JP4087977B2 - 木質部材の接合構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラグスクリューボルトを用いて木質部材相互を剛に接合するための接合構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、モーメント抵抗接合法によるラーメン架構の研究が盛んに進められている。
「モーメント抵抗接合」という用語は、モーメントを伝達することを目的に部材同士を可能な限り剛に接合する方法をいう。
【0003】
モーメント抵抗接合を、主として力の伝達形式から類別すると、複数種の基本的な形態に分類されるが、これらの内、代表的なものの一つとしてガセット板接合型を例に採ると、当該ガセット板接合型は、鋼板、合板等のガセット板と、釘、ボルト、ラグスクリュー、ドリフトピン等の接合具を組み合わせてモーメント、剪断力、軸力を同時に伝達する形式である。
釘、ボルト、ラグスクリューを用いる場合は、ガセット板は添板形式であるが、ドリフトピンの場合は、ガセット板を部材の内部に挿入する形式が基本的である。
【0004】
図22は、最近の一般的なガセット板接合型のモーメント抵抗接合により木質ラーメンフレームを形成する場合の接合例(従来例1)を示している。
本従来例1では、柱部材60と梁部材61とには、集成材が使用されており、図示の如く、接合部位である柱部材60の一側面及び梁部材61の接合端部には、挿入用鋼板ガセット板62を挿入しうるスリット63、63を各々あらかじめ形成しておく。
また、鋼板ガセット板62には、あらかじめ複数個数のドリフトピン64を貫通嵌挿しうる小孔65が穿設されている。
この鋼板ガセット板62の各小孔65の位置に対応して、柱部材60と梁部材61とに貫通小孔66を正確に貫通穿設しておく。
そして、鋼板ガセット板62を柱部材60と梁部材61の各スリット63に挿入して、所定複数個数のドリフトピン64により緊結固定する構成となっている。
【0005】
梁部材61に曲げモーメントが作用した場合のモーメントの伝達は、梁部材61のモーメント→ドリフトピン64のせん断力→鋼板ガセット板62の曲げ→ドリフトピン64のせん断力→柱部材60のモーメントという具合に応力伝達され、曲げモーメントの他にせん断力、軸力も同じ経路でドリフトピン64のせん断力を介して伝達されるため、応力伝達面では比較的合理的な構成である。
【0006】
また、モーメント抵抗接合の他の代表的な例として引張ボルト接合型がある。
当該引張ボルト接合型では、梁端部の上下の位置に通しボルトを挿入し、ナットを回して梁と柱を引き寄せて接合する。
モーメントとせん断力は、別々に伝達される。
接合具は、引きボルト以外は特に使わない構成となっている。
【0007】
図23及び図24は、引張ボルト接合型のモーメント抵抗接合により木質ラーメンフレームを形成する場合の接合例(従来例2)を示している。
本従来例2では、柱部材60と一対の梁部材61、61とには、上下2か所の所定位置に引張ボルト67の挿通用孔68があらかじめ貫通形成されており、梁部材61の接合端部から所定距離の位置には欠込み部69が設けられ、当該欠込み部69に、上下2か所の引張ボルト67用の挿通用孔68の端部が開口している状態となっている。
接合に当たっては、柱部材60と一対の梁部材61、61の上下2か所の挿通用孔68に各々引張ボルト67を嵌挿し、各引張ボルト67の両端部を欠込み部69の位置で、座金70を介してナット71を締付け固定する構成となっている。
【0008】
本従来例2では、梁部材61に曲げモーメントが作用した場合のモーメントの伝達は、引張側では、梁部材61の材端モーメント→梁側座金70のめり込み→引張ボルト67の引張力→柱部材60のモーメントという具合に応力伝達される。
一方、圧縮側では、梁部材61端部の柱部材60側面への三角形型めり込みにより応力伝達がなされる。
なお、せん断力はダボ等のせん断抵抗物を梁部材61の木口に挿入して伝逮する。
【0009】
一方、現在一部で実用化されているモーメント抵抗接合は、原則的に1方向ラーメンにしか適用できない。
そこで、これを2方向ラーメンに拡張するには、他のタイプとの併用を考えねばならない。
図25乃至図27は、本願発明者が先に提案したガセット板接合型を原則とした2方向ラーメン用のモーメント抵抗接合(従来例3)の概念図である。
本従来例3は、特開平7−2582888号公報に開示され、特許第2653414号として登録されているものである。
【0010】
本従来例3では、ラグスクリューボルト80は、軸部81のラグスクリューネジ部82と、端部のボルトネジ部83とを有した構成となっている。
ガセットプレート74は、鋼製板によりT字型に形成されていると共に、そのT字頭部板75に前記ラグスクリューボルト80のボルトネジ部83がナット締めされる貫通穴76が複数設けられ、かつT字脚部板77にドリフトピン78が貫通嵌合される複数の小孔79が設けられている。
このラグスクリューボルト80と、ガセットプレート74とにより、木質柱部材60と木質梁部材61を接合させる構造となっている。
【0011】
即ち、梁部材61の端部には、ガセツトプレート74のT字脚部板77が嵌挿するスリット72と、T字脚部板77の小孔79に対応する貫通小孔73とを設け、柱部材60に対し、ラグスクリューボルト80の複数を並列してその端部のボルトネジ部83が外部に突出するように水平方向に螺着させる。
一方、ガセツトプレート74のT字頭部板75の貫通孔76に、外部に突出したボルトネジ部83を貫通させてナット84締めにより締結固定し、更に、ガセツトプレート74のT字脚部板77を梁部材61のスリット72に嵌挿すると共に、これらT字脚部板77の小孔79及びこれに対応する梁部材61の貫通小孔73に渡ってせん断力伝達用のドリフトピン78を嵌合させて緊結、固定する構成となっている。
【0012】
本従来例3によれば、両切りボルトの軸部81にラグスクリューネジ部82を加工したラグスクリューボルト80を木質柱部材60のあらかじめ加工された貫通穴にねじ込み、木質柱部材60の外に出たボルトネジ部83と木質梁部材61とをT字型のガセットブレート74とドリフトピン78を用いて容易にしかも強固に接合することができ、柱部材60側面への梁部材61のめり込みも少なく、変形も少ない優れた接合構造となる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例1では、鋼板ガセット板62にあらかじめ穿設された複数個数のドリフトピン64を貫通嵌挿しうる小孔65の位置と、各小孔65に対応して柱部材60と梁部材61とに貫通穿設する貫通小孔66との位置が正確に合致しないと接合不可能となるため、接合前の加工作業に極めて高精度が要求され、加工手間が増大し、コスト的にも高価なものとなる問題点があった。
また、現場作業においても多数のドリフトピン64を貫通嵌挿するという煩雑な作業が必要となるため、現場施工性が悪いという欠点があった。
【0014】
また、上記従来例2では、上記従来例1に比較すると、施工性は向上する。
しかしながら、このような構成の接合では、梁部材61に曲げモーメントが作用すると、モーメントの伝達が圧縮側では、梁部材61の木口の柱部材60側面への三角形型めり込みによるため、このめり込む時の木材の抵抗力に依存して剛性、耐力が決定されてしまう。
このように、木質柱部材60側面への木質梁部材61の木口面のめり込みが大きいのが致命的な欠点であり、木質部材のめり込み抵抗力は低いものであるため、この接合構造では強い耐力は期待できないという問題点があった。
【0015】
さらに、上記従来例3の木質ラーメンフレームには、鋼板挿入式ドリフトピン接合が用いられており、柱部材60と梁部材61との各々の接合部にドリフトピン78を20本以上必要とするので、この点で上記従来例1と同様の煩雑な加工手間が必要であるという問題を有している。
また、本従来例3に係るラグスクリューボルト80は、図26に示すようにラグスクリューネジ部82の両端もしくは片端部に通常のMボルト仕様のボルトネジ部83を加工したもので、主としてラグスクリューネジ部82部分を柱部材60に挿入して端部のボルトネジ部83のみが外部に突出して梁部材61と結合される構成となっている。
