JP4087947B2 - ガス透過型ハードコンタクトレンズの製造方法 - Google Patents

ガス透過型ハードコンタクトレンズの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス透過型ハードコンタクトレンズの製造方法およびガス透過型ハードコンタクトレンズに関する。さらに詳しくは、本発明は、耐久強度に優れるガス透過型ハードコンタクトレンズを効率よく製造する方法、および耐久強度が向上し、かつ光学的な歪みがなく、しかも装用上問題のないガス透過型ハードコンタクトレンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンタクトレンズは、通常ハード系とソフト系の2つに分類され、さらにハード系コンタクトレンズにおいては、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマーまたはコポリマーからなる非酸素透過型ハードコンタクトレンズと、シロキサニルメタクリレート(SiMA)、MMA、フルオロアルキルメタクリレート(FMA)を主成分とするコポリマーからなるガス透過型(rigid gas permeable:RGP)ハードコンタクトレンズとに分類される。
【0003】
元来、ハードコンタクトレンズにおいては、生体適合性がよく、かつ透明性に優れるポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる非酸素透過型ハードコンタクトレンズが主流を占めていた。しかしながら、この非酸素透過型ハードコンタクトレンズは、コンタクトレンズの普及に伴い、装用時間の延長によって、角膜上皮に障害を起こしたり、長期装用による角膜内皮細胞への影響が議論されるようになり、より安全性を考慮したハードコンタクトレンズが開発されるようになった。
【0004】
ガス透過型ハードコンタクトレンズは、このような経緯で開発されたハードコンタクトレンズであって、酸素透過係数(DK値)により、低酸素透過型と高酸素透過型とに分けられ、そして、現在の市場においては、さらなる装用時間の延長により、高酸素透過型(連続装用コンタクトレンズ)が主流となっている。
【0005】
ところで、ガス透過型ハードコンタクトレンズは、装着角膜に必要な酸素ガスを透過させ、かつ新陳代謝により生じた二酸化炭素ガスを排出させる分子レベルの孔を有するために、DK値が高くなるに伴い、レンズ破損などの瞬時の衝撃や曲げに対する耐久強度が低下するのを免れないという欠点を有している。
【0006】
このような欠点を改善するために、圧縮破壊強度が従来のレンズに比べて高く、割れにくい酸素透過型ハードコンタクトレンズが提案されている(特開平4−67117号公報)。しかしながら、この技術においては、使用するモノマーの重合速度を制御するとともに、重合条件を厳密に制御して、均一に重合が進むようにしなければならず、重合条件の制御が非常に困難である。
【0007】
また、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステルおよび不飽和カルボン酸無水物の中から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含有する重合成分を重合してなる未架橋重合体を、ポリアミンの存在下に加熱圧縮成形し、耐溶剤性、機械的強度を向上させた透明光学樹脂成形品の製造方法が提案されている(特開平7−62022号公報)。この方法においては、得られる成形品は、加熱圧縮成形時に、未架橋の粉末状重合体がポリアミンによって架橋されるために、耐溶剤性に優れ、光学的歪みがなく、均質で透明性に優れる上、成形後に重合体中で発生する内部応力が極めて少ないことから、形状の経時変化がほとんど生じないものである。しかしながら、この方法では、ハードコンタクトレンズのベースカーブは多種類にわたる上、各度数、各サイズがあるため、その成形型は極めて多くなり、それを管理するのに、非常に大きな労力などを必要とするという欠点がある。
【0008】
さらに、コンタクトレンズ材料を加熱圧縮成形してコンタクト光学成形品を製造する方法が提案されている(特開昭60−49906号公報、特開昭61−41118号公報)。この方法は、製造すべき成形品の重さをもち、かつ均一な厚さをもつフィルムから打ち抜くか、または切り取り、これを成形品の形状に対応した凸面のダイス型の間、または凸面と凹面のダイス型の間に入れ、使用する熱可塑性材料のガラス転移点よりも高いが、その溶融流動点よりも低い温度において、加圧して再成形することにより、コンタクト光学成形品を製造する方法である。しかしながら、この方法においては、架橋構造をもたない熱可塑性樹脂からなり、かつ成形品と同じ重さをもつフィルム状の未加工品を、仕上がり形状に成形加工するものであるが、得られた成形品は、架橋構造をもたないことから、形状が経時変化したり、強度が充分ではないなどの問題がある。
【0009】
