JP4089202B2 - 水性含フッ素樹脂塗料用組成物および塗装物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性含フッ素樹脂塗料用組成物および塗装物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、金属、無機材料、プラスチック、木材、紙、皮革、繊維等からなる製品は、その表面の保護、意匠性および機能性の付与等の目的で表面被覆され、また、該表面被覆のための種々の塗料が開発されている。
近年、特に都市部では屋外建造物の雨筋汚染が問題になり、それを改善する塗料の開発が要請され、種々の手法が検討されてきた。
【0003】
(1)特開平8−311290公報には、(c)架橋剤、(d)該架橋剤と反応する官能基を有する親水性高分子化合物、(e)水、(f)水溶性有機溶剤、および(g)可塑剤を含有することを特徴とする吸液材料用組成物が記載されている。該吸液材料用組成物においては、エチレングリコールジグリシジルエーテル((c)成分)、N−ビニルアセトアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合体((d)成分)、精製水((e)成分)、エタノール((f)成分)、およびエチレングリコール((g)成分)が具体的に用いられている。
【0004】
(2)特開2001−72928公報には、(h)有機合成樹脂のエマルション、(i)カップリング剤、および(j)該カップリング剤と反応し得る基を有する親水化用有機化合物からなる低汚染型水性塗料用樹脂組成物が記載されている。該水性塗料用樹脂組成物の一例として、含フッ素樹脂エマルション((h)成分)、アルミニウムキレート((i)成分)、および水溶性アクリル系樹脂((j)成分)からなる組成物が具体的に挙げられている。
【0005】
しかし、前記(1)の吸液材料用組成物や前記(2)の水性塗料用樹脂組成物から得られる塗膜は、帯電防止性、耐埃付着性、低汚染性、耐汚れ性および耐雨筋汚染性が不充分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各種物品表面に優れた低汚染性、耐汚れ性、耐雨筋汚染性(以下、これらをまとめて耐汚染性と記すことがある。)、帯電防止性および耐埃付着性を有する塗膜を形成し得る水性含フッ素樹脂塗料用組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、耐汚染性、帯電防止性および耐埃付着性に優れた塗膜を有する塗装物品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(イ)本発明は、フッ素含有率(質量基準)5%以上の含フッ素樹脂(A)の100質量部に対し、下記低汚染化剤(B)の0.1〜100質量部を含有することを特徴とする水性含フッ素樹脂塗料用組成物を提供する。
低汚染化剤(B):下記(1)の重合単位(a)を含有し、必要により該重合単位(a)以外の重合単位(b)を含有する重合体(ただし、多フッ素化炭素鎖含有基および親水性基を有するフルオロオレフィン系共重合体を除く。)からなる。
(1)−[CH2−C(R1)(N(R2)(COR3))]−
(ただし、R1〜R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基またはエチル基である。)
(ロ)また、本発明は、前記塗料用組成物を用いて形成された塗膜を有することを特徴とする塗装物品を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、含フッ素樹脂(A)の形態としては水系のものが使用できる。
含フッ素樹脂(A)としては、含フッ素単量体の重合体または該含フッ素単量体と含フッ素単量体以外の単量体との共重合体が挙げられる。
含フッ素単量体としては、フルオロオレフィン類、ポリフルオロアルキル基を有する単量体等が挙げられる。含フッ素単量体は、単独で使用されてもよいし、または2種以上で併用されてもよい。含フッ素単量体としては、特にフルオロオレフィン類が耐候性に優れるので好ましい。
【0009】
フルオロオレフィン類の具体例としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。
【0010】
ポリフルオロアルキル基を有する単量体としては、CH2=CR4COOR5Rf、CH2=CR4COO(CH2)nNR6SO2Rf、CH2=CR4COO(CH2)nNR6CORf、CH2=CR4COOCH2CH(OH)(CH2)nRf等が挙げられる。ただし、nは1〜10の整数を、Rfは炭素数1〜18のポリフルオロアルキル基を、R4は水素原子またはメチル基を、R5は炭素数1〜6の2価有機基を、R6は水素原子または炭素数1〜6の1価有機基を、それぞれ示す。
【0011】
Rfは直鎖状でも、分岐状でもよく、エーテル性の酸素原子を含んでもよい。Rfの具体例としては、CF3、CF3CF2、H(CF2)2、CF3(CF2)2、CF3(CF2)3、H(CF2)4、CF3(CF2)4、CF3(CF2)5、CF3(CF2)2OCF(CF3)、H(CF2)6、CF3(CF2)6、CF3(CF2)7、H(CF2)8、CF3(CF2)8、CF3(CF2)9、CF3CF(CF3)(CF2)6、CF3(CF2)10、H(CF2)10、CF3(CF2)11、H(CF2)14、CF3(CF2)15、CF3(CF2)17等が挙げられる。
【0012】
R5の具体例としては、CH2、CH2CH2、CH(CH3)、CH2CH2CH2、C(CH3)2、CH(CH2CH3)、CH2CH2CH2CH2、CH(CH2CH2CH3)、CH2(CH2)3CH2、CH(CH2CH(CH3)2)等が挙げられる。
【0013】
R6の具体例としては、水素原子、またはCH3、CH3CH2、CH3CH2CH2、CH3CH2CH2CH2等が挙げられる。
【0014】
含フッ素単量体以外の単量体としては、含フッ素単量体と共重合可能な単量体が用いられる。具体例としては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、共役ジエン類等が挙げられる。また、多官能重合性二重結合を有する化合物や、官能基を有する単量体も挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書においては、「(メタ)アクリル酸」をアクリル酸とメタクリル酸を総称する用語として使用する。「メタアクリレート」、「メタアクリロイル」、「メタアクリルアミド」、「メタアクリロニトリル」などにおいても同様である。
【0015】
炭化水素系オレフィン類の具体例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。
ビニルエーテル類の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、イソヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、4−メチル−1−ペンチルビニルエーテル等の鎖状アルキルビニルエーテル類、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等の芳香族基含有ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0016】
イソプロペニルエーテル類の具体例としては、メチルイソプロペニルエーテル、エチルイソプロペニルエーテル、n−プロピルイソプロペニルエーテル、n−ブチルイソプロペニルエーテル等が挙げられる。
アリルエーテル類の具体例としては、エチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等が挙げられる。
【0017】
ビニルエステル類の具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクタン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、オクタデカン酸ビニル等が挙げられる。
アリルエステル類の具体例としては、酢酸アリル、プロピオン酸アリル等が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。
【0020】
クロロオレフィン類の具体例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化イソプロペニル、塩化アリル等が挙げられる。
