JP4087242B2 - 配管敷設用補助部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、配管敷設用補助部材に関する。さらに詳しくは、床暖房用マットのヘッダ部と、熱媒制御部に連接するヘッダ部とを繋ぐ連絡管を、下地床面に配置・固定する際に用いられ、この配置・固定するための作業を容易にかつ迅速に行うことができる配管敷設用補助部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多様な床暖房技術が提案され、実用化されている。この床暖房技術の一例として、発泡合成樹脂などから調製された板状体(基体)に、温水などの熱媒を通す熱媒導管をあらかじめ埋設した床暖房用マットを下地床面上に敷設し、その上側にカーペットや木製化粧板などの表面被覆材を敷設して、暖房可能な床を構成するという技術が挙げられる。この種床暖房用マットは、室内の暖房したい場所に配置されるが、この際、暖房を必要としない床部分には、床暖房用マットと同質または異なる材料で調製したダミーマットを敷設して、床の表面や歩行した際の感触を同一にする手法が採用されている。
【0003】
上記した床暖房用マットを構成する板状体(基体)に埋設された熱媒導管の端部は、この板状体の周縁部に配置したヘッダ部に集められ、屋外または屋内の壁面側や隅部に設置した、熱媒の供給量や温度を制御する熱媒制御部に、熱媒導管を介して繋がれる。この熱媒導管は、通常、上記したダミーマット内に埋め込まれて配置されることとなり、ダミーマットは、これを敷設する場所の広さ・形状に合わせてそのサイズを微調整した上で、下地床面の所望の場所に敷設される。
【0004】
連絡管をダミーマット内に埋め込む手法としては、特開平11−72237号公報に記載されているように、断面形状が下方に開口したコの字型の硬質樹脂製型材を、下地床面の上に配置した連絡管の上に被せ、この型材の下縁に設けられた耳片を下地床面にビス止めすることによって下地床面に連絡管を固定し、この連絡管に被せた型材と床暖房用マットとの隙間にダミーマットを敷設する、という方法が提案されている。
【0005】
しかし、上記した方法による場合には、型材と床暖房用マットとの隙間にダミーマットを敷設する際に、型材の幅や固定位置などに応じてダミーマットの寸法を微調整しなければならず、作業が煩雑となるという欠点があった。発明者らは、この微調整作業の煩雑さを解消すべく検討し、完成した発明を先に特許出願した(特許文献2参照)。
【0006】
その後更に検討の結果、敷設する場所の広さに応じて連絡管(または熱媒導管)の数を変える場合には、提案した連絡管ガイド用マットでは、対応が困難な場合があることが分かった。また、提案した連絡管ガイド用マットでは、熱媒導管を強制的に湾曲させて溝に嵌合させて配置するため、溝が破損したり熱媒導管の復元力または反発力によって溝から飛び出したりするという欠点があることが分かった。
【0007】
本発明は、熱媒導管の数が多い場合、敷設する場所の広さに応じて熱媒導管の数を変える場合にも容易に対応でき、また架橋ポリエチレンやポリブテンより構成される熱媒導管は、復元力または反発力が強いので、湾曲させて溝に埋設する際に溝が破損し難く、しかも熱媒導管が溝から飛び出し難い配管敷設用補助部材を提供すべく鋭意検討の結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−72237号公報
【特許文献2】
特開2002−174432号公報
【0009】
本発明の目的は、次のとおりである。
1.敷設する場所の広さに応じて熱媒導管の数を変える場合にも、容易に対応できる配管敷設用補助部材を提供すること。
2.溝が破損し難く、熱媒導管が溝から飛び出し難い配管敷設用補助部材を提供すること。
