JP4100257B2 - 空調用熱交換器および車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱交換媒体が流れるチューブ本数と熱交換媒体が流れないチューブ本数との比率を変更して、吹出空気温度を調整する空調用熱交換器およびそれを用いた車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置の吹出空気の温度調整方式として、暖房用熱交換器をバイパスする冷風と暖房用熱交換器を通過する温風との風量割合をエアミックスドアにより調整して、吹出空気温度を調整するエアミックス方式が知られている。
【0003】
このエアミックス方式は、冷風と温風との風量割合を調整して吹出空気温度を調整するので、エアミックスドアの全開度範囲において吹出空気温度を応答よく変化させることができ、吹出空気の温度調整特性が良好である。
【0004】
また、別方式として、暖房用熱交換器に供給される温水の流量または温度を調整して、吹出空気温度を調整する温水調整方式が知られている。
【0005】
しかし、前者のエアミックス方式においては、暖房用熱交換器の搭載スペースの他に、エアミックスドアの作動空間、あるいは冷風と温風を混合するための混合空間等を必要とするので、その分、空調装置の体格(容積)が大型化するという不具合がある。
【0006】
これに反し、後者の温水調整方式では、エアミックス方式における混合空間、ドア作動空間等が不要となるので、空調装置の体格(容積)を小型化できる利点がある。しかし、後者の温水調整方式においては、暖房用熱交換器の熱容量が大きいので、温水の流量または温度を調整しても温度調整の応答性が悪い。
【0007】
また、この後者の温水調整方式のうち、温水流量調整方式においては、暖房用熱交換器の放熱特性が、温水弁の開弁後、小流量域で温水流量が増加するときに吹出温度が急激に立ち上がって、その後、温水流量の増加に対して吹出温度の上昇割合が緩慢となる特性になっている。そのため、温水流量の調整により車室内への吹出空気温度を低温域から高温域にわたって直線的に調整することが困難となる。
【0008】
この問題を解決するには、温水弁の操作ストロークに対して温水流量を小流量域で微細に調整できるように温水弁を構成する必要があり、温水弁がコスト高となる。また、車両エンジン駆動の温水ポンプにより暖房用熱交換器に温水が供給されるので、温水流量調整方式においてはエンジン回転数の変動が外乱となって吹出温度の変動を起こしやすい。また、暖房用熱交換器に送風される空気の風量の変動も外乱となって吹出温度の変動を起こしやすい。
【0009】
また、温水調整方式のうち、温水温度調整方式においては、温水温度の調整のために、高温温水と低温温水との混合が必要となる。そのため、低温温水の循環用ポンプ等を温水回路に新たに追加する必要が生じる。また、高温温水と低温温水とを混合する特殊な弁等も必要となり、コストアップが避けられない。
【0010】
そこで、本出願人においては、先に特願2002−203985号において、空気を加熱する暖房用熱交換器に、熱交換媒体が流れるチューブ本数と熱交換媒体が流れないチューブ本数との比率を変更する流れ制御手段を内蔵して、熱交換媒体通過領域と熱交換媒体非通過領域との比率を変更することにより、車室内への吹出空気温度を調整できる車両用空調装置を提案している。
【0011】
上記先願によると、暖房用熱交換器の熱交換媒体通過領域では、空気が温水等の熱交換媒体により加熱されて温風となり、一方、暖房用熱交換器の熱交換媒体非通過領域では空気が加熱されることなくそのまま通過する。つまり、熱交換媒体非通過領域では冷風が通過する。従って、熱交換媒体通過領域と熱交換媒体非通過領域との比率を流れ制御手段により変更することにより冷温風の風量割合を調整できる。
【0012】
よって、エアミックス方式による吹出空気の温度調整機能を確保できる。しかも、流れ制御手段は温水等の熱交換媒体の流れを制御するものであるから、空気通路側ではなく、暖房用熱交換器内部に内蔵できる。従って、従来のエアミックス方式のように、暖房用熱交換器の外部にエアミックスドアの作動空間を設定する必要がなく、空調装置の体格(容積)を大幅に小型化できるという効果を発揮できる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記先願のものを実際に実験検討してみると、温水等の熱交換媒体が流れるチューブの熱がフィンを介した熱伝導により熱交換媒体が流れないチューブに伝わることにより、熱交換媒体非通過領域を通過した空気まである程度温度が上昇してしまう。この結果、車室内への吹出空気温度の制御性を悪化させることが判明した。
【0014】
ここで、吹出空気温度の制御性の悪化とは、具体的には、熱交換媒体が流れるチューブ本数の変化に対して車室内への吹出空気温度を直線的に変化させることができないという、温度制御のリニア性の悪化である。また、温水等の熱交換媒体が流れるチューブから熱交換媒体が流れないチューブへの熱伝導の影響によって、風量変化に対する吹出空気温度の変動幅が大きくなるという不具合も生じる。これらの温度制御性の悪化については「発明の実施の形態」の欄において実験データに基づいて詳述する。
【0015】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、熱交換媒体が流れるチューブ本数を変更して吹出空気温度を制御できる空調用熱交換器において、熱交換媒体が流れるチューブから熱交換媒体が流れないチューブへの熱伝導を抑制して、吹出空気温度の制御性を向上することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空気と熱交換する熱交換媒体が並列に流れる多数本のチューブ(44)と、多数本のチューブ(44)に対する熱交換媒体の分配・集合を行うタンク(41、42)と、タンク(41、42)内に移動可能に配置され、多数本のチューブ(44)に対する熱交換媒体の流れを制御する流れ制御手段(52)と、チューブ(44)相互間に形成され、チューブ(44)相互間の断熱を行う断熱手段(60、61、444)とを備え、
流れ制御手段(52)の移動位置により、多数本のチューブ(44)のうち熱交換媒体が流れるチューブ(44)と熱交換媒体が流れないチューブ(44)とを決定するとともに、熱交換媒体が流れるチューブ(44)と熱交換媒体が流れないチューブ(44)との間を断熱手段(60、61、444)により断熱することを特徴とする。
【0017】
これにより、熱交換媒体が流れるチューブ本数を変更して吹出空気温度を制御できると同時に、熱交換媒体が流れるチューブ(44)から熱交換媒体が流れないチューブ(44)への熱伝導を抑制して、吹出空気温度の制御性を向上できる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、請求項1において、チューブ(44)には、それぞれ別のフィン(45a、45b、45c、45d)が接合されており、
隣接するチューブ(44)のうち、一方のチューブ(44)に接合されるフィンと、他方のチューブ(44)に接合されるフィンとの間に空隙部(60)を形成し、空隙部(60)により断熱手段を構成することを特徴とする。
【0019】
これにより、伝熱性能向上のためのフィンを備える熱交換器構成において、フィン間の空隙部(60)により断熱手段を簡単に構成できる。
【0020】
請求項3に記載の発明では、請求項1において、チューブ(44)には、それぞれ別のフィン(45a、45b、45c、45d)が接合されており、
隣接するチューブ(44)のうち、一方のチューブ(44)に接合されるフィンと、他方のチューブ(44)に接合されるフィンとの間に断熱部材(61)を介在し、断熱部材(61)により断熱手段を構成することを特徴とする。
【0021】
このように、フィン間に断熱部材(61)を介在して断熱手段を構成してもよい。
【0022】
請求項4に記載の発明では、請求項1において、チューブ(44)は、空気の流れ方向と直交する方向に延びるとともに空気の流れ方向に複数並んで形成される突出部(441a、442a)を有し、この複数の突出部(441a、442a)の内側に熱交換媒体が流れる媒体通路(443)を形成し、突出部(441a、442a)の頂部が互いに隣接するチューブ(44)に対して所定間隔を介在して直接対向し、隣接するチューブ(44)相互間に前記所定間隔により空気通路(444)を形成し、突出部(441a、442a)が空気の流れの直進を妨げて乱れを発生する乱れ発生器として作用するようになっているとともに、空気通路(444)により断熱手段を構成することを特徴とする。