共役ジエン類の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0021】
多官能重合性二重結合を有する化合物の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、アリル(メタ)アクリレート、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコール(メタ)ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
官能基を有する単量体としては、ヒドロキシメチル基を有する単量体、アルデヒド性カルボニル基を有する単量体、ケトン性カルボニル基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体またはその酸無水物もしくはその塩、エポキシ基を有する単量体、アミノ基を有する単量体もしくはその塩、オキサゾリン残基を有する単量体、アミド残基を有する単量体、アルコキシ基を有する単量体、加水分解性シリル基を有する単量体、水酸基(ただし、ヒドロキシメチル基における水酸基を除く。)を有する単量体、スルホ基を有する単量体もしくはその塩、リン酸残基を有する単量体もしくはその塩、双性イオンを有する単量体、シアノ基を有する単量体等が挙げられる。
【0023】
なお、本明細書において、アルデヒド性カルボニル基およびケトン性カルボニル基におけるカルボニルとは、ケトンおよびアルデヒドを表し、エステル、アミド、カルボキシは除く。
【0024】
ヒドロキシメチル基を有する単量体の具体例としては、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
アルデヒド性カルボニル基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、β−ホルミルスチレン、β−ホルミル−α−メチルスチレン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α−ジアルキルプロパナール類等が挙げられる。β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α−ジアルキルプロパナール類の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α−ジメチルプロパナール、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α−ジエチルプロパナール、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α−ジプロピルプロパナール、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α−メチル−α−ブチルプロパナール、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α,β−トリメチルプロパナール等が挙げられる。
【0026】
ケトン性カルボニル基を有する単量体の具体例としては、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルn−プロピルケトン、ビニルイソプロピルケトン、ビニルn−ブチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ビニルtert−ブチルケトン、ビニルフェニルケトン、ビニルベンジルケトン、ジビニルケトン、(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルレート等が挙げられる。
【0027】
さらに、ケトン性カルボニル基を有する単量体としては、活性メチレン部位を有する単量体であってもよく、具体的には、アリルアセトアセテート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、3−(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)ブチル(メタ)アクリレート、3−(アセトアセトキシ)ブチル(メタ)アクリレート、4−(アセトアセトキシ)ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
カルボキシ基を有する単量体またはその酸無水物もしくはその塩の具体例としては、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、またはそれらの酸無水物(マレイン酸無水物など)もしくはそれらの塩等が挙げられる。
エポキシ基を有する単量体の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン等が挙げられる。
【0029】
アミノ基を有する単量体もしくはその塩の具体例としては、2−N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアミン、もしくはそれらの塩等が挙げられる。
【0030】
オキサゾリン残基を有する単量体の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリンが挙げられる。
アミド残基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0031】
アルコキシ基を有する単量体の具体例としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
さらに、アルコキシ基を有する単量体としては、末端がアルコキシ基であるPOA鎖を有する単量体であってもよい。なお、本明細書においてPOA鎖とはポリオキシアルキレン鎖をいう。例えば、CH2=CHOCH2C6H10CH2O(C2H4O)kCH3(ここで、kは1〜100の整数、以下同じ。)、CH2=CHOC4H8O(C2H4O)kCH3、CH2=CHCOOC2H4O(C2H4O)kCH3、CH2=C(CH3)COOC2H4O(C2H4O)kCH3、CH2=CHCOOC2H4O(C2H4O)m(C3H6O)nCH3(ここで、mは0または1〜100の整数であり、nは1〜100の整数であり、m+nは1〜100である。以下同じ。)、CH2=C(CH3)COOC2H4O(C2H4O)m(C3H6O)nCH3等が挙げられる。
【0033】
POA鎖を有し、かつ、末端がアルコキシ基である前記単量体の市販品としては、M−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AM−90G(以上、新中村化学工業社製)、PME−100、PME−200、PME−400(以上、日本油脂社製)等が挙げられる。
【0034】
加水分解性シリル基を有する単量体の具体例としては、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0035】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルなどのヒドロキシアルキルアリルエーテル等が挙げられる。また、ビニルフェノール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
さらに、水酸基を有する単量体としては、末端が水酸基であるPOA鎖を有する単量体であってもよい。例えば、CH2=CHOCH2C6H10CH2O(C2H4O)kH(ここで、kは1〜100の整数、以下同じ。)、CH2=CHOC4H8O(C2H4O)kH、CH2=CHCOOC2H4O(C2H4O)kH、CH2=C(CH3)COOC2H4O(C2H4O)kH、CH2=CHCOOC2H4O(C2H4O)m(C3H6O)nH(ここで、mは0または1〜100の整数であり、nは1〜100の整数であり、m+nは1〜100である。以下同じ。)、CH2=C(CH3)COOC2H4O(C2H4O)m(C3H6O)nH等が挙げられる。
【0037】
POA鎖を有し、かつ、末端が水酸基である前記単量体の市販品としては、PE−90、PE−200、PE−350、AE−400、PP−500、PP−800、PP−1000、AP−400、50PEP−300、70PEP−350B(以上、日本油脂社製)等が挙げられる。
【0038】
