JP4091203B2 - 計量装置及び定周期振動波除去方法 - Google Patents
計量装置及び定周期振動波除去方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばロードセル等の荷重検出器の出力信号に例えば機械振動や電気ノイズ等のような定周期振動波が重畳されている場合に、この出力信号から定周期振動波を除去することができる計量装置及び定周期振動波除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、定周期振動波がノイズとして重畳している荷重検出器(以下、ロードセルという。)の補正前重量信号を、例えばノッチフィルタにより処理して定周期振動波のノイズを除去する方法がある。
しかし、ノッチフィルタでは、1周期以上の定周期振動波が重畳する重量信号のデータを必要とするので、物品の計量のために重量信号の取得可能な時間が定周期振動波の1周期未満である場合は、ノッチフィルタによって補正前重量信号から定周期振動波を効果的に除去することができず、補正済み重量信号に許容できない誤差を含むことがある。
従って、ノッチフィルタでは、重量信号の取得時間を、除去しようとする定周期振動波の1周期以上にする必要があり、これによって、入力信号に対する出力信号の応答が1周期以上遅れるという問題がある。勿論、重量信号に重畳する複数個の定周期振動波を除去する場合は、その個数に応じた時間だけ遅れが生じることとなる。従って、例えば重量選別機にノッチフィルタを使用すると、このフィルタが物品の重量選別速度の高速化の妨げとなっている。
【0003】
そこで、本願出願人は、先に、重量信号の取得可能な時間が定周期振動波の1周期未満であっても、入力信号に対する出力信号の応答に遅れを生じることなく、定周期振動波が重畳する補正前重量信号からその定周期振動波を効果的に除去することができる方法を特願昭55−156602号(特公平1−30083号)で提案している。
この定周期振動波除去方法が適用されている計量装置は、例えば図4に示すように、計量コンベア1がロードセル2によって支持されている。この計量コンベア1は、駆動プーリ3と従動プーリ4とを備えており、駆動プーリ3と従動プーリ4には搬送ベルト5を掛けてある。駆動プーリ3には第1のモータ6の回転軸が連結しており、第1のモータ6が回転すると、駆動プーリ3及び従動プーリ4はこの第1のモータ6と同期して回転する。第1のモータ6と駆動プーリ3及び従動プーリ4との回転周期の比は、1:N又は1:1/Nである。ただし、Nは整数である。これら駆動プーリ3、従動プーリ4、及び第1のモータ6の各回転体の各偏心重心によってこれら駆動プーリ3等の回転周期と同期する定周期振動波N(図1(a))が発生し、この定周期振動波Nがノイズとしてロードセル2が出力する重量信号W(図1(b))に重畳する。
また、計量装置には、この定周期振動波と同期する同期信号を得るための例えばフォトセンサから成る回転周期検出センサ(図示せず)を設けてある。回転周期検出センサは、駆動プーリ3、従動プーリ4、及び第1のモータ6のうち回転周期の最も長いものが1回転するごとに同期信号を発生するものである。
【0004】
この定周期振動波除去方法によると、まず、計量装置を調整モードにする。そして、計量コンベア1に荷重を掛けていない状態で重量信号を含まない定周期振動波信号NのみをA/D変換(アナログ・デジタル変換)して、そのデジタル定周期振動波信号Nを同期信号に合わせてCPUが読み取り記憶部に記憶する。このデジタル定周期振動波信号Nは、定周期振動波を精度良く再現できるように十分短い時間間隔でサンプリングしたデータである。つまり、同期信号の直後に読み込まれた定周期振動波信号のデータを記憶部の先頭番地に配置し、これ以降のデータを時系列に配置していくことで同期信号に対する定周期振動波信号の時間的関係を明確にしている。
【0005】
次に、本稼働時に本稼働モードにする。物品7を計量コンベア1により搬送中に定周期振動波信号Nが重畳した補正前重量信号Wと共に、回転周期検出センサが生成する同期信号をCPUが読み込む。ここで、本稼働中に、重量信号Wの取得可能な時間内で同期信号をCPUが読み込むことにより、補正前重量信号Wに重畳している定周期振動波信号Nの各データが記憶部に記憶されている定周期振動波信号Nの各データのどれであるかをCPUが認識することができる。
次に、CPUが同期信号を基準にして補正前重量信号Wと定周期振動波信号Nとを比較して、前者から後者を減算することによって定周期振動波信号Nを除去した補正済み重量信号を生成することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記定周期振動波除去方法では、回転周期検出センサ及び同期信号をCPUに入力させる入力装置が必要であり、この分のコストが嵩むという問題がある。そして、回転周期検出センサの取付けが困難である場合があるし、その取付けスペースを必要とするという問題がある。
また、例えば本稼働時に第1のモータ6の回転速度を変更した場合は、定周期振動波信号の周期、振幅、又は波形が調整モードで記憶したものと本稼働モードで記憶したものとが相違することとなり、調整モードで記憶した定周期振動波信号Nを使用して本稼働時に得られた補正前重量信号Wから変更後の定周期振動波信号N’を除去することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、回転周期検出センサを設けずに、入力信号に対する出力信号の応答遅れを軽減すると共に、補正前の重量信号から定周期振動波を除去することができ、また、定周期振動波の周期、振幅が本稼働中に変化しても、予め記憶している定周期振動波信号を修正して補正前重量信号から変更後の定周期振動波を除去することができる計量装置及び定周期振動波除去方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る計量装置は、稼働状態において定周期振動波が重畳されている補正前重量信号から上記定周期振動波を除去して補正済み重量信号を生成する計量装置において、定周期振動波の少なくとも1周期分の信号が記憶される記憶手段と、荷重検出手段が出力する上記補正前重量信号と上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号の両者の位相差を順次変更する位相差変更手段と、複数の各位相差ごとの上記補正前重量信号と上記定周期振動波信号とを加算し又は一方から他方を減算して各位相差ごとに合成重量信号を算出する合成重量信号算出手段と、上記複数の合成重量信号のうち信号のばらつき又は最大値と最小値の差が比較的小さい合成重量信号を選択する選択手段と、を具備することを特徴とするものである。
【0009】
第2の発明に係る計量装置は、第1の発明において、上記位相差変更手段は、所定の重量値演算用信号取得区間の補正前重量信号に対して上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号の位相をこの定周期振動波信号の1周期時間よりも短い所定時間ずつ相対的にシフトさせて両者の位相差を順次変更することを特徴とするものである。
