JP4100150B2 - 制振構造およびこれに用いる液体制振装置、並びに制振構造を備える構造物 - Google Patents

制振構造およびこれに用いる液体制振装置、並びに制振構造を備える構造物 Download PDF

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  • Vibration Prevention Devices (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、構造物に生じる振動を制振する制振構造およびこれに用いる液体制振装置、並びに制振構造を備える構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
地震や強風などによる構造物の揺れを制御する手段として制振手段と免震手段とが提案されてきた。制振手段は、構造物の各部に吸振器等の制振装置を設置して、これを建造物の揺れに応じて自然に稼動させるシステムからなる。また、免震手段は、地盤と構造物との間に水平方向に柔軟な免震装置と減衰装置とを設置して、地盤から構造物へ伝わる振動エネルギーを減少させ、また地盤と構造物との相対的な変位を抑制するシステム等からなる。このうち例えば免震手段は、積層ゴムやコイルばね、更には空気ばねなどに代表される各種弾性体からなるいわゆる長周期化手段を備え、これによって免震対象たる構造物の固有周期を地盤から入力される振動の周期よりも長周期化する。これにより、地盤から構造物へと入力される振動を低減するのである。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−270992号公報
【0004】
【特許文献2】
特開平5−223977号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような各種の振動制御手段は、地盤と構造物との間の振動エネルギーを遮断あるいはその伝達量を減衰させるという点で効果がある。しかし、例えば重量やサイズが大きく、しかも剛構造といった原子炉建屋等の構造物にそのまま適用すれば、構造物の大きな自重を鉛直荷重として支持しなければならない一方で、自重に基づく大きな慣性力および地震等の振動エネルギーに応じた過大な変形(揺れ)を制御しなければならない。しかも、剛構造であるがゆえに構造物の固有振動周期が短周期となり、従来の振動制御手段では対応が難しい。他方で、そのような状況に対応すべく従来の制御手段の構造や機能を強化するなどすれば、制御手段の過大化、コストの大幅な上昇や手間の増大を招来することとなる。
【0006】
そこで本発明はこのような課題に着目してなされたもので、装置のコンパクト化とコスト低減とを実現すると共に免震装置の変形を抑制可能な制振構造およびこれに用いる液体制振装置、並びに制振構造を備える構造物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の制振構造は、原子炉格納容器等を収めた原子炉建屋に生じる振動を制振する構造であって、前記原子炉建屋とその支持地盤との間に配置され積層ゴム等からなる免震装置と、この原子炉建屋の振動周期に共振可能な深度でもって貯留槽内に液体を収容しその液面上に余剰空間を有する原子炉建屋付帯の液体制振装置と、を含み、
前記貯留槽は、円形の内円内壁と、当該内円内壁よりも外側に位置する円形の外円内壁とを備え、前記貯留槽の水平断面が環状であり、
前記原子炉建屋の所定装置が、前記環状の中心に配置されていることを特徴とする。
これによれば、装置のコンパクト化とコスト低減とを実現すると共に免震装置の変形を抑制可能となる。
また、貯留槽内における液体が、環の外円内壁と内円内壁との両方に対しスロッシングを行うこととなり、制振効果を重層的に得ることができる。また、貯留槽の各内壁が円形となっていることから、様々な方向からの振動エネルギーにも柔軟に対応することが可能となる。
【0008】
第2の発明は、制振構造に用いる液体制振装置であって、原子炉格納容器等を収めた原子炉建屋の振動周期に共振可能な深度でもって貯留槽内に液体を収容しその液面上に余剰空間を有するとともに、
前記貯留槽は、円形の内円内壁と、当該内円内壁よりも外側に位置する円形の外円内壁とを備え、前記貯留槽の水平断面が環状であり、
