JP4090960B2 - 治具盤及び端面研磨方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、端面研磨装置に設けられて光コネクタプラグを保持する治具盤及びこれを用いた端面研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信等において用いられる光コネクタでは、コネクタ接続部における接続損失の低減及び反射戻り光の低減を目的として、フェルール用筒状体に保持された光ファイバの端面をフェルール用筒状体の端面と共に光ファイバの軸に垂直な面に対して斜めに、且つ凸球面状に研磨した「斜めPC(Physical Contact)コネクタ」が用いられる。
【0003】
この斜めPCコネクタは、光ファイバを保持するフェルール用筒状体と、フェルール用筒状体を保持するプラグハウジングとからなる光コネクタプラグと、光コネクタプラグ同士が両端から挿入保持されて光コネクタプラグ同士を光接続させる光コネクタアダプタとから構成されている。
【0004】
この光コネクタプラグは、光コネクタアダプタによって対向接続された際に、フェルール用筒状体の偏心方向を規定して挿入損失を低減するために、フェルール用筒状体は、フェルール用筒状体の軸を中心とした回転方向の移動が規制された状態でプラグハウジングに保持されている。
【0005】
また、フェルール用筒状体は、プラグハウジングに対して軸方向先端側に付勢された状態で、軸方向に所定量移動自在に保持され、光コネクタアダプタ内で先端面を所定の圧力で当接させて光接続されるようになっている。
【0006】
このようにフェルール用筒状体を軸方向に所定量移動自在に保持するために、プラグハウジングに設けられて回転方向の移動を規制するキーと、フェルールのフランジ部に設けられたキー溝とをかみ合わせ、キーとキー溝との間にフェルールが軸方向に移動できるように所定の隙間を設けた光コネクタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このような光コネクタプラグのフェルール用筒状体及び光ファイバの先端面を軸に垂直な面に対して傾斜した凸球面状に研磨するには、上述した光コネクタプラグの状態でフェルール用筒状体と回転及び揺動する研磨部材とを所定の角度で当接させる端面研磨装置によって行われる。
【0008】
この端面研磨装置は、外周から中心に向かって回転軸(自転軸あるいは公転軸)と垂直な平面とのなす角度が微小角度Δで高さが増加している円錐形状で形成された研磨面を有する研磨定盤と、研磨定盤に対して光コネクタプラグを相対向する位置に保持する治具盤とで構成され、この治具盤を研磨定盤側に移動させることで、光コネクタプラグのフェルールの先端面を研磨定盤上に設けられた研磨部材に当接させて斜めPC研磨を行う(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、従来の端面研磨装置に用いられる治具盤は、光コネクタプラグのプラグハウジングを保持するため、フェルール用筒状体を回転及び揺動する研磨部材に所定角度で当接させると、プラグハウジングとフェルールのフランジ部との間に形成された隙間によって、フェルールが光ファイバ軸を中心とした回転方向にずれてしまう。これにより、フェルール用筒状体の凸球面に研磨される傾斜方向が光ファイバ軸を通らずに、光ファイバの中心から研磨部材に当接する研磨中心がずれてしまい、先端面に形成される曲率中心が光ファイバ軸に対して先端面の傾斜方向とは直交する方向にずれてしまうという問題がある。
【0010】
また、斜めPC研磨では、研磨定盤を回転及び揺動させて研磨するため、フェルール用筒状体は研磨部材にトロコイド状の軌跡を描くように研磨される。このため、フェルール用筒状体が中心から縁部側に傾斜した研磨面を登って移動して描かれる軌跡の領域では、フェルール用筒状体の先端面の研磨定盤の回転方向側の面の研磨量が大きく、逆に縁部から中心側に傾斜した研磨面を下って移動して描かれる軌跡の領域では、研磨定盤の回転方向と反対側の面の研磨量が小さくなる。このため、フェルール用筒状体の先端面の研磨量を均一にすることができず、片減りが生じて先端面の曲率中心が光ファイバの中心軸から先端面の傾斜方向に直交する方向にずれてしまうという問題がある。
【0011】
【特許文献1】
特開平1−216304号公報(第2頁、第6図)
【0012】
【特許文献2】
特開平8−112745号公報(第3頁、第1図)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑み、斜めPC研磨されたフェルール用筒状体の先端面の曲率中心と光ファイバの中心軸とのズレ量を減少させて挿入損失を低減することができる治具盤及び端面研磨方法を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、光ファイバの先端部を保持するフェルール用筒状体の端面を研磨する回転及び揺動する研磨定盤を具備する端面研磨装置に、前記研磨定盤に対向して配置され、前記研磨定盤に対して前記フェルール用筒状体を所定の角度で当接させて端面を軸に垂直な面に対して傾斜した凸球面に研磨するための治具盤であって、
前記端面研磨装置への取り付け部を有する治具盤本体に、前記フェルール用筒状体を有する光コネクタプラグを着脱自在に保持する保持部が設けられていると共に、前記保持部は、前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の傾斜した傾斜方向の狙い方向を、前記治具盤本体の中心と前記光ファイバの軸とを含む面に対して、前記研磨定盤の回転方向とは反対方向に設けられる所定の補正角度で補正して前記光コネクタプラグを保持し、前記光コネクタプラグに保持された前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の前記傾斜方向が、当該光コネクタプラグの基準方向に一致するようにすることを特徴とする治具盤にある。
【0015】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記光コネクタプラグの基準方向が、当該光コネクタプラグの外周を基準として規定されていることを特徴とする治具盤にある。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記光コネクタプラグの基準方向が、当該光コネクタプラグに設けられた位置決めキーの方向により規定されていることを特徴とする治具盤にある。
