JP4090145B2 - 杭の継手構造及び杭の接続構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既製コンクリート杭等の杭の継手構造に係り、特に製造が容易でかつ継手部に係る既製コンクリート杭間の引張力に対して強固な構造を持った杭の継手構造及びこれを用いた杭の接続構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の杭の継手部構造に使用される継手部材は、例えば図3(A),(B)に示すような構成部品より構成されていた。即ち、端板側内周面に傾斜切欠部51を有する円筒状の円筒側板52と、この継手端板側に杭本体側が当接される端板53及び円筒側板52の杭本体側外周部に溶着された補強バンド59とによって継手部材54が構成されていた。
【0003】
そして、この継手部材54の場合には、特に図3(A)に示すように、円筒側板52の所定位置に複数のネジ穴55を設け、かつ端板53の外周面の円筒側板側に傾斜面56aを有する鍔56を突設すると共に、その所定位置にPC鋼材掛止用穴57を穿設し、更に円筒側板52の傾斜切欠部51に溶接58を施すことによって、端板53を円筒側板52に固着し、円筒側板52の杭本体側端部に補強バンド59を溶接60により定着して継手部材54を構成していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
然るに、前述の杭の継手部構造は、円筒側板52とその端板側端面に当接された端板53とを、円筒側板52の傾斜切欠部51に溶接58を施すことによって相互に連結固定していたので、必然的に溶接58が必要であると共に、多量の溶接を施して両者を相互に固着しなければならなかった。
【0005】
このような多量の溶接作業は作業が困難でると共に、作業能率が悪い問題があった。かつこれ等の継手部材54を用いて一対の杭を接続した場合には、杭間に引張力が発生した時に、前記溶接58に大きな力が作用するので、この溶接58が極めて強固でない場合には剥離してしまう問題もあった。
【0006】
更に、前述の従来の杭の継手部構造に於いては、継手部材54の端板53の外周面の円筒側板側に傾斜面56aを有する鍔56を突設させなければならないので、旋盤加工等による多量の切削作業が必要となり、製造が困難になると共に、コスト高になる問題があった。
【0007】
本発明に係る杭の継手部構造は、前述の従来の多くの問題点に鑑み開発された全く新しい技術であって、特に円筒側板の継手端面側内周面にインロー用リング溝を設けると共に、円筒側板の継手端面側開口部内に挿入された端板の外周縁を該インロー用リング溝内に嵌着させることによって、該端板と円筒側板とを相互に固着して継手部材を構成するようにした新しい技術を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る杭の継手部構造は、前述の従来の問題点を根本的に改善した技術であって、その第1発明は、既製コンクリート杭本体の端部に端板と円筒側板及び補強バンドとよりなる継手部材が固着して構成された杭の継手構造において、前記円筒側板は、継手端面側内周面には前記端板の外周縁を嵌着するためのインロー用リング溝が形成されており、かつ、継手端面側外周には杭本体側から継手端面側に傾斜する傾斜面を有する鍔が突設して形成されており、かつ、外周壁にはネジ穴が穿設されており、かつ、杭本体側端部には前記補強バンドが定着されていることを特徴とする杭の継手構造である。
【0009】
前述の第1発明の杭の継手部構造に於いては、円筒側板の継手端面側内周面にインロー用リング溝が形成されているので、端板の外周縁をこのインロー用リング溝内に嵌着させることが出来、これによって円筒側板と端板とを相互に固着することが出来る。溶接による円筒側板と端板との接合を省略することも可能である。
【0010】
また、端板の外周縁が円筒側板の継手端面側のインロー用リング溝内に嵌着されているので、接合した一対の杭の間に軸方向の引張力が発生して両者の嵌合部に大きな力が作用した場合にも、充分に耐えることが出来、両者の接合部が離脱する心配がない。
【0011】
本発明に係る杭の継手部構造の第2発明は、第1発明に記載の杭の継手構造を有する杭の接続構造であって、内周面には一対の継手部材の円筒側板に当接した際にその円筒側板の外周面にそれぞれ突設された鍔を外周面から包み込むことができるような形状をしている所定数の接続片からなる接続部材が、継手部材の端板を対向させて長手方向に接合した一対の杭の継手部材の外周に配置されてこれらを接続していることを特徴とする杭の接続構造である。
