JP4098848B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は塗布型の高記録密度の磁気記録媒体に関する。特に磁性層と実質的に非磁性の下層を有し、最上層に強磁性金属微粉末または六方晶フェライト微粉末を含む高密度記録用の磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスクの分野において、Co変性酸化鉄を用いた2MBのMF−2HDフロッピーディスクがパーソナルコンピュータに標準搭載されようになった。しかし扱うデータ容量が急激に増加している今日において、その容量は十分とは言えなくなり、フロッピーディスクの大容量化が望まれていた。
【0003】
従来、磁気記録媒体には酸化鉄、Co変性酸化鉄、CrO2 、強磁性金属粉末、六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散した磁性層を支持体に塗設したものが広く用いられる。この中でも強磁性金属微粉末と六方晶系フェライト微粉末は高密度記録特性に優れていることが知られている。
ディスクの場合、高密度記録特性に優れる強磁性金属微粉末を用いた大容量ディスクとしては10MBのMF−2TD、21MBのMF−2SDまたは六方晶フェライトを用いた大容量ディスクとしては4MBのMF−2ED、21MBフロプティカルなどがあるが、容量、性能的に十分とは言えなかった。このような状況に対し、高密度記録特性を向上させる試みが多くなされている。以下にその例を示す。
【0004】
ディスク状磁気記録媒体の特性を向上させるために、特開昭64−84418には酸性基とエポキシ基と水酸基を有する塩化ビニル樹脂を用いることが提案され、特公平3−12374にはHc1000Oe以上、比表面積25〜70m2/g の金属微粉末を用いることが提案され、特公平6ー28106には磁性体の比表面積と磁化量を定め、研磨剤を含ませることが提案されている。
【0005】
ディスク状磁気記録媒体の耐久性を改善させるために、特公平7−85304には不飽和脂肪酸エステルとエーテル結合を有する脂肪酸エステルを用いることが提案され、特公平7ー70045には分岐脂肪酸エステルとエーテル結合を有する脂肪酸エステルを用いることが提案され、特開昭54−124716にはモース硬度6以上の非磁性粉末と高級脂肪酸エステルを含ませることが提案され、特公平7−89407には潤滑剤を含む空孔の体積と表面粗さを0.005〜0.025μmとすることが提案され、特開昭61−294637には低融点と高融点の脂肪酸エステルを用いることが提案され、特公平7ー36216には磁性層厚みに対し1/4〜3/4の粒径の研磨剤と低融点の脂肪酸エステルを用いることが提案され、特開平3−203018にはAlを含むメタル磁性体と酸化クロム用いることが提案されている。
【0006】
非磁性の下層や中間層を有するディスク状磁気記録媒体の構成として、特開平3ー120613には導電層と金属微粉末を含む磁性層を有する構成が提案され、特開平6−290446には1μm以下の磁性層と非磁性層を有する構成が提案され、特開昭62−159337にはカーボン中間層と潤滑剤を含む磁性層からなる構成が提案され、特開平5−290358にはカーボンサイズを規定した非磁性層を有する構成が提案されている。
【0007】
一方、最近になり薄層磁性層と機能性非磁性層からなるディスク状磁気記録媒体が開発され、100MBクラスのフロッピーディスクが登場している。これらの特徴を示すものとして、特開平5−109061にはHcが1400Oe以上で厚さ0.5μm以下の磁性層と導電性粒子を含む非磁性層を有する構成が提案され、特開平5−197946には磁性層厚より大きい研磨剤を含む構成が提案され、特開平5−290354には磁性層厚が0.5μm以下で、磁性層厚の厚み変動を±15%以内とし、表面電気抵抗を規定した構成が、特開平6−68453には粒径の異なる2種の研磨剤を含ませ、表面の研磨剤量を規定した構成が提案されている。
【0008】
磁性層の厚み損失による再生出力の低下を改良するために、磁性層を薄層化することが知られており、例えば、特開平5ー182178号公報には支持体上に無機質粉末を含み、結合剤に分散してなる下層非磁性層と該非磁性層が湿潤状態にある内に強磁性粉末を結合剤に分散してなる1.0μm以下の厚みの上層磁性層を設けた磁気記録媒体が開示されている。
【0009】
しかしながら、急速なディスク状やテープ状の磁気記録媒体の大容量化、高密度化にともない、このような技術をもってしても満足な特性を得ることが難しくなってきていた。また耐久性と両立させることも困難な状況になってきている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は電磁変換特性、特に高密度記録特性が格段に改良されかつ優れた耐久性を併せ持ち、かつ高密度記録領域でのエラーレートが格段に改良された磁気記録媒体を提供することを目的としている。特に記録容量が0.2〜2Gbit/inch2 、特に好ましくは0.35〜2Gbit/inch2 という大容量のディスク状磁気記録媒体を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは特に高密度記録領域でのエラーレート、電磁変換特性と耐久性が格段に改良された磁気記録媒体を得るために鋭意検討した結果、以下のような媒体とすることで、本発明の目的である優れた高密度記録特性と優れた耐久性が得られることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は支持体上に実質的に非磁性である下層と強磁性金属微粉末または強磁性六方晶フェライト微粉末を結合剤中に分散してなる磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体において、前記磁気記録媒体の面記録密度が0.2〜2Gbit/inch2 であり、前記磁性層の乾燥厚みが0.05〜0.25μmであり、且つΦmが8.0×10-3〜1.0×10-3emu/cm2 であり、前記磁性層の抗磁力が1800Oe以上であり、かつ前記磁性層の表面粗さの10〜2μmの長波長の空間周波数強度(IL)と前記磁性層の表面粗さの1〜0.5μmの短波長の空間周波数強度(Is)の比(IL/Is)が1.5よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体とすることで、従来の技術では得ることができなかった優れた高密度特性と優れた耐久性を併せ持ち高密度記録領域でのエラーレートが格段に改良された磁磁気記録媒体を得ることができることを見いだしたものである。
【0013】
ここで実質的に非磁性である下層とは記録に関与しない程度に磁性を持っていても良いという意味であり、以降単に下層ともいう。
また、面記録密度とは、線記録密度とトラック密度を掛け合わせたものである。
Φmとは磁気記録媒体の単位面積当たりの磁化量である。Bm(ガウス)と厚みを掛け合わせたものであり、これは振動試料型磁束計(東英工業社製)を用い、Hm10kOeで測定した値で、直接測定できる値である。
【0014】
線記録密度とは記録方向1インチ当たりに記録する信号のビット数である。
これら線記録密度、トラック密度、面記録密度はシステムによって決まる値である。
また磁性層の表面粗さの10〜2μmの長波長の空間周波数強度(IL)と前記磁性層の表面粗さの1〜0.5μmの短波長の空間周波数強度(Is)とは、磁性層の表面粗さプロファイルデータに2次元のフーリエ変換処理を施し、各波長ごとの粗さ成分を分解した後、該当する波長成分の範囲を積分して得られる強度のことである。これらは原子間力顕微鏡(AFM)(米国デジタルインスツルメンツ社製)を用い、100μm×100μmの範囲を512X512画素のデータとして取り込み、算出した値である。
【0015】
即ち本発明は面記録密度の向上に対しては線記録密度の点で磁性層厚み、磁性層Hc、表面粗さで改良を図り、トラック密度の点でΦmの最適化を図ったものである。
【0016】
本発明の好ましい態様は次の通りである。
(1) 前記磁性層の乾燥厚みが0.05〜0.20μmであり、かつ前記磁性層中に平均粒子サイズが0.4μm以下の研磨剤を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
(2)前記面記録密度が0.35〜2Gbit/inch2 であることを特徴とする磁気記録媒体。
(3) 前記磁気記録媒体の前記面記録密度が0.35〜2Gbit/inch2 であり、かつ前記下層にモース硬度4以上の無機粉末を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
(4)前記磁性層の抗磁力が2000Oe以上であることを特徴とする磁気記録媒体。
(5)前記磁性層の表面粗さの10〜2μmの長波長の空間周波数強度(IL)と前記磁性層の表面粗さの1〜0.5μmの短波長の空間周波数強度(Is)の比(IL/Is)が0.5≦IL/Is≦1.3であることを特徴とする磁気記録媒体。
