JP4091835B2 - 光ファイバ固定具及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は光通信ネットワーク内などに使用される光部品であり、光ファイバを相互に接続する光ファイバ固定具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光通信システム、光電送システム、波長多重通信などの発展に伴い種々の光デバイスや光モジュールが使用されている。そのなかで光ファイバを相互に接続する光コネクタ用フェルールは、使用量が増加しており、重要な基幹部品になっている。
【0003】
一般的な光コネクタは、図6に示すように、中央に貫通孔31を有するジルコニアセラミックスなどからなるフェルール30の一方の端部32を、ファイバ圧入孔36を有する金属製の保持フランジ34に備えたフェルール圧入凹部35に圧入し、固定されている。
【0004】
この保持フランジ34にフェルール30を固定した後、保持フランジ34のフェルール30と反対側からファイバ圧入孔36に光ファイバ39と接着剤を圧入し接着するが、この時、光ファイバ39は先端の被覆を除去して芯線38をフェルール30の貫通孔31内に嵌入し、さらに被覆部37は保持フランジ34のファイバ圧入孔36に保持されることになる。
【0005】
そして、光コネクタを構成する場合は、上記フェルール30及び保持フランジ34をハウジング(不図示)内に装着し、同様に構成されたもう一方のフェルール(不図示)との間で先端面33同士を突き合わせることによって、2つの光ファイバ間で光信号を伝送することができる。
【0006】
また光モジュールを構成する場合は、光電変換装置を備えたパッケージにフェルール30を接合することによって、光電変換素子に光信号を伝送することができる。
【0007】
ところで、従来の保持フランジ34のフェルール圧入凹部35の内径寸法とフェルール30の外径寸法には厳しい寸法精度が要求されていた。特に、保持フランジ34のフェルール圧入凹部35は、内寸の寸法公差として0.001〜0.005mm程度の厳しい公差が要求され、加工が困難であった。
【0008】
このように厳しい加工精度が要求される理由としては、上記フェルール圧入凹部35の内径寸法がフェルール30の外径寸法とほとんど変わらないか大きい場合には、フェルール30をしっかりと支持固定することができず、光ファイバ39を入れてもフェルール30が保持フランジ34から抜けて光ファイバ39を折ってしまう恐れがあったからである。
【0009】
一方、上記フェルール圧入凹部35の内径寸法がフェルール30の外径寸法に対して小さすぎると組立不能となり、あるいは圧入できてもフェルール30とそのファイバ圧入孔36が締まり、光ファイバ39を圧入できなくなるなどの不具合があった。
【0010】
これらの問題を解決する手段として、特許文献1には、保持フランジのフェルール圧入凹部の壁面に多数の溝または突起を形成し、フェルールの端部を嵌入させることによって、コストが安い寸法精度の悪い保持フランジであっても保持力を高めることが可能となる技術が開示されている。
【0011】
また、一般的に金属とセラミックなどとを強固に接合するため、焼き嵌めという方法が用いられている。孔部を有する金具を加熱して膨張させ、そこにセラミックスを嵌めこみ、その後冷却して金具を収縮させて接合するものであり、強固な保持力が得られるため、エンジンのローター部分などに多用されている。光部品については、適用事例はまだ多くないが、例えば、特許文献2では光コネクタ用レセプタクル内にセラミック製のスリーブを焼き嵌めによって形成した例が、また、特許文献3にはフェルールに金属の胴体(保持フランジ)を焼き嵌めした例が開示されており、部材同士の保持力を高めている。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−213720号公報(段落番号0015〜0017、図1)
【特許文献2】
実開平6−40903号公報(段落番号0011、0017)
【特許文献3】
特開平11−248969号公報(段落番号0029)
【発明が解決しようとする課題】
