JP4090033B2 - 亜硝酸亜鉛水溶液及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、亜硝酸亜鉛水溶液及びその製造方法に関し、特に極めて効率のよい金属表面処理を可能とし、ナトリウムイオン量が低減され、特に硫酸イオンとカルシウムイオンを実質的に含有しないので、特に金属の化成処理のクローズドシステム化を可能とすることができる亜硝酸亜鉛水溶液およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
亜硝酸亜鉛は、空気中で徐々に加熱すると100℃前後で酸化窒素を出して分解することは知られている。また、該亜硝酸亜鉛は、水に可溶であるが加水分解しやすく、水溶液を蒸発させるとオキシ亜硝酸亜鉛[ ZnO・Zn(NO2 )2 ] となることは知られている。
係る亜硝酸亜鉛の一般的な製造方法は、硫酸亜鉛と亜硝酸ソーダのエタノール溶液を混合して、沈澱を濾過した濾液を蒸発、濃縮して結晶を得る方法である。(“化学大辞典”昭和59年3月15日、共立出版株式会社発行、参照)
しかしながら、この方法は亜硝酸亜鉛と硫酸ナトリウムの溶解度の差により硫酸ナトリウムを分離除去する方法であるが、エタノールの使用や、蒸発、濃縮の操作が必要なことから、工業的にはコストアップの原因となり、またナトリウムイオンも残留する等の問題点を抱えている。
従って、工業的に高純度の亜硝酸亜鉛又はその水溶液を入手することは困難な状況である。
【0003】
また、一般的に金属表面に塗装を施す際の前処理工程としては、脱脂→水洗→皮膜化成処理→水洗→乾燥の各工程で構成されている。皮膜化成処理の方法の1つとして、鉄鋼の表面にりん酸亜鉛皮膜を形成する処理方法が一般的に採用されており、この目的の皮膜剤として、亜鉛をりん酸に溶解したものを水で希釈して処理液としている。これを「金属表面処理」と称している。
さらに、皮膜化成反応を促進するために亜硝酸ソーダ、塩素酸ソーダなどの薬剤を皮膜剤に添加しており、これらを通常は「促進剤」と称している。この促進剤は添加することにより化成処理温度をより低温でも可能にし、皮膜形成処理時間を短縮する効果がある。
【0004】
ところが、従来の亜硝酸ソーダや塩素酸ソーダなどのソーダ塩は処理浴を長期間使用しているうちにNaイオン濃度が高くなり、その結果処理浴のpHが上昇して化成皮膜の成分が処理浴中にスラッジとして沈澱するという問題を抱えている。また老化した処理液を回収して再生する場合、処理浴中にNaイオンがたまると浴バランスが崩れてしまい、回収した処理液からNaイオンを除去しなければならないという問題がある。通常、Naイオンを含む処理液は、産業廃棄物として処理せざるをえない状況である。
また、近年、金属表面処理液の業界でも環境問題が注目を集めており、処理浴のクローズドシステム化が検討されている。
このため、従来にもまして、スラッジの発生が少ない金属表面処理方法が検討されている。
【0005】
本発明者らは、先に硫酸亜鉛と亜硝酸カルシウムを反応させ、次いで精製を行って得られるナトリウムイオンや硫酸イオンを実質的に含まない金属表面処理用皮膜化成促進剤として有用な亜硝酸亜鉛水溶液を提案した(特願2000−141893号)。また、皮膜化成促進剤中にカルシウムイオンが存在すると、例えば、燐酸亜鉛化成処理液と混合した場合に燐酸カルシウムとして表面処理液中でスラッジ化することが知られている。通常、これらのスラッジは、定期的に回収され処理浴中に蓄積しないようにしている。しかしながら、そうしたスラッジの回収操作も煩雑であり、工業的に有利でない。
本発明者らは、更に、金属表面処理用皮膜化成促進剤として有用な亜硝酸亜鉛水溶液について研究を重ねた結果、ナトリウムイオンが低減され、特に硫酸イオンとカルシウムイオンを実質的に含有しない亜硝酸水溶液を見出した。
即ち、本発明は、極めて効率のよい金属の表面処理を可能とするナトリウムイオンが低減され、特に硫酸イオンとカルシウムイオンを実質的に含有しない亜硝酸亜鉛水溶液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる実情において、本発明は、亜鉛化合物と亜硝酸アルカリを原料として、イオン交換膜を隔膜として複分解反応により電解合成して得られる亜硝酸亜鉛水溶液中には、実質的に硫酸イオンと、カルシウムイオンを含まず、ナトリウムイオンも500〜2000ppmとなり、更に、該亜硝酸亜鉛水溶液を金属表面処理用皮膜化成促進剤に用いることにより、スラッジの発生が低減され、極めて効率のよい金属の表面処理が可能となると言う知見に基づいて完成したものである。
【0007】
