JP4100891B2 - 無線端末装置、送信指向性キャリブレーション方法、および送信指向性キャリブレーションプログラム - Google Patents
無線端末装置、送信指向性キャリブレーション方法、および送信指向性キャリブレーションプログラム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、無線端末装置、送信指向性キャリブレーション方法、および送信指向性キャリブレーションプログラムに関し、特に、送信指向性のキャリブレーションが可能なアダプティブアレイ端末、そのようなアダプティブアレイ端末のための送信指向性キャリブレーション方法および送信指向性キャリブレーションプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、急速に発達しつつある移動体通信システム(たとえば、Personal Handyphone System:以下、PHS)では、電波の周波数利用効率を高めるために、同一周波数の同一タイムスロットを空間的に分割することにより複数ユーザの無線移動端末装置(以下、端末)を無線基地装置(以下、基地局)に空間多重接続させることができるPDMA(Path Division Multiple Access)方式が提案されている。
【0003】
このPDMA方式では、現在のところアダプティブアレイ技術が採用されている。アダプティブアレイ処理とは、端末からの受信信号に基づいて、基地局のアンテナごとの受信係数(ウェイト)からなるウェイトベクトルを計算して適用制御することによって、所望の端末からの信号を正確に抽出する処理である。
【0004】
このようなアダプティブアレイ処理により、各ユーザ端末のアンテナからの上り信号は、基地局のアレイアンテナによって受信され、当該ユーザ端末の受信ウェイトによって受信指向性を伴って分離抽出される。
【0005】
また、基地局における受信と送信との間の時間差が0であると仮定すると伝搬路(基地局のアンテナ端と端末のアンテナ端との間の区間)に変動がないため、基地局から当該端末への下り信号は、受信時に得られた受信ウェイトを送信ウェイト情報として適用することにより当該端末のアンテナに対する送信指向性を伴って基地局のアレイアンテナから送信される。
【0006】
このようなアダプティブアレイ処理は周知の技術であり、たとえば菊間信良著の「アレーアンテナによる適応信号処理」(科学技術出版)の第35頁〜第49頁の「第3章 MMSEアダプティブアレー」に詳細に説明されているので、ここではその動作原理についての説明を省略する。
【0007】
なお、以下の説明においては、このようなアダプティブアレイ処理を用いて端末に対する下りの送信指向性制御を行なう基地局をアダプティブアレイ基地局と称する。
【0008】
一方、このようなアダプティブアレイ処理を用いて受信指向性および送信指向性を形成して信号の送受信を行なう無線端末装置が開発されている。以下に、このようなアダプティブアレイ処理を用いて指向性制御を行なう端末をアダプティブアレイ端末と称する。
【0009】
しかしながら、これらのアダプティブアレイ基地局およびアダプティブアレイ端末において、たとえ上述のように、伝搬路に変動がなくても、アダプティブアレイ基地局内またはアダプティブアレイ端末内における受信信号経路と送信信号経路との物理的な差違(たとえば経路長の差、受信回路および送信回路に含まれるアンプ、フィルタなどのデバイスの特性差など)により、受信信号経路と送信信号経路とで、送受信信号間に位相回転量、振幅変動量などの伝送特性の差が生じてしまうことになる。
【0010】
アダプティブアレイ基地局内またはアダプティブアレイ端末内で送受信信号間に伝送特性の差があれば、上述のように受信ウェイトをそのまま送信ウェイトとして用いる方法では、送信相手先の端末または基地局に対して最適な送信指向性を向けることができなくなる。
【0011】
このため、通常は、工場出荷時に基地局内または端末内の受信信号経路の伝送特性と送信信号経路の伝送特性との差を補償して最適の送信指向性を形成するためのキャリブレーションが行なわれる。
【0012】
しかしながら、基地局内または端末内の受信回路および送信回路に含まれるデバイスの特性は、経年変化や温度変化により、出荷時とは異なってしまうため、基地局または端末の使用開始後に定期的にキャリブレーション処理を行なう必要がある。
【0013】
設置後の基地局におけるそのようなキャリブレーション処理については、たとえば国際公開番号WO00/08777号公報(国際公開日2000年2月17日)などに開示されている。このような従来の方法では、たとえば、アダプティブアレイ基地局のアレイアンテナを構成する複数のアンテナのうち、あるアンテナから既知の信号を送信し、残りのアンテナでこの既知の信号をアレイ受信することにより、基地局内の受信信号経路の伝送特性と送信信号経路の伝送特性との差を測定し補償して送信指向性を最適化するキャリブレーション処理を行なっていた。また、アダプティブアレイ端末においても、同様の方法によるキャリブレーション処理が考えられる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、使用開始後のアダプティブアレイ端末については、各端末単体でキャリブレーション処理を行なうことが考えられる。
【0015】
この方法では、既知の信号を送信するアンテナと、これを受信するアンテナとの組合せを順次変更しながら、アダプティブアレイ端末内の受信信号経路の伝送特性と送信信号経路の伝送特性との差の補償を繰返すこととなるため、次のような問題が生じる。
【0016】
すなわち、補償を繰返すため全体のキャリブレーション処理に時間を要し、また、既知の信号を送信するアンテナを除く、残りの本数のアンテナでアレイ受信をしていたため、アレイアンテナ全体で受信する場合に比べて、端末のアダプティブアレイ性能すなわちキャリブレーション性能が劣化するという問題があった。
【0017】
さらに、単体の端末のアンテナ同士の間で近距離の信号送受信を行なっていたため、次のような問題が生じていた。
【0018】
すなわち、信号が飽和しないように送受信の電力制御が必要であり制御が複雑化していた。また、送信アンテナと受信アンテナとの距離が短すぎると十分な分解能(たとえばビーム、ヌルの鋭さ)を有する指向性パターンを形成することが困難となり、アダプティブアレイ性能が劣化するという問題があった。
【0019】
それゆえに、この発明の目的は、アダプティブアレイ端末のすべてのアンテナを外部からの既知の送信信号の受信に用いることにより、端末内で複雑な制御を行なうことなく、短時間にかつ高精度に端末の送信指向性のキャリブレーション処理を行なうことができる無線端末装置、送信指向性キャリブレーション方法、および送信指向性キャリブレーションプログラムを提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
この発明の1つの局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置であって、特定の無線装置から送信されてくる所定の信号を受信して、受信した所定の信号に基づいて特定の無線装置に対する送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算する手段と、計算されたウェイト情報を補正する手段と、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで特定の無線装置に所定の信号を送信する手段と、特定の無線装置で受信した所定の信号の受信レベルに関する情報を特定の無線装置から受信して、受信した受信レベルに関する情報に基づいて特定の無線装置における受信レベルが最適となるウェイト情報の補正の値を決定する手段とを備える。
【0021】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0022】
この発明の他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置であって、特定の無線装置から送信されてくる所望信号および干渉信号を受信して、受信した所望信号および干渉信号に基づいて所望信号の方向にビームを向けかつ干渉信号の方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算する手段と、計算されたウェイト情報を補正する手段と、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで特定の無線装置に所定の信号を送信する手段と、特定の無線装置で受信したビームの受信レベルとヌルの受信レベルとの受信レベルに関する情報を特定の無線装置から受信して、受信した受信レベルに関する情報に基づいて特定の無線装置における受信レベルに関する情報が最適となるウェイト情報の補正の値を決定する手段とを備える。
【0023】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の所望信号および干渉信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができ、さらに外部の無線装置で測定されたヌルとビームとの受信レベル比に基づいて補正値を決定できるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0024】
好ましくは、受信レベルに関する情報は、ビームの受信レベルとヌルの受信レベルとの受信レベル比である。
【0025】
好ましくは、ウェイト情報を計算する手段は、所望信号を受信するために計算された受信ウェイトをウェイト情報として供給する手段を含む。
【0026】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置であって、特定の無線装置から送信されてくる所望信号を受信して、受信した所望信号に基づいて所望信号の方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算する手段と、計算されたウェイト情報を補正する手段と、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで特定の無線装置に所定の信号を送信する手段と、特定の無線装置で受信した所定の信号の受信レベルを特定の無線装置から受信して、受信した受信レベルに基づいて特定の無線装置における受信レベルが最適となるウェイト情報の補正の値を決定する手段とを備える。
【0027】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の所望信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができ、さらに外部の無線装置で測定された強制ヌルの受信レベルに基づいて補正値を決定できるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0028】
好ましくは、ウェイト情報を計算する手段は、所望信号に基づいて受信応答ベクトルを計算する手段と、受信応答ベクトルに基づいてウェイト情報を計算する手段とを含む。
【0029】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置における送信指向性のキャリブレーション方法であって、特定の無線装置から送信されてくる所定の信号を受信して、受信した所定の信号に基づいて特定の無線装置に対する送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、計算されたウェイト情報を補正するステップと、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで特定の無線装置に所定の信号を送信するステップと、特定の無線装置で受信した所定の信号の受信レベルに関する情報を特定の無線装置から受信して、受信した受信レベルに関する情報に基づいて特定の無線装置における受信レベルが最適となるウェイト情報の補正の値を決定するステップとを備える。