金属製部品を0.001〜0.005mm程度の公差で加工し、安定的に生産することは非常に難しく、部品がコスト高になってしまっていた。また、この寸法公差を充たさない保持フランジを用いた場合には上述のように、フェルールを保持する力が不足してしっかりと支持固定することができなかったり、あるいは組立不能となるか、圧入できてもフェルールとそのファイバ圧入孔が締まり光ファイバを圧入できなくなったり、フェルールを保持フランジに完全に押し込むことができず段長不良(フェルールが保持フランジから突き出た長さが設計値どおりにならない不良)になる、などの不具合があったためである。
【0013】
特許文献1に記載された方法は、上記の問題点をほぼ解決できているが、ごくまれに、圧入時のストレスが大きく段長不良となったり、引き抜き時の摩擦力が小さく保持力不足になったりすることがあった。さらに、フェルール圧入時に、保持フランジのフェルール圧入凹部の溝がフェルール側面にこすれて変形、脱落し、バリとなって金属とセラミックの境界部から光ファイバの通路へはみ出したり、小さな粉末となってファイバ圧入孔に入り込んだりして、光ファイバを嵌送する際に光ファイバ端面にキズをつけてしまう恐れもあった。
【0014】
また、特許文献2、3などに開示されている焼き嵌めをそのまま光ファイバ保持具に応用すると、冷却させて収縮接合する際に、保持フランジの両端部から冷却が起こり、保持フランジの中央部に向かって保持フランジが収縮しながらフェルールに抱きついて接合される。このとき、保持フランジの中央部に応力のひずみが蓄積してしまい、この光コネクタを利用して光モジュールなどを組み立てた場合に、環境の変動などに伴って応力が徐々に解放され、それに伴って精度が変動するといった問題があった。
【0015】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部材の寸法精度の影響を極力小さくして、安定した保持力と組立精度、組立品質が得られ、長期にわたって精度変動が生じない低コストで信頼性の高い光ファイバ固定具を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバ固定具は、概略中央部に光ファイバを保持するための貫通孔を有する略円筒形状の光ファイバ保持部材と、前記光ファイバ保持部材の外周部を把持してなる保持金具とからなる光ファイバ固定具において、外周半径がd1である前記光ファイバ保持部材の外周部の少なくとも前記保持金具に把持される部分と、内周半径がd2である前記保持金具の前記光ファイバ保持部材を把持する部分に溝が設けられ、前記光ファイバ保持部材の外周半径d1は前記保持金具の内周半径d2より大きいとともに前記光ファイバ保持部材を冷却および/または前記保持金具を加熱したときにd2>d1となる寸法とされており、前記外周半径と前記内周半径との差(d1−d2)が前記光ファイバ保持部材の外周部の溝の深さs1および前記保持金具の溝の深さs2のいずれか小さい方よりも大きくなるように設定されて、前記光ファイバ保持部材の外周部の溝と前記保持金具の溝とが係合した状態で前記光ファイバ保持部材が前記保持金具に把持されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の光ファイバ固定具は、前記光ファイバ保持部材の外周部と、前記保持金具の前記光ファイバ保持部材を把持する部分の少なくとも一部に接着剤が介在していることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の光ファイバ固定具は、前記接着剤は嫌気性接着剤であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の光ファイバ固定具は、前記光ファイバ保持部材はフェルールであり、前記保持金具は保持フランジであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の光ファイバ固定具は、前記光ファイバ保持部材はスタブ用フェルールであり、前記保持金具は把持リングであることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の光ファイバ固定具の製造方法は、前記光ファイバ保持部材の外周部の少なくとも一部に前記接着剤を塗布した後、前記光ファイバ保持部材の冷却、および/または前記保持金具の加熱を行い、超音波を印加し、軸を中心として回転させながら、前記光ファイバ保持部材を前記保持金具に圧入して把持させることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0023】
