JP4091475B2 - 媒体の貼り合わせ方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は媒体の貼り合わせ方法及びその装置に関し、詳細には例えばプラスチック同士を接合してなる光ディスク他、マイクロレンズアレイや光コネクタ等の光メディアを製造する際の媒体同士を貼り合せる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2000−76710号公報
【特許文献2】
特許第3,096,242号明細書
【特許文献3】
特許第2,941,196号明細書
【特許文献4】
特開2001−155388号公報
光学部品のプラスチック化が進むに連れ、プラスチック同士をより高精度に接合する技術が望まれている。その例として、厚さ0.6mm、直径120mmのプラスチック基板同士を貼り合わせてなるDVD(Digital Versatile Disk)が既に製造・販売されている。中でも書き換え可能な片面二層のDVDにおいては、その反り量、ならびに接着剤の層の厚さの均一性が信号品質上重要である。DVDにおいて、プラスチック基板同士(厚さ0.6mm、直径120mm)を貼り合せる接着剤には、紫外線硬化型接着剤、ホットメルト接着剤、両面粘着シート等があるが、コスト並びに品質の面から、紫外線硬化型接着剤が多く使用されている。その工法例としてスピンコート法が多く用いられている。先ず、従来の媒体の貼り合わせ方法による接合工程図である図14の(a)に示すように保持台92上に載置した第一の基板91の上に紫外線硬化型の接着剤93をシリンジ94から円周状に塗布し、図14の(b)に示すように次に第二の基板95を重ね合わせ、保持台92を回転させながら紫外線硬化型の接着剤93を外周方向に広げ、図14の(c)に示すように接着剤93の層の、所定の厚さを得る。次に、図14の(d)に示すように、紫外線ランプ96から照射された紫外線により接着剤93を硬化させ、DVDディスクとしての完成品を得る。
【0003】
このように作成した書き換え可能な片面二層のDVDにおいては、接着層の厚さをより均一に、かつディスク反り量をできるだけ小さくすることが望まれているが、上記一般的なスピンコート法では、接着層膜厚の均一化並びに反り量に限界があった。書き換え可能な片面二層のDVDにおいては、具体的に接着層厚さX±3μm(X=30〜50μm)、反りの代用特性として、R/T Tilt(α)=0.3/0.15degreeが望まれる。
【0004】
そこで、ディスクの反り量を小さくするために、上記特許文献1には一対の光ディスク用基板からなる基板対を設置台の上に配置し、設置台の上面のうち基板対の中心側と外周側との間に高低差をつけておく、貼り合わせ方法が提案されている。
【0005】
また、上記特許文献2では、上記反り問題を解決するために、貼り合わせるプラスチック基板をガラスで挟み込み、そのまま接着層を硬化させることで、反りの低減を図っていた。
【0006】
更に、上記特許文献3では、貼り合わせるプラスチック基板を、透光部付の加圧板により矯正すると同時に、接着剤をプラスチック基板の外周端部まで広げた後、基板内周部だけを部分的に硬化させ、次に該加圧板を取り去り、全体を硬化して完成品を得ている。
【0007】
また、上記特許文献4では、貼り合せる2枚のディスクの間に紫外線硬化樹脂を介在させて紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させる際に少なくとも一方のディスクの全面を吸引装置により吸引して保持台に保持させて、ディスクの反りや変形を可及的に矯正し、かつディスクへの異物の付着を防止するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1による提案は、貼り合わせ前の基板の反りや変形が一定であることが前提であり、貼り合わせ前の基板の反りや変形が変わった際には、基板対Dxの中心側と外周側との間の高低差を調整しなければならなかった。また、スピンコート法を用いているので、接着層の均一性に限界(例えば50±10μm)があった。また、上記特許文献2における接着層の絶対値Xは、その接着剤の粘度とガラスの重量により左右され、任意の厚さにすることが難しかった。