しかし、柱部材60の外側にラグスクリューボルト80の端部が突出していると、施工現場において梁部材61を上から落とし込んで組み込む作業が困難となり、建て方に工夫が必要となる問題があった。
【0016】
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、木質部材を用いて高い施工性能と、高い強度の両者を兼ね備えた接合形式で、木質部材相互を剛接合することを可能としたラグスクリューボルトを用いた木質部材の接合構造を提供することを課題としている。
【0017】
また、本発明は、木質部材を用いて梁間方向及び桁行方向の両方向を同時に剛接合することも可能とし、鉄骨構造や鉄筋コンクリート構造と同様に、1方向だけでなく2方向ラーメン、さらには3方向ラーメン及び4方向ラーメンをも木質構造で実現することができるラグスクリューボルトを用いた木質部材の接合構造を提供することを課題としている。
【0018】
さらに、本発明は、構造用集成材という構造材を用いることにより、最終造作材の役割もこれに与え、したがって内部仕上げのコストの低減化、自由度の大きい広い空間の確保を図ることが可能なラグスクリューボルトを用いた木質部材の接合構造を提供することを課題としている。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、ラグスクリューボルトと引張ボルトとを用いて、第1木質部材と第2木質部材とを接合、固定させる接合構造であって、前記ラグスクリューボルトは、その外周面にラグスクリューネジ部が形成された軸部の軸心方向の端面から軸部中央に向けて軸部内に所定寸法分だけ中空孔が形成され、当該中空孔の周面に雌ネジ部が加工されてなり、前記引張ボルトは、軸部両端に雄ネジ部が形成され、一方の雄ネジ部が前記雌ネジ部に螺合可能とされてなり、接合すべき一方の前記第1木質部材には、前記第2木質部材に対向する端面を基端として、第1木質部材中央に向けて所定長さの貫通孔が形成されると共に、当該貫通孔の先端には、所定大きさの欠込み部が形成されてなり、前記中空孔の開口端が、接合すべき他方の前記第2木質部材表面と面一に露出する位置まで、前記ラグスクリューボルトが第2木質部材にねじ込み固定され、前記引張ボルトの前記一方の雄ネジ部が、前記雌ネジ部に螺着固定され、前記引張ボルトの軸部が、前記貫通孔に嵌挿されて、前記欠込み部内に突出した引張ボルトの他方の雄ネジ部が、座金を介してナット締めにより締結固定されることにより、前記第1木質部材と前記第2木質部材とが接合、固定されてなることを特徴としている。以上の構成からなる請求項1記載の発明では、まず、接合すべき第2木質部材の表面と面一に露出する位置まで、ラグスクリューボルトを第2木質部材にねじ込み固定すると共に、引張ボルトの一方の雄ネジ部を、ラグスクリューボルトの雌ネジ部に螺着固定し、次いで、引張ボルトの軸部を第1木質部材の貫通孔に嵌挿し、欠込み部内に突出した引張ボルトの他方の雄ネジ部を、座金を介してナット締めにより締結固定することにより、簡単な施工手順で容易に、しかも強固かつ正確に、第1木質部材と第2木質部材とを剛接合することが可能となり、第1木質部材端部の第2木質部材側面へのめり込みもなく、変形も少ない優れた接合構造となる。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記ラグスクリューボルトの前記雌ネジ部が加工されている端部には、リング状のフランジ部が形成されていることを特徴としている。
【0023】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明の構成に加えて、前記ラグスクリューボルトの雌ネジ部が軸部の片側一端又は両端に設けられていることを特徴としている。
ラグスクリューボルトの雌ネジ部が軸部の片側だけに設けられている構成では、例えば、1本の柱部材に対して1本の梁部材を緊結、接合する形式、又は、いわゆる2方向ラーメンとして、一本の柱部材に対して2本の梁部材を相互に直交して緊結、接合する形式が可能となる。
また、ラグスクリューボルトの雌ネジ部が軸部の両側に設けられている構成では、例えば、1本の柱部材に対して2本の梁部材が相互に直線状に緊結、固定される形式、又は、柱部材に埋設した一方向のラグスクリューボルトに対して、これと直交方向にもラグスクリューボルトを埋設して、1本の柱部材に対して3方向あるいは4方向に梁部材を接合させることも可能となり、いわゆる3方向ラーメンや、4方向ラーメン形式も具現化し得ることになる。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記ラグスクリューボルトと、これに対応して前記引張ボルトとが、前記第1木質部材と、前記第2木質部材との接合部位に少なくとも1本以上配設されて接合固定されていることを特徴としている。
請求項4記載の発明では、第1木質部材と第2木質部材とが、一方が柱部材で他方が梁部材の場合には、接合部位に2本のラグスクリューボルトと、これに対応した2本の引張ボルトとを配設して緊結、接合がなされるのが、高い施工性能と高い強度の両者を兼ね備えた接合形式として最も好ましい具体例であると言える。
【0025】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、設計条件によっては、第1木質部材と第2木質部材との接合部位に、1本のラグスクリューボルトと、これに対応した1本の引張ボルトとを配設して緊結、接合することも可能である。
更には、上記請求項3記載の発明の作用として記述したように、例えば、1本の柱部材に対して2本の梁部材が相互に直線状に緊結、固定される形式、又は、柱部材に埋設した一方向の2本以上のラグスクリューボルトに対して、これと直交方向にも2本以上のラグスクリューボルトを埋設して、1本の柱部材に対して3方向あるいは4方向に梁部材を接合させることも可能となり、いわゆる3方向ラーメンや、4方向ラーメン形式もさらに具体的に実現可能になる。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記第1木質部材と、前記第2木質部材とが、構造用集成材で形成されていることを特徴としている。
この場合、第1木質部材及び第2木質部材としての柱部材及び梁部材には、例えばベイマツ集成材で代表される集成材等が用いられるが、これに限定されるものではなく、例えば単板積層材(LVL)やPSLのようないわゆるエンジニアリングウツドであつても同様に本発明に適用することができる。
なお、本発明においては、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記ラグスクリューボルトが、直径20乃至4Ommの丸棒鋼の軸部に、ネジ谷径25mm、ネジ山径30mm、ピッチ10mm、角度80.54度という大径のラグスクリューネジ部の加工を施し、軸部の片側一端又は両端には、前記雌ネジ部としてM16ボルト仕様のネジ加工を施して構成することができる。
この場合、大径のラグスクリューネジ部を備えることにより、それだけ木質部材に食い込む幅が大きくなるから、ラグスクリューネジ部が大径となるほど、ラグスクリューボルトの引抜き耐力を高く設定することが可能となり、雌ネジ部に螺合される引張ボルトとしてのM16ボルトの長さを伸ばして、集成材のせん断強度を高めること等を考慮し、更には施工性能や製作性能の向上を実現するためには、この構成が具体例として好適である。
但し、本発明はこれに限定されず、設計条件に対応して、当該設計条件に最も適応したラグスクリューネジ部の加工や雌ネジ部としてのネジ加工を施すことが可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至図4は、本発明の第1実施形態を示すものである。
本実施形態は、図1乃至図4に示すラグスクリューボルト1と、図3及び図4に示す引張ボルト10とを用いて、第1木質部材20としての柱部材と、第2木質部材30としての梁部材とを接合、固定させる接合構造を例示している。
【0028】