図1(a)は本発明の光ファイバ固定具を構成する光ファイバ保持部材と保持金具の断面図を示し、図1(b)は両者が組み立てられた断面図を示す。
【0024】
本実施形態では、光ファイバを保持する光ファイバ保持部材としてフェルール10を、保持金具である保持フランジ20に固定したもので、不図示の光ファイバを実装して光コネクタに搭載されるものである。
【0025】
上記フェルール10はジルコニアなどのセラミックスからなり、概略中央軸線方向に光ファイバを圧入固定するための貫通孔11を有した略円筒体をなし、さらに、保持フランジ20に固定される側の端部12の外周が先細状のテーパ面14となっている。また上記貫通孔11の端部12側のファイバ圧入口13は端面に向かって漸次径が拡大するコーン形状となっており、光ファイバを容易に圧入できるような形状となっている。
【0026】
一方、保持フランジ20はステンレス、真鍮、各種合金などの金属材料からなり、中央にファイバ圧入孔21を備えるとともに、一方の端部はフェルール圧入凹部22が設けられている。
【0027】
本発明の光ファイバ固定具は、フェルール10の外周部15のうち、少なくとも保持フランジ20のフェルール圧入凹部22に圧入される部分に外周溝16が設けられており、かつ保持フランジ20のフェルール圧入凹部22の内周面23にも内周溝24が円周方向に形成されている。
【0028】
図2には、図1(b)のA部の、フェルール10が保持フランジ20に圧入された箇所の拡大図を示す。フェルール10は、その外周部15の外周溝16と保持フランジ20の内周面23の内周溝24とが係合した状態で、保持フランジ20に担持されている。
【0029】
さらに、フェルール10の外周部15と保持フランジ20の内周面の少なくとも一部に接着剤25が介在していることが望ましい。これにより、フェルール10の外周溝16と保持フランジ20の内周溝24が係合した状態で相互の間隙を接着剤25が充填し、完全に保持固着することが可能となるからである。
【0030】
なお、図2では便宜上、外周溝16と内周溝24の間隙を大きく表示し、間隙に接着剤25が介在している状況を明確に示したが、実際は、溝同士が係合して完全に密着している箇所も存在しており、一律に同じ状態ではない。
【0031】
また、フェルール10を保持フランジ20に圧入する際、保持フランジ20を加熱し膨張させて圧入することが望ましい。これによりフェルール10の外周溝16と、保持フランジ20の内周溝24同士が圧入の際、接触せず、形状がくずれないまま圧入される。その後、冷却に伴い、保持フランジ20が収縮し、フェルール10の外周溝16と、保持フランジ20の内周溝24同士が係合し、図1(b)あるいは図2に示されるように、保持フランジ20にフェルール10が担持される。
【0032】
なお、図3に、フェルール10の外周溝16および、保持フランジ20の内周溝24の形状を示す。
【0033】
まず、フェルール10の外周溝16の形状は、深さs1が0.005mm以上0.04mm以下、ピッチp1は0.01以上0.1mm以下が望ましい。また、保持フランジ20の内周溝24の形状は、深さs2が0.005以上0.04mm以下、ピッチp2は0.01以上0.1mm以下が好ましい。
【0034】
外周溝16の深さs1あるいは、内周溝24の深さs2が、0.005mmより小さいと、研削加工自体が困難であり、係合する効果も少なく、溝なしの場合とほとんど変わらない。また、これらが、0.04mmより大きいと、嵌め合わせなければならない深さが深くなり、保持フランジ20を大きく膨張させるために、高温に加熱しなければならなくなり、保持フランジ20が変色したり、変形してしまったりする危険がある。また、係合間の隙間が大きくなり保持力が弱くなるという問題もある。
【0035】
さらに、外周溝16のピッチp1あるいは、内周溝24のピッチp2が0.01mmより小さいと、溝の壁の強度が弱く、相手の溝と係合させる際に、相手側の凸部と接触して溝の壁が潰れることがある。また、これらが、0.1mmより大きいと、溝同士の係合が弱くなり、外力がかかったときに、簡単に外れてしまうという問題がある。