【0012】
本発明に係る杭の継手部構造の第3発明は、前記接続片の内周面の一部には、前記鍔の傾斜面に密接し得る傾斜面が設けられていることを特徴とする第2発明に記載の杭の接続構造である。
【0013】
【発明の実施の形態】
図により本発明に係る杭の継手部構造の一実施例を具体的に説明すると、図1(A)は本発明の継手部構造に使用される継手部材の要部の縦断面説明図、図1(B)は同図(A)の継手部材の構成部品を示す要部の縦断面説明図、図2は図1(A)の継手部材を用いて構成した一対の杭の端部を接合した状態を示す要部の縦断面説明図である。
【0014】
図1(A),(B)及び図2に於いて、杭Aは予め設定された長さと径を持った既製コンクリート杭として形成されている。この杭Aは、型枠に於ける該杭Aの両端部に対応する位置に継手部材Bを配置すると共に張力を付与した図示しないPC棒材を配置し、更に、型枠に生コンクリートを打設し、遠心成型した後に硬化させることで、既製コンクリート本体1の両端部に継手部材Bを固着して製造されている。
【0015】
前記継手部材Bは、端板2と円筒側板3とによって構成されている。円筒側板3は、特に図1(A),(B)の要部の縦断面図によって明らかな如く、その継手端面側内周面には、所定の巾と深さを有するインロー用リング溝4が設けられ、かつこのインロー用リング溝4の継手端面側に接して(円筒側板3の継手端面側内周面には)傾斜切欠部5が形成されている。
【0016】
かつ、円筒側板3の継手端面側外周面に傾斜面6aを有する鍔6が突設されている。また、円筒側板3の外周壁には複数個のネジ穴7が穿設されている。この円筒側板3は、後述のように熱間圧延によって安価に大量生産することが出来る。
【0017】
前記端板2は、円筒側板3にインロー用リング溝4内に嵌入し得る直径と所定の肉厚とを有している。従って、端板2を円筒側板3のインロー用リング溝4内に嵌入した際には、特に図1(A)に示す如く、端板2の継手端面側は円筒側板3の継手端面側とが面一になるように予め構成されている。また、端板2の上面には図示せざるガイドピンの先端部を嵌入することが出来るピン穴8が穿設されている。
【0018】
更に、前述のように円筒側板3のインロー用リング溝4内に嵌入された端板2は、インロー用リング溝4の継手端面側に連続して設けられた傾斜切欠部5内に施された溶接9によって、円筒側板3により強固に固着されている。
【0019】
円筒側板3の内周面側であってネジ穴7に対応する位置には、該ネジ穴7を閉塞するための閉塞部材となる盲プレート10が溶接されている。この盲プレート10は杭Aを製造する際に、継手部材Bに充填されるコンクリートがネジ穴7に浸入することを防止するためのものであり、個々のネジ穴7を閉塞し得るようなリング状の部材であっても、六角穴付き止めねじを用いても良い。
【0020】
接続部材Cは、継手部材Bの端板2を対向させて長手方向に接合した一対の杭Aの継手部材Bの外周に配置されてこれらを接続するものであり、所定数の接続片11によって構成されている。この接続片11は、継手部材Bに於ける円筒側板3の外周を所定数に分割した円弧状に形成されている。
【0021】
この接続部材Cの接続片11は、特に図2によって明らかな如く、その内周面は、一対の継手部材Bの円筒側板3に当接した際に、その円筒側板3の外周面に夫々突設された鍔6を外周面から包み込むことが出来るような形状を有している。そして、その接続片11の内周面の一部には前記鍔6の傾斜面6aに密接し得る傾斜面11aが設けられている。
【0022】
前述の接続片11の外周には、前記円筒側板3に設けられたネジ穴7と同一のピッチで複数のボルト穴12が穿設されている。従って一対の継手部Bの外周面に当接された接続片11は、前記ボルト穴12に挿通された六角ボルト13の先端部をネジ穴7に螺合することによって固定されている。図中14はワッシャーである。
【0023】
次に、地中に打ち込まれた杭Aに新たな杭Aを接続する際の作業手順について説明する。
【0024】
新たな杭Aをクレーン等によって吊り上げて、該杭Aの継手部材Bを既に打ち込まれた杭Aの継手部材B上に対向させて当接させ、夫々の継手部材Bの円筒側板3に形成されたネジ穴7を一致させる。
【0025】