また、上記特許文献1と同様に、スピンコート法を用いているため、外周端部に接着剤がはみ出し、美観を損ねていた。更に、上記特許文献3では、接着層厚さを均一にし易く、外周端部のはみ出しは生じにくいという利点はあるものの、ディスクの反りに関しては限界があった。特に、貼り合せ前の基板の反りや変形が一定で且つある所定内の値同士を貼り合せないと接着層厚さX±3μm(X=30〜50μm)、反りをR/T Tilt(α)=0.3/0.15degreeに仕上げることは不可能であった。また、上記特許文献4においても、貼り合わせ後の反りを防止できるが紫外線硬化樹脂の塗布方法としてやはりスピンコート方法を用いており、上記特許文献1と同様に、スピンコート法を用いているため、紫外線硬化樹脂の膜厚の均一性が十分でなく、かつ外周端部に接着剤がはみ出し、美観を損ねていた。
【0009】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、貼り合せ前のプラスチック基板などの媒体の反りや変形を、高精度なガラス保持台で矯正し、接着剤を一対の媒体に介在させ、その媒体間を均一に保ちながら毛細管現象の利用により接着剤を均一に展延させ、外周端部への接着剤のはみ出しもなく、上述の品質を有する媒体製造完成品を提供できる、媒体の貼り合せ方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記問題点を解決するために、少なくとも一対以上のプラスチック基板あるいはフィルム等の媒体を、接着剤を介在させて貼り合わせる、本発明の媒体の貼り合わせ方法によれば、一対の媒体のそれぞれの、位置や姿勢を保持・矯正し、少なくとも一方の媒体に接着剤を塗布する。そして、一対の媒体間の距離を一定に保つようにして、接着剤を一対の媒体間に毛細管現象を利用して展延させる際、接着剤の展延速度を制御して一対の媒体同士を貼り合わせる。よって、媒体の反りや変形が大きくても高精度な保持台で矯正して接着剤の層の厚さを均一化でき、かつ厚さを制御でき、更に外周端部への接着剤のはみ出しもなく、上述の品質を有する媒体製造完成品を提供できる。
【0011】
また、接着剤は紫外線硬化型接着剤であり、貼り合わせの際に紫外線を紫外線硬化型接着剤に照射することが好ましい。
【0012】
更に、紫外線硬化型接着剤の粘度が1〜10,000mPa・sの範囲であることにより、一般的なディスペンサーで塗布可能である。また、接着剤の展延速度を、接着剤が塗布された媒体における内周側の温度を外周側の温度よりも低くして制御することが好ましい。
【0013】
また、別の発明としての媒体の貼り合わせ装置は、一対の媒体のそれぞれの、位置や姿勢を保持・矯正する一対の保持台と、少なくとも一方の媒体に接着剤を塗布する塗布手段と、一対の媒体間の距離を一定に保つ距離保持手段と、接着剤を一対の媒体間に毛細管現象を利用して展延させる際、接着剤の展延速度を制御して一対の媒体同士を張り合わせる貼合手段とを具備することに特徴がある。よって、媒体の反りや変形が大きくても高精度な保持台で矯正して接着剤の層の厚さを均一化でき、かつ厚さを制御でき、更に外周端部への接着剤のはみ出しもなく、上述の品質を有する媒体製造完成品を提供できる。
【0014】
また、距離保持手段の一部又は全部は、接着剤が濡れない成分で構成されていることにより、接着剤での接合後、確実に離型することが可能である。
【0015】
更に、接着剤は紫外線硬化型接着剤であり、貼り合わせの際に紫外線を紫外線硬化型接着剤に照射する紫外線照射手段を有し、更に紫外線硬化型接着剤の粘度が1〜10,000mPa・sの範囲である。よって、一般的なディスペンサーで塗布可能であり、装置の簡素化を図れる。
【0016】
また、保持台は紫外線を透過し、200〜500nmの光を70%以上透過する。よって、紫外線硬化型接着剤中の反応開始剤として一般的なものが利用可能であり、安価な接着剤を利用できる。
【0017】
更に、保持台の少なくとも一方の面が、表面粗さRmax≦3μm、平面度≦3μmであるので、接着剤の層の厚さのムラをより均一化できる。
【0018】
また、少なくとも一方の保持台に、保持台の媒体を保持する面に媒体を静電吸着するための静電吸着機構を具備していることにより、媒体の厚さが薄くても、媒体の取り扱いが容易となる。