【0036】
保持フランジ20の内周溝24とフェルール10の外周溝16が良好に係合し、上記のような作用効果を十分奏するためには、外周溝16の深さs1および、内周溝24の深さs2、さらに外周溝16のピッチp1および、内周溝24のピッチp2が、上記の数値範囲内で、
▲1▼ s1−s2>0.005mm、もしくは、s2−s1>0.005mm
▲2▼ p1−p2>0.01mm、もしくは、p2−p1>0.01mm
となっていることが好ましい。その理由として、▲1▼を満たさない場合には、係合する際に、溝の内部で凹凸部同士が接触する箇所が増えることを意味し、接合状態が不均一になる可能性があり、また、▲2▼を満たさない場合には、溝同士のピッチが異なることを意味し、溝同士が係合できない箇所が生じ、接触して凸部が削れたり、溝の壁が損傷を受けたりする可能性があるからである。
【0037】
また、外周溝16は、フェルール10の外周部15全体にわたって設けられていてもよいが、少なくとも、保持フランジ20のフェルール圧入凹部22に担持される部分に設けられていればよい。
【0038】
なお、図2、図3に示した溝の断面形状は鋸歯状であるが、これに限るものではなく、図5(a)に示した矩形形状や図5(b)に示す鋸歯状の先端にRをつけた形状でもよい。先端にRをつけた形状が望ましく、それぞれの凸部をダイヤモンドスラリーなどが含まれたブラシ毛などによりライトエッチングすることによって得ることができる。この処理をしておくことによって、圧入するときに、凸部の先端同士がぶつかって欠ける恐れが少なくなり、冷却後もスムースに係合する。
【0039】
また、上述の説明では、保持フランジ20の側を加熱することによって、フェルール圧入凹部22を膨張させて、フェルール10の外周部15を圧入して担持させるようにしたが、逆に、フェルール10を冷却し外周部15を収縮させるか、さらには、保持フランジ20の加熱とフェルール10の冷却の両方を行った状態で、フェルール10の外周部15を保持フランジ20のフェルール圧入凹部22に担持させても構わない。フェルール10の外周部15が保持フランジ20のフェルール圧入凹部22にスムースに担持され、係合されるように、相互の部材の熱膨張率差を利用することが重要である。
【0040】
また、保持フランジ20の内周面半径寸法d2と内周溝24の深さs2、および、フェルール10の外周部半径寸法d1と外周溝16の深さs1は、上記の▲1▼、▲2▼に示した範囲内で、さらに次に示すような関係を満たすことが必要である。なお、保持フランジ20の内周面半径寸法d2とは、図4(a)、(b)に示すように、保持フランジ20の中心軸から内周溝24の凸部先端までの距離を指し、フェルール10の外周部半径寸法d1とは、フェルール10の中心軸から外周溝16の凸部先端までの距離を指す。
【0041】
まず、熱膨張率差を利用して係合させることから、必ずフェルール10の外周部半径寸法d1は、保持フランジ20の内周面半径寸法d2よりも大きいことが必須である。
【0042】
また、係合したときに最も安定するのは、外周溝16か、内周溝24のどちらかの凹部に相手部材の凸部が当接して支えた状態になったときであり、そのためには、d1−d2>s1かもしくは、d1−d2>s2、すなわち、d1−d2の値がs1かs2のいずれか小さい方よりも大きくなるようにd1、d2、s1、s2の値を決めればよい。
【0043】
例えば、保持フランジ20のみを加熱する場合、加熱温度を330℃とし、室温20℃とすると、310℃の差が発生する。保持フランジ20の材質がステンレスであれば、線膨張率は17.9×10-6/℃であるから、保持フランジ20のフェルール圧入凹部22の内周面直径寸法(2×d2)がφ2.485とすると、約0.014mm膨張して、加熱時の(2×d2)はφ2.499となる。
【0044】
このとき、フェルール10の外周部15の外周部直径寸法(2×d1)をφ2.485よりも大きく、φ2.499よりも小さくなるように設定し、さらにd1−d2=(2.499−2.485)/2=0.007mmとなるので、s1かもしくはs2が0.007mmよりも小さくなるようにする。なお、上述のようにs1もしくはs2の深さは0.005mm以上あることが望ましいので、これらを合わせて、条件を設定すれば、s1もしくはs2は0.005mm以上0.007mm未満となるようにすることによって、保持フランジ20の内周溝24およびフェルール10の外周溝16の凸部同士を破壊することなく係合でき、強固な保持力を維持することができる。
