JP4090778B2 - 酸化銀微粒子組成物およびその製造方法、導電性組成物、導電性被膜およびその形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性ペースト、導電性塗料、導電性接着剤などとして用いられる酸化銀微粒子組成物およびその製造方法、導電性組成物、これらを用いて形成された導電性被膜およびその形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の導電性ペーストとしては、フレーク状の銀微粒子にアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂などからなるバインダ、有機溶剤、硬化剤、触媒などを添加し、混合して得られる銀ペーストが代表的なものである。
【0003】
この銀ペーストは、各種電子機器、電子部品、電子回路などに対して導電性接着剤、導電性塗料などとして広く使用されている。また、この銀ペーストをポリエチレンテレフタレートフィルムなどのプラスチックフィルム上にスクリーン印刷などにより印刷して、電気回路を形成したフレキシブル回路基板もキーボード、各種スイッチなどのプリント回路基板として用いられている。
【0004】
この銀ペーストの使用方法は、対象物に各種塗布手段により塗布し、常温で乾燥するか、あるいは150℃程度に加熱して、導電性被膜とすることで行なわれている。
そして、このようにして得られた導電性被膜の体積抵抗率は、製膜条件にもよるが、10-4〜10-5Ω・cmの範囲であり、金属銀の体積抵抗率1.6×10-6Ω・cmに比べて、10〜100倍の値となっており、金属銀の導電性にはとうてい及ばない値となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の銀ペーストからなる導電性被膜の導電性が低い理由としては、この導電性被膜内では、銀微粒子同士が、その一部のみで物理的に接触しており、しかも銀微粒子同士の接触点が少なく、また、銀微粒子同士の接触点において接触抵抗が生じることなどが挙げられる。さらに、銀微粒子同士の間にバインダが存在し、このバインダが銀微粒子同士の直接的な接触を阻害していることなども挙げられる。
【0006】
このような銀ペーストの導電性の低さを改善する方法として、銀ペーストを対象物に塗布した後、800℃程度に加熱してバインダを焼却、除去するとともに、銀微粒子を溶融して、銀微粒子が融着して一様に連続した金属銀の被膜を形成する方法がある。このようにして得られた金属銀の被膜からなる導電性被膜の体積抵抗率は、10-6Ω・cm程度になり、金属銀のそれに近い導電性を有するものとなる。
しかし、このような金属銀の被膜からなる導電性被膜では、対象物が高温加熱に耐え得るガラス、セラミックス、琺瑯などの耐熱性材料に限られるという欠点がある。
【0007】
また、これとは別の試みとして、銀の微粒子を使うことによる導電性被膜の低抵抗化の検討が行なわれている。
ここで用いられる銀の微粒子とは、その粒径が数〜数十nmのものである。これを導電性ペーストとして使用して、対象物に塗布した後、加熱すると、この銀の微粒子が比較的低温で融着して、銀の微粒子同士の接点が増え、導電性被膜の導電性が向上する。そして、銀の微粒子の粒径が小さいほど、融着の起こる温度も下がる傾向にあることが知られている。
【0008】
しかし、粒径が数〜数十nmの銀微粒子は、その量産性や安定性の問題から、一般の銀粉と比較して非常に高価なものである。また、この銀微粒子は非常に小さいために、その凝集作用が強い。特に、乾燥した状態では、凝集作用が顕著になり、一旦、乾燥させた銀微粒子は、溶媒やバインダなどへの分散が困難であることから、乾燥させることができなかった。このようなことから、粒径が数〜数十nmの銀微粒子は、導電性ペーストの材料としてはあまり普及していない。
【0009】
さらに、熱によって、金属銀からなる導電性被膜を形成する方法としては、酸化銀の還元反応を利用したものが挙げられる。この形成方法は、加熱により酸化銀中の酸素が還元されて放出され、銀化することを利用したものである。この還元反応は、還元剤によって促進させることができるが、酸化銀の粒径の影響を受け易く、酸化銀の粒径が小さいほど低温で反応が起こるようになる。