【0019】
更に、紫外線照射手段はフラッシュ型の紫外線ランプであることにより、一般的な高圧水銀型紫外線ランプと比較して熱を発生しないため確実に接着剤の展延速度を制御でき、かつ硬化時における一対の媒体それぞれの熱膨張差が生じにくく、完成品の反りを小さくできる。
【0020】
また、貼合手段による貼り合わせの際、一対の媒体間に存在する空気を逃がすための空気逃げ機構を有することにより、媒体の中心付近まで確実に接着剤を展延させることが可能となり、媒体製造完成品の美観を損ねることが無い。
【0021】
更に、一対の媒体の各中心を合わせるためのコアピンを有することにより、一対の媒体の貼り合わせ位置決めを簡単にできる。
【0022】
また、空気逃げ機構は、一対の保持台の相対位置を制御する制御機構と、コアピンに空気を逃がすために設けた溝とを有することにより、簡単な構造で、媒体の中心付近まで確実に接着剤を展延させることが可能となる。
【0023】
更に、空気逃げ機構として、貼合手段によって一対の媒体が貼り合わされた際の接着剤の層の厚さや接着領域を規定するための、少なくとも1つ以上の介在手段を有することにより、接着剤の層の厚さのムラをより均一化でき、かつ媒体の中心付近まで確実に接着剤を展延させることが可能となり、媒体製造完成品の美観を損ねることが無い。
【0024】
また、介在手段は接着剤の層の厚さより小さく、球形状を成すことが好ましい。更に、コアピンの温度を保持台の外周に配置された外周リングの温度より低くすることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の媒体の貼り合わせ装置は、一対の媒体のそれぞれの、位置や姿勢を保持・矯正する一対の保持台と、少なくとも一方の媒体に接着剤を塗布する塗布手段と、一対の媒体間の距離を一定に保つ距離保持手段と、接着剤を一対の媒体間に毛細管現象を利用して展延させる際、接着剤の展延速度を制御して一対の媒体同士を張り合わせる貼合手段とを具備する。
【0026】
【実施例】
図1は本発明の第1の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合工程を示す図である。本実施例における最終製品形態は、書き換え可能な片面二層のDVDである。本実施例の製造プロセスについて説明すると、先ず、図1の(a)に示すように、外径φ120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネイトの基板11を保持台12に図示していない吸着装置を用いて吸着固定する。保持台12には、基板位置決め用のコアピン13が具備されている。保持台12はステンレス鋼であり、保持台12の平面度は5μmに鏡面仕上げされている。ステンレス鋼材として日立金属のHPM38を用いているが、特に限定が無く、基板を平らに保持する機能上、平面度が出しやすい材質、例えば、ガラスなどでも良い。また、コアピン13は銅でできたヒートパイプで構成されており、温度を0〜50℃まで可変でき、またコアピン13の構造を示す図2からわかるように、コアピン13の外周表面に軸方向に向かって5μm程度の溝幅32で加工された溝31が設けられている。一方、図1の(a)に示すように、保持台12は図示していないモータと連結され、回転可能になっている。回転速度は0.1〜10000r.p.m.の範囲で可変可能である。60r.p.m.で回転している基板11上に、ディスペンサー14により接着剤15を円環状に塗布する。接着剤15には、変性アクリル系の紫外線硬化型接着剤、粘度450mPa・s(25℃)を使用した。接着剤15の種類に特に限定は無いが、熱硬化型よりむしろ紫外線硬化型樹脂の方が良い。粘度にも限定は無いが、粘度があまり高いと(例えば、8000mPa・s(25℃)以上)、接着剤15の展延速度が遅くなるという不具合があり、接着層の厚さ40μm(約0.4g)であれば、好ましくは200〜700mPa・s(25℃)がよい。
【0027】