第3の発明に係る計量装置は、第1又は第2の発明において、上記定周期振動波の周期及び振幅を決定する定周期振動波発生源の速度情報によって上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号を修正する修正手段を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
第4の発明に係る計量装置は、第1又は第2の発明において、定周期振動波の少なくとも1周期分の信号を重量信号の零点調整の際に上記記憶手段に記憶することを特徴とするものである。
第5の発明に係る計量装置は、第1又は第2の発明において、定周期振動波除去フィルタによって補正前重量信号に重畳する定周期振動波を除去させて、これによって得られた補正済み重量信号を使用して零点調整手段により零点調整を行わせる切り替え位置と、零点調整済みの補正前重量信号に重畳する定周期振動波を上記記憶手段に記憶させる切り替え位置と、に切り替える切り替え手段を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
第6の発明に係る定周期振動波除去方法は、補正前の重量信号に第1と第2の2つの定周期振動波が重畳される荷重検出器において、第1の定周期振動波を生じさせ第1の定周期振動波の少なくとも1周期分の信号を記憶する段階と、第2の定周期振動波を生じさせ第2の定周期振動波の少なくとも1周期分の信号を記憶する段階と、第1と第2の定周期振動波が重畳されている補正前重量信号と上記記憶された第1の定周期振動波信号の両者の位相差を順次変更し、複数の各位相差ごとの上記補正前重量信号と第1の定周期振動波信号とを加算し又は一方から他方を減算して各位相差ごとに第1の合成重量信号を算出する段階と、複数の第1の合成重量信号のうち信号のばらつき又は最大値と最小値の差が比較的小さい第2の合成重量信号を選択する段階と、第2の合成重量信号と上記記憶された第2の定周期振動波信号の両者の位相差を順次変更し、複数の各位相差ごとの第2の合成重量信号と第2の定周期振動波信号とを加算し又は一方から他方を減算して各位相差ごとに第3の合成重量信号を算出する段階と、複数の第3の合成重量信号のうち信号のばらつき又は最大値と最小値の差が比較的小さい第4の合成重量信号を選択する段階と、を具備することを特徴とするものである。
【0012】
第7の発明に係る計量装置は、稼働状態において定周期振動波が重畳されている補正前重量信号から上記定周期振動波を除去して補正済み重量信号を生成する計量装置において、定周期振動波の少なくとも1周期分の信号が記憶される記憶手段と、荷重検出手段が出力する上記補正前重量信号と上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号に基づいて両者の位相差を0度若しくは180度、又はそれに近い角度に変更する位相差変更手段と、上記補正前重量信号と上記定周期振動波信号の位相差を0度若しくは180度、又はそれに近い角度とした状態における両者の合成重量信号を算出して上記定周期振動波を除去した補正済み重量信号を生成する合成重量信号算出手段と、を具備することを特徴とするものである。
【0013】
第8の発明に係る計量装置は、稼働状態において定周期振動波が重畳されている補正前重量信号から上記定周期振動波を除去して補正済み重量信号を生成する計量装置において、定周期振動波の少なくとも1周期分の信号が記憶される記憶手段と、荷重検出手段が出力する上記補正前重量信号と上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号に基づいて両者の位相差を検出する位相差検出手段と、上記補正前重量信号と上記定周期振動波信号の位相差を0度若しくは180度、又はそれに近い角度とした状態における両者の合成重量信号を算出して上記定周期振動波を除去した補正済み重量信号を生成する合成重量信号算出手段と、を具備することを特徴とするものである。
第9の発明に係る計量装置は、第8の発明において、上記位相検出手段が位相差を検出するために使用する上記補正前重量信号の取得開始時点が、上記合成重量信号算出手段が上記合成重量信号を算出するために使用する上記補正前重量信号の取得開始時点よりも先であることを特徴とするものである。
【0014】
第1乃至第5の各発明によると、補正前重量信号と予め記憶部に記憶されている定周期振動波信号の位相差を順次変更し、これら複数の各位相差ごとの合成重量信号のうち信号のばらつき又は最大値と最小値の差が比較的小さい合成重量信号を選択することができる。この選択された合成重量信号は、補正前重量信号に重畳している定周期振動波信号と予め記憶部に記憶しておいた定周期振動波信号との位相差が180度又は0度になった時、即ち、両方の信号値の大きさが等しく符号が逆になった時又は両者が重なり合った時、に算出されたものであり、従って、この選択された合成重量信号には定周期振動波信号が完全に又は殆ど残っておらず、定周期振動波信号であるノイズを除去した補正済み重量信号を生成することができる。
【0015】
第2の発明によると、補正前重量信号を所定の重量値演算用信号取得区間で取得する計量装置に適用することができ、補正前重量信号に対して定周期振動波信号の位相をこの定周期振動波信号の1周期時間よりも短い所定時間ずつ相対的にシフトさせて両者の位相差を変更することができる。
第3の発明によると、定周期振動波発生源の速度が変化して、それに応じて補正前重量信号に重畳する定周期振動波の周期及び振幅が変化したときに、記憶手段に記憶されている定周期振動波信号を速度の変化後の定周期振動波に対応する信号に修正することができる。
第4の発明によると、零点調整の際に定周期振動波の少なくとも1周期分の信号を記憶手段に記憶することができる。
【0016】
第5の発明によると、零点調整を行うときは、定周期振動波除去フィルタによって補正前重量信号に重畳する定周期振動波を除去する補正を行い、零点調整手段はこの補正済み重量信号を使用して零点調整を行うことができる。そして、定周期振動波を記憶手段に記憶するときは、切り替え位置を切り替えて、零点調整済みの補正前重量信号に重畳する定周期振動波を記憶することができる。
【0017】
第6の発明は、第1と第2の2つの定周期振動波が重畳する補正前重量信号から第1と第2の定周期振動波を除去する方法であり、第1の定周期振動波は、第1の発明と同様にして、補正前重量信号から除去することができ、第1の定周期振動波が除去された重量信号が第2の合成重量信号である。そして、第2の定周期振動波は、第1の発明と同様にして、第2の合成重量信号から除去することができ、このようにして第1と第2の定周期振動波が除去された重量信号が第4の合成重量信号である。
【0018】
