JP4138401B2 - 亜硝酸リチウム水溶液及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、亜硝酸リチウム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【技術技術】
亜硝酸リチウムは、コンクリート混和材、セメント防錆材、コンクリート内部の鉄筋腐食修繕などに広範囲に使用されている。亜硝酸リチウムの作用機構については、
(1)リチウムイオンがコンクリートの骨材中の反応性シリカと化学反応して、コンクリートの膨張を阻止する。(アルカリ骨材反応の防止)
(2)亜硝酸イオンが鉄筋から溶出した鉄イオンを不動態皮膜(Fe2O3)に再生し、鉄筋の腐食を食い止める。
(3)コンクリート中の塩素イオンの動きを抑制して、鉄筋を腐食する発錆抑制機能を有する。
(4)亜硝酸リチウムがアルカリ性を示すので、コンクリートの中性化防止機能を有する。
などが挙げられる。
【0003】
一方、亜硝酸リチウムの製造方法としては、
▲1▼ 塩化リチウムと亜硝酸銀の複分解反応により生成する方法(“化学大辞典”昭和59年3月15日、共立出版株式会社発行、参照)
▲2▼ 硫酸リチウムと亜硝酸バリウムの複分解反応する方法(“化学大辞典”昭和59年3月15日、共立出版株式会社発行、参照)
▲3▼ 水酸化リチウム懸濁液に活性な酸化窒素ガスを通じる方法(特開昭61−291409号公報)
4 硫酸リチウムと亜硝酸カルシウムの複分解反応
▲5▼ アルカリ金属塩水溶液を電解還元することによりアルカリ金属またはアンモニアの亜硝酸塩を製造する方法(特開昭55−50469号公報)
などが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの製造方法の中で、▲1▼の製造方法では、亜硝酸銀という特殊な薬剤を使用するために製造コストが高価になり、また副生する塩化銀の回収、利用についても対策が必要であり、工業的な製造方法とは言えない。
また、▲2▼の製造方法についても、亜硝酸バリウムという特殊な薬剤を使用して、副生する硫酸バリウムの回収、利用についても対策が必要であり、工業的な製造方法とは言えない。
【0005】
現在、亜硝酸リチウムは▲3▼の方法で工業的に製造されているが、▲3▼の方法には活性な酸化窒素ガスという極めて特殊な原料が必要であり、例えばアンモニア酸化により得られた酸化窒素ガスを水酸化リチウム懸濁液に吸収反応させて亜硝酸リチウム水溶液を得ている。
しかしながら、現状では▲3▼の方法で工業的に亜硝酸リチウムを製造している メーカーは国内1社だけであり、使用原料の特殊性により、だれでも製造できるわけではない。
【0006】
▲4▼の方法は上記▲1▼〜▲3▼の方法と比較すると比較的工業生産に向いている製造方法であるが、反応により硫酸カルシウムが副生し、この利用または処理が必要である。更に▲4▼の方法では、亜硝酸リチウム中に不純物のCaイオンが1%以上溶解しており、この方法からは純度の良い亜硝酸リチウムは得られない。
▲5▼の方法は、陽イオン交換膜により陰極室と陽極室に区分された電解槽の陰極室に硝酸塩を含む水溶液を供給し、該水溶液のpHを4以上に保持しつつ通電する方法である。係る方法によると、低い電流効率により収率が低いことなどの問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの現状に鑑み、市販の汎用薬剤を使用して、誰でも簡単に製造可能な亜硝酸リチウムの製造方法について研究し、本発明を完成させたものである。
【0008】
即ち、本発明は、亜硝酸リチウム[LiNO2]水溶液の濃度をLiNO2として、20重量%で換算したときの溶液中の不純物含有量としてナトリウム(Na)イオン濃度が200〜2000ppmで、且つ硫酸(SO4)イオン濃度が30ppm以下であることを特徴とする亜硝酸リチウム水溶液を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、リチウム化合物と亜硝酸アルカリとを原料として、イオン交換膜を隔膜として複分解反応により合成することを特徴とする前記記載の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法を提供するものである。
【0010】