【0023】
これによると、媒体通路(443)を形成する突出部(441a、442a)が空気の流れの直進を妨げて乱れを発生するため、チューブ外表面における空気側熱伝達率を大幅に向上できる。そのため、空気側にフィンを設けないフィンレス構成であっても、必要伝熱性能を確保することができる。
【0024】
そして、隣接するチューブ(44)相互間に形成される空気通路(444)それ自身により断熱用空隙部を構成できるので、フィンレス構成の簡単な熱交換器構成において断熱手段も簡単に構成できる。
【0025】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つにおいて、熱交換媒体として空気を加熱する高温の熱交換媒体が流れるようにすれば、空調熱交換器を暖房用に使用できる。そして、この暖房用熱交換器にて温風領域と冷風領域との比率を調整して吹出空気温度を調整するに際して、断熱手段による熱伝導抑制効果を発揮して吹出空気温度の制御性を向上できる。
【0026】
請求項6に記載の発明では、車室内へ向かって空気が流れる空気通路を構成する空調ケース(1a)と、空調ケース(1a)内に配置され、空気を加熱する暖房用熱交換器(4)とを備え、暖房用熱交換器(4)を請求項5に記載の空調用熱交換器により構成した車両用空調装置を特徴とする。
【0027】
これにより、車両用空調装置において上記各請求項による作用効果を有効に発揮できる。
【0028】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の車両用空調装置において空調熱負荷条件に応じて流れ制御手段(52)の位置を自動制御する制御手段(53)を備えることを特徴とする。
【0029】
これにより、流れ制御手段(52)の位置制御により車室内吹出温度を空調熱負荷条件に応じて自動制御できる。
【0030】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0031】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1、図2は本発明の第1実施形態を示すものであり、本実施形態における車両用空調装置の空調ユニット部1は自動車の車室内計器盤の左右方向の略中央部に配置され、かつ車両の前後、上下方向に対して図1の矢印に示すように配置される。
【0032】
空調ユニット部1は、車室内へ向かって空気が流れる空気通路を構成する樹脂製の空調ケース1aを有している。この空調ケース1aは本例では車両左右方向に分割されており、図1はその片側(左側)のケースを取り外して、他の片側(右側)のケースの組付嵌合面を示している。
【0033】
空調ケース1a内部の最も車両前方側部位に空気流入空間2が形成され、この空気流入空間2には車室内計器盤の助手席側に配置される送風ユニット(図示せず)から送風空気が流入する。なお、送風ユニットは内気又は外気を切替導入して空調ユニット部1へ送風するようになっている。
【0034】
空調ケース1a内には、その空気上流側から順に蒸発器3、ヒータコア4が配置されている。ここで、蒸発器3とヒータコア4はともに上下方向に延びるように平行に配置され、且つ、蒸発器3とヒータコア4とを30mm程度の微小間隔Cを介して近接配置している。
【0035】
蒸発器3は冷房用熱交換器であり、周知の冷凍サイクルに設けられ、空調ケース1a内への送風空気から吸熱して冷媒が蒸発することにより送風空気を冷却する。また、ヒータコア4は暖房用熱交換器であり、内部を流れる温水(エンジン冷却水)を熱源として空調ケース1a内の空気を加熱する。
【0036】
また、蒸発器3とヒータコア4はともにその配置部位において空調ケース1a内側の空気通路の全断面積を横断するように配置されているので、空気流入空間2に流入した空気の全量が蒸発器3とヒータコア4を通過するようになっている。
【0037】
空調ケース1aのうち、ヒータコア4の空気下流側部位(車両後方側部位)には複数の吹出開口部5、6、7が形成されている。このうち、デフロスタ開口部5は空調ケース1aの上面部に配置され、図示しないデフロスタダクトが接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口から空調空気を車両フロントガラスの内面に向けて吹き出す。
【0038】
また、フェイス開口部6は空調ケース1aの車両後方側の面の上部に配置され、図示しないフェイスダクトが接続され、このフェイスダクト先端部のフェイス吹出口から空調空気を乗員の上半身に向けて吹き出す。更に、フット開口部7は空調ケース1aの車両後方側の左右両側面に配置され、運転席および助手席の乗員の足元部に向けて空調空気を吹き出す。
【0039】
なお、デフロスタ開口部5とフェイス開口部6は図示しないデフ・フェイス用の共通の吹出モードドアにより開閉されるようになっている。本例では、このデフ・フェイス用吹出モードドアを薄膜状の樹脂フィルムドアにより構成して、空調ケース1aの体格、特に車両前後方向の体格を小型化できるようにしている。また、左右のフット開口部7は、デフ・フェイス用吹出モードドアとは別体のフット専用の吹出モードドア(図示せず)により開閉されるようになっている。このフット用の吹出モードドアは、例えば、周知の板ドアにより構成できる。
【0040】
デフ・フェイス用吹出モードドアとフット用の吹出モードドアは図示しないリンク機構を介してサーボモータを用いたアクチュエータに連結され、このアクチュエータにより吹出モードドアを操作して複数の吹出開口部5、6、7を開閉するようになっている。
【0041】
次に、図2はヒータコア4部分の具体例を示すものであり、本例のヒータコア4は、車両左右方向の一方側に温水入口側タンク41を配置するとともに、温水出口側タンク42を車両左右方向の他方側に配置している。この両タンク41、42は上下方向に延びるように配置されている。そして、この両タンク41、42の間に熱交換コア部43を構成している。
【0042】
この熱交換コア部43は周知のごとく断面偏平状に成形してなる偏平チューブ44を水平方向に延びるように配置して、この偏平チューブ44の一端部を入口側タンク41に、他端部を出口側タンク42にそれぞれ連通させる。そして、この偏平チューブ44を所定間隔D(図3参照)だけ隔てて上下方向に多数本並列配置するとともに、この偏平チューブ44相互間にコルゲートフィン45a、45bを配置している。
【0043】
ここで、コルゲートフィン45a、45bの配置形態を図3に基づいてより具体的に説明すると、図3は熱交換コア部43の一部の拡大図であり、隣接する偏平チューブ44相互間にそれぞれ2つのコルゲートフィン45a、45bを配置している。すなわち、2つのコルゲートフィン45a、45bの折り曲げ高さdを隣接する偏平チューブ44間の間隔Dより十分小さくして、隣接する偏平チューブ44の一方側に一方のコルゲートフィン45aを接合し、そして、隣接する偏平チューブ44の他方側に他方のコルゲートフィン45bを接合している。
【0044】
ここで、両フィン45a、45bは互いの折り曲げ山部が重合するように配置され、かつ、両フィン45a、45bの相互間に所定間隔Eを設定している。この所定間隔Eは、両フィン45a、45bの間に断熱用の空隙部46を形成するためのものである。この所定間隔Eは、両フィン45a、45b間の断熱効果確保のために1mm以上に設定することが好ましい。
【0045】
なお、偏平チューブ44の両端部と両タンク41、42との間および偏平チューブ44とコルゲートフィン45a、45bとの間はそれぞれろう付けにより一体に接合される。
【0046】
ヒータコア4において温水入口側タンク41の下端部に温水入口46を設け、温水出口側タンク42の上端部に温水出口47を設けている。従って、温水入口46からの流入温水は温水入口側タンク41により熱交換コア部43の多数本の偏平チューブ44に分配され、この偏平チューブ44を並列に通過する。そして、偏平チューブ44からの温水は温水出口側タンク42内に流入して集合される。よって、本例のヒータコア4は、温水入口側タンク41から温水出口側タンク42へ向かって温水が一方向に流れる一方向流れタイプ(全パスタイプ)として構成されている。
【0047】
なお、ヒータコア4の構成部品(41、42、44、45、46、47)は本例ではすべてアルミニュウム製であり、一体ろう付けにて組み付けられる。ヒータコア4の温水入口46には図1に示す入口温水配管48を、また、温水出口47には図1に示す出口温水配管49をそれぞれ接続し、この両温水配管48、49はさらに車両エンジンの温水回路に接続される。なお、車両エンジン温水回路には車両エンジンにより駆動される機械式温水ポンプ(図示せず)が備えられており、この機械式温水ポンプにより車両エンジンの温水(エンジン冷却水)がヒータコア4に循環する。