第7の発明によると、補正前重量信号と予め記憶部に記憶されている定周期振動波信号に基づいて両者の位相差を0度若しくは180度、又はそれに近い角度にして、この状態における両者の合成重量信号を算出することができる。この合成重量信号は、定周期振動波信号であるノイズを除去した補正済み重量信号である。
【0019】
第8及び第9の各発明によると、補正前重量信号と予め記憶部に記憶されている定周期振動波信号に基づいて両者の位相差を検出し、この検出した位相差に基づいて補正前重量信号と定周期振動波信号の位相差を0度若しくは180度、又はそれに近い角度にして、この状態における両者の合成重量信号を算出することができる。この合成重量信号は、定周期振動波信号であるノイズを除去した補正済み重量信号である。
【0020】
第9の発明によると、過渡状態において減衰度合が比較的大きい領域での補正前重量信号を重量演算用データとして使用すると重量誤差が大きくなるので重量演算用データとして使用しづらいが、位相差を算出するために使用することができることに鑑み、位相差を算出するために使用する補正前重量信号の取得開始時点を、合成重量信号を算出するために使用する補正前重量信号の取得開始時点よりも先にすることによって、多くの補正前重量信号のデータを取得して、これらのデータを使用して補正前重量信号と定周期振動波信号の両者の位相差を検出することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る定周期振動波除去方法を適用した計量装置の第1実施形態を各図を参照して説明する。この計量装置は、重量選別機に適用されている。計量装置は、図4に示すように、ロードセル2によって支持されている計量コンベア1を備えている。そして、計量コンベア1の前段に送り込みコンベア8が設けられている。
この計量装置は、駆動プーリ3、従動プーリ4、及び第1のモータ6の夫々の偏心重心に基づく所定の定周期振動波N(図1(a))の1周期Tがこの計量装置の重量信号に重畳する計量コンベア1の固有振動波の周期に比べて長く、そして、物品7の計量のために設定された重量信号取得時間(図1(b)のP〜Q)の長さが上記所定の定周期振動波Nの1周期Tよりも短いものである。
従って、従来の例えばデジタルノッチフィルタにより重量信号Wからその所定の定周期振動波Nを除去しようとすると、重量信号の立上がり部分のデータを重量演算に加えなければならなくなり、これによって計量精度を低下させることとなる。そして、補正前重量信号Wに対する補正済み重量信号の応答の遅れが大きくなる。
そこで、本発明は、このような運転条件が要求されている装置において、従来よりもコストが低廉であり、補正済み重量信号の応答の遅れを極めて短くすることができて、定周期振動波Nを効果的に除去することができる計量装置を提案するものである。
【0022】
図5は、この重量選別機の計量演算回路のブロック図である。ロードセル2から出力されたアナログ重量信号は、増幅器9で増幅されてA/D変換器(アナログ・デジタル変換器)10でデジタル重量信号Wに変換され、そして、I/O回路(入出力回路)11を通ってCPU(マイクロプロセッサ)12に入力する。
設定表示部13は、I/O回路11と接続しており、例えば記憶部14に記憶されている定周期振動波信号Nのサンプリング値(ノイズデータ)及び補正前重量信号Wのサンプリング値(重量データ)を表示することができるし、定周期振動波信号Nのサンプリング値と補正前重量信号Wのサンプリング値を合成した合成重量信号Rのサンプリング値等を表示することができるものである。また、補正前重量信号Wの取得時間P〜Q等の各種データや命令等を入力することができるものである。
【0023】
記憶部14は、この重量選別機(計量装置)を作動させるためのプログラムを記憶しているし、更に、定周期振動波信号Nのサンプリング値及び補正前重量信号Wのサンプリング値、並びに合成重量信号Rのサンプリング値を記憶することができる。そして、プログラムの進行に伴って各種データが演算されて得られたその演算結果及び各種データ等を記憶することができるものである。
CPU12は、位相差変更手段、合成重量信号算出手段、選択手段、定周期振動波除去フィルタ、零点調整手段、及び切り替え手段を備えている。これら各手段及び定周期振動波除去フィルタの各処理は、記憶部14に記憶されているプログラムに従ってCPU12が行う。
【0024】
位相差変更手段は、図1(d)〜図1(f)に示すように、所定の重量信号取得時間(重量値演算用信号取得区間)P〜Qの補正前重量信号Wに対して記憶部14に記憶されている定周期振動波信号Nの位相をこの定周期振動波信号Nの1周期時間よりも短い所定時間t1 ずつ相対的にシフトさせて両者の位相差を順次変更する手段である。
合成重量信号算出手段は、図1(c)〜図1(f)に示すように、複数の各位相差ごとの補正前重量信号Wと定周期振動波信号Nとを加算して、各位相差ごとに合成重量信号R(R0 〜Rn-1 )を算出する手段である。
選択手段は、複数の合成重量信号R0 〜Rn-1 のうち信号のばらつきが最も小さい合成重量信号RM を選択する手段である。
【0025】
定周期振動波除去フィルタは、補正前重量信号Wに重畳する計量コンベア1の固有振動波(図示せず)を除去して補正済み重量信号WF1を生成するデジタルノッチフィルタ(第1の定周期振動波除去フィルタ)と、駆動プーリ3等に基づく定周期振動波Nを除去して補正済み重量信号WF2を生成するデジタルノッチフィルタ(第2の定周期振動波除去フィルタ)と、を備えている。なお、第1及び第2の定周期振動波除去フィルタは、補正前重量信号Wに重畳する固有振動波と定周期振動波Nを除去して補正済み重量信号WF12 を生成するフィルタである。
零点調整手段は、第1及び第2の定周期振動波除去フィルタが生成する補正済み重量信号WF12 を使用して重量信号の零点を調整する手段である。
切り替え手段は、第1及び第2の定周期振動波除去フィルタが補正前重量信号Wに重畳する計量コンベア1の固有振動波、及び定周期振動波Nを除去し、これによって得られた補正済み重量信号WF12 を零点調整手段が使用して零点調整を行う切り替え位置と、第1の定周期振動波除去フィルタが固有振動波を除去する演算を行い、この零点調整済みの補正済み重量信号WF1に重畳する定周期振動波Nを記憶部14に記憶させることができる切り替え位置と、に切り替える手段である。
【0026】
次に、上記のように構成された計量装置の本稼働前の調整段階において定周期振動波信号Nのデータを記憶部14に記憶する手順、及び本稼働時において定周期振動波Nを除去した補正済み重量信号RMHを生成する演算の手順を図7及び図8に示すフローチャート等の各図を参照して説明する。
まず、図7に示すフローチャートに従って調整段階の処理内容を説明する。物品7が計量コンベア1上に載っていない状態において、オペレータが計量コンベア1を駆動して設定表示部13の零点調整キーを操作する(S100)。すると、CPU12が切り替え手段の切り替え位置を零点調整位置に切り替える。これによって、第1及び第2の定周期振動波除去フィルタが補正前重量信号Wに重畳する計量コンベア1の固有振動波、及び定周期振動波Nを除去する処理を行い、そして、零点調整手段がこの処理によって得られた補正済み零点重量信号WF12 を使用して零点調整を行いその零点重量値を記憶部14に記憶する(S102)。零点調整時は、比較的長い重量信号取得時間を許容できるので、第1及び第2の定周期振動波除去フィルタによって補正前重量信号Wに重畳する固有振動波、及び定周期振動波Nを除去する処理を行うこととしている。