【0030】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0031】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置における送信指向性のキャリブレーション方法であって、特定の無線装置から送信されてくる所望信号および干渉信号を受信して、受信した所望信号および干渉信号に基づいて所望信号の方向にビームを向けかつ干渉信号の方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、計算されたウェイト情報を補正するステップと、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで特定の無線装置に所定の信号を送信するステップと、特定の無線装置で受信したビームの受信レベルとヌルの受信レベルとの受信レベルに関する情報を特定の無線装置から受信して、受信した受信レベルに関する情報に基づいて特定の無線装置における受信レベルに関する情報が最適となるウェイト情報の補正の値を決定するステップとを備える。
【0032】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の所望信号および干渉信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができ、さらに外部の無線装置で測定されたヌルとビームとの受信レベル比に基づいて補正値を決定できるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0033】
好ましくは、受信レベルに関する情報は、ビームの受信レベルとヌルの受信レベルとの受信レベル比である。
【0034】
好ましくは、ウェイト情報を計算するステップは、所望信号を受信するために計算された受信ウェイトを前記ウェイト情報として供給するステップを含む。
【0035】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置における送信指向性のキャリブレーション方法であって、特定の無線装置から送信されてくる所望信号を受信して、受信した所望信号に基づいて所望信号の方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、計算されたウェイト情報を補正するステップと、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで特定の無線装置に所定の信号を送信するステップと、特定の無線装置で受信した所定の信号の受信レベルを特定の無線装置から受信して、受信した受信レベルに基づいて特定の無線装置における受信レベルが最適となるウェイト情報の補正の値を決定するステップとを備える。
【0036】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の所望信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができ、さらに外部の無線装置で測定された強制ヌルの受信レベルに基づいて補正値を決定できるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0037】
好ましくは、ウェイト情報を計算するステップは、所望信号に基づいて受信応答ベクトルを計算するステップと、受信応答ベクトルに基づいてウェイト情報を計算するステップとを含む。
【0038】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置における送信指向性のキャリブレーションプログラムであって、コンピュータに、特定の無線装置から送信されてくる所定の信号を受信して、受信した所定の信号に基づいて特定の無線装置に対する送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、計算されたウェイト情報を補正するステップと、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで特定の無線装置に所定の信号を送信するステップと、特定の無線装置で受信した所定の信号の受信レベルに関する情報を特定の無線装置から受信して、受信した受信レベルに関する情報に基づいて特定の無線装置における受信レベルが最適となるウェイト情報の補正の値を決定するステップとを実行させる。
【0039】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0040】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置における送信指向性のキャリブレーションプログラムであって、コンピュータに、特定の無線装置から送信されてくる所望信号および干渉信号を受信して、受信した所望信号および干渉信号に基づいて所望信号の方向にビームを向けかつ干渉信号の方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、計算されたウェイト情報を補正するステップと、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで特定の無線装置に所定の信号を送信するステップと、特定の無線装置で受信したビームの受信レベルとヌルの受信レベルとの受信レベルに関する情報を特定の無線装置から受信して、受信した受信レベルに関する情報に基づいて特定の無線装置における受信レベルに関する情報が最適となるウェイト情報の補正の値を決定するステップとを実行させる。
【0041】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の所望信号および干渉信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができ、さらに外部の無線装置で測定されたヌルとビームとの受信レベル比に基づいて補正値を決定できるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0042】
好ましくは、受信レベルに関する情報は、ビームの受信レベルとヌルの受信レベルとの受信レベル比である。
【0043】
好ましくは、ウェイト情報を計算するステップは、所望信号を受信するために計算された受信ウェイトを前記ウェイト情報として供給するステップを含む。
【0044】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置における送信指向性のキャリブレーションプログラムであって、コンピュータに、特定の無線装置から送信されてくる所望信号を受信して、受信した所望信号に基づいて所望信号の方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、計算されたウェイト情報を補正するステップと、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで特定の無線装置に所定の信号を送信するステップと、特定の無線装置で受信した所定の信号の受信レベルを特定の無線装置から受信して、受信した受信レベルに基づいて特定の無線装置における受信レベルが最適となるウェイト情報の補正の値を決定するステップと実行させる。
【0045】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の所望信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができ、さらに外部の無線装置で測定された強制ヌルの受信レベルに基づいて補正値を決定できるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0046】
好ましくは、ウェイト情報を計算するステップは、所望信号に基づいて受信応答ベクトルを計算するステップと、受信応答ベクトルに基づいてウェイト情報を計算するステップとを含む。
【0047】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置のキャリブレーション方法であって、特定の無線装置から無線端末装置に所定の信号を送信するステップと、無線端末装置において受信した所定の信号に基づいて特定の無線装置に対する送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、計算されたウェイト情報を補正するステップと、補正されたウェイト情報に基づいて送信指向性パターンで無線端末装置から特定の無線装置に所定の信号を送信するステップと、特定の無線装置において受信した所定の信号の受信レベルに関する情報を測定するステップと、測定された受信レベルに関する情報を特定の無線装置から無線端末装置に送信するステップと、無線端末装置において受信した情報に基づいて、特定の無線装置における受信レベルが最適となるウェイト情報の補正の値を決定するステップとを備える。
【0048】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0049】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置のキャリブレーション方法であって、少なくとも2本のアンテナを有する特定の無線装置から無線端末装置に、少なくとも2本のアンテナを用いて無線端末装置にとっての所望信号および干渉信号をそれぞれ送信するステップと、無線端末装置において受信した所望信号および干渉信号に基づいて、特定の無線装置の所望信号を送信したアンテナに対しビームを向けかつ干渉信号を送信したアンテナに対しヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、計算されたウェイト情報を補正するステップと、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで無線端末装置から特定の無線装置に所定の信号を送信するステップと、特定の無線装置において、所望信号を送信したアンテナで受信した所定の信号の受信レベルと干渉信号を送信したアンテナで受信した所定の信号の受信レベルに関する情報を測定するステップと、測定された受信レベルに関する情報を特定の無線装置から無線端末装置に送信するステップと、無線端末装置において受信した受信レベルに関する情報に基づいて、特定の無線装置における受信レベルに関する情報が最適となるウェイト情報の補正の値を決定するステップとを備える。
【0050】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の所望信号および干渉信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができ、さらに外部の無線装置で測定されたヌルとビームとの受信レベル比に基づいて補正値を決定できるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0051】
好ましくは、受信レベルに関する情報は、所望信号を送信したアンテナにおける受信レベルと干渉信号を送信したアンテナにおける受信レベルとの受信レベル比である。
【0052】
好ましくは、受信レベルに関する情報を測定するステップは、受信レベル比を所定期間にわたって平均したものを供給するステップを含む。
【0053】
この発明のさらに他の局面は、複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置のキャリブレーション方法であって、1本のアンテナを有する特定の無線装置から無線端末装置に、1本のアンテナを用いて無線端末装置にとっての所望信号を送信するステップと、無線端末装置において受信した所望信号に基づいて、特定の無線装置の前記1本のアンテナに対しヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、計算されたウェイト情報を補正するステップと、補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで無線端末装置から特定の無線装置に所定の信号を送信するステップと、特定の無線装置において、1本のアンテナで受信した所定の信号の受信レベルを測定するステップと、測定された受信レベルを特定の無線装置から無線端末装置に送信するステップと、無線端末装置において受信した受信レベルに基づいて、特定の無線装置における受信レベルが最小となるウェイト情報の補正の値を決定するステップとを備える。