前記原子炉建屋の所定装置が、前記環状の中心に配置されることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1の発明に記載の制振構造を備える構造物である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の制振構造100を備えた構造物10を示す図である。ここで構造物10として想定するのは原子炉建屋である。この原子炉建屋10は、例えばプレストレストコンクリートによってドーム形に構築される原子炉格納容器15から主に構成される。上記原子炉建屋10は、基礎地盤Gの掘削底面に打設した基礎版16上に構築されている。そしてこの基礎版16と原子炉建屋10との間に介在するのが免震装置30たる積層ゴム支承である。図2は本発明の制振構造が備える免震装置30を示す図であり、(a)は積層ゴム支承、(b)は鉛プラグ入り積層ゴム支承の構造を示す。積層ゴム支承30は、ゴムの薄いシート31と鋼板32とを交互に重ねあわせ、外周を耐候性を有した被覆ゴム33で覆った構造になっており、端部鋼板34とともに一体加硫されて製作されている。
【0014】
この積層ゴム支承30は、鉛直方向の大きな荷重を支持する能力を有するとともに、水平方向の柔らかいバネ特性(例:ゴム層の変形が累加されて変形する)とを備える。他方、鉛プラグ入りの積層ゴム支承35は、ゴムの薄いシート31と鋼板32とを交互に重ねあわせ、外周を耐候性を有した被覆ゴム33で覆った構造である点では共通するが、積層したゴムの中心に鉛プラグ36を備えている。積層したゴムのせん断変形時には、この鉛プラグ36の塑性変形により、エネルギーを吸収し減衰性能が向上する。こういった積層ゴム支承30、35といった免震装置により、鉛直荷重に対するはらみ出しを防ぎ、例えば水平剛性が鉛直剛性の数千分の1という特性を実現することで、原子炉建屋10に地震力等で生じる振動を長周期化する。
【0015】
本実施形態においては、原子炉建屋10に貯留槽20が配置される。ここでの貯留槽20とは、原子炉建屋10(構造物)の振動周期に共振可能な深度Dでもって貯留槽内に液体19を収容しその液面上に余剰空間23を有する液体制振装置40となる。
【0016】
図1では、この液体制振装置40が、原子炉格納容器15と適宜距離を置いた区画に設けられた設置状況を示している。また、この区画内に設置された液体制振装置40に加え、前記原子炉格納容器15の頂部にも液体制振装置40を構築している。ここで示すように、液体制振装置40は制振対象となる構造物と一体に固定されていればその設置位置は任意となる。なお、前記例では液体制振装置40を原子炉建屋10に二つ設けた形態を示したが、どちらか一方の液体制振装置40だけを設置するとしてもよい。
【0017】
ここで、液体制振装置40とは、付加質量機構、スロッシングダンパ、同調液体ダンパー(Tuned Liquid Damper)と呼ばれるものであり、制振対象となる構造物の頂部に共振質量を設け、これを振動させることで本体の振動を抑制する物で、動吸振器と呼ばれることもある。本実施形態の場合、貯留槽20中の液体19を質量として利用し、その共振波動減衰を利用して、前記免震装置30により長周期化された振動を制御することとなる。つまり、貯留槽20の形状とその中に入れる液体(例:水や泥水等)の量とを調整してそのスロッシングを原子炉建屋10の揺れと共振させることにより、原子炉建屋10の振動を低減できるようになっている。
【0018】
図3は本発明の制振構造が備える液体制振装置の構造例1を示す図であり、図4は本発明の制振構造が備える液体制振装置の構造例2を示す図である。液体制振装置40としての貯留槽20の形状としては、水平断面を略環状とすることが出来る(図3参照)。本実施形態においては、原子炉建屋10の所定装置外周に沿って貯留槽20を設置した状況を想定する。このため、環状の中心にはかかる所定装置22が位置し、貯留槽20の内壁41と対向している。貯留槽20内の液体19は、その液面42上に余剰空間23を有して、外部からの振動エネルギー50をうけてスロッシングする。このスロッシングに伴って、液面42は揺動し変化する。これによれば、貯留槽20内における液体19が、環の外円内壁45と内円内壁46との両方に対しスロッシング(地震等の振動エネルギー50に起因)を行うこととなり、制振効果を重層的に得ることができる。また、貯留槽20の各内壁45、46が円形となっていることから、様々な方向からの振動エネルギーにも柔軟に対応することが可能となる。
【0019】
これは図4に示した、液体制振装置40を複数の貯留槽20から構成してそれらの平面配置形状を略環状とした場合にも同様である。この場合、前記した所定装置22を囲んで配置された複数の貯留槽20各々において、前記スロッシングが生じる。この形態の場合、制振対象となる構造物の形態に柔軟に対応可能となる上、液体制振装置単体が軽量、コンパクト化でき、その設置が簡便かつ迅速となるといった効果も奏する。