【0010】
そして、この形成方法では、酸化銀の還元と同時に、生成した銀同士が融着し合って連続した銀被膜となり、この銀被膜は非常に導電性の高いものとなる。
このような酸化銀を用いた銀被膜の形成方法については、特願2001−398425号で提案されているが、酸化銀微粒子の製造方法およびその分散性については、詳しく示されていない。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、低温で還元反応が起こるほど粒径が小さく、乾燥させても溶媒やバインダ樹脂などへの分散性に優れた酸化銀微粒子組成物およびその製造方法を提供することを課題とする。また、この酸化銀微粒子組成物を使用して、高温で製膜しなくとも、金属銀と同等の低体積抵抗率、高導電性の導電性被膜が得られる導電性組成物、導電性被膜およびその形成方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、酸化銀微粒子の表面が分散剤で被覆されてなり、平均粒径が0.01〜10μmの微粒子であり、前記酸化銀微粒子、及び前記分散剤から溶媒が除かれた酸化銀微粒子組成物によって解決できる。上記分散剤がヒドロキシプロピルセルロースであることが好ましい。上記酸化銀微粒子組成物が、バインダ樹脂、溶媒、還元剤から選ばれる1種類以上に分散可能であることが好ましい。
前記課題は、酸化銀微粒子の表面が分散剤で被覆されてなり、平均粒系が0.01〜10μmの微粒子であり、前記酸化銀微粒子、及び前記分散剤から溶媒が除かれた酸化銀微粒子組成物の製造方法であって、銀化合物と塩基性物質を分散剤の存在下で反応させ、溶媒を除去することにより酸化銀微粒子組成物を得る酸化銀微粒子組成物の製造方法によって解決できる。
前記課題は、上記酸化銀微粒子組成物が、バインダ樹脂、溶媒、還元剤から選ばれる1種類以上に分散されてなる導電性組成物によって解決できる。
前記課題は、上記導電性組成物を対象物に塗布し、加熱する導電性被膜の形成方法によって解決できる。
前記課題は、上記導電性被膜の形成方法で得られ、銀微粒子が互いに融着している導電性被膜によって解決できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の酸化銀微粒子組成物は、酸化銀微粒子の表面の全部または一部が分散剤で被覆されてなり、酸化銀微粒子、及び分散剤から溶媒が除かれ、平均粒径が0.01〜10μmの微粒子である。
この酸化銀微粒子組成物の平均粒径が0.01μm未満では、乾燥した状態において、凝集作用が強くなることがあり、溶媒やバインダなどへの分散が困難となる場合がある。一方、酸化銀微粒子組成物の平均粒径が10μmを超えると、低温において酸化銀の還元反応が起こり難くなり、結果として、金属銀からなる導電性被膜を形成し難くなる。
【0014】
本発明で用いられる酸化銀微粒子は、硝酸銀、過塩素酸銀、炭酸銀などの銀化合物と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基性物質を反応させて得られた、平均粒径が0.01〜10μmであるものである。
【0015】
本発明で用いられる分散剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの他に、市販の分散剤として、例えば、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190(以上、ビックケミー社製)、フローレンTG−720W、フローレンTG−730W、フローレンG−700、フローレンDOPA−17、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−158(以上、共栄社化学社製)、チラバゾールW−01、チラバゾールW−02(以上、太陽化学社製)、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000(以上、アビシア社製)、アジスパーPB711、アジスパーPB811、アジスパーPA111、アジスパーPW911(以上、味の素社製)などの高分子系分散剤を用いることができる。
このような分散剤の使用量は、酸化銀微粒子100重量部に対して有効成分で0.1〜300重量部とし、好ましくは1〜100重量部とする。