ネジ穴7が杭Aの軸線に沿って同一線上に一致した後、この状態を保持して接続片11を継手部材Bの周囲に配置し、接続片11のボルト穴8にワッシャー14を装着すると共に、六角ボルト13を挿通して継手部材Bのネジ穴7に螺合する。この作業を順に行って、継手部材Bの周囲を所定数の接続片11によって接続することで、既に打ち込まれた杭Aに新たな杭Aを接続することが可能である。
【0026】
そして一対の杭Aを接続した後、再度杭Aを打ち込むことで杭基礎を構築することが可能である。
【0027】
前述の円筒側板3は、既に記述したように平鋼を熱間圧延加工する際に、その内周面継手端面側にインロー用リング溝4と傾斜切欠部5とを同時に形成すると共に、その外周面継手端面側に傾斜面6aを持った鍔6を一体的に成形することが出来る。従って、平鋼を熱間圧延加工することによって、これ等のインロー用リング溝4、傾斜切欠部5及び鍔6を全てその圧延加工工程で一体的に加工出来るので、従来のように旋盤加工等によって多量の切削を施して加工する必要がなく、安価に大量生産することが出来る。
【0028】
前述の実施例に於ける継手部材Bは、円筒側板3のインロー用リング溝4内に端板2が嵌入されて構成されるので、必要に応じては前述のような溶接9を省略することが出来る。更に、端板2は円筒側板3のインロー用リング溝4内に嵌着されて強固に固着されているので、接合した一対の杭Aの間に軸方向の引張力が発生して両者の嵌合部に大きな力が作用した場合にも、充分に耐えることが出来、両者の接合部が離脱する心配がない。
【0029】
【発明の効果】
本発明に係る杭の継手部構造は、前述の構造と作用とを有するので、次のような多大な効果を有している。
【0030】
本発明に於いては、継手部材を構成するに当たって、円筒側板の継手端面側内周面にインロー用リング溝を設け、かつ端板の外周縁をこのインロー用リング溝内に嵌入して両者を固着したので、両者の結合に当たっては溶接を省略することが出来る。
【0031】
また、前記構造の継手部材を使用した場合には、接合した一対の杭の間に軸方向の引張力が発生した場合にも、充分に耐えることが出来、これによって両者の接合部が離脱する心配がない。
【0032】
継手部材の円筒側板を製造する際に、平鋼を熱間圧延加工した場合には、インロー用リング溝、傾斜切欠部及び鍔等を全て一体的に具備した円筒側板を製作することが出来、これによって複雑な旋盤加工を省略することが出来、安価に大量生産することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(A)は本発明の継手部構造に使用される継手部材の要部の縦断面説明図、図1(B)は同図(A)の継手部材の構成部品を示す要部の縦断面説明図である。
【図2】 図1(A)の継手部材を用いて構成した一対の杭の端部を接合した状態を示す要部の縦断面説明図である。
【図3】 図3(A)は従来の継手部材の要部の縦断面説明図、図3(B)は同図(A)の継手部材の構成部品を示す要部の縦断面説明図である。
【符号の説明】
A 杭
B 継手部材
C 接続部材
1 コンクリート
2 端板
3 円筒側板
4 インロー用リング溝
5 傾斜切欠部
6 鍔
6a 傾斜面
7 ネジ穴
8 ガイドピン穴
9 溶接
10 盲プレート
11 接続片
11a 傾斜面
12 ボルト穴
13 六角ボルト
14 ワッシャー
15 補強バンド
16 溶接
17 PC鋼材掛止用穴
Claims (3)
- 既製コンクリート杭本体の端部に端板と円筒側板及び補強バンドとよりなる継手部材が固着して構成された杭の継手構造において、
前記円筒側板は、継手端面側内周面には前記端板の外周縁を嵌着するためのインロー用リング溝が形成されており、かつ、継手端面側外周には杭本体側から継手端面側に傾斜する傾斜面を有する鍔が突設して形成されており、かつ、外周壁にはネジ穴が穿設されており、かつ、杭本体側端部には前記補強バンドが定着されていることを特徴とする杭の継手構造。 - 請求項1に記載の杭の継手構造を有する杭の接続構造であって、
内周面には一対の継手部材の円筒側板に当接した際にその円筒側板の外周面にそれぞれ突設された鍔を外周面から包み込むことができるような形状をしている所定数の接続片からなる接続部材が、継手部材の端板を対向させて長手方向に接合した一対の杭の継手部材の外周に配置されてこれらを接続していることを特徴とする杭の接続構造。 - 前記接続片の内周面の一部には、前記鍔の傾斜面に密接し得る傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の杭の接続構造。
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