【0045】
なお、フェルール10を保持フランジ20に圧入する際、フェルール10の外周部15の少なくとも一部に接着剤25を塗布しておくことが望ましい。その理由としては、保持フランジ20とフェルール10との寸法の関係が、上記の好ましい条件、d1−d2>s1またはd1−d2>s2を満たさず、s1>d1−d2>0かつs2>d1−d2>0のようになる場合、溝同士が係合するものの、凸部が凹部に当接しないため、安定せず保持力が低くなる。
【0046】
このようなときに、フェルール10と保持フランジ20との間に接着剤25が介在することにより、相互の保持力を高めることができ、フェルール10と保持フランジ20が分離することが皆無となるからである。
【0047】
さらに、接着剤25は、嫌気性接着剤を用いることが望ましい。圧入後、フェルール10と保持フランジ20間には、隙間がほとんどなくなるため、圧入後冷却することだけで接着剤が硬化し、フェルール10と保持フランジ20の保持力が強化されるからである。嫌気性接着剤の場合、成分としてはジメタアクリレート系が主であるが、その他類似成分であってもかまわない。
【0048】
熱硬化型接着剤の場合は、後で熱硬化の工程が必要となるが、嫌気性接着剤を使用することにより熱硬化の工程がなくなり、作業性が向上し、作製時間も短縮され安価に光ファイバ固定具を提供できる。
【0049】
ここで、接着剤25の粘度は5〜30Pa・sであり、圧入後の厚みが0.001mm〜0.1mmであることが好ましい。ここではステンレスなど金属とセラミックとの接着であるため、金属同士の接着より硬化時間が遅くなる。その場合はトリクロロエチレンなどのプライマーを使用しても良い。プライマーの厚みは0.001mm〜0.01mm程度が好ましい。0.001mm以下だとプライマーが不十分であり、硬化が早まらない。また、0.01mm以上だとプライマーが厚すぎてこの場合も硬化が早まらない。
【0050】
ここで、接着剤25の粘度が5Pa・s未満で厚みが0.001mm未満の場合、接着剤25が保持フランジ20の側面から流れてしまい、不要な部分にまで垂れてしまう。また、接着剤25の厚み不足で十分な保持力を維持できない恐れがある。
【0051】
さらに30Pa・s以上で厚みが0.1mm以上の場合は粘度が高すぎて塗布量が制御できず、塗布が厚すぎて接着剤25が保持フランジ20の側面からはみ出してしまい光ファイバの通路にまで達してしまう恐れがある。
【0052】
フェルール10の外周部15に接着剤25を塗布するが、嫌気性接着剤を用いた場合、加熱しても容易には硬化しないため、圧入に要する数十秒間、330℃まで加熱しても特性劣化は認められず、問題なく使用可能である。
【0053】
また、本発明の光ファイバ固定具の製造方法では、フェルール10の外周部15の一部もしくは複数部に接着剤25を塗布した状態でフェルール10を回転しながら、保持フランジ20のフェルール圧入凹部22に圧入することが重要である。
【0054】
接着剤25はフェルール10の外周部15の全周に塗布してもよいが、その場合は塗布厚みの制御が難しい。多すぎると収縮時、光ファイバ通路にはみだしてしまい光ファイバ圧入時に支障となる。したがって塗布は外周部15の一部もしくは複数に行うことが好ましい。
【0055】
フェルール10を回転させながら保持フランジ20に圧入することにより、接着剤25が全周に到達するという効果を奏し、同時に接着剤25が潤滑剤の役割を果たして、フェルール10の外周溝16と保持フランジ20の内周溝24とが互いにダメージを与えることなく、効果的に係合するために補助するという作用効果をも奏する。なお、回転の速度は、0.01〜2rpm程度の間で自由に選ぶことが可能である。
【0056】
また、フェルール10の外周部15を、保持フランジ20のフェルール圧入凹部22に担持させる際に、超音波を印加することが必要である。この超音波は、接着剤25の広がりを助長する効果とフェルール10の外周溝16と保持フランジ20の内周溝24とが冷却収縮時に効果的に係合するために補助する効果を奏する。
【0057】