【0020】
なお、貯留槽20は、貯留する液体が外部にあふれることなくスロッシング可能であればどのような材質で形成してもよいが、設置時の作業効率を鑑みて、軽量かつ高強度の材料(例:FRP)で形成すると好適である。また、構造物が特定の振動方向を持たない場合には、液体制振装置40を構成する前記複数の各貯留槽20を一定角度づつずらして、広範囲の方向からの振動エネルギーに対処すると好適である。加えて、貯留槽20に貯留する液体は水だけでなく、泥水等をを使用することも出来る。この場合、粘性の大きな泥水を使用することによってスロッシング時の減衰を大きくするとともに比重の大きな泥水を使用することによって質量比を増加させることが可能となる。
【0021】
また、これらのパッシブな制振に対し、付加質量にアクチュエータまたはサーボモーターなどの駆動装置を付加し、これをコンピュータ制御で能動的に動かし振動制御効果を向上させる、アクティブ制振を適用してもよい。
【0022】
加えて、貯留槽内壁の水平断面または貯留槽群の平面配置形状は、上記したように円形もしくは環状だけに限定されず、同様の機能を奏する矩形状その他の多角形状のものであってもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の制振構造およびこれに用いる液体制振装置、並びに制振構造を備える構造物によれば、例えば原子力施設の建屋といった重量やサイズが大きな構造物に適用しても、構造物の大きな自重を鉛直荷重として充分支持する一方で、自重に基づく大きな慣性力および地震等の振動エネルギーに応じた変形(揺れ)を制御することが可能となる。また、剛構造であるがゆえに構造物の固有振動周期が短周期であっても対応可能となる。
【0024】
しかも、免震装置および液体制振装置を備えた制振構造とすることで、制振構造自体のコンパクト化を実現する一方で、設置コスト等の大幅な上昇や手間の増大を招来することもない。また、免震装置が(地震による)入力を低減すると共に制振装置がその応答を低減するため、前記免震装置自体をコンパクト化することが可能となる。
【0025】
しかして、装置のコンパクト化とコスト低減とを実現すると共に免震装置の変形を抑制可能な制振構造およびこれに用いる液体制振装置、並びに制振構造を備える構造物を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制振構造を備えた構造物を示す図である。
【図2】本発明の制振構造が備える免震装置を示す図であり、(a)は積層ゴム支承、(b)は鉛プラグ入り積層ゴム支承の構造を示す。
【図3】本発明の制振構造が備える液体制振装置の構造例1を示す図である。
【図4】本発明の制振構造が備える液体制振装置の構造例2を示す図である。
【符号の説明】
G 基礎地盤
D 深度
10 構造物、原子炉建屋
15 原子炉格納容器
16 基礎版
19 液体
20 貯留槽
23 余剰空間
30 免震装置、積層ゴム支承
35 免震装置、プラグ入り積層ゴム支承
40 液体制振装置
41 貯留槽内壁
42 液面
50 振動エネルギー
100 制振構造

Claims (3)

  1. 原子炉格納容器等を収めた原子炉建屋に生じる振動を制振する構造であって、前記原子炉建屋とその支持地盤との間に配置され積層ゴム等からなる免震装置と、この原子炉建屋の振動周期に共振可能な深度でもって貯留槽内に液体を収容しその液面上に余剰空間を有する原子炉建屋付帯の液体制振装置と、を含み、
    前記貯留槽は、円形の内円内壁と、当該内円内壁よりも外側に位置する円形の外円内壁とを備え、前記貯留槽の水平断面が環状であり、
    前記原子炉建屋の所定装置が、前記環状の中心に配置されていることを特徴とする制振構造。
  2. 制振構造に用いる液体制振装置であって、原子炉格納容器等を収めた原子炉建屋の振動周期に共振可能な深度でもって貯留槽内に液体を収容しその液面上に余剰空間を有するとともに、
    前記貯留槽は、円形の内円内壁と、当該内円内壁よりも外側に位置する円形の外円内壁とを備え、前記貯留槽の水平断面が環状であり、
    前記原子炉建屋の所定装置が、前記環状の中心に配置されることを特徴とする、原子炉建屋付帯の液体制振装置。
  3. 請求項1に記載の制振構造を備える構造物。
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