JP4089073B2 - 炭化珪素単結晶の製造装置及び炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶の製造装置及び炭化珪素単結晶の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体や発光ダイオードなどの素材に利用することができる炭化珪素単結晶の製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の炭化珪素単結晶の製造用の黒鉛製るつぼを図7に示す。従来、昇華法によるSiCバルク単結晶の製造においては、図7に示すように、容器51上方に配置された種結晶52と容器51下方に配置された原料部53との温度差をつけるために、種結晶52と原料部53との間に厚さ10mm程度の円形の平板54を1枚配置するようにしている(特開平8−295595号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、円形平板54の表面温度が不均一であるため、円形平板54の熱輻射を受ける種結晶52及び成長結晶55の表面温度も不均一となり、成長した炭化珪素単結晶55の成長表面が平坦にならず、高品位な炭化珪素単結晶55が得られないという問題がある。
【0004】
本発明は上記問題に鑑みて成され、平板からの輻射熱を均一化させることにより、成長表面を平坦にできる炭化珪素単結晶の製造方法及びそれに適用される製造装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決すべく、請求項1に記載の発明においては、容器(1、2)内に、成長させる炭化珪素単結晶の原料(4)と、種結晶となる炭化珪素単結晶基板(3)を配置し、原料を昇華させて炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素単結晶(10)を成長させる単結晶製造方法において、少なくとも炭化珪素単結晶基板の直径以上の平面部を有する複数枚の板部材(5a)を、炭化珪素単結晶基板と原料との間に、炭化珪素単結晶基板の成長表面と平面部とが対向するように積層すると共に、該複数枚の板部材のそれぞれの間に隙間を設けて配置し、該複数枚の板部材それぞれの外周部で支持されるようにして炭化珪素単結晶の成長を行なうことを特徴としている。
【0006】
このように、炭化珪素単結晶基板と炭化珪素原料との間に複数の板部材を配置することによって、複数の板部材それぞれの熱輻射によって、複数の板部材のうち最も炭化珪素単結晶基板に近い側において板部材の上面温度が略均一になるようにできる。これにより、炭化珪素単結晶の成長表面を平坦にできる。そして、複数枚の板部材のそれぞれの間に隙間を設けて配置し、該複数枚の板部材それぞれの外周部で支持されるようにすることができる。
【0010】
例えば、請求項に示すように、板部材を均質な黒鉛で構成したり、請求項に示すように、板部材を多孔質黒鉛で構成することができる。また、請求項に示すように、板部材を円形状で構成すると、板部材内での熱伝導が板部材の中央部を中心として対称とすることができる。
記各請求項に示す炭化珪素単結晶の製造方法は、請求項に示す炭化珪素単結晶の製造装置を用いると実施可能である。
【0011】
なお、上記した 括弧内の符号は後述する実施形態における図中の符号と対応している。
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態で用いる結晶成長装置としての黒鉛製るつぼを示す。この黒鉛製るつぼは、黒鉛製るつぼの底部に備えられた炭化珪素原料粉末4を熱処理によって昇華させ、種結晶である炭化珪素単結晶基板3上に炭化珪素単結晶10を結晶成長させるものである。
【0013】
この黒鉛製るつぼは、上面が開口している略円筒形状のるつぼ本体1と、るつぼ本体1の開口部を塞ぐ蓋材2とを備えて構成されている。この黒鉛製るつぼを構成する蓋材2を台座として、台座上に炭化珪素単結晶基板3が配置されている。そして、るつぼ本体1の底部には炭化珪素原料粉末4が充填されており、この炭化珪素原料粉末4を昇華させることによって、炭化珪素単結晶基板3を種結晶として、種結晶の表面に炭化珪素単結晶を結晶成長させられるようになっている。
【0014】
また、黒鉛製るつぼには、炭化珪素原料粉末4と炭化珪素単結晶基板3との間に配置された複数枚(本実施形態では2枚)の遮蔽板(板部材)5aが備えられている。これらの遮蔽板5aは、炭化珪素単結晶基板3の成長表面と対向する平面を有する略円形の平板で構成されている。そして、複数枚の遮蔽板5aそれぞれの間に遮蔽板5aの外周と同等の径を有する円環状の環状部材6が配置され、複数枚の遮蔽板5aのそれぞれの間に隙間が空けられた構成されている。これら遮蔽板5aは、均一材質のもの、例えば黒鉛でされている。
【0015】
また、これらの遮蔽板5aのうち最も炭化珪素原料粉末4側のものは、その中心部がるつぼ本体1の底部から延ばされた支持棒7によって支持されている。この遮蔽板5aの板厚は、該遮蔽板5aの支持部分、つまり遮蔽板5aと支持棒7との接合部位における支持棒7の直径以上となっている。
なお、図示しないが、黒鉛製るつぼは、アルゴンガスが導入できる真空容器の中でヒータにより加熱できるようになっており、このヒータのパワーを調節することによって種結晶である炭化珪素単結晶基板3の温度が炭化珪素原料粉末4の温度よりも100℃程度低温に保たれるようにできる。
【0016】