(6)前記磁気記録媒体がディスクであることを特徴とする磁気記録媒体。
【0017】
本発明は、上記構成とすることにより、従来の技術では得ることができなかった面記録密度が0.2〜2Gbit/inch2 更には面記録密度が0.35〜2Gbit/inch2 である磁気記録媒体であって、優れた高密度特性と優れた耐久性を併せ持ち、高密度領域でのエラーレートが顕著に改良された磁気記録媒体、特にディスク状磁気記録媒体を得ることができることを見いだしたものである。
【0018】
即ち従来の磁気記録媒体、特にフロッピ−ディスクは磁性層の表面粗さの10〜2μmの長波長の空間周波数強度(IL)と前記磁性層の表面粗さの1〜0.5μmの短波長の空間周波数強度(Is)の比(IL/Is)が1.5よりも大きいのが普通であった。このことは、従来の磁性層表面はうねりが微小突起にくらべて、はるかに大きかった。このうねり成分により電磁変換特性や耐久性が決まっていたと考えることができる。
【0019】
しかしながら本発明では(IL/Is)が1.5よりも小さい。本発明は、このような表面性の磁性層を有した磁気記録媒体とすることにより、優れた高密度特性と優れた耐久性を併せ持ち、高密度領域でのエラーレートが顕著に改良された磁気記録媒体が得られることがわかった。
尚、後述されるようにRaで定義される粗さは、波長(うねりや突起の分布に強く相関する)を特に限定せず、特定範囲での平均的粗さを数値化したものであり、本発明の範囲はこの波長を明確に定義することで、単なる平均値で管理するのではなく、うねりを抑制し、突起の分布を特定化して走行耐久性を確保することを狙ったものである。従って、Ra値が同じでも、うねり成分が大きいものは本発明の効果は得られず、上記比(IL/Is)を満足するようにうねり成分をある程度小さくすると本発明の効果が発揮されるのである。
【0020】
前述したようにILとIsは、磁性層の表面粗さプロファイルデータに2次元のフーリエ変換処理を施し、各波長ごとの粗さ成分を分解した後、該当する波長成分の範囲を積分して得られる強度のことであるから、本発明では従来に比べて長波長成分が大幅に減少し、むしろ短波長成分の方が多いのである。
本発明において、磁性層の表面性を上記(IL/Is)を1.5より小とするための手段としては、詳細は後述されるように、特に非常に平滑な支持体を用いることが有効であるが、下層及び上層に含まれる各種粉体の形状・サイズを制御すること、塗布条件(W/WかW/D)及び塗布後の配向条件の組み合わせを適宜選定すること、あるいはカレンダー処理、バーニッシュ処理などの表面処理条件を適宜選定する等の手段等が挙げられる。
【0021】
本発明において、(IL/Is)は、好ましくは0.5≦IL/Is≦1.3、更に好ましくは0.8≦IL/Is≦1.1の範囲である。
本発明は、面記録密度が0.2〜2Gbit/inch2 というかつて塗布型の磁気記録媒体では世の中に知られた製品では達成されたことのない面記録密度を有する磁気記録媒体を前提とするものであり、上記(IL/Is)の達成手段と一部重複するが、以下のようなポイントを有機的に結合した結果である。
【0022】
該ポイントは▲1▼高Hc、超平滑化、▲2▼複合潤滑剤や高耐久性結合剤、強磁性粉末の改良による耐久性確保、▲3▼磁性層の超薄層化と下層との界面の変動減、▲4▼粉体(強磁性粉末、非磁性粉末)の高充填化、▲5▼粉体(強磁性粉末、非磁性粉末)の超微粒子化、▲6▼ヘッドタッチの安定化、▲7▼寸法安定性とサーボ、▲7▼磁性層、支持体の熱収縮率改良、▲8▼高温、低温での潤滑剤の作用、等が挙げられる。
【0023】
マルチメデイア化が進むパソコンの分野ではこれまでのフロッピーディスクに代わる大容量の記録メデイアが注目され始め、米国IOMEGA(アイオメガ)社からZIPディスク(面記録密度:96Mbit/inch2 )として販売された。これは本件出願人が開発したATOMM(Advanced Super Thin Layer & High Output Metal Media Technology)を用いた下層と薄層磁性層を有する記録媒体であり、3.7インチで100MB以上の記録容量を持った製品が販売されている。100〜120MBの容量はMO(3.5インチ)とほぼ同じ容量であり、1枚で新聞記事なら7〜8月分収まるものである。データ(情報)の書き込み・読み出し時間を示す転送レートは、1秒当たり2MB以上とハードディスク並であり、これまでのFDの20倍、MOの2倍以上の早さを有し非常に大きな利点を持つ。さらに下層と薄層磁性層を有するこの記録媒体は現在のFDと同じ塗布型メデイアで大量生産が可能であり、MOやハードディスクに比べて低価格で有るというメリットを有する。
【0024】
本発明者らは、この様な媒体の知見をもとに鋭意研究を行った結果、前記ZIPディスクやMO(3.5インチ)よりも格段に記録容量の大きい面記録密度が0.2〜2Gbit/inch2 更には面記録密度が0.35〜2Gbit/inch2 というかって世の中に知られた製品では達成されたことのない高密度特性と優れた耐久性を併せ持ち、高密度記録領域でのエラーレートが格段に改良された磁気記録媒体、特にディスク状磁気記録媒体が得られたものであり、これは磁気テープ例えばコンピューターテープにも適用できる発明である。
【0025】
本発明の磁気記録媒体は超薄層の磁性層に高出力、高分散性に優れた超微粒子の磁性粉を含み、下層に球状又は針状などの無機粉末を含み、磁性層を薄くすることで磁性層内の磁力相殺を低減し、高周波領域での出力を大幅に高め、更に重ね書き特性も向上させたものである。磁気ヘッドの改良により、狭ギャップヘッドとの組合せにより超薄層の磁性層の効果が一層発揮でき、デジタル記録特性の向上が図れる。
【0026】
磁性層の厚みは高密度記録の磁気記録方式や磁気ヘッドから要求される性能にマッチするように0.05〜0.25μmの薄層に選択される。均一でかつ薄層にしたこのような磁性層は微粒子の磁性粉や非磁性粉を分散剤の使用と分散性の高い結合剤の組み合わせにより高度に分散させ、高充填化を図った。使用される磁性体は大容量FDやコンピューターテープの適性を最大限に引き出すために、高出力、高分散性、高ランダマイズ性に優れた磁性体を使用している。即ち非常に微粒子な強磁性金属微粉末または強磁性六方晶フェライト微粉末は、例えば、前者として好ましくは長軸長を0.1μm以下、結晶子サイズを80〜180Åとすることにより、更にCoを多く含み、焼結防止剤としてAlやYを含有させることにより高出力、高耐久性が達成できる。高転送レートを実現するために超薄層磁性層に適した3次元ネットワークバインダーシステムを用い、高速回転時における走行の安定性、耐久性を確保している。また広範囲な温湿度条件下での使用や高速回転使用時でも、その効力を維持できる複合潤滑剤を上下2層に配し、更に下層には潤滑剤のタンクとしての役割を持たせ、磁性層に常に適量の潤滑剤を供給できるようにし、磁性層の耐久性を高め、信頼性を向上させている。また下層のクッション効果は良好なヘッドタッチと安定した走行性をもたらすことができる。
【0027】
大容量記録システムでは高転送レートが求められる。このためには磁気ディスクの回転数を、従来のFDシステムに比べて1桁以上上げる必要がある。磁気記録の大容量化/高密度化に伴い、記録トラック密度が向上する。一般には媒体上にサーボ記録エリアを設け、記録トラックに対する磁気ヘッドのトレーサビリテイ確保を図っている。本発明の磁気記録媒体では支持体として等方的寸度安定性を高めたものを使用し、トレーサビリテイの一層の安定化をはかったものである。そして超平滑な支持体を用いることによって、磁性層の平滑性を更に向上できる。
【0028】
ディスク形態の磁気記録の高密度化には、線記録密度とトラック密度の向上が必要である。このうちトラック密度の向上には、支持体の特性が重要である。本発明の媒体では支持体の寸度安定性、特に等方性に配慮している。高トラック密度における記録再生では、サーボ記録は不可欠な技術であるが、支持体を出来るだけ等方化することで媒体サイドからもこの改良が図れる。
【0029】
本発明は磁性層を単層からATOMM構成にするメリットは次のように考えられる。
(1)磁性層の薄層構造化による電磁変換特性の向上
(2)潤滑剤の安定供給による耐久性の向上
(3)磁性層の平滑化による高出力
(4)磁性層の機能分離による要求機能付与が容易
これらの機能は、単に磁性層を重層化するだけでは達成できない。重層構造を構成するには、層を順次構成する「逐次重層方式」が一般的である。この方式は先ず、下層を塗布し、硬化、又は乾燥させた後、磁性層を同様に塗布し、硬化、表面処理を行う。FDは磁気テープと異なり、両面に同様な処理を施す。塗布工程後スリット工程、パンチ工程、シェル組み込み工程、サーテファイ工程を経て最終製品として完成する。
【0030】
磁性層薄層構造化により以下のような電磁変換特性の大幅な向上が出来る。
(1)記録減磁時特性の改良による高周波領域での出力向上、