スルホ基を有する単量体もしくはその塩の具体例としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−ヒドロキシアリルオキシ−1−プロパンスルホン酸、スルホエトキシアクリレート、スルホエトキシメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、もしくはそれらの塩等が挙げられる。
【0039】
リン酸残基を有する単量体もしくはその塩の具体例としては、リン酸2−アクリロイルオキシエチルエステル、リン酸2−メタクリロイルオキシエチルエステル、もしくはそれらの塩等が挙げられる。
双性イオンを有する単量体の具体例としては、ホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
シアノ基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、ケイ皮酸ニトリル等が挙げられる。
【0041】
本発明において、含フッ素樹脂(A)におけるフッ素含有率(質量基準)は5%以上である。耐候性、耐埃付着性を考慮すると、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。
含フッ素単量体以外の単量体を共重合することにより、顔料の分散性の改良、塗膜の造膜性や下地への密着性の向上、硬度の向上、強度の向上、伸度の向上、光沢値の向上等の効果が得られることがある。
【0042】
含フッ素単量体と含フッ素単量体以外の単量体との共重合体においては、耐候性、基材密着性および顔料分散性を考慮すると、含フッ素単量体の共重合割合は、好ましくは30〜90モル%、より好ましくは40〜80モル%である。
含フッ素単量体以外の単量体の共重合割合は、好ましくは10〜70モル%、より好ましくは20〜60モル%である。官能基を有する単量体が共重合される場合には、官能基を有する単量体の共重合割合は、好ましくは1〜20モル%、より好ましくは2〜15モル%である。
【0043】
本発明においては、塗料用樹脂として含フッ素樹脂(A)と他の樹脂の混合物を使用してもよい。なお、本発明において塗料用樹脂を混合物として用いる場合には、該混合物全体のフッ素含有率(質量基準)を5%以上にする必要がある。該混合物全体のフッ素含有率についても、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。また、他の樹脂としてはアクリル樹脂が耐雨筋汚染性の持続性に優れるので好ましい。含フッ素樹脂/アクリル樹脂の混合比(質量基準)は、好ましくは100/0〜20/80、より好ましくは100/0〜50/50である。
【0044】
本発明における低汚染化剤(B)は、下記(1)の重合単位(a)(以下、単位(a)と記すことがある。)を含有し、必要により該単位(a)以外の重合単位(b)を含有する重合体(ただし、多フッ素化炭素鎖含有基および親水性基を有するフルオロオレフィン系共重合体を除く。)からなる。該単位(a)は、通常は下記(2)の重合性単量体を重合させることにより重合体に導入できる。また、反応部位を有する重合体に適宜化合物を反応させる各種変性方法によっても、単位(a)を重合体に導入できる。以下、単位(a)を与える重合性単量体(下記(2))を典型例として挙げて説明する。
(1)−[CH2−C(R1)(N(R2)(COR3))]−
(2)CH2=C(R1)(N(R2)(COR3))
ただし、上記(1)および(2)において、R1〜R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0045】
本発明において、単位(a)としては、上記(1)におけるR1およびR2が水素原子であり、かつ、R3が水素原子またはメチル基である場合が特に好ましい。すなわち、単位(a)は、N−ビニルホルムアミドおよびN−ビニルアセトアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から得られる重合単位が特に好ましい。したがって、上記(2)の重合性単量体として、N−ビニルホルムアミドおよびN−ビニルアセトアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体を採用するのが好ましい。
単位(a)は一種類で用いてもよいし、二種以上の併用であってもよい。
【0046】
本発明における低汚染化剤(B)において、単位(a)の含有割合(質量基準)は、特に限定されないが、好ましくは10〜100%である。単位(a)の含有割合は多い方が耐汚染性の点で良好である。特に好ましくは30〜100%である。
【0047】
本発明における低汚染化剤(B)においては、必要により前記単位(a)以外の重合単位(b)(以下、単位(b)と記すことがある。)が含有されてもよい。単位(b)の少なくとも一種は、(a)に含まれる官能基以外の架橋性官能基を有する重合単位(β1)(以下、単位(β1)と記すことがある。)であることが好ましい。さらに、単位(b)としては、単位(a)以外かつ単位(β1)以外の重合単位(β2)(以下、単位(β2)と記すことがある。)が挙げられる。単位(b)として、単位(β1)と単位(β2)とを併用してもよい。
【0048】
単位(β1)を与える重合性単量体としては、架橋反応に一般的に用いられる架橋性官能基を有する単量体が挙げられる。例えば、単位(β1)を与える重合性単量体としては、単位(a)に含まれる官能基以外のアミド残基を有する単量体、アルデヒド性カルボニル基を有する単量体、ケトン性カルボニル基を有する単量体、水酸基(ただし、ヒドロキシメチル基における水酸基を除く。)を有する単量体、ヒドロキシメチル基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体またはその酸無水物もしくはその塩、エポキシ基を有する単量体、アミノ基を有する単量体もしくはその塩、オキサゾリン残基を有する単量体、イソシアネート残基を有する単量体、多官能重合性二重結合を有する化合物、シアノ基を有する単量体、加水分解性シリル基を有する単量体、アルコキシ基を有する単量体、スルホ基を有する単量体もしくはその塩、リン酸残基を有する単量体もしくはその塩が挙げられる。
【0049】
単位(β1)を与える重合性単量体としての、単位(a)に含まれる官能基以外のアミド残基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0050】
単位(β1)を与える重合性単量体としての、アルデヒド性カルボニル基を有する単量体、ケトン性カルボニル基を有する単量体、水酸基を有する単量体、ヒドロキシメチル基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体もしくはその塩、エポキシ基を有する単量体、アミノ基を有する単量体もしくはその塩、およびオキサゾリン残基を有する単量体の具体例としては、前記の各単量体の具体例が挙げられる。
単位(β1)を与える重合性単量体としての、イソシアネート残基を有する単量体の具体例としては、ビニルイソシアネート、イソシアネートエチルアクリレートが挙げられる。
【0051】
また、単位(β1)を与える重合性単量体としての、多官能重合性二重結合を有する化合物、シアノ基を有する単量体、加水分解性シリル基を有する単量体、アルコキシ基を有する単量体、スルホ基を有する単量体もしくはその塩、およびリン酸残基を有する単量体もしくはその塩の具体例としては、前記の各単量体の具体例が挙げられる。
【0052】
本発明における低汚染化剤(B)においては、単位(β1)は一種類で用いてもよいし、二種以上の併用であってもよい。単位(β1)の含有割合(質量基準)は、0.01%以上かつ70%未満が好ましい。耐汚染性およびその持続性を考慮すると、特に好ましくは1〜30%である。
【0053】
単位(β2)を与える重合性単量体としては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類および共役ジエン類が挙げられる。これらの各重合性単量体の具体例としては、前記の各単量体の具体例が挙げられる。
【0054】
本発明における低汚染化剤(B)においては、単位(β2)は一種類で用いてもよいし、二種以上の併用であってもよい。単位(β2)の含有割合(質量基準)は、69.99%未満が好ましい。耐汚染性を考慮すると、特に好ましくは0〜50%である。
【0055】
本発明における低汚染化剤(B)の分子量は、数平均分子量で71〜1000000が好ましく、500〜100000がより好ましい。数平均分子量がこの範囲であると、耐汚染性がより良好である。
【0056】