【0048】
温水入口側タンク41のうち、温水入口46と反対側の端部、すなわち、上端部にはアクチュエータ50が組付られている。このアクチュエータ50は電気信号により回転量(作動角)が制御可能なサーボモータを用いて構成されている。このアクチュエータ50内部のモータ出力軸(図示せず)に減速ギヤ(図示せず)を連結し、この減速ギヤによりねじ回転軸51を回転させる構成になっている。従って、アクチュエータ50はねじ回転軸51を回転させる操作機構を構成する。
【0049】
ねじ回転軸51はその外周面に雄ねじ部を形成した樹脂製または金属製の軸部材である。このねじ回転軸51は温水入口側タンク41内部に、このタンク41の長手方向、換言すると多数本の偏平チューブ44の配列方向(車両上下方向)の全長にわたって延びるように配置されている。
【0050】
そして、温水入口側タンク41の内部には板状の流れ制御部材52をタンク長手方向(チューブ配列方向)に直線的に移動可能に配置している。この流れ制御部材52の中心部はねじ回転軸51にねじ結合している。流れ制御部材52はタンク内空間をタンク長手方向(チューブ配列方向)の2つの空間に仕切るとともにその仕切り位置を変化させることにより温水流れを制御する。
【0051】
流れ制御部材52は、より具体的にはゴム系の弾性材により温水入口側タンク41の略長円状の断面形状に合致する板形状に成形され、流れ制御部材52の外周縁部がタンク41の内壁面に弾性的に圧着することにより、温水入口側タンク41の内部空間を流れ制御部材52により温水の洩れなく仕切ることができる。
【0052】
また、温水入口側タンク41の断面形状が略長円状の非円形形状になっているため、流れ制御部材52はタンク41の内壁面により回り止めされている。従って、ねじ回転軸51が回転すると、流れ制御部材52はねじ回転軸51とのねじ結合によりタンク長手方向に移動することになる。従って、アクチュエータ50の回転方向と回転量を選択することにより、ねじ回転軸51を介して流れ制御部材52を温水入口側タンク41内にて所望の位置に移動させることができる。
【0053】
なお、ヒータコア4のアルミニュウム製構成部品(41、42、44、45、46、47)を一体ろう付けにて組み付けした後に、温水入口側タンク41の上端の開口部からねじ回転軸51および流れ制御部材52を温水入口側タンク41内部に組み込み、その後に、温水入口側タンク41の上端の開口部を図示しない弾性シール部材を介してアクチュエータ50により密封する。
【0054】
なお、アクチュエータ50の回転方向および回転量は空調用制御装置53の出力信号により制御される。この空調用制御装置53はマイクロコンピュータおよびその周辺回路から構成され、予め設定されたプログラムにより所定の演算を行って、空調機器の作動を制御する。空調用制御装置53には内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、温水温度Tw、蒸発器3の吹出温度Te等を検出する周知のセンサ群54から検出信号が入力される。
【0055】
また、空調用制御装置53には、車室内計器盤近傍に設置される空調制御パネル55の操作スイッチ群56の操作信号も入力される。この操作スイッチ群56として、具体的には、温度設定信号Tsetを発生する温度設定スイッチ、風量切替信号を発生する風量スイッチ、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ、内外気切替信号を発生する内外気切替スイッチ、空調用圧縮機のオンオフ信号を発生するエアコンスイッチ、空調制御のオート状態を設定するオートスイッチ等が設けらる。
【0056】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。周知のごとく空調用制御装置53では、空調の自動制御のための基本制御値として目標吹出空気温度TAOを算出する。この目標吹出空気温度TAOは、空調の熱負荷変動があっても車室内を空調制御パネル55の温度設定スイッチの設定温度Tsetに維持するために必要な吹出温度であり、下記数式1に基づいて算出される。
【0057】
【数1】
TAO=Kset ×Tset −Kr ×Tr −Kam×Tam−Ks ×Ts +C
但し、Tr:センサ群54の内気センサにより検出される内気温
Tam:センサ群54の外気センサにより検出される外気温
Ts:センサ群54の日射センサにより検出される日射量
Kset、Kr、Kam、Ks:制御ゲイン
C:補正用の定数
そして、流れ制御部材52の目標仕切り位置SWを、上記TAO、蒸発器吹出温度Te、及び温水温度Twに基づいて下記の数式2に基づいて算出する。
【0058】
【数2】
SW={(TAO−Te)/(Tw−Te)}×100(%)
ここで、数式2によると、流れ制御部材52の目標仕切り位置SWは、流れ制御部材52の最大冷房位置(図2の最下端の破線位置MC)を0%とし、流れ制御部材52の最大暖房位置(図2の最上端の破線位置MH)を100%とする百分率で表される。
【0059】
いま、空調用制御装置53において流れ制御部材52の目標仕切り位置SW=0%(最大冷房位置)が算出されると、空調用制御装置53の出力信号によりアクチュエータ50(すなわち、ねじ回転軸51)の回転方向および回転量が決定され、ねじ回転軸51の回転により流れ制御部材52が図2の最下端位置MCに移動する。これにより、流れ制御部材52がヒータコア4の温水入口側タンク41の最下端部(温水入口46部)の流路を閉塞する。
【0060】
この結果、ヒータコア4の全部の偏平チューブ44への温水流入が阻止されるので、熱交換コア部43の空気通路(偏平チューブ44相互間の空隙部)の全域が温水と熱交換しない通路となる。つまり、熱交換コア部43の空気通路全域が、蒸発器3で冷却された冷風を加熱せずにそのまま通過させる冷風通路として作用する。
【0061】
次に、空調用制御装置53において流れ制御部材52の目標仕切り位置SWとして、0%(最大冷房位置)と100%(最大暖房位置)との間の中間位置の値が算出されると、空調用制御装置53の出力信号によりアクチュエータ50(すなわち、ねじ回転軸51)の回転方向および回転量が決定され、ねじ回転軸51の回転により流れ制御部材52が図2の実線で示す中間位置に移動する。
【0062】
これにより、ヒータコア4の温水入口側タンク41の温水入口46部の流路が開放状態になるので、図示しない車両エンジンの温水ポンプにより圧送される温水が、温水入口配管48、温水入口46を経てヒータコア4の温水入口側タンク41内の下部に流入する。そして、温水入口側タンク41内の空間が流れ制御部材52により上下に仕切られているので、熱交換コア部43の偏平チューブ44のうち、流れ制御部材52よりも下側領域(温水入口46側の領域)Aの偏平チューブ44のみに温水が流れ、流れ制御部材52よりも上側領域(温水出口47側の領域)Bの偏平チューブ44には温水が流れない。
【0063】
従って、熱交換コア部43の空気通路のうち、流れ制御部材52の下側領域Aが温水により空気を加熱する温風通路として作用し、流れ制御部材52の上側領域Bは冷風が加熱されることなくそのまま通過する冷風通路として作用する。このため、空調用制御装置53の出力信号により流れ制御部材52の仕切り位置を制御することにより、温風風量と冷風風量の割合を制御して車室内への吹出空気温度を目標吹出温度TAOとなるように制御できる。
【0064】
以上により、冷温風の風量割合の制御により車室内への吹出空気温度を制御することができ、エアミックス方式による温度調整機能を発揮できる。しかも、温水入口側タンク41内に内蔵される流れ制御部材52の位置制御によって温度調整機能を発揮できるから、従来技術のようにエアミックスドアをヒータコア4の外部に設ける必要がない。
【0065】
そのため、図1に示すように蒸発器3の下流側に、ヒータコア4を平行に、且つ、近接配置でき、空調ユニット1部の体格(本実施形態では車両前後方向の体格)を大幅に小型化できる。
【0066】
しかも、本実施形態によると、冷風をヒータコア4内に通過させることができるから、ヒータコア4の外側に冷風バイパス通路を形成する必要がない。そのため、エアミックス方式でありながら、ヒータコア4の大きさを蒸発器3と同等の大きさに拡大できる。その結果、ヒータコア4の外側に冷風バイパス通路を形成する通常のエアミックス方式に比較して暖房時の圧損を大幅に低減でき、暖房時の風量を大幅に増加できる。