(2)重ね書き(オーバーライト)特性の改良
(3)ウインドウマージンの確保
耐久性は磁気ディスクにとって重要な要素である。特に高転送レートを実現するために磁気ディスクの回転数を、従来のFDシステムに比べて1桁以上上げる必要があり、磁気ヘッド/カートリッジ内部品と媒体とが高速摺動する場合の媒体耐久性の確保は重要な課題である。媒体の耐久性を向上させる手段には、ディスク自身の膜強度を上げるバインダー処方と、磁気ヘッドとの滑り性を維持する潤滑剤処方がある。本発明の媒体ではバインダー処方に現行のFDシステムで実績のある3次元ネットワークバインダーシステムを採用している。
【0031】
潤滑剤は、使用される種々の温・湿度環境下でそれぞれ優れた効果を発揮する潤滑剤を複数組み合わせて使用し、広範囲な温度(低温、室温、高温)、湿度(低湿、高湿)環境下でも各潤滑剤がそれぞれ機能を発揮し、総合的に安定した潤滑効果を維持できるものである。
また上下2層の構造を活用し、下層に潤滑剤のタンク効果を持たせることで磁性層に常に適量の潤滑剤が供給されるようにし、磁性層の耐久性を向上できるようにしたものである。超薄層の磁性層に含ませることが出来る潤滑剤量には限度があり、単純に磁性層をうすくすることは潤滑剤の絶対量が減少し、走行耐久性の劣化につながる。この場合、両者のバランスを得ることは困難であった。上下2層に別々の機能を持たせ、互いに補完することで電磁変換特性の向上と耐久性の向上を両立させた。この機能分化は磁気ヘッドとメデイアを高速摺動させるシステムでは特に有効であった。
【0032】
下層には潤滑剤の保持機能の他に表面電気抵抗のコントロール機能を付与できる。一般に電気抵抗のコントロールには、磁性層中にカーボンブラック等の固体導電材料を加えることが多い。これらは磁性体の充填密度を上げることの制約となるほか、磁性層が薄層になるに従い、表面粗さにも影響を与える。下層に導電材料を加えることによってこれらの欠点を除くことができる。
【0033】
マルチメデイア社会になり、画像記録へのニーズは産業界のみならず家庭でも益々強くなっており、本発明の大容量磁気記録媒体は単に文字、数字などのデータ以外に、画像記録用媒体としての機能/コストの要請に十分応えられる能力を持つものである。本発明の大容量媒体は実績のある塗布型磁気記録媒体をベースとしており、長期信頼性に富み、またコストパフォーマンスに優れているものである。
【0034】
本発明は以上のような種々の要因を積み重ね、相乗的、有機的に作用させ、初めて達成されるものである。
【0035】
【発明の実施の形態】
[磁性層]
本発明の磁気記録媒体は下層と磁性層を支持体の片面だけでも、両面に設けても良い。上下層は下層を塗布後、下層が湿潤状態の内(W/W=ウェット・オン・ウェット法)でも、乾燥した後(W/D=ウェット・オン・ドライ法)にでも磁性層を設けることが出来る。生産得率の点から同時、又は逐次湿潤塗布が好ましいが、ディスクの場合は乾燥後塗布も十分使用できる。本発明の重層構成で同時、又は逐次湿潤塗布(W/W)では上層/下層が同時に形成できるため、カレンダー工程などの表面処理工程を有効に活用でき、超薄層でも磁性層の表面粗さを良化できる。磁性層の抗磁力Hcは1800Oe以上であることが必要であり、強磁性金属微粉末ではBmは2000〜5000G(ガウス)、六方晶フェライト微粉末では1000〜3000Gで有ることが好ましい。
【0036】
[強磁性金属微粉末]
本発明の磁性層に使用する強磁性金属微粉末としては、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性金属微粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。Coの含有量はFeに対して0原子%以上50原子%以下が好ましく、さらに好ましくは15原子%以上45%以下、より好ましくは20原子%以上45原子%以下である。Yの含有量は1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。Alは1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。これらの強磁性金属微粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44−14090号、特公昭45−18372号、特公昭47−22062号、特公昭47−22513号、特公昭46−28466号、特公昭46−38755号、特公昭47−4286号、特公昭47−12422号、特公昭47−17284号、特公昭47−18509号、特公昭47−18573号、特公昭39−10307号、特公昭46−39639号、米国特許第3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
【0037】
強磁性金属微粉末には少量の水酸化物、または酸化物が含まれてもよい。強磁性金属微粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性金属微粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
【0038】
本発明の磁性層の強磁性金属微粉末をBET法による比表面積で表せば、通常、45〜80m2 /gであり、好ましくは50〜70m2/gである。45m2/g以下ではノイズが高くなり、80m2/g以上では表面性が得にくく好ましくない。本発明の磁性層の強磁性金属微粉末の結晶子サイズは通常、80〜180Åであり、好ましくは100〜180Å、更に好ましくは110〜175Åである。強磁性金属微粉末の長軸径は通常、0.01μm以上0.25μm以下であり、好ましくは0.03μm以上0.15μm以下であり、さらに好ましくは0.03μm以上0.12μm以下である。強磁性金属微粉末の針状比は3以上15以下が好ましく、さらには5以上12以下が好ましい。強磁性金属微粉末のσs は通常、100〜180emu/gであり、好ましくは110emu/g 〜170emu/g 、更に好ましくは125〜160emu/g である。強磁性金属微粉末の抗磁力は通常、1700Oe以上3500Oe以下が好ましく、更に好ましくは1,800Oe以上3000Oe以下である。
【0039】
強磁性金属微粉末の含水率は0.01〜2%(以下、単なる「%」は、「重量%」を指す)とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属微粉末の含水率は最適化するのが好ましい。強磁性金属微粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性金属微粉末は必要に応じ、表面処理を行い、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などが表面に存在していてもかまわない。その量は強磁性金属微粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2 以下になり好ましい。強磁性金属微粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属微粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、米粒状、紡錘状のいずれでもかまわない。強磁性金属微粉末自体のSFDは小さい方が好ましく、0.8以下が好ましい。強磁性金属微粉末のHcの分布を小さくする必要がある。尚、SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また、磁化反転がシャープでピークシフトも少なくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hcの分布を小さくするためには、強磁性金属微粉末においてはゲ−タイトの粒度分布を良くする、焼結を防止するなどの方法がある。
【0040】
[六方晶フェライト微粉末]
本発明の磁性層に含まれる六方晶フェライトとしては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等がある。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、SbーZn−Co、Nb−Zn等の元素で置換したものを使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。粒子サイズは六角板径で通常、10〜200nm、好ましくは10〜100nmであり、特に好ましくは10〜80nmである。
【0041】