【0017】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れか1つの態様において、前記治具盤本体の前記保持部には、前記光コネクタプラグが、当該光コネクタプラグを着脱自在に保持する保持部材を介して保持されていることを特徴とする治具盤にある。
【0018】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記保持部材は、前記光コネクタプラグが挿入される厚さ方向に貫通した保持孔を有し、当該保持孔は、前記光コネクタプラグを挿入した際に、研磨される前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の傾斜した傾斜方向の狙い方向を、前記治具盤本体の中心と前記光ファイバとを含む面に対して、前記研磨定盤の回転方向とは反対方向に設けられる所定の補正角度で補正するように形成され、前記保持部材が異なる補正角度のものに交換可能であることを特徴とする治具盤にある。
【0019】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れか1つの態様において、前記フェルール用筒状体を前記研磨定盤の研磨面に対して相対的に傾斜させて当接させ、その軸方向と当該フェルール用筒状体よりも回転中心側の研磨面とのなす角度が鈍角となるように前記光コネクタプラグを保持することを特徴とする治具盤にある。
【0020】
本発明の第7の態様は、装置本体に支持されて回転及び揺動する研磨定盤上に載置された研磨部材に、光ファイバを保持したフェルール用筒状体を有する光コネクタプラグの固定された治具盤によって前記研磨部材に対して前記フェルール用筒状体を所定の角度で当接させて端面を軸に垂直な面に対して傾斜した凸球面に研磨する端面研磨方法において、前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の傾斜した傾斜方向の狙い方向を、前記治具盤の中心と前記光ファイバの軸とを含む面に対して、前記研磨定盤の回転方向とは反対方向に設けられる所定の補正角度で補正して研磨することにより、前記光コネクタプラグに保持された前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の前記傾斜方向が、当該光コネクタプラグの基準方向に一致するようにすることを特徴とする端面研磨方法にある。
【0021】
本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記フェルール用筒状体を前記研磨部材の研磨面に対して相対的に傾斜させて当接させ、その軸方向と当該フェルール用筒状体よりも回転中心側の研磨面とのなす角度が鈍角となるように研磨を行うことを特徴とする端面研磨方法にある。
【0022】
かかる本発明では、フェルール用筒状体を研磨する際に、光コネクタプラグに保持されたフェルール用筒状体の研磨された凸球面の傾斜方向が、光コネクタプラグの基準方向と一致するように、予め狙い方向を定めて研磨する治具盤を用いることで、フェルール用筒状体の傾斜方向を光コネクタプラグの基準方向に一致させることができ、光コネクタプラグを用いた光接続において、挿入損失を低減することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る端面研磨装置の概略断面図である。
【0025】
図1に示すように、自転用モータ11の回転軸には第1自転伝達盤12の中心部が固結され、この第1自転伝達盤12には回転中心を支点とする同心円上に複数の第1連結ピン13が固定されている。そして、この各第1連結ピン13は対応する各回転伝達盤14の偏心部に回転自在に連結され、この各回転伝達盤14には偏心部に第2連結ピン15が固定されている。また、各第2連結ピン15は第2自転伝達盤16に回転自在に連結されている。
【0026】
一方、公転用モータ17の回転軸には駆動歯車18の中心部が固結され、この駆動歯車18には従動歯車19がかみ合っている。この従動歯車19は公転伝達軸20の下部外周に固結され、この公転伝達軸20の上部外周には装置本体21の軸受筒部22が嵌合している。そして、この公転伝達軸20には回転中心より所定量偏心した位置に自転用回転軸23が回転自在に嵌入し、この自転用回転軸23の下端部は第2自転伝達盤16の中心部に固結されている。
【0027】
また、自転用回転軸23の上端部は結合部材24を介して定盤25に結合されている。この定盤25は、上面が中心に向かってすり鉢状に傾斜して形成されており、本実施形態では、時計回りに回転及び揺動するようになっている。
【0028】
そして、この定盤25の上面部には、弾性部材26を介して研磨部材27が設けられている。
【0029】
この弾性部材26に用いる材料としては、例えば、ゴム、エラストマ、樹脂等を挙げることができる。
【0030】
また、弾性部材26上に設けられた研磨部材27としては、例えば、ダイヤモンド、酸化シリコン、酸化セリウム、炭化ケイ素等からなる砥粒を有する研磨シートや研磨砥石等を挙げることができる。
【0031】
一方、装置本体21には、支持機構30によって、複数のフェルールを保持した光コネクタプラグ100が固定された治具盤40が支持されている。
【0032】
ここで、治具盤40と治具盤40に保持される本実施形態の光コネクタプラグ100とについて説明する。
【0033】
まず、本実施形態の治具盤40に保持される光コネクタプラグ100について説明する。なお、図2は、光コネクタプラグの斜視図及び断面図であり、図3は、光コネクタプラグの先端面側の平面図である。
【0034】
本実施形態の光コネクタプラグ100は、図示するように、LC型の光コネクタプラグであり、光コネクタプラグ100は、フェルール110と、ストッパ120と、フェルール110とストッパ120との間に設けられてフェルール110を軸方向先端側に付勢する付勢ばね130と、フェルール110及びストッパ120を内方に保持するプラグハウジング140とを具備する。
【0035】
フェルール110はジルコニアなどのセラミック又はガラス等からなるフェルール用筒状体111と、このフェルール用筒状体111の後端部に設けられたつば部材112とを有する。
