JP4090801B2

JP4090801B2 - 自在継手

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Publication number: JP4090801B2
Application number: JP2002199460A
Authority: JP
Inventors: 和巨岩野
Original assignee: Showa Corp
Current assignee: Showa Corp
Priority date: 2002-07-09
Filing date: 2002-07-09
Publication date: 2008-05-28
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Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明はブーツを備える自在継手に関し、前記ブーツ内部における圧力変動に基づくその内部容積の変化に対応して該ブーツ内部とブーツ外部間の空気等の流れが適切に調整され、かつ跳ね水等泥水の浸入に対するシール性の向上が図られたシール部構造を有する自在継手に関するものである。
【０００２】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来からゴム等の弾性材料からなるブーツ本体と、鋼板等の板材からなるブーツアダプタとを有し、ブーツ本体の一端嵌着部をプロペラシャフト等のインナ軸の外周側に嵌着すると共にブーツアダプタの他端嵌着部を自在継手のアウターレースに嵌着し、自在継手の内部にダストや泥水が浸入しないようにした構造の自在継手用ブーツが良く知られている。
【０００３】
そして、前記自在継手用ブーツとして、特開平８−２８７０４号公報に開示されるブーツが既に知られており、該ブーツ０１０は、図９および図１０に図示されるようにブーツ０１０内部の圧力の変動に適切に対処させるための構造として、ブーツ０１０の一端嵌着部０１aの外側にプロペラシャフト等のインナ軸０３に接触する環状のリップ部０１bを備えると共に、前記一端嵌着部０１aの内周面にブーツ０１０内部と外部とが連通される通路０１Dを備え、また前記環状リップ部０１bの内側円周方向に前記ブーツ０１０内部の圧力変動に応じて前記通路０１Dを制御する不連続な突起０１cを備えたシール構造を有しており、該不連続な突起０１cによる前記通路制御によってブーツ０１０内部の圧力変動に基づく空気等の流入流出を適正に制御することで、該圧力変動に基づく前記ブーツ０１０にかかる負担の軽減が図られ、これにより前記ブーツ０１０の耐久性を向上させるというものである。
なお、前記図９（a）における符号０Bで示されるものはブーツ０１０嵌着に用いた締付け用バンドである。
【０００４】
しかしながら、前記構造のシールを備えるブーツは、ブーツ内部の圧力変動、とりわけプロペラシャフト等の軸の回転に伴う該ブーツの回転による遠心力の作用で前記ブーツが外方へ膨らむことによるブーツ内部の急激な容積拡大に伴う該ブーツ内部圧力の急速な降下時等のブーツ内部の圧力変動により発生する弊害、すなわち、該ブーツ内部の急激な圧力降下等による負圧発生時の前記通路を介した該ブーツ内部への外部空気等の吸入と共に侵入する跳ね水等泥水の浸入に対する対策が十分に採られたものではない。
【０００５】
すなわち、前記従来のブーツ０１０におけるそのシール構造は、図１０（a），（b）の参照から明らかなように、ブーツ０１０内部の圧力上昇時には、図１０（a）に図示のように該ブーツ０１０内部の空気等が矢印イのようにリップ部０１bを押し上げて外部へ流出されるようになされ、ブーツ０１０内部の圧力降下時には、図１０（b）に示されるようにそのリップ部０１bが矢印ロのように軸０３に強く押し付けられ内側に撓むことになり、該リップ部０１bの内側円周方向に設けられた不連続な突起０１cが軸０３に当接され、該突起０１cにより前記リッブ部０１bが支えられ、該リップ部０１b先端が矢印ハのように軸０３から離されるように浮き上がり、前記不連続な突起０１c間を通して該図の矢印ニのようにブーツ０１０内部に空気等が円滑に吸入されるようになされているので、該空気等の吸入と同時に跳ね水等泥水が前記ブーツ０１０内部へ侵入する恐れがある。