次に、図1の(b)に示すように、一対のプラスチック基板間の距離を一定に保つ機能を有する外周リング16が稼動する。外周リング16の爪部17の厚さにより、接着剤15の厚さ決めている。また、外周リング16は図3に示すようにリングが四分割された構造になっている。なお、図3の(a)に示す様子はリングを閉じた状態を、図3の(b)に示す様子はリングを開けた状態をそれぞれ示す。四分割された部品の間には、スプリング22が挿入されている。また、基板11や接着剤15と接触する部分には、接着剤15の付着防止のために、テフロン(登録商標)がコーティングされている。外周リング16そのものをテフロン(登録商標)樹脂で作っても問題は無い。
【0028】
次に、図1の(c)に示すように、保持台19に吸着された外径φ120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネイトの基板18が接着剤15の接着層を介在し、基板11に合わさる。その際、外周リング16の爪部17と基板18が当たることにより、接着剤15の厚さ、本実施例では40μmを規定する。ここで、ヒートパイプにより、図1の(c)に示すような温度分布を生じさせると、図4の(a),(b)に示すように、毛細管現象により接着剤15が矢印aの方向に展延し始める。その展延速度は、図5に示すように温度や接着剤の粘度に依存する。なお、図5の横軸はコアピンと外周リングの温度差、縦軸は接着剤が所定位置までに到達するまでの時間を示す。最終的には、接着剤15はコアピン13に到達するが、本実施例においては、図1の(d)の部分Aの拡大図に示すように、基板11ならびに基板18とも中心穴部に凸形状の凸部20があり、互いの凸部20が5〜10μm程度のクリアランスを持って合わせた部分で接着剤15が止まる。この様子を詳細に図2を用いて説明すると、図2の(b)に示すように、接着剤15がコアピン13方向に展延する際、基板11と基板18との間の空気はコアピン13の溝31を通って逃げる。これにより、図2の(c)に示すように、接着剤15を基板中心穴付近まで確実に展延させることが可能となる。溝31の数は4本で設定したがこれに限るものでなく、何本でも構わず、接着剤15の粘度、接着剤15の層の厚さ等によって適宜変更すればよい。空気の逃げ方法として、コアピン13の断面形状を図6のように三角形状にしても同じ効果が得られる。上述したように、基板11及び基板18の互いの凸部20は完全に合わさらず、5〜10μm程度のクリアランスを持っている。しかし、本実施例での接着剤15の粘度であればこの隙間に接着剤15が入り込まない。よって、接着剤15がコアピン13の溝31に到達しないので溝31は空気の逃げ道として確実に機能する。また、コアピンにおける更に別の構造としては、図7に示すように、基板11と基板18の中心位置を決定するためのエアチャック機構41が具備しているものがある。また、基板11と基板18の間には、接着剤15の他にガラスビーズ42が介在している。このガラスビーズ42の大きさは、φ15μmである。この大きさの規定は無く、接着剤の層の厚さや粘度で適宜変更すればよい。また、ガラスビーズの他に鋼球、プラスチックなどでも問題は無い。但し、形状に関しては球形状が最も良い。そして、基板11と基板18を重ね合わせる際に、図7の(a)に示すように、エアチャック機構41により、基板11と基板18の中心位置を合せ、温度差による毛細管現象により接着剤15が展延し始める。次に、図7の(b)に示すように、エアチャック機構41の爪部が引っ込むと同時に、保持台12が基板11を吸着固定して、保持台19が所定位置まで下降する。すると、接着剤15と空気の圧力によりガラスビーズ42が嵌まり込むような所定位置にある微小なくぼみ43へガラスビーズ42が移動する。コアピン13と基板11,18の中心穴にはクリアランスがあるため、矢印bで示すように確実に空気を追い出すことが可能となる。よって、接着剤15を均一に中心穴付近まで展延させることが可能である。また、図7の(c)に示すように、ガラスビーズ42と基板18により、接着剤15をせき止め、基板の中心穴へのはみ出しが確実に防止できる。なお、本例では、基板11にガラスビーズ42が嵌まり込むような所定位置に微小なくぼみ43が加工されているが、このくぼみ43が無くても、基板11あるいは基板18の凸部を適宜調整しても同じ効果が得られる。また、凸部の形状には特に限定はない。更に、エアチャック機構41には、ロータリー駆動タイプやスライドガイド式のものがあるが、その方式には限定はない。単に、両基板の中心位置を合わせられればどんな機構でも良い。また、本例での接着剤には、粘度450mPa・s(25℃)のものを使用したが、その粘度は10〜10,000mPa・s(25℃)の範囲であれば何ら問題は無い。所望の膜厚、展延速度などによって適宜変えれば良い。