【0054】
この発明では、外部の無線装置から送られたキャリブレーション用の所望信号を、キャリブレーションの対象となる無線端末装置のすべてのアンテナで一度にアレイ受信することができ、さらに外部の無線装置で測定された強制ヌルの受信レベルに基づいて補正値を決定できるので、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0055】
好ましくは、受信レベルを測定するステップは、受信レベルを所定期間にわたって平均したものを測定された受信レベルとして供給するステップを含む。
【0056】
好ましくは、キャリブレーション方法は無線端末装置によって起動される。
好ましくは、キャリブレーション方法は特定の無線装置によって起動される。
【0057】
好ましくは、特定の無線装置は無線基地装置である。
好ましくは、特定の無線装置は他の無線端末装置である。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0059】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1の端末の送信指向性のキャリブレーション方法の原理を模式的に示す概念図である。
【0060】
この発明は、前述のように各端末単体でキャリブレーション処理を行なうのではなく、外部の他の無線装置(基地または端末)との間で信号のやり取りをすることにより、アダプティブアレイ端末の送信指向性のキャリブレーション処理を行なうものであり、特に図1に示した実施の形態1では、少なくとも2本のアンテナを有する外部の基地局または端末との信号のやり取りにより、アダプティブアレイ端末の送信指向性のキャリブレーション処理を行なうものである。
【0061】
図1において、無線装置1は、キャリブレーション処理の対象となるアダプティブアレイ端末であり、無線装置2は、端末1のキャリブレーションを行なうための基地局または端末である。
【0062】
以下に、図1を参照して、実施の形態1による送信指向性のキャリブレーション方法の原理について説明する。
【0063】
まず、図1の(a)に示すように、外部の基地局または端末2の少なくとも1本のアンテナ2aから、端末1にとって所望信号となる所定周波数の既知の信号が送信され、少なくとも1本のアンテナ2bから、端末1にとって干渉信号となる上記所定信号と同一周波数の他の信号が送信される。
【0064】
これらの送信信号は、アダプティブアレイ端末1のアレイアンテナを構成する少なくとも2本のアンテナ1a,1bによってアレイ受信され、アダプティブアレイ処理の結果得られる受信ウェイトに基づいて、図示するような受信指向性パターンで、アンテナ2aからの所望信号が分離抽出される。
【0065】
受信時に得られた受信ウェイトにはある補正値が乗算されて後述する送信指向性の形成に用いられる。
【0066】
次に、図1の(b)に示すように、アダプティブアレイ端末1は、受信時に得られ、上述の補正値が乗算された受信ウェイトを送信ウェイトとして用いて、図示するような送信指向性パターンを形成し、外部の基地局または端末2に向かって信号を送信する。図示するように、受信ウェイトを用いた送信ウェイトに基づいて形成された送信指向性パターンは、基地局または端末2のアンテナのうち、所望信号を送信したアンテナ2aにビームが向けられており、干渉信号を送信したアンテナ2bにヌルが向けられている。
【0067】
外部の基地局または端末2は、アンテナ2aで、端末1からのビームの信号受信電力を測定し、アンテナ2bで、端末1からのヌルの信号受信電力を測定し、その比率であるDU(Desired user's power: Undesired user's power)比を算出する。言い換えると、DU比は、送信指向性パターンの形状におけるヌルの深さを表わしている。
【0068】
端末1の送信指向性パターンの精度が高いほど、アンテナ2a,2bに対してビームおよびヌルがそれぞれより正確に向くことになり(すなわちヌルが深くなり)、アンテナ2aでの受信電力は増大し、アンテナ2bでの受信電力は低下することになる。すなわち、DU比は高くなる。
【0069】
このことから、外部の基地局または端末2で測定されたDU比は、送信指向性が正確に形成されているかを示す指標として用いることができる。すなわち、基地局または端末2で測定されるDU比が最適(最高)となるように、受信ウェイトに乗算する補正値を決定すれば、端末1の送信指向性のキャリブレーションが行なわれたことになる。
【0070】
図2は、図1に示した実施の形態1による送信指向性のキャリブレーション方法の手順を示すタイミング図である。
【0071】
図2を参照して、左側にキャリブレーションの対象となる端末の動作を示し、右側にキャリブレーションを行なうための外部の無線装置としての少なくとも2本のアンテナを有する基地局の動作を示している。なお、外部の無線装置として端末(たとえばアダプティブアレイ端末)を用いてもよいということは図1に関連して述べたとおりである。
【0072】
図2を参照して、この発明の実施の形態1によるキャリブレーション方法の具体的な手順について説明する。
【0073】
まず、端末側で、キャリブレーションを起動する条件が満たされているか否かが判断される(ステップS1)。ここで、キャリブレーションの起動条件とは、たとえば、前回のキャリブレーション実行時からの所定の期間の経過を計っているキャリブレーションタイマが満了したこと、前回のキャリブレーション実行時から温度が変化したことを検出したこと、干渉回避動作(たとえば基地局からのチャネル切替要求)の回数などから送信指向性の劣化により通信品質が劣化したと判断されたこと、などが挙げられる。
【0074】
ステップS1において、これらの条件のいずれかが満たされていることが判断されると、端末側でキャリブレーションが起動され、ステップS2においてキャリブレーションのための測定条件が満たされているか否かが判定される。ここでは、端末が周囲の電波環境をモニタし、干渉波が少ないこと、フェージングがないことなどが判断されると、キャリブレーション測定のための条件は満たされていると判断し、キャリブレーション測定要求を基地局側に送信する。キャリブレーション測定要求は、測定時間(後述するDU比の平均時間)、使用する信号周波数など、キャリブレーションに関する諸条件を含んでいる。このキャリブレーション測定要求は、制御チャネルCCHによって端末から基地局へ送信される。
【0075】
このキャリブレーション測定要求を受けた基地局側では、ステップS3においてキャリブレーションのための測定条件が満たされているか否かが判定される。ここでの測定条件は、基地局の周囲に干渉波が少ないこと、フェージングがないことなどの電波環境に関する条件の他に、当該基地局自体がキャリブレーションの実行に適しているか否かに関する条件を含む。すなわち、当該基地局が他の端末と通信状態になくキャリブレーションに使用できる状態にあることなどである。
【0076】
ステップS3において、当該基地局は、キャリブレーションのための測定条件が満たされていると判断すると、キャリブレーション測定指示を端末側に送信する。このキャリブレーション測定指示は、制御チャネルCCHによって基地局から端末へ送信される。
【0077】
その後、制御チャネルCCHから通話チャネルTCHに移行し、データ通信中に、図1に示した原理による送信指向性のキャリブレーション処理が実行される。
【0078】
まず、基地局側からキャリブレーション用の信号が端末に送信される(ステップS4)。より具体的には、図1の(a)に示したように、基地局2の別々のアンテナ2a,2bからそれぞれ所望信号および干渉信号が送信される。
【0079】
端末側ではこのキャリブレーション用の信号をアレイ受信する(ステップS5)。より具体的には、アダプティブアレイ端末1は、アダプティブアレイ処理により、図1の(a)に示したような受信指向性パターンで基地局2からの信号を受信する。
【0080】
端末側では、所望信号の受信のために形成された受信ウェイトにある補正値を乗算して送信ウェイトとし、図1の(b)に示すような送信指向性パターンを形成して、すなわち基地局2のアンテナ2aにビームを向けかつアンテナ2bにヌルを向けた状態で、信号を送信する(ステップS5)。ここで、補正値の初期値としては、たとえば前回のキャリブレーション時に決定されていた既存の補正値を用いるものとする。
【0081】
基地局側では、このように端末から送信された信号を受信し、アンテナ間の受信信号電力のDU比を測定する(ステップS4)。より具体的には、図1の(b)に示すように、基地局2のアンテナ2aで受信したビームの受信電力レベルとアンテナ2bで受信したヌルの受信電力レベルとのDU比を測定し、基地局側のメモリに測定結果を記憶する。
【0082】
このようなステップS4および5によるDU比の測定動作を、通話チャネルのデータ通信中に、所定の時間(キャリブレーション測定要求によって端末から指定された時間)にわたって繰返し実行する。
【0083】
そして、所定時間が経過すると、その時間内に基地局側で測定されたDU比の平均値が基地局側で計算され、その結果が端末側に通知される(ステップS6)。このDU比測定結果は、通話チャネルTCHによって基地局から端末へ送信される。
【0084】
端末側はこのDU比測定結果を受信し、所定値以上になっているか否かを判定する(ステップS7)。図1に関連して説明したように、送信指向性が良好なほど、送信指向性パターン形状におけるヌルは深くなり(干渉成分が少なくなり)、基地局側で測定されるDU比は大きくなる。
【0085】
端末は、測定された平均DU比が所定値以上であれば、上述のステップS5において受信ウェイトはすでに適切な補正値によって補正されているものと判断し、当該補正値を最終のキャリブレーション補正値として決定し、記録する。そして、基地局側にキャリブレーション終了通知を送信する(ステップS7)。
【0086】
そして、端末では、次回のキャリブレーション実行時まで、当該補正値を受信ウェイトに乗算することにより送信ウェイトを形成する。これにより、最適な送信指向性が形成される。
【0087】
一方、測定された平均DU比が所定値以上になっていないと端末で判断されると、補正値を変更してキャリブレーション処理を継続することを決定し、キャリブレーション継続要求を基地局側に送信する(ステップS7)。
【0088】
以後の動作は、上述のステップS3から7までの動作の繰返しであり、基地局側でキャリブレーション測定条件を再度確認し、条件が満たされていればキャリブレーション測定指示を端末側に送信し、データ通信中に上述のDU比の測定を繰返す。
【0089】
このように、基地局側で得られる平均DU比が所定値以上になるまで、端末側で受信ウェイトに乗算する補正値を更新しながら、キャリブレーション処理(平均DU比の測定)を継続する。そして最終的に平均DU比が所定値以上となったときの補正値をキャリブレーション補正値として決定する。
【0090】
なお、上述の方法では、所定時間内に測定されたDU比の平均値を基地局側で測定し端末側に送り返しているが、この実施の形態1によるDU比に基づくキャリブレーション方法はこのような方法に限定されるものではない。
【0091】
たとえば、図2のステップS4および5において端末側で補正値を変更しながらその都度基地局側で測定されたDU比を基地局から返送させ、ステップS4および5の過程で最適な(最大の)DU比が得られた補正値を決定するようにしてもよい。
【0092】
なお、基地局側からは測定された受信レベルそのものを端末側へ送信させ、端末側でDU比を算出するようにしてもよい。