コンタクトレンズ装着角膜への酸素供給は、角膜への生理的負担を軽減することはいうまでもなく、また角膜酸素の不足は臨床学的に影響が大きいことが挙げられている。コンタクトレンズは、角膜という敏感で、視機能にとって重要な生体組織に直接接触するために、長期間にわたっての充分な安全性が保証されなければならない。また、角膜は、透明性を保つために、たえず酸素を必要とすることから、DK値を高めるのに、含有モノマーの配合などを工夫しているが、DK値を高めると耐久性が低下するという問題が生じる。また、強度付与モノマーや架橋剤を添加させ、耐久強度を向上させた共重合体も存在しているが、充分とはいえない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、耐久性に優れるガス透過型ハードコンタクトレンズを効率よく製造する方法、および耐久強度が向上し、かつ装用上問題のないガス透過型ハードコンタクトレンズを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料を、加熱圧延処理し、次いで機械加工することにより、耐久強度に優れ、かつ装用上問題のないガス透過型ハードコンタクトレンズが効率よく得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)シロキサニルメタクリレートとフルオロアルキルメタクリレートを主成分とする共重合体からなる架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料を圧縮率5〜32.2%で加熱圧延処理し、次いで機械加工することを特徴とするガス透過型ハードコンタクトレンズの製造方法、
(2)上記(1)の方法により得られたガス透過型ハードコンタクトレンズ、及び
(3)圧縮率が5〜32.2%で、かつ圧縮曲げ破壊強度が300〜1500gの範囲になるように加熱圧延処理された、シロキサニルメタクリレートとフルオロアルキルメタクリレートを主成分とする共重合体からなる架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料からなることを特徴とするガス透過型ハードコンタクトレンズ、
を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のハードコンタクトレンズの製造方法においては、材料として、架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料が用いられる。このレンズ材料としては特に制限はなく、従来ガス透過型ハードコンタクトレンズに使用されている公知のものの中から、適宜選択して用いることができる。該架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料の好ましい例としては、フッ素含有(メタ)アクリレートとケイ素含有(メタ)アクリレートを主成分とし、さらに架橋性モノマー、親水性モノマーおよび分子末端に重合性官能基を含むシロキサンオリゴマーなどの成分を含有する共重合体からなるものを挙げることができる。
【0014】
ここで、フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられるが、これらの中でフルオロアルキルメタアクリレートが好ましい。これらのフッ素含有(メタ)アクリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
また、ケイ素含有(メタ)アクリレートとしては、例えばトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタメチルトリシロキサニルエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニル(メタ)アクリレート、イソブチルヘキサメチルトリシロキサニル(メタ)アクリレート、メチルジ(トリメチルシロキシ)−(メタ)アクリルオキシメチルシラン、n−プロピルオクタメチルテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジ(トリメチルシロキシ)−(メタ)アクリルオキシメチルシラン、t−ブチルテトラメチルジシロキサニルエチル(メタ)アクリレートなどのシロキサニル(メタ)アクリレート、さらにはトリメチルシリル(メタ)アクリレート、フェニルジメチルシリルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらの中でシロキサニル(メタ)アクリレートが好ましく、特にシロキサニルメタクリレートが好ましい。これらのケイ素含有(メタ)アクリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
前記フッ素含有(メタ)アクリレート及びケイ素含有(メタ)アクリレートは、共重合体の酸素透過性を向上させる効果が大きく、両者を併用することによって、所望の酸素透過性を有する共重合体が得られる。両者の組成比を変化させることにより、共重合体の酸素透過性を調節することができる。