【0029】
一方、保持台19は石英ガラスでできている。その石英ガラスの表面精度はRmax≦0.3μm、面精度≦7λ(JIS B0601)で仕上げられている。また、保持台12と保持台19の平行度が3μm以下で構成されているので、接着剤15の層厚さを±2μm以内に抑えることができる。
【0030】
最後に、図1の(d)に示すように、紫外線硬化型の接着剤15を紫外線ランプ21により硬化する。紫外線ランプ21には、フラッシュ型の紫外線ランプを用いた。ランプは渦巻き形状をしている。具体的には、XENON社製フラッシュランプRC−742を用いたがこれに限るものではない。高圧水銀ランプなどでも良いが、その際は、保持台12と保持台19の温度差が生じないような冷却機構が必要となる。それは基板11と基板18の熱膨張差が生じると、貼り合わせた直後平らであっても時間と伴に反りを生じるためである。また、ランプ形状は直線型でも良いが、その際は、光ディスク前面に紫外線が均一に当たる工夫が必要である。
【0031】
図8は本発明の第2の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合工程を示す図である。本実施例における最終製品形態も、第1の実施例と同様、書き換え可能な片面二層のDVDであるが、外径φ120mm、厚さ0.4mmのプラスチック基板3枚が接着層2層を介し貼り合わされている。その製造プロセスは第1の実施例と基本的には同じである。基板51に接着剤52を塗布し、基板53と貼り合わせた後、ひっくり返して貼り合わされた基板51に接着剤52を塗布し、基板54と貼り合わせて完成品となる。なお、図中のB部分の拡大図に示すように、記録層55は案内溝、反射膜を含むものである。
【0032】
図9は本発明の第3の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合工程を示す図である。本実施例における最終製品形態は、外径φ120mm、厚さ0.95mmのプラスチックフィルム62と外径φ120mm、厚さ1.1mmのプラスチック基板61とが、厚さ0.05mmの接着剤の層を介し貼り合わされた構造である。プラスチック基板61ならびにプラスチックフィルム62の材質にはポリカーボネイトを用いたがこれに限るものではなく、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂などでも何ら問題はない。本実施例の製造プロセスは、第1の実施例と同じであるが、図10に示すように、第1の実施例のうち保持台19の構成が異なっている。保持台63は基台64、絶縁層65、取り出し電極66、内部電極67、誘電体層68から構成されている。基台64と絶縁層65はSiO、取り出し電極66と内部電極67はCu、誘電体層68はZnS−SiOからなる。特に材料の厚さについての規定は無いが、200〜500nmの光を70%以上透過することが望ましい。また、絶縁層65や誘電体層68の材質には、Al、Al−SiC、多結晶型Si、AlNなどが挙げられる。一方、電極材料には、Ag、Pt、Au等が挙げられる。取り出し電極66に電圧を印加すると、誘電体層68が帯電する。この帯電により、厚さ0.95mmのプラスチックフィルム62を静電吸着させる。これにより、比較的薄い(厚さ≦0.1mm)プラスチックフィルムでも取り扱い易くなり、また貼り合わせの後、電圧を切ることにより簡単に着脱できるばかりでなく、接着層厚さを均一化できる。この静電吸着方式は、本実施例のように電圧を印加したものの他に、放電や摩擦帯電を利用したものでも良く、保持台とプラスチックフィルムが均一に吸着できれば何ら問題は無い。
【0033】