【0027】
そして、CPU12が切り替え手段の切り替え位置を、第2の定周期振動波除去フィルタを切離し、第1の定周期振動波除去フィルタが固有振動波を除去する演算を行う位置に切り替えて(S104)、零点調整済みの補正前零点重量信号Wに重畳する定周期振動波Nのm周期分のノイズデータ(図6参照)を記憶部14に記憶させる(S106)。なお、定周期振動波Nの1周期Tは、計量モータ、駆動プーリ3、及び従動プーリ4の回転周期のうち最も長いものを使用する。ここでは、駆動及び従動プーリ4の回転周期を定周期振動波Nの1周期Tとする。そして、1周期がTであるので、1周期分の定周期振動波信号NのA/Dサンプリングノイズデータの個数はn(=T/t)である。tはサンプリング時間間隔である。
【0028】
ここで、図6に示すように、A/D変換器10によりサンプリングされた定周期振動波Nの1周期目のn個のノイズデータの各時刻がt01、t11、・・・、tn-1.1 、各時刻のノイズデータがW01、W11、・・・、Wn-1.1 、2周期目のn個のノイズデータの各時刻がt02、t12、・・・、tn-1.2 、各時刻のノイズデータがW02、W12、・・・、Wn-1.2 、・・・・、m周期目のn個のノイズデータの各時刻がt0m、t1m、・・・、tn-1.m 、各時刻のノイズデータがW0m、W1m、・・・、Wn-1.m とする。
次に、m周期分の定周期振動波信号Nの各周期中の同一タイミングのノイズデータの平均値を演算し、平均定周期振動波信号Nを算出する(S108)。つまり、m個の各周期の同じ第1番目のタイミング(同じ位相)t01、t02、・・・、t0mの時刻におけるノイズデータW01、W02、・・・、W0mの平均値WZ0、・・・・、第n番目のタイミング(同じ位相)tn-1.1 、tn-1.2 、・・・、tn-1.m の時刻におけるノイズデータWn-1.1 、Wn-1.2 、・・・、Wn-1.m の平均値WZ.n-1 とする。これにより、n個の各時刻t0 、t1 、・・・、tn-1 における平均ノイズデータは、WZ0、WZ1、・・・、WZ.n-1 となる。そして、この平均ノイズデータ列の2周期分を時刻の順番に記憶部14に記憶する(S110)。これで調整段階が終了する。
【0029】
次に、図8に示すフローチャートに従って本稼働段階の処理内容を説明する。この本稼働の状態では、CPU12が切り替え手段の切り替え位置を、第1の定周期振動波除去フィルタが固有振動波を除去する演算は行うが、第2の定周期振動波除去フィルタを切り離してあり、定周期振動波Nを除去する演算を行わない位置に切り替えてある。従って、図1(b)に示す補正前重量信号Wは、第2の定周期振動波除去フィルタによる過渡応答の比較的長い遅れがないが、定周期振動波Nが混入している。
まず、物品7が送り込みコンベア8により搬送されて、計量コンベア1の手前に設けられている物品検出センサ(フォトセンサ)15により検出されると(S200)、CPU12が物品7の重量データを取得して記憶するタイミングP、及び取得区間(取得時間)P〜Qを予め設定されている条件に従って自動的に指定する(S202)。重量データ取得区間P〜Qは、重量値を求めるための最適なタイミングであり区間として指定される。そして、CPU12が図1(b)に示す指定区間P〜Q内の定周期振動波Nが重畳する補正前重量信号Wの重量データ列をA/Dサンプリング時間間隔t1 で読み込み、時系列に記憶部14に記憶する(S204)。
【0030】
この補正前重量信号Wの重量データ列がW0 、W1 、・・・、Wk とする。CPU12は、この重量データ列W0 、W1 、・・・、Wk に対して予め記憶部14に記憶されている図1(a)に示す定周期振動波Nの2周期分のノイズ成分データ(以下、単に「ノイズデータ」と言う。)列WZ0、WZ1、・・・、WZ.n-1 、WZ0、WZ1、・・・、WZ.n-1 を呼出し、同じタイミング(位相)のデータどうしを加算する演算を行う。即ち、
Wd00 =W0 +WZ0、Wd10 =W1 +WZ1、・・・、Wdk0 =Wk +WZk
と演算する。この演算は、合成重量信号算出手段が行い、Wd00 〜Wdk0 は合成重量信号である。この演算結果は、図1(c)のR0 である。
次に、位相差変更手段は、図1(a)に示すノイズデータ列WZ0、WZ1、・・・をサンプリング時間間隔t1 だけ、つまりデータ1個分だけ同図の左側にシフトさせて、上記と同様に合成重量信号算出手段が重量データ列とノイズデータ列の同じタイミングのデータどうしを加算する。
Wd01 =W0 +WZ1、Wd11 =W1 +WZ2、・・・、Wdk1 =Wk +WZ.k+1
と演算する。この演算結果は、図1(d)のR1 である。
【0031】
更に、図1(d)に示すノイズデータ列をサンプリング時間間隔t1 だけ同図の左側に更にシフトさせて、上記と同様に重量データ列とノイズデータ列の同じタイミングのデータどうしを加算する。
Wd02 =W0 +WZ2、Wd12 =W1 +WZ3、・・・、Wdk2 =Wk +WZ.k+2
と演算する。この演算結果は、図1(e)のR2 である。この合成重量信号データR2 は一定値となっており、補正前重量信号Wの重量データ列から定周期振動波Nのノイズデータ列が完全に除去されたものである。
同様にして順次t1 ずつノイズデータ列をシフトして定周期振動波Nの1周期に至るまでの合成重量信号データ列R3 、R4 、・・・、Rn-1 を求める。
Wd0.n-1=W0 +WZ.n-1 、Wd1.n-1=W1 +WZ0、・・・、Wdk.n-1=Wk +WZ.k-1
と演算する。この演算結果は、図1(f)のRn-1 である。
このようにしてノイズデータ列を順次シフトさせることを1周期行うことにより、以下に示すようにn個の合成重量信号データ列R0 、R1 、・・・、Rn-1 を求めることができる。
【0032】
R0 :Wd00 、Wd10 、・・・、Wdk0
R1 :Wd01 、Wd11 、・・・、Wdk1
・ ・
・ ・
Rn-1 :Wd0.n-1、Wd1.n-1、・・・、Wdk.n-1
上記の処理をCPU12がステップS206、S208で行う。
【0033】
次に、n個の合成重量信号データ列R0 、R1 、・・・、Rn-1 のそれぞれの標準偏差(ばらつき)を計算し、標準偏差が最小となる合成重量信号データ列RM (図1の例ではR2 )を選択手段が選択する(S210)。そして、CPU12が標準偏差が最小となる合成重量信号データ列R2 の平均値を算出してこの平均値を補正済み重量信号RMHとして生成する(S212、S214)。補正済み重量信号RMHは、定周期振動波Nが重畳する補正前重量信号Wからその定周期振動波Nを効果的に除去した信号である。