このように構成された結晶成長装置を用いた炭化珪素単結晶の製造工程について説明する。
まず、炭化珪素原料粉末4の温度を2000〜2500℃に加熱する。そして、ヒータ調節等により、炭化珪素単結晶基板3の温度が炭化珪素原料粉末4の温度よりも低くなるように、黒鉛製るつぼ内に温度勾配を設ける。
【0017】
次に、黒鉛製るつぼ内の圧力は0. 1〜50Torrとして、昇華法成長を開始すると、炭化珪素粉末4が昇華して昇華ガスとなり、炭化珪素単結晶基板3に到達し、炭化珪素粉末4側よりも相対的に低温となる炭化珪素単結晶基板3の表面上に炭化珪素単結晶10が成長する。
その際、遮蔽板5aの下面の温度は、炭化珪素原料粉末4及び支持棒7による厚みによる熱輻射や熱伝導により不均一になるが、最も炭化珪素単結晶基板3に近い遮蔽板5aの上面の温度は、複数の遮蔽板5aの熱輻射によって略均一になる。
【0018】
図2に、本実施形態における結晶成長装置を用いて炭化珪素単結晶10を結晶成長させた場合(支持棒による支持)における遮蔽板5aの上面温度のシミュレーション結果を示す。なお、参考として、遮蔽板5aを1枚のみにした従来構造で結晶成長を行なった場合における遮蔽板5aの上面温度のシミュレーション結果を図2中に示す。なお、本図において遮蔽板5aの中心部からの距離をRとし、その場所における温度をTとしている。
【0019】
この図からも、遮蔽板5aを複数枚積層した場合に方が、従来のように1枚の場合よりも上面温度が均一となっていることが判る。なお、図2中では、遮蔽板5aの中心部からの距離が遠くなった場所で遮蔽板5aの上面の温度が上昇した状態となっているが、これらの場所は炭化珪素単結晶基板3の径を超えたところであり、少なくとも炭化珪素単結晶基板3と対向する場所においては遮蔽板5aの上面の温度が均一となった状態となっている。
【0020】
従って、遮蔽板5aの上面の熱輻射を直接受ける炭化珪素単結晶基板3及び炭化珪素単結晶10の表面温度は均一になり、炭化珪素単結晶10の表面は平坦化され、高品質な炭化珪素単結晶10を成長させることができる。
なお、図2中の容器内壁での支持については後述する。
(第2実施形態)
図3に、本発明の第2実施形態で用いる黒鉛製るつぼを示す。なお、本実施形態における黒鉛製るつぼは、第1実施形態とほぼ同様の構成であるため、異なる構成についてのみ説明する。
【0021】
本実施形態における黒鉛製るつぼには、炭化珪素原料粉末4と炭化珪素単結晶基板3との間に配置された遮蔽板(板部材)5bが備えられている。この遮蔽板5bは、炭化珪素単結晶基板3の成長表面と対向する平面を有する略円形の平板で構成されている。この遮蔽板5bは、均一材質のもの、例えば黒鉛でされている。この遮蔽板5bは、中心部がるつぼ本体1の底部から延ばされた支持棒7によって支持されている。この遮蔽板5bの板厚は、該遮蔽板5bの支持部分、つまり遮蔽板5bと支持棒との接合部位における支持棒の直径の略2倍以上となっている。
【0022】
このように構成された結晶成長装置を用いて、第1実施形態と同様の工程を施して炭化珪素単結晶を結晶成長させる。
その際、遮蔽板5bの下面の温度は、炭化珪素原料粉末4及び支持棒7による熱輻射や熱伝導により不均一になるが、遮蔽板5bの上面の温度は、遮蔽板5bの厚みに熱伝導によって略均一になる。
【0023】
図4に、本実施形態における結晶成長装置を用いて炭化珪素単結晶10を結晶成長させた場合における遮蔽板5bの上面温度のシミュレーション結果を示す。なお、参考として、遮蔽板5bの板厚を支持棒7の直径と同等にした場合、及び遮蔽板5bの板厚を支持棒7の直径の1/2にした場合における遮蔽板5bの上面温度のシミュレーション結果を図4中に示す。
【0024】
この図からも、遮蔽板5bの板厚を厚くした場合の方が、従来のように薄い場合よりも上面温度が均一となっていることが判る。
従って、遮蔽板5bの上面の熱輻射を直接受ける炭化珪素単結晶基板3及び炭化珪素単結晶10の表面温度は均一になり、炭化珪素単結晶10の表面は平坦化され、高品質な炭化珪素単結晶10を成長させることができる
(第3実施形態)
図5に、本発明の第2実施形態で用いる黒鉛製るつぼを示す。なお、本実施形態における黒鉛製るつぼは、第1実施形態とほぼ同様の構成であるため、異なる構成についてのみ説明する。
【0025】
本実施形態における黒鉛製るつぼには、炭化珪素原料粉末4と炭化珪素単結晶基板3との間に配置された遮蔽板(板部材)5cが備えられている。遮蔽板5cは、炭化珪素単結晶基板3の成長表面と対向する平面を有する略円形の平板で構成されている。遮蔽板5cは、略円形の外周がるつぼ本体1の内壁のガイドに支持された構成となっている。この遮蔽板5cは、例えば均一材質の多孔質黒鉛でされており、炭化珪素の昇華ガスが通過できるようになっている。
【0026】
このように構成された結晶成長装置を用いて、第1実施形態と同様の工程を施して炭化珪素単結晶10を結晶成長させる。
その際、遮蔽板5cは、第1、第2実施形態のように支持棒7によって支持されるものではなく、るつぼ本体1の内壁のガイドによって支持されるものであるため、支持される部分から受ける熱伝導による影響を受け難く、遮蔽板5cの上面の温度が遮蔽板5cの厚みに熱伝導によって略均一になる。
【0027】
図6に、本実施形態における結晶成長装置を用いて炭化珪素単結晶10を結晶成長させた場合における遮蔽板5cの上面温度のシミュレーション結果を示す。なお、参考として、従来のように支持棒で遮蔽板5cを支持した場合における遮蔽板5cの上面温度のシミュレーション結果を図4中に示す。