【0093】
図2に示した例では、端末側においてキャリブレーションの起動条件が満たされたことが判断されたときに端末側でキャリブレーション動作を起動するように構成したものであるが、外部の基地局または他の端末の方でキャリブレーションを起動してもよい。
【0094】
図3は、キャリブレーションの対象となる端末の外部の無線装置としての基地局からキャリブレーションを起動する場合の手順を示すタイミング図である。なお、外部の他の端末から起動してもよいことはいうまでもない。
【0095】
まず、システム管理者などが基地局を操作してキャリブレーションの起動を指示する。基地局からは、この操作に応じて、制御チャネルCCHにおいて、キャリブレーション測定起動指示が端末に送信される(ステップS11)。
【0096】
この指示を受けた端末は、図2の例のステップS2で示したキャリブレーション測定条件について満たしているか判断し、満たしていれば、制御チャネルCCHにおいて、キャリブレーション測定要求を基地局に送信する(ステップS12)。
【0097】
この要求を受けた基地局は、図2の例のステップS3で示したキャリブレーション測定条件について満たしているか判断し、満たしていれば、制御チャネルCCHにおいて、キャリブレーション測定指示を端末に送信する(ステップS13)。
【0098】
以後、図2の例のステップS4および5で示したDU比の測定動作、およびステップS6および7で示した測定結果に基づく補正値の決定処理が実行されることになる(ステップS14および15)。これらのDU比の測定動作および補正値の決定動作については図2に関連してすでに説明したのでここでは繰返さない。
【0099】
次に、図4は、図1〜図3に示した実施の形態1による送信指向性キャリブレーションの対象となるアダプティブアレイ端末1の構成を示すブロック図である。
【0100】
図4を参照して、キャリブレーションの対象となるアダプティブアレイ端末1の構成について詳細に説明する。図4のアダプティブアレイ端末1は、複数本のアンテナ、たとえばアンテナ11,12からなるアレイアンテナを備えている。アンテナ11,12は、それぞれ、無線部21,22に接続される。無線部21および22は全く同じ構成を有している。
【0101】
無線部21は、スイッチ110と、送信部111と、受信部112と、D/A変換器113と、A/D変換器114とを備えている。
【0102】
受信時には、アンテナ11で受信した信号が受信部112に与えられるようにスイッチ110は切換わる。受信部112はローノイズアンプ等を含み、与えられた受信信号に対し、高周波から低周波への周波数変換、増幅などの各種のアナログ信号処理を施してA/D変換器114へ与える。A/D変換器114に与えられた受信信号はデジタル信号に変換されてユーザ信号処理部50に与えられる。
【0103】
一方、無線部22は、スイッチ120と、送信部121と、受信部122と、D/A変換器123と、A/D変換器124とを備えている。
【0104】
受信時には、アンテナ12で受信した信号が受信部122に与えられるようにスイッチ120は切換わる。受信部122はローノイズアンプ等を含み、与えられた受信信号に対し、高周波から低周波への周波数変換、増幅などの各種のアナログ信号処理を施してA/D変換器124へ与える。A/D変換器124に与えられた受信信号はデジタル信号に変換されてユーザ信号処理部50に与えられる。
【0105】
ユーザ信号処理部50は、後述する制御部70の制御下に、受信および送信の指向性パターンの形成に関する処理を実行する。すなわち、ユーザ信号処理部50は、後述するアダプティブアレイ処理により、当該端末と通信している基地局からのユーザ信号を抽出する。抽出された基地局からのユーザ信号は、モデム部60に与えられて、π/4シフトQPSK復調を含む所定の処理が施され、もとの信号に復元されて図示しないスピーカなどの音声再生装置に供給される。
【0106】
一方、送信時には、図示しないマイクなどの音声信号源から与えられた送信信号は、モデム部60を介してπ/4シフトQPSK変調を含む所定の処理が施され、ユーザ信号処理部50に与えられる。
【0107】
ユーザ信号処理部50は、後述するように、モデム部60から入力された送信信号を所望の端末へ送信できるように重み付けして(送信指向性を形成して)、無線部21のD/A変換器113および無線部22のD/A変換器123に与える。
【0108】
無線部21のD/A変換器113でアナログ信号に変換された送信信号は、ハイパワーアンプ等を含む送信部111に与えられ、そこで、低周波から高周波への周波数変換、送信出力レベルまでの増幅など、無線送信に必要な各種のアナログ信号処理が施される。なお、送信出力は、制御部70からの指示に応じてハイパワーアンプのゲインを制御することによって調整される。
【0109】
送信時には、スイッチ110は、送信部111とアンテナ11とを接続するように切換わり、送信部111で無線処理された送信信号は、アンテナ11から送信される。
【0110】
一方、無線部22のD/A変換器123でアナログ信号に変換された送信信号は、ハイパワーアンプ等を含む送信部121に与えられ、そこで、低周波から高周波への周波数変換、送信出力レベルまでの増幅など、無線送信に必要な各種のアナログ信号処理が施される。なお、送信出力は、制御部70からの指示に応じてハイパワーアンプのゲインを制御することによって調整される。
【0111】
送信時には、スイッチ120は、送信部121とアンテナ12とを接続するように切換わり、送信部121で無線処理された送信信号は、アンテナ12から送信される。
【0112】
制御部70は、送信指向性のキャリブレーション時に、モデム部60によって復調された受信信号に含まれる相手先の基地局または端末2からの情報にしたがって、キャリブレーション処理を実行するように、ユーザ信号処理部50を制御する。制御部70は、中央処理装置(CPU)、メモリなどで構成される。
【0113】
ユーザ信号処理部50はデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を用いてソフトウェアで実現される。ユーザ信号処理部50において、アダプティブアレイ処理によって指向性パターンを形成して信号の送受信を行なうのは、通話チャネル(TCH)においてのみであり、制御チャネル(CCH)においてはアダプティブアレイ処理は行なわず、PHSの規格に従って無線基地局の制御処理を実行する。
【0114】
図5は、図4に示したユーザ信号処理部50の構成を示す機能ブロック図である。図5を参照して、図4のアンテナ11に対応する無線部21の受信部112からA/D変換器114を介して与えられたデジタルの受信信号およびアンテナ12に対応する無線部22の受信部122からA/D変換器124を介して与えられたデジタルの受信信号がユーザ信号処理部50に与えられる。
【0115】
以下に、ユーザ信号処理部50に与えられたこれらのデジタル信号の処理について説明する。ユーザ信号処理部50に与えられたこれらの信号に対しては、図5に示す機能ブロック図に従って、当該アダプティブアレイ端末の図示しないDSPにより、ソフトウェア的にアダプティブアレイ処理が施される。
【0116】
図5を参照して、無線部21,22よりユーザ信号処理部50に与えられた2系統のデジタル受信信号からなる受信信号ベクトルx1(t),x2(t)は、乗算器MR1,MR2のそれぞれの一方入力に与えられるとともに、受信ウェイトベクトル計算機52に与えられる。
【0117】
受信ウェイトベクトル計算機52は、周知のアダプティブアレイアルゴリズムリズムにより、アンテナごとのウェイトからなるウェイトベクトルw1,w2を算出し、乗算器MR1,MR2のそれぞれの他方入力に与えて、対応するアンテナからの受信信号ベクトルとそれぞれ複素乗算する。加算器AD1によりその複素乗算結果の総和である受信信号が得られ、図4のモデム部60に与えられる。
【0118】
一方、送信ウェイトベクトル計算機54は、受信ウェイトベクトル計算機52からの受信ウェイトベクトルw1,w2を補正値乗算回路55で補正したウェイトベクトルを送信ウェイトベクトルとして出力する。
【0119】
図4のモデム部60からの送信信号が、乗算器MT1,MT2のそれぞれの一方入力端子に与えられ、乗算器MT1,MT2のそれぞれの他方入力端子には、送信ウェイトベクトル計算機54で得られた送信ウェイトベクトルが印加される。
【0120】
このように、ユーザ信号処理部50で送信ウェイトベクトルとの複素乗算で重み付けされたデジタル送信信号はそれぞれ無線部21,22に与えられる。無線部21,22に与えられたデジタル送信信号は、それぞれアンテナ11,12を介して送信される。
【0121】
次に、受信ウェイトベクトル計算機52による受信ウェイトベクトルの算出について説明する。ここで、たとえば所望基地局および干渉基地局の2つの基地局が存在し、そのうち所望基地局からの信号を所望信号、干渉基地局からの信号を干渉信号とする。
【0122】
まず、所望基地局からの信号をA(t),干渉基地局からの信号をB(t)とすると、図4のアンテナ11での受信信号x1(t)は、次式のように表わされる:
x1(t)=a1×A(t)+b1×B(t)
ここで、a1,b1は、リアルタイムで変化する係数である。
【0123】
次に、アンテナ12での受信信号x2(t)は、次式のように表わされる:
x2(t)=a2×A(t)+b2×B(t)
ここで、a2,b2も同様にリアルタイムで変化する係数である。
【0124】
上述の係数a1,a2は、所望基地局からの信号電波に対し、アンテナ11,12のそれぞれの受信信号の位相および振幅情報を表わし、係数b1,b2は、干渉基地局からの信号電波に対し、アンテナ11,12のそれぞれの受信信号の位相および振幅情報を表わしている。端末は移動しているため、これらの係数はリアルタイムで変化する。
【0125】
それぞれのアンテナで受信された信号x1(t),x2(t)は、アダプティブアレイを構成する乗算器MR1,MR2の一方入力にそれぞれ与えられ、これらの乗算器の他方入力には、受信ウェイトベクトル計算機52によってリアルタイムで計算されたそれぞれのアンテナでの受信信号に対する重みからなるウェイトベクトルw1,w2が印加される。
【0126】
したがって、乗算器MR1の出力は、w1×(a1A(t)+b1B(t))となり、乗算器MR2の出力は、w2×(a2A(t)+b2B(t))となる。
【0127】
これらの乗算器MR1,MR2の出力は、加算器AD1で加算され、その出力は次のようになる:
w1(a1A(t)+b1B(t))+w2(a2A(t)+b2B(t))
これを信号A(t)に関する項と信号B(t)に関する項とに分けると次のようになる:
(w1a1+w2a2)A(t)+(w1b1+w2b2)B(t)
ここで、受信ウェイトベクトル計算機52は、所望基地局および干渉基地局を識別し、所望基地局からの信号のみを抽出できるように、上記ウェイトw1,w2を計算する。たとえば、ユーザ信号処理部50の受信ウェイトベクトル計算機52は、所望基地局からの信号A(t)のみを抽出するために、係数a1,a2,b1,b2を定数とみなし、信号A(t)の係数が全体として1、信号B(t)の係数が全体として0となるように、ウェイトw1,w2を計算する。
【0128】
このようにウェイトw1,w2を設定することにより、加算器AD1の出力信号は下記のとおりとなる。
【0129】
出力信号=1×A(t)+0×B(t)=A(t)
上述のように、所望信号源である基地局からの所望信号A(t)に対する係数が1、干渉信号源である基地局からの干渉信号B(t)に対する係数が0となるような受信ウェイトw1,w2を求めて送信ウェイトとして用いることにより、所望信号源である基地局にビームが向けられ、干渉信号源である基地局にヌルが向けられた送信指向性が形成される。
【0130】
図4および図5に示す上述のアダプティブアレイ端末1において、この発明の実施の形態1による送信指向性のキャリブレーション処理がどのように行なわれるかについて以下に説明する。
【0131】
