度であり、残りは試料端部などに偏析するものと考えられる。実際、試料の底部にY2BaCuO5相の偏析が観察された。(Jc-before)と(Jc-after)を比較すると、(Jc-after)の方が大きくなっている。これは、バルクの酸素アニールが不十分であることを意味する。
【0030】
【実施例1】
次に、酸素アニール前にバルク試料を薄くスライスした後に酸素アニールし、積層した試料の特性を測定し、参考例2の結果と比較した。使用したバルクの組成は実施例における30%211を使用した。バルクの形状と結晶方位も同一である。アニール前の試料を刃厚0.3mmの内周刃ダイヤモンドカッターにてc軸と垂直方向(円柱試料の中心軸と垂直方向)に厚さ1.5mmに切断して、この円盤試料について450℃、240時間の酸素アニールを施した。その後、再び元のように積層し、周囲をテフロン(登録商標)テープで固定して参考例2と同じ方法で試料に磁場を捕捉させた。円柱試料上面の表面磁場のc軸成分の分布は参考例2の結果と同様に同心円状で中心部程大きくなっているが、その中心磁場は1.3Tと参考例2の結果に比較して大きくなった。これは、磁場を捕捉する超電導永久電流の流れを阻害することなくスライスしたことと、スライスして体積を小さくした試料に対し酸素アニールを施したために、酸素付加が均一かつ十分になされたためと考えられる。
【0031】
(参考例3)
次に様々な体積を有し、高さ方向にc軸が配向しているYBa2Cu3Oxバルク試料を参考例2および実施例1と同様な熱処理方法で作製し、バルク試料のままアニールした超伝導バルクとab面に沿って3mm厚にスライスし、これを酸素アニールして再び元のように積層した超伝導バルクの捕捉磁束を測定した。捕捉磁束密度の測定方法は参考例2と同じである。
【0032】
試料の形状は試料の半径と高さが等しい円柱状のもので、試料の半径が10mm、15mm、17.5mm、20mm、30mmのバルク試料をそれぞれ2個ずつ用意した。酸素アニールは酸素気流中にて450℃にて300時間おこなった。表2にバルク試料のままアニールした超伝導バルク試料の半径と高さ、及び捕捉磁束密度の最大値を示した。この捕捉磁束密度の最大値をB-trap-bとした。また表2にはスライスし、これを酸素アニールして再び元のように積層した超伝導バルクの捕捉磁束の最大値も同時に示した。これを B-trap-sとした。スライスした試料の体積は切りしろによって高さが減少した分、約10%減少した。
【0033】
【表2】
【0034】
捕捉磁束密度の最大値を比較すると、試料体積が小さいうちはスライスした試料のほうが小さくなっている。これは、試料が小さいため、バルクのままアニールをおこなっても酸素アニールによって酸素が十分入り、体積が大きい分だけスライスした試料よりも捕捉磁束密度が大きくなっているものと解釈出来る。一方、半径が20mmを超えるとスライスした後アニールした試料の捕捉磁束密度のほうが大きくなった。これは、試料が大きいため、バルクのままアニールしたのでは、酸素が均一かつ十分に入らないためと解釈出来る。
【0035】
(参考例4)
次に様々な体積を有し、高さ方向にc軸が配向している円筒状のYBa2Cu3Oxバルク試料を作製し、バルク試料のままアニールした超伝導バルクとab面に沿って2mm厚にスライスし、これを酸素アニールして再び元のように積層した超伝導バルクの捕捉磁束を測定した。捕捉磁束密度の測定方法は参考例2とほぼ同じであるが、測定場所が異なる。円筒の中央部にホール素子を設置し、印加磁場と平行な方向(c軸方向)の捕捉磁場を測定した。これはこの円筒試料の磁気シールド特性に相当する。
【0036】
試料の形状は試料の外径の1/2と高さが等しく、内径が外径の1/2になっている円筒状のものである、試料の外径の1/2が10mm、15mm、17.5mm、20mm、30mmのバルク試料をそれぞれ2個ずつ用意した。酸素アニールは酸素気流中にて450℃にて300時間おこなった。表3にバルク試料のままアニールした超伝導バルク試料の外径の1/2と高さ、及び捕捉磁束密度を示した。この捕捉磁束密度をB-trap-bとした。また表3にはスライスし、これを酸素アニールして再び元のように積層した超伝導バルクの捕捉磁束密度も同時に示した。これを B-trap-sとした。スライスした試料の体積は切りしろによって高さが減少した分、約16%減少した。