【0016】
本発明の酸化銀微粒子組成物は、乾燥した状態でも、組成物同士が互いに凝集し難く、バインダ樹脂や溶媒などに対する分散性に非常に優れた微粒子である。
また、この酸化銀微粒子組成物は、比較的低温で、単に加熱するか、あるいは還元剤との共存下において加熱することにより、容易に金属銀に還元される微粒子である。そして、この還元反応時に生じる反応熱によって、還元反応によって形成された金属銀微粒子が溶融し、互いに融着して高導電性の金属銀の導電性被膜を形成する。したがって、得られる導電性被膜は、金属銀と同等の体積抵抗率および導電性を有するものとなる。
さらに、本発明の酸化銀微粒子組成物は、溶媒がない状態でも、組成物同士が凝集しないように、その表面の一部または全部が分散剤によって被覆されている。よって、本発明の酸化銀微粒子組成物は、乾燥させた後でも、新たなバインダ樹脂、溶媒、還元剤、その他の各種添加剤などに対して凝集せずに再分散させることが可能である。なお、本発明の酸化銀微粒子組成物を再分散させる方法は、特に限定されるものではなく、公知の分散法を適宜用いることができる。
【0017】
次に、本発明の酸化銀微粒子組成物の製造方法について説明する。
本発明の酸化銀微粒子組成物の製造方法は、溶媒に分散または溶解した銀化合物と、溶媒に分散または溶解した塩基性物質を、分散剤の存在下で反応させて、この反応液をそのままの状態とするか、または洗浄した後、溶媒を除去して粉体とすることにより、酸化銀微粒子の表面の一部または全部が分散剤で被覆された、平均粒径が0.01〜10μmの酸化銀微粒子組成物が得られるものである。具体的な例としては、硝酸銀水溶液に分散剤を添加しておき、水酸化ナトリウム水溶液を、この硝酸銀水溶液に滴下することにより、本発明の酸化銀微粒子組成物を得る。
本発明の酸化銀微粒子組成物の製造方法において、銀化合物または塩基性物質を、分散または溶解させる分散媒の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、セカンダリーブチルアルコール(SBA)などのアルコール類、イソホロン、テルピネオール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテートなどの有機溶媒が用いられる。
【0018】
本発明の酸化銀微粒子組成物の製造方法にあっては、銀化合物または塩基性物質に分散剤を添加しておくことにより、銀化合物または塩基性物質の反応によって生成する酸化銀微粒子が凝集するのを防止し、微粒子状の酸化銀微粒子組成物を得ることができる。また、銀化合物および/または塩基性物質の種類、これらの物質の濃度、反応温度、反応時間などの各種条件、分散剤の種類および量などを適宜設定することによって、目的とする粒径を有する酸化銀微粒子組成物を得ることができる。
【0019】
次に、本発明の導電性組成物について説明する。
本発明の導電性組成物は、上記の本発明の酸化銀微粒子組成物が、バインダ樹脂、溶媒、還元剤から選ばれる1種類以上に、ほぼ均一に分散されてなるものである。
【0020】
本発明の導電性組成物の第1の実施形態は、上記の本発明の酸化銀微粒子組成物が、バインダ樹脂および/または溶媒に分散されてなるものである。
この実施形態の導電性組成物を構成するバインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などや、これらのモノマーが挙げられる。
また、この実施形態の導電性組成物を構成する溶媒としては、上記本発明の酸化銀微粒子組成物の製造方法で用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0021】
この実施形態の導電性組成物は、対象物に塗布または印刷し、これを単に加熱するだけで、導電性被膜を形成することができるものである。導電性組成物を構成する酸化銀微粒子組成物の粒径が1μm以下であれば、加熱温度180〜200℃、加熱時間10秒〜120分程度で、導電性被膜を形成することができる。
【0022】