図1の(a)に示す外部の基地局または端末2のアンテナ2aが、上述の所望信号源(所望基地局)に相当し、アンテナ2bが干渉信号源(干渉基地局)に相当する。
【0132】
そして、キャリブレーションの対象であるアダプティブアレイ端末1のユーザ信号処理部50(図5)の受信ウェイトベクトル計算機52により、所望信号源(アンテナ2a)からの信号A(t)に対する係数が1、干渉信号源(アンテナ2b)からの信号B(t)に対する係数が0となるような受信ウェイトw1,w2を求め、送信ウェイトとして使用する。
【0133】
これにより、図1の(b)に示すように、所望信号源(アンテナ2a)にビームが向き、干渉信号源(アンテナ2b)にヌルが向いた、送信指向性パターンが形成される。
【0134】
ただし、受信ウェイトw1,w2は、補正値乗算回路55により、補正値が乗算される。図1〜図3に関連して説明したように、外部の基地局または端末2からは、測定されたDU比情報が端末1に送信されてくる。
【0135】
このDU比情報は、端末1のモデム部60で再現され、制御部70に与えられる。制御部70は、図2または図3で説明した手順で、外部の基地局または端末2から送られてきたDU比が所定値以上になったことを判定するまで、受信ウェイトw1,w2に乗算される補正値を更新するよう補正値乗算回路55を制御する。
【0136】
前述のようにアダプティブアレイ端末1に対し、キャリブレーションを行なう外部の無線装置2としては、少なくとも2本のアンテナを有する基地局(たとえばアダプティブアレイ基地局)または端末(たとえばアダプティブアレイ端末)が用いられる。アダプティブアレイ端末の構成は基本的に図4および図5に示した構成と同じなのでここでは説明を繰返さない。
【0137】
一方、少なくとも2本のアンテナを有するアダプティブアレイ基地局2の構成を図6に示す。
【0138】
図6を参照して、キャリブレーションを行なうためのアダプティブアレイ基地局2の構成について詳細に説明する。図6のアダプティブアレイ基地局は、少なくとも2本のアンテナ、たとえばアンテナ31,32からなるアレイアンテナを備えている。アンテナ31,32は、それぞれ、無線部41,42に接続される。無線部41および42は全く同じ構成を有している。
【0139】
無線部41は、スイッチ210と、送信部211と、受信部212と、D/A変換器213と、A/D変換器214とを備えている。
【0140】
受信時には、アンテナ31で受信した信号が受信部212に与えられるようにスイッチ210は切換わる。受信部212はローノイズアンプ等を含み、与えられた受信信号に対し、高周波から低周波への周波数変換、増幅などの各種のアナログ信号処理を施してA/D変換器214へ与える。A/D変換器214に与えられた受信信号はデジタル信号に変換されてユーザ信号処理部80に与えられる。
【0141】
一方、無線部42は、スイッチ220と、送信部221と、受信部222と、D/A変換器223と、A/D変換器224とを備えている。
【0142】
受信時には、アンテナ32で受信した信号が受信部222に与えられるようにスイッチ220は切換わる。受信部222はローノイズアンプ等を含み、与えられた受信信号に対し、高周波から低周波への周波数変換、増幅などの各種のアナログ信号処理を施してA/D変換器224へ与える。A/D変換器224に与えられた受信信号はデジタル信号に変換されてユーザ信号処理部80に与えられる。
【0143】
ユーザ信号処理部80は、図5に示したユーザ信号処理部50を、当該アダプティブアレイ基地局に空間多重接続する複数のユーザごとに対応して複数個並列に設けたものであり、A/D変換器214,224の出力は、これらの複数のユーザ信号処理部に共通に与えられる。ユーザ信号処理部50については図5を参照して詳細に説明したので、ユーザ信号処理部80についてのこれ以上の説明は省略する。
【0144】
ユーザ信号処理部80は、上述のように、図5に関連して説明したアダプティブアレイ処理により、当該アダプティブアレイ基地局2に接続している端末からの受信信号を分離抽出する。分離抽出された端末からの受信信号は、モデム部90に与えられて、π/4シフトQPSK復調を含む所定の処理が施され、もとの信号に復元されて図示しない公衆回線網に供給される。
【0145】
一方、送信時には、図示しない公衆回線網から与えられた送信信号は、モデム部90を介してπ/4シフトQPSK変調を含む所定の処理が施され、ユーザ信号処理部80に与えられる。
【0146】
ユーザ信号処理部80は、モデム部90から入力された送信信号を所望の端末へ送信できるように重み付けして(送信指向性を形成して)、無線部41のD/A変換器213および無線部42のD/A変換器223に与える。
【0147】
無線部41のD/A変換器213でアナログ信号に変換された送信信号は、ハイパワーアンプ等を含む送信部211に与えられ、そこで、低周波から高周波への周波数変換、送信出力レベルまでの増幅など、無線送信に必要な各種のアナログ信号処理が施される。なお、送信出力は、図示しない制御部からの指示に応じてハイパワーアンプのゲインを制御することによって調整される。
【0148】
送信時には、スイッチ210は、送信部211とアンテナ31とを接続するように切換わり、送信部211で無線処理された送信信号は、アンテナ31から送信される。
【0149】
一方、無線部42のD/A変換器223でアナログ信号に変換された送信信号は、ハイパワーアンプ等を含む送信部221に与えられ、そこで、低周波から高周波への周波数変換、送信出力レベルまでの増幅など、無線送信に必要な各種のアナログ信号処理が施される。なお、送信出力は、図示しない制御部からの指示に応じてハイパワーアンプのゲインを制御することによって調整される。
【0150】
送信時には、スイッチ220は、送信部221とアンテナ32とを接続するように切換わり、送信部221で無線処理された送信信号は、アンテナ32から送信される。
【0151】
無線部41の受信部212および無線部42の受信部222は、それぞれアンテナ31および32で受信した信号の電力レベルを測定する機能を有しており、これらの受信部で測定された電力レベルは、DU比測定部100に与えられる。
【0152】
図6に示したアダプティブアレイ基地局2を用いて、この発明の実施の形態1による送信指向性のキャリブレーション処理がどのように行われるかについて説明する。
【0153】
図1の(a)に示すアダプティブアレイ基地局2のアンテナ2aが、たとえば図6のアンテナ31に相当し、アンテナ2bが、たとえば図6のアンテナ32に相当する。図6の基地局2のアンテナ31からは端末1にとっての所望信号が送信され、アンテナ32からは端末1にとっての干渉信号が送信される。
【0154】
そして、図1の(b)に示すように、端末1から向けられたビームの信号をアンテナ31で受信し、その電力レベルが受信部212で測定される。一方、端末1から向けられたヌルの信号をアンテナ32で受信し、その電力レベルが受信部222で測定される。
【0155】
これらの測定された受信電力レベルは、DU比測定部100に与えられ、DU比測定部100は、前述のように所定期間にわたるDU比の平均値を求め、モデム部90に与える。
【0156】
モデム部90は、このDU比測定情報を送信信号に挿入して、端末1に送信する。端末1は、このDU比測定情報に基づいて前述のように補正値乗算回路55a(図5)を制御する。
【0157】
次に、この発明の実施の形態1による送信指向性キャリブレーション方法のうち、図7は、図4および図5に示したアダプティブアレイ端末1側でソフトウェアで実行される処理を示すフロー図であり、図8は、図6に示したアダプティブアレイ基地局2側で実行される処理を示すフロー図である。
【0158】
図7および図8を参照して、実施の形態1によるキャリブレーション処理について詳細に説明する。なお、この例では、端末1側でキャリブレーションを起動するものであるが、図3に示したように、基地局2側でキャリブレーションを起動してもよい。
【0159】
まず、端末1側で、図2に関連して説明したキャリブレーションの起動条件が満たされているか否かが判定される(図7のステップS101)。起動条件が満たされていると判定されれば、端末1側で、図2に関連して説明したキャリブレーションの測定条件が満たされているか否かが判定される(図7のステップS102)。
【0160】
測定条件が満たされていると判定されれば、端末1から基地局2へキャリブレーション測定要求が送信される(図7のステップS103)。
【0161】
基地局2側では、端末1からのキャリブレーション測定要求を受信したか否かが判定され(図8のステップS201)、受信したと判定されると、図2に関連して説明したキャリブレーションの測定条件が満たされているか否かが判定される(図8のステップS202)。
【0162】
測定条件が満たされていると判定されれば、基地局2から端末1へキャリブレーション測定指示が送信される(図8のステップS203)。
【0163】
端末1側では、メッセージ受信タイマが満了するまでに(図7のステップS105)、基地局2からのキャリブレーション測定指示を受信したか否かが判定され(図7のステップS104)、満了するまでに受信しなければステップS103に戻ってキャリブレーション測定要求を再度基地局2に送信する。
【0164】
メッセージ受信タイマが満了するまでに(図7のステップS105)、基地局2からのキャリブレーション測定指示を受信したことが判定されると(図7のステップS104)、端末1と基地局2とのデータ通信中に、図1および図2に関連して説明したように、基地局2によるデータ送信および受信信号のDU比の測定(図8のステップS204)、および端末1による受信ウェイトの補正値を更新しながらのアレイ送受信(図7のステップS106)が実行される。
【0165】
このような端末1と基地局2との間の送受信は、端末1および基地局2の双方において、キャリブレーション測定タイマが満了するまで実行される(図7のステップS107および図8のステップS205)。
【0166】
基地局2側では、キャリブレーション測定タイマが満了するまでの期間中に測定されたDU比の平均値が算出され、端末1に送信される(図8のステップS206)。
【0167】
端末1側では、基地局2からDU比の測定結果(平均値)を受信したか否かが判定され(図7のステップS108)、受信したことが判定されると、そのDU比の記録および判定が実行される(図7のステップS109)。
【0168】
そして、受信したDUの測定結果が所定のDU比に達しているか否かが判定され(図7のステップS110)、達していないことが判断されれば、ステップS103のキャリブレーション測定要求に戻り、ステップS106のアレイ送受信時に受信ウェイトの補正値を更新して、基地局2によるDU比の測定をやり直す。
【0169】
端末1においてこのように、測定されたDU比が所定のDU比に達したと判定されるまで(図7のステップS110)、端末1および基地局2によるキャリブレーション処理は継続される。
【0170】
測定されたDU比が所定のDU比に達したと判定されると(図7のステップS110)、端末1から基地局2にキャリブレーション終了通知が送信され(図7のステップS111)、既存のキャリブレーション補正値が、ステップS106のアレイ送受信時に変えられていた補正値で更新(書換え)される(図7のステップS112)。そして端末1は処理を終了する。
【0171】
基地局2側では、キャリブレーション終了通知が受信されたことが判定されるまでキャリブレーション処理が実行され、キャリブレーション終了通知が受信されたことが判定されると(図8のステップS207)、基地局2は処理を終了する。
【0172】
以上のように、この発明の実施の形態1では、少なくとも2本のアンテナを有する基地局または他の端末2から、キャリブレーションの対象となるアダプティブアレイ端末1に所望信号および干渉信号を送り、アダプティブアレイ端末1のアレイアンテナのすべてのアンテナでこれらの信号を一度にアレイ受信するように構成している。
【0173】