【０００６】
特に、前記のように遠心力によるブーツ０１０の外方への膨らみによるブーツ０１０内部の急激な圧力降下による負圧発生時等には、前記リップ部０１bの矢印ロ方向への押し付け力が強くなるので該リップ部０１b先端が矢印ハのように浮き上がる傾向がより強くなり、該リップ部０１b先端と前記軸０３との空隙が拡がり、また、前記ブーツ０１０内部の急激な負圧発生による強い外部空気等の吸入力が作用することから、前記空気等の吸入と共に前記跳ね水等泥水が前記ブーツ０１０内部へ浸入する可能性は益々高くなるものである。
【０００７】
前記従来のブーツはそのシール構造が、前記のように該ブーツ内部への外部空気等の吸入と共に侵入する跳ね水等泥水に対して十分に対処し得る構造が具備されたものではないが、一方ブーツ内部への前記跳ね水等泥水の侵入は、前記ブーツそのものの損傷を招き該ブーツの耐久性を低下させ、また該ブーツ内部の潤滑材であるグリースの潤滑機能を劣化させ、該ブーツ内部の自在継手の早期磨耗や錆の発生等を招来し、前記自在継手の耐久性を著しく低下させるものである。
【０００８】
そこで、前記ブーツ内部への跳ね水等泥水の侵入に対して適切に対処し得る前記シール構造を備えたブーツが模索されてきたところであるが、前記ブーツ内部の圧力の変動に適切に対処する機能が具備されるとともに、前記跳ね水等泥水の浸入に適切に対処し得る機能が具備された前記シール構造を備えたブーツは未だに満足できるものが開発されていないというのが実状である。
【０００９】
したがって、前記実状の中で前記ブーツ内部の圧力変動に適切に対処し得ると共に前記跳ね水等泥水の侵入の阻止機能が優れたシール構造を備えるブーツの開発、改良が急がれるところである。
【００１０】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明は、前記状況の中で、ブーツ内部における圧力変動に適切に対処し得るシール構造を備えた自在継手が提供されるもので、特に、ブーツ回転時の遠心力の作用による該ブーツ内部の負圧発生に伴う弊害の除去対策に関し、より具体的には、前記ブーツ内部における負圧発生に伴う跳ね水等泥水の該ブーツ内部への浸入阻止対策のための前記自在継手の改良に関し、自在継手のインナ軸に一端嵌着部を介して嵌着されるとともに、自在継手のアウターレースに他端嵌着部を介して嵌着されたブーツを備える自在継手において、前記ブーツの一端嵌着部はその端部に環状リップ部を有しており、前記一端嵌着部とその環状リップ部の内面には、前記インナ軸との間で、前記ブーツ内部とブーツ外部とを連通させる通路が形成されており、前記一端嵌着部の前記環状リップ部先端は、該環状リップ部の回転によるその遠心力で外方へ拡径可能に構成され、前記インナ軸を支持するベアリングを保持するセンターベアリング保持部材の内面に、前記環状リップ部の遠心力による拡径に際して、前記環状リップ部先端による圧接を受けて、前記ブーツ内部とブーツ外部とを連通させる前記通路をブーツ外部に対して閉鎖する環状テーパ部が設けられることを特徴とするものである。
【００１１】
請求項１に記載の発明においては、前記一端嵌着部の前記環状リップ部の先端は該環状リップ部の回転によるその遠心力で外方へ拡径されるようになされ、該先端の所定の拡径状態において前記ブーツ内部とブーツ外部とが連通される前記通路が、センターベアリング保持部材の内面の環状テーパ部により閉鎖されるから、車両の高速走行時のプロペラシャフト高速回転に伴う遠心力により前記ブーツが膨らみ、該ブーツ内部の急激な容積拡大による負圧発生に伴う前記通路を介しての跳ね水等泥水の前記ブーツ内部への侵入がほぼ完全に阻止され、該泥水等の浸入による前記ブーツの損傷が防止され該ブーツの耐久性の向上が図られ、またブーツ内部に充填されたグリースの潤滑機能の劣化が防止されるので自在継手における錆や磨耗の発生が防止されて該自在継手の耐久性が向上される。