前記反応は、陰極、陽極間を陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に配列することにより1つの濃縮室とそれを挟んだ2つの脱塩室とを有するユニットを備えた電気透析槽で行うことを特徴とする前記記載の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、前記一方の脱塩室にリチウム化合物水溶液を、他方の脱塩室に亜硝酸アルカリ水溶液を供給し、該脱塩室に挟まれた濃縮室に陽イオン交換膜を通してリチウムイオンを、陰イオン交換膜を通して亜硝酸イオンを導入して亜硝酸リチウム水溶液を得ることを特徴とする前記記載の亜硝酸リチウム水溶液を製造方法を提供するものである。
【0012】
前記リチウム化合物が硫酸ニッケルであり、亜硝酸アルカリが亜硝酸ナトリウムであることを特徴とする前記記載の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の亜硝酸リチウム水溶液は、一般式LiNO2で表される成分とH2Oの任意の比率で混合されている溶液である。
【0014】
また、工業的に精製することは、非常に困難な化合物であるけれども本発明に係る亜硝酸リチウム水溶液は、ナトリウム(Na)イオン濃度が200〜2000ppmで、且つ硫酸(SO4)イオンが30ppm以下であることが特徴である。
ここで、水溶液中の亜硝酸リチウムの濃度は、リチウム(Li)イオン濃度と亜硝酸イオン濃度を測定し、LiNO2 としての濃度である。リチウムイオン濃度はICP発光分光法で、また亜硝酸(NO2 )イオン濃度は、イオンクロマトグラフィー法で求められるものである。
【0015】
また、不純物のナトリウム(Na)イオン、硫酸(SO4 )イオンは、共にICP発光分光法で求められるものである。なお、硫酸(SO4 )イオンは、イオウ(S)で測定したものを硫酸イオンに換算したものである。
【0016】
本発明における不純物濃度は、LiNO2 として20重量%に換算して算出し、ナトリウムイオンが200〜2000ppm、好ましくは500〜1500ppmであり、硫酸イオンが30ppm以下、好ましくは20ppm以下である。本発明に係る亜硝酸リチウム水溶液は、亜硝酸イオン濃度が5〜15重量%、好ましくは9〜12重量%、Liイオン濃度が5〜10重量%、好ましくは7〜9重量%であり、LiNO2としての濃度は、10〜25重量%、好ましくは15〜20重量%である。
【0017】
本発明に係る亜硝酸リチウム水溶液は、ナトリウム(Na)イオン、特に、硫酸(SO4 )イオン濃度が低減されていることから、これを金属表面の防錆等の金属表面処理剤やコンクリート添加剤に使用すると極めて優れた金属表面防錆効果やコンクリートの劣化を防止することができる。
【0018】
次いで、本発明の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法について説明する。
本発明の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法は、リチウム化合物と亜硝酸アルカリを原料とし、水溶液中でイオン交換膜を隔膜として複分解反応により電解合成することを特徴とするものである。
【0019】
本発明は、好ましくは次のようにして実施される。即ち、陰極、陽極間を陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に配列することにより1つの濃縮室とそれを挟んだ2つの脱塩室とからなるユニットを備えた電気透析槽において、各々の脱塩室はいずれも陽極側を陰イオン交換膜、陰極側を陰イオン交換膜で構成され、一方の陽極側の脱塩室に原料のリチウム化合物水溶液を、他方の陰極側の脱塩室に亜硝酸アルカリ水溶液を供給し、電流を通電することにより、2つの脱塩室に挟まれた濃縮室に陽イオン交換膜を通してリチウムイオンを、陰イオン交換膜を通して亜硝酸イオンを導入して、濃縮室に目的とする亜硝酸リチウム水溶液を得るものである。
【0020】
リチウム化合物水溶液は、水溶性のリチウム化合物を水に溶解した水溶液であり、リチウム化合物としては、例えば、硫酸リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、燐酸リチウム等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上で用いられ、この中で工業的に入手しやすく、安価なこと から硫酸リチウムが好ましい。
【0021】