3.下地床の上に熱媒導管を配置する際に、施工現場で煩雑な微調整を行う必要がなく、作業を容易に行うことができる配管敷設用補助部材を提供すること。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第一発明では、床暖房用マットを構成する板状体の周縁部に配置されたヘッダ部と、熱媒制御部とを繋ぐ熱媒導管を湾曲させて配置・固定するための配管敷設用補助部材において、この配管敷設用補助部材は、床暖房用マットと実質的に同一厚さの平面形状が略正方形とし、この下側部材の上側面には、熱媒導管外径とほぼ同一ないし若干小さい幅で、熱媒導管外径以上の深さとして、長さ方向に直角に切断した際の断面がU字型とされた少なくとも二本の溝が、下側部材の一の隅近傍を中心とした円弧状に形成され、かつ、円弧の中心とした角隅部とこの角隅部近傍と対角位置の隅部近傍の双方に、角隅部切り欠き用溝が形成されてなることを特徴とする、配管敷設用補助部材を提供する。
【0011】
また、第二発明では、床暖房用マットを構成する板状体の周縁部に配置されたヘッダ部と、熱媒制御部とを繋ぐ熱媒導管を湾曲させて配置・固定するための配管敷設用補助部材において、この配管敷設用補助部材は下側部材と上側薄板製蓋とより構成されてなり、下側部材は、床暖房用マットと実質的に同一厚さの平面形状が略正方形とし、この下側部材の上側面には、熱媒導管外径とほぼ同一ないし若干小さい幅で、熱媒導管外径の80〜95%の深さとして、長さ方向に直角に切断した際の断面がU字型とされた少なくとも二本の溝が、下側部材の一の隅近傍を中心とした円弧状に形成され、かつ、円弧の中心とした角隅部とこの角隅部近傍と対角位置の隅部近傍の双方に、角隅部切り欠き用溝が形成されてなり、上側薄板製蓋は、下側部材に上側から被せた際に、下側部材の断面がU字型の溝に対応した位置に、熱媒導管外径の20〜5%の深さとした断面が浅いU字型とされた溝と、角隅部切り欠き用溝に対応した位置に、角隅部切り欠き用溝がそれぞれ形成されてなることを特徴とする、配管敷設用補助部材を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
第一発明に係る配管敷設用補助部材は、板状の床暖房用マット(基体)周縁部に配置され、この部材とこの部材と接触する面と組み合されて、ヘッダ部と熱媒制御部とを繋ぐ熱媒導管を配置・固定すると同時に、ダミーマットとしての機能をも果たすものであり、部材は接触する面はこの部材の溝に埋設した熱媒導管を押さえることになる。この配管敷設用補助部材は、同時に敷設される床暖房用マット(基体)の厚さと実質的に同一の厚さとする。この配管敷設用補助部材の平面形状は一辺が5cm〜15cmで、厚さが10〜20mm寸法の略正方形とし、その広さ(大きさ)はこれを経由させる熱媒導管の数に応じて、適宜決めることができる。ここで「略正方形」とは、厳密な正方形に限られるものではなく、対向する二辺が他の二辺より20%程度まで長くされた長方形状含まれる意味である。
【0013】
配管敷設用補助部材を構成する部材の材料は、配管敷設用補助部材が敷設される場所に応じて適宜選択することができる。例えば、配管敷設用補助部材を家具などの什器類を載置する室内の側壁近傍に敷設する場合には、什器類の重量に耐え得るように、素材を比較的剛性の高い木、合成樹脂、硬質ゴムとするのが好ましい。
【0014】
合成樹脂は剛性に優れたものが好ましく、具体的には一般用ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド類、ポリアセタール樹脂などが挙げられる。中でも、成形性、切り欠きの容易性、コストなどの観点からスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂が好適である。合成樹脂には、充填材、着色剤、発泡剤などを配合することができる。配管敷設用補助部材は、生産性、寸法精度、強度などの観点から、上記合成樹脂を原料とし、射出成形法によって製造するのが好ましい。
【0015】
配管敷設用補助部材を構成する下側部材の上側面には、熱媒導管外径とほぼ同一ないし若干小さい幅で、熱媒導管外径以上の深さとされ、長さ方向に直角に切断した際の断面がU字型とされた溝を刻設する。このU字型の溝は、熱媒導管を埋設するように機能する。溝の幅を熱媒導管の外径とほぼ同一ないし若干大きくするのは、熱媒導管を溝に可及的密着させた状態で埋設させて、熱媒導管自体の復元力または反発力によって溝からはみ出すのを防ぐためである。
【0016】