【００１２】
請求項２に記載の発明においては、インナ軸の外面に、環状リップ部の内面に接するように環状テーパ部が設けられる。
【００１３】
請求項３に記載の発明においては、前記一端嵌着部の環状リップ部先端の前記遠心力による拡径が、該環状リップ部先端に設けられた錘部材によりなされるものであるから、遠心力によるリップ部先端の拡径機能が増大され、通路の閉鎖機能が向上され跳ね水等泥水の浸入阻止効果が増大される。
【００１４】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図１ないし図８に基づき説明する。
図１には、本発明の自在継手に用いるブーツ１０が示されており、該自在継手用ブーツ１０はゴムや可撓性の樹脂等からなるブーツ本体１と、鋼板等の板材が適宜機械加工されて形成されたブーツアダプタ２とから構成されており、前記ブーツ本体１は内筒部１Aと外筒部１Bと、該内筒部１Aと外筒部１Bを互いに接続するその断面形状が略U字状の環状凹溝として形成される反転部１Cとからなり、前記ブーツ本体１の前記外筒部１Bは前記ブーツアダプタ２の一端２aに固定されており、前記ブーツアダプタ２の他端には図示されない入力側の軸の一部である自在継手のアウターレースに嵌着させるための嵌着部２fが具備されている。
【００１５】
そして、前記ブーツ本体１の前記外筒部１Bのブーツアダプタ２一端２aによる前記固定は、図１から明らかなように強固になされており、該固定は、前記ブーツアダプタ２の一端２aの環状端部２b折り返し部２cにより前記ブーツ本体１の外筒部１Bを構成する環状端部１fが挟み込まれて該ブーツアダプタ２の前記折り返し部２cが強固に加締られることでなされている。
【００１６】
また、前記ブーツアダプタ２は、前記ブーツ本体１の環状端部１f固定部である前記一端２aから所定距離同径の筒部としてその軸方向へ延伸した小径筒部２dと、該小径筒部２d他端からその半径方向へ展張する鍔状部分２eと、該鍔状部分２e端から筒状にその軸方向へ延伸する前記ブーツアダプタ２の他の構造部への嵌着部２f、すなわち図１には図示されない自在継手のアウターレースへの嵌着部２fを形成する大径筒部とから構成されている。
【００１７】
前記ブーツ１０は上記のような構造を有するものであり、その装着は、図２に図示されるような状態でなされものであり、前記ブーツ１０の一端の嵌着部となるブーツ本体１内筒部１Aの嵌着部１aがプロペラシャフトインナ軸３に嵌着され、また前記ブーツ１０の他端の嵌着部となる前記ブーツアダプタ２の大径筒部である嵌着部２fが前記自在継手のアウターレース４a外周部に圧入固定されることで嵌着され、該嵌着により前記ブーツ１０がそのブーツ本体１の反転部１Cを有して実質的に前記自在継手４を覆うように前記プロペラシャフトインナ軸３と前記自在継手４のアウターレース４a間に装着される。
【００１８】
前記ブーツ本体１の前記一端嵌着部１aにおける前記プロペラシャフトインナ軸３への嵌着は、前記図２に示されるように前記一端嵌着部１aの端部近傍における締付けバンドBによる締付けによりなされ、このため前記嵌着部１a外周には前記締付けバンドBによる締付けに供されるための環状凹部１a１が形成されており、しかも該環状凹部１a１の底面１a２は図６に図示されるようにその断面形状が山形の２つの環状突部１a３を有するものとして形成され、前記環状凹部１a１に前記締付けバンドBが嵌め込まれるようにして締付けがなされ、該締付けバンドBによる締付けは前記環状凹部１a１底面１a２の山形環状突部１a３がやや押し潰されるような関係においてなされ、これにより適度の締付け強さに調整されると共に、前記環状凹部１a１の両壁面１a４との作用と相俟って前記締付けバンドBの該締付け位置がその軸方向において位置ずれしないようになされている。
