JP6291615B1 - 窒化アルミニウム単結晶製造装置 - Google Patents
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従来、第13族元素の窒化物である窒化アルミニウム単結晶の製造方法としては、加熱により昇華した原料物質を単結晶として成長させる昇華法が知られている(例えば、特許文献1など)。この昇華法では、通常、坩堝内に入れた原料物質を非酸化性雰囲気中で加熱することにより分解気化させ、この分解気化成分を種結晶上に結晶成長させることにより窒化アルミニウム単結晶を得る。
[1]育成坩堝(1)と、該育成坩堝(1)を外側から加熱する加熱手段(2)を備え、昇華法により窒化アルミニウム単結晶を製造する装置であって、
育成坩堝(1)は、上部が開放し、下部に原料物質が収容される坩堝本体(3)と、下面中央部に種結晶を保持した状態で、坩堝本体(3)に対してその開放した上部を塞ぐようにセットされる蓋体(4)を備え、
蓋体(4)の平面における少なくとも種結晶が保持される領域(e)は、その上面側又は/及び下面側に凹凸(40)が形成されることにより、厚みが一定でない構造を有することを特徴とする窒化アルミニウム単結晶製造装置。
[2]上記[1]の製造装置において、凹凸(40)は、蓋体(4)の上面側又は/及び下面側に設けられる溝又は/及び穴により形成されることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶製造装置。
蓋体平面における少なくとも種結晶が保持される領域(e)は、その上面側又は/及び下面側に凹凸(40)が形成されることにより、厚みが一定でない構造を有することを特徴とする窒化アルミニウム単結晶製造装置における育成坩堝の蓋体。
[4]上記[3]の蓋体において、凹凸(40)は、蓋体の上面側又は/及び下面側に設けられる溝又は/及び穴により形成されることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶製造装置における育成坩堝の蓋体。
図において、1は育成坩堝、2はこの育成坩堝1を外側から加熱する加熱手段であり、これらは炉体A(結晶成長炉)内に収納されている。
育成坩堝1は、上部が開放し、下部に原料物質xが収容される円筒状で有底の坩堝本体3と、下面中央部に種結晶を保持した状態で、この坩堝本体3に対してその開放した上部を塞ぐようにセットされる蓋体4を備えている。
蓋体4は、下面中央部に種結晶sを保持(密着状態で保持)しており、坩堝本体3の上部にセット(載置)された状態で、保持した種結晶sが下向きとなり、坩堝本体3の下部に収容された原料物質xと対向する。
本発明装置の蓋体4は、凹凸40が形成されることにより厚みが一定でない構造を有することを特徴とするが、これについては後に詳述する。
蓋体4の径は、坩堝本体3(本実施形態では上部坩堝本体3b)の外径とほぼ同じであり、特に制限はないが、一般には10〜150mm程度である。また、蓋体4の厚み(蓋本体4aとプレート4bを合わせた厚み)も特に制限はないが、一般には、その上面側又は/及び下面側に凹凸40が形成される中央領域及びその外側領域を含めて0.2〜20mm程度の範囲とする。
通常、種結晶sは、窒化アルミニウム単結晶を結晶成長させ得るような方位を持った単結晶であって、表面(下面)が化学機械的研磨(CMP)された窒化アルミニウム単結晶である。なお、種結晶sは、表面(下面)だけでなく、裏面についてもCMPなどにより処理されていてもよい。
この炉体A内に収納された加熱手段2と炉体Aの内壁面との間には、加熱手段2の熱から炉体Aを保護するための遮熱体5が設けられている。本実施形態の遮熱体5は、上部及び下部に開口部50、51を有する筒体であり、炉体Aの底部に置かれ、その内部に育成坩堝1と加熱手段2が収納されている。遮熱体5の下端には内フランジ52が形成され、この内フランジ52の上面に支持台11がその外縁部を介して支持されるとともに、この支持台11上に育成坩堝1と加熱手段2が支持されている。なお、遮熱体5は、複数のリング状部材を重ねて構成してもよいし、一体型に構成してもよい。