さらに、この実施形態の導電性組成物は、種々の方法で対象物に塗布または印刷することができ、そのときの適切な粘度は製膜条件により異なる。例えば、スクリーン印刷の場合には、30〜300ポイズ程度の粘度が好ましい。このときの粘度は、バインダ樹脂および/または溶媒の種類、バインダ樹脂および/または溶媒の酸化銀微粒子組成物に対する添加量を変えることで調整することができる。
【0023】
また、本発明の導電性組成物の第2の実施形態は、上記の本発明の酸化銀微粒子組成物が、還元剤に分散されてなるものである。
この実施形態の導電性組成物を構成する還元剤としては、酸化銀微粒子組成物中の酸化銀を還元するもので、還元反応後の副生成物が気体や揮発性の高い液体となり、生成した導電性被膜内に残留しないものが好ましい。このような還元剤の具体的な例としては、エチレングリコール、ホルマリン、ヒドラジン、アスコルビン酸、各種アルコールなどが挙げられる。これらの還元剤は、液体であれば溶媒としても用いることができ、このような例としては、エチレングリコールなどが挙げられる。
【0024】
このような還元剤の中には、還元力が高いものがある。そこで、還元力が高い還元剤を用いる場合は、導電性組成物を対象物に塗布または印刷する直前に、導電性組成物に還元剤を添加する。このようにすれば、導電性組成物の保管中や、塗布または印刷の間に、導電性組成物内で還元反応が起こるのを大幅に抑えることができる。これにより、導電性組成物の貯蔵安定性を改善することができ、また、安定した導電性を有する導電性被膜を形成することができる。
【0025】
この実施形態の導電性組成物は、還元剤を添加することでより低い温度で還元反応が進み、導電性被膜を形成できる。この例で用いられる酸化銀微粒子組成物の平均粒径は、小さいものに限定する必要がなく、0.01〜10μmの範囲であれば特に支障はない。この実施形態の導電性組成物は、還元剤の存在により、1μm以上の粒子でも還元反応がスムーズに進行し、導電性被膜を容易に形成することができる。
【0026】
この実施形態の導電性組成物の粘度は、製膜条件によって異なるが、例えば、スクリーン印刷の場合には、30〜300ポイズ程度が好ましい。
また、この実施形態の導電性組成物を用いて導電性被膜を形成するには、この導電性組成物を対象物に適宜の手段で塗布した後、単に加熱するだけでよい。加熱温度は、還元剤の存在により第1の実施形態よりも低くてよく、加熱温度140〜160℃、加熱時間10秒〜120分程度で、導電性被膜を形成することができる。
【0027】
なお、本発明の導電性組成物は、上記第1および第2の実施形態に限定されるものではなく、バインダ樹脂、溶媒または還元剤から選択される2種類以上が併用されていてもよい。
また、本発明の導電性組成物を用いて、導電性被膜を形成する際には、いずれの場合においても、対象物の表面を清浄にしておかなければならない。
【0028】
次に、本発明の導電性被膜について説明する。
本発明の導電性被膜は、上述のように、本発明の導電性組成物を対象物に塗布し、加熱することによって、酸化銀微粒子組成物中の酸化銀微粒子が還元され、還元された金属銀微粒子が互いに融着して、一様に連続した金属銀の薄膜に形成されたものである。
【0029】
本発明の導電性被膜の体積抵抗率は、3〜8×10-6Ω・cmの範囲の値を示し、金属銀の体積抵抗率と同オーダーである。
このように、本発明の導電性被膜は、体積抵抗率が極めて低いので、導電性被膜の厚みを極めて薄くしても高い導電性を得ることができる。例えば、体積抵抗率5×10-5Ω・cmの銀ペーストを使用して、厚さ50μmの電気回路を要求される場合、本発明の導電性被膜を用いれば、体積抵抗率3×10-6Ω・cm、厚さ3μmの電気回路を形成することができる。
【0030】
また、本発明の導電性被膜を形成する酸化銀微粒子の平均粒径が0.01〜10μmであるから、本発明の導電性被膜からなる電気回路の線幅を10μm以下とすることができる。しかも、この電気回路自体の導電性が極めて高いので、上述のように電気回路の厚みを厚くする必要もない。よって、電気回路の形成が容易である上に、電気回路自体の可撓性も高くなる。
【0031】
さらに、本発明の導電性被膜は、対象物に塗布され、加熱されて形成されるが、この導電性被膜の対象物側の面は、金属銀の光沢に富む鏡面を呈するものとなる。特に、対象物の表面が平滑な面(鏡面)であれば、対象物から剥離した導電性被膜の対象物側の面は、反射率の高い鏡として、家庭用、工業用などの用途に使用でき、例えばレーザー装置の共振器の反射鏡などに使用することができる。