したがって、キャリブレーションの対象となるアダプティブアレイ端末1において、アンテナの組合せを変えながらキャリブレーションを繰返す必要がなくなり、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、またすべてのアンテナで受信するため受信性能が向上し、キャリブレーションの精度を高めることができる。
【0174】
また、キャリブレーションの対象となる端末1からある程度離れた位置にある外部の基地局または他の端末からキャリブレーション用の信号を受信しているので、送受信信号の電力制御が簡略化され、また外部の基地局または他の端末2に対する送信指向性パターンの分解能を向上させることができる。特に、実施の形態1で送信指向性の精度を示す指標として採用されたDU比は、送信指向性パターンのヌルの深さを示すデータとして瞬時に求まるものであり、キャリブレーションに要する時間をさらに短縮させるものである。
【0175】
[実施の形態2]
図9は、この発明の実施の形態2の端末の送信指向性のキャリブレーション方法の原理を模式的に示す概念図である。
【0176】
図1に示した実施の形態1では、少なくとも2本のアンテナを有する外部の基地局または端末との信号のやり取りにより、アダプティブアレイ端末のキャリブレーション処理を行なうものであるが、図9に示す実施の形態2では、1本アンテナの従来の端末または基地局との信号のやり取りにより、アダプティブアレイ端末の送信指向性のキャリブレーション処理を行なうものである。
【0177】
図9において、無線装置3は、キャリブレーション処理の対象となるアダプティブアレイ端末であり、無線装置4は、端末3のキャリブレーションを行なうための1本アンテナ端末である。
【0178】
以下に、図9を参照して、実施の形態2による送信指向性のキャリブレーション方法の原理について説明する。
【0179】
まず、図9の(a)に示すように、外部の端末4の1本のアンテナ4aから、端末3において所望信号として扱われる所定周波数の既知の信号が送信される。
【0180】
この送信信号は、アダプティブアレイ端末3のアレイアンテナを構成する少なくとも2本のアンテナ3a,3bによってアレイ受信され、アダプティブアレイ処理の結果得られる受信ウェイトに基づいて、図示するような受信指向性パターンで、アンテナ4aからの所望信号が分離抽出される。
【0181】
アダプティブアレイ端末3では、アレイ受信された受信信号に基づいて、後述する方法で受信応答ベクトルを計算し、さらに受信応答ベクトルの方向を干渉源とみなして当該端末4のアンテナ4aに強制的にヌルを向ける強制ヌルウェイトを計算する。
【0182】
得られた強制ヌルウェイトにはある補正値が乗算されて後述する送信指向性の形成に用いられる。
【0183】
次に、図9の(b)に示すように、アダプティブアレイ端末3は、計算され、上述の補正値が乗算された強制ヌルウェイトを用いて、図示するような送信指向性パターンを形成し、外部の端末4に向かって信号を送信する。図示するように、強制ヌルウェイトに基づいて形成された送信指向性パターンは、端末4のアンテナ4aにヌルが向けられており、仮に用いた受信応答ベクトルの方向にビームが向けられている。
【0184】
外部の端末4は、アンテナ4aで、端末3からのヌルの信号受信電力を測定する。
【0185】
端末3の送信指向性パターンの精度が高いほど、アンテナ4aに対してヌルがより正確に向くことになり(すなわちヌルが深くなり)、アンテナ4bでの受信電力は低下することになる。
【0186】
このことから、外部の端末4で測定された受信電力レベルは、送信指向性が正確に形成されているかを示す指標として用いることができる。すなわち、端末4で測定される受信電力が最小となるように、強制ヌルウェイトに対する補正値を決定すれば、端末3の送信指向性のキャリブレーションが行なわれたことになる。
【0187】
図10は、図9に示した実施の形態2による送信指向性のキャリブレーション方法の手順を示すタイミング図である。
【0188】
図10に示した実施の形態2によるタイミング図は、図2に示した実施の形態1によるタイミング図と以下の点を除いて同じであり、共通する手順についての説明は省略する。
【0189】
まず、1本アンテナ端末4側からキャリブレーション用の信号がアダプティブアレイ基地局3に送信される(ステップS24)。より具体的には、図9の(a)に示したように、端末4の1本のアンテナ4aから所望信号が送信される。
【0190】
アダプティブアレイ端末3側ではこのキャリブレーション用の信号をアレイ受信する(ステップS25)。より具体的には、アダプティブアレイ端末3は、アダプティブアレイ処理により、図9の(a)に示したような受信指向性パターンで端末4からの信号を受信する。
【0191】
アダプティブアレイ端末3側では、アレイ受信した信号を復調し、受信応答ベクトルを求める。そして、受信応答ベクトルに基づいて、端末4のアンテナ4aに強制的にヌルを向ける強制ヌルウェイトを形成する(ステップS25)。このように形成された強制ヌルウェイトにある補正値を乗算して送信ウェイトとし、図9の(b)に示すような送信指向性パターンを形成して、すなわち端末4のアンテナ4aにヌルを向けかつ受信応答ベクトルの方向にビームを向けた状態で、信号を送信する(ステップS25)。ここで、補正値の初期値としては、たとえば前回のキャリブレーション時に決定されていた既存の補正値を用いるものとする。
【0192】
端末4側では、このようにアダプティブアレイ端末3から送信された信号を受信し、1本アンテナにおける受信信号電力レベルを測定する(ステップS24)。より具体的には、図9の(b)に示すように、端末4のアンテナ4aで受信したヌルの受信電力レベルを測定し、端末4側のメモリに測定結果を記憶する。
【0193】
このようなステップS24および25による受信電力レベルの測定動作を、通話チャネルのデータ通信中に、所定の時間(キャリブレーション測定要求によって基地局から指定された時間)にわたって繰返し実行する。
【0194】
そして、所定時間が経過すると、その時間内に端末4側で測定された受信電力レベルの平均値が端末4側で計算され、その結果がアダプティブアレイ端末3側に通知される(ステップS26)。
【0195】
アダプティブアレイ端末3側はこの受信電力レベル測定結果を受信し、所定の補正値に対応する受信電力レベルとしてメモリに記憶する(ステップS27)。
【0196】
図9に関連して説明したように、送信指向性が良好なほど、端末4の1本アンテナ4aに対する送信指向性パターン形状におけるヌルは深くなり、端末4側で測定される受信電力レベルは低くなる。
【0197】
アダプティブアレイ端末3は、複数の所定の補正値ごとに、上述のステップS24〜26の受信レベルの測定を繰返し、その結果を記憶する。そして、すべての補正値に対して受信電力レベルの測定が終了すれば、最低の受信レベルに対応する補正値を最終のキャリブレーション補正値として決定し、記録する。そして、端末4側にキャリブレーション終了通知を送信する(ステップS27)。
【0198】
複数の所定の補正値のすべてに対して受信電力レベルの測定が終了していない場合は、アダプティブアレイ端末3は、補正値を次の値に変更してキャリブレーション処理を継続することを決定し、キャリブレーション継続要求を端末側に送信する(ステップS27)。
【0199】
このように、アダプティブアレイ端末3側で強制ヌルウェイトに乗算する補正値を更新しながら、キャリブレーション処理(平均受信電力レベルの測定)を継続する。そして最終的に平均受信電力レベルが最低となったときの補正値をキャリブレーション補正値として決定する。
【0200】
そして、アダプティブアレイ端末3では、次回のキャリブレーション実行時まで、当該補正値を強制ヌルウェイトに乗算することにより送信ウェイトを形成する。これにより、最適な送信指向性が形成される。
【0201】
なお、上述の方法では、所定時間内に測定された受信電力レベルの平均値を端末側で測定しアダプティブアレイ端末3側に送り返しているが、この実施の形態2による受信電力レベルに基づくキャリブレーション方法はこのような方法に限定されるものではない。
【0202】
たとえば、アダプティブアレイ端末3側で補正値を変更しながらその都度端末4側で測定された受信電力レベルを端末4から返送させ、最適な(最小の)受信電力レベルが得られた補正値を決定するようにしてもよい。
【0203】
図10に示した例では、アダプティブアレイ端末3側においてキャリブレーションの起動条件が満たされたことが判断されたときにアダプティブアレイ端末3側でキャリブレーション動作を起動するように構成したものであるが、外部の端末4の方でキャリブレーションを起動してもよい。
【0204】
次に、図11は、図9および図10に示した実施の形態2による送信指向性キャリブレーションの対象となるアダプティブアレイ端末3の構成を示すブロック図である。
【0205】
図11に示したアダプティブアレイ端末3は、以下の点を除いて、図4に示したアダプティブアレイ端末1と同じであり、共通する部分については説明を省略する。
【0206】
すなわち、図4の実施の形態1のアダプティブアレイ端末1におけるユーザ信号処理部50および制御部70が、図11の実施の形態2によるアダプティブアレイ端末3では、ユーザ信号処理部130および制御部140に置換えられている。
【0207】
図12は、図11に示したユーザ信号処理部130の構成を示す機能ブロック図である。図12を参照して、図11のアンテナ11に対応する無線部21の受信部112からA/D変換器114を介して与えられたデジタルの受信信号およびアンテナ12に対応する無線部22の受信部122からA/D変換器124を介して与えられたデジタルの受信信号がユーザ信号処理部130に与えられる。
【0208】
以下に、ユーザ信号処理部130に与えられたこれらのデジタル信号の処理について説明する。ユーザ信号処理部130に与えられたこれらの信号に対しては、図12に示す機能ブロック図に従って、当該アダプティブアレイ端末の図示しないDSPにより、ソフトウェア的に信号処理が施される。
【0209】
図12を参照して、無線部21,22よりユーザ信号処理部130に与えられた2系統のデジタル受信信号からなる受信信号ベクトルx1(t),x2(t)は、乗算器MR1,MR2のそれぞれの一方入力に与えられるとともに、受信ウェイトベクトル計算機132および受信応答ベクトル推定部135に与えられる。
【0210】
受信ウェイトベクトル計算機132は、周知のアダプティブアレイアルゴリズムリズムにより、アンテナごとのウェイトからなるウェイトベクトルw1,w2を算出し、乗算器MR1,MR2のそれぞれの他方入力に与えて、対応するアンテナからの受信信号ベクトルとそれぞれ複素乗算する。加算器AD1によりその複素乗算結果の総和である受信信号が得られ、モデム部60に与えられる。
【0211】
一方、受信応答ベクトル推定部135は、受信信号ベクトルx1(t),x2(t)と、図11のモデム部60で復調された所望基地局の信号とに基づいて、後述する方法で、所望基地局の信号の受信応答ベクトルを計算し、強制ヌルウェイト推定部137に与える。強制ヌルウェイト推定部137は、後述する方法で、所望基地局にヌルを向ける強制ヌルウェイトベクトルを推定し、補正値乗算回路138に与える。補正値乗算回路138は、強制ヌルウェイトベクトルに補正値を乗算して補正したものを送信ウェイトベクトル計算機134に与える。
【0212】
送信ウェイトベクトル計算機134には、受信ウェイトベクトル計算機132で計算された受信ウェイトベクトルも与えられる。
【0213】
図11のモデム部60からの送信信号が、乗算器MT1,MT2のそれぞれの一方入力端子に与えられ、乗算器MT1,MT2のそれぞれの他方入力端子には、送信ウェイトベクトル計算機134から、補正された強制ヌルウェイトベクトルまたは受信ウェイトベクトルが、制御部140からの制御信号に応じて、送信ウェイトベクトルとして印加される。
【0214】
アダプティブアレイ端末のユーザ信号処理部として通常の送受信動作を行なうときには受信ウェイトベクトルが送信ウェイトべクトルとして選択され、送信指向性のキャリブレーション時には補正された強制ヌルウェイトベクトルが送信ウェイトとして選択される。