特にトラック密度を上げるため磁気抵抗ヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があり、板径は40nm以下が好ましいが、10nm以下では熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。200nm以上ではノイズが高く、いずれも高密度磁気記録には向かない。板状比(板径/板厚)は1〜15が望ましい。好ましくは1〜7である。板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性が得られない。15より大きいと粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜200m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。磁性体で測定される抗磁力Hcは500Oe〜5000Oe程度まで作成できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明ではHcは1700Oeから4000Oe程度であるが、好ましくは1800Oe以上、3500Oe以下である。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、2000Oe以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは40emu/g〜80emu/gである。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の化合物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。六方晶フェライトの製法としては、▲1▼酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、▲2▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、▲3▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
【0042】
[下層]
次に下層に関する詳細な内容について説明する。本発明の下層は実質的に非磁性であればその構成は制限されるべきものではないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、例えば、無機粉末あるいは有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。該無機粉末は、通常、好ましくは非磁性粉末であるが、下層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末も使用され得るものである。
【0043】
該非磁性粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独または組合せで使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタン、α酸化鉄である。これら非磁性粉末の粒子サイズは0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性粉末の粒子サイズは0.01μm〜0.2μmである。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径0.08μm以下が好ましく、針状金属酸化物である場合は、長軸長が0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。タップ密度は0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性粉末の含水率は0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%、更に好ましくは0.3〜1.5重量%である。非磁性粉末のpHは通常、2〜11であるが、pHは5.5〜10の間が特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は通常、1〜100m2/g、好ましくは5〜80m2/g、更に好ましくは10〜70m2/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004μm〜1μmが好ましく、0.04μm〜0.1μmが更に好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は通常、5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は通常、1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。モース硬度は4以上10以下のものが好ましい。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m2 、好ましくは2〜15μmol/m2 、さらに好ましくは3〜8μmol/m2 である。pHは3〜6の間にあることが好ましい。これらの非磁性粉末の表面は表面処理されてAl2O3 、SiO2 、TiO2 、ZrO2 、SnO2 、Sb2O3 、ZnO、Y2O3 が存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3 、SiO2 、TiO2 、ZrO2 であるが、更に好ましいのはAl2O3 、SiO2 、ZrO2 である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0044】
本発明の下層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100,ZA−G1、戸田工業社製αヘマタイトDPN−250,DPN−250BX,DPN−245,DPN−270BX,DPN−500BX,DBN−SA1,DBN−SA3、石原産業製酸化チタンTTO−51B,TTO−55A,TTO−55B,TTO−55C,TTO−55S,TTO−55D,SN−100、αヘマタイトE270,E271,E300,E303、チタン工業製酸化チタンSTT−4D,STT−30D,STT−30,STT−65C、αヘマタイトα−40、テイカ製MT−100S,MT−100T,MT−150W,MT−500B,MT−600B,MT−100F,MT−500HD、堺化学製FINEX−25,BF−1,BF−10,BF−20,ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y,DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM,TiO2P25、宇部興産製100A,500A、及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0045】
下層にカ−ボンブラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。また、下層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。カーボンブラックの種類はゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。下層のカーボンブラックは所望する効果によって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用することでより効果が得られることがある。
【0046】
下層のカ−ボンブラックの比表面積は通常、100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は通常、20〜400ml/100g、好ましくは30〜400ml/100gである。カ−ボンブラックの粒子径は通常、5mμ〜80mμ、好ましく10〜50mμ、さらに好ましくは10〜40mμである。カ−ボンブラックのpHは通常、2〜10、含水率は通常、0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製 BLACKPEARLS 2000,1300,1000,900,800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製 #3050B,#3150B,#3250B,#3750B,#3950B,#950,#650B,#970B,#850B,MA−600,MA−230,#4000,#4010、コロンビアンカ−ボン社製 CONDUCTEX SC、RAVEN 8800,8000,7000,5750,5250,3500,2100,2000,1800,1500,1255,1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどがあげられる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カ−ボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機粉末に対して50重量%を越えない範囲、下層総重量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカ−ボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。本発明で使用できるカ−ボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」(カ−ボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0047】