【0032】
そして、本発明の導電性被膜の形成における加熱温度は180〜200℃程度、あるいは140〜160℃程度で十分である。したがって、本発明の導電性被膜は、耐熱性の低いプラスチックフィルムなどの対象物にも適用でき、高導電性を有する導電性被膜を形成することができるとともに、対象物が熱劣化することもない。
【0033】
以下、具体的な実施例を示して、本発明の効果を明かにする。
(実施例1)
イオン交換水50mlに硝酸銀10.0gを溶解し、さらに、これに分散剤としてヒドロキシプロピルセルロース2.5gを添加した水溶液に、攪拌しながら2M水酸化ナトリウム水溶液を29.5ml滴下し、攪拌を10〜30分続けて、酸化銀微粒子の懸濁液を調製した。
この懸濁液中の酸化銀微粒子の粒径を、粒径測定器(商品名;マイクロトラックUPA150、日機装社製)で測定したところ、その平均粒径は0.35μmであった。
次いで、この酸化銀微粒子の懸濁液を濾過して、回収した酸化銀微粒子をメタノールで2〜5回洗浄し、余分なイオン類を除去した。次いで、これを熱風乾燥炉にて、温度50℃で、5時間乾燥させて、表面が分散剤で被覆された酸化銀微粒子組成物を得た。
次いで、この酸化銀微粒子組成物1.0gをセカンダリーブチルアルコール(SBA)0.5gに分散させて、ペースト状の導電性組成物を製造した。
この導電性組成物中の酸化銀微粒子組成物の粒径を粒径測定器にて測定したところ、その平均粒径は、懸濁液中の酸化銀微粒子の平均粒径と同じであった。このことから、導電性組成物中で、酸化銀微粒子組成物は凝集しておらず、分散性が良好であることが確認された。
次いで、この導電性組成物1.0gに、還元剤としてエチレングリコールを0.5g添加した後、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、スクリーン印刷により、厚さ5〜10μmの電気回路パターンを形成した後、これをオーブン中で、温度150℃で、30分〜3時間加熱して、導電性被膜を形成した。
得られた導電性被膜の体積抵抗率は、3〜6×10-6Ω・cmであった。さらに、この導電性被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、酸化銀を還元して生成した銀微粒子同士が融着接合していることが確認された。
【0034】
(実施例2)
イオン交換水50mlに硝酸銀10.0gを溶解し、さらに、これに分散剤としてディスパービック190(ビックケミー社製)6.25gを添加した水溶液に、攪拌しながら2M水酸化ナトリウム水溶液を29.5ml滴下し、攪拌を10〜30分続けて、酸化銀微粒子の懸濁液を調製した。
この懸濁液中の酸化銀微粒子の粒径を、粒径測定器(商品名;マイクロトラックUPA150、日機装社製)で測定したところ、その平均粒径は0.21μmであった。
次いで、この酸化銀微粒子の懸濁液を、メタノールで2〜5回洗浄し、余分なイオン類を除去した。次いで、これを熱風乾燥炉にて、温度50℃で、5時間乾燥させて、酸化銀微粒子組成物を得た。
次いで、この酸化銀微粒子組成物1.0gをセカンダリーブチルアルコール(SBA)0.5gに分散させて、ペースト状の導電性組成物を製造した。
この導電性組成物中の酸化銀微粒子組成物の粒径を粒径測定器にて測定したところ、その平均粒径は、懸濁液中の酸化銀微粒子の平均粒径と同じであった。このことから、導電性組成物中で、酸化銀微粒子組成物は凝集しておらず、分散性が良好であることが確認された。
次いで、この導電性組成物1.0gに、還元剤としてエチレングリコールを0.5g添加した後、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、スクリーン印刷により、厚さ5〜10μmの電気回路パターンを形成した後、これをオーブン中で、温度150℃で、30分〜3時間加熱して、導電性被膜を形成した。
得られた導電性被膜の体積抵抗率は、3〜6×10-6Ω・cmであった。さらに、この導電性被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、酸化銀を還元して生成した銀微粒子同士が融着接合していることが確認された。