【0215】
このように、ユーザ信号処理部130で送信ウェイトベクトルとの複素乗算で重み付けされたデジタル送信信号はそれぞれ無線部21,22に与えられる。無線部21,22に与えられたデジタル送信信号は、それぞれアンテナ11,12を介して送信される。
【0216】
次に、受信応答ベクトル推定部135による受信応答ベクトルの推定について説明する。まず、受信応答ベクトルの計算の基本的な考え方について説明する。
【0217】
アンテナ11,12における受信信号x1(t),x2(t)が実施の形態1に関連して説明した式で表わされるとき、所望基地局の受信応答ベクトルHaは、次式で表わされる:
Ha=[a1,a2]T(Tは転置)
ここで、A(t)とB(t)とには相関がないものとする。また、参照信号としてA(t)を生成するものとする。
【0218】
受信応答ベクトル推定部135は、受信信号x1(t)に参照信号A*(t)(*は複素共役)を乗じてアンサンブル平均を取ることにより、次式に基づいてa1を算出する:
E[x1(t)A*(t)]
=E[a1A(t)A*(t)]+E[b1B(t)A*(t)]
≒a1
ここで、同一信号間のアンサンブル平均は1、相関が無い信号間のアンサンブル平均はほぼ0となることから、E[A(t)A*(t)]=1、E[B(t)A*(t)]≒0である。
【0219】
次に、受信信号x2(t)に対して同様の計算をすることによってa2を算出する:
E[x2(t)A*(t)]
=E[a2A(t)A*(t)]+E[b2B(t)A*(t)]
≒a2
以上により、所望基地局の受信応答ベクトルを計算することができる。
【0220】
次に、強制ヌルウェイト推定部137は、所望基地局の受信応答ベクトルを受け、所望基地局にヌルが向くようなウェイトベクトル(以下、強制ヌルウェイトベクトル)を計算する。以下に、強制ヌルウェイトベクトルの計算の基本的な考え方について説明する。
【0221】
前述のように、アダプティブアレイの出力信号を信号A(t)に関する項と信号B(t)に関する項とに分けると、次式のように表すことができる:
(w1a1+w2a2)A(t)+(w1b1+w2b2)B(t)
このとき、所望基地局からの信号A(t)を抑圧するために、信号A(t)の係数が全体として0となるように、重みw1,w2を計算する:
w1a1+w2a2=0
受信応答ベクトル計算機132によって、a1,a2は既知であるから、上記の式により直接w1,w2を計算することができる。このように計算されたウェイトを強制ヌルウェイトと称する。
【0222】
送信指向性のキャリブレーション時には、アダプティブアレイを構成する乗算器MT1,MT2の一方入力にはそれぞれモデム部60から送信信号が入力され、これらの乗算器の他方入力には強制ヌルウェイト推定部137で計算され、補正値乗算回路138で補正された強制ヌルウェイトベクトルが入力される。
【0223】
図11および図12に示す上述のアダプティブアレイ端末3において、この発明の実施の形態2による送信指向性のキャリブレーション処理がどのように行なわれるかについて以下に説明する。
【0224】
図9の(a)に示す外部の端末4のアンテナ4aが、上述の所望信号源(所望基地局)に相当する(実施の形態2では干渉基地局に相当する信号源は存在しない)。
【0225】
そして、キャリブレーションの対象であるアダプティブアレイ端末3のユーザ信号処理部130(図12)の受信応答ベクトル推定部135および強制ヌルウェイト推定部137により、所望信号源(アンテナ4a)からの信号A(t)に対する係数が0となるような強制ヌルウェイトw1,w2を求め、補正値乗算回路138で補正値を乗算したものを送信ウェイトとして使用する。
【0226】
これにより、図9の(b)に示すように、所望信号源(アンテナ4a)にヌルが向いた、送信指向性パターンが形成される。
【0227】
図9および図10に関連して説明したように、外部の端末4からは、測定された受信信号電力レベルが端末3に送信されてくる。
【0228】
この受信電力レベルは、端末3のモデム部60で再現され、制御部140に与えられる。制御部140は、図10で説明した手順で、強制ヌルウェイトw1,w2に乗算される補正値を更新するよう補正値乗算回路138を制御する。
【0229】
前述のようにアダプティブアレイ基地局3に対し、キャリブレーションを行なう外部の無線装置2としては、1本のアンテナを有する端末に用いられる。
【0230】
この1本のアンテナを有する端末(以下、1本アンテナ端末)4の構成を図13に示す。
【0231】
図13を参照して、キャリブレーションを行なうための1本アンテナ端末4の構成について詳細に説明する。図13の1本アンテナ端末は、アンテナ31を備えている。アンテナ31は無線部41に接続される。
【0232】
無線部41は、スイッチ210と、送信部211と、受信部212と、D/A変換器213と、A/D変換器214とを備えている。
【0233】
受信時には、アンテナ31で受信した信号が受信部212に与えられるようにスイッチ210は切換わる。受信部212はローノイズアンプ等を含み、与えられた受信信号に対し、高周波から低周波への周波数変換、増幅などの各種のアナログ信号処理を施してA/D変換器214へ与える。A/D変換器214に与えられた受信信号はデジタル信号に変換されてユーザ信号処理部150に与えられる。ユーザ信号処理部150の内容については特に限定されない。
【0234】
ユーザ信号処理部150は、所定の処理により当該端末4に接続している無線装置からの受信信号を抽出する。抽出された受信信号は、モデム部90に与えられて、π/4シフトQPSK復調を含む所定の処理が施され、もとの信号に復元されて図示しないスピーカなどの音声再生装置に供給される。
【0235】
一方、送信時には、図示しないマイクなどの音声信号源から与えられた送信信号は、モデム部90を介してπ/4シフトQPSK変調を含む所定の処理が施され、ユーザ信号処理部150に与えられる。
【0236】
ユーザ信号処理部150は、モデム部90から入力された送信信号に所定の処理を施して、無線部41のD/A変換器213に与える。
【0237】
無線部41のD/A変換器213でアナログ信号に変換された送信信号は、ハイパワーアンプ等を含む送信部211に与えられ、そこで、低周波から高周波への周波数変換、送信出力レベルまでの増幅など、無線送信に必要な各種のアナログ信号処理が施される。なお、送信出力は、図示しない制御部からの指示に応じてハイパワーアンプのゲインを制御することによって調整される。
【0238】
送信時には、スイッチ210は、送信部211とアンテナ31とを接続するように切換わり、送信部211で無線処理された送信信号は、アンテナ31から送信される。
【0239】
無線部41の受信部212は、アンテナ31で受信した信号の電力レベルを測定する機能を有しており、これらの受信部で測定された電力レベルは、受信レベル平均化部160で平均化され、モデム部90に与えられる。
【0240】
図13に示した1本アンテナ端末4を用いて、この発明の実施の形態2による送信指向性のキャリブレーション処理がどのように行われるかについて説明する。
【0241】
図9の(a)に示す1本アンテナ端末4のアンテナ4aが、たとえば図13のアンテナ31に相当する。図13の端末4のアンテナ31からは端末3にとっての所望信号が送信される。
【0242】
そして、図9の(b)に示すように、端末3から向けられたヌルの信号をアンテナ31で受信し、その電力レベルが受信部212で測定される。
【0243】
測定された受信電力レベルは、受信レベル平均化部160へ与えられ、受信レベル平均化部160は、前述のように所定期間にわたる受信レベルの平均値を求め、モデム部90に与える。
【0244】
モデム部90は、この受信レベル測定情報を送信信号に挿入して、端末3に送信する。端末3は、この受信レベル測定情報に基づいて前述のように補正値乗算回路138(図12)を制御する。
【0245】
次に、この発明の実施の形態2による送信指向性キャリブレーション方法のうち、図14は、図11および図12に示したアダプティブアレイ端末3側でソフトウェアで実行される処理を示すフロー図であり、図15は、図13に示した1本アンテナ端末4側で実行される処理を示すフロー図である。
【0246】
図14および図15を参照して、実施の形態2によるキャリブレーション処理について詳細に説明する。なお、この例では、アダプティブアレイ端末3側でキャリブレーションを起動するものであるが、端末4側でキャリブレーションを起動してもよい。
【0247】
まず、アダプティブアレイ端末3側で、図10に関連して説明したキャリブレーションの起動条件が満たされているか否かが判定される(図14のステップS301)。起動条件が満たされていると判定されれば、端末3側で、図10に関連して説明したキャリブレーションの測定条件が満たされているか否かが判定される(図14のステップS302)。
【0248】
測定条件が満たされていると判定されれば、端末3から端末4へキャリブレーション測定要求が送信される(図14のステップS303)。
【0249】
端末4では、端末3からのキャリブレーション測定要求を受信したか否かが判定され(図15のステップS401)、受信したと判定されると、図10に関連して説明したキャリブレーションの測定条件が満たされているか否かが判定される(図15のステップS402)。
【0250】
測定条件が満たされていると判定されれば、端末4から端末3へキャリブレーション測定指示が送信される(図15のステップS403)。
【0251】
端末3側では、メッセージ受信タイマが満了するまでに(図14のステップS305)、端末4からのキャリブレーション測定指示を受信したか否かが判定され(図14のステップS304)、満了するまでに受信しなければステップS303に戻ってキャリブレーション測定要求を再度端末4に送信する。
【0252】
メッセージ受信タイマが満了するまでに(図14のステップS305)、端末4からのキャリブレーション測定指示を受信したことが判定されると(図14のステップS304)、端末3と端末4とのデータ通信中に、図9および図10に関連して説明したように、端末4によるデータ送信および受信信号の受信電力レベルの測定(図15のステップS404)、および端末3による強制ヌルウェイトに所定の補正値を乗算したアレイ送受信(図14のステップS306)が実行される。
【0253】
このような端末3と端末4との間の送受信は、端末3および端末4の双方において、キャリブレーション測定タイマが満了するまで実行される(図14のステップS307および図15のステップS405)。
【0254】
端末4側では、キャリブレーション測定タイマが満了するまでの期間中に測定された電力レベルの平均値が算出され、端末3に送信される(図15のステップS406)。
【0255】
端末3側では、端末4から受信電力レベルの測定結果(平均値)を受信したか否かが判定され(図14のステップS308)、受信したことが判定されると、その受信レベルの記録が実行される(図14のステップS309)。
【0256】
そして、複数の所定の補正値での受信レベルの記録がすべて終了したか否かが判定され(図14のステップS310)、終了していないことが判断されれば、ステップS303のキャリブレーション測定要求に戻り、ステップS306のアレイ送受信時に強制ヌルウェイトに乗算する補正値を更新して、端末4による受信レベルの測定をやり直す。
【0257】
端末3においてこのように、所定の補正値のすべてに対して受信レベルが測定されたと判定されるまで(図14のステップS310)、端末3および端末4によるキャリブレーション処理は継続される。
【0258】
所定の補正値のすべてに対して受信レベルが測定されたと判定されると(図14のステップS310)、端末3から端末4にキャリブレーション終了通知が送信される(図14のステップS311)。そして、すべての補正値に対する受信レベルのうち、最低の受信レベルに対応する補正値がキャリブレーション補正値として決定され、既存のキャリブレーション補正値が、この決定された補正値で更新(書換え)される(図14のステップS312)。そして端末3は処理を終了する。