図11は本発明の第4の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合の様子を示す透視斜視図である。図12は本実施例の接合工程を示す概略断面図である。本実施例における最終完成製品は、複写機の読取装置のユニット部品である。この複写機の読取装置のユニット部品は、主に3ライン(RGB)CCDセンサ71、構造体72、ポリイミドフィルム73を含んで構成されている。また、CCDセンサ71の端部には電極用の接点が加工されている。更に、接点と電線パターニングされたポリイミドフィルム73を、接着剤を介し貼り合わせる。ポリイミドフィルム73の厚さは50μmである。CCDセンサ71はシリコン、構造体72はガラス繊維入りポリカーボネイトが用いられている。本実施例の製造プロセスについて説明すると、図12の(a)に示すように、先ず始めに構造体72の一部に接着剤74が塗布される。接着剤74はエポキシ系の紫外線+熱硬化型樹脂を用いた。粘度は8,000mPa・sである。次に、ポリイミドフィルム73を静電吸着により保持台76に固定する。図12の(a)におけるA−A’線断面図である図12の(b)に示すように、保持台76の一部はテーパ形状のテーパ部77が加工されている。このテーパ部77は、構造体72のテーパ部78と合わさり、位置が固定される。構造体72を固定している保持台(図示せず)の温度が、図12の(c)に示すような温度分布に制御されると、毛細管現象により接着剤74が矢印cの方向に展延する。次に、図示していない紫外線ランプにより紫外線硬化型の接着剤74を硬化して、CCDセンサ71の接点とポリイミドフィルム73が貼り合わさる。本実施例は、接着剤74の量をコントロールして、構造体72とCCDセンサ71をも同時に接着することが可能であり、よって組み立て工程の削減、組み立て機構の削減が期待できる。
【0034】
次に、図13は本発明の第5の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合の様子を示す概略断面図である。同図はマイクロレンズアレイシート81同士を接着した際の断面概略を示している。マイクロレンズアレイシート81は特殊な押出し・熱プレス成形を利用して作成されたものであり、□5cm、厚さ0.8mmのアクリル樹脂である。本実施例の製造プロセスについて説明すると、図13の(a)に示すように、第3の実施例3、第4の実施例と同様、静電吸着機構を備えた保持台82,83に、それぞれマイクロレンズアレイシート81を吸着固定する。また、保持台82,83にはそれぞれテーパ形状のテーパ部84,85が形成されており、保持台82と保持台83が合わさり、接着層の厚さ、本実施例では10±1μmを規定している。次に、図13の(b)に示すように、保持台82,83の温度制御機構(図示せず)により温度差をつけ、毛細管現象により矢印dの方向に紫外線硬化型の接着剤86を展延し、図示していない紫外線ランプにより硬化して完成品を得る。なお、マイクロレンズアレイシート81の大きさと厚さ、接着剤86の層の厚さに限定は無い。また、マイクロレンズのサイズにも特に限定は無い。
【0035】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、少なくとも一対以上のプラスチック基板あるいはフィルム等の媒体を、接着剤を介在させて貼り合わせる、本発明の媒体の貼り合わせ方法によれば、一対の媒体のそれぞれの、位置や姿勢を保持・矯正し、少なくとも一方の媒体に接着剤を塗布する。そして、一対の媒体間の距離を一定に保つようにして、接着剤を一対の媒体間に毛細管現象を利用して展延させる際、接着剤の展延速度を制御して一対の媒体同士を貼り合わせる。よって、媒体の反りや変形が大きくても高精度な保持台で矯正して接着剤の層の厚さを均一化でき、かつ厚さを制御でき、更に外周端部への接着剤のはみ出しもなく、上述の品質を有する媒体製造完成品を提供できる。
【0037】
また、接着剤は紫外線硬化型接着剤であり、貼り合わせの際に紫外線を紫外線硬化型接着剤に照射することが好ましい。
【0038】
更に、紫外線硬化型接着剤の粘度が1〜10,000mPa・sの範囲であることにより、一般的なディスペンサーで塗布可能である。また、接着剤の展延速度を、接着剤が塗布された媒体における内周側の温度を外周側の温度よりも低くして制御することが好ましい。
【0039】