ラグスクリューボルト1は、図1及び図2に示すように、ラグスクリューネジ部2が形成された軸部3の軸心方向の端面3aから、軸部3の中央3bに向けて、当該軸部3の軸心と同心円状に軸部3内に所定寸法分だけ中空孔4が形成され、当該中空孔4の周面に雌ネジ部5が加工されて構成されている。
ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5は、本実施形態では図1及び図2に示すように軸部3の片側一端に設けられている。
そして、軸部3の雌ネジ部5が加工されている端部には、本実施形態ではリング状のフランジ部6が形成されている。
【0029】
ラグスクリューボルト1は、本実施形態では一例として、図1及び図2に示すように、加工前に所定直径を有する普通鋼からのSS400の削り出しにより、軸部3に、ネジ谷径25mm、ネジ山径30mm、ピッチ10mm、角度80.54度という仕様のラグスクリューネジ部2の加工が施されている。
しかしながら、ラグスクリューボルト1の製造方法としては、SS400の削り出しに限定されるものではなく、量産体制を想定した場合等には、転造で製造するのが望ましい場合もある事は、言うまでも無い
また、軸部3の片側一端に加工された雌ネジ部5は、本実施形態では一例として、ネジ谷径で直径16mmに設定されており、よって、M16ボルト仕様の引張ボルト10が螺合し得るように構成されている。
しかしながら、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、ラグスクリューネジ部2の加工寸法や、雌ネジ部5の加工寸法等は、設計条件に対応して、当該設計条件に最も適した加工寸法に設定可能である。
【0030】
引張ボルト10は、図3及び図4に示すように、軸部11の両端に雄ネジ部12が形成され、一方の雄ネジ部12aが、前記雌ネジ部5に螺合可能に形成されている。
即ち、本実施形態では、雌ネジ部5がネジ谷径で直径16mmの仕様寸法に加工されているため、引張ボルト10はM16ボルト仕様に設定され、一方の雄ネジ部12aが、雌ネジ部5に螺合可能となっている。
また、他方の雄ネジ部12bは、後述の如く、座金14を介してナット15により、締付け固定しうるようになっている。
なお、引張ボルト10としては、高張力ボルトを使用するのが望ましいが、かなずしもこれに限定されず、設計条件によっては、通常の普通ボルトを使用することもできる。
【0031】
接合すべき一方の柱部材20には、他方の梁部材30に対向する端面21を基端として、当該柱部材20の中央に向けて所定長さの貫通孔22が形成されると共に当該貫通孔22の先端には、所定大きさの欠込み部23が形成されている。
即ち、柱部材20にあらかじめ形成された貫通孔22の一方の開口端22aは、梁部材30に対向する端面21側に開口しており、貫通孔22の他方の開口端22bは、欠込み部23内の所定位置に開口していることになる。
【0032】
図4に示すように、柱部材20の端面21に対向する所定位置において、梁部材30には、先孔40があらかじめ加工されている。
即ち、本実施形態ではラグスクリューボルト1のラグスクリューネジ部2のネジ谷径25mm、ネジ山径30mmの設定寸法に対応して、直径寸法25mmの先孔40が形成されている。
なお、本実施形態では、柱部材20と梁部材30との接合位置に2本のラグスクリューボルト1が配設される構成となっているため、これに対応して2本の引張ボルト10と、2か所の先孔40が形成されている。
即ち、本実施形態では、第1木質部材20が柱部材で、第2木質部材30が梁部材であり、接合部位に2本のラグスクリューボルト1と、これに対応した2本の引張ボルト10とを配設して緊結、接合がなされるのが、高い施工性能と高い強度の両者を兼ね備えた接合形式として最も好ましい具体例であると言えるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0033】
また、本実施形態では、第1木質部材としての柱部材20と、第2木質部材としての梁部材30とが、構造用集成材で形成されている場合を例示している。 この場合、柱部材20及び梁部材30には、例えばベイマツ集成材で代表される集成材等が用いられるが、これに限定されるものではなく、例えば単板積層材(LVL)やPSLのようないわゆるエンジニアリングウツドであつても同様に本発明に適用することができる。
また、通常のムクの木材を用いることも可能なことは言うまでも無い。
第1木質部材としての柱部材20と、第2木質部材としての梁部材30とが、構造用集成材で形成されている場合、先孔40は集成材の積層方向及び幅方向に形成するのが強度面からして好ましい実施形態であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0034】
以上の構成からなる本実施形態において、以下にラグスクリューボルト1と引張ボルト10とにより、柱部材20と梁部材30とを剛接合する手順を主として図4により説明する。
まず、接合すべき第2木質部材としての梁部材30の表面31と面一に露出する位置まで、ラグスクリューボルト1を梁部材30にねじ込み固定する。
この際には、2本のラグスクリューボルト1のねじ込み位置には、ラグスクリューボルト1のラグスクリューネジ部2のネジ谷径25mm、ネジ山径30mmの設定寸法に対応して、25mmの内径寸法を有する先孔40があらかじめ加工、形成されているため、ラグスクリューボルト1のラグスクリューネジ部2は、その外径寸法30mmとの差寸法5mm分だけ先孔40の周面に食い込みながらねじ込み固定されることになる。
これは、十分な食い込み力を発揮させて引抜き強度を向上させると共に、ねじ込み時の抵抗を比較的低く抑えて施工性能の向上を図り、かつ、ラグスクリューボルト1が、ねじ込み時に曲がってねじ込まれる事を防止する意図から寸法設定がなされたものである。
【0035】
また、ラグスクリューボルト1を梁部材30にねじ込み固定する際には、ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5にあらかじめ、ねじ込み専用の寸切りボルト(図示せず、両端部に雄ネジ部が形成されている。)を螺合して取り付けておき、当該寸切りボルトの他方の雄ネジ部にはナットを螺合しておき、当該ナットにインパクトレンチ(図示せず)を嵌合させて、梁部材30にラグスクリューボルト1をねじ込み固定するのが、施工性能の向上の観点からして好ましい実施形態であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
即ち、例えば普通のM16ボルトを使用するのであれば、その頭にインパクトレンチのソケットを嵌めて、ねじ込めば良い。
【0036】
そして、接合すべき梁部材30の表面31と面一に露出する位置まで、ラグスクリューボルト1を梁部材30に埋込んだら、今度は、ねじ込み専用の寸切りボルトを取り外す。
これは、ラグスクリューボルト1のねじ込み固定作業をあらかじめ施工現場以外の工場等の場所で行うことを前提としているためで、搬送時に引張ボルト10の一方の雄ネジ部12をラグスクリューボルト1の雌ネジ部5に螺合した状態では、当該引張ボルト10が梁部材30から突出した態様となるため、搬送時に邪魔になるだけでなく、引張ボルト10自体が損傷する恐れがあるためである。
この際には、例えば、ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5側のフランジ部6をパイプレンチ(図示せず)で固定しておき、ラチェットレンチ(図示せず)を使用してねじ込み専用の寸切りボルトを取り外せばよい。
【0037】
また、ラグスクリューボルト1を梁部材30にねじ込み固定する際には、ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5にあらかじめ、ねじ込み専用の寸切りボルトを螺合するのを省略して、直接、引張ボルト10の一方の雄ネジ部12aを螺合しておいても良い。
このようにして、第2木質部材としての梁部材30に2本のラグスクリューボルト1が所定深さまでねじ込み固定される。
【0038】