【0259】
端末4側では、キャリブレーション終了通知が受信されたことが判定されるまでキャリブレーション処理が実行され、キャリブレーション終了通知が受信されたことが判定されると(図15のステップS407)、端末4は処理を終了する。
【0260】
以上のように、この発明の実施の形態2では、1本のアンテナを有する端末4から、キャリブレーションの対象となるアダプティブアレイ端末3に所望信号を送り、アダプティブアレイ端末3のアレイアンテナのすべてのアンテナでこれらの信号を一度にアレイ受信するように構成している。
【0261】
したがって、キャリブレーションの対象となるアダプティブアレイ端末3において、アンテナの組合せを変えながらキャリブレーションを繰返す必要がなくなり、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、またすべてのアンテナで受信するため受信性能が向上し、キャリブレーションの精度を高めることができる。
【0262】
また、キャリブレーションの対象となる端末3からある程度離れた位置にある外部の端末4からキャリブレーション用の信号を受信しているので、送受信信号の電力制御が簡略化され、また外部の端末4に対する送信指向性パターンの分解能を向上させることができる。
【0263】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0264】
【発明の効果】
以上のように、この発明では、外部の基地局または他の端末から、キャリブレーションの対象となる端末にキャリブレーション用の信号を送り、キャリブレーションの対象となる端末のアレイアンテナのすべてのアンテナでこれらの信号を一度にアレイ受信するように構成している。
【0265】
したがって、キャリブレーションに要する時間を著しく短縮することができ、送受信信号の電力制御を簡略化することができ、さらにキャリブレーションの精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるキャリブレーション方法の原理を模式的に示す概念図である。
【図2】 この発明の実施の形態1によるキャリブレーション方法の手順を示すタイミング図である。
【図3】 この発明の実施の形態1によるキャリブレーション方法の手順の他の例を示すタイミング図である。
【図4】 この発明の実施の形態1によるキャリブレーションの対象となる端末の構成を示すブロック図である。
【図5】 図4に示すユーザ信号処理部50の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】 この発明の実施の形態1によるキャリブレーションを行なう基地局の構成を示すブロック図である。
【図7】 この発明の実施の形態1によるキャリブレーションの対象となる端末の動作を示すフロー図である。
【図8】 この発明の実施の形態1によるキャリブレーションを行なう基地局の動作を示すフロー図である。
【図9】 この発明の実施の形態2によるキャリブレーション方法の原理を模式的に示す概念図である。
【図10】 この発明の実施の形態2によるキャリブレーション方法の手順を示すタイミング図である。
【図11】 この発明の実施の形態2によるキャリブレーションの対象となる端末の構成を示すブロック図である。
【図12】 図11に示すユーザ信号処理部130の構成を示す機能ブロック図である。
【図13】 この発明の実施の形態2によるキャリブレーションを行なう端末の構成を示すブロック図である。
【図14】 この発明の実施の形態2によるキャリブレーションの対象となる端末の動作を示すフロー図である。
【図15】 この発明の実施の形態2によるキャリブレーションを行なう端末の動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
1,3 アダプティブアレイ端末、2 アダプティブアレイ基地局、4 1本アンテナ端末、11,12,31,32 アンテナ、21,22,41,42 無線部、50,80,130,150 ユーザ信号処理部、60,90 モデム部、70,140 制御部、100 DU比測定部、160 受信レベル平均化部。
Claims (16)
- 複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置であって、
少なくとも2本のアンテナを有する特定の単一の無線装置の別々のアンテナから送信されてくる所望信号および干渉信号を受信して、前記受信した所望信号および干渉信号に基づいて前記所望信号を送信したアンテナの方向にビームを向けかつ前記干渉信号を送信したアンテナの方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算する手段と、
前記計算されたウェイト情報を補正する手段と、
前記補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで前記特定の単一の無線装置に所定の信号を送信する手段と、
前記特定の単一の無線装置において、前記所望信号を送信したアンテナで受信した受信レベルと前記干渉信号を送信したアンテナで受信した受信レベルとの受信レベルに関する情報を前記特定の単一の無線装置から受信して、前記受信した受信レベル情報に基づいて前記特定の単一の無線装置における受信レベルに関する情報が最適となる前記ウェイト情報の補正の値を決定する手段とを備えた、無線端末装置。 - 前記受信レベルに関する情報は、前記所望信号を送信したアンテナで受信した前記ビームの受信レベルと前記干渉信号を送信したアンテナで受信した前記ヌルの受信レベルとの受信レベル比である、請求項1に記載の無線端末装置。
- 前記ウェイト情報を計算する手段は、前記所望信号を受信するために計算された受信ウェイトを前記ウェイト情報として供給する手段を含む、請求項1に記載の無線端末装置。
- 複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置における送信指向性のキャリブレーション方法であって、
少なくとも2本のアンテナを有する特定の単一の無線装置の別々のアンテナから送信されてくる所望信号および干渉信号を受信して、前記受信した所望信号および干渉信号に基づいて前記所望信号を送信したアンテナの方向にビームを向けかつ前記干渉信号を送信したアンテナの方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、
前記計算されたウェイト情報を補正するステップと、
前記補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで前記特定の単一の無線装置に所定の信号を送信するステップと、
前記特定の単一の無線装置において、前記所望信号を送信したアンテナで受信した受信レベルと前記干渉信号を送信したアンテナで受信した受信レベルとの受信レベルに関する情報を前記特定の単一の無線装置から受信して、前記受信した受信レベルに関する情報に基づいて前記特定の単一の無線装置における受信レベルに関する情報が最適となる前記ウェイト情報の補正の値を決定するステップとを備えた、キャリブレーション方法。 - 前記受信レベルに関する情報は、前記所望信号を送信したアンテナで受信した前記ビームの受信レベルと前記干渉信号を送信したアンテナで受信した前記ヌルの受信レベルとの受信レベル比である、請求項4に記載のキャリブレーション方法。
- 前記ウェイト情報を計算するステップは、前記所望信号を受信するために計算された受信ウェイトを前記ウェイト情報として供給するステップを含む、請求項4に記載のキャリブレーション方法。
- 複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置における送信指向性のキャリブレーションプログラムであって、コンピュータに、
少なくとも2本のアンテナを有する特定の単一の無線装置の別々のアンテナから送信されてくる所望信号および干渉信号を受信して、前記受信した所望信号および干渉信号に基づいて前記所望信号を送信したアンテナの方向にビームを向けかつ前記干渉信号を送信したアンテナの方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、
前記計算されたウェイト情報を補正するステップと、
前記補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで前記特定の単一の無線装置に所定の信号を送信するステップと、
前記特定の単一の無線装置において、前記所望信号を送信したアンテナで受信した受信レベルと前記干渉信号を送信したアンテナで受信した受信レベルとの受信レベルに関する情報を前記特定の単一の無線装置から受信して、前記受信した受信レベルに関する情報に基づいて前記特定の単一の無線装置における受信レベルに関する情報が最適となる前記ウェイト情報の補正の値を決定するステップとを実行させる、キャリブレーションプログラム。 - 前記受信レベルに関する情報は、前記所望信号を送信したアンテナで受信した前記ビームの受信レベルと前記干渉信号を送信したアンテナで受信した前記ヌルの受信レベルとの受信レベル比である、請求項7に記載のキャリブレーションプログラム。
- 前記ウェイト情報を計算するステップは、前記所望信号を受信するために計算された受信ウェイトを前記ウェイト情報として供給するステップを含む、請求項7に記載のキャリブレーションプログラム。
- 複数のアンテナを用いて無線装置との通信を行なう無線端末装置のキャリブレーション方法であって、
少なくとも2本のアンテナを有する特定の単一の無線装置から前記無線端末装置に、前記少なくとも2本のアンテナの別々のアンテナを用いて前記無線端末装置にとっての所望信号および干渉信号をそれぞれ送信するステップと、
前記無線端末装置において受信した前記所望信号および前記干渉信号に基づいて、前記特定の単一の無線装置の前記所望信号を送信したアンテナの方向にビームを向けかつ前記干渉信号を送信したアンテナの方向にヌルを向ける送信指向性パターンを形成するためのウェイト情報を計算するステップと、
前記計算されたウェイト情報を補正するステップと、
前記補正されたウェイト情報に基づく送信指向性パターンで前記無線端末装置から前記特定の単一の無線装置に所定の信号を送信するステップと、
前記特定の単一の無線装置において、前記所望信号を送信したアンテナで受信した前記所定の信号の受信レベルと前記干渉信号を送信したアンテナで受信した前記所定の信号の受信レベルとの受信レベルに関する情報を測定するステップと、
前記測定された受信レベルに関する情報を前記特定の単一の無線装置から前記無線端末装置に送信するステップと、
前記無線端末装置において受信した前記受信レベルに関する情報に基づいて、前記特定の単一の無線装置における受信レベルに関する情報が最適となる前記ウェイト情報の補正の値を決定するステップとを備えた、キャリブレーション方法。 - 前記受信レベルに関する情報は、前記所望信号を送信したアンテナにおける受信レベルと前記干渉信号を送信したアンテナにおける受信レベルとの受信レベル比である、請求項10に記載のキャリブレーション方法。
- 前記受信レベルに関する情報を測定するステップは、前記受信レベル比を所定期間にわたって平均したものを供給するステップを含む、請求項11に記載のキャリブレーション方法。
- 前記キャリブレーション方法は前記無線端末装置によって起動される、請求項10から12のいずれかに記載のキャリブレーション方法。
- 前記キャリブレーション方法は前記特定の単一の無線装置によって起動される、請求項10から12のいずれかに記載のキャリブレーション方法。
- 前記特定の単一の無線装置は無線基地装置である、請求項10から12のいずれかに記載のキャリブレーション方法。
- 前記特定の単一の無線装置は他の無線端末装置である、請求項10から12のいずれかに記載のキャリブレーション方法。
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