本発明における低汚染化剤は、以下の方法によって合成できる。すなわち、前記の単位(a)を与える単量体を、必要により単位(b)を与える単量体とともに、溶媒に溶解して加熱し、重合開始剤を加えて反応させる方法である。
【0057】
前記合成方法における溶媒としては、水溶性の溶媒が好ましい。例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、メチルアセテート、エチルアセテート、2,2−ジクロロジエチルエーテル、クロロプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合安定性、溶媒置換の容易性の点から、メタノールまたはアセトンが好ましい。
【0058】
重合開始剤としては、公知の有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。有機過酸化物、無機過酸化物は、還元剤と組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチル−α−クミルパーオキシド等が挙げられる。
無機過酸化物としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過炭酸塩等が挙げられる。
【0060】
アゾ化合物としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。
【0061】
さらに、分子量を調整するため、公知の連鎖移動剤としてメルカプタン類、ハロゲン化アルキル類等を用いることができる。
メルカプタン類としては、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。ハロゲン化アルキル類としては、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0062】
本発明の塗料用組成物における低汚染化剤(B)の配合量は、含フッ素樹脂(A)の100質量部に対して0.1〜100質量部である。この範囲であると耐汚染性および耐候性が良好である。好ましくは0.5〜50質量部が、より好ましくは1〜30質量部が配合される。
【0063】
本発明の塗料用組成物は、含フッ素樹脂(A)および低汚染化剤(B)を含有するが、前記低汚染化剤(B)を架橋せしめ得る架橋剤(C)をさらに含むことが好ましい。以下に低汚染化剤(B)を架橋せしめ得る架橋剤(C)について説明するが、該架橋剤(C)は、塗料用樹脂としての含フッ素樹脂(A)を架橋せしめる架橋剤として用いることもできる。
【0064】
低汚染化剤(B)を架橋せしめ得る架橋剤(C)としては、単位(β1)の架橋性官能基と反応し得る架橋剤であれば、特に限定されることなく、公知の種々の架橋剤を用いることができる。例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、2個以上のヒドラジノ基を有する化合物、ポリカルボジイミド化合物、2個以上のエポキシ基を有する化合物、2個以上のオキサゾリン残基を有する化合物、2個以上のアジリジン残基を有する化合物、多価金属類、2個以上のアミノ基を有する化合物、ポリケチミン、2個以上のカルボキシ基を有する化合物、酸無水物、2個以上のメルカプト基を有する化合物、多官能重合性二重結合を有する化合物類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0065】
アミノ樹脂としては、メラミン系化合物、グアナミン系化合物、尿素系化合物等のアミノ基の一部もしくはすべてをヒドロキシメチル化した化合物、または該ヒドロキシメチル化した化合物の水酸基の一部もしくはすべてをメタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール等でエーテル化した化合物、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
【0066】
ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアナートやイソホロンジイソシアナート等のポリイソシアナート化合物、メチルトリイソシアナートシラン等のイソシアナートシラン化合物および/またはこれらの縮合物や多量体、およびこれらの水分散タイプ、フェノール等のブロック化剤でイソシアナート基をブロックしたブロック化ポリイソシアナート化合物等が挙げられる。特に無黄変タイプのポリイソシアナート化合物が好ましい。
【0067】
2個以上のヒドラジノ基を有する化合物としては、ジヒドラジド、多官能ヒドラジド、多官能セミカルバジド等が挙げられる。
ジヒドラジドとしては、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ヘプタン二酸ジヒドラジド、オクタン二酸ジヒドラジド、ノナン二酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ヘキサデカン二酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4′−ビスベンゼンジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0068】
多官能ヒドラジドとしては、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、アルキル(メタ)アクリレートのオリゴマー等のアルキルオキシカルボニル基を含有するオリゴマーとヒドラジンとの反応物も挙げられる。
多官能セミカルバジドとしては、ポリイソシアネートとヒドラジンとの反応物等が挙げられる。
【0069】
ポリカルボジイミド化合物は、公知の有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素縮合反応により得られる。このときに公知の触媒としてトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート等のリン酸系化合物を用いることができる。また、有機ジイソシアネートと水酸基含有ポリエチレングリコールの混合物を用いることによりノニオン親水性ポリカルボジイミド化合物が得られる。水分散性、安定性の点から、ノニオン親水性ポリカルボジイミド化合物が好ましい。
【0070】
2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、グリセロールポリグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。
【0071】
2個以上のオキサゾリン残基を有する化合物としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン等の重合性単量体の共重合体を挙げることができる。
【0072】
2個以上のアジリジン残基を有する化合物としては、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、2,2,2−トリスヒドロキシメチルエタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0073】
多価金属類としては、塩化亜鉛、塩化亜鉛アンモニウム、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、クロム酸およびその塩、重クロム酸およびその塩、ジイソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトン、硫酸アルミニウム、アルミニウムトリエトキシド、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、フッ化ジルコニウムカリウム、フッ化ジルコニウムアンモニウム等が挙げられる。
【0074】
2個以上のアミノ基を有する化合物としては、脂肪族ポリアミン類、脂環族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類、複素環式ポリアミン類等が挙げられる。
脂肪族ポリアミン類としては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジシアンジアミン等が挙げられる。
【0075】