即ち、本発明の第1の発明は、カルシウム(Ca)イオンを実質的に含有しない亜硝酸亜鉛水溶液であって、該亜硝酸亜鉛[ Zn(NO2 )2]水溶液の濃度をNO2 として10重量%で換算したときの溶液中のナトリウム(Na)イオン濃度が200〜2000ppm、且つ硫酸(SO4 )イオン濃度が20ppm以下であることを特徴とする亜硝酸亜鉛水溶液を提供するものである。
【0008】
また、本発明の第2の発明は、亜鉛化合物と亜硝酸アルカリを原料として、イオン交換膜を隔膜として複分解反応により合成することを特徴とする前記亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法を提供するものである。
前記反応は、陰極、陽極間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に配列することにより1つの濃縮室とそれを挟んだ2つの脱塩室とを有するユニットを備えた電気透析槽で行うものが好ましい。
また、前記一方の脱塩室に亜鉛化合物水溶液を、他方の脱塩室に亜硝酸アルカリ水溶液を供給し、該脱塩室に挟まれた濃縮室に陽イオン交換膜を通して亜鉛イ オンを、陰イオン交換膜を通して亜硝酸イオンを導入して亜硝酸亜鉛を得る方法が好ましい。
【0009】
また、本発明の第3の発明は、更に、安定化剤を含有する前記亜硝酸亜鉛水溶液を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の亜硝酸亜鉛水溶液は、一般式Zn(NO2 )2 で表される成分とH2 Oの任意の比率で混合されている溶液である。
また、従来の製造法による生成物を工業的に精製することは、非常に困難を伴うけれども、本発明に係る亜硝酸亜鉛水溶液は、ナトリウム(Na)イオンが低減され、特に硫酸イオン(SO4 )及びカルシウム(Ca)イオンを実質的に含有しないことにその特徴がある。
ここで、水溶液中の亜硝酸亜鉛の濃度は、亜鉛(Zn)イオン濃度と亜硝酸イオン濃度を測定し、Zn(NO2 )2 としての濃度である。亜鉛イオン濃度はICP発光分光法で、また亜硝酸(NO2 )イオン濃度は、イオンクロマトグラフィー法で求められるものである。
また、ナトリウム(Na)イオン、硫酸(SO4 )イオン、カルシウム(Ca)イオンは、共にICP発光分光法で求められるものである。なお、硫酸(SO4 )イオンは、イオウ(S)で測定したものを硫酸イオンに換算したものである。
【0011】
本発明におけるナトリウム(Na)イオン、硫酸(SO4 )イオン及びカルシウム(Ca)イオン濃度は、NO2 として10重量%に換算して算出し、ナトリウムイオンが200〜2000ppm、好ましくは500〜1500ppmであり、硫酸イオンが20ppm以下、好ましくは10ppm以下である。また、本発明において、カルシウム(Ca)イオンを実質的に含有しないとは、カルシウム(Ca)イオンが100ppm以下、好ましくは10ppm以下であることを示すものである。
【0012】
本発明に係る亜硝酸亜鉛水溶液は、亜硝酸イオン濃度が5〜15重量%、好ましくは9〜12重量%、Znイオン濃度が5〜10重量%、好ましくは7〜9重量%であり、Zn(NO2 )2 としての濃度は、10〜25重量%、好ましくは15〜20重量%である。
本発明に係る亜硝酸亜鉛水溶液は、ナトリウム(Na)イオン、特に、硫酸(SO4 )イオン及びカルシウム(Ca)イオン濃度が低減されていることから、これを金属表面処理用皮膜化成促進剤組成物に使用すると極めて効率のよい表面処理システムを設計することができる。
【0013】
次いで、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法について説明する。
本発明の亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法は、亜鉛化合物と亜硝酸アルカリを原料とし、水溶液中でイオン交換膜を隔膜として複分解反応により電解合成することを特徴とするものである。
本発明は、好ましくは次のようにして実施される。即ち、陰極、陽極間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に配列することにより1つの濃縮室とそれを挟んだ2つの脱塩室とからなるユニットを備えた電気透析槽において、各々の脱塩室はいずれも陽極側を陰イオン交換膜、陰極側を陽イオン交換膜で構成され、一方の陽極側の脱塩室に原料の亜鉛化合物水溶液を、他方の陰極側の脱塩室に亜硝酸アルカリ水溶液を供給し、電流を通電することにより、2つの脱塩室に挟まれた濃縮室に陽イオン交換膜を通して亜鉛イオンを、陰イオン交換膜を通して亜硝酸イオンを導入して、濃縮室に目的とする亜硝酸亜鉛水溶液を得るものである。