かかるリチウム化合物の水溶液濃度は、特に制限はないが、好ましくは室温における飽和濃度以下であり、具体的には0.5〜3.0mol/L、好ましくは1.0〜2.5mol/Lである。
もう一方の出発原料となる亜硝酸アルカリ水溶液は、水溶性の亜硝酸アルカリを水に溶解した水溶液であり、亜硝酸アルカリとしては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上で用いられ、この中で工業的に入手しやすく、安価なことから亜硝酸ナトリウムが好ましい。かかる亜硝酸アルカリの水溶液濃度は、特に制限はないが、好ましくは室温における飽和濃度以下であり、具体的には、1.5〜6.0mol/L、好ましくは3.0〜4.5mol/Lである。
【0022】
本発明で用いることができる陽イオン交換膜としては、特に制限はなく、例えば、セレミオンCMV(旭硝子社製)、ネオセプタCM−1(徳山曹達社製)、Nafion324(デュポン社製)等が挙げれる。一方、陰イオン交換膜としては、特に制限はなく、セレミオンAMV(旭硝子社製)、ネオセプタAM−1(徳山曹達社製)等が挙げられる。
【0023】
本発明の電気透析槽で使用される陽極および陰極は、用いる原料や電解槽の形状によって適宜材質と形状が定められ、具体的には、白金、鉄、銅、鉛等の金属系や炭素系材料が挙げられる。
反応温度は、10〜50℃、好ましくは20〜40℃である。電流密度は1.0A/dm3 〜限界電流密度であり、好ましくは1.5〜5.0A/dm3 である。通電時間は、5〜50時間、好ましくは10〜40時間であるが、必ずしもこれらの条件に限定されるものではない。
【0024】
更に本発明の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法を図1に示した電気透析槽で実施する場合を詳しく説明する。
本発明の電気透析装置の概略図を図1に示す。
【0025】
図1中の電気透析槽は、陽極側から陰極側へ、陰イオン交換膜(A1)、陽イオン交換膜(C1)、陰イオン交換膜(A2)、陽イオン交換膜(C2)を順次配置し、また、陽極室/脱塩室(l)/濃縮室(l)/脱塩室(ll)/陰極室を順次備えた構成からなる。
【0026】
陽極室、陰極室には、Na2SO4、NaCl、NH4Br等の電解質が供給される。また、脱塩室(1)には前記したリチウム化合物水溶液を供給する。一方、脱塩室(2)には、前記した亜硝酸アルカリ水溶液を供給し、電流を通電することにより濃縮室に亜硝酸リチウム水溶液が製造される。
【0027】
濃縮室で得られる亜硝酸リチウム水溶液濃度は、通電時間が長くなるほど、亜硝酸リチウム水溶液濃度が高くなるが、同時に、水溶液中の不純物として含有されるナトリウムイオン濃度および硫酸イオン濃度も高くなる傾向があることから、硫酸イオン濃度が30ppm以下、ナトリウムイオン濃度が2000ppm以下の範囲となるように、通電時間を制御することが好ましい。
【0028】
かくすることにより得られる亜硝酸リチウム水溶液は亜硝酸イオン濃度が5〜25重量%、好ましくは10〜25重量%、リチウムイオン濃度が0.7〜3%、好ましくは1〜3%、LiNO2としての濃度が5〜30重量%、好ましくは15〜30%である。
【0029】
また、亜硝酸リチウム(LiNO2)水溶液の濃度をLiNO2 として20重量%で換算したときの溶液中の不純物として、ナチリウムイオン濃度が200〜2000ppm、好ましくは500〜1500ppm、硫酸イオン濃度が30ppm以下、好ましくは20ppm以下であることから、本発明の亜硝酸リチウム水溶液は、コンクリート混和剤、セメント防錆剤、鉄筋腐食防止剤、鉄筋腐食補修剤、金属表面処理剤等として利用することができる。
【0030】
本発明の亜硝酸リチウム水溶液は、アルカリ骨材反応を起こす骨材が配合された硬化コンクリートのアルカリ骨材反応による劣化を完全に防ぐことを可能にする。また、コンクリート中に含まれる塩素イオンによる塩害を防止することを可能とする。更に、係る亜硝酸リチウム水溶液を、金属表面に塗布することにより腐食防止効果を付与することができる。
【0031】
【実施例】
以下本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
実施例1
図1に示すような5槽型のイオン交換膜による電気透析装置を使用して、陰イオン交換膜(旭硝子社製;セレミオンAMV)と陽イオン交換膜(旭硝子社製;セレミオンCMV)から、それぞれNO2イオンとLiイオンのみを移動させて亜硝酸リチウム水溶液を得た。なお、実験方法は以下のとおりである。