【0034】
この実施形態の計量装置によると、従来の計量装置のように、定周期振動波Nの同期信号を読み込むための回転周期検出センサ及び同期信号をCPU12に入力させる入力装置を設けずとも、重量データ列に重畳するノイズデータ列を効果的に除去することができるノイズデータ列の位相を自動的に判定して、補正済み重量信号RMHを生成することができる。そして、本稼働時には、時定数の比較的大きい第2の定周期振動波除去フィルタを使用していないので、補正前重量信号Wに対する補正済み重量信号RMHの応答の遅れを従来よりも短縮することができ、これによって、計量速度の高速化を図ることができる。
【0035】
なお、標準偏差が最小となる合成重量信号データ列R2 は、記憶部14に記憶されているノイズデータ列が、重量データ列に重畳するノイズデータ列に対して位相差が180度となるようにシフトして両者の和を算出したときの数列の値であるので、この合成重量信号データ列R2 が最も効果的にノイズが除去されている。
【0036】
次に、本稼働中において、計量コンベア1に設けられている第1のモータ6の回転速度を変更した場合は、定周期振動波信号Nの周期、振幅、又は波形が調整モードで記憶したものと本稼働モードで記憶したものとが相違することとなり、調整モードで記憶したノイズデータNをそのまま使用すると、本稼働時に得られた補正前重量信号Wから変更後の定周期振動波を効果的に除去することができないこととなる。そこで、調整モードで記憶部14に記憶した定周期振動波信号Nのノイズデータ列に対してCPU12の修正手段が所定の修正処理を行うことにより変更後の定周期振動波を効果的に除去することができる方法を説明する。
修正手段は、CPU12が記憶部14に記憶されている所定にプログラムに従って、定周期振動波Nの周期及び振幅を決定する定周期振動波発生源である第1のモータ6の回転速度情報V(変更前)、VX (変更後)を使用して、記憶部14に記憶されているノイズデータNを修正する処理を行う手段である。
【0037】
今、記憶部14に記憶されている定周期振動波信号Nのノイズデータ列が図2(a)に示すように周期がTであり、本稼働時において第1のモータ6の回転速度が減速して図2(b)に示すように周期がTX となったとし、この周期TX のノイズデータ列の求め方を説明する。
記憶部14に記憶されているノイズデータの個数は、n(=T/t1 )であるので、速度変更後のデータの時間間隔はtX =TX /nとなる。
また、ノイズデータの振幅は、第1のモータ6の回転速度の2乗に比例して変化するので(遠心力の垂直成分)、調整モード及び本稼働時における第1のモータ6の回転速度をV、VX とすると、記憶部14に記憶されている各ノイズデータW0 〜Wn-1 に(VX /V)2 をそれぞれ乗算することにより変更後の回転速度VX におけるノイズデータWZ0〜WZ.n-1 を算出することができる。
従って、調整モードで記憶されているノイズデータ列Nは、図2(a)に示すように、データの時間間隔がt1 であり、各時刻t0 〜tn-1 におけるノイズデータがW0 〜Wn-1 とすると、修正手段がこのノイズデータ列Nを、図2(b)に示すように、データの時間間隔がtX であり、各時刻tZ0、tZ1、・・・、tZ.n-1 におけるノイズデータがWZ0、WZ1、・・・、WZ.n-1 のノイズデータ列NX に変換して記憶部14に記憶させることができる。
ただし、tZ1−tZ0=tZ2−tZ1=・・・・=tZ.n-1 −tZ.n-2 =tX
WZ0=(VX /V)2 ×W0 、WZ1=(VX /V)2 ×W1 、・・・・、WZ.n-1 =(VX /V)2 ×Wn-1 である。
【0038】
ところで、本稼働時の補正前重量信号Wのサンプリング時間間隔がt1 であるので、ノイズ除去演算を行うには、ノイズデータ列NX をサンプリング時間間隔t1 ごとのデータに変換する必要があるので、修正手段は、補間法を使用してノイズデータ列NX を時間間隔がt1 (時刻t0 、t1 、・・・、tk-1 、tk )のノイズデータ列NY (ノイズデータ値WY0、WY1、・・・、WY.k-1 、WY.k )に変換して記憶部14に記憶させることができる。
つまり、図2(b)に示すように、1周期TX を時刻t0 、t1 、・・・、tk-1 、tk に分割してそれぞれの時刻におけるノイズデータWY.0 、WY.1 、・・・、WY.k-1 、WY.k を算出して記憶部14に記憶する。
例えば、図2(b)に示す時刻tZ.n-2 とtZ.n-1 の間の時刻tk-2 、tk-1 におけるノイズデータWY.k-2 、WY.k-1 を求める場合について説明する。
図3に示すように、まず、時刻tZ.n-2 とtZ.n-1 におけるノイズデータのyの値WZ.n-2 とWZ.n-1 を直線で結ぶ。この直線pをxyの方程式で表すと、
y=−{(WZ.n-2 −WZ.n-1 )/tx }×x+WZ.n-2 (1)
となる。ただし、tZ.n-2 −tZ.n-1 =tx とする。
ここで、x=tk-2 −tZ.n-2 を(1)式に代入して時刻tk-2 におけるノイズデータ値WY.k-2 を求めると、
y=WY.k-2 =−{(WZ.n-2 −WZ.n-1 )/tx }×(tk-2 −tZ.n-2 )+WZ.n-2
となる。このようにして、各時刻t0 、t1 、・・・、tk-1 、tk におけるノイズデータ値WY0、WY1、・・・、WY.k-1 、WY.k を求めることができる。
なお、図2では、ノイズデータの1周期分について説明したが、記憶部14には2周期分のノイズデータが記憶されているので、上記と同様にして2周期分のノイズデータを変換することができる。
【0039】
ただし、第1のモータ6の回転速度が本稼働中に加速してVX >Vとなった場合のノイズデータ列NX は、図2(c)に示すような波形となるが、VX <Vの場合と同様にして、修正手段は、図2(a)に示す各時刻t0 〜tn-1 におけるノイズデータ値W0 〜Wn-1 を、各時刻t0 、t1 、・・・におけるノイズデータ値WY0、WY1、・・・(図2(c)参照)に変換することができる。
そして、図2(a)に示すサンプリング時間間隔t1 が十分に短いときは、修正手段は、各時刻t0 〜tn-1 におけるノイズデータ値W0 〜Wn-1 に対して上記のような変換の演算を行わずに、図2(b)の場合において、各時刻t0 〜tk に最も接近する時刻tZmにおけるノイズデータ値WY0〜WY.k を当てはめてもよい。mは、0からn−1までの整数である。例えば、時刻t1 、t2 のノイズデータ値としてWZ1を当てはめ、時刻t3 、t4 のノイズデータ値としてWZ2を当てはめることができる。
【0040】
次に、第2実施形態の計量装置を説明する。第2実施形態の計量装置は、第1実施形態の計量装置において、位相差変更手段、合成重量信号算出手段、及び選択手段に代えて、位相差検出手段、及び合成重量信号算出手段を設けたものである。これ以外は、第1実施形態と同等であるので同等部分の詳細な説明を省略する。第2実施形態の位相差検出手段、及び合成重量信号算出手段が行う各処理は、記憶部14に記憶されているプログラムに従ってCPU12が行う。