【００１９】
また、前記ブーツアダプタ２の前記他端嵌着部２fにおけるアウターレース４aへの嵌着は、図２から明らかなように前記ブーツアダプタ２の前記他端嵌着部２fである大径筒部が前記自在継手のアウターレース４a外周部にその側部から圧入され、該大径筒部先端が前記アウターレース４a外周部の環状凹部４bに加締られることで強固になされ、これにより、前記ブーツ本体１と前記ブーツアダプタ２とからなるブーツ１０による前記自在継手４のほぼ完全な覆いがなされる。
【００２０】
前記のように前記ブーツ１０が装着されることで、図２に図示されるように、前記自在継手４が実質的に該ブーツ１０によりほぼ完全に覆われ、前記自在継手４は前記ブーツ１０により外部からのダストや跳ね水等泥水の浸入からほぼ完全に保護され、また、前記自在継手４の回転時における遠心力の作用で潤滑のための充填グリースが飛散するが、前記ブーツ１０により前記グリースの外部への飛散は完全に防止される。
【００２１】
前記ブーツ本体１のその一端嵌着部１aには、図１に図示されるようにその内周面にその軸方向に沿って延伸する空気等の流通のための部分通路１cが形成されており、また該嵌着部１aはその一端に環状リップ部１bを有しており、前記嵌着部１aと前記環状リップ部１bの境界近傍の内周面には、その周方向に延伸する環状の部分通路１dが形成され、該環状部分通路１dは前記嵌着部１a内周面に形成された前記部分通路１cと互いに連通しており、前記関係から前記両部分通路１c，１dの前記連通は実質的にT字型に形成される通路部を介して互いに連通される。
【００２２】
また、前記嵌着部１aから延出する前記環状リップ部１bの内周面には図５に図示されるようにその延伸方向に沿う２本の部分通路１eが形成されていて、該２本の部分通路１eは前記嵌着部１aと環状リップ部１b境界内周面の前記環状部分通路１dにその周方向の所定位置においてそれぞれ連通されており、該連通位置は前記部分通路１cの前記環状部分通路１dに対する連通位置とその位相がずれており、例えば、図４，図５の図示に基づけば前記連通位置の位相のずれは、図４における部分通路１ｃが真上であり、図５における２本の部分通路１eが下方に位置する関係から、左右それぞれ略１５０°程度ずれていることになる。
そして、前記２本の部分通路１eの前記環状部分通路１dへのそれぞれの連通も実質的にT字型に形成される通路部を介してなされている。
【００２３】
前記記載から明らかなように、前記３つの部分通路１c，１d，１e（図１参照）は互いに連通する関係に構成され、これにより、前記ブーツ１０の内部とブーツ１０の外部が、前記３つの部分通路１c，１d，１e、すなわち前記嵌着部１aにおける軸方向に延伸する部分通路１cと、前記嵌着部１aと環状リップ部１bの境界内周面の環状方向に延伸する環状部分通路１dと、該環状部分通路１dの周方向の所定位置から再び軸方向に延伸する前記環状リップ部１b内周面の２本の部分通路１eを介して互いに連通される。
【００２４】
そして、前記３つの部分通路１c，１d，１eは前記のように互いに連通されて、１つの通路１Dが形成され、該通路１Dは、前記環状部分通路１dの存在によりその長さが延長され、また該環状部分通路１dの存在により複数箇所の直角に曲折した通路部を備えた通路構造を有するものとされ、前記通路１Dのその通路構造により該通路１Dを流れる空気等の流通抵抗が高められるようになされている。
【００２５】
前記３つの部分通路１c，１d，１eの内、前記嵌着部１a内周面に形成された部分通路１cは、図６，図７に図示されるように２つの突条１c１，１c２により形成される該突条間の溝部１cとして形成されたものであり、また、前記環状リップ部１b内周面に形成された軸方向延伸部分通路１eと前記一端嵌着部１aと前記環状リップ部１b境界近傍内周面に形成された環状部分通路１dは、格別特徴のない通常の凹部溝として形成されている。