【0067】
更に、本実施形態では、隣接する偏平チューブ44相互間にそれぞれ2つのコルゲートフィン45a、45bを配置し、この両フィン45a、45b間に所定間隔E(図3)を設定して、両フィン45a、45bの間に断熱用の空隙部60を形成しているため、この断熱用の空隙部60を形成しない先願に比較して、室内吹出空気温度の制御性を向上できる利点がある。
【0068】
以下、この温度制御性向上の利点について「従来の技術」の欄に記載の先願のものとの比較により詳述する。図4(a)は熱交換部43が先願による構成になっているヒータコア4であり、隣接する偏平チューブ44相互間に1つのコルゲートフィン45のみを配置し、このコルゲートフィン45を隣接する偏平チューブ44の両方に一体に接合した構成になっている。
【0069】
そして、図4(b)はヒータコア4直後の空気温度を示すものである。具体的には、ヒータコア4の熱交換部43の下流端面から約7mm下流側の部位に温度測定用の熱電対Hを配置している。この熱電対Hは図4(a)の黒丸印に示すように偏平チューブ44相互間の部位(コルゲートフィン45の配置部位)の全部に配置している。なお、図4(a)の例では、偏平チューブ44の全本数が38本で、熱電対Hの全配置数が39個となっている。図4(a)において、熱交換部43の上下両端部には端板43a、43bが配置されているので、偏平チューブ44は上下両端部に配置されていない。
【0070】
次に、実験条件は、ヒータコア4の通過風量:360m3/hであり、ヒータコア4の入口空気温度:6℃、ヒータコア4の入口温水温度:88℃である。そして、偏平チューブ44のうち、図4(a)の斜線部で示す3本の偏平チューブ44a、44b、44c以外の他の偏平チューブ44の入口部をゴム等の弾性材で成形した弾性シール部材Sで閉塞して、3本の偏平チューブ44a、44b、44cのみに温水を流し、ヒータコア4直後の空気温度を熱電対Hにより測定した結果を図4(b)に示している。
【0071】
なお、温水流量は、ヒータコア4の最大暖房時、すなわち、偏平チューブ44の全数に温水が流れるときに、10リットル/hの温水流量が得られるように温水回路の温水圧力を設定している。従って、温水が流れる偏平チューブ44の本数が減少すると、ヒータコア4の通水抵抗が上昇する分だけ、温水流量は減少することになる。
【0072】
図4(b)の測定結果から理解されるように、温水が流れる3本の偏平チューブ44a、44b、44cの上下両側部の空気温度が上昇するだけでなく、この3本の偏平チューブ44a、44b、44cと隣接する数本分の偏平チューブ44配置領域においても空気温度が上昇することを確認できた。この温水非通過領域における空気温度の上昇は、温水が流れる偏平チューブ44a、44b、44cから温水が流れない偏平チューブに対してコルゲートフィン45を介した熱伝導が生じるため発生する。
【0073】
次に、図5は、ヒータコア4下流側における平均空気温度と、温水が流れる偏平チューブ44の本数との関係を示すもので、図4と同一実験条件の下で、温水が流れるチューブ本数を変化させてヒータコア4下流側の平均空気温度を測定した結果を示す。なお、温水が流れる偏平チューブ44の位置は、温水が流れる偏平チューブ相互の間隔がほぼ一定となるように選択している。
【0074】
図5の実線は、温水が流れるチューブ本数が0となる最大冷房時と、温水が流れるチューブ本数が最大(本例では38本)となる最大暖房時との間で、温水が流れるチューブ本数の増加につれて平均空気温度が直線的に上昇していく理想ラインである。これに対し、実験による平均空気温度の測定値は、図5の黒丸印に示すように、温水が流れるチューブ本数の増加に伴って理想ラインの温度をかなり上回ることを確認できた。この平均空気温度の上昇は、図4に示す温水非通過領域における不要な空気温度上昇が原因となって発生する。
【0075】
次に、図6は風量変化に対する空気温度の変化度合を確認するための実験結果を示すものであり、図4、図5と基本的な実験条件は同一であり、実験条件の相違点のみ説明すると、温水が流れるチューブは、図6(a)の上下方向の中央部の1箇所の斜線部に示す偏平チューブ44aのみであり、他の偏平チューブ44の入口部はすべて弾性シール部材Sで閉塞して温水が流れないようにしている。そして、この状態において、ヒータコア4の通過風量を、360m3/h、410m3/h、470m3/hの3段階に変化させて、ヒータコア4直後の空気温度を熱電対で測定した結果を図6(b)に示す。
【0076】
但し、図6(b)では、ヒータコア4直後の空気温度の代表例として、温水が流れる偏平チューブ44aの上下両側部位の空気温度▲1▼、▲2▼と、この偏平チューブ44aの上下両側に隣接して配置され、温水が流れない偏平チューブ44の上下両側部位の空気温度▲3▼、▲4▼とを示している。
【0077】
温水が流れる偏平チューブ44aの上下両側部位では温水の熱量が送風空気に直接的に伝わるので、風量が上記のように3段階に変化しても、空気温度▲1▼、▲2▼の変化度合bは僅少値(例えば、2〜3℃程度)に抑えることができる。
【0078】
これに反し、温水が流れない偏平チューブ44の上下両側部位では、温水の熱量の一部がコルゲートフィン45を介した熱伝導経路を経て伝わってくるだけであるので、風量が増加すると、空気温度▲3▼、▲4▼は大きく低下する。つまり、コルゲートフィン45を介した熱伝導経路による温度上昇分は風量変化の影響を強く受ける。
【0079】
このため、風量が上記のように3段階に変化すると、温水が流れない偏平チューブ44の上下両側部位では空気温度▲3▼、▲4▼が大きく変化する。その変化度合aは上記変化度合bの2倍程度(例えば、5〜6℃程度)に拡大してしまう。このことが原因となって、ヒータコア4下流の平均吹出空気温度の風量変化に対する変化度合も大きくなって温度制御性を悪化させる。
【0080】
そこで、本実施形態では、隣接する偏平チューブ44相互間にそれぞれ2つのコルゲートフィン45a、45bを配置し、この両フィン45a、45b間に断熱用の空隙部60を形成している。この空隙部60が断熱作用を果たすことにより、温水の熱量は温水が流れる偏平チューブ44とこれに接合されたコルゲートフィン(45aまたは45b)にほとんど伝達され、温水が流れない偏平チューブ44とこれに接合されたコルゲートフィン(45aまたは45b)には温水の熱量がほとんど伝達されない。
【0081】
このため、温水が流れる偏平チューブ44と温水が流れない偏平チューブ44とが隣接していても、温水が流れない偏平チューブ44側では空気温度がほとんど上昇しない。従って、本実施形態では、温水が流れる偏平チューブ44の本数を増減すると、ヒータコア4下流の平均吹出空気温度を図5の理想ラインに近似した特性にて直線的に変化させることができ、温度制御のリニア性を高めることができる。
【0082】
また、前述した通り、コルゲートフィン45を介した熱伝導経路による温度上昇分は風量変化の影響を強く受けることになるが、本実施形態ではこのコルゲートフィン45を介した熱伝導経路による温度上昇分がほとんどないから、ヒータコア4下流の平均吹出空気温度が風量変化の影響を受けにくくなる。換言すると、風量変化に対する温度制御の耐性が強いことになり、実用上極めて有利である。
【0083】
なお、図2において、温水非通過領域における温度上昇Fは2次的要因による不可避的なものであり、実用上許容されるレベルの微小量の温度上昇である。ここで、2次的要因とは、輻射、空気を介した熱伝導、タンク部41、42を介した熱伝導、隣接するコルゲートフィン45a、45bの変形による接触部の熱伝導等である。
【0084】
(第2実施形態)
第1実施形態では、隣接する偏平チューブ44相互間にそれぞれ2つのコルゲートフィン45a、45bを配置し、この両フィン45a、45b間に断熱用の空隙部60を形成して、温水が流れる偏平チューブ44と温水が流れない偏平チューブ44との間の断熱作用を発揮するようにしているが、第2実施形態では、図7に示すようにコルゲートフィン45a、45bを使用せず、細い円柱状部材からなるピンフィン45c、45dを用いて、断熱用の空隙部60を形成している。
【0085】
より具体的に説明すると、隣接する偏平チューブ44のうち一方の偏平チューブ44にピンフィン45cを一体に接合するとともに、他方の偏平チューブ44にピンフィン45dを一体に接合している。ここで、図7の例では、ピンフィン45c、45dの高さを隣接する偏平チューブ44間の間隔Dの1/2程度とし、多数本のピンフィン45c、45dを偏平チューブ44の長手方向(図7の左右方向)に対して互いにずらして配置することにより、断熱用の空隙部60を形成している。なお、ピンフィン45c、45dは偏平チューブ44の幅方向(図7の紙面垂直方向)に対しても複数本配置される。その際、偏平チューブ44の幅方向においても、ピンフィン45cと45dを互いにずらして配置するようにしてもよい。