【0036】
フェルール用筒状体111は、外径が1.25mmで形成された円筒形状を有し、その内部には軸方向に貫通して光ファイバ1を挿通可能な光ファイバ挿入孔113を有する。
【0037】
また、フェルール用筒状体111は、端面研磨装置によって先端面が研磨されることによって、図2(c)に示すように、先端面111aが軸に垂直な面に対して傾斜した凸球面状に形成されている。
【0038】
この先端面111aの曲率中心を光ファイバ1軸と一致させることで、光接続させた際に挿入損失を低減することができる。
【0039】
つば部材112は、フェルール用筒状体111の光ファイバ挿入孔113に連通して、光ファイバ1の外周に被覆を有する光ファイバ心線2が挿通可能な光ファイバ心線挿入孔114を有する。
【0040】
また、つば部材112の先端部側の外周には、円周方向に亘って突起したつば部115を有する。このつば部115は、断面が六角形状に形成されており、詳しくは後述するプラグハウジング140の回転止め部に係合してフェルール110の軸を中心とした回転方向の動きを規制する。
【0041】
また、プラグハウジング140は、フェルール110を挿入可能なフェルール挿入孔141が軸方向に貫通して設けられている。
【0042】
このフェルール挿入孔141には、フェルール110のつば部115の先端面に係合してフェルール用筒状体111のみを突出させる内径を有するフェルール突出孔142が設けられている。
【0043】
このようなフェルール突出孔142の開口縁部につば部115の先端面が当接することでフェルール110は先端側への移動が規制されている。
【0044】
また、フェルール突出孔142のつば部材112側には、つば部115の外周面に当接してフェルール110の軸を中心とした回転方向の移動を規制する回転止め部143が設けられている。
【0045】
この回転止め部143は、断面がつば部115の断面と同じ六角形状で形成され、つば部115が軸方向に移動可能なようにつば部115の外周面との間に隙間ができる大きさで形成されている。
【0046】
この隙間によってフェルール110はプラグハウジング140に対して軸を中心とした回転方向にガタ付きが生じてしまう。
【0047】
また、フェルール挿入孔141の後端部には、ストッパ120が固定されている。
【0048】
ストッパ120は、軸方向に貫通して光ファイバ心線2を挿通可能な光ファイバ心線挿通孔121を有し、先端側には、光ファイバ心線挿通孔121に連通して光ファイバ心線挿通孔121の内径よりも若干大きな内径を有する連通孔122が設けられている。
【0049】
また、この光ファイバ心線挿通孔121と連通孔122との内径差によって段差部123が設けられている。
【0050】
連通孔122内には付勢ばね130が保持され、付勢ばね130にはフェルール110のつば部材112の後端部が挿入されるようになっている。
【0051】
そして付勢ばね130の一端がつば部115の後端面に当接すると共に他端がストッパ120の段差部123に当接することでフェルール110はプラグハウジング140に対して先端側に付勢保持されるようになっている。
【0052】
また、フェルール110は、先端側に付勢された状態で、上述したようにつば部115の先端面がフェルール突出孔142の開口縁部に当接することで、先端側への移動が規制された状態で付勢保持されている。
【0053】
すなわち、フェルール110を付勢ばね130の付勢力に抗して後端部側へ押圧することで軸方向後端部側へ移動することができる。
【0054】
なお、ストッパ120は、ストッパ120に設けられた係合突起124と、プラグハウジング140に設けられた係合孔144とが係合することで固定されている。
【0055】
また、ストッパ120の後端部には、ゴム部材等で形成されたブーツ150が固定され、ブーツ150によって光ファイバ1が折れるのを防止している。
【0056】
さらに、プラグハウジング140の外周面には、ラッチ145が設けられている。このラッチ145は、プラグハウジング140に一体的に形成されると共に、一端が自由端となることで弾性変形自在に設けられている。
【0057】
このラッチ145によって光コネクタプラグ100を保持して光接続させる光コネクタアダプタや詳しくは後述する治具盤40に着脱自在に保持されるようになっている。
【0058】
このような光コネクタプラグ100では、図2に示す、フェルール用筒状体111の先端面111aの傾斜方向200が図3に示す光コネクタプラグ100の基準方向201と同一になるように研磨される必要がある。
【0059】
なお、光コネクタプラグ100の基準方向201とは、光コネクタプラグ100を図示しない光コネクタアダプタに接続した際に、光コネクタプラグ100の光コネクタアダプタへの光ファイバ1の軸を中心とした回転方向の位置決めを行うためのものである。本実施形態では、光コネクタプラグ100がLC型であり、プラグハウジング140の断面が矩形状に設けられているため、光コネクタアダプタの光コネクタプラグ100が挿入される挿入孔の断面をプラグハウジング140と同様に矩形状に形成することで、光コネクタプラグ100の光コネクタアダプタへの光ファイバ1の軸を中心とした回転方向の位置決めが行われている。すなわち、本実施形態では、光コネクタプラグ100の外周とラッチ145とを基準として基準方向201が規定されており、光コネクタプラグ100のプラグハウジング140のラッチ145が設けられた面に直交する方向203に直交する方向を基準方向201とした。
【0060】
ここでフェルール用筒状体111の先端面111aの傾斜方向200とは、図2(c)に示すように、先端面111aの外周面の最も先端側に突出した点と、最も後端側に突出した点と含む面方向であり、この傾斜方向には、凸球面の頂点である曲率中心が含まれる。
【0061】
そして、詳しくは後述するが、研磨したフェルール用筒状体111の先端面111aの傾斜方向200が基準方向201に対してずれてしまうと、曲率中心が光ファイバ1の軸とずれてしまい、光コネクタプラグ100同士を光接続させた際に、ずれによって挿入損失が増大してしまう。
【0062】
このため、光コネクタプラグ100の基準方向201にフェルール用筒状体111の研磨された凸球面の傾斜方向200が一致するようにフェルール用筒状体111の先端面111aを研磨して、曲率中心と光ファイバ1の中心との傾斜方向200に直交する方向の偏心量を減少させる必要がある。