脂環族ポリアミン類としては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、N−3−アミノプロピルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(エチルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族ポリアミン類としては、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、4−(1−アミノエチル)アニリン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
複素環式ポリアミン類としては、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。
【0076】
2個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、脂肪族ジカルボン酸類、脂環族ジカルボン酸類、芳香族カルボン酸類、3官能以上のポリカルボン酸類等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸類としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、酒石酸、リンゴ酸、イミノジ酢酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸類としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
芳香族カルボン酸類としては、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0077】
3官能以上のポリカルボン酸類としては、クエン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0078】
酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水シトラコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0079】
2個以上のメルカプト基を有する化合物としては、脂肪族ジメルカプト化合物、芳香族ジメルカプト化合物等が挙げられる。
脂肪族ジメルカプト化合物としては、1,6−ジメルカプトヘキサン、ジメルカプトジエチルエーテル、トリグリコールジメルカプタン、ビス−(2−メルカプトエチル)サルファイド等の脂肪族ジメルカプト化合物等が挙げられる。
【0080】
芳香族ジメルカプト化合物としては、3,4−ジメルカプトトルエン、ビス(4−メルカプトフェニル)サルファイド、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0081】
多官能重合性二重結合を有する化合物類としては、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、アリル(メタ)アクリレート、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコール(メタ)ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
本発明における低汚染化剤(B)において、前記架橋性官能基と架橋剤(C)との組み合わせの一例を下記の表1〜表3に示す。なお、ヒドロキシメチル基、重合性二重結合残基、加水分解性シリル基等を有する低汚染化剤(B)は、自己架橋も可能である。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
これらの架橋反応においては、硬化促進剤を用いることができる。例えば、架橋剤としてポリイソシアネート化合物を用いる場合は、硬化促進剤として錫化合物等を用いることができる。錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(マレイン酸モノエステル)、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジ(マレイン酸モノエステル)、ジブチル錫ジアセテート等が挙げられる。架橋剤としてアミノ樹脂を用いる場合は、N,N−ジメチルエチルスルファメートを用いることができる。また、オキサゾリン基とポリカルボン酸化合物の反応においては、リン酸水素二アンモニウムを用いることができる。
【0087】
以上に挙げた架橋性官能基と架橋剤の組み合わせにおいて、一液常温架橋できるものが好ましい。例えば、オキサゾリン基とポリカルボン酸化合物との組み合わせ、オキサゾリン基とポリメルカプタン化合物との組み合わせ、カルボキシ基とポリオキサゾリン化合物との組み合わせ、カルボニル基とポリヒドラジド化合物との組み合わせ、活性メチレン基とポリアミン化合物との組み合わせ等が挙げられる。
【0088】
架橋剤(C)の配合量は、低汚染化剤(B)の100質量部に対して0.01〜1000質量部が好ましい。この範囲であると耐汚染性、その持続性および塗料安定性が良好である。好ましくは0.1〜500質量部が、より好ましくは0.5〜200質量部が配合される。
【0089】
本発明の塗料用組成物を用いて形成された塗膜の、水中におけるオクタンの接触角により算出されるオクタンの脱離仕事は、2.0×10−2J/m2未満であることが好ましい。該オクタンの脱離仕事は、水中において上記塗膜に対するオクタンの接触角を測定することにより求められる。
【0090】
オクタンの脱離仕事(WA′)は、以下の式で表すことができる。
WA′=γSW+γWO−γSO
(ただし、γSWは塗膜表面と水との界面張力(J/m2)、γWOは水とオクタンとの界面張力(J/m2)、γSOは塗膜表面とオクタンとの界面張力(J/m2)を表す。)。
【0091】
ヤングの式γSW=γSO+γWO=cosθ(ただし、θは水中においてオクタンが塗膜となす接触角である。)を前記式に代入し、拡張Fowkes式を用いて、水とオクタンの表面張力の分散成分が等しいことに注目すると、以下の式が導き出せる。
WA′=C(1+cosθ)
(ただし、Cは水の表面張力の極性成分であり、C=0.051(J/m2)である。)。
θは0〜180°で変化し得るので、WA′は0〜10.2×10−2(J/m2)の範囲で変化する。WA′が小さい程、水中においてオクタンを塗膜表面から引き離すエネルギーが少なくて済むことを意味しているので、耐汚染性が良好であると考えられる。耐汚染性を発揮するには、水中におけるオクタンの脱離仕事は2.0×10−2J/m2未満であることが好ましい。さらに、1.5×10−2J/m2未満であることが好ましい。
【0092】
本発明において、塗料用組成物の奏する優れた耐汚染性の発現機構は、必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。重合単位(a)を1個以上有する低汚染化剤を含有する塗膜は、水中におけるオクタン脱離仕事が小さい。このことは、都市部での汚れ物質に含まれる油性成分がいったん塗膜表面に付着しても、容易に雨等により洗い流されることを示しており、耐汚染性が優れていることを意味する。さらに、架橋性官能基を導入し、それに適した架橋剤を配合することによって、初期よりこの親水性成分が塗膜表面に固定化され耐汚染性を長く持続することができる。該低汚染化剤をフッ素含有率が5%以上の含フッ素樹脂に配合することによって得られる塗膜は、その他の樹脂では得られない効果である帯電防止性、耐埃付着性をも実現することができる。
【0093】
水性塗料組成物は、必要に応じて、着色剤、造膜助剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、皮バリ防止剤、顔料分散剤等の通常水性塗料に添加される添加剤を混合してもよい。
【0094】
着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料、メタリック顔料等が例示され、特に、無機顔料は、塗膜の耐候性に優れるので好ましい。
【0095】
造膜助剤としては、水性塗料組成物の安定性を損なわない有機溶剤が使用できる。具体例としては、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル等の多価アルコールのモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート等の多価アルコールモノアルキルエーテルの有機酸エステル類、3−エトキシプロピオン酸エステル類、酢酸3−メトキシ−3−メチル−ブチル等が挙げられる。
【0096】
可塑剤としては、従来公知のものが使用でき、具体例としては、ジオクチルフタレート等の低分子量可塑剤、ビニル重合体系可塑剤やポリエステル系可塑剤等の高分子量可塑剤等が挙げられる。