このU字型の溝は、下側部材が正方形の場合は、一隅を中心とした円弧を形成し、下側部材が長方形の場合は、一隅の中心またはその近傍を中心として円弧または楕円状に変形させた円弧を形成させて刻設する。これら円弧を形成する溝は、熱媒導管の延在する方向を直角に転換させる(後記する図1、図4参照)。
【0017】
下側部材のU字型の溝を形成した同じ面には、円弧中心の角隅部近傍と、この円弧中心角隅部と対角位置の角隅部近傍の双方に、角隅部切り欠き用溝を形成する。ここで「近傍」とは、円弧中心角隅部側では、角隅部切り欠き用溝が最小径のU字型の溝と交差しない位置を意味し、対角位置の角隅部側では、角隅部切り欠き用溝が最大径のU字型の溝と接触しない位置を意味する(後記する図2参照)。
【0018】
角隅部切り欠き用溝は、床暖房用マットの敷設場所の広さに応じて部材を複数個組み合せて敷設する場合に、角隅部切り欠き用溝から角隅部切り取って組み合せ、複数本の熱媒導管の方向を直角に転換させて敷設可能とする。角隅部切り欠き用溝は、長さ方向に直角に切断した際の深部断面がV字型とするのが好ましい。断面がV字型の溝の最深部は、敷設作業者が手で折り曲げた際に容易に切断し切り取ることができる程度に薄くする(後記する図5参照)。
【0019】
角隅部切り欠き用の深部断面がV字型の二本の溝は、角隅部切り欠き用溝は直線状に、相互に平行に形成し、断面がV字型の溝部分で切り欠かれた(切り取られた)部分の平面形状は、正三角形を呈するように形成するのが好ましい。対角位置の角隅部を切り欠いた際の平面形状は略六角形を呈し、複数の配管敷設用補助部材を組み合せた際に、熱媒導管の延在する方向を同じ方向に揃えることができる(後記する図4参照)。
【0020】
部材には、この部材と組み合せて下地床にビスによって固定するために、それぞれビス固定用穴を複数個設けるのが好ましい(後記する図2参照)。また、部材の断面がU字型の溝、深部断面がV字型の溝を設けた上側面の反対の下側面は平滑面とするのが好ましく、溝を設けた上側面には空間を設けて部材自体を軽量化し、リブを設けて部材の外周、断面がU字型の溝、断面がV字型の溝、ビス固定用穴などを補強するのが好ましい。このような部材は、下地床に被せるように敷設してもよいし、下地床に平滑面を載せて、溝を設けた面を表面材(または表装材)で覆うように敷設してもよい。
【0021】
部材の平面側には、両面粘着テープを貼着することができる。両面粘着テープは、部材を下地床に仮固定させるものである。ここで、「仮固定」とは、下地床の適所に板状体を一時的に固定することを意味し、部材の位置を微調整する際には、簡単に剥がせる固定状態を意味する。両面粘着テープによると、下側部材を下地床に極めて容易に固定することができ、かつ、一旦固定した後も比較的簡単に剥がし、位置を微調整して再度仮固定することもできる。
【0022】
両面粘着テープは、市販されている商品の中から上記機能を果たすものを選べばよく、その厚さは、粘着テープの種類や下地床の表面状態に応じて適宜決めることができ、例えば、0.01mm〜3mm程度とすることができる。また、両面粘着テープの粘着剤は、JIS Z 0237に準拠した90°引きはがし法試験での引きはがし粘着力が、100g以上のものを用いるのがよい。
【0023】
両面粘着テープは、下側部材の平滑面にあらかじめ貼着しておいてもよく、現場で貼着してもよい。この際、両面粘着テープの他方の面は剥離フィルムや剥離紙で保護しておき、下地面に貼着する直前にこれを剥がす。基体裏側面への両面粘着テープの貼着位置は、下側部材を仮固定する態様などを勘案して適宜決めることができる。例えば、(1) 下側部材平滑面の一組の対向する端部に直線状に相互に平行に配置した態様や、(2)小片とした単位を、下側部材平滑面に任意に点状に分布させた態様、などを挙げることができる。
【0024】
第二発明に係る配管敷設用補助部材は、配管敷設用補助部材は下側部材と上側薄板製蓋とより構成されてなる。下側部材である配管敷設用補助部材は、板状の暖房用マット(基体)周縁部に配置され、下側部材と上側薄板製蓋と組み合されて、ヘッダ部と熱媒制御部とを繋ぐ熱媒導管を配置・固定すると同時に、ダミーマットとしての機能を果たすものであり、上側薄板製蓋は下側部材の溝に埋設した熱媒導管を押さえるものである。この二つの部材より構成される配管敷設用補助部材は、同時に敷設される床暖房マット(基体)の厚さと同一の厚さとする。この配管敷設用補助部材の平面形状は、第一発明に係る部材と同様、一辺が5cm〜15cmで、厚さが10〜20mm寸法の略正方形とし、その広さ(大きさ)はこれを経由させる熱媒導管の数に応じて、適宜決めることができる。ここで「略正方形」とは、厳密な正方形に限られるものではなく、対向する二辺が他の二辺より20%程度まで長くされた長方形状含まれる意味である。