【0063】
次に、治具盤40について説明する。
【0064】
図4は、本発明の実施形態1に係る治具盤の斜視図及び側面図であり、図5は、治具盤の上面図及び一部を拡大した上面図であり、図6は、図5のA−A′断面図であり、図7は、フェルール用筒状体の先端面を示す平面図である。
【0065】
図示するように、治具盤40は、本実施形態では、上述したLC型の光コネクタプラグ100を保持するものであり、周縁部に円周方向に亘って複数の凹形状の保持部51が設けられた治具盤本体50と、各保持部51に着脱自在に保持された複数の保持部材60とを具備する。
【0066】
治具盤本体50は、多角形の円盤形状を有し、周縁部近傍に円周方向に亘って開口が台形状を有する複数の保持部51が設けられている。
【0067】
この保持部51の底面には、フェルール用筒状体111の先端部に嵌合する円筒形状を有する筒状体52が設けられている。この筒状体52の軸方向には、治具盤本体50を厚さ方向に貫通する貫通孔53が設けられており、貫通孔53に保持部材60に保持された光コネクタプラグ100のフェルール用筒状体111が挿通されて、フェルール用筒状体111の先端部のみを治具盤本体50の底面から突出させるようになっている。
【0068】
また、筒状体52は、光コネクタプラグ100のプラグハウジング140の先端部に嵌合可能な外径で形成されており、プラグハウジング140の先端が保持部51の底面に当接することで、治具盤本体50の底面から突出するフェルール用筒状体111の量を規定している。
【0069】
さらに、このような保持部51及び筒状体52は、治具盤40に光コネクタプラグ100を保持させた際に、光コネクタプラグ100の後端部側が治具盤本体50の厚さ方向に対して中心から周縁部に向かって傾斜して保持するような傾斜角度で設けられている。
【0070】
また、保持部51に保持される保持部材60は、光コネクタプラグ100が挿入される厚さ方向に貫通した保持孔61が設けられている。
【0071】
この保持孔61には、光コネクタプラグ100のプラグハウジング140に設けられたラッチ145が係合されるラッチ係合部62が設けられており、保持孔61内に光コネクタプラグ100を挿入するとラッチ145がラッチ係合部62に係合されることで、光コネクタプラグ100は保持部材60に着脱自在に保持される。
【0072】
このような保持部材60は、保持部51と同等の形状を有し、保持部51に着脱自在に保持される。この保持部材60と治具盤本体50との固定は、治具盤本体50の厚さ方向に外れずに、且つ保持部材60が治具盤本体50に対して光ファイバ1の軸を中心として回転しないように固定すればよく、固定方法は特に限定されないが、例えば、図示しないねじ部材により保持部材60と治具盤本体50とを固定すればよい。
【0073】
また、保持部材60に設けられた保持孔61は、保持孔61に光コネクタプラグ100を固定した際に、研磨されたフェルール用筒状体111の先端面111aの傾斜した傾斜方向の狙い方向が、治具盤本体50の中心と光ファイバ1とを含む面に対して、定盤25の回転方向とは反対側に回転するように補正して光コネクタプラグ100を保持して、光コネクタプラグ100に保持されたフェルール用筒状体111の凸球面に研磨された先端面111aの傾斜方向200と、光コネクタプラグ100の基準方向とが一致するように研磨されるようにしている。
【0074】
ここで、例えば、光コネクタプラグ100の基準方向201を光ファイバ1の軸と治具盤本体50との中心とを含む面方向と一致させて研磨すると、フェルール用筒状体111は、プラグハウジング140にガタ付きが生じるように保持されているため、研磨部材27によって光ファイバ1の軸を中心として回転してしまう。
【0075】
このようにフェルール用筒状体111が光ファイバ1の軸を中心として回転してしまうと、図7(a)に示すように、フェルール用筒状体111の先端面111aに形成される傾斜した凸球面の傾斜方向200が、基準方向201からずれて形成される。
【0076】
この傾斜方向200のずれは、先端面111aが光ファイバ1の軸に垂直な面に対して傾斜した凸球面で形成されるため、光ファイバ中心210とは違う点212を中心として回転してしまうという特性を有する。
【0077】
このため、先端面111aに形成される曲率中心211は、傾斜方向とは直交する方向203に偏心して形成されてしまう。
【0078】
このような光ファイバ中心210と曲率中心211との偏心量L(μm)は、曲率半径r(mm)、先端面111aの傾斜角度θ(度)、フェルール用筒状体111のプラグハウジング140に対する回転角度φ(度)とすると、下記式(1)によって求めることができる。
【0079】
【数1】
【0080】
なお、基準方向201の偏心は、治具盤40又は定盤25によってフェルール用筒状体111の軸と研磨部材27との当接する角度を変更すれば、偏心量を減少させることができるが、このような基準方向201に直交する方向203の偏心は、フェルール用筒状体111と研磨部材27との当接する角度を変更しても偏心量を減少させることができない。
【0081】
また、定盤25は回転及び揺動するため、研磨部材27上のフェルール用筒状体111の研磨軌跡は、図8に示すようなトロコイドとなる。なお、図8は、フェルールの軌跡を示す平面図及びフェルール用筒状体の先端面の概略平面図である。
【0082】
ここで、トロコイドの軌跡のうち、研磨部材27の斜面を登る軌跡の領域aでは、図8(b)に示すように片側の研磨量が大きく、斜面を下る軌跡の領域bでは、図8(c)に示すように、領域aに対して研磨量が小さくなり、片減りが生じてしまう。
【0083】
このように定盤25の傾斜によっても研磨量に片減りが生じ、曲率中心211と光ファイバ中心210との偏心量が増大してしまう。
【0084】
このようなフェルール110のプラグハウジング140に対する軸を中心とした回転方向のガタ付きと、研磨量の偏りとから、本実施形態では、保持部材60に設けられた保持孔61を光ファイバ1の軸を中心として定盤25の回転方向とは反対方向に回転するように補正して形成して、図7(b)に示すように、光コネクタプラグ100の基準方向201と傾斜方向200とが一致するように研磨することで、曲率中心211を光ファイバ中心210と一致させることができる。