【0086】
(第3実施形態)
第1、第2実施形態は、断熱用の空隙部60を形成して、温水が流れる偏平チューブ44から温水が流れない偏平チューブ44への熱伝導を抑制しているが、第3実施形態では、断熱用の空隙部60を形成せず、その代わりに断熱部材を配置して断熱作用を発揮するものである。
【0087】
図8、図9は第3実施形態を示しており、そして、図8(a)は図3に対応するヒータコア4の熱交換部43の一部の拡大図で、図8(b)は図8(a)のX部拡大図である。第3実施形態において隣接する偏平チューブ44相互間にそれぞれ2つのコルゲートフィン45a、45bを配置しているのは第1実施形態と同じであるが、第3実施形態では、2つのコルゲートフィン45a、45bの折り曲げ高さdを第1実施形態の場合よりも小さくしている。すなわち、第1実施形態のコルゲートフィン45a、45bの折り曲げ高さdは隣接する偏平チューブ44相互間の間隔Dの1/2より大きくなっているが、第3実施形態では、コルゲートフィン45a、45bの折り曲げ高さdを間隔Dの1/2より所定量小さくしている。
【0088】
これにより、偏平チューブ44相互間の間隔Dの範囲内において、2つのコルゲートフィン45a、45bの折り曲げ頂部の間に断熱部材61を配置できるようにしている。より具体的には、この断熱部材61は、2つのコルゲートフィン45a、45bの折り曲げ山部に接合される保持板62、63の間に保持されるようになっている。
【0089】
保持板62、63はアルミニュウム等の金属からなる平板状の板部材であり、コルゲートフィン45aの折り曲げ山部にろう付けにより一体に接合される。図8(b)の符号64はその接合部を示す。断熱部材61も平板状の板部材であり、アルミニュウムのろう付け温度(600℃付近)に耐える高温耐熱性を有する断熱材、具体的にはセラミック系断熱材により構成される。
【0090】
次に、図9により断熱部材61部分の組付方法をより具体的に説明すると、断熱部材61の表裏両面には多数の嵌合凸部61a、61bが一体成形してある。そして、保持板62、63にはこの嵌合凸部61a、61bが嵌合する嵌合穴部62a、63aが嵌合凸部61a、61bの対向位置に設けてある。
【0091】
また、温水入口側タンク部41および温水出口側タンク部42において断熱部材61の左右の両端部に対向する部位には、断熱部材61の端部が嵌合する嵌合凹部41a、42aが一体成形されている。
【0092】
従って、ヒータコア4の組付に際しては、断熱部材61の表裏両面の嵌合凸部61a、61bと保持板62、63の嵌合穴部62a、63aとを嵌合して、断熱部材61と保持板62、63の三者をサンドウイッチ状に組み付ける。
【0093】
そして、隣接する偏平チューブ44相互間にコルゲートフィン45a、45bを組み込むとともに、このコルゲートフィン45a、45bの折り曲げ山部相互の間に、断熱部材61と保持板62、63の三者の組付ブロックを組み込む。この際に、断熱部材61の左右の両端部は左右の両タンク部41、42の嵌合凹部41a、42aに嵌合する。
【0094】
その後に、ヒータコア4の仮組付体を適宜の治具により締結してろう付け炉内に搬入してヒータコア4の一体ろう付けを行う。
【0095】
第3実施形態によると、コルゲートフィン45a、45bの折り曲げ山部の一方はろう付けにより偏平チューブ44の表面に一体に接合でき、また、折り曲げ山部の他方もろう付けにより保持板62、63の表面に一体に接合できる。従って、第1実施形態に比較してコルゲートフィン45a、45b全体を偏平チューブ44と保持板62、63との間で確実に支持固定できる。
【0096】
また、断熱部材61はセラミック系断熱材により構成されているので、一体ろう付けされないが、断熱部材61の左右の両端部と両タンク部41、42の嵌合凹部41a、42aとの嵌合構造により断熱部材61を両タンク部41、42にて確実に支持できる。
【0097】
(第4実施形態)
第1実施形態では、隣接する偏平チューブ44相互間に配置されるコルゲートフィンの全部を2つのコルゲートフィン45a、45bで構成して、この2つのコルゲートフィン45a、45b間に断熱用の空隙部60を形成しているが、第4実施形態では、図10に示すように多数本の偏平チューブ44うち、温水が流れる偏平チューブ44と温水が流れない偏平チューブ44との境界に位置するコルゲートフィン、すなわち、断熱必要部位のコルゲートフィンのみを2つのコルゲートフィン45a、45bで構成して断熱用の空隙部60を形成する。これに反し、温水が流れる偏平チューブ44と温水が流れない偏平チューブ44との境界に位置しないコルゲートフィン、すなわち、断熱不要部位のコルゲートフィンは、通常の1つのコルゲートフィン45で構成している。
【0098】
従って、第4実施形態では、2つのコルゲートフィン45a、45b間の断熱用の空隙部60による断熱構造と、通常の1つのコルゲートフィン45による非断熱構造(熱伝導構造)とが混在する構成となる。なお、第4実施形態による断熱構造と非断熱構造(熱伝導構造)との混在構成を、第2実施形態(図7)や第3実施形態(図8、図9)の断熱構造に適用してもよいことは言うまでもない。
【0099】
(第5実施形態)
第1〜第4実施形態では、いずれも偏平チューブ44にフィン45、45a、45b、45c、45dを組み合わせる熱交換コア部43の構成において、温水が流れる偏平チューブ44側のフィンと温水が流れない偏平チューブ44側のフィンとの間に断熱構造を構成しているが、第5実施形態は、ヒータコア4の熱交換コア部43をフィンを持たないフィンレス構成として、隣接するチューブ相互間に断熱構造を構成するものである。
【0100】
図11は第5実施形態によるヒータコア4の熱交換コア部43の一部斜視図であり、図12は熱交換コア部43の一部のチューブ端面図である。第5実施形態では、熱交換コア部43の偏平チューブ44をアルミニュウム等の金属から構成される2枚の伝熱プレート441、442の接合体により構成している。
【0101】
2枚の伝熱プレート441、442は、具体的には、アルミニュウム等の金属から構成される板部材であり、その平面部からそれぞれ逆方向に突き出す断面円弧状の突出部441a、442aを一体成形している。この突出部441a、442aは空気流れ方向Gと直交する方向に帯状に延びるように成形されている。また、この帯状の突出部441a、442aは空気流れ方向Gに複数個(図示の例では5個)並んで形成される。
【0102】
そして、突出部441a、442aの内側空間が1つにつながるように2枚の伝熱プレート441、442の平面部同士を突き合わせて、ろう付けにより一体に接合する。これにより、帯状の突出部441a、442aの内側空間を温水流路443として構成できる。この温水流路443は空気流れ方向Gに複数個並んで形成される。
【0103】
そして、突出部441a、442aの頂部が互いに隣接するチューブ44に対して所定間隔を介在して直接対向するように多数本のチューブ44を積層配置する。これにより、隣接するチューブ44相互間に空気通路444を形成する。ここで、隣接する偏平チューブ44相互において、帯状の突出部441a、442a、すなわち、温水流路443の形成部位を図12のように空気流れ方向Gの前後にずらすことにより、空気通路444が隣接する偏平チューブ44相互間に蛇行状に形成される。
【0104】
空気流れ方向Gと直交する方向に延びる帯状の突出部441a、442aは、空気流れの直進を妨げて乱れを発生する乱れ発生器として作用する。これにより、偏平チューブ44の外表面における空気側熱伝達率を大幅に向上できるので、空気側にフィンを設けないフィンレス構成であっても、必要伝熱性能を確保することができる。
【0105】
そして、隣接する偏平チューブ44相互間に形成される空気通路444それ自身により、図3等の断熱用空隙部60に相当する断熱用空隙部を構成できるので、第5実施形態においても上述の各実施形態と同様に車室内吹出空気の温度制御性を向上できる。
【0106】
なお、第5実施形態では2枚の伝熱プレート441、442を一体に張り合わせて偏平チューブ44を構成しているが、この2枚の伝熱プレート441、442は個々に完全に切り離して成形できることはもちろんのこと、空気流れ方向Gの上流端あるいは下流端にて1枚の板材をU状に折り曲げて成形することもできる。
【0107】
(第6実施形態)