冷却により保持フランジ20は主に径方向に収縮されるため、超音波は縦方向にかけられる。これにより収縮過程においてお互いの溝部が係合されやすくなる。
【0058】
このように、本発明の光ファイバ固定具の製造方法においては、フェルール10を回転させながら超音波を印加しつつ、フェルール10と保持フランジ20との相互の部材間に接着剤を介在させながら、圧入するため、それぞれが有機的に作用し合って、従来の焼き嵌めで問題となっていた冷却時に収縮接合する際の保持フランジ20に蓄積する応力のひずみを非常に効果的に緩和し、効果的に溝同士を係合させて固着することができる。
【0059】
以上により圧入力が小さくかつ、フェルール10と保持フランジ20の溝部が収縮後もくずれることなく係合され、保持力が強固な光ファイバ固定具を得ることができる。さらに、この光ファイバ固定具を利用して光モジュールなどを組み立てた場合に、環境が変動しても精度の変動はほとんどなく、高い信頼性を有するものを得ることができる。
【0060】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0061】
例えば、光ファイバ保持部材をスタブ用フェルールとし、保持金具は把持リングとして、上述と全く同様の方法によって、レセプタクルを作製することができる。このようにして作製されたレセプタクルは、本発明の光ファイバ保持部材として、上述のフェルールと保持フランジの組合せによって得られたものと全く同様の効果を奏する。
【0062】
【実施例】
図1で説明した本発明の保持フランジ20とフェルール10を10セットずつ用意した。フェルール10と保持フランジ20を組み立てるための組立用のプレス機に圧入力測定ゲージを設置し、組立時(圧入時)の圧入力を測定した。また、保持力測定用治具を用意し、圧入後保持力を測定した。
【0063】
なお、本発明の光ファイバ固定具のフェルール10の外周部直径寸法2×d1はφ2.499mm、外周溝16の深さs1が0.006mm、ピッチp1は0.02mmであった。また、保持フランジ20の内面部直径寸法2×d2はφ2.495であり、内周溝24の深さs2が0.015mm、ピッチp1は0.022mmであった。
【0064】
作製方法は以下の通りである。まず、本発明品の保持フランジ20を330℃で加熱し、約14ミクロン膨張させた。フェルール10の外周部15には、嫌気性の接着剤25が対称的に2箇所塗布されている。粘度は10Pa・sである。フェルール10を0.5rpmで回転させながら超音波を付加して圧入した。圧入後付加温度を除去して室温まで冷却させることによって、外周溝16の凹部に内周溝24の凸部が当接した状態で、接着剤25が硬化し、本発明の光ファイバ固定具を作製することができた。
【0065】
また、比較例として、フェルール10としては保持フランジ20の内径に圧入される部分の外周部15に外周溝16を形成していないものを用意し、保持フランジ20ではフェルール圧入凹部22の内周面23に内周溝24を設けていない他は、上記本発明品と同様の比較例品を同様に10個作製し、圧入力、保持力を比較した。なお、比較例の光ファイバ固定具のフェルール外径寸法はφ2.499mm、はめ合深さは2.6mm、比較例の保持フランジの内径寸法はφ2.495mmである。比較例のサンプルはこのままの状態で圧入した。
【0066】
これら実験の結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から明らかなように比較例は、圧入力も本発明と比較して10倍程度の大きな力を必要とし、保持力も通例の規格値である10kgfを下回るサンプルが発生したのに対し、本発明品は、スムースに圧入することができ、理想的な強い保持力を得ることができた。
【0069】
【発明の効果】
本発明の光ファイバ固定具は、光ファイバ保持部材の外周部と保持金具の光ファイバ保持部材を担持する内周部に溝が設けられ、互いに係合した状態となっているため、安定した保持力を得ることができる。また、係合する部材間に接着剤を介在させることによって、さらに強固な保持力を得ることが可能となる。
【0070】