次に、各ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5に引張ボルト10の一方の雄ネジ部12aが螺合された状態とする。
次いで、引張ボルト10の軸部11を他方の雄ネジ部12bを先頭にして、第1木質部材としての柱部材20にあらかじめ加工されている一対の貫通孔22、22に落とし込む様に嵌挿する。
そして、欠込み部23内に突出した引張ボルト10の他方の雄ネジ部12bに、図示の如く、座金14を介してナット15を取付け、ラチェットレンチ等を使用して引張ボルト10とナット15とを強固に締付けることにより、柱部材20と梁部材30とが強固に緊結、固定される。
よって、欠込み部23は、上記した締付け作業が可能なだけのスペースを有する大きさにあらかじめ設定して加工しておくものとする。
【0039】
かかる本実施形態では、梁部材30への一対の先孔40の加工と、これに対応した柱部材20への一対の貫通孔22の加工と、一対の欠込み部23の加工、更には、一対の先孔40へのラグスクリューボルト1のねじ込み作業までをあらかじめ施工現場以外の工場等で行う。
そして、施工現場では、引張ボルト10の一方の雄ネジ部12を、一対のラグスクリューボルト1の雌ネジ部5へ螺合する作業と、引張ボルト10の他方の雄ネジ部12bに、座金14を介してナット15を取付け、引張ボルト10とナット15とを締付け固定する作業だけで済むため現場で行うこともできるが、あらかじめ現場搬入前に工場等でこれらの加工や作業を行うことも可能であり、むしろこの方が、これらの加工を極めて高い精度で実施することができる。
【0040】
また、上記各加工や上記各作業をあらかじめ現場搬入前に工場等で行っておけば、施工現場での作業は、引張ボルト10の他方の雄ネジ部12bを先頭にして、柱部材20にあらかじめ加工されている一対の貫通孔22、22に引張ボルト10を嵌挿する作業と、引張ボルト10の他方の雄ネジ部12bを、座金14を介してナット15で強固に締付ける作業のみとなる。
よって、極めて簡単な施工手順で、容易に、しかも強固かつ正確に、第1木質部材としての柱部材20と、第2木質部材としての梁部材30とを剛接合することが可能となり、柱部材20端部の梁部材30側面へのめり込みもなく、変形も少ない優れた接合構造となる。
【0041】
本実施形態は、第1木質部材20が柱部材であり、第2木質部材30が梁部材である場合なので、梁部材30にラグスクリューボルト1をねじ込み固定し、柱部材20に引張ボルト10の他方の雄ネジ部12bを座金14を介してナット15により強固に締結固定することになり、いわゆる梁勝ちの接合形式となる。
この梁勝ちの接合形式では、梁部材30に曲げモーメントが作用した際のモーメントの伝達は、引張側では、梁部材30のモーメント→梁部材30側ラグスクリューボルト1のすべり(引抜き)→引張ボルト10の引張力→柱部材20側座金14のめり込み→柱部材20の材端モーメントとして応力伝達がなされる。
一方、圧縮側では、柱部材20端部の梁部材30側面への三角形型めり込みとなる。
【0042】
そして、次に述べる実験結果からしても、いわゆる梁勝ちの接合形式では、圧縮側での、柱部材20端部の梁部材30側面への三角形型めり込みにより最大強度が決定されるのではなく、梁部材30側に埋め込まれたラグスクリューボルト1の引抜き耐力、あるいは、引張ボルトによる集成材のせん断耐力で接合部の強度が決定されることになる。
【0043】
よって、本実施形態では、上記従来例1のような問題点が生じる恐れがない。
即ち、鋼板ガセット板52にあらかじめ穿設された複数個数のドリフトピン54を貫通嵌挿しうる小孔55の位置と、各小孔55に対応して柱部材50と梁部材51とに貫通穿設する貫通小孔56との位置とが、正確に合致しないと接合不可能となるため、接合前の加工作業に極めて高精度が要求され、加工手間が増大し、コスト的にも高価なものとなるというような問題は、全く生じない。
また、現場作業においても、多数のドリフトピン54を貫通嵌挿するという煩雑な作業は全く不必要であり、現場施工性が悪いという問題も解決しうる。
【0044】
また、上記従来例2のように、梁部材51の木口の柱部材50側面へのめり込みにより接合部の強度が決定されるものでも無い為、構造的に極めて合理的な接合構造である。
【0045】
さらに、上記従来例3における問題点も発生する恐れは皆無である。
即ち、従来例3の木質ラーメンフレームには、鋼板挿入式ドリフトピン接合が用いられており、柱部材80と梁部材81との各々の接合部にドリフトピン78を20本以上必要とするので、この点で従来例3は上記従来例1と同様の煩雑な加工手間が必要であるという問題を有していたが、本実施形態では、このような問題は全く生じないのは、上記従来例1との比較の場合と同様である。
また、上記従来例3では、柱部材80の外側にラグスクリューボルト70の端部が突出しているため、施工現場において梁部材81を上から落とし込んで組み込む作業が困難となり、建て方に工夫が必要となるという問題があったが、本実施形態では、ラグスクリューボルト1は、完全に梁部材30内に埋設された状態であるため、このような問題も生じる余地が無い。
【0046】
1.ラグスクリューボルトの引抜き耐力試験
1.1 ラグスクリューボルトの基礎的概念
図1及び図2は、試験を行ったラグスクリューボルト1の構造と詳細を示している。
ラグスクリューボルト1は、ネジ山径30mm、ネジ谷径25mmの軸部3に10mmピッチ、傾斜角80.54度のラグスクリューネジ部が形成され、軸部3の端面には内部にM16ボルトに対応した雌ネジ部5が加工され、M16/F10Tの高張力ボルトと螺合しうるようになっている。
図1及び図2に示すラグスクリューボルト1は、あくまで実験用のものであり、未だ確定したものではない。
ラグスクリューボルト1がねじ込まれる先孔は、実験用として暫定的に内径25mmに設定されている。
この寸法は、ラグスクリューボルト1のねじ込み作業が、容易に行え、かつ、ラグスクリューボルト1のねじ込み作業の際に、当該ラグスクリューボルト1が曲がることなくねじ込まれるように計算された上でのものであり、未だ最適条件のものか否かは明らかになっていない。
よって、更なる追加実験が、最適条件を見出す為に進行中である。
電動トルクレンチを使用することにより、全長280mmのラグスクリューボルト1は、集成材の繊維方向と直交する方向にねじ込まれる。
【0047】
2.1 供試集成材
木質部材として、ベイマツ構造用集成材を用いた。
表1に供試集成材の基礎材質を示す。
2.2 引抜き試験のセットアップ
供試用ラグスクリューボルト1は、本願出願人の内、旭テック株式会社が試作した。
材質的には、基礎的なデータに基づいて、普通鋼から創り出したものである。
最終的に決定された形状、寸法等を図1及び図2に示す。
木工用の直径25mmのドリルで所定深さの先孔40を集成材の積層方向に開け、ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5にMl6ボルトを取り付けて、インパクトレンチを用いてラグスクリューボルト1を埋め込んだ。
所定の深さまでラグスクリューボルト1を埋め込んだら、今度は雌ネジ部5に取り付けた埋込専用のMl6ボルトを取り除く必要がある。
ラグスクリューボルト1の基端のネジでないリング状フランジ部6をパイプレンチで固定し、ラチェットレンチを使つて、Ml6ボルトを取り外した。
引抜き試験は、京都大学木質科学研究所木質ホール1階に設置されたH型鋼材の柱41とアンカー固定台42を組み合わせた反力フレーム内に、図5のような試験装置43をセットして実施した。
加力には押し30tonf、引き15tonf の能力を持つオイルジャッキ44を用い、容量20tonf のロードセル45によつて、引抜き荷重を計測した。
図6及び図7に引抜き変位測定法の詳細を示す。
図から明らかなように、ラグスクリューボルト1の先端に付けた高張力Ml6ボルト(引張ボルト)10の頭部分に、高精度変位計(CDP−100)46をセットして引抜き量を測定した。
個々の供試体(集成材ブロック)47は、6000mmの全長を有する集成材製梁を約1000mmの長さに切断して得た。
個々の集成材梁の異なる箇所に夫々約8個の穴を開け、各穴に1本のラグスクリューボルト1を埋込むことで繰り返し使用した。