第1実施形態では、ヒータコア4の温水入口側タンク41内に流れ制御部材52を内蔵し、この流れ制御部材52をチューブ44の配列方向に直線的に移動するスライド式の弁機構により構成しているが、第6実施形態では、流れ制御部材52を温水入口側タンク41内にて回転運動を行う回転式の弁機構にて構成するものである。
【0108】
図13、図14は第6実施形態であり、ヒータコア4の温水入口側タンク41を円筒状に形成し、この円筒状タンク41内部に、円筒状の回転式弁機構を構成する流れ制御部材52を回転可能に配置している。
【0109】
流れ制御部材52は図14に示すように円筒状本体部77を有し、この円筒状本体部77の軸方向の一端部に開口部78を開口し、この開口部78がタンク41の温水入口46に対向配置されている。このため、温水入口46からタンク41内に流入した温水が開口部78から円筒状本体部77の内部にスムースに流入する。
【0110】
円筒状本体部77の軸方向はヒータコア4のチューブ44の配列方向(チューブ積層方向)と平行になっている。従って、円筒状本体部77はチューブ44の配列方向と平行な回転中心軸により回転することになる。そして、円筒状本体部77の軸方向寸法(図13の上下方向寸法)はヒータコア4の全部のチューブ44の配列範囲の全長より大きくしてある。
【0111】
円筒状本体部77の円筒面は図13に示すようにチューブ44の端部を閉塞するシール面79とチューブ44の端部を開放する螺旋状の切り欠き部80とを構成する。なお、図13ではシール面79の形成範囲を細点部により明示している。そして、このシール面79と切り欠き部80との組み合わせにより、図14に示すように円筒状本体部77の円筒面の円周方向のうち、所定の微小角度範囲の部分により最大冷房領域MCを構成し、また、この最大冷房領域MCに隣接する所定の微小角度範囲の部分により最大暖房領域MHを構成する。
【0112】
更に、円筒状本体部77の円筒面の円周方向のうち、最大冷房領域MCおよび最大暖房領域MHを除く残余の大部分の角度範囲にて温度制御領域TCを構成する。
【0113】
円筒状本体部77の形態についてより具体的に説明すると、円筒状本体部77の円周方向において、最大冷房領域MCではシール面79が円筒状本体部77の軸方向全長にわたって形成してある。そのため、円筒状本体部77が回転操作されて最大冷房領域MCの部分がチューブ44の端部に対向すると、全部のチューブ44の端部をシール面79により同時に閉塞することができる。これにより、全部のチューブ44への温水流入が阻止されるので、ヒータコア4のコア部43の全領域が温水非通過領域となり、最大冷房機能を発揮できる。
【0114】
ところで、チューブ44の端部は入口側タンク41の内部に微小寸法だけ突き出しており、このチューブ44の突出端部は図13に示すようにシール部材81の穴部81a内に圧入されるようになっている。シール部材81はゴム系の弾性材から構成されるシート状部材であり、円筒状本体部77と略同一の軸方向寸法を有している。また、シール部材81はチューブ44の偏平状開口形状の長径寸法より大きい円周方向長さを有し、全部のチューブ44の端部が圧入される穴部81aが設けてある。
【0115】
シート状のシール部材81はチューブ44の突出端部の突出量よりも大きい板厚を有し、タンク41の内壁面と円筒状本体部77のシール面79との間に配置され、シール部材81が円筒状本体部77のシール面79に弾性的に圧接するようになっている。これにより、シール部材81のシール機能が発揮されて、全部のチューブ44の端部をシール面79により確実に閉塞できる。
【0116】
一方、円筒状本体部77の円周方向において、最大暖房領域MHでは切り欠き部80が円筒状本体部77の軸方向全長にわたって形成してある。そのため、円筒状本体部77が回転操作されて最大暖房領域MHの部分がチューブ44の端部に対向すると、全部のチューブ44の端部を切り欠き部80により円筒状本体部77の内側に同時に連通することができる。すなわち、切り欠き部80により全部のチューブ44の端部が同時に開口状態となる。従って、切り欠き部80を通して全部のチューブ44に温水を流すことができ、ヒータコア4のコア部43の全領域が温水通過領域となり、最大暖房機能を発揮できる。
【0117】
切り欠き部80の円周方向の一方の開口端縁80aは軸方向と平行な形状であり、これに対し、円周方向の他方の開口端縁80bは軸方向に対して斜めとなって螺旋形状を形成する。この螺旋形状によって、切り欠き部80の円周方向の開口範囲は、円筒状本体部77の軸方向の一端側(開口部78側の端部)で最も狭くなり、円筒状本体部77の軸方向の他端側(開口部78と反対側の端部)へ行くにつれて切り欠き部80の円周方向の開口範囲が拡大する。すなわち、切り欠き部80の円周方向の開口範囲は円筒状本体部77の軸方向の他端側で最大となる。
【0118】
従って、円筒状本体部77を図14において反時計方向に回転駆動すると、ヒータコア4のコア部43のチューブ44のうち、下部側のチューブ44から順次螺旋状切り欠き部80と連通し開口する。そのため、円筒状本体部77の回転位置を選択することにより、螺旋状切り欠き部80と連通して温水が流れる下部側のチューブ44の本数と、シール面79により閉塞されて温水が流れない上部側のチューブ44の本数との比率を変更できる。なお、図13は、円筒状本体部77を温度制御領域TCの円周方向中間位置がチューブ44の端部に対向する状態を示している。
【0119】
次に、円筒状本体部77の軸方向の他端側には円板状の支持板82が設けられ、この支持板82の中心部から軸方向外方へ突き出すように駆動軸83が一体に設けられている。なお、円筒状本体部77、支持板82および駆動軸83は本例では樹脂により一体成形している。
【0120】
このように流れ制御部材52は樹脂製であり、また、シール部材81はゴム系の弾性材であるから、入口側タンク41の下端部を開口したままで、ヒータコア4の一体ろう付けによる組み付けを終了した後に、シール部材81を入口側タンク41の下端開口部から入口側タンク41内に組み付け、その後に、流れ制御部材52を同様に入口側タンク41の下端開口部から入口側タンク41内に組み付ける。
【0121】
次に、入口側タンク41の下端開口部を閉塞するキャップ84の組み付けを行う。このキャップ84は金属製または樹脂製の円板状部材であり、その中心部には駆動軸83を回転可能に支持する軸受け穴84aが開けてある。これにより、駆動軸83を軸受け穴84aに嵌合してキャップ84の外方へ突き出した状態にてキャップ84をねじ止め等の固定手段(図示せず)で入口側タンク41の下端開口部に組み付けることができる。
【0122】
なお、駆動軸83と軸受け穴84aとの嵌合面およびキャップ84と入口側タンク41の下端開口部との当接面にはOリング等のシール手段を設けて、温水の洩れを防止するようになっている。また、駆動軸83の突出先端部はアクチュエータ50の出力軸に連結されており、これにより、流れ制御部材52の円筒状本体部77をアクチュエータ50により回転駆動できる。
【0123】
以上により第6実施形態によると、流れ制御部材52がタンク41内にて回転運動を行う回転式の弁機構として作用することにより、温水通過領域Aと温水非通過領域Bとの比率を変更して車室内吹出空気温度を調整できる。
【0124】
(第7実施形態)
第7実施形態は流れ制御部材52を更に別の構成とするものであり、可撓性を有する膜状部材により流れ制御部材52を構成する。
【0125】
図15〜図17は第7実施形態を示しており、温水入口側タンク41の内部に、流れ制御部材52を構成する膜状部材90、第1巻取軸91および第2巻取軸92が配置されている。第1巻取軸91および第2巻取軸92は樹脂製または金属製の部材であり、膜状部材90の一端部が第1巻取軸91に結合され、膜状部材90の他端部は第2巻取軸92に結合されている。膜状部材90の両端部は、第1、第2巻取軸91、92に巻き取られたり、第1、第2巻取軸91、92から巻き戻される(送り出される)ようになっている。
【0126】
第1巻取軸91および第2巻取軸92の軸方向の一端部(上端部)付近は温水入口側タンク41の上端部壁面に回転自在に支持されて温水入口側タンク41の上方側へ突き出している。第1巻取軸91および第2巻取軸92の他端部(下端部)付近は図示しない支持部材を介して温水入口側タンク41の下端部付近に回転自在に支持される。
【0127】
第1巻取軸91は駆動側の軸であり、操作機構をなすアクチュエータ50内部のモータ出力軸(図示せず)に減速ギヤ(図示せず)を介して連結され、アクチュエータ50により第1巻取軸91を回転させる構成になっている。そして、従動側の軸をなす第2巻取軸92と第1巻取軸91との間にベルト、ギヤ等の動力伝達機構93を設けて、第1巻取軸91の回転が動力伝達機構93を介して第2巻取軸92に伝達されるようになっている。従って、アクチュエータ50により第1巻取軸91および第2巻取軸92を連動して回転させることができる。