【００２６】
前記環状リップ部１bは、前記のように前記嵌着部１aとの境界近傍内周面の周方向に前記環状部分通路１dが形成され、またその内周面に２本の軸方向延伸部分通路１eが形成されたものであり、その先端１b１は図１，図３に図示されるように次第にその厚みが薄くなる両面環状テーパ部１b２として形成され、前記ブーツ１０の非装着時には、図１に図示されるように前記環状リップ部１bがその軸方向にほぼ直線的に延伸しており、前記ブーツ１０の装着時においては図２，図３に図示されるように該環状リップ部１bの内周面が前記プロペラシャフトインナ軸３の環状テーパ部３aに当接して該環状リップ部１bがその弾性により拡径し、該環状リップ部１b先端１b１が前記プロペラシャフトインナ軸３のセンターベアリング保持部材５の環状テーパ部５aに接近した状態に置かれるものである。
【００２７】
前記環状リップ部１bはその弾性により、前記プロペラシャフトインナ軸３の回転時に該環状リップ部１bに作用する遠心力でさらに図３において矢印で示されるように外方へ拡がるように拡径して、前記遠心力が所定以上になると、該環状リップ部１bの前記厚みが薄くなる先端１b１は前記センターベアリング保持部材５の前記環状テーパ部５aに前記図３の破線で示されるように圧接される。
【００２８】
そして、前記環状リップ部１bの前記先端１b１の前記拡径による前記センターベアリング保持部材５の環状テーパ部５aへの圧接は、後に説明するように実質的に前記通路１Dを介したブーツ１０内部とブーツ１０外部との空気等の連通が遮断もしくは制限されたものとする作用を呈するものである。
【００２９】
本発明のブーツ１０は前記の構造であるから、以下のような作動をなすものである。
【００３０】
車両の通常の走行時や低速走行時等においては、プロペラシャフトインナ軸３の回転は比較的穏やかであり、前記ブーツ１０内部の圧力がほぼ常態に保たれており、該状態においては、前記ブーツ１０内部とブーツ１０外部は前記３つの部分通路１c，１d，１eすなわち、ブーツ嵌着部１a内周面の部分通路１c、ブーツ嵌着部１aと環状リップ部１b境界近傍内周面の環状部分通路１d、および前記環状リップ部１b内周面の２本の部分通路１eからなる通路１Dを介して互いに連通された状態にあるが、該通路１Dを介したブーツ１０内外の空気等の流通は殆ど生じない。
【００３１】
そして、前記状態においては、前記環状リップ部１b先端１b１は前記プロペラシャフト３の回転が穏やかであるから遠心力で殆ど拡径することはなく、該環状リップ部１bの先端１b１が前記センターベアリングの保持部材５の前記テーパ面５aに当接することなく保持され、前記通路１Dの空気等吸入のための開口が閉鎖されることはない。
【００３２】
前記ブーツ１０内部の圧力が高くなると、すなわち、車両の長時間に亘る走行時等に生じるブーツ１０内部の摩擦熱による温度上昇に伴う圧力上昇や、自在継手４の作動に伴うブーツ１０の内側へのスライドやブーツ１０の変型によるブーツ１０内部容積の変動等によりブーツ１０内部の圧力が上昇した時には、該ブーツ１０内部の空気等が前記通路１Dを介してブーツ１０外部へ排出されて、ブーツ１０内部の圧力の上昇が抑制される。
【００３３】
また、前記ブーツ１０内部の圧力が下がると、例えば、前記自在継手４の作動に伴う前記ブーツ１０の外側へのスライドや、ブーツ１０の変形によるブーツ１０内部容積の変動により起こる該内部の負圧の発生で前記ブーツ１０が縮み、時には該ブーツ１０が自在継手４に直接接触する恐れが生じ、このようなブーツ１０内部における負圧発生時には、前記通路１Dを介してブーツ１０外部からの空気等（外気）が前記ブーツ１０内部へ吸入されることで該ブーツ１０がその弾性力により復元するので、前記のようなブーツ１０の自在継手４への接触が防止される。
【００３４】