共重合体におけるフッ素含有(メタ)アクリレート単位とケイ素含有(メタ)アクリレート単位の含有割合は、所望の酸素透過性により異なるが、一般的には、重量比70:30ないし40:60、好ましくは60:40ないし50:50の範囲で選ばれる。
【0017】
次に、架橋性モノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、あるいはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラまたはトリ(メタ)アクリレートなどの二官能以上のモノマーが挙げられる。これらの架橋性モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この架橋性モノマーは、共重合体に、硬さおよび耐薬品性などを付与する効果を有する。
該共重合体におけるこの架橋性モノマー単位の含有量は、通常0.1〜20重量%の範囲で選ばれる。
【0018】
一方、親水性モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マイレン酸、ケイ皮酸等の不飽和カルボン酸類、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等が挙げられる。これらの親水性モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記親水性モノマーは、共重合成分として使用することにより、共重合体の水濡れ性を向上させる効果があり、レンズ装用時、涙液との親和性を高め、装用感を向上させる。特に不飽和カルボン酸は、共重合体の硬さ向上効果と水濡れ性向上効果が顕著であり好ましい。
該共重合体におけるこの親水性モノマー単位の含有量は、通常5〜20重量%の範囲で選ばれる。
【0019】
さらに、分子末端に重合性官能基を含むシロキサンオリゴマーは、共重合体の耐衝撃性を改善するために用いられるものであり、例えば一般式(I)
【化1】
Figure 0004087947
[式中、mは5〜200の整数、Aは一般式
【化2】
Figure 0004087947
で表される基(Rは水素原子またはメチル基)を示す。]
で表される化合物が好ましく用いられる。
【0020】
このシロキサンオリゴマーとしては、分子量約500〜15000の範囲にあるものが好ましく、また、イソホロンジイソシアネート系シロキサンオリゴマー[一般式(I)におけるAが(b)で示される基であるもの]が、耐衝撃性改善効果が著しく、好適である。
該共重合体における前記シロキサンオリゴマー成分の含有量は、通常0.1〜15重量%の範囲で選ばれる。
【0021】
本発明で用いられる架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料は、例えば以下に示す方法により、製造することができる。
前記のフッ素含有(メタ)アクリレート、ケイ素含有(メタ)アクリレート、架橋性モノマー、親水性モノマーおよびシロキサンオリゴマーからなるモノマー混合物に、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどの重合開始剤を、好ましくは0.05〜1重量%の割合で添加混合したのち、金属製、プラスチック製、ガラス製などの注型用容器に注入し、密閉して加熱重合することにより、円形ボタン形状または棒形状の架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料を製造する。なお、重合は、加熱重合以外に、紫外線重合などを用いることができる。
【0022】
本発明の方法においては、このようにして得られた円形ボタン形状または棒形状のコンタクトレンズ材料(以下、ボタン材または棒材と略称することがある)を、厚さが処理前の厚さよりも小さくなるように加熱圧延処理する。加熱圧延処理後の厚さは、通常のハードコンタクトレンズの加工工程で加工できるボタン材または棒材の大きさでよいが、圧縮率が5〜50%になるような大きさが好ましい。なお、該圧縮率は、次式により算出される。
圧縮率(%)=[(圧縮前の材料高さ(mm)−圧縮後の材料高さ(mm))/圧縮前の材料高さ(mm)]×100
【0023】
次に、加熱圧延処理方法について説明する。
まず、コンタクトレンズ材料がボタン材の場合には、例えば図1に示す装置を用いて加熱圧延処理することができる。
図1は、ボタン材の加熱圧延処理装置の1例の部分概略図であって、まず、プレス下板1上に、圧縮率に応じて厚さが調整された空間部を有する圧縮高さ調整用の板状治具2をセットし、この治具2の空間部に、高さ寸法が一定のボタン材4を載置したのち、ボタン材4の端面までプレス上板を下降させ、一定時間加熱し、さらに圧力を加えて圧延させる。これにより、プレス上板3は板状治具2の上端面まで下降され、圧縮率に応じた高さをもつ材料が加工され、所望の加熱圧延処理材が得られる。