また、別の発明としての媒体の貼り合わせ装置は、一対の媒体のそれぞれの、位置や姿勢を保持・矯正する一対の保持台と、少なくとも一方の媒体に接着剤を塗布する塗布手段と、一対の媒体間の距離を一定に保つ距離保持手段と、接着剤を一対の媒体間に毛細管現象を利用して展延させる際、接着剤の展延速度を制御して一対の媒体同士を張り合わせる貼合手段とを具備することに特徴がある。よって、媒体の反りや変形が大きくても高精度な保持台で矯正して接着剤の層の厚さを均一化でき、かつ厚さを制御でき、更に外周端部への接着剤のはみ出しもなく、上述の品質を有する媒体製造完成品を提供できる。
【0040】
また、距離保持手段の一部又は全部は、接着剤が濡れない成分で構成されていることにより、接着剤での接合後、確実に離型することが可能である。
【0041】
更に、接着剤は紫外線硬化型接着剤であり、貼り合わせの際に紫外線を紫外線硬化型接着剤に照射する紫外線照射手段を有し、更に紫外線硬化型接着剤の粘度が1〜10,000mPa・sの範囲である。よって、一般的なディスペンサーで塗布可能であり、装置の簡素化を図れる。
【0042】
また、保持台は紫外線を透過し、200〜500nmの光を70%以上透過する。よって、紫外線硬化型接着剤中の反応開始剤として一般的なものが利用可能であり、安価な接着剤を利用できる。
【0043】
更に、保持台の少なくとも一方の面が、表面粗さRmax≦3μm、平面度≦3μmであるので、接着剤の層の厚さのムラをより均一化できる。
【0044】
また、少なくとも一方の保持台に、保持台の媒体を保持する面に媒体を静電吸着するための静電吸着機構を具備していることにより、媒体の厚さが薄くても、媒体の取り扱いが容易となる。
【0045】
更に、紫外線照射手段はフラッシュ型の紫外線ランプであることにより、一般的な高圧水銀型紫外線ランプと比較して熱を発生しないため確実に接着剤の展延速度を制御でき、かつ硬化時における一対の媒体それぞれの熱膨張差が生じにくく、完成品の反りを小さくできる。
【0046】
また、貼合手段による貼り合わせの際、一対の媒体間に存在する空気を逃がすための空気逃げ機構を有することにより、媒体の中心付近まで確実に接着剤を展延させることが可能となり、媒体製造完成品の美観を損ねることが無い。
【0047】
更に、一対の媒体の各中心を合わせるためのコアピンを有することにより、一対の媒体の貼り合わせ位置決めを簡単にできる。
【0048】
また、空気逃げ機構は、一対の保持台の相対位置を制御する制御機構と、コアピンに空気を逃がすために設けた溝とを有することにより、簡単な構造で、媒体の中心付近まで確実に接着剤を展延させることが可能となる。
【0049】
更に、空気逃げ機構として、貼合手段によって一対の媒体が貼り合わされた際の接着剤の層の厚さや接着領域を規定するための、少なくとも1つ以上の介在手段を有することにより、接着剤の層の厚さのムラをより均一化でき、かつ媒体の中心付近まで確実に接着剤を展延させることが可能となり、媒体製造完成品の美観を損ねることが無い。また、介在手段は接着剤の層の厚さより小さく、球形状を成すことが好ましい。更に、コアピンの温度を保持台の外周に配置された外周リングの温度より低くすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合工程を示す図である。
【図2】コアピンの構造を示す図である。
【図3】外周リングの構造を示す図である。
【図4】接着剤が展延する様子を示す図である。
【図5】接着剤の温度、粘度と展延速度の関係を示す特性図である。
【図6】コアピンの別の構造を示す図である。
【図7】コアピンにおける更に別の構造を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合工程を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合工程を示す図である。
【図10】異なる保持台の構造を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合の様子を示す透視斜視図である。
【図12】第4の実施例の接合工程を示す概略断面図である。
【図13】本発明の第5の実施例に係る媒体の貼り合わせ方法による接合の様子を示す概略断面図である。
【図14】従来の媒体の貼り合わせ方法による接合工程を示す概略断面図である。