【0128】
膜状部材90は可撓性を有する樹脂フィルム材から構成されるものであり、図15、図16における細かい点を付した領域は膜状部材90の範囲を示す。この膜状部材90は図17に示すように、偏平チューブ44の端部を開口する多数の開口部90aを有している。この開口部90aの開口パターンは後述する。
【0129】
第1、第2巻取軸91、92は、温水入口側タンク41の内部に、このタンク41の長手方向、換言すると多数本の偏平チューブ44の配列方向(車両上下方向)の全長にわたって延びるように配置されている。ここで、第1、第2巻取軸52、53は、図16に示すように偏平チューブ44の断面偏平状の長辺方向の寸法L1よりも大きい間隔L2を隔てて温水入口側タンク41の内部に平行に配置されている。
【0130】
膜状部材90の開口部90aの幅寸法L3は、上記寸法L1とL2の中間の大きさ、すなわち、L1<L3<L2の関係に設定してある。従って、開口部51aが偏平チューブ44の端部上に重合すると、その重合した偏平チューブ44は、膜状部材90の開口部90aを通して全開状態にて温水入口側タンク41の内部に連通する。
【0131】
最大冷房時には、膜状部材90の一端側の膜部90b(図17)により多数本の偏平チューブ44のすべてを閉塞し、且つ、最大暖房時には、膜状部材90の他端側の最大の開口部90c(図17)により多数本の偏平チューブ44のすべてを全開する。このため、膜状部材90の幅寸法(高さ寸法)L4を熱交換用コア部43の偏平チューブ44配列方向(車両上下方向)の全長寸法より大きくしてある(図15、16参照)。
【0132】
温水入口側タンク41のうち、偏平チューブ44の端部が接合される壁面41b、すなわち、図15の左側の壁面41bは上下方向に延びる平面形状になっている。この平面形状の壁面41bにはチューブ挿入穴(図示せず)を開けて、このチューブ挿入穴に偏平チューブ44の端部を挿入し、偏平チューブ44の端部を微小量だけ壁面41bの内側、すなわち、温水入口側タンク41の内部に突出させる。この状態にて偏平チューブ44の端部は壁面41bのチューブ挿入穴部に接合される。
【0133】
そして、平面形状の壁面41bの内側面にシール部材94(図15)を設けている。より具体的には、このシール部材94はゴム系の弾性材により平面形状の壁面41bに沿った平板状に形成される。このシール部材94には偏平チューブ44と同数のチューブ挿入穴(図示せず)を開けて、このチューブ挿入穴を偏平チューブ44の端部に嵌合してシール部材94を平面形状の壁面41bの内側面に押し付けて接着等により固定する。
【0134】
ここで、シール部材94の板厚は偏平チューブ44の端部がシール部材94上に突出しないように設定してあるから、膜状部材90が偏平チューブ44の端部と接触することを回避でき、膜状部材90はシール部材94の表面上を摺動しながら第1、第2巻取軸91、92間を移動するようになっている。
【0135】
このため、シール部材94は、偏平チューブ44の配列方向(車両上下方向)には、全部の偏平チューブ44の端部周辺を被覆できる寸法(すなわち、寸法L4と近似した寸法)を有し、且つ、膜状部材90の移動方向(図16の左右方向)には、第1、第2巻取軸91、92間の間隔L2と同等の寸法を有する矩形状になっている。
【0136】
なお、ヒータコア4の構成部品(41、42、44、45a、45b、46、47)は、通常アルミニュウム製として、一体ろう付けにて組み付けられるが、本実施形態では、ろう付け温度(600℃付近)に耐えられない部品、すなわち、樹脂フィルム材により構成される膜状部材90およびゴム系の弾性材により構成されるシール部材94を温水入口側タンク41に内蔵するため、温水入口側タンク41の全体を他の構成部品と一体ろう付けすることはできない。
【0137】
そこで、本実施形態では、温水入口側タンク41を、偏平チューブ44の端部を接合する壁面41b側のタンク部材と、壁面41bに対向する他の壁面41c側のタンク部材とに分割し、壁面41b側のタンク部材および温水入口46のみをヒータコア4の他の構成部品と一体ろう付けし、この一体ろう付け終了後に、膜状部材90、シール部材94等の組み付けを行う。
【0138】
具体的には、偏平チューブ44と一体ろう付けされた壁面41b側のタンク部材において、壁面41bの平面形状部に上記した要領にてシール部材94を接着等により固定する。次に、この壁面41b側のタンク部材に第1、第2巻取軸91、92および膜状部材90を組み付け、その後に、壁面41b側のタンク部材に他の壁面41c側のタンク部材をシール材を介してシール固定する。
【0139】
なお、図15において、41d、41eは壁面41b側のタンク部材と他の壁面41c側のタンク部材との接続部位を示す。また、第1、第2巻取軸91、92の上端部は温水入口側タンク41(壁面41b側のタンク部材)の上端部壁面から外部に突き出すので、第1、第2巻取軸91、92と温水入口側タンク41の上端部壁面の支持部との間にもシール材(図示せず)を配置して、水漏れを防止するようになっている。
【0140】
次に、図17により膜状部材90の開口パターンについて具体的に説明する。図17は第1、第2巻取軸91、92から膜状部材90の全長を巻き戻した展開状態を示しており、膜状部材90の長さ方向(図17の左右方向)の一端部(左端部)を第1巻取軸91に結合するとともに、膜状部材90のうち、第1巻取軸91に隣接する部分に最大冷房領域を構成する膜部90bを設けている。
【0141】
また、膜状部材90の長さ方向(図17の左右方向)の他端部(右端部)を第2巻取軸92に結合するとともに、膜状部材90のうち、第2巻取軸92に隣接する部分に最大暖房領域を構成する最大の矩形開口部90cを設けている。
【0142】
そして、最大冷房用の膜部90bと最大暖房用の矩形開口部90cとの間は温度制御領域であり、この温度制御領域では菱形の開口部90aを開けるとともに、この菱形の開口部90aの開口数を最大暖房領域側から最大冷房領域側へ向かって順次減少させている。具体的には、温度制御領域のうち、最大暖房領域に隣接する部位(1)では開口部90aの開口数を例えば偏平チューブ44の本数の1/2として、開口部90aが多数本の偏平チューブ44に対して1本置きに重合するようにしてある。以下、次の部位(2)から部位(5)へ向かって開口部90aの開口数を順次減少させている。これにより、温水が流れる偏平チューブ44の本数を最大暖房領域側から最大冷房領域側へ向かって順次減少させることができる。すなわち、図17の部位(1)から部位(5)では、それぞれ開口部数が順次減少する開口部群を構成する。
【0143】
また、図17において、L2は図16に示す温水入口側タンク41内部での第1、第2巻取軸91、92の配置間隔であり、温度制御用の菱形の開口部90aおよび最大暖房用の矩形開口部90cの幅寸法L3はいずれも軸間隔L2より若干量小さくしてある。なお、最大冷房用の膜部90bの幅寸法は軸間隔L2と同等に設定してある。
【0144】
次に、第7実施形態の作動を説明する。いま、空調用制御装置53において膜状部材90の目標移動位置SWとして、SW=0%(最大冷房位置)が算出されると、空調用制御装置53の出力信号によりアクチュエータ50(すなわち、第1巻取軸91)の回転方向および回転量が決定され、膜状部材90の最大冷房用の膜部90bが偏平チューブ44の端部上に重合する位置に膜状部材90が移動する。
【0145】
この結果、膜状部材90のうち最大冷房用の膜部90bがシール部材94に圧接して、全部の偏平チューブ44を閉塞する。従って、ヒータコア4の全部の偏平チューブ44への温水流入が遮断されるので、熱交換コア部43の空気通路(偏平チューブ44とコルゲートフィン45との空隙部)の全域が温水と熱交換しない通路となる。つまり、熱交換コア部43の空気通路全域が、蒸発器3で冷却された冷風を加熱せずにそのまま通過させる冷風通路として作用する。
【0146】
次に、空調用制御装置53において膜状部材90の目標移動位置SWとして、0%(最大冷房位置)と100%(最大暖房位置)との間の中間位置の値が算出されると、空調用制御装置53の出力信号によりアクチュエータ50(すなわち、第1巻取軸91)の回転方向および回転量が決定され、第1、第2巻取軸91、92の回転により膜状部材90の温度制御領域の部位が偏平チューブ44の端部上に重合する位置に膜状部材90が移動する。図15、図16はこの具体例を示しており、膜状部材90の温度制御領域の部位(3)(図17参照)が偏平チューブ44の端部上に重合する。