この図からも、遮蔽板5cの外周をるつぼ本体1で支持した場合の方が、従来のように支持棒で支持する場合よりも上面温度が均一となっていることが判る。
【0028】
従って、遮蔽板5cの上面の熱輻射を直接受ける炭化珪素単結晶基板3及び炭化珪素単結晶10の表面温度は均一になり、炭化珪素単結晶10の表面は平坦化され、高品質な炭化珪素単結晶10を成長させることができる。
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、複数枚の遮蔽板5aを円環部材で支持するようにしたが、形状のもので支持するようにしてもよい。また、複数枚の遮蔽板5aを重ねた場合を示したが、この遮蔽板5aの板厚を適宜変更してもよい。さらに、複数枚の遮蔽板5aを重ねることによって第2実施形態に示したように板厚の大きな遮蔽板5bとしてもよい。
【0029】
また、第1、第2実施形態では、遮蔽板5a、5bの中心を支持棒で支持するようにしているが、第3実施形態のように容器の内壁で支持するようにしてもよい。例えば、第1実施形態の遮蔽板5aを容器の内壁で支持するようにした場合のシミュレーション結果を図2中に示す。このように、遮蔽板5aを支持棒で支持しないで容器の内壁で支持するようにすれば、さらに遮蔽板5aの上面温度の均一化を図ることができる。
【0030】
また、第3実施形態では、遮蔽板5cとしてポーラスカーボンを用いているが、板材に貫通孔が形成されたものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における黒鉛製るつぼの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す黒鉛製るつぼを用いて炭化系珪素単結晶を成長させた場合における遮蔽板の上面温度のシミュレーション結果を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態における黒鉛製るつぼの全体構成を示す図である。
【図4】図3に示す黒鉛製るつぼを用いて炭化系珪素単結晶を成長させた場合における遮蔽板の上面温度のシミュレーション結果を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態における黒鉛製るつぼの全体構成を示す図である。
【図6】図5に示す黒鉛製るつぼを用いて炭化系珪素単結晶を成長させた場合における遮蔽板の上面温度のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】従来の黒鉛製るつぼの全体構成を示す図である。
【符号の説明】
1…るつぼ本体、2…蓋材、3…炭化珪素単結晶基板、
4…炭化珪素原料粉末、5a、5b、5c…遮蔽板、6…円環部材、
7…支持棒、10…炭化珪素単結晶。

Claims (6)

  1. 容器(1、2)内に、成長させる炭化珪素単結晶の原料(4)と、種結晶となる炭化珪素単結晶基板(3)を配置し、前記原料を昇華させて前記炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素単結晶(10)を成長させる炭化珪素単結晶製造方法において、
    少なくとも前記炭化珪素単結晶基板の直径以上の平面部を有する複数枚の板部材(5a)を、前記炭化珪素単結晶基板と前記原料との間に、前記炭化珪素単結晶基板の成長表面と前記平面部とが対向するように積層すると共に、該複数枚の板部材のそれぞれの間に隙間を設けて配置し、該複数枚の板部材それぞれの外周部で支持されるようにして前記単結晶の成長を行なうことを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
  2. 前記板部材の外周を前記容器の内壁で支持することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  3. 前記板部材を均質な黒鉛で構成することを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  4. 前記板部材を多孔質黒鉛で構成することを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  5. 前記板部材を円形状で構成することを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  6. 容器(1、2)内に、成長させる炭化珪素単結晶の原料(4)と、 種結晶となる炭化珪素単結晶基板(3)を配置し、前記原料を昇華させて前記炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素単結晶(10)を成長させる炭化珪素単結晶製造装置において、
    前記容器内において、前記炭化珪素単結晶基板が配置される部位と前記原料が配置される部位との間に、少なくとも前記炭化珪素単結晶基板の直径以上の平面部を有する複数枚の板部材(5a)が、前記炭化珪素単結晶基板の成長表面と前記平面部とが対向するように積層され、それぞれの間が隙間を設けて配置されていると共に、該複数枚の板部材それぞれの外周部に配置された支持部材(6)で前記複数枚の板部材のそれぞれが支持されていることを特徴とする炭化珪素単結晶製造装置。
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