【0097】
本発明の塗料の塗装方法としては、通常用いられる塗装方法が特に限定なく採用でき、刷毛またはローラーブラシを用いた塗装、エアースプレイ塗装、カーテンフローコータによる塗装、ロールコータによる塗装等が挙げられる。
【0098】
塗装で得られた塗膜はオキサゾリン基とポリカルボキシ化合物、オキサゾリン基とポリメルカプタン化合物、カルボキシ基とポリオキサゾリン化合物、カルボニル基とポリヒドラジド化合物、活性メチレン基とポリアミン化合物の組み合わせを用いた場合は、常温で乾燥し硬化塗膜を得ることができる。前記架橋反応においても、他の架橋反応においても高温で焼き付け乾燥し短時間で硬化塗膜を得ることができる。焼き付け温度は特に限定されないが、塗装する基材の耐熱温度以下が好ましい。通常は250℃以下の温度が好ましい。
【0099】
本発明の塗料用組成物を用いた塗料は、新設の基材、または物品に予め設置前に塗装してもよく、また基材または物品を設置した後に塗装してもよい。また、既に塗装された基材や物品に塗装する補修塗装にも適する。また特に、屋外で使用される基材、物品の塗装に適する。
【0100】
本発明の塗料用組成物を用いた塗料は、コンクリート、自然石、ガラス等の無機系基材、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、黄銅、チタン等の金属系基材、の塗装用として好ましく適用できる。また、FRP、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリート等の有機無機複合材にも適用できる。さらに、他の樹脂組成物によって被覆層が形成されている基材にも適用できる。
【0101】
本発明の塗料用組成物を用いた塗料が適用され得る対象としては、運輸、建築、土木、電気・電子分野において、例えば、自動車、電車、航空機、橋梁部材、鉄塔、タンク、パイプ、ビル外装用パネル、ドア、窓材、門扉、その他の建築部材、中央分離帯、ガードレール、その他の道路部材、通信機材、電気・電子部品等の産業資材が挙げられる。
【0102】
【実施例】
以下に合成例および実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、これにより本発明は限定されない。以下において、特に断らない限り、%は質量基準である。また、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりポリスチレンを標準物質として測定した値である。以下の各例において用いた化合物の略号を表4に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
[低汚染化剤(B)の合成]
[合成例1]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの216.0g、Amの24.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体1の溶液を得た。該重合体1の重量平均分子量は5000であった。ロータリーエバポレータで重合体1の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤1を得た。
【0105】
[合成例2]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVFの216.0g、DOAmの24.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体2の溶液を得た。該重合体2の重量平均分子量は5000であった。ロータリーエバポレータで重合体2の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤2を得た。
【0106】
[合成例3]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの216.0g、DOAmの24.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体3の溶液を得た。該重合体3の重量平均分子量は5000であった。ロータリーエバポレータで重合体3の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤3を得た。
【0107】
[合成例4]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの216.0g、AAEMAの24.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体4の溶液を得た。該重合体4の重量平均分子量は5000であった。ロータリーエバポレータで重合体4の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤4を得た。
【0108】
[合成例5]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの216.0g、2−HEMAの24.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体5の溶液を得た。該重合体5の重量平均分子量は5000であった。ロータリーエバポレータで重合体5の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤5を得た。
【0109】
[合成例6]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの216.0g、MAの24.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体6の溶液を得た。該重合体6の重量平均分子量は5000であった。ロータリーエバポレータで重合体6の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤6を得た。
【0110】
[合成例7]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの216.0g、IPOの24.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体7の溶液を得た。該重合体7の重量平均分子量は5000であった。ロータリーエバポレータで重合体7の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤7を得た。
【0111】
[合成例8]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの168.0g、DOAmの48.0g、PME−400の24.0g、連鎖移動剤DSHの16.2gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体8の溶液を得た。該重合体8の重量平均分子量は3000であった。ロータリーエバポレータで重合体8の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤8を得た。
【0112】
[合成例9]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの168.0g、DOAmの24.0g、GLMの48.0g、連鎖移動剤DSHの2.4gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体9の溶液を得た。該重合体9の重量平均分子量は20000であった。ロータリーエバポレータで重合体9の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤9を得た。
【0113】
[合成例10]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの168.0g、DOAmの24.0g、N−MAAの48.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体10の溶液を得た。該重合体10の重量平均分子量は5000であった。ロータリーエバポレータで重合体10の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤10を得た。
【0114】