【0085】
すなわち、保持部材60が、図5(b)に示すように、光コネクタプラグ100の基準方向201を治具盤本体50の中心と光ファイバ1の軸とを含む面に対して、定盤25の回転方向とは反対方向に光ファイバ1の軸を中心として回転させた方向(狙い方向)に保持することで、基準方向201と傾斜方向200とを一致させて曲率中心211と光ファイバ中心210とを一致させる。
【0086】
ここで、保持部材60の保持した光コネクタプラグ100の補正角度を0度、2度及び2.5度として研磨を行った際のフェルール用筒状体111の先端面111aに形成される曲率中心211と光ファイバ中心210との偏心量を測定した。この結果を下記表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
この表1に示す結果から、図9に示すように近似曲線を求めると、近似曲線では、光コネクタプラグ100の治具盤本体50の中心と光ファイバ1の軸とを含む面に対する狙い方向の角度である補正角度が1.5度の時に偏心量が0μmになることが分かる。このため、本実施形態では、保持部材60の保持する光コネクタプラグ100の補正角度を図5に示すように1.5度とした。
【0089】
なお、実際には、補正角度を1.5度としても、全てのフェルール用筒状体111に偏心量が0μmの先端面111aが形成される訳ではなく、偏心量にばらつきが生じるが、偏心量を5μm以下と小さくすることができる。
【0090】
このように偏心量を減少させることで、光コネクタアダプタで一対の光コネクタプラグ100を対向接続させた際の挿入損失を減少させることができる。
【0091】
また、治具盤本体50の略中央部には、支持機構30に支持される取り付け部であるボス部54がねじ部材により固定されている。
【0092】
一方、支持機構30は、図1及び図6に示すように、装置本体21に設けられた支持部31と、支持部31に移動自在に保持されたアーム部32とを具備する。
【0093】
このアーム部32は、先端部がボス部54に係合することで治具盤40の回転方向の移動及び傾き方向の移動を規制した状態で保持している。
【0094】
詳しくは、治具盤40のボス部54には、矩形状の切り欠き部56と、切り欠き部56の開口側に固定されて切り欠き部56よりも小さな開口を有する蓋部材57とが設けられている。
【0095】
一方、アーム部32の先端部は、切り欠き部56に係合する矩形状のフランジ部33が設けられており、フランジ部33をボス部54の側面から切り欠き部56に挿入することで、フランジ部33の側面を切り欠き部56の側面に当接させて回転方向の移動が規制されている。
【0096】
また、ボス部54の切り欠き部56に挿入されたフランジ部33は、蓋部材57に当接することで治具盤40の定盤25方向への移動を規制している。
【0097】
これにより、アーム部32は、治具盤40を回転方向及び傾き方向の移動を規制した状態で保持している。
【0098】
このように治具盤40を保持したアーム部32は、支持部31に定盤25の厚さ方向に移動自在に設けられており、治具盤40に保持された複数の光コネクタプラグ100を定盤25上の研磨部材27に所定の圧力で押圧するようになっている。
【0099】
なお、アーム部32を押圧する押圧手段としては、特に限定されず、例えば、手動により押圧してもよく、また、駆動モータや油圧ポンプ等の駆動により押圧するようにしてもよい。また、押圧手段に光コネクタプラグ100を研磨部材27に押圧する圧力データを検出するロードセル等の圧力検出手段を設けるようにしてもよい。
【0100】
(実施形態2)
上述した実施形態1では、LC型の光コネクタプラグ100を保持する治具盤40を例示したが、実施形態2では、SC型の光コネクタプラグを保持する治具盤について例示する。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0101】
まず、実施形態2の治具盤に保持される光コネクタプラグについて説明する。なお、図10は、本発明の実施形態2に係る光コネクタプラグの分解平面図及び断面図である。
【0102】
本実施形態の光コネクタプラグ100Aは、図示するように、SC型の光コネクタプラグであり、光コネクタプラグ100Aは、SC型の光コネクタアダプタに嵌合するプラグハウジング140Aと、プラグハウジング140A内に嵌合するプラグフレーム160と、光接続を行う光ファイバ1を保持すると共にプラグフレーム160の後方から挿入されるフェルール110Aと、先端部がプラグフレーム160の後端部と係合するストップリング120Aと、フェルール110Aとストップリング120Aとの間に保持されてフェルール110Aを軸方向先端側に向かって付勢する付勢ばね130Aとを具備する。
【0103】
フェルール110Aは、ジルコニアなどのセラミック又はガラス等からなるフェルール用筒状体111Aと、このフェルール用筒状体111Aの後端部に設けられたつば部材112Aとを有する。
【0104】
フェルール用筒状体111Aは、外径が2.5mmで形成された円筒形状を有し、その内部には軸方向に貫通して光ファイバ1を挿通可能な光ファイバ挿入孔113Aを有する。
【0105】
また、フェルール用筒状体111Aは、端面研磨装置によって先端面が研磨されることによって、上述した実施形態1のフェルール用筒状体111と同様に、先端面111aが軸に垂直な面に対して傾斜した凸球面状に形成されている。
【0106】
この先端面111aの曲率中心を光ファイバ1の軸と一致させることで、光接続させた際に挿入損失を低減することができる。
【0107】
つば部材112Aは、フェルール用筒状体111Aの光ファイバ挿入孔113Aに連通して、光ファイバ1の外周に被覆を有する光ファイバ心線2が挿通可能な光ファイバ心線挿入孔114Aを有する。
【0108】
また、つば部材112Aの外周には、円周方向に亘って突出したつば部115Aを有する。このつば部115Aは、断面が円筒形状に設けられており、詳しくは後述するプラグハウジング140Aの係合突起163に係合するキー溝116が円周方向に亘って90°間隔で4箇所に設けられている。このキー溝116がプラグフレーム160の係合突起163に係合することで、フェルール110Aの軸を中心とした回転方向の動きを規制する。
【0109】