【0041】
位相差検出手段は、図9に示すように、本稼働時において得られた補正前重量信号Wの時刻R〜Qにおける重量データ列W-R、・・・、W-1、W0 、W1 、・・・、Wk と記憶部14に記憶されている図1(a)に示す定周期振動波信号のノイズデータ列WZ0、WZ1、・・・、WZ.n-1 に基づいて両者の位相差を検出する手段である。なお、時刻R〜Qの時間間隔TN は、T(1周期)/2以上としている。そして、図9に破線で示す時刻Q以降の補正前重量信号Wは、この補正前重量信号Wの波形と振動の周期Tを説明するためのものである。
合成重量信号算出手段は、重量データ列W-R、・・・、W-1、W0 、W1 、・・・、Wk とノイズデータ列WZ0、WZ1、・・・、WZ.n-1 の位相差を0度とした状態における、P〜Q領域の重量データ列W0 、W1 、・・・、Wk (時刻P〜Qの重量データ)とノイズデータ列WZ0、WZ1、・・・、WZ.n-1 の互いに対応するタイミングの重量データからノイズデータを減算して合成重量信号を算出する手段である。
【0042】
第2実施形態の計量装置によると、本稼働前の調整段階において定周期振動波信号Nのデータを記憶部に記憶する手順は、第1実施形態の図7に示す手順と同等であるのでその説明を省略する。
次に、本稼働の状態において、図8に示すステップS200及び202の処理と同等の処理を行う。そして、CPU12が図9に示す指定区間R〜Q内の定周期振動波Nが重畳する補正前重量信号Wの重量データ列W-R 〜W0 〜Wk をA/Dサンプリング時間間隔t1 で読み込み、時系列に記憶部14に記憶する。
そして、重量データW-R〜W0 〜Wk を微分演算して極大値又は極小値と対応する重量データを検出する。その検出した重量データが極大値又は極小値であるかの判定は、例えばその検出した重量データとその前後の重量データの大きさを比較することにより判定することができる。次に、重量データ列W-R〜W0 〜Wk の極大値又は極小値の重量データ、例えば図9では、極小値の重量データW-Sのタイミングと図1(a)に示すノイズデータNの極小値のノイズデータWK のタイミングとを比較して、この2つの重量データ列とノイズデータ列の位相差を算出する。このようにして、重量及びノイズデータ列の位相差を算出するのが位相差検出手段である。
そして、合成重量信号算出手段は、この算出した位相差に基づいて、2つのデータ列の位相差が0度となるように両者のデータを対応させ、両者の互いに対応するタイミングの重量データからノイズデータを減算して合成重量信号を算出することができる。このようにして、第1実施形態と同様に、定周期振動波信号Nを含む補正前重量信号Wから定周期振動波信号Nであるノイズを除去した補正済み重量信号を生成することができる。
上記位相差検出手段、及びこの算出した位相差に基づいて2つのデータ列の位相差が0度となるように両者のデータを対応させるのが請求項7に記載の位相差変更手段である。
【0043】
なお、位相差を検出するために使用する重量データ列W-R〜W0 〜Wk の取得開始時点Rを、図9に示すように、合成重量信号を算出するために使用する重量データ列W0 〜Wk の取得開始時点Pよりも先のタイミング(時刻)にしてあり、更に、R〜Qの時間間隔がノイズデータNのT(1周期)/2以上の領域の重量データを取得するように取得開始時点Rを設定してある。これによって、R〜Qの領域の重量データのうちから必ず極大値又は極小値の重量データを取得することができ、これらの重量データ列W-R〜W0 〜Wk を使用して補正前重量信号Wと定周期振動波信号Nの両者の位相差を正確に検出できるようにしている。
また、図9に示すR〜Q間の重量データは、過渡状態であって減衰度合が比較的大きい領域であるので、この重量データを合成重量信号データの算出のために使用すると重量誤差が大きくなるのでそれには使用しづらいが、位相差を算出する際にはR〜Q間の重量データのうちから極大値又は極小値を表すデータを検出できればよいのでR〜Q間の重量データを使用しても支障がないので使用している。
【0044】
ただし、上記実施形態の修正手段によるノイズデータ値の振幅の変換方法は、各ノイズデータ値W0 〜Wn-1 に対して(VX /V)2 を乗算してWZ0〜WZ.n-1 を算出することとしたが、第1のモータ6の速度可変範囲が狭い場合や、回転速度に対するノイズの振幅の変動特性式が複雑であったり、不明である場合は、上記の方法に代えて、速度可変範囲の最高及び最低速度のときのノイズの最大振幅及び最小振幅を実測して記憶部14に記憶しておき、可変範囲内の各速度における振幅を、最大振幅と最小振幅とを結ぶ直線を使用して近似値で求めてもよい。
【0045】
更に、上記実施形態では、本稼働前の調整段階における零点調整の際に定周期振動波Nのノイズデータ列Nを記憶部14に記憶する例で説明したが、本稼働中に零点調整を自動的又は手動で行う計量装置では、本稼働中の零点調整の際に上記実施形態と同様にしてノイズデータ列Nを読み取り、前回に記憶されているノイズデータ列Nに置き換えて記憶部14に記憶してもよい。
このように、本稼働中の零点調整の際にノイズデータ列Nを記憶部14に記憶することとすると、その時点での第1のモータ6の回転速度におけるノイズデータ列Nを記憶することができるので、修正手段によるノイズデータ列Nの変換演算を省略することができる。そして、本稼働中に定周期振動波Nの周期、振幅のみならず波形が変化した場合でも、その変化後の定周期振動波Nの正確なノイズデータ列NX を得ることができるので、修正手段により変換した場合よりも正確なノイズデータ列NX を得ることができる。
本稼働中に定周期振動波Nの波形が変化する場合として、計量コンベア1の駆動プーリ3と従動プーリ4の回転の位相がずれた時がある。駆動プーリ3と従動プーリ4は搬送ベルト5で連結されているので、各プーリ3、4と搬送ベルト5との間で滑りが生じて各プーリの回転によって生じる両者の定周期振動の位相がずれることによりこの計量コンベア1全体としての定周期振動波Nの波形が変化する。
【0046】
そして、上記実施形態では、第1のモータ6の回転に基づいて生じる定周期振動波Nを記憶部14に記憶して、補正前重量信号Wからこの振動波Nを除去する構成としたが、これに代えて、第1のモータ6の回転に基づいて生じる定周期振動波Nと第2のモータ16の回転に基づいて生じる定周期振動波Mの両方を記憶部14に記憶しておいて、補正前重量信号Wからこの2つの振動波N、Mを除去する構成としてもよい。
このように構成された計量装置では、定周期振動波N、Mの夫々の第1及び第2のノイズデータを記憶部14に記憶する必要がある。つまり、図8に示すステップS200〜S204において、第1のモータ6の回転に基づく第1のノイズデータ列を記憶部14に記憶するときは、第2のモータ16を停止させておいて上記実施形態と同様にして第1のノイズデータ列を記憶部14に記憶する。そして、第2のモータ16の回転に基づく第2のノイズデータ列を記憶部14に記憶するときは、第1のモータ6を停止させておいて上記実施形態と同様にして第2のノイズデータ列を記憶部14に記憶する。