また、本発明の光ファイバ固定具の製造方法においては、光ファイバ保持部材と保持金具の熱膨張率差を利用して、光ファイバ保持部材を保持金具に圧入して把持させる際に、接着剤を部材間に介在させながら、軸を中心として回転させながら、超音波を印加して、圧入を行うため、部材に蓄積する応力ひずみを効果的に緩和すると同時に、効果的に溝同士を係合させて固着することができる。この結果、部材の寸法精度の影響を極力小さくして、安定した保持力と組立精度、組立品質が得られ、長期にわたって精度変動が生じない低コストで信頼性の高い光ファイバ固定具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の光ファイバ固定具を構成する光ファイバ保持部材と保持金具の断面図であり、(b)は双方を組み合わせた断面図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】本発明の光ファイバ固定具の係合部の説明図である。
【図4】(a)は本発明の光ファイバ固定光ファイバ固定具を構成する光ファイバ保持部材と保持金具を組み合わせた断面図であり、(b)は(a)のB部の拡大図である。
【図5】(a)(b)は係合部の形状の組み合わせについての説明図である。
【図6】従来の光ファイバ固定具を示す断面図である。
【符号の説明】
10:フェルール
11:貫通孔
12:端部
13:ファイバ圧入口
14:テーパ面
15:外周部
16:外周溝
20:保持フランジ
21:ファイバ圧入孔
22:フェルール圧入凹部
23:内周面
24:内周溝
25:接着剤
30:フェルール
31:貫通孔
32:端部
33:先端面
34:保持フランジ
35:フェルール圧入凹部
36:ファイバ圧入孔
37:被覆部
38:芯線
39:光ファイバ
d1:フェルールの外周部半径寸法
d2:保持フランジの内周面半径寸法
p1:フェルールの外周溝のピッチ
p2:保持フランジの内周溝のピッチ
s1:フェルールの外周溝の深さ
s2:保持フランジの内周溝の深さ
Claims (6)
- 概略中央部に光ファイバを保持するための貫通孔を有する略円筒形状の光ファイバ保持部材と、前記光ファイバ保持部材の外周部を把持してなる保持金具とからなる光ファイバ固定具において、外周半径がd1である前記光ファイバ保持部材の外周部の少なくとも前記保持金具に把持される部分と、内周半径がd2である前記保持金具の前記光ファイバ保持部材を把持する部分に溝が設けられ、前記光ファイバ保持部材の外周半径d1は前記保持金具の内周半径d2より大きいとともに前記光ファイバ保持部材を冷却および/または前記保持金具を加熱したときにd2>d1となる寸法とされており、前記外周半径と前記内周半径との差(d1−d2)が前記光ファイバ保持部材の外周部の溝の深さs1および前記保持金具の溝の深さs2のいずれか小さい方よりも大きくなるように設定されて、前記光ファイバ保持部材の外周部の溝と前記保持金具の溝とが係合した状態で前記光ファイバ保持部材が前記保持金具に把持されていることを特徴とする光ファイバ固定具。
- 前記光ファイバ保持部材の外周部と、前記保持金具の前記光ファイバ保持部材を把持する部分の少なくとも一部に接着剤が介在していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ固定具。
- 前記接着剤は嫌気性接着剤であることを特徴とする請求項2記載の光ファイバ固定具。
- 前記光ファイバ保持部材はフェルールであり、前記保持金具は保持フランジであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ固定具。
- 前記光ファイバ保持部材はスタブ用フェルールであり、前記保持金具は把持リングであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ固定具。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の光ファイバ固定具の製造方法において、前記光ファイバ保持部材の外周部の少なくとも一部に前記接着剤を塗布した後、前記光ファイバ保持部材の冷却、および/または前記保持金具の加熱を行い、超音波を印加し、軸を中心として回転させながら、前記光ファイバ保持部材を前記保持金具に圧入して把持させることを特徴とする光ファイバ固定具の製造方法。
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