前記状態におけるブーツ１０内部の前記負圧の発生は、通常比較的軽微なものであり、しかも前記通路１Dの長い通路長さと、該通路１Dにおける直角に曲折した通路部分を有する通路構造による前記空気等の流通抵抗の増大等が勘案されると、前記ブーツ１０内部への外部からの空気等（外気）の吸入力が緩和されることになるので、該空気等の吸入時に跳ね水等泥水が前記空気等と共に前記ブーツ１０内部に吸入されるような事態の発生はきわめて低いものである。
【００３５】
車両が高速で走行する状態になると、前記プロペラシャフトインナ軸３の回転速度が急激に高くなり、前記ブーツ１０がその高速回転による遠心力で外方に膨らみ該ブーツ１０の内部容積が急激に拡大して、該ブーツ１０内部の圧力降下が速くその負圧は急激に増大し、前記ブーツ１０による外部からの空気等の吸入力が大きくなり、前記外部空気等の吸入に伴う前記跳ね水等泥水のブーツ１０内部への浸入が発生することになるが、本発明においては、前記遠心力により前記ブーツ１０が急激に膨らむ事態が発生すると同時に該遠心力が前記ブーツ１０の環状リップ部１bにも作用し、図３に図示されるように前記環状リップ部１bの先端１b１がその弾性により前記遠心力で外方（矢印方向）へ拡径されて、該先端1b１が該図３の破線で示されるように前記センターベアリング保持部材５の環状テーパ部５aに圧接され、該圧接により、前記圧接部における前記ブーツ１０内部への空気等の吸入開口が閉じられて、前記ブーツ１０内部への前記通路１Dを介した外部からの空気等の流入が阻止され、もしくは制限されるようになされている。
【００３６】
本発明の前記図１ないし図８に記載された実施形態は前記のように構成されているので、車両の高速走行時等プロペラシャフトインナ軸３が高速回転する時の前記遠心力でブーツ１０が膨らみその内部容積が急激に拡大されると、前記ブーツ内部が急速に負圧になる事態が発生するが、該事態の発生と同時に前記ブーツ１０の環状リップ部１b先端１b１がその遠心力で外方へ拡径されて、該環状リップ部１bの先端１b１が前記センターベアリング保持部材５の環状テーパ部５aに圧接されるので、該圧接部の空気等吸入のための吸入開口が閉鎖もしくはほぼ閉鎖された状態になされるので、前記通路１Dの前記通路構造による空気等の流通抵抗の増大効果と相俟って前記ブーツ１０内部への外部空気等吸入に伴う跳ね水等泥水の浸入がほぼ完全に阻止されることになる。
【００３７】
前記実施形態に換えて種々の実施形態が考えられる。
【００３８】
前記実施形態においては、前記環状リップ部１bの先端１b１構造が、該先端１b１に向かって次第に薄くなる形状（両面テーパ形状）としたが、これに換えて該先端１b１がその遠心力増大のために図８（a），（b）に図示されるように肉厚構造部とされ、もしくは該先端１b１に錘となる部材Wがインサート形成等の手段により付加されてもよく、この場合該錘部材の材料は金属部材に限られるものでなく適宜選択される。
【００３９】
前記環状リップ部１b先端の前記遠心力増大のための構造変更に対応して、前記環状リップ部１bおよびその先端１b１の形状は適宜変更されるものであり、該環状リップ部１bおよびその先端１b１の形状は前記実施形態に示された形状も含めて適宜本発明の趣旨を逸脱することなく本発明の所定の作用効果を奏し得る範囲において、適宜選択設定されるものである。
【００４０】
前記実施形態においては、前記環状リップ部１bの先端１b１がその遠心力により圧接される部材がセンターベアリングの保持部材５のテーパ部５aとされているが、該部材はこれに限定されるものでなく、適宜他のプロペラシャフトインナ軸３に取付けされる部材に置き換えることができる。
【００４１】
前記実施形態においては、前記嵌着部１aとその環状リップ部１b境界近傍内周面の環状部分通路１dに連通する前記ブーツ１０の環状リップ部１b内周面の部分通路１eが２本であるが、該部分通路１eの本数は適宜選択されるものであり、例えば一本であってもよく、３本、４本等であっても良い。