また下層には有機粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号、特開昭60−255827号に記されているようなものが使用できる。
【0048】
下層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は以下に記載する磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
[結合剤]
【0049】
本発明に使用される結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものである。
【0050】
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものがあげられる。
【0051】
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM,−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2 、−O−P=O(OM)2 、(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、−OH、−NR2 、−N+R3 (Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
【0052】
本発明に用いられるこれらの結合剤の具体的な例としてはユニオンカーバイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製、MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製、ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製、MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などが挙げられる。
【0053】
本発明の下層、磁性層に用いられる結合剤は非磁性粉末または磁性粉末に対し、5〜50%の範囲、好ましくは10〜30%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20%、ポリイソシアネートは2〜20%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみまたはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/mm2 、降伏点は0.05〜10Kg/mm2が好ましい。
【0054】
本発明の磁気記録媒体は下層及び磁性層の二層以上からなる。尚、磁性層は厚み、組成等の異なる複数の層から構成してもよい。この場合、磁性層の総和は、前記本発明の範囲とする。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ下層、磁性層あるいは各磁性層とで変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層でバインダー量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層のバインダー量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、下層のバインダー量を多くして柔軟性を持たせることができる。
【0055】
本発明に用いるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネートHL,コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR,ミリオネートMTL、武田薬品社製、タケネートD−102,タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製、デスモジュールL,デスモジュールIL、デスモジュールN,デスモジュールHL,等がありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
【0056】
[カーボンブラック、研磨剤]
本発明の磁性層に使用されるカーボンブラックはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5mμ〜300mμ、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/cc、が好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800,700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製、#80、#60,#55、#50、#35、三菱化成工業社製、#2400B、#2300、#900,#1000#30,#40、#10B、コロンビアンカーボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50,40,15、RAVEN−MT−P、日本EC社製、ケッチェンブラックEC、などがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は磁性体に対する量の0.1〜30%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは磁性層、下層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0057】
本発明に用いられる研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独または組合せで使用される。また、これらの研磨剤同士の複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。
【0058】
これら研磨剤の平均粒子サイズは0.01〜2μmが好ましく、更に好ましくは0.4μm以下であり、特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/gが好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。具体的には住友化学社製AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT−20、HIT−30、HIT−55、HIT−60、HIT−70、HIT−80、HIT−100、レイノルズ社製、ERC−DBM、HP−DBM、HPS−DBM、不二見研磨剤社製、WA10000、上村工業社製、UB20、日本化学工業社製、G−5、クロメックスU2、クロメックスU1、戸田工業社製、TF100、TF140、イビデン社製、ベータランダムウルトラファイン、昭和鉱業社製、B−3などが挙げられる。これらの研磨剤は必要に応じ下層に添加することもできる。下層に添加することで表面形状を制御したり、研磨剤の突出状態を制御したりすることができる。これら磁性層、下層の添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
【0059】
[添加剤]
本発明の磁性層と下層に使用される、添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などをもつものが使用される。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール、(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。
【0060】
これらの具体例としては脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2ーエチルヘキシルステアレート、2ーオクチルドデシルパルミテート、2ーヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル、アルコール類ではオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコールなどがあげられる。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0061】