次に、補正前重量信号Wから第1のノイズデータを除去するためにステップS206〜S210の処理を行い、標準偏差が最小となる合成重量信号データ列Ri を選択手段が選択する(S210)。次に、合成重量信号データ列Ri を補正前重量信号データ列として、このデータ列から第2のノイズデータを除去するためにステップS206〜S210の処理を行い、新たに得られた合成重量信号データ列U0 〜Un-1 のうちから標準偏差が最小となる合成重量信号データ列Uj を選択手段が選択する(S210)。そして、CPU12が標準偏差が最小となる合成重量信号データ列Uj の平均値を算出してこの平均値を補正済み重量信号UMHとして生成する(S212、S214)。補正済み重量信号UMHは、2つの定周期振動波N、Mが重畳する補正前重量信号Wからその定周期振動波N、Mを効果的に除去した信号である。
【0047】
また、第1実施形態の合成重量信号算出手段は、図1(b)に示す補正前重量信号Wの重量データ列W0 〜Wk と図1(a)に示すノイズデータ列WZ0〜WZ.n-1 を加算して合成重量信号データ列R0 〜Rn-1 を算出する構成としたが、これに代えて、重量データ列W0 〜Wk からノイズデータ列WZ0〜WZ.n-1 を減算して合成重量信号データ列S0 〜Sn-1 を算出する構成としてもよい。
【0048】
そして、第2実施形態の合成重量信号算出手段は、重量データ列W-R、・・・、W-1、W0 、W1 、・・・、Wk とノイズデータ列WZ0、WZ1、・・・、WZ.n-1 の位相差を0度とした状態における両者の互いに対応するタイミングの重量データからノイズデータを減算して合成重量信号を算出したが、これに代えて、重量データ列W-R、・・・、W-1、W0 、W1 、・・・、Wk とノイズデータ列WZ0、WZ1、・・・、WZ.n-1 の位相差を180度とした状態における両者の互いに対応するタイミングの重量データとノイズデータとを加算して合成重量信号を算出してもよい。
【0049】
更に、上記実施形態では、定周期振動波Nの2周期分のノイズデータ列WZ0〜WZ.n-1 、WZ0〜WZ.n-1 を記憶部14に記憶したが、これに代えて、1周期分のノイズデータ列WZ0〜WZ.n-1 を記憶部14に記憶してもよい。この場合、1周期分のノイズデータ列WZ0〜WZ.n-1 を重量データ列W0 〜Wk に対してサンプリング時間間隔t1 ずつシフトさせる度に、先頭のノイズデータWZ0、・・・を最後のノイズデータWZ.n-1 、・・・の後ろに移動させることを順次繰り返し行うことによって、互いに対応する時刻のノイズデータと重量データとを加算できるようにする。
なお、重量データ列W0 〜Wk のデータの個数がノイズデータ列WZ0〜WZ.n-1 の1周期のデータの個数よりも多い場合は、ノイズデータの個数が重量データの個数と同じになるか若しくは多くなるように複数周期のノイズデータ列を記憶部14に記憶する。
【0050】
そして、上記実施形態の選択手段は、図8に示すステップS210において、n個の合成重量信号データR0 〜Rn-1 のそれぞれの標準偏差を計算し、標準偏差が最小となる合成重量信号データ列RM を選択したが、これに代えて、n個の合成重量信号データR0 〜Rn-1 のそれぞれの最大値と最小値の差を計算し、その差が最小となる合成重量信号データ列RM を選択してもよい。
【0051】
【発明の効果】
第1乃至第5の各発明によると、選択手段により選択された合成重量信号は、補正前重量信号に重畳している定周期振動波信号と予め記憶部に記憶しておいた定周期振動波信号との位相差が180度又は0度になった時に算出されたものであり、この合成重量信号を選択することにより、定周期振動波信号であるノイズを除去した補正済み重量信号を生成することができる。
従って、従来の定周期振動波除去方法で必要であった回転周期検出センサ及び同期信号をCPUに入力させる入力装置を不要とすることができ、その分のコストの低減を図ることができるし、それらの取付けスペースを不要とすることができる。
そして、補正前重量信号に重畳している定周期振動波信号と記憶手段に記憶されている定周期振動波信号とを重ね合わせて前者から後者を除去しているので、補正前重量信号の取得区間が定周期振動波の1周期未満であっても、補正前重量信号から定周期振動波を正確に除去することができる。これによって、高精度での高速計量を実現することができる。
【0052】
第2の発明によると、入力信号に対する出力信号の応答の遅れを従来よりも短縮することができ、これによって、計量速度の高速化を図ることができるので、この発明を重量値演算用信号取得区間が比較的短く、高速計量が要求されている重量選別機等に適用することができる。
第3の発明によると、記憶手段に記憶されている定周期振動波信号を、定周期振動波発生源の速度が変化したときの定周期振動波に対応する信号に修正することができる。従って、定周期振動波発生源の速度が変化して補正前重量信号に重畳する定周期振動波の周期及び振幅が変化しても、この変化後の定周期振動波を正確に除去することができる。
【0053】
第4の発明によると、零点調整の際に定周期振動波を記憶手段に記憶することにより、定周期振動波発生源の運転条件が変化して補正前重量信号に重畳する定周期振動波の周期、振幅、及び波形が変化しても、この変化後の定周期振動波を正確に除去することができる。そして、零点調整の際に定周期振動波を記憶手段に記憶しているので、計量装置の稼働時間を減少させることはない。
第5の発明によると、零点調整を行うときは、定周期振動波が除去された補正済み重量信号を使用して零点調整を行うことができるので、重量信号の正確な零点調整を行うことができる。そして、定周期振動波を記憶手段に記憶するときは、零点調整済みの補正前重量信号に重畳する定周期振動波を記憶することができるので、定周期振動波であるノイズ成分を正確に記憶することができる。
第6の発明によると、補正前の重量信号に2以上の定周期振動波が重畳している場合でも、第1の発明の効果と同様に、回転周期検出センサ等を不要とすることができ、高精度での高速計量を実現することができる。
【0054】
第7及び第8の各発明によると、合成重量信号算出手段が算出した合成重量信号は、補正前重量信号に重畳している定周期振動波信号と予め記憶部に記憶しておいた定周期振動波信号との位相差を0度若しくは180度、又はそれに近い角度に変更したときに算出されたものであり、定周期振動波信号であるノイズを除去した補正済み重量信号を生成することができる。従って、第1の発明と同等の効果を達成することができる。
【0055】