また、限られた個数しかラグスクリューボルト1を用意していなかった為、1本のラグスクリューボルト1を基本的に数回繰り返し使用して実験を行った。
図6及び図7に示すように集成材ブロック47を反力台48にあてがう形で引抜き試験を行つた。
埋込長さLO は、約50mmから始めて、当該埋込長さLO を増加させてゆき、ほぼ連続的なデータが得られるように最大280mmまでとした。
【0048】
3.結果および考察
3.1 表2及び表3にほぼ全試験体の引抜き試験結果のデータを示す。
合計では、45回の引抜き試験が行われたが、実験当初、高張力ボルトを使用しなかった為、このうち4回の試験が失敗に終わった。
この失敗した試験のデータは、データ分析から除外した。
3.2 最大引抜き荷重(Pmax )と埋込長さ(Lo )の関係
図8に、最大引抜き荷重(Pmax )と埋込長さ(Lo )の関係を示す。
最大引抜き荷重(Pmax )と、埋込長さ(Lo )との間に得られた回帰式は式(1)の通りである。
式(1)・・・Pmax =41.63(Lo )
この回帰式を元に、単位長さ当たりの最大引抜き荷重(Pmax /Lo )と埋込長さ(Lo )の関係を求めると式(2)が得られる。
式(2)・・・Pmax /Lo =41.63(Kgf/mm)
3.3 すべり係数(Ks )と埋込長さ(Lo )の関係
図9に、すべり係数(Ks )と埋込長さ(Lo )の関係を示す。
すべり係数(Ks )と埋込長さ(Lo )の間に得られた回帰式は式(3)の通りである。
式(3)・・・Ks =25.15LO +7603.6(Kgf/cm)
【0049】
5.梁−柱モーメント抵抗接合の試験
ラグスクリューボルト1の現実的応用の一つとして、ラグスクリューボルト1と、普通ボルト10のみで構成されたL型梁−柱モーメント抵抗接合の予備的試験を行った。
上記図3及び図4に模式図的に示すように、L型のベイマツ構造用集成材を用いた梁−柱モーメント抵抗接合構造についての試験を今回の研究の一環として行ったものである。
【0050】
5.1 供試集成材
L型梁−柱モーメント抵抗接合の供試体として、三個のベイマツ構造用集成材からなる木質部材を用意して使用した。
表4に供試集成材の特性を示す。
これらの長い供試集成材を夫々2つに切断して、梁−柱の接合部の構造実験を行った。
3個のL型梁−柱モーメント抵抗接合の供試体は、京都大学の木質科学研究所で制作された。
5.2 接合具
ラグスクリューボルト1に関しては、上記引抜き試験において使用したものを再使用した。
よって、それらの中のいくつかのものは、雌ネジ部の先端において予期せぬダメージを受けていたと思われる。
また、M16普通ボルトとしては、高張力タイプのボルトを使用して実験を行った。
【0051】
5.3 試験のセットアップ
図10及び図11は、L型梁−柱モーメント抵抗接合構造の試験のセットアップ状態を示しており、静的な圧縮、引張の繰り返しにより試験は実行された。
図10において、集成材柱20と、集成材梁30との接合部は、いわゆる梁勝ちの接合形式であり、図3及び図4に示す上記第1実施形態と同様の構成となっている。
柱部材20及び梁部材の接合部とは反対側の両端部は、各々鋼製反力フレーム42上にローラー50を介して載置されており、かつ、当該両端部は、ピン49によって回動可能に支承されており、梁部材30の方のピン49接合部には、容量20tonfのロードセル45を介して高精度変位計(CDP−100)が配設されている。
これらの装置は、上記引抜き耐力試験に用いられたものと同様である。
5.4 モーメントと回転角についての結論
一対のラグスクリューボルトの中心位置に作用するモーメントMについては次の回帰式(4)の通りである。
式(4)・・・M=P.e
また、回転角θについては式(5)の通りである。
式(5)・・・θ=(#3−#2)/h23
ここで、Pは、載荷荷重(Kgf)
eは、モーメントアーム(=1022mm)
#3と#2は、図10に示す変位測定装置により測定された
相対的変位
23は、#3と#2との間の間隔である。
5.4 載荷周期
周期的な荷重は、回転角により制御されている。
基本的な実験観察記録は、1/300,1/120,1/60及び1/30ラジアンで行われた。
【0052】
6. 実験結果と検討
6.1 Mとθとの関係
モーメント抵抗接合において測定されたモーメントMと回転角θとの関係は、所定の相関関係にある。
6.2 実験不成功の事実とその考察
No.1 試験体において実験不成功の事態が発生した。
この試験体では、直径50mmの円板状の座金がM16ボルトを柱に接合するために使用されていた。
支承範囲がやや不適当だった為に、座金が集成材に過度に埋め込まれ、これにより、柱が割裂したものと思われる。
No.1 試験体への最大荷重(+Pmax )は、1369kgf 、モーメントアームが102、2cmであるから、よって、最大の正モーメント(+Mmax )は、式(5)の通りである。
式(5)・・+Mmax =1369kgf ×102.2cm=139912kgfcm
よって、M16ボルト及び/又はラグスクリューボルトが支持した軸力(+Tmax )は、式(6)のようになる。
式(6)・・+Tmax =Mmax /g=8230kgf
これより、座金にかかっていた最大圧縮応力度(+σc )は、式(7)のようになる。
Figure 0004087977
従ってこの値は、針葉樹材の最大圧縮力よりもやや大きく、観察された不成功が理解し得る。
No.2試験体とNo.3試験体は、集成材の圧縮破損を防ぐために50×50×5mmの厚い座金を使用した。
ところが、No.2試験体では、せん断ラインに沿って脆弱なせん断破壊が生じた。
No.2試験体の最大押圧荷重(+Pmax )は、1616kgfであり、よって、最大の正モーメント(+Mmax )は、式(8)の通りである。
式(8)・・+Mmax =1616kgf ×102.2cm=165155kgfcm
そして、M16ボルト及び/又はラグスクリューボルトが支持したことになる軸力(+Tmax )は、式(9)のようになる。
式(9)・・+Tmax =Mmax /g=9715kgf
これにより、図12及び図13に斜線で示す領域に作用していた最大せん断力(π)は、式(10)の通りとなる。
Figure 0004087977
式(10)のせん断力の値は平均値であり、応力集中の効果を考慮すると、この平均せん断力は、木目に沿って突然の割裂を生じるのに十分な値である。
No.3試験体の場合は、最大押圧荷重(+Pmax )が934kgfに達した時点で、ラグスクリューボルトの雌ネジ部から突然割裂が発生した。
故障が発生した荷重は、期待値よりも遥かに小さかった。
この突然のトラブル発生の理由としては、繰り返し使用されたラグスクリューボルトに引抜き試験を行っている間に、軸部内で何らかの潜在的なダメージが生じたと思われる。
No.3試験体の最終的な不成功の状態は、負の最大引抜き荷重(−Pmax )=1603kgf の時点で発生し、No.2試験体の場合と同様の現象が起こったと考えられる。
【0053】
7.結論
ラグスクリューボルトの基本的な引抜き耐力性能は、この研究によって一定の評価に値することが見極められた。
埋込み深さ別の、ネジ山径30mmのラグスクリューボルト1本当たりの最大引抜き耐力は、約42kgf/mmであった。
一方、すべり係数(Ks )は、埋込み深さに対して殆ど相関性を持たなかった。
また、L形状の梁−柱接合部の試験体を使用することにより、ラグスクリューボルトを集成材を利用したモーメント抵抗接合部に適用するための仮試験を行った。
試験結果は、芳しくなかったが、少なくとも更なる調査、開発を進めていく際の方向性は示されたものと考える。
即ち、以上の結果から、上記の接合構造を用いることによって、建設現場で容易に施工ができ、しかも初期の変形が少なく、強度と粘りの大きい木質部材相互の接合構造が達成できることが実証された。
【0054】
次に、図14は、本発明の第2実施形態を示すものである。
本実施形態では、第1木質部材が梁部材30であり、第2木質部材が柱部材20である構成を例示している。
よって、いわゆる柱勝ちの接合形式となっている。