【0014】
亜鉛化合物水溶液は、水溶性の亜鉛化合物を水に溶解した水溶液であり、亜鉛化合物としては、例えば、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いられ、この中で工業的に入手しやすく、安価なこと から硫酸亜鉛が好ましい。
かかる亜鉛化合物の水溶液濃度は、特に制限はないが、好ましくは室温における飽和濃度以下であり、具体的には0.5〜2.0mol/L、好ましくは0.9〜1.3mol/Lである。
【0015】
もう一方の出発原料となる亜硝酸アルカリ水溶液は、水溶性の亜硝酸アルカリを水に溶解した水溶液であり、亜硝酸アルカリとしては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上で用いられ、この中で工業的に入手しやすく、安価なことから亜硝酸ナトリウムが好ましい。
かかる亜硝酸アルカリの水溶液濃度は、特に制限はないが、好ましくは室温における飽和濃度以下であり、具体的には、1.5〜6.0mol/L、好ましくは3.0〜4.5mol/Lである。
【0016】
本発明で用いることができる陽イオン交換膜としては、特に制限はなく、例えば、セレミオンCMV(旭硝子社製)、ネオセプタCM−1(徳山曹達社製)、Nafion324(デュポン社製)等が挙げられる。一方、陰イオン交換膜としては特に制限はなく、セレミオンAMV(旭硝子社製)、ネオセプタAM−1(徳山曹達社製)等が挙げられる。
【0017】
本発明の電気透析槽で使用される陽極および陰極は、用いる原料や電解槽の形状によって適宜材質と形状が定められ、具体的には、白金、鉄、銅、鉛等の金属系や炭素系材料が挙げられる。
【0018】
反応温度は、10〜50℃、好ましくは20〜40℃である。電流密度は1.0A/dm3 〜限界電流密度であり、好ましくは1.5〜5.0A/dm3 である。通電時間は、5〜50時間、好ましくは10〜40時間であるが、必ずしも これらの条件に限定されるものではない。
【0019】
更に、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法を図1に示した電気透析槽で実施する場合を詳しく説明する。
図1中の電気透析槽は、陽極側から陰極側へ、陰イオン交換膜(A1)、陽イオン交換膜(C1)、陰イオン交換膜(A2)、陽イオン交換膜(C2)を順次配置し、また、陽極室/脱塩室(I)/濃縮室(II)/脱塩室(III)/陰極室を順次備えた構成からなる。
陽極室、陰極室には、Na2SO4、NaCl、NH4Br等の電解質が供給される。また、脱塩室(I)には前記した亜鉛化合物水溶液を供給する。一方、脱塩室(III)には、前記した亜硝酸アルカリ水溶液を供給し、電流を通電することにより濃縮室(II)に亜硝酸亜鉛水溶液が製造される。
【0020】
濃縮室(II)で得られる亜硝酸亜鉛水溶液濃度は、通電時間が長くなるほど、亜硝酸亜鉛水溶液濃度が高くなるが、亜硝酸亜鉛[Zn(NO2 )2]水溶液の濃度をNO2 として10重量%で換算したときの溶液中のナトリウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度も高くなる傾向があることから、硫酸イオン濃度が20ppm以下、ナトリウムイオン濃度が2000ppm以下の範囲となるように、通電時間を制御することが好ましい。
かくすることにより得られる亜硝酸亜鉛水溶液は、亜硝酸イオン濃度が5〜15重量%、好ましくは9〜12重量%、Znイオン濃度が、5〜10重量%、好ましくは7〜9重量%、Zn(NO2 )2 としての濃度が、10〜25重量%、好ましくは15〜20重量%である。
【0021】
また、亜硝酸亜鉛[Zn(NO2 )2]水溶液の濃度をNO2 として10重量%で換算したときの溶液中の、ナトリウムイオン濃度が200〜2000ppm、好ましくは500〜1500ppm、硫酸イオン濃度が20ppm以下、好ましくは10ppm以下、カルシウムイオン濃度が100ppm以下、好ましくは10ppm以下であることから、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液は、金属表面処理用皮膜化成促進剤組成物として使用することができる。
【0022】
また、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法では、所望の亜硝酸亜鉛濃度の水溶液が得られるが、本発明では、亜硝酸亜鉛[Zn(NO2 )2]水溶液の濃度をNO2 として10重量%で換算したときの溶液中の不純物として、硫酸イオン濃度が20ppmより大きくなった場合には、所望により、残存する硫酸イオンを除去精製することができる。