第9の発明によると、合成重量信号を算出するために使用する補正前重量信号を取得する時間として長い時間を確保できない場合でも、位相差を検出するために使用する補正前重量信号の取得開始時点を、合成重量信号を算出するために使用する補正前重量信号の取得開始時点よりも先にすることによって、多くの補正前重量信号のデータを取得することができ、これらのデータを使用することによって補正前重量信号と定周期振動波信号の両者の位相差を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態に係る計量装置の記憶部に記憶される各種データであり、(a)は定周期振動波のノイズデータ、(b)は補正前重量信号の重量データ、(c)は合成重量信号データ、(d)〜(f)はノイズデータを順次シフトした時の合成重量信号データを示す図である。
【図2】同実施形態に係る計量装置の記憶部に記憶される各種データであり、(a)は定周期振動波のノイズデータ、(b)は周期が長くなったときの変換後のノイズデータ、(c)は周期が短くなったときの変換後のノイズデータを示す図である。
【図3】同実施形態の修正手段によりノイズデータの修正を説明するための図である。
【図4】同実施形態に係る計量装置に設けられている計量コンベア及び送り込みコンベアを示す図である。
【図5】同実施形態に係る計量装置の電気回路を示すブロック図である。
【図6】同実施形態に係る計量装置によるノイズデータの平均値の計算を説明するための図である。
【図7】同実施形態に係る計量装置により定周期振動波信号のノイズデータを記憶する手順を示すフローチャートである。
【図8】同実施形態に係る計量装置により補正前重量信号から定周期振動波を除去する手順を示すフローチャートである。
【図9】同発明の第2実施形態に係る計量装置を説明するために使用する図である。
【符号の説明】
1 計量コンベア
2 ロードセル
3 駆動プーリ
6 第1のモータ
12 CPU
14 記憶部
Claims (9)
- 稼働状態において定周期振動波が重畳されている補正前重量信号から上記定周期振動波を除去して補正済み重量信号を生成する計量装置において、
定周期振動波の少なくとも1周期分の信号が記憶される記憶手段と、荷重検出手段が出力する上記補正前重量信号と上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号の両者の位相差を順次変更する位相差変更手段と、複数の各位相差ごとの上記補正前重量信号と上記定周期振動波信号とを加算し又は一方から他方を減算して各位相差ごとに合成重量信号を算出する合成重量信号算出手段と、上記複数の合成重量信号のうち信号のばらつき又は最大値と最小値の差が比較的小さい合成重量信号を選択する選択手段と、を具備することを特徴とする計量装置。 - 請求項1に記載の計量装置において、上記位相差変更手段は、所定の重量値演算用信号取得区間の補正前重量信号に対して上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号の位相をこの定周期振動波信号の1周期時間よりも短い所定時間ずつ相対的にシフトさせて両者の位相差を順次変更することを特徴とする計量装置。
- 請求項1又は2に記載の計量装置において、上記定周期振動波の周期及び振幅を決定する定周期振動波発生源の速度情報によって上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号を修正する修正手段を設けたことを特徴とする計量装置。
- 請求項1又は2に記載の計量装置において、定周期振動波の少なくとも1周期分の信号を重量信号の零点調整の際に上記記憶手段に記憶することを特徴とする計量装置。
- 請求項1又は2に記載の計量装置において、定周期振動波除去フィルタによって補正前重量信号に重畳する定周期振動波を除去させて、これによって得られた補正済み重量信号を使用して零点調整手段により零点調整を行わせる切り替え位置と、零点調整済みの補正前重量信号に重畳する定周期振動波を上記記憶手段に記憶させる切り替え位置と、に切り替える切り替え手段を設けたことを特徴とする計量装置。
- 補正前の重量信号に第1と第2の2つの定周期振動波が重畳される荷重検出器において、第1の定周期振動波を生じさせ第1の定周期振動波の少なくとも1周期分の信号を記憶する段階と、第2の定周期振動波を生じさせ第2の定周期振動波の少なくとも1周期分の信号を記憶する段階と、第1と第2の定周期振動波が重畳されている補正前重量信号と上記記憶された第1の定周期振動波信号の両者の位相差を順次変更し、複数の各位相差ごとの上記補正前重量信号と第1の定周期振動波信号とを加算し又は一方から他方を減算して各位相差ごとに第1の合成重量信号を算出する段階と、複数の第1の合成重量信号のうち信号のばらつき又は最大値と最小値の差が比較的小さい第2の合成重量信号を選択する段階と、第2の合成重量信号と上記記憶された第2の定周期振動波信号の両者の位相差を順次変更し、複数の各位相差ごとの第2の合成重量信号と第2の定周期振動波信号とを加算し又は一方から他方を減算して各位相差ごとに第3の合成重量信号を算出する段階と、複数の第3の合成重量信号のうち信号のばらつき又は最大値と最小値の差が比較的小さい第4の合成重量信号を選択する段階と、を具備することを特徴とする定周期振動波除去方法。
- 稼働状態において定周期振動波が重畳されている補正前重量信号から上記定周期振動波を除去して補正済み重量信号を生成する計量装置において、
定周期振動波の少なくとも1周期分の信号が記憶される記憶手段と、荷重検出手段が出力する上記補正前重量信号と上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号に基づいて両者の位相差を0度若しくは180度、又はそれに近い角度に変更する位相差変更手段と、上記補正前重量信号と上記定周期振動波信号の位相差を0度若しくは180度、又はそれに近い角度とした状態における両者の合成重量信号を算出して上記定周期振動波を除去した補正済み重量信号を生成する合成重量信号算出手段と、を具備することを特徴とする計量装置。 - 稼働状態において定周期振動波が重畳されている補正前重量信号から上記定周期振動波を除去して補正済み重量信号を生成する計量装置において、
定周期振動波の少なくとも1周期分の信号が記憶される記憶手段と、荷重検出手段が出力する上記補正前重量信号と上記記憶手段に記憶されている定周期振動波信号に基づいて両者の位相差を検出する位相差検出手段と、上記補正前重量信号と上記定周期振動波信号の位相差を0度若しくは180度、又はそれに近い角度とした状態における両者の合成重量信号を算出して上記定周期振動波を除去した補正済み重量信号を生成する合成重量信号算出手段と、を具備することを特徴とする計量装置。 - 請求項8に記載の計量装置において、上記位相検出手段が位相差を検出するために使用する上記補正前重量信号の取得開始時点が、上記合成重量信号算出手段が上記合成重量信号を算出するために使用する上記補正前重量信号の取得開始時点よりも先であることを特徴とする計量装置。
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