【符号の説明】
11,18;基板、12,19;保持台、13;コアピン、
14;ディスペンサー、15;接着剤、16;外周リング、
17;爪部、20;凸部、21;紫外線ランプ、22;スプリング、
31;溝、41;チャック機構、42;ガラスビーズ、43;くぼみ。

Claims (20)

  1. 少なくとも一対以上のプラスチック基板あるいはフィルム等の媒体を、接着剤を介在させて貼り合わせる媒体の貼り合わせ方法において、
    一対の媒体のそれぞれの、位置や姿勢を保持・矯正し、少なくとも一方の媒体に前記接着剤を塗布し、一対の媒体間の距離を一定に保つようにして、前記接着剤を一対の媒体間に毛細管現象を利用して展延させる際、前記接着剤の展延速度を制御して一対の媒体同士を貼り合わせることを特徴とする媒体の貼り合わせ方法。
  2. 前記接着剤は紫外線硬化型接着剤であり、貼り合わせの際に紫外線を前記紫外線硬化型接着剤に照射する請求項1記載の媒体の貼り合わせ方法。
  3. 前記紫外線硬化型接着剤の粘度が1〜10,000mPa・sの範囲である請求項2記載の媒体の貼り合わせ方法。
  4. 前記接着剤の展延速度を、前記接着剤が塗布された媒体における内周側の温度を外周側の温度よりも低くして制御する請求項1〜3のいずれか1項に記載の媒体の貼り合わせ方法
  5. 少なくとも一対以上のプラスチック基板あるいはフィルム等の媒体を、接着剤を介在させて貼り合わせる媒体の貼り合わせ装置において、
    一対の媒体のそれぞれの、位置や姿勢を保持・矯正する一対の保持台と、
    少なくとも一方の媒体に前記接着剤を塗布する塗布手段と、
    一対の媒体間の距離を一定に保つ距離保持手段と、
    前記接着剤を一対の媒体間に毛細管現象を利用して展延させる際、前記接着剤の展延速度を制御して一対の媒体同士を張り合わせる貼合手段と
    を具備することを特徴とする媒体の貼り合わせ装置。
  6. 前記距離保持手段の一部又は全部は、前記接着剤が濡れない成分で構成されている請求項記載の媒体の貼り合わせ装置。
  7. 前記接着剤は紫外線硬化型接着剤である請求項記載の媒体の貼り合わせ装置。
  8. 貼り合わせの際に紫外線を前記紫外線硬化型接着剤に照射する紫外線照射手段を有する請求項記載の媒体の貼り合わせ装置。
  9. 前記紫外線硬化型接着剤の粘度が1〜10,000mPa・sの範囲である請求項7又は8に記載の媒体の貼り合わせ装置。
  10. 前記保持台は、紫外線を透過する請求項記載の媒体の貼り合わせ装置。
  11. 前記保持台は、200〜500nmの光を70%以上透過する請求項5又は10に記載の媒体の貼り合わせ装置。
  12. 記保持台の少なくとも一方の面が、表面粗さRm ax ≦3μm、平面度≦3μmである請求項記載の媒体の貼り合わせ装置。
  13. 少なくとも一方の前記保持台に、前記保持台の媒体を保持する面に媒体を静電吸着するための静電吸着機構を具備している請求項記載の媒体の貼り合わせ装置。
  14. 前記紫外線照射手段は、フラッシュ型の紫外線ランプである請求項記載の媒体の貼り合わせ装置。
  15. 前記貼合手段による貼り合わせの際、一対の媒体間に存在する空気を逃がすための空気逃げ機構を有する請求項記載の媒体の貼り合わせ装置。
  16. 一対の媒体の各中心を合わせるためのコアピンを有する請求項記載の媒体の貼り合わせ装置。
  17. 前記空気逃げ機構は、一対の前記保持台の相対位置を制御する制御機構と、前記コアピンに空気を逃がすために設けた溝とを有する請求項15又は16に記載の媒体の貼り合わせ装置。
  18. 前記空気逃げ機構として、前記貼合手段によって一対の媒体が貼り合わされた際の接着剤の層の厚さや接着領域を規定するための、少なくとも1つ以上の介 在手段を有する請求項15記載の媒体の貼り合わせ装置。
  19. 前記介在手段は接着剤の層の厚さより小さく、球形状を成す請求項18記載の媒体の貼り合わせ装置。
  20. 前記コアピンの温度を前記保持台の外周に配置された外周リングの温度より低くする請求項5〜19のいずれか1項に記載の媒体の貼り合わせ装置。
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