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量、および相乗的効果を生み出す潤滑剤の併用比率は目的に応じ最適に定められるべきものである。下層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面への滲み出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面への滲み出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させるなど考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。一般には潤滑剤の総量として磁性粉末または非磁性粉末に対し、0.1%〜50%、好ましくは2%〜25%の範囲で選択される。
【0062】
また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性および非磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダーした後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。
【0063】
本発明で用いられる有機溶剤は公知のものが使用でき、例えば特開平6−68453に記載の溶剤を用いることができる。
【0064】
[層構成]
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は支持体が2〜100μm、好ましくは2〜80μmである。コンピューターテープの支持体は、3.0〜6.5μm(好ましくは、3.0〜6.0μm、更に好ましくは、4.0〜5.5μm)の範囲の厚さのものが使用される。
【0065】
支持体と下層また磁性層の間に密着性向上のための下塗り層を設けてもかまわない。本下塗層厚みは0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmである。本発明は通常支持体両面に下層と磁性層を設けてなる両面磁性層ディスク状媒体であっても、片面のみに設けてもかまわない。この場合、帯電防止やカール補正などの効果を出すために下層、磁性層側と反対側にバックコート層を設けてもかまわない。この厚みは通常、0.1〜4μm、好ましくは0.3〜2.0μmである。これらの下塗層、バックコート層は公知のものが使用できる。
【0066】
本発明の媒体の磁性層の厚みは用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、0.05μm以上0.25μm以下であり、好ましくは0.05μm以上0.20μm以下である。磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
【0067】
本発明になる媒体の下層の厚みは0.2μm以上5.0μm以下、好ましくは0.3μm以上3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以上2.5μm以下である。なお、本発明媒体の下層は実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、たとえば不純物としてあるいは意図的に少量の磁性体を含んでも、本発明の効果を示すものであり、本発明と実質的に同一の構成と見なすことができることは言うまでもない。実質的に非磁性とは下層の残留磁束密度が100G以下または抗磁力が100Oe以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力をもたないことを示す。
【0068】
[支持体]
本発明に用いられる支持体はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。ポリエチレンナフタレート、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。また必要に応じ、磁性面とベース面の表面粗さを変えるため特開平3−224127に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などをおこなっても良い。また本発明の支持体としてアルミまたはガラス基板を適用することも可能である。
【0069】
本発明の目的を達成するには、支持体としてはWYKO社製の表面粗さ計TOPO−3Dのmirau法で約250μm×250μmの面積での測定で中心面平均表面粗さRaが好ましくは8.0nm以下、更に好ましくは4.0nm以下、特に好ましくは2.0nm以下のものである。これらの支持体は単に中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa,Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末があげられる。支持体の最大高さSRmaxは1μm以下、十点平均粗さSRzは0.5μm以下、中心面山高さはSRpは0.5μm以下、中心面谷深さSRvは0.5μm以下、中心面面積率SSr は10%以上、90%以下、平均波長Sλaは5μm以上、300μm以下が好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールできるものであり、0.01μmから1μmの大きさのもの各々を0.1mm2 あたり0個から2000個の範囲でコントロールすることができる。
【0070】
本発明に用いられる支持体のF−5値は好ましくは5〜50Kg/mm2、また、支持体の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100Kg/mm2、弾性率は100〜2000Kg/mm2 が好ましい。温度膨張係数は10-4〜10-8/℃であり、好ましくは10-5〜10-6/℃である。湿度膨張係数は10-4/RH%以下であり、好ましくは10-5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
【0071】
[製法]
本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する磁性粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は磁性粉末または非磁性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)および磁性粉末100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338、特開平1−79274に記載されている。また、磁性層液および下層液を分散させるにはガラスビーズを用ることができるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0072】
本発明で重層構成の磁気記録媒体を塗布する場合、以下のような方式を用いることが好ましい。第一に磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウェット状態のうちに特公平1−46186や特開昭60−238179,特開平2−265672に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法があり、第二に特開昭63−88080、特開平2−17971,特開平2−265672に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する方法があり、第三に特開平2−174965に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により上下層をほぼ同時に塗布する方法である。なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174や特開平1−236968に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471に開示されている数値範囲を満足する必要がある。本発明の構成を実現するには下層を塗布し乾燥させたのち、その上に磁性層を設ける逐次重層塗布を用いてもむろんかまわず、本発明の効果が失われるものではない。ただし、塗布欠陥を少なくし、ドロップアウトなどの品質を向上させるためには、前述の同時重層塗布を用いることが好ましい。
【0073】
デイスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属微粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶フェライトの場合は一般的に面内および垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用い円周配向してもよい。
【0074】