【0035】
(比較例)
比較のため、市販の銀ペースト(商品名;FA−353、藤倉化成社製)を用意し、これを厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、スクリーン印刷により、厚さ5〜10μmの電気回路パターンを形成した後、これをオーブン中で、温度150℃で、30分加熱して、導電性被膜を形成した。得られた導電性被膜の体積抵抗率は、4×10-5Ω・cmであった。さらに、この導電性被膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、銀フレーク同士が単に接触している状態であることが確認された。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の酸化銀微粒子組成物は、酸化銀微粒子の表面が分散剤で被覆されてなり、平均粒径が0.01〜10μmの微粒子であるから、乾燥した状態でも、組成物同士が互いに凝集し難く、バインダ樹脂や溶媒などに対する分散性に非常に優れた微粒子である。また、この酸化銀微粒子組成物は、比較的低温で、単に加熱するか、あるいは還元剤との共存下において加熱することにより、容易に金属銀に還元される。そして、この還元反応時に生じる反応熱によって、還元反応によって形成された金属銀微粒子が溶融し、互いに融着して高導電性の金属銀の導電性被膜を形成することができる。したがって、得られる導電性被膜は、金属銀と同等の体積抵抗率および導電性を有するものとなる。
【0037】
本発明の導電性組成物は、上記酸化銀微粒子組成物が、バインダ樹脂、溶媒、還元剤から選ばれる1種類以上に分散されてなるものであるから、対象物に塗布または印刷し、これを単に加熱するだけで、導電性被膜を形成することができるものである。特に、還元剤が添加されたものは、より低い温度で還元反応が進み、導電性被膜を形成することができる。
【0038】
本発明の導電性被膜は、上記導電性組成物を対象物に塗布し、加熱することにより、銀微粒子が互いに融着しているものであるから、体積抵抗率は、3〜8×10-6Ω・cmの範囲の値を示し、金属銀の体積抵抗率と同オーダーとなる。また、体積抵抗率が極めて低いので、導電性被膜の厚みを極めて薄くしても高い導電性を得ることができる。さらに、この導電性被膜からなる電気回路は、その線幅を十分に細くすることができ、その厚みを厚くするも必要がない。したがって、電気回路の形成が容易である上に、電気回路自体の可撓性も高くなる。そして、その導電性被膜の形成は、比較的低い温度での加熱でなされるので、対称物として耐熱性の低いプラスチックなどを用いることができる。
Claims (7)
- 酸化銀微粒子の表面が分散剤で被覆されてなり、平均粒系が0.01〜10μmの微粒子であり、前記酸化銀微粒子、及び前記分散剤から溶媒が除かれたことを特徴とする酸化銀微粒子組成物。
- 前記分散剤がヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の酸化銀微粒子組成物。
- 請求項2記載の酸化銀微粒子組成物が、バインダ樹脂、溶剤、還元剤から選ばれる1種類以上に分散可能であることを特徴とする酸化銀微粒子組成物。
- 酸化銀微粒子の表面が分散剤で被覆されてなり、平均粒系が0.01〜10μmの微粒子であり、前記酸化銀微粒子、及び前記分散剤から溶媒が除かれた酸化銀微粒子組成物の製造方法であって、
銀化合物と塩基性物質とを分散剤の存在下で反応させ、溶媒を除去することにより酸化銀微粒子組成物を得ることを特徴とする酸化銀微粒子組成物の製造方法。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の酸化銀微粒子組成物が、バインダ樹脂、溶媒、還元剤から選ばれる1種類以上に分散されてなることを特徴とする導電性組成物。
- 請求項5記載の導電性組成物を対象物に塗布し、加熱することを特徴とする導電性被膜の形成方法。
- 請求項6記載の導電性被膜の形成方法で得られ、銀微粒子が互いに融着していることを特徴とする導電性被膜。
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