係る精製方法は、下記のように例えば
(1)バリウムイオンを添加して硫酸バリウムとして沈澱させる方法
(2)陽イオン又は陰イオン交換樹脂に溶液を通過させる方法
(3)溶媒抽出方法
等があるが、(1)の方法で行うことが好ましい。
具体的には、残存する硫酸イオンに対して当量よりも僅かに過剰のバリウムイオンを添加すればよく、具体的には、残存する硫酸イオンに対して1.05〜1.5倍当量、好ましくは1.05〜1.2倍当量である。
【0023】
本発明の係る亜硝酸亜鉛水溶液は、防錆剤、特に金属表面処理用皮膜化成促進剤又はその組成物として好適に使用することが出来る。かかる皮膜化成促進剤は、皮膜化成反応を促進するために化成処理液に添加して金属表面に化成皮膜を形成させる成分である。
この時の化成皮膜は、例えばリン酸亜鉛皮膜、リン酸鉄皮膜、リン酸マンガン皮膜があるが、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液を皮膜化成促進剤として用いるのはリン酸亜鉛皮膜が好ましく、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液をリン酸亜鉛皮膜に用いた場合、リン酸亜鉛皮膜形成用処理浴の中で、亜硝酸亜鉛の亜硝酸イオンは亜硝酸ソーダの亜硝酸イオンと同様な促進効果があり、また亜鉛イオンはリン酸亜鉛皮膜の主成分であるので、亜硝酸亜鉛はアニオンとカチオンの両方が表面処理用薬剤としてそれぞれの効果を発揮することができる。
【0024】
また、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液は、ナトリウムイオンが低減され、特に硫酸イオンとカルシウムイオンを実質的に含有しないことから、そのまま該亜硝酸亜鉛水溶液を金属表面処理用皮膜化成促進剤として用いるか、又は該亜硝酸亜鉛水溶液を従来の化成促進剤と併用して用いることにより、スラッジの発生が低減され、金属表面処理のクローズシステム化を意図した場合においても、極めて効率のよい金属の表面処理が期待できる。
併用することができる他の金属表面処理用化成促進剤としては、特に制限はなく、例えば、亜硝酸、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、過酸化水素、塩素酸ソーダ、塩素酸アンモニウム、硝酸、硝酸ソーダ、硝酸アンモニウム、硝酸亜鉛、硝酸マンガン、硝酸コバルト、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸銅、ヒドロキシアミン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いられる。
【0025】
本発明の亜硝酸亜鉛水溶液は、金属表面処理用皮膜化成促進剤として用いる場合には、金属表面処理皮膜の特性や金属表面処理化成剤の特性を損なわない程度の範囲で、更に、安定化剤を含有させて低温でも結晶の析出を抑制して安定した組成の亜硝酸亜鉛水溶液として用いることができる。
このような安定化剤としては、例えば、亜硝酸アルカリ金属塩、糖、キレート剤が挙げられる。
亜硝酸アルカリ金属塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム等が挙げられる。
糖としては、しょ糖、ぶどう糖、還元麦芽糖、マンニット、キシリット、でんぷん等が挙げられる。
キレート剤としては、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、グリシン等が挙げられる。
上記した安定化剤は1種又は2種以上で併用し用いることができる。これらの安定化剤の添加量は、亜硝酸亜鉛水溶液に対して通常0.01〜2重量%である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すような5槽型のイオン交換膜による電気透析装置を使用して、陰イオン交換膜(旭硝子社製;セレミオンAMV)と陽イオン交換膜(旭硝子社製;セレミオンCMV)からそれぞれNO2 イオンとZnイオンのみを移動させて亜硝酸亜鉛水溶液を得た。なお、実験方法は以下のとおりである。
硫酸亜鉛7水塩575gをイオン交換水に溶解して、ZnSO4 で15重量%の水溶液を調製して、脱塩室(I)に入れた。また、亜硝酸ナトリウム600gをイオン交換水に溶解して、NaNO2 で30重量%の水溶液を調製して脱塩室(III)に入れた。