硫酸リチウム1水塩をイオン交換水に溶解して、Li2SO4で20重量%の水溶液を調製して脱塩室(1)に入れた。また、亜硝酸ナトリウムをイオン交換水に溶解して、NaNO2で30重量%の水溶液を調製して脱塩室(2)に入れた。また、濃縮室には、亜硝酸リチウム0.5重量%の水溶液を入れた。陽極室と陰極室にはNa2SO4 3.0重量%の水溶液を入れた。有効膜面積が約120〓の陰イオン交換膜(A1,A2)と陽イオン交換膜(C1,C2)を交互に図−1のようにセットして形成した各室の溶液を、各室の溶液濃度の均一性を保つために各々ポンプで循環しながら、各イオン交換膜に6Vの電圧を印加して、イオン交換膜による複分解反応を30時間行って、亜硝酸リチウム水溶液試料を得た。得られた亜硝酸リチウム水溶液はLiNO2=22.99重量%であり、不純物イオンとしては、Naイオンが1238ppm、SO4イオンが21ppm、Caイオンは不検出(1ppm以下)であった。また、透析時間による濃縮室の亜硝酸リチウム水溶液中のリチウムイオン濃度、亜硝酸イオン濃度の関係およびそれに伴う不純物量の関係を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
比較例1
硫酸リチウム1水塩(試薬)をイオン交換水に溶解して、Li2SO4=20重量%の水溶液を得た。亜硝酸カルシウム水溶液(日産化学社製 CANI−30;Ca(NO2)2=30重量%)1800gを5Lのガラスビーカーに入れ、攪拌しながら、ここに20%Li2SO4水溶液2250gを約30分間で添加した。添加終了後、30分間攪拌を継続した後
ろ過して、ろ液のLiNO2濃度を分析したところ、12.94%であった。ろ液中の不純物の分析結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2の分析値は実施例1の分析値と比較して、Caイオン、SO4イオンの不純物が多いことが明瞭である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の亜硝酸リチウム水溶液は、不純物としてのナトリウムイオン量が少なく、硫酸イオンが実質的に含有しないことが特徴である。本発明の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法によれば、極めて工業的に有利な方法で、該亜硝酸リチウム水溶液を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法に用いる電気透析槽を示す概略図である。
Claims (5)
- 亜硝酸リチウム[LiNO2]水溶液の濃度をLiNO2として、20重量%で換算したときの溶液中の不純物含有量としてナトリウム(Na)イオン濃度が200〜2000ppmで、且つ硫酸(SO4)イオン濃度が30ppm以下であることを特徴とする亜硝酸リチウム水溶液。
- リチウム化合物と亜硝酸アルカリとを原料として、イオン交換膜を隔膜として複分解反応により合成することを特徴とする請求項1記載の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法。
- 前記反応は、陰極、陽極間を陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に配列することにより1つの濃縮室とそれを挟んだ2つの脱塩室とを有するユニットを備えた電気透析槽で行うことを特徴とする請求項2記載の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法。
- 前記一方の脱塩室にリチウム化合物水溶液を、他方の脱塩室に亜硝酸アルカリ水溶液を供給し、該脱塩室に挟まれた濃縮室に陽イオン交換膜を通してリチウムイオンを、陰イオン交換膜を通して亜硝酸イオンを導入して亜硝酸リチウム水溶液を得ることを特徴とする請求項3記載の亜硝酸リチウム水溶液を製造方法。
- 前記リチウム化合物が硫酸ニッケルであり、亜硝酸アルカリが亜硝酸ナトリウムであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかの項に記載の亜硝酸リチウム水溶液の製造方法。
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