【0025】
配管敷設用補助部材を構成する下側部材と上側薄板製蓋の材料は、配管敷設用補助部材が敷設される場所に応じて適宜選択することができる。例えば、配管敷設用補助部材を家具などの什器類を載置する室内の側壁近傍に敷設する場合には、什器類の重量に耐え得るように、素材を比較的剛性の高い木、合成樹脂、硬質ゴムとするのが好ましい。合成樹脂は、第一発明に係る部材を構成するものと同一であってよい。
【0026】
配管敷設用補助部材を構成する下側部材の上側面には、熱媒導管外径とほぼ同一ないし若干小さい幅で、熱媒導管外径の80〜95%の深さとされ、長さ方向に直角に切断した際の断面がU字型とされた溝を刻設する。このU字型の溝は、熱媒導管を埋設するように機能する。溝の幅を熱媒導管の外径とほぼ同一ないし若干小さくするのは、熱媒導管を溝に可及的密着させた状態で埋設させて、熱媒導管自体の復元力または反発力によって溝からはみ出すのを防ぐためである。
【0027】
溝の深さを熱媒導管の外径の80%未満とすると、熱媒導管自体の復元力または反発力によって熱媒導管が溝からはみ出し易く、外径の95%を超えると、上側薄板製蓋を正確な位置に固定し難くなる。U字型の溝から露出した熱媒導管は、後記するとおり上側薄板製蓋を被せ、上側薄板製蓋側から下地床面にビスによって固定することができる。この場合、溝から露出している割合が高いほど、これに被せる薄板製蓋の溝にあわせ易いので好ましい。
【0028】
このU字型の溝は、第一発明に係る部材と同様、下側部材が正方形の場合は、一隅を中心とした円弧を形成し、下側部材が長方形の場合は、一隅の中心またはその近傍を中心として円弧または楕円状に変形させた円弧を形成させて刻設する。これら円弧を形成する溝は、熱媒導管の延在する方向を直角に転換させる(後記する図1、図4参照)。
【0029】
下側部材のU字型の溝を形成した同じ面には、第一発明に係る部材と同様、円弧中心の角隅部近傍と、この円弧中心角隅部と対角位置の角隅部近傍の双方に、角隅部切り欠き用溝を形成する。ここで「近傍」とは、円弧中心角隅部側では、角隅部切り欠き用溝が最小径のU字型の溝と交差しない位置を意味し、対角位置の角隅部側では、角隅部切り欠き用溝が最大径のU字型の溝と接触しない位置を意味する(後記する図2参照)。
【0030】
角隅部切り欠き用溝は、床暖房用マットの敷設場所の広さに応じて下側部材を複数個組み合せて敷設する場合に、角隅部切り欠き用溝から角隅部切り取って組み合せ、複数本の熱媒導管の方向を直角に転換させて敷設可能とする。角隅部切り欠き用溝は、長さ方向に直角に切断した際の深部断面がV字型とするのが好ましい。断面がV字型の溝の最深部は、敷設作業者が手で折り曲げた際に容易に切断し切り取ることができる程度に薄くする(後記する図5参照)。
【0031】
角隅部切り欠き用の深部断面がV字型の二本の溝は、角隅部切り欠き用溝は直線状に、相互に平行に形成し、断面がV字型の溝部分で切り欠かれた(切り取られた)部分の平面形状は、正三角形を呈するように形成するのが好ましい。対角位置の角隅部を切り欠いた際の平面形状は略六角形を呈し、複数の配管敷設用補助部材を組み合せた際に、熱媒導管の延在する方向を同じ方向に揃えることができる(後記する図4参照)。
【0032】
下側部材には、下側部材と組み合せて下地床にビスによって固定するために、下側部材の上側面に上側薄板製蓋を被せた際に対応する位置に、それぞれビス固定用穴を複数個設けるのが好ましい(後記する図2参照)。また、下側部材の断面がU字型の溝、深部断面がV字型の溝を設けた上側面の反対の下側面は平滑面とするのが好ましく、溝を設けた上側面には空間を設けて下側部材自体を軽量化し、リブを設けて下側部材の外周、断面がU字型の溝、断面がV字型の溝、ビス固定用穴などを補強するのが好ましい。
【0033】