なお、このようなキー溝116の数、位置、深さ及び形状等は特に限定されず、フェルール110Aを位置決めさせるプラグフレーム160に応じて適宜決定すればよい。
【0110】
また、つば部材112Aの材質としては、例えば、ステンレス鋼、真鍮、鉄等の金属材料を挙げることができ、本実施形態では、ステンレス鋼を用いた。
【0111】
また、プラグフレーム160は、長手方向に亘って貫通したフェルール110A及び圧縮ばね130Aを挿入可能なフェルール挿入孔161を有し、フェルール挿入孔161には、フェルール用筒状体111Aのみを突出させる内径を有するフェルール突出孔162が設けられている。
【0112】
また、フェルール挿入孔161内には、フェルール110Aのキー溝116と係合する係合突起163が半径方向内側に突出するように2つ設けられている。さらに、プラグフレーム160には、フェルール挿入孔161と連通して外周に開口する係合孔164が2つ形成されている。また、プラグフレーム160の外周には、半径方向外側に向かって突出した係合凸部165が形成されている。
【0113】
さらに、このようなプラグフレーム160の後端部に嵌合するストップリング120Aは、光ファイバ心線2を挿通可能な貫通した光ファイバ心線挿通孔121Aを有する円筒形状の金属で形成されている。この光ファイバ心線挿通孔121Aの先端側には、付勢ばね130Aを挿入可能な連通孔122Aが設けられており、光ファイバ心線挿入孔121Aと連通孔122Aとの内径差によって段差部123Aが設けられている。
【0114】
この連通孔122Aに付勢ばね130Aが保持され、付勢ばね130Aにはフェルール110Aのつば部材112Aの後端部が挿入されるようになっている。そして、付勢ばね130Aの一端がつば部115Aの後端面に当接すると共に他端がストップリング120Aの段差部123Aに当接することで、フェルール110Aはプラグフレーム160に対して先端側に付勢された状態で、つば部115Aの先端面がフェルール突出孔162に当接することで、先端側への移動が規制された状態で付勢保持されている。また、フェルール110Aは、上述のようにつば部115Aのキー溝116がフェルール挿入孔161の係合突起163に係合することで軸を中心とした回転方向の移動が規制された状態で保持されている。
【0115】
また、ストップリング120Aの先端部側外周には、プラグフレーム160の係合孔164内に突出する係合突起124Aが形成されている。この係合突起124Aは、先端に向かって外径が漸小するテーパ状の外周面を有し、プラグフレームの係合孔164に係合することで固定されている。
【0116】
一方、プラグハウジング140Aは、プラグフレーム160を挿入可能な形状を有し、プラグフレーム160の係合凸部165と係合する係合凹部146を有する。
【0117】
このような光コネクタプラグ100Aは、プラグハウジング140Aの断面が矩形状に設けられており、光コネクタプラグ100Aが図示しない光コネクタアダプタに接続した際に、プラグハウジング140Aは、外周の形状により光ファイバ1の軸を中心とした回転方向の位置決めが行われるようになっている。なお、プラグハウジング140Aは、断面が長方形状であるため、光コネクタアダプタに180°回転させて接続することができてしまう。このため、プラグハウジング140Aの外周の一方面に、突部147を設け、この突部147が被接続機器に設けられた溝に係合することで、光コネクタプラグ100Aの被接続機器への光ファイバ1の軸を中心とした回転方向の位置決めを行っている。
【0118】
すなわち、本実施形態のSC型の光コネクタプラグ100Aの光ファイバ1の軸を含む所定の基準方向201は、プラグハウジング140Aの外周と、突部147とを基準として規定されている。
【0119】
このような光コネクタプラグ100Aでは、上述した実施形態1と同様に、フェルール用筒状体111Aの研磨された凸球面状の先端面111aの傾斜方向200が光コネクタプラグ100Aの基準方向201と同一となるように研磨されている。
【0120】
なお、本実施形態では、光コネクタプラグ100Aのプラグハウジング140Aの突部147が設けられた面に直交する方向に直交する方向を基準方向とした。
【0121】
ここで、このような光コネクタプラグ100Aのフェルール110Aの先端面111aを研磨する端面研磨装置の治具盤40Aについて説明する。なお、図11は、実施形態2に係る治具盤の斜視図であり、図12は、治具盤の上面図及び断面図である。
【0122】
図示するように、治具盤40Aは、上述した実施形態1の端面研磨装置に設けられて、上述したSC型の光コネクタプラグ100Aを保持するものであり、光コネクタプラグ100Aが複数取り付けられる治具盤本体50Aと、各光コネクタプラグ100Aのそれぞれを治具盤本体50Aとの間で挟持する保持部材60Aとを具備する。
【0123】
治具盤本体50Aは、多角形の円盤形状を有し、周縁部近傍に円周方向に亘って光コネクタプラグ100Aのプラグハウジング120Aと同じ形状の開口を有し、光コネクタプラグ100Aが着脱自在に保持される保持部51Aが設けられている。
【0124】
この保持部51Aの底面には、フェルール用筒状体111Aの先端部に嵌合する円筒形状を有する筒状体52Aが設けられている。この筒状体52Aの軸方向には、治具盤本体50Aを厚さ方向に貫通する貫通孔53Aが設けられており、貫通孔53Aに治具盤本体50と保持部材60Aとの間に挟持された光コネクタプラグ100Aのフェルール用筒状体111Aが挿通されて、フェルール用筒状体111Aの先端部のみを治具盤本体50Aの底面から突出させるようになっている。
【0125】
また、筒状体52Aは、光コネクタプラグ100Aのプラグハウジング140Aの先端部に嵌合可能な外径で形成されており、プラグハウジング140Aの先端が保持部51Aの底面に当接することで、治具盤本体50Aの底面から突出するフェルール用筒状体111Aの量を規定している。
【0126】
さらに、このような保持部51A及び筒状体52Aは、治具盤40Aに光コネクタプラグ100Aを保持させた際に、光コネクタプラグ100Aの後端部側が治具盤本体50Aの厚さ方向に対して中心から周縁部に向かって傾斜して保持するような傾斜角度で設けられている。
【0127】
また、保持部51Aとの間で光コネクタプラグ100Aを保持する保持部材60Aは、治具盤本体50Aの周縁部、すなわち、各保持部51Aに対応する部分に複数設けられている。