【００４２】
前記実施形態においては、前記環状リップ部１b内周面の２本の部分通路１eが前記環状部分通路１dに連通される位置が、前記嵌着部１a内周面の部分通路１cが該環状部分通路１dに連通される位置からそれぞれ左右に略１５０°程度の位相でなされているが、前記２本の部分通路１eの連通位置は適宜選択されるものであり、該部分通路１eの本数が適宜選択された場合でも、前記部分通路１eの連通位置は適宜選択されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の自在継手用ブーツの構造を示す図である。
【図２】本発明の自在継手用ブーツが車両のプロペラシャフトに装着された状態を示す図である。
【図３】本発明の環状リップ部先端の遠心力による作動状態を示す図である。
【図４】図３におけるA-A断面図である。
【図５】図３におけるB-B断面図である。
【図６】本発明のブーツ嵌着部の構造を示す拡大図である。
【図７】本発明における空気等の流入流出用通路の部分通路構造を示す拡大断面図であり、図６におけるC-C断面図である。
【図８】本発明の他の実施形態における環状リップ部の先端構造を示す図であり、（a）は該先端を肉厚構造部とした図であり、（b）は該先端を錘部材が埋設された構造部とした図である。
【図９】従来のブーツ嵌着部とその環状リップ部の構造を示す図であり、（a）はその側断面を示す図であり、（b）は前記（a）図における０A-０A断面図である。
【図１０】従来の環状リップ部による空気等の流入流出の制御状態を示す図であり、（a）はブーツ内部からの前記空気等の流出状況を示す図であり、（b）はブーツ内部への前記空気等の流入状況を示す図である。
【符号の説明】
1・・・ブーツ本体、１A・・・内筒部、1B・・・外筒部、１C・・・反転部、１D・・・通路、1a・・・一端嵌着部、１a１・・・環状凹部、１a２・・・底面、１a３・・・山形環状突部、１a４・・・環状凹部の壁面、１b・・・環状リップ部、１b１・・・環状リップ部先端、１b２・・・両面テーパ部、１c・・・部分通路、１c１，１c２・・・突条、１d・・・環状部分通路、１e・・・部分通路、１f・・・ブーツ本体の他端環状端部、２・・・ブーツアダプタ、２a・・・ブーツアダプタの一端、２b・・・ブーツアダプタの一端環状端部、２ｃ・・・折り返し部、２d・・・小径筒部、２e・・・鍔状部分、２f・・・他端嵌着部、３・・・プロペラシャフトインナ軸、３a・・・プロペラシャフトインナ軸の環状テーパ部、４・・・自在継手、４a・・・自在継手のアウターレース、４b・・・アウターレース外周部の環状凹部、５・・・センターベアリング保持部材、５a・・・保持部材の環状テーパ部、１０・・・自在継手用ブーツ、B・・・締付けバンド

Claims

自在継手のインナ軸に一端嵌着部を介して嵌着されるとともに、自在継手のアウターレースに他端嵌着部を介して嵌着されたブーツを備える自在継手において、
前記ブーツの一端嵌着部はその端部に環状リップ部を有しており、前記一端嵌着部とその環状リップ部の内面には、前記インナ軸との間で、前記ブーツ内部とブーツ外部とを連通させる通路が形成されており、前記一端嵌着部の前記環状リップ部先端は、該環状リップ部の回転によるその遠心力で外方へ拡径可能に構成され、前記インナ軸を支持するベアリングを保持するセンターベアリング保持部材の内面に、前記環状リップ部の遠心力による拡径に際して、前記環状リップ部先端による圧接を受けて、前記ブーツ内部とブーツ外部とを連通させる前記通路をブーツ外部に対して閉鎖する環状テーパ部が設けられることを特徴とする自在継手。
前記インナ軸の外面に、前記環状リップ部の内面に接するように環状テーパ部が設けられる請求項１記載の自在継手。
前記一端嵌着部の環状リップ部先端の前記遠心力による拡径が、該環状リップ部先端に設けられた錘部材によりなされるものである請求項１または２記載の自在継手。