磁気テープの場合はコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に配向する。乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい、また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行なうこともできる。
【0075】
カレンダ処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールまたは金属ロールで処理するが、特に両面磁性層とする場合は金属ロール同志で処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。線圧力は好ましくは200Kg/cm以上、さらに好ましくは300Kg/cm以上である。
【0076】
[物理特性]
本発明になる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は強磁性金属微粉末を用いた場合2000G以上5000G以下、六方晶フェライトをもちいた場合は1000G以上3000G以下が好ましい。磁性層の抗磁力Hcは1800以上5000Oe以下、好ましくは2000Oe以上3000Oe以下であり、磁性層のHrは1500以上5000Oe以下、好ましくは1700Oe以上3000Oe以下である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDおよびSFDrは0.6以下が好ましい。角形比は2次元ランダムの場合は0.55以上0.67以下で、好ましくは0.58以上、0.64以下、3次元ランダムの場合は0.45以上、0.55以下が好ましく、垂直配向の場合は垂直方向に0.6以上好ましくは0.7以上、反磁界補正を行った場合は0.7以上好ましくは0.8以上である。2次元ランダム、3次元ランダムとも配向度比は0.8以上が好ましい。2次元ランダムの場合、垂直方向の角形比、Br、HcおよびHrは面内方向の0.1〜0.5倍以内とすることが好ましい。
【0077】
磁気テープの場合、角型比は0.7以上、好ましくは0.8以上である。
本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は温度−10℃から40℃、湿度0%から95%の範囲において0.5以下、好ましくは0.3以下、表面固有抵抗は好ましくは磁性面104〜1012オーム/sq、帯電位は−500Vから+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は面内各方向で好ましくは100〜2000Kg/mm2 、破断強度は好ましくは10〜70Kg/mm2 、磁気記録媒体の弾性率は面内各方向で好ましくは100〜1500Kg/ mm2 、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっとも好ましくは0.1%以下である。磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50℃以上120℃以下が好ましく、下層のそれは0℃〜100℃が好ましい。損失弾性率は1×106 〜8×109 dyne/cm2の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向で10%以内でほぼ等しいことが好ましい。磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/ m2 以下、さらに好ましくは10mg/ m2 以下である。塗布層が有する空隙率は下層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0078】
磁性層の中心面平均表面粗さRaはWYCO社製TOPO−3Dのmirau法を用いて約250μm×250μmの面積での測定で通常、4.0nm以下、好ましくは3.8nm以下、さらに好ましくは3.5nm以下である。磁性層の最大高さSRmaxは0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20%以上、80%以下、平均波長Sλaは5μm以上、300μm以下が好ましい。磁性層の表面突起は0.01μmから1μmの大きさのものを0個から2000個の範囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0079】
本発明の磁気記録媒体で下層と磁性層を有する場合、目的に応じ下層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に下層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。
【0080】
【実施例】
<塗料の作製>
磁性塗料 ML−1(針状磁性粉使用)
磁性塗料 ML−2(針状磁性粉使用)
磁性塗料 ML−3(針状磁性粉使用)
磁性塗料 ML−4(板状磁性粉使用)
磁性塗料 ML−5(板状磁性粉使用)
下層塗料 NU−1(球状無機粉末使用)
下層塗料 NU−2(球状無機粉使用)
非磁性塗料 NU−3(球状無機粉使用)
非磁性塗料 NU−4(針状無機粉使用)
非磁性塗料 NU−5(針状無機粉使用)
製法1 (デイスク:W/W)
上記10の塗料のそれぞれについて、各成分をニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを下層の塗布液には10部、磁性層の塗布液には10部を加え、さらにそれぞれにシクロヘキサノン40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
【0081】
得られた下層塗布液を、乾燥後の厚さが1.5μmになるようにさらにその直後にその上に磁性層の厚さが0.15μmになるように、厚さ62μmで中心面平均表面粗さが3nmのポリエチレンテレフタレート支持体(支持体 B−1)上に同時重層塗布をおこない、両層がまだ湿潤状態にあるうちに周波数50Hz、磁場強度250ガウスまた周波数50Hz、120ガウスの2つの磁場強度交流磁場発生装置の中を通過されランダム配向処理(配向 O−1)をおこない乾燥後、7段のカレンダで温度90℃、線圧300Kg/cmにて処理を行い、3.7吋に打ち抜き表面研磨処理施した後、ライナーが内側に設置済の3.7吋のカートリッジ(米 Iomega社製 zip−diskカートリッジ)に入れ、所定の機構部品を付加し、3.7吋フロッピーディスクを得た。
【0082】
また一部のサンプルについてはランダマイズ配向処理の前に4000Gの同極対抗Co磁石による長手配向を施した(配向 O−2)。
【0083】
この場合、十分なランダマイズ化が最終的行われるように交流磁場発生装置の周波数と磁場強度を高くすることが好ましく、これにより配向度比98%以上を得ることができる。
なおバリウムフェライト磁性体を用いる場合は、上記配向方法以外に垂直配向(配向 O−3)を施すことが可能である。また、必要に応じ、ディスク形状に打ち抜いたあと高温でのサーモ処理(通常50℃〜90℃)を行ない塗布層の硬化処理を促進させる、研磨テープでバーニッシュ処理をおこない、表面の突起を削るなどの後処理を行ってもよい。
製法2 (デイスク:W/D)
上記10の塗料のそれぞれについて、各成分をニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを下層の塗布液には10部、磁性層の塗布液には10部を加え、さらにそれぞれにシクロヘキサノン40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
【0084】
得られた下層塗布液を、乾燥後の厚さが1.5μmになるように厚さ62μmで中心面平均表面粗さが3nmのポリエチレンテレフタレート支持体(支持体B−1)上に塗布し一度乾燥させ、カレンダ処理を行ったのち、さらにその上に磁性層の厚さが0.15μmになるようにブレード方式により磁性層を塗布、周波数50Hz、磁場強度250ガウスまた周波数50Hz、120ガウスの2つの磁場強度交流磁場発生装置の中を通過されランダム配向処理(配向 O−1)をおこない、これ以降については製法1と同様に行った。また下層のカレンダー処理を行わない方法をとることもできる。
製法3 (デイスク:スピンコート)
上記10の塗料のそれぞれについて、各成分をニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを下層の塗布液には10部、磁性層の塗布液には10部を加え、さらにそれぞれにシクロヘキサノン40部を加え,1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
【0085】