【0128】
保持部材60Aは、一端が治具盤本体50Aの上面に対して保持部51Aと同じ方向に傾斜するように固定された円筒形状を有する支柱部材63と、支柱部材63に嵌合して光コネクタプラグ100Aの後端部を付勢する固定部64とを具備し、支柱部材63の外周で、固定部64と治具盤本体50Aとの間には引っ張りばね65が設けられている。
【0129】
固定部64は、円筒形状を有し、支柱部材63を挿通させる支柱挿通孔66が設けられた挿通部67と、挿通部67の側面から半径方向に向かって突設されて光コネクタプラグ100Aの後端部に係合させるアーム部68とを有する。このような固定部64は、支柱部材63を支柱挿通孔66内に挿通させることにより、支柱部材63の軸方向に移動自在に保持されている。
【0130】
また、支柱部材63の外周に設けられた引っ張りばね65は、その一端が治具盤本体50Aに固定され、他端側が固定部64の外周に固定されることで、固定部64を治具盤本体50Aの保持部51A側に付勢している。
【0131】
また、支柱部材63の側面には、ねじ部材69が螺合されており、ねじ部材69の頭部が側面から突出して設けられている。そして、固定部64には、ねじ部材69の突出した頭部に対応する切り欠き部67aが軸方向に所定の長さで形成されており、切り欠き部67aがねじ部材69の頭部に係合することで、固定部64の軸を中心とした回転方向の移動が規制されている。
【0132】
このように固定部64は、引っ張りばね65によって治具盤本体50Aの保持部51A側に付勢されることで、固定部64のアーム部68と保持部51Aとの間で光コネクタプラグ100Aを所定の角度で傾斜した状態で挟持するようになっている。
【0133】
ここで、光コネクタプラグ100Aを保持させるには、まず、固定部64を引っ張りばね65の付勢力に抗して図中上方向に持ち上げることにより、アーム部68と保持部51Aとの間隔を広げ、その後、治具盤本体50Aの筒状体52Aにフェルール110Aの先端部を貫通孔53A内に挿通させ、固定部64を引っ張りばね65の付勢力で保持部51A側に付勢させることで、固定部64のアーム部68と保持部51Aの底面との間で光コネクタプラグ100Aを挟持させる。これにより、光コネクタプラグ100Aが、保持部材60Aの引っ張りばね65によって治具盤本体50A側に付勢された状態で保持される。このとき、治具盤本体50Aの光コネクタプラグ100Aが付勢保持された上面とは反対側の面からは、光コネクタプラグ100Aに保持されたフェルール110Aの先端部が貫通孔53Aを介して所定量突出される。
【0134】
なお、本実施形態の治具盤40Aも上述した実施形態1と同様に、保持部51Aに光コネクタプラグ100Aを嵌合して固定した際に、研磨されたフェルール用筒状体111Aの先端面111aの傾斜した傾斜方向の狙い方向が、治具盤本体50Aの中心と光ファイバ1とを含む面に対して、定盤25の回転方向とは反対側に回転するように補正して光コネクタプラグ100Aを保持して、フェルール用筒状体111Aの研磨された凸球面状の先端面111aの傾斜方向200と、光コネクタプラグ100Aの基準方向201とが一致するようにしている。このため、治具盤本体50Aの保持部51Aは、予め光コネクタプラグ100Aの基準方向201を治具盤本体50Aの中心と光ファイバ1の軸とを含む面に対して、定盤25の回転方向とは反対方向に光ファイバ1の軸を中心として回転させた方向(狙い方向)に補正して保持するように設けられている。
【0135】
このように、SC型の光コネクタプラグ100Aを保持する治具盤40Aとして、治具盤本体50Aに補正した角度で設けられた保持部51Aを設け、この保持部51Aと保持部材60Aとの間で直接光コネクタプラグ100Aを挟持するようにしても、上述した実施形態1と同様に、フェルール用筒状体111Aの先端面111aに形成される曲率中心と光ファイバ1の中心との偏心量を5μm以下と小さくすることができ、一対の光コネクタプラグ100Aを光コネクタアダプタで対向接続させた際の挿入損失を減少させることができる。
【0136】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1を説明したが、治具盤及び端面研磨方法の基本的構成は、上述したものに限定されるものではない。
【0137】
例えば、上述した実施形態1では、保持部材60が保持する光コネクタプラグ100をLC型の光コネクタプラグとし、実施形態2では、治具盤40Aに保持される光コネクタプラグ100AをSC型光コネクタプラグとしたが、特にこれに限定されず、実施形態1の治具盤40又は実施形態2の治具盤40Aの何れの構造であっても、例えば、SC型、FC型及びMU型等、フェルールが軸方向に移動できるようにプラグハウジングに保持されてガタ付きが生じる光コネクタプラグであれば、本発明により研磨することで偏心量を減少させることができる。
【0138】
なお、例えば、FC型の光コネクタプラグのプラグハウジングは円筒形状を有し、その内面に突出した突起状の位置決めキーが設けられている。このようなFC型の光コネクタプラグは、プラグハウジングの内面に設けられた位置決めキーにより、光コネクタアダプタへの光ファイバの軸を中心とした回転方向の位置決めが行われている。このため、FC型の光コネクタプラグの基準方向は、位置決めキーを基準として規定されている。このように、光コネクタプラグの光ファイバの軸を含む所定の基準方向は、光コネクタアダプタへの接続時に光ファイバの軸を中心とした回転方向の位置決めを行うための外径形状や位置決めキーなどによって適宜決定すればよい。
【0139】
また、上述した実施形態1では、保持部材60が治具盤本体50の中心と光ファイバ1の軸とを含む面に対して光コネクタプラグ100の基準方向201を1.5度補正するようにしたが、これに限定されず、例えば、補正角度の異なる保持部材を複数用意し、フェルール110のプラグハウジング140に対するガタ付きによる回転角度によって、保持部材を適宜交換するようにしてもよい。
【0140】
勿論、上述した実施形態2では、治具盤本体50Aに凹形状の保持部51Aを設け、保持部51Aと保持部材60Aとの間で光コネクタプラグ100Aを保持するようにしたが、上述した実施形態1と同様に、治具盤本体の保持部に光コネクタプラグが着脱自在に保持することができる保持部材を着脱自在に設けるようにしてもよい。これにより、SC型、FC型等、光コネクタプラグの形状に合わせた保持部材を複数用意して、複数種類の光コネクタプラグで治具盤を共用するようにしてもよい。