炉体Aの上部中央部には石英ガラス板が嵌め込まれた窓12が設けられ、この窓12に面して放射温度計10が配置され、この放射温度計10により遮熱体5の開口部50を通して蓋体4の温度が測定できるようになっている。
図3〜図11は、それぞれ蓋体の他の実施形態を示すもので、図(a)は縦断面図、図(b)は平面図である。
図3の実施形態では、蓋体4(蓋本体4a)の上面に平行に設けられる複数の直線溝401と、これら直線溝401を周方向で連通させるように設けられる溝402により凹凸40が形成されている。
図5の実施形態では、蓋体4(蓋本体4a)の上面に同心円状に設けられる、図1の実施形態に較べて溝幅が小さい複数の環状溝400により凹凸40が形成されている。
図6の実施形態では、蓋体4(蓋本体4a)の上面に同心状に設けられる六角形状の複数の環状溝405により凹凸40が形成されている。
図8の実施形態では、蓋体4(蓋本体4a)の上面に設けられる複数の穴407により凹凸40が形成されている。
図9の実施形態では、蓋体4の下面に同心円状に設けられる複数の環状溝400により凹凸40が形成されている。なお、図1、図3〜図8のような形態の凹凸40を、図9の実施形態のように蓋体4の下面に設けることもでき、また、蓋体4の上面と下面の両方に設けることもできる。
ここで、蓋体4の中央領域に薄肉部42を形成する狙いは、次の通りである。育成坩堝1内で昇華した原料物質は温度が低い部位ほど堆積しやすい。一方、蓋体4は厚さが薄いほど熱容量が小さいために抜熱効果が大きく、温度が低下しやすい。そこで、種結晶sの背面側(蓋体4の中央領域)の蓋体部分を薄肉部42とすることで、種結晶sの温度が周囲の温度よりも低くなるようにし、原料物質の種結晶周囲への堆積を防止し、原料物質が種結晶sに優先的に堆積し(種結晶周囲への堆積が防止される)、種結晶s上での結晶成長が促進されるようにしたものである。また、原料物質の種結晶周囲への堆積が防止される結果、種結晶径方向での結晶成長を阻害するものがなくなり、これにより種結晶径方向での結晶成長が促進され、ドメインの収斂による結晶性をより高めることができる。
また、図11の実施形態では、蓋体4(蓋本体4a)の上面に窪み41(凹陥部)が設けられることで薄肉部42が形成され、この薄肉部42の上面に同心円状に設けられる複数の環状溝400により凹凸40が形成されている。
原料物質xとしては、例えば、市販のAlN粉末を1800〜2300℃程度で加熱処理し、凝集体としたものを使用する。
原料物質xを収容した坩堝本体3(下部坩堝本体3a及び上部坩堝本体3b)と、下面中央部に種結晶sを保持した蓋体4(蓋本体4a及びプレート4b)を図1のような育成坩堝1に組み立て、この育成坩堝1と加熱手段2と遮熱体5を図1のように炉体A内にセットする。
製造開始に当たり、炉体Aの排出口7に接続された排気管9の排気ポンプにより炉体A内を減圧し、ガス供給源から供給される雰囲気ガス(窒素ガスなどの非酸化性ガス)をガス供給管8及び導入口6を通じて炉体A内に導入し、炉体A内を非酸化性ガス雰囲気とする。
また、放射温度計10で蓋体4の温度を測定し、例えば、加熱手段2の不具合による蓋体4の温度異常などを検知する。
図1及び図2に示す本発明の単結晶製造装置を用い、窒化アルミニウム単結晶を製造した。装置の仕様は以下の通りである。
(1)坩堝本体3
・高さ:100mm
・内径:65mm
(2)蓋体4
・凹凸40(環状溝400)の深さ:4.0mm
・凹凸40以外の部分(外側領域)の厚さ:5.0mm
(3)加熱手段2
・加熱方式:高周波誘導加熱式ヒーター
(4)種結晶s
・(0001)方位を有し、表面がCMPで表面処理されたAlN単結晶板
・径Ds:40mm
・厚さ:1.0mm