また、空間部を有する板状治具の厚さが一定の場合は、圧縮率に応じてボタン材の高さを調整し、同様の作業を行うことにより、所望の加熱圧延処理材が得られる。
【0024】
一方、棒材の場合、例えば図2に示す装置を用いて加熱圧延処理することができる。
図2は、棒材の加熱圧延処理装置の1例の部分概略図であって、まず、プレス下板1上に、圧縮高さ調整用円筒形治具5をセットし、この治具5の中心に棒材6を設置したのち、プレス上板3を、棒材6の上部端面まで下降させ、一定時間加熱し、さらに圧力を加えて圧延させる。これにより、プレス上板3は、円筒形治具5の上端面まで下降され、所望の加熱圧延処理材が得られる。この場合、内径が一定の円筒形治具を用いる場合、加熱圧延処理材の外径が円筒形治具の内径となるように、棒材の外径と高さを調整することが必要であり、また、外径と高さが一定の棒材を用いる場合、加熱圧延処理材の外径が円筒形治具の内径となるように、円筒形治具の内径と高さを調整することが必要である。
【0025】
次に、このようにして、加熱圧延処理された架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料に、切削加工、研磨加工などの機械加工を施すことにより、耐久強度が向上したガス透過型ハードコンタクトレンズが得られる。この際用いる切削加工、研磨加工などの機械加工の方法としては特に制限はなく、従来ハードコンタクトレンズの製造において慣用されている方法を用いることができる。
【0026】
なお、前記の円形ボタン形状または棒形状のコンタクトレンズ材料を加熱圧延処理することにより、処理後の材料には光学的な歪みが発生する場合があるが、処理後の材料を前記のように切削・研磨処理することにより、光学的な歪みがなく、透明性に優れ、かつ内部応力の小さい耐久強度の高いガス透過型ハードコンタクトレンズを得ることができる。
【0027】
本発明はまた、前記の製造方法により得られたガス透過型ハードコンタクトレンズをも提供するものである。該方法で得られたガス透過型ハードコンタクトレンズは、通常圧縮率が5〜50%で、かつ圧縮曲げ破壊強度が300〜1500gの範囲にある。
【0028】
なお、上記圧縮曲げ破壊強度は、インストロン社製万能試験機4310型を用い、下記のようにして圧縮曲げ破壊強度試験を行い、測定した値である。すなわち、試料のコンタクトレンズを上下アンビルに水滴で固定し、アンビルを定速(200mm/分)で下降させた際のコンタクトレンズの圧縮曲げ破壊強度(g)を測定する。
【0029】
本発明は、さらに、前記の性状、すなわち、圧縮率が5〜50%で、かつ圧縮曲げ破壊強度が300〜1500gの範囲になるように加熱圧延処理された架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料からなるガス透過型ハードコンタクトレンズをも提供するものである。
【0030】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0031】
実施例1
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート43重量部、トリス(トリメチルシロキサン)−γ−メタクリロキシプロピルシラン43重量部、分子末端に重合性官能基を含むシロキサンオリゴマー2重量部、メタクリル酸8重量部、ジメチルアクリルアミド2重量部、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート2重量部および重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.25重量部からなるモノマー混合物を、内径15mmのポリエチレン製パイプ中にて重合し、架橋ガス透過型コンタクトレンズ材料を作製した。
【0032】
次いで、このコンタクトレンズ材料を、外径14mmにセンタレス加工し、圧縮率が5、10、15、20、25、50%になるように高さを調整した各ボタン形状材料(以下、ボタン材と称す)を油圧旋盤により切り出した。
次に、このように高さが調整された各ボタン材を、図1に示す装置により、下記のように加熱圧延処理した。
まず、プレス下板1上にセットされた厚さ5.7mmの圧縮高さ調整用板状治具2の空間部にボタン材4を載置したのち、プレス上板3を下降させ、ボタン材を挟み込む形で120℃に加熱して、その温度で30分間保持した。その後、圧力25kg/cm2をかけて圧縮延伸させたのち、25kg/cm2の圧力を保持したまま、この装置に水を循環させて室温まで冷却した。次いで、圧力を開放し、プレス上板3を上昇させて圧延された材料を取り出した。
【0033】
このようにして、圧縮率5、10、15、20、25および50%の圧延処理された架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料を得た。