【0141】
【発明の効果】
本発明では、フェルール用筒状体を保持した光コネクタプラグの状態でも、フェルール用筒状体に傾斜した凸球面の頂点と曲率中心とが一致するように先端面を研磨することができる。これにより、光コネクタプラグ同士を光接続させた際にも挿入損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る端面研磨装置の概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る光コネクタプラグの一例を示す斜視図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る光コネクタプラグの先端面側の平面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る治具盤の斜視図及び側面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る治具盤の上面図及びその要部拡大図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る治具盤の断面図である。
【図7】本発明の実施形態1に係るフェルール用筒状体の先端面を示す平面図である。
【図8】本発明の実施形態1に係るフェルールの軌跡を示す平面図及びフェルール用筒状体の先端面の概略平面図である。
【図9】本発明の実施形態1に係る補正角度と偏心量の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態2に係る光コネクタプラグの分解平面図及び断面図である。
【図11】本発明の実施形態2に係る治具盤の斜視図である。
【図12】本発明の実施形態2に係る治具盤の上面図及び断面図である。
【符号の説明】
1 光ファイバ
2 光ファイバ心線
25 定盤
26 弾性部材
27 研磨部材
30 支持機構
40、40A 治具盤
50、50A 治具盤本体
51、51A 保持部
52、52A 筒状体
60、60A 保持部材
61 保持孔
100、100A 光コネクタプラグ
110、110A フェルール
200 傾斜方向
201 基準方向
210 光ファイバ中心
211 曲率中心
Claims (8)
- 光ファイバの先端部を保持するフェルール用筒状体の端面を研磨する回転及び揺動する研磨定盤を具備する端面研磨装置に、前記研磨定盤に対向して配置され、前記研磨定盤に対して前記フェルール用筒状体を所定の角度で当接させて端面を軸に垂直な面に対して傾斜した凸球面に研磨するための治具盤であって、
前記端面研磨装置への取り付け部を有する治具盤本体に、前記フェルール用筒状体を有する光コネクタプラグを着脱自在に保持する保持部が設けられていると共に、前記保持部は、前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の傾斜した傾斜方向の狙い方向を、前記治具盤本体の中心と前記光ファイバの軸とを含む面に対して、前記研磨定盤の回転方向とは反対方向に設けられる所定の補正角度で補正して前記光コネクタプラグを保持し、前記光コネクタプラグに保持された前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の前記傾斜方向が、当該光コネクタプラグの基準方向に一致するようにすることを特徴とする治具盤。 - 請求項1記載の治具盤において、前記光コネクタプラグの基準方向が、当該光コネクタプラグの外周を基準として規定されていることを特徴とする治具盤。
- 請求項1記載の治具盤において、前記光コネクタプラグの基準方向が、当該光コネクタプラグに設けられた位置決めキーの方向により規定されていることを特徴とする治具盤。
- 請求項1〜3の何れか1つに記載の治具盤において、前記治具盤本体の前記保持部には、前記光コネクタプラグが、当該光コネクタプラグを着脱自在に保持する保持部材を介して保持されていることを特徴とする治具盤。
- 請求項4記載の治具盤において、
前記保持部材は、前記光コネクタプラグが挿入される厚さ方向に貫通した保持孔を有し、
当該保持孔は、前記光コネクタプラグを挿入した際に、研磨される前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の傾斜した傾斜方向の狙い方向を、前記治具盤本体の中心と前記光ファイバとを含む面に対して、前記研磨定盤の回転方向とは反対方向に設けられる所定の補正角度で補正するように形成され、
前記保持部材が異なる補正角度のものに交換可能であることを特徴とする治具盤。 - 請求項1〜5の何れか1つに記載の治具盤において、前記フェルール用筒状体を前記研磨定盤の研磨面に対して相対的に傾斜させて当接させ、その軸方向と当該フェルール用筒状体よりも回転中心側の研磨面とのなす角度が鈍角となるように前記光コネクタプラグを保持することを特徴とする治具盤。
- 装置本体に支持されて回転及び揺動する研磨定盤上に載置された研磨部材に、光ファイバを保持したフェルール用筒状体を有する光コネクタプラグの固定された治具盤によって前記研磨部材に対して前記フェルール用筒状体を所定の角度で当接させて端面を軸に垂直な面に対して傾斜した凸球面に研磨する端面研磨方法において、
前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の傾斜した傾斜方向の狙い方向を、前記治具盤の中心と前記光ファイバの軸とを含む面に対して、前記研磨定盤の回転方向とは反対方向に設けられる所定の補正角度で補正して研磨することにより、前記光コネクタプラグに保持された前記フェルール用筒状体の研磨された凸球面の前記傾斜方向が、当該光コネクタプラグの基準方向に一致するようにすることを特徴とする端面研磨方法。 - 請求項7記載の端面研磨方法において、前記フェルール用筒状体を前記研磨部材の研磨面に対して相対的に傾斜させて当接させ、その軸方向と当該フェルール用筒状体よりも回転中心側の研磨面とのなす角度が鈍角となるように研磨を行うことを特徴とする端面研磨方法。
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