得られた下層塗布液を、乾燥後の厚さが1.5μmになるように厚さ62μmで中心面平均表面粗さが3nmのポリエチレンテレフタレート支持体(支持体 B−1)上にスピンコート塗布し一度乾燥させたのち、さらにその上に磁性層の厚さが0.15μmになるようにスピンコートにより磁性層を塗布、6000Gの同極対抗Co磁石により円周方向に配向処理をおこなった(配向 O−4)。これを製法1と同様な圧力が得られるバッチ方式の圧延処理を行い表面を平滑化した。これ以降については製法1と同様に行った。また、下層をスピンコ―ト塗布し下層が未乾燥のうちにその上に磁性層をスピンコートする塗布する方式を用いることもできる。スピンコート方式を用いることで、記録方向の残留磁化量が大きくなるばかりでなく、バリウムフェライトや短針状比のメタル磁性粉末の垂直磁化成分を低減させ再生波形の対称性を良好にすることができる。
【0086】
上記製法で使用される支持体、配向法及び製法2で用いるバック層塗料を以下に示す。
支持体 B−1 ポリエチレンテレフタレート
支持体 B−2 ポリエチレンナフタレート
支持体 B−3 ポリエチレンテレフタレート
【0087】
配向 O−1 ランダマイズ配向を行う。
O−2 Co磁石で長手方向に配向した後、ランダマイズ配向を行う。
O−3 Co磁石で垂直配向を行う。
O−4 Co磁石で円周配向を行う。
以上のような各方法を適宜、表1のように組み合わせて得られたサンプルについて磁気特性、(IL/Is)等を測定し、表1に結果を示し、また、面記録密度、エラーレート、耐久性等を表2に示した。尚、実施例8、比較例4は、製法1で使用される支持体 B−1に代えてB−2、B−3を用いた。また、比較例2は、製法5で使用される配向 O−5に代えてO−1を用いた。
(1)磁気特性(Hc):振動試料型磁束計(東英工業社製)を用い、Hm10KOeで測定した。
(2)面記録密度は、線記録密度とトラック密度を掛け合わせたものである。
(3)線記録密度は記録方向1インチ当たりに記録する信号のビット数である。(4)トラック密度は、1インチ当たりのトラック数である。
(5)Φmは磁気記録媒体の単位面積当たりの磁化量である。Bm(ガウス)と厚みを掛け合わせたものであり、これは振動試料型磁束計(東英工業社製)を用い、Hm10kOeで測定した値で、直接測定できる値である。
(6)ディスクのエラーレートは上記の線記録密度の信号を(2,7)RLL変調方式をディスクに記録し測定した。
(7)磁性層厚みは 磁気記録媒体を長手方向に渡ってダイヤモンドカッターで約0.1μmの厚味に切り出し、透過型電子顕微鏡で倍率10000倍〜100000倍、好ましくは20000倍〜50,000倍で観察し、その写真撮影を行った。写真のプリントサイズはA4〜A5である。その後、磁性層、下層の強磁性粉末や非磁性粉末の形状差に注目して界面を目視判断して黒く渕どり、かつ磁性層表面も同様に黒く渕どった。その後、Zeiss社製画像処理装置IBAS2にて渕どりした線の長さを測定した。試料写真の長さが21cmの場合、測定を85〜300回行った。その際の測定値の平均値をdとし、その測定値の標準偏差σとした。dは、特開平5−298653の記載により、σは、数2により算出した。di は各測定値であり、nは、85〜300である。
(8)磁性層の表面粗さの10〜2μmの長波長の空間周波数強度(IL)と前記磁性層の表面粗さの1〜0.5μmの短波長の空間周波数強度(Is)は、原子間力顕微鏡(AFM)(米国デジタルインスツルメンツ社製)を用い、100×100μmの範囲を512X512画素のデータとして取り込んだ後、平滑化フィルター処理を行って得られた表面粗さプロファイルに2次元のフーリエ変換処理を施して各波長ごとの粗さ成分に分解する。そして、該当する波長成分の範囲内の強度を積分し、得られた値をそれぞれ(IL),(Is)とした。
(9)耐久性:フロッピーディスクドライブ(米 Iomega社製 ZIP100:回転数2968rpm)を用い半径38mm位置にヘッドを固定し記録密度34kbpiで記録を行った後その信号を再生し100%とした。その後、以下のフローを1サイクルとするサーモサイクル環境で500時間以上の走行がOKであるものを○、500時間未満の走行のものを×とした。走行24時間おきに出力をモニターしその出力が初期の値の70%以下となった時点をNGとした。
(サーモサイクルフロー)
25℃、50%RH 1時間→(昇温 2時間)→60℃、20%RH 7時間→(降温 2時間)→25℃、50%RH 1時間→(降温 2時間)→5℃、50%RH 7時間→(昇温 2時間)→<これを繰り返す>
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
実施例18〜20および参考例1では実施例13のディスクを用い、線記録密度とトラック密度を変えて同様にエラーレートを測定した。
【0091】
上記表の結果から(IL/Is)が1.5未満の本発明の磁気記録媒体は従来のディスク状媒体、即ち(IL/Is)が1.5以上の比較例に比べ、特に高密度記録領域でのエラーレートが10-5以下で格段に良好であることがわかる。
【0092】
【発明の効果】
本発明は非磁性支持体上に実質的に非磁性である下層と強磁性金属微粉末または強磁性六方晶フェライト微粉末を結合剤中に分散してなる磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体において、前記磁気記録媒体の面記録密度が0.2〜2Gbit/inch2 であり、前記磁性層の乾燥厚みが0.05〜0.25μmであり、且つΦmが8.0×10-3〜1.0×10-3emu/cm2 であり、前記磁性層の抗磁力が1800Oe以上であり、かつ前記磁性層の表面粗さの10〜2μmの長波長の空間周波数強度(IL)と前記磁性層の表面粗さの1〜0.5μmの短波長の空間周波数強度(Is)の比(IL/Is)が1.5よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体とすることで、従来の塗布型の磁気記録媒体の技術では得ることができなかった優れた高密度特性と優れた耐久性を併せ持つ高密度記録領域でのエラーレートが格段に改良された磁磁気記録媒体を得ることができる。
Claims (9)
- 支持体上に実質的に非磁性である下層と強磁性六方晶フェライト微粉末を結合剤中に分散してなる磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体において、前記磁性層の乾燥厚みが0.05〜0.25μmであり、且つΦmが8.0×10−3〜1.0×10−3emu/cm2であり、前記磁性層の抗磁力が1800Oe以上であり、かつ前記磁性層の表面粗さの10〜2μmの長波長の空間周波数強度(IL)と前記磁性層の表面粗さの1〜0.5μmの短波長の空間周波数強度(Is)の比(IL/Is)が1.5よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体。
- 支持体上に実質的に非磁性である下層と強磁性金属微粉末を結合剤中に分散してなる磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体において、前記磁性層の乾燥厚みが0.05〜0.25μmであり、且つΦmが8.0×10 −3 〜1.0×10 −3 emu/cm 2 であり、前記磁性層の抗磁力が1800Oe以上であり、かつ前記磁性層の表面粗さの10〜2μmの長波長の空間周波数強度(I L )と前記磁性層の表面粗さの1〜0.5μmの短波長の空間周波数強度(I s )の比(I L /I s )が1.5よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体。
- 前記磁気記録媒体の前記面記録密度が0.2〜2Gbit/inch2であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層の乾燥厚みが0.05〜0.20μmであり、かつ前記磁性層中に平均粒子サイズが0.4μm以下の研磨剤を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層の抗磁力が2000Oe以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層の表面粗さの10〜2μmの長波長の空間周波数強度(IL)と前記磁性層の表面粗さの1〜0.5μmの短波長の空間周波数強度(Is)の比(IL/Is)が0.5≦IL/Is≦1.3であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁気記録媒体がディスクであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の磁気記録媒体。
- 前記下層にモース硬度4以上の無機粉末を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁気記録媒体の前記面記録密度が0.35〜2Gbit/inch 2 であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の磁気記録媒体。
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