この材料の各圧縮率における圧延処理前後の高さと直径との関係を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004087947
【0035】
次に、各材料を切削、研磨処理することにより、厚さ0.15mm程度の架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズを作製した。
【0036】
実施例2
実施例1で用いたものと同じ組成のモノマー混合物を、内径14、15および16mmのポリエチレン製パイプ中にて重合し、架橋ガス透過型コンタクトレンズ材料を作製した。このコンタクトレンズ材料を切断し、直径および高さが、それぞれ▲1▼14.0mmと66.7mm、▲2▼15.0mmと72.6mm、▲3▼16.0mmと63.8mmの棒形状材料(以下、棒材と称す)を得た。
【0037】
次に、各棒材を、図2に示す装置により、下記のように加熱圧延処理した。
まず、プレス下板1上にセットされた内径/高さが、17.0mm/45.2mm、17.0mm/56.5mmおよび17.0mm/56.5mmの圧縮高さ調整用円筒形治具5の中心に、それぞれ上記棒材▲1▼、▲2▼および▲3▼を設置したのち、プレス上板3、棒材6の上部端面まで下降させ、棒材を挟み込む形で120℃に加熱して、その温度で30分間保持した。その後、圧力25kg/cm2をかけて圧縮延伸させたのち、25kg/cm2の圧力を保持したまま、この装置に水を循環させて室温まで冷却した。次いで、圧力を開放し、プレス上板3を上昇させて、圧延された材料を円筒形治具5の内部より取り出した。
このようにして、圧縮率11.4、22.1および32.2%の圧延処理された架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料を得た。
この材料の各圧縮率における圧延処理前後の高さと直径との関係を表2に示す。
【0038】
【表2】
Figure 0004087947
【0039】
次に、各材料を切削、研磨処理することにより、厚さ0.15mm程度の架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズを作製した。
【0040】
比較例1
実施例1で用いたものと同じ組成のモノマー混合物を重合して、コンタクトレンズ材料を得たのち、加熱圧延処理をしないで、そのまま切削、研磨処理して架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料を作製した。
【0041】
試験例1 圧縮曲げ破壊強度試験および破壊形状観察
実施例1、実施例2で得られた圧縮率の異なる圧延処理コンタクトレンズ材料および比較例1で得られた加熱圧延処理をしていないコンタクトレンズ材料を、BC7.80、POW−3.00、DIA8.8のコンタクトレンズ形状に加工し、インストロン社製万能試験機4310型を用いて、以下のようにして圧縮曲げ破壊強度試験を実施した。
すなわち、各コンタクトレンズを、上下アンビルに水滴で固定し、アンビルを定速(200mm/分)で下降させた際の、コンタクトレンズの圧縮曲げ破壊強度(g)、圧縮曲げ破壊変形量(mm)、圧縮曲げ破壊変形率(%)、30%変形時における圧縮曲げ強さ(g)を求めるとともに、コンタクトレンズの破壊形状を観察した。
これらの結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
Figure 0004087947
【0043】
表3から分かるように、加熱圧延処理の実施の有無により、圧縮曲げ破壊強度に大きな違いが認められ、圧縮率が高くなるに伴い、圧縮曲げ破壊強度も増加する。
圧縮率が高くなり、圧縮曲げ破壊強度が増加すると、圧縮曲げ破壊変形量も大きくなる。このことは、アンビルを定速で下降させた際のレンズが破壊するまでの距離が伸びたこととなり、したがって、レンズの撓み量が大きくなったと思われる。
この傾向は、架橋ガス透過型コンタクトレンズ材料において、加熱圧延処理により、分子鎖が配向された分子構造を有するようになるためと推測される。
【0044】
試験例2 酸素透過性試験
実施例1で得られた圧縮率の異なる圧延処理コンタクトレンズ材料および比較例1で得られた圧延処理していないコンタクトレンズ材料を、直径14mm、厚さ0.25mmのディスク形状に加工し、理化精機工業社製、製科研フィルム酸素透過率計K316を用いて、酸素透過性の程度を測定し、電流値で表した。電流値が高いほど、酸素透過性がよいことを示す。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
Figure 0004087947
【0046】
表4から明らかなように、圧縮率5〜25%の圧延処理コンタクトレンズ材料は、圧延処理していないコンタクトレンズ材料と、ほとんど同程度の酸素透過性を有していることが分かる。
【0047】
試験例3 光学歪み観察