【0037】
【表3】
【0038】
捕捉磁束密度を比較すると、試料体積が小さいうちはスライスした試料のほうが小さくなっている。これは、試料が小さいため、バルクのままアニールをおこなっても酸素アニールによって酸素が十分入り、体積が大きい分だけスライスした試料よりも捕捉磁束密度が大きくなっているものと解釈出来る。一方、半径が20mmを超えるとスライスした後アニールした試料の捕捉磁束密度のほうが大きくなった。これは、試料が大きいため、バルクのままアニールしたのでは、酸素が均一かつ十分に入らないためと解釈出来る。
【0039】
(参考例5)
次に半径32.5mmで高さ45mmの円柱状のYBa2Cu3Oxバルク試料を作製し、バルク試料のままアニールした超電導バルクとab面に沿って様々な厚さにスライスし、これを酸素アニールして再び元のように積層した超伝導バルクの捕捉磁束を測定した。超電導バルク中のY2BaCuO5相の体積率は25%であり、ロジウムを原料粉体中に0.1重量%添加しているためにその粒径は約1mm程度になっている。捕捉磁束密度の測定方法は参考例2と同じである。
【0040】
c軸方向の厚さは2、5、10、15、22.5そしてスライスしていない45mmものを用意した。スライスした1枚の試料を単位試料とする。酸素アニールは450℃にて300時間おこなった。表4に単位試料の高さと捕捉磁束密度を示した。この捕捉磁束密度をB-trapとした。
【0041】
捕捉磁束密度を比較すると、単位試料の厚さ15mm以下のものを積層したバルク超電導体の捕捉磁束密度が大きくなっていることがわかった。これは、試料が小さいため、バルクのままアニールをおこなっても酸素アニールによって酸素が十分入り、体積が大きい試料よりも捕捉磁束密度が大きくなっているものと解釈出来る。
【0042】
【表4】
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、体積の大きなREBa2Cu3Ox系バルク超電導体を電流を阻害しないab面に沿って薄くスライスして、酸素アニールをおこなうことによって、均一かつ十分に酸素付加され特性が向上する。この方法が有効になるのは試料の形状に多少依存すると考えられるが、おしなべてab面方向の半径相当径が20mm、c軸方向の高さが15mmを超える大型酸化物超電導バルク材料に対して有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における超電導バルク超伝導体導体の形態を示す図である。
【図2】 本発明における超電導バルク超伝導体導体の形態を示す図である。
【符号の説明】
1 REBa2Cu3Oxバルク超電導体
Claims (3)
- 内部に5から35体積%以下のRE2BaCuO5相が分散し、かつab面方向の半径が20mm以上であり、c軸方向の厚さが0.3mm以上15mm以下である単結晶状に斜方晶構造で配向したREBa2Cu3Ox系バルク超電導平板がc軸方向に積層されて周囲を固定して構成されていることを特徴とする酸化物超電導バルク材料。ここで、REはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選ばれた1種以上の元素をさす。
- 内部に0.1から1.0重量%の白金、または0.01から1.0重量%のロジウムが含まれることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導バルク材料。
- 内部に5から35体積%以下のRE2BaCuO5相が分散し、半径方向がab面になっており、かつ半径20mm以上である正方晶構造の配向したREBa2Cu3Ox系バルクを、0.3mm以上15mm以下の厚さでc軸に垂直にスライスした後、酸素付加をおこない斜方晶構造とし再度c軸方向に積層して周囲を固定することを特徴とする酸化物超電導バルク材料の製造方法。
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