【0147】
これにより、膜状部材90の温度制御領域の部位(3)に位置する5個の菱形開口部90aが5本の偏平チューブ44の端部上に重合するので、この5本の偏平チューブ44の端部が膜状部材90の菱形開口部90aを通して温水入口側タンク41の内部空間に開口する。そのため、図示しない車両エンジンの温水ポンプにより圧送される温水が、温水入口配管48→温水入口46→ヒータコア4の温水入口側タンク41→上記の5本の偏平チューブ44→温水出口側タンク42→温水出口47→温水出口配管49の経路にて流れる。なお、図15では温水が流れる5本の偏平チューブ44のみに斜線を付している。
【0148】
従って、ヒータコア4の熱交換コア部43の空気通路のうち、上記の5本の偏平チューブ44の上下両側の通路は温水との熱交換により空気が加熱され温風が流れる温風通路となる。これに対し、上記の5本の偏平チューブ44相互の中間部位では、偏平チューブ44に温水が流れないので、冷風が加熱されることなくそのまま通過する冷風通路として作用する。
【0149】
このため、図15に示すように5層の温風通路域と6層の冷風通路域とを偏平チューブ配列方向(車両上下方向)に交互に形成できる。そして、空調用制御装置53の出力信号により膜状部材90の移動位置を制御することにより、温水が流れるチューブ本数を変更して、温風通路域と冷風通路領域との比率を変更できる。これにより、温風風量と冷風風量の割合を制御して車室内への吹出空気温度を目標吹出温度TAOとなるように制御できる。
【0150】
特に、本実施形態では、膜状部材90に設ける開口パターンによりヒータコア4の熱交換コア部43の空気通路における温風通路と冷風通路の設定数を容易に増加できるので、冷温風の混合性向上にとって格段と有利である。
【0151】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、温水(熱交換媒体)が流れるチューブを偏平チューブ44で構成しているが、温水(熱交換媒体)が流れるチューブを丸チューブ等で構成してもよい。
【0152】
また、上記各実施形態では、暖房用熱交換器をなすヒータコア4に、熱交換媒体として温水が流れる場合について説明したが、例えば、エンジンオイル、油圧機械の作動オイル等のオイルを熱交換媒体としてヒータコア4に循環させ、空気を加熱する車両用空調装置に本発明を適用してもよい。
【0153】
また、上記各実施形態では、流れ制御部材52をヒータコア4の温水入口側タンク41に内蔵しているが、温水出口側タンク42に流れ制御部材52を内蔵してもよい。また、必要に応じて、温水入口側タンク41と温水出口側タンク42の両方に流れ制御部材52を内蔵してもよい。
【0154】
また、ヒータコア4と同様に多数本のチューブを並列配置した熱交換器構成を冷房用熱交換器に採用し、この冷房用熱交換器に熱交換媒体として低温の冷水が流れるようにした空調装置に本発明を適用してもよい。すなわち、流れ制御部材52の変位により冷水の流れるチューブ本数と、冷水の流れないチューブ本数との割合を変化させ、それにより、冷水の流れるチューブ周辺で冷却される冷風風量と、冷水の流れないチューブ周辺を通過する非冷却空気(温風)の風量との割合を変化させて、冷房用熱交換器の吹出空気温度を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の空調ユニットを示すもので、空調ケースの片側を取り外した状態の側面図である。
【図2】第1実施形態のヒータコアを示す正面図である。
【図3】図2のヒータコアの熱交換コア部の一部拡大正面図である。
【図4】(a)は温水が流れるチューブから温水が流れないチューブへの熱伝導の影響を測定する実験方法の説明図、(b)はヒータコア直後の空気温度の測定結果を示すグラフである。
【図5】ヒータコア下流側の平均空気温度と温水が流れるチューブ本数との関係を示すグラフである。
【図6】(a)は図4(a)と同様の実験方法の説明図、(b)は風量を変化させた場合におけるヒータコア直後の空気温度の測定結果を示すグラフである。
【図7】第2実施形態によるヒータコアの熱交換コア部の一部拡大正面図である。
【図8】(a)は第3実施形態によるヒータコアの熱交換コア部の一部拡大正面図、(b)は(a)のX部拡大図である。
【図9】第3実施形態によるヒータコアの熱交換コア部における断熱部材の組付説明図である。
【図10】第4実施形態によるヒータコアの熱交換コア部の一部拡大正面図である。
【図11】第5実施形態によるヒータコアの熱交換コア部の一部拡大斜視図である。
【図12】第5実施形態によるヒータコアの熱交換コア部の一部拡大チューブ端面図である。
【図13】第6実施形態によるヒータコアを示す正面図である。
【図14】第6実施形態による流れ制御部材の斜視図である。
【図15】第7実施形態によるヒータコアを示す正面図である。
【図16】第7実施形態によるヒータコアの温水入口側タンク部の側面断面図である。
【図17】第7実施形態による流れ制御部材を構成する膜状部材の開口パターンを示す展開図である。
【符号の説明】
44…偏平チューブ、45a、45b…コルゲートフィン、
60…断熱用空隙部、61…断熱部材、
444…断熱用空隙部をなす空気通路。
Claims (7)
- 空気と熱交換する熱交換媒体が並列に流れる多数本のチューブ(44)と、
前記多数本のチューブ(44)に対する前記熱交換媒体の分配・集合を行うタンク(41、42)と、
前記タンク(41、42)内に移動可能に配置され、前記多数本のチューブ(44)に対する前記熱交換媒体の流れを制御する流れ制御手段(52)と、
前記チューブ(44)相互間に形成され、前記チューブ(44)相互間の断熱を行う断熱手段(60、61、444)とを備え、
前記流れ制御手段(52)の移動位置により、前記多数本のチューブ(44)のうち前記熱交換媒体が流れるチューブ(44)と前記熱交換媒体が流れないチューブ(44)とを決定するとともに、前記熱交換媒体が流れるチューブ(44)と前記熱交換媒体が流れないチューブ(44)との間を前記断熱手段(60、61、444)により断熱することを特徴とする空調用熱交換器。 - 前記チューブ(44)には、それぞれ別のフィン(45a、45b、45c、45d)が接合されており、
隣接する前記チューブ(44)のうち、一方のチューブ(44)に接合されるフィンと、他方のチューブ(44)に接合されるフィンとの間に空隙部(60)を形成し、
前記空隙部(60)により前記断熱手段を構成することを特徴とする請求項1に記載の空調用熱交換器。 - 前記チューブ(44)には、それぞれ別のフィン(45a、45b、45c、45d)が接合されており、
隣接する前記チューブ(44)のうち、一方のチューブ(44)に接合されるフィンと、他方のチューブ(44)に接合されるフィンとの間に断熱部材(61)を介在し、
前記断熱部材(61)により前記断熱手段を構成することを特徴とする請求項1に記載の空調用熱交換器。 - 前記チューブ(44)は、前記空気の流れ方向と直交する方向に延びるとともに前記空気の流れ方向に複数並んで形成される突出部(441a、442a)を有し、
前記複数の突出部(441a、442a)の内側に前記熱交換媒体が流れる媒体通路(443)を形成し、
前記突出部(441a、442a)の頂部が互いに隣接するチューブ(44)に対して所定間隔を介在して直接対向し、
隣接する前記チューブ(44)相互間に前記所定間隔により空気通路(444)を形成し、
前記突出部(441a、442a)が前記空気の流れの直進を妨げて乱れを発生する乱れ発生器として作用するようになっているとともに、前記空気通路(444)により前記断熱手段を構成することを特徴とする請求項1に記載の空調用熱交換器。 - 前記熱交換媒体として前記空気を加熱する高温の熱交換媒体が流れることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の空調用熱交換器。
- 車室内へ向かって空気が流れる空気通路を構成する空調ケース(1a)と、
前記空調ケース(1a)内に配置され、前記空気を加熱する暖房用熱交換器(4)とを備え、
前記暖房用熱交換器(4)を請求項5に記載の空調用熱交換器により構成したことを特徴とする車両用空調装置。 - 空調熱負荷条件に応じて前記流れ制御手段(52)の位置を自動制御する制御手段(53)を備えることを特徴とする請求項6に記載の車両用空調装置。
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