実施例1および実施例2で得られた圧縮率の異なる圧延処理コンタクトレンズ材料と、その各材料を機械的にレンズ形状に加工したものを、オリンパス社製実体顕微鏡に偏光板を取り付けて、クロスニコル法により、光学歪みを観察し、以下の判定基準に従い評価した。結果を表5に示す。
◎:光学歪みが観察されない
○:光学歪みがやや観察される
×:光学歪みが容易に観察される
【0048】
【表5】
Figure 0004087947
【0049】
コンタクトレンズ材料は、圧縮率が10%以上あたりから、放射状の光学歪みが観察されたが、圧延処理後の材料を切削、研磨したレンズには、光学歪みは観察されなかった。
【0050】
試験例4 安定性試験
実施例1で得られた圧縮率5.25および50%の圧延処理コンタクトレンズと、比較例1で得られた圧延処理していないコンタクトレンズを、それぞれドライレンズケースに挿入して、室温で1ヶ月間、および恒温恒湿槽(楠本化成(株)製]にて、温度40℃、湿度70%の条件で2ヶ月間保管して、ベースカーブ、度数、肉厚の経時変化を測定し、初期値と比較した。また、試験前および試験後のレンズの光学歪みを、オリンパス社製実体顕微鏡に偏光板を取り付けて、クロスニコル法により観察した。
これらの結果を、それぞれ表6および表7に示す。
【0051】
【表6】
Figure 0004087947
【0052】
【表7】
Figure 0004087947
【0053】
表6および表7から分かるように、室温で1ヶ月間、および温度40℃、湿度70%の環境下にて2ヶ月間保管しても、変化はほとんど認められなかった。また、光学歪みの観察でも、歪みの発生は認められなかった。
この安定性試験の結果から、内部応力の極めて少ないガス透過型ハードコンタクトレンズであることが確認できた。
【0054】
実施例3〜5
実施例1において、モノマーの使用量を表8に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、ボタン形状のコンタクトレンズ材料を作製したのち、加熱圧延処理して、圧縮率5%、25%および50%の架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料を得た。
次に、上記の各コンタクトレンズ材料を用い、試験例1と同様にしてコンタクトレンズ形状に加工し、圧縮曲げ破壊強度を測定した。その結果を表9に示す。
【0055】
【表8】
Figure 0004087947
【0056】
(注)
FMA:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート
SIMA:トリス(トリメチルシロキサン)-γ-メタクリロキシプロピルシラン
MA:メタクリル酸
DAA:ジメチルアクリルアミド
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
シロキサンオリゴマー:分子末端に重合性官能基を含むシロキサンオリゴマー
【0057】
【表9】
Figure 0004087947
【0058】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、光学的な歪みがなく、透明性に優れ、かつ内部応力が小さい上、装用上の問題のない耐久強度の向上したガス透過型ハードコンタクトレンズを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するのに用いられる加熱圧延処理装置の1例の部分概略図である。
【図2】本発明の方法を実施するのに用いられる加熱圧延処理装置の異なる例の部分概略図である。
【符号の説明】
1 プレス下板
2 圧縮高さ調整用板状治具
3 プレス上板
4 円形ボタン形状材料
5 圧縮高さ調整用円筒形治具
6 棒形状材料

Claims (4)

  1. シロキサニルメタクリレートとフルオロアルキルメタクリレートを主成分とする共重合体からなる架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料を圧縮率5〜32.2%で加熱圧延処理し、次いで機械加工することを特徴とするガス透過型ハードコンタクトレンズの製造方法。
  2. 円形ボタン形状または棒形状の架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料を加熱圧延処理する請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法により得られたガス透過型ハードコンタクトレンズ。
  4. 圧縮率が5〜322%で、かつ圧縮曲げ破壊強度が300〜1500gの範囲になるように加熱圧延処理された、シロキサニルメタクリレートとフルオロアルキルメタクリレートを主成分とする共重合体からなる架橋ガス透過型ハードコンタクトレンズ材料からなることを特徴とするガス透過型ハードコンタクトレンズ。
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