また、濃縮室(II)に亜硝酸亜鉛1.7重量%の水溶液を入れた。陽極室と陰極室にはNa2SO43.0重量%の水溶液を入れた。有効膜面積が約120cm2 の陰イオン交換膜(A1,A2)と陽イオン交換膜(C1,C2)を交互に図1のようにセットして形成した各室の溶液を、各室の溶液濃度の均一性を保つために、各々ポンプで循環しながら、各イオン交換膜に5Vの電圧を印加して、イオン交換膜による複分解反応を40時間行って、亜硝酸亜鉛水溶液試料を得た。なお、該亜硝酸亜鉛水溶液の亜硝酸亜鉛濃度が17.7重量%、亜硝酸亜鉛[Zn(NO2 )2]水溶液の濃度をNO2 として10重量%で換算したときの溶液中のナトリウムイオン1188ppm、硫酸イオン濃度が10ppm、カルシウムイオン濃度が1ppmであった。
また、透析時間による濃縮室(II)の亜硝酸亜鉛水溶液中のZnイオン濃度、NO2 イオン濃度の関係及びそれに伴うナトリウムイオン、硫酸イオン、カルシウムイオン含有量の関係を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
(実施例2〜5)
実施例1で調製した亜硝酸亜鉛濃度が17.7重量%、亜硝酸亜鉛[ Zn(NO2 )2]水溶液の濃度をNO2 として10重量%で換算したときの溶液中の、ナトリウムイオン1188ppm、硫酸イオン濃度が10ppm、カルシウムイオン濃度が1ppmのものに下記に示す安定化剤を添加し、密閉して5℃で30日間冷蔵庫に放置し、放置後、沈澱物の有無を目視により確認した。
表中の無は、沈澱物がないことを示す。
また、表2中の配合量は、亜硝酸亜鉛水溶液に対する配合量を示す。
【0029】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明した様に、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液は、ナトリウムイオン量が低減され、特に、硫酸イオンとカルシウムイオンが実質的に含有しないことが特徴であり、該亜硝酸亜鉛水溶液を金属表面処理用皮膜化成促進剤またはその組成物として用いて、例えばリン酸亜鉛系の表面処理剤に添加して鉄鋼や亜鉛の表面にリン酸亜鉛皮膜を形成させる場合には、処理浴中に不純物イオンの蓄積が少なく、また、スラッジの発生も低減され、液の交換頻度を大幅に低減できるだけでなく、クローズドシステム化を意図した場合においても、極めて効率のよい金属の表面処理が期待できる。
また、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法によれば、極めて工業的に有利な方法で、該亜硝酸亜鉛水溶液を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法に用いる電気透析槽を示す概略図である。
Claims (7)
- 実質的にカルシウム(Ca)イオンを含有しない亜硝酸亜鉛水溶液であって、該亜硝酸亜鉛[ Zn(NO2 )2]水溶液の濃度をNO2 として10重量%で換算したときの溶液中の、ナトリウム(Na)イオン濃度が200〜2000ppmで、且つ硫酸(SO4 )イオン濃度が20ppm以下であることを特徴とする亜硝酸亜鉛水溶液。
- 亜鉛化合物と亜硝酸アルカリを原料として、イオン交換膜を隔膜として複分解反応により合成することを特徴とする請求項1に記載された亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法。
- 前記反応は、陰極、陽極間を陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に配列することにより1つの濃縮室とそれを挟んだ2つの脱塩室とを有するユニットを備えた電気透析槽で行うことを特徴とする請求項2に記載の亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法。
- 前記一方の脱塩室に亜鉛化合物水溶液を、他方の脱塩室に亜硝酸アルカリ水溶液を供給し、該脱塩室に挟まれた濃縮室に陽イオン交換膜を通して亜鉛イオンを、陰イオン交換膜を通して亜硝酸イオンを導入して亜硝酸亜鉛を得ることを特徴とする請求項3に記載の亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法。
- 前記亜鉛化合物が硫酸亜鉛であり、亜硝酸アルカリが亜硝酸ナトリウムであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかの項に記載の亜硝酸亜鉛水溶液の製造方法。
- 更に、安定化剤を含有する請求項1記載の亜硝酸亜鉛水溶液。
- 前記安定化剤は、亜硝酸アルカリ金属塩、糖類又はキレート剤から選ばれるものである請求項6記載の亜硝酸亜鉛水溶液。
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