即ち、本実施形態では、柱部材20側に2個所の先孔40が穿設形成され、この各先孔40に各々ラグスクリューボルト1、1がねじ込まれ、さらに、各ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5に、引張ボルト10の一方の雄ネジ部12aが螺合し、梁部材30に引張ボルト10の他方の雄ネジ部12bを座金14を介してナット15締めにより締結固定するする形式となっており、梁部材30側に引張ボルト10用の一対の貫通孔22が穿設形成され、当該貫通孔22の梁部材30中央側の開口端が、所定大きさの欠込み部23に面するように一対の欠込み部23が形成されている。
【0055】
この柱勝ちの接合形式では、梁部材30に曲げモーメントが作用した際のモーメントの伝達は、引張側では、梁部材30の材端モーメント→梁部材30側座金14のめり込み→引張ボルト10の引張力→柱部材20側ラグスクリューボルト1のすべり(引抜き)→柱部材20のモーメントとして応力伝達がなされる。
一方、圧縮側では、梁部材30端部の柱部材20側面への三角形型めり込みとなる。
なお、せん断力は、ダボ51等のせん断抵抗物を柱部材20と梁部材30との接合部の略中立軸位置に挿入することで伝達する。
本第2実施形態では、せん断力伝達用のダボ51を余分に設ける必要がある分だけ第1実施形態に比較して構成要件が増加するが、応力伝達面では、上記第1実施形態に準じた高い施工性能と、高い強度の両者を兼ね備えた接合形式で、木質部材相互を剛接合することが可能な接合構造である。
【0056】
また、図15は本発明の第3実施形態を示すものであり、本実施形態では、いわゆる柱勝ち接合形式で2方向ラーメンを構成した場合を例示している。
即ち、本実施形態でも、上記第2実施形態と同様に、第1木質部材が梁部材30であり、第2木質部材が柱部材20である構成となっているが、更に、一本の柱部材20に対して直交する2本の梁部材30、30が剛接合されている、2方向ラーメン構造を構成した場合を例示している。
本実施形態では、柱部材20に対して相互に直交する2方向から一対のラグスクリューボルト1、1が、相互に垂直方向の位相をずらせて交差する態様でねじ込み固定されている。
その他の構成は、上記第2実施形態を同様であるので、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
なお、本実施形態でもせん断力伝達用のダボ50を利用する構成は、第2実施形態と同様である。
本実施形態では、極めて簡単な構成でもって、剛接合形式の2方向ラーメンを実現化することができ、高い施工性能と高い強度性能とを兼備した接合構造となる。
【0057】
次に、図16は本発明の第4実施形態を示すものであり、本実施形態は、第1木質部材が梁部材30で、第2木質部材も梁部材30である場合、即ち、梁−梁の接合構造の場合を例示している。
本実施形態は梁部材30相互を梁間方向の中間位置で剛接合する必要がある場合に好適な実施形態である。
本実施形態では、一方の梁部材30に2個所の先孔40が穿設形成され、この各先孔40に各々ラグスクリューボルト1、1がねじ込まれ、さらに、各ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5に、引張ボルト10の一方の雄ネジ部12aが螺合し、他方の梁部材30に引張ボルト10の他方の雄ネジ部12bを座金14を介してナット15締めにより締結固定するする形式となっており、梁部材30側に引張ボルト10用の一対の貫通孔22が穿設形成され、当該貫通孔22の梁部材30中央側の開口端が、所定大きさの欠込み部23に面するように一対の欠込み部23が形成されている。
なお、せん断力は、ダボ51等のせん断抵抗物を梁部材30、30相互の木口面の略中立軸位置に挿入することで伝達する。
【0058】
次に、図17は、本発明の第5実施形態を示すものであり、本実施形態は、第1木質部材が柱部材20で、第2木質部材も柱部材20である場合、及び、第1木質部材が土台部材52で、第2木質部材も土台部材52である場合の両方に共通する接合構造を例示している。
本実施形態では、柱−柱もしくは土台−土台の接合で、曲げモーメントを考慮する必要がない場合を想定しており、よって、柱部材20相互の接合又は土台部材52相互の接合には、1本のラグスクリューボルト1とこれに対応して1本の引張ボルト10だけでの接合例である。
【0059】
そして、一方の柱部材20もしくは土台部材52に先孔40が穿設形成され、この先孔40に1本のラグスクリューボルト1がねじ込まれ、さらに、ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5に、引張ボルト10の一方の雄ネジ部12aが螺合し、他方の柱部材20もしくは土台部材52に引張ボルト10の他方の雄ネジ部12bを座金14を介してナット15締めにより締結固定するする形式となっており、他方の柱部材20もしくは土台部材52側に引張ボルト10用の貫通孔22が穿設形成され、当該貫通孔22は他方の柱部材20もしくは土台部材52側の開口端が、所定大きさの欠込み部23に面するように一対の欠込み部23が形成されている。
【0060】
次に、図18は、本発明の第6実施形態を示すものであり、本実施形態は、第1木質部材が柱部材20で、第2木質部材は土台部材52である場合の接合構造を例示している。
本実施形態でも、柱−土台の接合で、曲げモーメントを考慮する必要がない場合を想定しており、よって、柱部材20と土台部材52相互の接合には、1本のラグスクリューボルト1とこれに対応して1本の引張ボルト10だけでの接合例である。
【0061】
そして、土台部材52に先孔40が穿設形成され、この先孔40にラグスクリューボルト1がねじ込まれ、さらに、ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5に、引張ボルト10の一方の雄ネジ部12aが螺合し、柱部材20に引張ボルト10の他方の雄ネジ部12bを座金14を介してナット15締めにより締結固定するする形式となっており、柱部材20側に引張ボルト10用の貫通孔22が穿設形成され、当該貫通孔22の柱部材30中央側の開口端が、所定大きさの欠込み部23に面するように一対の欠込み部23が形成されている。
【0062】
次に、図19はラグスクリューボルト1の他の実施形態を示すものであり、本実施形態では、ラグスクリューボルト1は、フランジ部6が形成され、中空孔4が軸部3中央に向けて40mm分の長さだけ形成されて、当該中空孔4の周面に雌ネジ部5が刻設されている点は、上記図1及び図2に示した実施形態と同様であるが、本実施形態では、雌ネジ部5の形成された軸部3の基端とは反対側の軸部3先端が先鋭状に形成されて、先孔40にラグスクリューボルト1をねじ込み固定する際のねじ込み作業をより効率的に行うことを企図している。
その他の構成は、図1及び図2に示した実施形態と同様であるため、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
次に、図20は、ラグスクリューボルト1の雌ネジ部5が軸部3の一端片側だけではなく両端に設けられている構成を例示している。
このようにラグスクリューボルト1の雌ネジ部5が軸部3の両端に設けられている場合には、例えば、1本の柱部材20に対して2本の梁部材30、30が相互に直線状に緊結、固定される形式や、又は、柱部材20に埋設した一方向のラグスクリューボルト1に対して、これと直交方向にもラグスクリューボルト1を埋設して、1本の柱部材20に対して3方向あるいは4方向に梁部材30を接合させることも可能となり、いわゆる3方向ラーメンや、4方向ラーメン形式も具現化し得ることになる。
【0064】
図21は、本発明の第7実施形態を示しており、1本の柱部材20に対して4方向に梁部材30を接合させたいわゆる4方向ラーメンの場合を例示しているものである。
また、本実施形態では、上記図14に示された本発明の第2実施形態の場合と等とは異なり、せん断力伝達用のダボ51等は使用しなくても良いように、柱部材20にあらかじめ所定の加工を施してある、