製造開始に当たり、排気管9に設けられた排気ポンプを用いて、炉体A内の空気を1.0×10−3Pa以下となるまで排気した後、原料物質x中の吸着酸素の蒸発を容易にするために、坩堝本体3を加熱手段2により下部坩堝本体3aが約400℃になるまで加熱した。その後、前記排気ポンプで炉体A内を5.0×10−4Pa以下まで排気した後、窒素ガスを導入し、炉体A内が所定圧力(300kPa)に到達したところで、加熱手段2によるさらなる加熱を行い、種結晶sの温度が1800〜2000℃、原料物質xの温度が2000〜2300℃になるまで昇温を行いながら、前記排気ポンプで炉体A内を100kPaまで排気し、原料物質xを昇華させ、種結晶sの方位(0001)でAlN単結晶の育成を100時間行った。
また、比較例の製造装置として、蓋体4のみを平坦な蓋体(厚さ5mm)に変更した製造装置を用い、AlN単結晶を製造した。
その結果、比較例の製造装置で製造されたAlN単結晶基板は147arcsecであったのに対して、本発明の製造装置で製造されたAlN単結晶基板は80arcsecであった。このため、本発明の製造装置によれば、比較例の製造装置に較べてAlN単結晶のドメインを効率よく収斂させることができ、結晶性の高い高品質なAlN単結晶を効率よく製造できることが確認できた。
2 加熱手段
3 坩堝本体
3a 下部坩堝本体
3b 上部坩堝本体
4 蓋体
4a 蓋本体
4b プレート
5 遮熱体
6 導入口
7 排気口
8 ガス供給管
9 排気管
10 放射温度計
11 支持台
12 窓
40 凹凸
41 窪み(凹陥部)
42 薄肉部
50,51 開口部
52 内フランジ
400 環状溝
401 直線溝
402 溝
403 直線溝
404 溝
405 環状溝
406 直線溝
407 穴
A 炉体
a 炉内空間
e 領域
Claims (6)
- 育成坩堝(1)と、該育成坩堝(1)を外側から加熱する加熱手段(2)を備え、昇華法により窒化アルミニウム単結晶を製造する装置であって、
育成坩堝(1)は、上部が開放し、下部に原料物質が収容される坩堝本体(3)と、下面中央部に種結晶を保持した状態で、坩堝本体(3)に対してその開放した上部を塞ぐようにセットされる蓋体(4)を備え、
蓋体(4)の平面における少なくとも種結晶が保持される領域(e)は、その上面側に凹凸(40)が形成されることにより、厚みが一定でない構造を有することを特徴とする窒化アルミニウム単結晶製造装置。 - 凹凸(40)は、蓋体(4)の上面側に設けられる溝又は/及び穴により形成されることを特徴とする請求項1に記載の窒化アルミニウム単結晶製造装置。
- 蓋体(4)の上面の中央領域に窪み(41)が設けられることで薄肉部(42)が形成され、該薄肉部(42)の上面側に凹凸(40)が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化アルミニウム単結晶製造装置。
- 昇華法により窒化アルミニウム単結晶を製造する装置において、下面中央部に種結晶を保持した状態で、育成坩堝を構成する坩堝本体に対してその開放した上部を塞ぐようにセットされる蓋体であって、
蓋体平面における少なくとも種結晶が保持される領域(e)は、その上面側に凹凸(40)が形成されることにより、厚みが一定でない構造を有することを特徴とする窒化アルミニウム単結晶製造装置における育成坩堝の蓋体。 - 凹凸(40)は、蓋体の上面側に設けられる溝又は/及び穴により形成されることを特徴とする請求項4に記載の窒化アルミニウム単結晶製造装置における育成坩堝の蓋体。
- 蓋体上面の中央領域に窪み(41)が設けられることで薄肉部(42)が形成され、該薄肉部(42)の上面側に凹凸(40)が形成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の窒化アルミニウム単結晶製造装置における育成坩堝の蓋体。
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