[合成例11]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、メタノールの512.0g、NVAの168.0g、DOAmの24.0g、MMAの48.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤AIBNの2.4gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、60℃で18時間重合させ、固形分30%の重合体11の溶液を得た。該重合体11の重量平均分子量は5000であった。ロータリーエバポレータで重合体11の溶液からメタノールを留去し、低汚染化剤11を得た。
【0115】
[ベース塗料の調製]
[調製例1:ベース白塗料1]
撹拌機付きステンレス鋼製オートクレーブ(内容積200mL)に、イオン交換水の105.3g、ノニオン性乳化剤(日本乳化剤社製、商品名:N−1110)の2.0g、ドデシル硫酸ナトリウムの0.2g、過硫酸アンモニウム25%水溶液の0.07g、炭酸カリウムの0.22g、亜硫酸水素ナトリウムの0.02g、エチルビニルエーテルの21.2g、シクロヘキシルビニルエーテルの21.0g、CH2=CHOCH2C6H10CH2OHの3.4gおよびCH2=CHOCH2C6H10CH2O(C2H4O)kH(kは平均値で約15である。)の8.2gを仕込み、氷で冷却して、窒素ガスを0.35MPaまで加圧した後、パージして0.1MPaに戻した。
この加圧とパージを2回繰り返した後、真空ポンプを用いて1.3×104Paまで脱気し、残存空気を除去した後、クロロトリフルオロエチレンの56.7gを仕込み、30℃で12時間重合反応を行い、含フッ素樹脂1の水性分散液1を得た。水性分散液1中の含フッ素樹脂1の平均粒径は140nmで、固形分濃度は50.0%であった。
【0116】
上記水性分散液1の71g、造膜助剤(チッソ社製、商品名Cs−12)の3.6g、増粘剤(ヘキスト合成社製、商品名レオビスCR)の0.3g、酸化チタン(石原産業社製、商品名CR−97 )の15.4g、顔料分散剤(サンノプコ社製、商品名ノプコスパース44−C)の0.8g、消泡剤(ダウコーニング社製、商品名FSアンチフォーム90)の0.6gおよびイオン交換水の10.3gを混合して、ベース白塗料1を得た。ベース白塗料1中の含フッ素樹脂1の濃度は34.8%であった。
【0117】
[調製例2:ベース白塗料2]
DOAmの15.0g、MMAの50.0g、n−BuMAの30.0g、MAの5.0g、N−1110の1.0g、ドデシル硫酸ナトリウムの0.3gおよびイオン交換水の100gを撹拌混合してプレエマルション1を作成した。ついで、内容積300mLのガラス製フラスコに、水性分散液1の170gを仕込み、温度が70℃になるまで加温した後、プレエマルション1の30gを1時間かけて滴下した。さらに1時間撹拌した後、過硫酸アンモニウムの0.5%水溶液の1mLを添加し重合を開始させた。4.5時間後に、含フッ素樹脂1と(メタ)アクリル酸エステル系成分の質量比が17:3の割合で含有されたフッ素アクリル系樹脂1の水性分散液2を得た。水性分散液2中のフッ素アクリル系樹脂1の平均粒径は130nmで、固形分濃度は50.0%であった。
【0118】
得られた水性分散液2の71g、Cs−12の3.6g、レオビスCRの0.3g、CR−97の15.4g、ノプコスパース44−Cの0.8g、FSアンチフォーム90の0.6gおよびイオン交換水の10.3gを配合して、アンモニア水にてpH7.0に調整し、ベース白塗料2を得た。ベース白塗料2中のフッ素アクリル系樹脂1の濃度は34.8%であった。
【0119】
[調製例3:ベース白塗料3]
撹拌機付きステンレス鋼製オートクレーブ(内容積2.5L)に、イオン交換水の1100g、フッ素系のアニオン性乳化剤(住友3M社製、商品名FC−143)の4.75g、N−1110の2.2gおよびtert−ブチルアルコールの47.0gを仕込み、真空ポンプによる脱気、窒素ガスによる加圧を繰り返した。次に、テトラフルオロエチレンの72.0g、プロピレンの1.1gおよびエチレンの1.4gを仕込んだ。
オートクレーブ内の温度が70℃に達した時点で圧力1.34MPaを示した。70℃を維持して過硫酸アンモニウムの25%水溶液の2mLを添加し、重合を開始させた。圧力の低下に伴い、テトラフルオロエチレン/プロピレン/エチレンの50/25/25(モル%)の混合ガスを仕込んで、圧力を維持した。
また、過硫酸アンモニウムの25%水溶液の30mLを連続的に加えた。8時間後、混合ガスの供給を停止しオートクレーブを室温まで水冷した後、未重合モノマーをパージし、含フッ素樹脂2の水性分散液3を得た。混合ガスの後仕込み量は合計861.5gであった。水性分散液3の固形分濃度は、43.1%であった。
【0120】
水性分散液3の一部を遠心分離器にかけて沈降させた後、ガラスフィルターで濾過し、減圧下で5時間かけて水分を除去した後、ハンマーミルで粉砕し、含フッ素樹脂2の粉末を得た。13C−NMRスペクトルによる組成分析の結果、含フッ素樹脂2の組成は、テトラフルオロエチレン/プロピレン/エチレンに基づく重合単位が、52/28/20(モル%)の割合であった。また、融点は96.2℃であった。
【0121】
内容積300mLのガラス製フラスコに、上記水性分散液3の170gを仕込み、フラスコ内を十分に窒素置換し、70℃に昇温し、プレエマルション1の26gを1時間かけて滴下した。さらに1時間撹拌し分散させた後、過硫酸アンモニウムの0.5%水溶液の1mLを添加し重合を開始させた。4.5時間後に、含フッ素樹脂2と(メタ)アクリル酸エステル系成分の質量比が17:3の割合で含有されたフッ素アクリル系樹脂2の水性分散液4を得た。水性分散液4中のフッ素アクリル系樹脂2の平均粒径は150nmで、固形分濃度は50.0%であった。
【0122】
得られた水性分散液4の71g、Cs−12の3.6g、レオビスCRの0.3g、CR−97の15.4g、ノプコスパース44−Cの0.8g、FSアンチフォーム90の0.6gおよびイオン交換水の10.3gを配合して、アンモニア水にてpH7.0に調整し、ベース白塗料3を得た。ベース白塗料3中のフッ素アクリル系樹脂2の濃度は30.5%であった。
【0123】
[調製例4:ベース白塗料4]
内容積2.5Lのステンレス製撹拌機付きオートクレーブに、イオン交換水の860g、10−ウンデセン酸の35g、FC−143の4.75g、N−1110の2.2gおよびt−ブタノールの46.6gを仕込み、真空ポンプによる脱気、窒素ガスによる加圧を繰り返して空気を除去した。
次に、テトラフルオロエチレン72g、プロピレン1.1gおよびエチレン1.4gをオートクレーブ中に導入した。
【0124】
オートクレーブ内の温度が70℃に達した時点で、圧力1.34MPaを示した。その後、過硫酸アンモニウムの25%水溶液2mLを添加し、反応を開始させた。圧力の低下に伴い加圧して圧力を維持しつつ、テトラフルオロエチレン50モル%、プロピレン25モル%、エチレン25モル%の混合ガス550.5gを連続的に加え反応を続行させた。なお、反応進行中、過硫酸アンモニウム25%水溶液30mLを連続的に加えた。
8時間後、混合ガスの供給を停止しオートクレーブを水冷して室温に達した後、未反応モノマをパージし、含フッ素樹脂3の水性分散液5を得た。水性分散液5中の含フッ素樹脂3の平均粒径は130nmで、固形分濃度は40.1%であった。これに含まれる共重合体の13C−NMRによる組成分析の結果は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位52モル%、プロピレンに基づく重合単位26モル%、エチレンに基づく重合単位19モル%および10−ウンデセン酸に基づく重合単位3モル%であった。
【0125】
得られた水性分散液5の71g、Cs−12の3.6g、レオビスCRの0.3g、CR−97の15.4g、ノプコスパース44−Cの0.8g、FSアンチフォーム90の0.6gおよびイオン交換水の10.3gを配合して、アンモニア水にてpH7.0に調整し、ベース白塗料4を得た。ベース白塗料4中の含フッ素樹脂3の濃度は27.9%であった。
【0126】
[調製例5:ベース白塗料5]
内容積300mLのガラス製フラスコに、イオン交換水の102g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製、商品名ネオペレックスF−25)の2.0gおよび過硫酸アンモニウムの0.5gを仕込み、フラスコ内を十分に窒素置換し、70℃に昇温した。10分撹拌し分散させた後、予め混合していたDOAmの2.7g、MMAの62.3g、n−BuMAの30.0g、MAの5.0gを4時間かけて滴下した。滴下終了後70℃にて1時間撹拌した後、80℃に昇温し、さらに1時間撹拌した。冷却後アンモニア水にてpH7.0に調製してアクリル樹脂1の水性分散液6を得た。水性分散液6中のアクリル樹脂1の平均粒径は120nmで、固形分濃度は50.0%であった。