即ち、図21に示すように、柱部材20には、4本の梁部材30の接合端部が載置可能なような欠込み部53が加工されており、各梁部材30の接合端部をこの欠込み部53上に載置することによりせん断力を伝達可能に構成されていることを特徴としている。
その他の構成は、図14に示したいわゆる柱勝ちの接合形式と同様であり、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、この欠込み部53をあらかじめ加工しておく作業が追加されるが、それを補って余り有るだけの合理的な接合形態となる。
即ち、本実施形態では、せん断力伝達用のダボ等を取付ける為の加工作業が省略でき、この加工作業よりは、はるかに簡単な欠込み部53を形成する作業だけで良くなる為、施工性が大幅に向上することになる。
【0066】
なお、上記各実施形態では、各接合部に配設されるラグスクリューボルト1の本数は、2本もしくは1本であり、第1木質部材と第2木質部材とが、一方が柱部材20で他方が梁部材30の場合には、接合部位に2本のラグスクリューボルト1、1と、これに対応した2本の引張ボルト10、10とを配設して緊結、接合がなされるのが、高い施工性能と高い強度の両者を兼ね備えた接合形式として最も好ましい具体例であると言える。
【0067】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、設計条件によっては、上記した図17及び図18に示した実施形態のように、第1木質部材と第2木質部材との接合部位に、1本のラグスクリューボルト1と、これに対応した1本の引張ボルト10とを配設して緊結、接合することも可能である。
さらには、1本の柱部材20に対して2本の梁部材30が相互に直線状に緊結、固定される形式、又は、柱部材に埋設した一方向の2本以上のラグスクリューボルトに対して、これと直交方向にも2本以上のラグスクリューボルトを埋設して、1本の柱部材に対して3方向あるいは4方向に梁部材を接合させることも可能となり、いわゆる3方向ラーメンや、4方向ラーメン形式もさらに具体的に実現可能になる。
【0068】
また、上記各実施形態では、第1木質部材及び第2木質部材として使用される材質を大断面の集成材を用いることを前提としており、この場合、第1木質部材及び第2木質部材としての柱部材、梁部材等には、例えばベイマツ集成材で代表される集成材等が用いられるが、これに限定されるものではなく、例えば単板積層材(LVL)やPSLのようないわゆるエンジニアリングウツドであつても同様に本発明に適用することができる。
さらに、本発明は、それ以外にも通常の伝統的な木構造の建築物のようにムクの木材を使用することも当然に可能であり、この場合でも上記各実施形態に準じた作用効果を奏し得る。
【0069】
また、上記各実施形態では、ラグスクリューボルト1が、軸部3に、ネジ谷径25mm、ネジ山径30mmという大径のラグスクリューネジ部2の加工を施した場合を例示しており、大径であればある程、ラグスクリューネジ部2が先孔40にめり込む幅が大きくなるため、ラグスクリューボルト1の引抜き耐力が向上する。
即ち、ラグスクリューボルトの引抜き強度を高く確保し、雌ネジ部に螺合される引張ボルトとしてのM16ボルトの長さを伸ばして、集成材のせん断強度を高めること等を考慮し、更には施工性能や製作性能の向上を実現するためには、この構成が具体例として好適である。
しかしながら、本発明は上記仕様に限定されず、設計条件によっては更に大径のラグスクリューネジ部2とすることも当然に可能であり、さらに、それ程の引抜き耐力を要求されない接合構造の場合には、上記仕様よりも細い径のラグスクリューネジ部2とすることも可能であることは云うまでも無い。
【0070】
【発明の効果】
上記構成からなる発明では、次のような効果を奏し得る。
(1)従来の問題点を解決し、木質部材を用いて高い施工性能と、高い強度の両者を兼ね備えた接合形式で木質部材相互を剛接合し得る、木質ラーメン構造を実現化することが可能となる。
(2)第2木質部材への先孔の加工や、これに対応した第1木質部材への貫通孔の加工、さらには、欠込み部の加工、先孔へのラグスクリューボルトのねじ込み作業までをあらかじめ工場等で行うことが出来、施工現場では引張ボルトの一方の雄ネジ部をラグスクリューボルトの雌ネジ部に螺合する作業と、引張ボルトの他方ん雄ネジ部を座金を介してナットで締付け固定する作業だけで済むため、簡単な施工手順で容易に、しかも強固かつ正確に、第1木質部材と第2木質部材とを剛接合することが可能となり、第1木質部材端部の第2木質部材側面へのめり込みもなく、変形も少ない優れた接合構造となる。
(3)大径のラグスクリューネジ部を備えることにより、それだけ木質部材に食い込む幅が大きくなるから、ラグスクリューボルトの引抜き耐力を高く設定することが可能となり、雌ネジ部に螺合される引張ボルトとしてのM16ボルトの長さを伸ばして、集成材のせん断強度を高めることも出来、更には施工性や製作性の向上を実現することが可能となる。
(4)梁勝ちの接合形式では、圧縮側での柱部材端部の梁部材側面への三角形型めり込みにより最大強度が決定されるのではなく、梁部材側に埋め込まれたラグスクリューボルトの引抜き耐力により、接合部の強度が決定されることになるため、合理的で、かつ、安全な設計が可能となる。
(5)ラグスクリューボルトの雌ネジ部が軸部の片側だけに設けられている構成では、1本の柱部材に対して1本の梁部材を緊結、接合する形式、又は、いわゆる2方向ラーメンとして、一本の柱部材に対して2本の梁部材を相互に直交して緊結、接合する形式が可能となる。
(6)ラグスクリューボルトの雌ネジ部が軸部の両側に設けられている構成では、1本の柱部材に対して2本の梁部材が相互に直線状に緊結、固定される形式、又は、柱部材に埋設した一方向のラグスクリューボルトに対して、これと直交方向にもラグスクリューボルトを埋設して、1本の柱部材に対して3方向あるいは4方向に梁部材を接合させることも可能となり、いわゆる3方向ラーメンや、4方向ラーメン形式も具現化し得ることになる。
(7)よって、木質部材を用いて梁間方向及び桁行方向の両方向を同時に剛接合することも可能であるし、鉄骨構造や鉄筋コンクリート構造と同様に、1方向だけでなく2方向ラーメン、さらには3方向ラーメン及び4方向ラーメンをも木質構造で実現することができる。
(8)各接合部に配設されるラグスクリューボルト1の本数は、第1木質部材と第2木質部材とが、一方が柱部材で他方が梁部材の場合には、接合部位に2本のラグスクリューボルトと、これに対応した2本の引張ボルトとを配設して緊結、接合がなされるのが、高い施工性能と高い強度の両者を兼ね備えた接合形式として最も好ましい。
(9)第1木質部材と第2木質部材との接合部位に、1本のラグスクリューボルトと、これに対応した1本の引張ボルトとを配設して緊結、接合することも可能である。
(10)1本の柱部材に対して2本の梁部材が相互に直線状に緊結、固定される形式、又は、柱部材に埋設した一方向の2本以上のラグスクリューボルトに対して、これと直交方向にも2本以上のラグスクリューボルトを埋設して、1本の柱部材に対して3方向あるいは4方向に梁部材を接合させることも可能となり、3方向ラーメンや、4方向ラーメン形式もさらに具体的に実現可能になる。
(11)大断面の集成材という構造材を用いることにより、最終造作材の役割もこれに与え、したがって内部仕上げのコストの低減化、自由度の大きい広い空間の確保を図ることが可能となる。
(12)第1木質部材及び第2木質部材としては、ベイマツ集成材で代表される集成材等の他に単板積層材(LVL)やPSLのようないわゆるエンジニアリングウツドも適用可能であり、さらに、通常のムクの木材を用いることも可能であるため、選択肢が多く、種々の設計例が可能となる。
(13)第1木質部材と第2木質部材とが、大断面の集成材で形成されている場合、先孔は、集成材の積層方向及び幅方向に形成するのが強度面からして最適となるが、必ずしもこれに限定されないで、設計条件によっては、異なる接合構造とすることができる。
(14)ラグスクリューボルトのラグスクリューネジ部をネジ谷径25mm、ネジ山径30mmという大径の設定寸法に設定してあり、また、これに対応して27mmの内径寸法を有する先孔があらかじめ加工、形成されているため、ラグスクリューボルトのラグスクリューネジ部は、その外径寸法との差寸法3mm分だけ先孔の周面に食い込みながらねじ込み固定されることになり、十分な食い込み力ひいては十分な引抜き耐力を発揮可能であると共に、ねじ込み時の抵抗を比較的低く抑えて施工性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るラグスクリューボルトの構成を示す側面から見た説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るラグスクリューボルトの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造のうち梁勝ちの場合を示す説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての引抜き耐力試験装置の概要を示す概念図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての引抜き耐力試験装置の詳細を示す説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての引抜き耐力試験装置の詳細を示す説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての引抜き耐力試験結果を示す線図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての引抜き耐力試験結果を示す線図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての梁−柱モーメント抵抗接合の試験装置を示す概念図である。
【図11】図10の部分的詳細図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての梁−柱モーメント抵抗接合の試験結果を示す概念図である。
【図13】本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての梁−柱モーメント抵抗接合の試験結果を示す概念図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造のうち柱勝ちの場合を示す説明図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造のうち柱勝ちで2方向ラーメンの場合を示す説明図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係る梁部材と梁部材との接合構造を示す説明図である。
【図17】本発明の第5実施形態に係る柱部材と柱部材、又は、土台部材と土台部材との接合構造を示す説明図である。
【図18】本発明の第6実施形態に係る柱部材と土台部材との接合構造を示す説明図である。
【図19】本発明に係るラグスクリューボルトの他の構成例を示す側面から見た説明図である。
【図20】本発明に係るラグスクリューボルトの他の構成例を示す側面から見た説明図である。
【図21】本発明の第7実施形態に係る柱部材と梁部材の4方向ラーメンの接合構造を示す説明図である。
【図22】従来例1に係る柱部材と梁部材との接合構造を示す説明図である。
【図23】従来例2に係る柱部材と梁部材との接合構造を示す説明図である。
【図24】従来例2に係る柱部材と梁部材との接合構造を示す説明図である。
【図25】従来例3に係る柱部材と梁部材との接合構造を示す説明図である。
【図26】従来例3に係るラグスクリューボルトの構成を示す説明図である。
【図27】従来例3に係るラグスクリューボルトの構成を示す部分的詳細図である。
【表1】
本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての引抜き耐力試験の供試体の基礎材質を示す表である。
【表2】
本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての引抜き耐力試験結果を示す表である。
【表3】
本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての引抜き耐力試験結果を示す表である。
【表4】
本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造についての梁−柱モーメント抵抗接合試験の供試体の基礎材質を示す表である。
【符号の説明】
1 ラグスクリューボルト
2 ラグスクリューネジ部
3 軸部
3a 軸部端面
3b 軸部中央
4 中空孔
5 雌ネジ部
6 フランジ部
7 中空孔開口端
10 引張ボルト
11 (引張ボルト)軸部
12 雄ネジ部
14 座金
15 ナット
20 第1木質部材
21 (第1木質部材)端面
22 貫通孔
22a 一方の開口端
22b 他方の開口端
23 欠込み部
30 第2木質部材
31 (第2木質部材)表面
40 先孔
41 鋼製反力フレーム
42 アンカー固定台
43 試験装置
44 オイルジャッキ
45 ロードセル
46 (高精度)変位計
47 集成材ブロック
48 反力台
49 ピン
50 ローラー
51 ダボ
52 土台
53 欠込み部
60 柱部材
61 梁部材
62 ガセット板
63 スリット
64 ドリフトピン
65 小孔
66 貫通小孔
67 引張ボルト
68 挿通用孔
69 欠込み部
70 座金
71 ナット
72 スリット
73 貫通小孔
74 ガセットプレート
75 T字頭部板
76 貫通穴
77 T字脚部板
78 ドリフトピン
79 小孔
80 ラグスクリューボルト
81 軸部
82 ラグスクリューネジ部
83 ボルトネジ部
84 ナット

Claims (5)

  1. ラグスクリューボルトと引張ボルトとを用いて、第1木質部材と第2木質部材とを接合、固定させる接合構造であって、
    前記ラグスクリューボルトは、その外周面にラグスクリューネジ部が形成された軸部の軸心方向の端面から軸部中央に向けて軸部内に所定寸法分だけ中空孔が形成され、当該中空孔の周面に雌ネジ部が加工されてなり、
    前記引張ボルトは、軸部両端に雄ネジ部が形成され、一方の雄ネジ部が前記雌ネジ部に螺合可能とされてなり、
    接合すべき一方の前記第1木質部材には、前記第2木質部材に対向する端面を基端として、第1木質部材中央に向けて所定長さの貫通孔が形成されると共に、当該貫通孔の先端には、所定大きさの欠込み部が形成されてなり、
    前記中空孔の開口端が、接合すべき他方の前記第2木質部材表面と面一に露出する位置まで、前記ラグスクリューボルトが第2木質部材にねじ込み固定され、
    前記引張ボルトの前記一方の雄ネジ部が、前記雌ネジ部に螺着固定され、
    前記引張ボルトの軸部が、前記貫通孔に嵌挿されて、前記欠込み部内に突出した引張ボルトの他方の雄ネジ部が、座金を介してナット締めにより締結固定されることにより、前記第1木質部材と前記第2木質部材とが接合、固定されてなる
    ことを特徴とする木質部材の接合構造。
  2. 前記ラグスクリューボルトの前記雌ネジ部が加工されている端部には、リング状のフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の木質部材の接合構造。
  3. 前記ラグスクリューボルトの雌ネジ部が、軸部の片側一端又は両端に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木質部材の接合構造。
  4. 前記ラグスクリューボルトと、前記引張ボルトとが、前記第1木質部材と、前記第2木質部材との接合部位に少なくとも1本以上配設されて接合固定されている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の木質部材の接合構造。
  5. 前記第1木質部材と、前記第2木質部材とが、構造用集成材で形成されている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の木質部材の接合構造。
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