【0127】
水性分散液1の10.7g、水性分散液6の60.3g、Cs−12の3.6g、レオビスCRの0.3g、CR−97の15.4g、ノプコスパース44−Cの0.8g、FSアンチフォーム90の0.6gおよびイオン交換水の10.3gを配合して、アンモニア水にてpH7.0に調整し、ベース白塗料5を得た。ベース白塗料5中のフッ素アクリル系樹脂3の濃度は34.8%であった。
【0128】
表5にベース白塗料1〜5の特徴を示す。
【0129】
【表5】
【0130】
[例1〜18]
表6、表7および表8に示す割合で、低汚染化剤1〜11、架橋剤、および必要に応じて硬化促進剤を、ベース白塗料1〜5に添加して水性塗料組成物を得た。なお、pHは、アンモニアまたは塩酸にて7.0に調整した。200×95×8mmの大きさのアルミニウム板に該水性塗料組成物をアプリケータを用いて乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、表6、表7および表8に示す条件にて乾燥させて塗装板を得た。水性塗料組成物および塗装板の評価結果を表6、表7および表8に示す。例1〜15が実施例であり、例16〜18が比較例である。なお、下記の表に記載の評価項目は、以下の方法に従って測定した。
【0131】
光沢:JIS Z8741に準じて、60度の鏡面光沢度を測定した。数値が大きいほど光沢が優れることを示す。
帯電防止性:塗膜の表面固有抵抗値を絶縁抵抗値測定装置(デンマーク・ダンブリッジ社製、商品名DB604メグオームメーター)を用いて、温度20℃、湿度60RH%の条件で測定した。重合体を配合しなかった塗膜に比べて、表面固有抵抗値が1/1000倍未満になったものを○、表面固有抵抗値が1/1000倍以上1/10倍未満になったものを△、表面固有抵抗値が1/10倍以上になったものを×と表記した。
オクタン脱離仕事:水中におけるオクタンの塗膜に対する接触角を測定した。測定した接触角からオクタン脱離仕事を求めた。
【0132】
耐埃付着性:イエローオーカー(ホルベイン工業社製、主成分 Fe2O3:20.7%Al2O3:20.7% SiO2:54.0% CaCO3:0.4%)を篩いを使用して表面が見えなくなるまで塗装板に均一に振りかけた後、塗装板の裏面を均等にさじで叩いて汚れ物質を落とした。以上の操作を5回繰り返した後、塗膜表面のイエローオーカーの付着具合を目視により評価した。塗膜表面にイエローオーカーが殆ど付着していないものを○、塗膜表面にイエローオーカーが一面に付着しているものを×と記した。
【0133】
耐斜面汚染性:塗装板(大きさ:200×95×8mm)を100mmの部分で折り曲げ、上部が水平面から30度の角度になり、下部が鉛直になるように塗装面を外にして、神奈川県川崎市において屋外暴露した。この塗装板の暴露3か月後および1年後の30度斜面のL*値を測定した。試験前後のL*値の差△L*を算出し、絶対値で記載した。なお、L*値は、SQ2000(日本電色工業社製)を用いて、JIS Z8730に従い測定した。数値が小さいほど耐斜面汚染性に優れることを示す。
【0134】
耐雨筋汚染性:斜面汚染について評価した屋外曝露板について、垂直面の雨筋汚染の様子を評価した。雨筋汚れが目立たないものを○、多少目立つものを△、目立つものを×と記載した。
促進耐候性:JIS K5400 9.8.1に記載されるカーボンアーク灯式促進耐候性試験4000時間後の光沢保持率を測定した。光沢保持率80%以上を○、光沢保持率80%未満を×と記載した。
【0135】
【表6】
【0136】
【表7】
【0137】
【表8】
【0138】
注)J−679:ジョンソンポリマー社製、商品名ジョンクリル679。
【0139】
なお、例1〜5および例8〜15については、50℃にて2週間保存したものを同様にして塗装し評価した。いずれの塗装板も、光沢、帯電防止性、耐埃付着性、耐斜面汚染性、耐雨筋汚染性および促進耐候性等、諸物性については、表6、表7および表8に記載されている保存前の水性塗料組成物を塗装したそれぞれの塗装板と同等の性能を示した。
【0140】
【発明の効果】
本発明によれば、表面の光沢が高く、帯電防止性、耐埃付着性、低汚染性、耐汚れ性、耐雨筋汚染性等に優れ、それらの持続性に優れ、かつ、耐候性に優れる塗膜を形成できる塗料用組成物が得られる。また、それらの優れた特性を有する塗膜を有する塗装物品が得られる。
Claims (7)
- フッ素含有率(質量基準)5%以上の含フッ素樹脂(A)の100質量部に対し、下記低汚染化剤(B)の0.1〜100質量部を含有することを特徴とする水性含フッ素樹脂塗料用組成物。
低汚染化剤(B):下記(1)の重合単位(a)を含有し、必要により該重合単位(a)以外の重合単位(b)を含有する重合体(ただし、多フッ素化炭素鎖含有基および親水性基を有するフルオロオレフィン系共重合体を除く。)からなる。
(1)−[CH2−C(R1)(N(R2)(COR3))]−
(ただし、R1〜R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基またはエチル基である。) - 前記低汚染化剤(B)が、下記重合体(B1)、重合体(B2)、重合体(B3)の何れかの重合体(ただし、多フッ素化炭素鎖含有基および親水性基を有するフルオロオレフィン系共重合体を除く。)である請求項1に記載の水性含フッ素樹脂塗料用組成物。
重合体(B1):前記重合単位(a)からなる重合体。
重合体(B2):前記重合単位(a)と下記重合単位(β1)とからなる重合体。
重合体(B3):前記重合単位(a)と下記重合単位(β1)と下記重合単位(β2)とからなる重合体。
重合単位(β1):前記重合単位(b)であって、前記重合単位(a)に含まれる官能基以外の架橋性官能基を有する重合単位。
重合単位(β2):前記重合単位(b)であると共に、前記重合単位(β1)以外の重合単位であって、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、および共役ジエン類からなる群より選ばれる 1 種以上の重合性単量体に由来する重合単位。 - 前記重合単位(β1)が、前記重合単位(a)に含まれる官能基以外のアミド残基を有する単量体、アルデヒド性カルボニル基を有する単量体、ケトン性カルボニル基を有する単量体、水酸基(ただし、ヒドロキシメチル基における水酸基を除く。)を有する単量体、ヒドロキシメチル基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体、その酸無水物およびその塩、エポキシ基を有する単量体、アミノ基を有する単量体およびその塩、オキサゾリン残基を有する単量体、イソシアネート残基を有する単量体、多官能重合性二重結合を有する化合物、シアノ基を有する単量体、加水分解性シリル基を有する単量体、アルコキシ基を有する単量体、スルホ基を有する単量体およびその塩、並びにリン酸残基を有する単量体およびその塩からなる群より選ばれる 1 種以上の重合性単量体に由来する重合単位である請求項2に記載の水性含フッ素樹脂塗料用組成物。
- 含フッ素樹脂(A)が、フルオロオレフィン類の重合体またはフルオロオレフィン類とフルオロオレフィン類以外の単量体との共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の水性含フッ素樹脂塗料用組成物。
- 低汚染化剤(B)における(1)の重合単位(a)が、N−ビニルホルムアミドおよびN−ビニルアセトアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から得られる重合単位である請求項1〜4のいずれかに記載の水性含フッ素樹脂塗料用組成物。
- 前記塗料用組成物が、前記低汚染化剤(B)を架橋せしめ得る架橋剤(C)をさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載の水性含フッ素樹脂塗料用組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の水性含フッ素樹脂塗料用組成物を用いて形成された塗膜を有することを特徴とする塗装物品。
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