下側部材には、第一発明におけると同様に、平滑面側に両面接着剤を貼着することができる。両面接着テープの種類、貼着方法などは、第一発明の部分で説明したものと同一とすることができる。
【0034】
配管敷設用補助部材を構成する上側薄板製蓋は、下側部材と同一の平面形状で、厚さが3〜10mmの略正方形とし、下側部材の上側に被せた際に、下側部材の断面がU字型の溝に対応した位置に、熱媒導管外径の20〜5%の深さとして断面が浅いU字型とされた少なくとも二本の溝を形成し、かつ、角隅部切り欠き用溝が形成する。上側薄板製蓋の断面が浅いU字型の溝は、下側部材のU字型の溝と組み合されて熱媒導管を保持・固定する。上側薄板製蓋の角隅部切り欠き用溝は、下側部材の角隅部を切り欠いた際に、上側薄板製蓋も同様に切り欠かれる。上側薄板製蓋にはまた、下側部材の上側に被せた際に下側部材のビス止め穴に対応する位置に、同様にビス止め穴を設けるのが好ましい。上側薄板製蓋は、下側部材と同種の合成樹脂を原料とし、射出成形法によって製造するのが好ましい。
【0035】
本発明に係る配管敷設用補助部材敷設するには、例えば第二発明の場合、以下の手順によることができる。まず、(1)室内の所定の場所に、床暖房用マットを敷設する。次いで、(2)床暖房用マットの周縁部に配置されたヘッダと熱媒制御部との隙間に、まず下側部材を配置して仮固定した後、この下側部材上側面に刻設された断面がU字型溝に熱媒導管を埋設する。この際必要があれば、下側部材の断面がV字型の溝部で角隅部を切り欠き、複数個の下側部材を組み合せる。続いて、(3)この下側部材の位置を微調整して決め、上側薄板製蓋を被せてビス止め穴して下地床に本固定する。この際、下側部材の角隅部を切り欠いた場合は、上側薄板製蓋の対応する角隅部を切り欠く。 (4) 下地床の隙間部分にダミーマットを敷設し、これら床暖房用マット、配管敷設用補助部材およびダミーマットの上面に表面被覆材を敷設して、暖房可能な床を構成する。
【0036】
なお、上記した手順で暖房可能な床を構成する際には、床暖房用マットと表面被覆材との間に、可撓性薄板で被覆するのが好ましい。この可撓性薄板は、熱媒導管に通す熱媒の熱を表面被覆材側に効率的に伝達する機能を果たすものである。この可撓性薄板の種類は、上記機能を果たすものであればいかなるものでもよく、例えば市販されているアルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔などの金属箔を挙げることができる。中でも、製造の容易さやコストなどの観点から、アルミニウム箔が好適である。また、床暖房用マット、配管敷設用補助部材およびダミーマットの上面を被覆する表面被覆材としては、カーペット、木製板状体などを挙げることができる。
【0037】
以下、本発明に係る配管敷設用補助部材を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0038】
図1は、本発明に係る配管敷設用補助部材A、B、Cと、連絡管ガイドマットDを用いて構成された暖房可能な床の一例の平面略図である。図2は、敷設配用補助部材を構成する下側部材の一例の拡大平面図であり、図3は、図2に示した下側部材のIII―III部分の縦断側面図である。図4は、下側部材を二個組み合せた状態一例の平面略図であり、図5は、下側部材上側に上側薄板製蓋を被せる状態の一例を示す部分拡大縦断側面図である。
【0039】
図1は、暖房可能な床の一例の平面略図であり、手前右側に出入口を有する部屋10内の中央部分には床暖房用マットが配置され、その周縁部に本発明に係る敷設配用補助部材とダミーマットが配置されている。図1において、11は厚さが12mmの発泡ポリスチレン製板状体によって構成された床暖房用マットであり、12〜16はダミーマット、A、BおよびCはポリエチレンを原料とし、射出成形法で製造された一辺が100mmで、厚さが12mmの敷設配用補助部材であり、16は図示されていない熱媒制御部からの配管に連接されているヘッダ部、17は熱媒導管18を床暖房用マット11に導くヘッダ部である。敷設配用補助部材Aには、ヘッダ部16を配置するために、部分的に切り欠き加工が施されている。
【0040】
床暖房用マット11にはヘッダ部17が設けられており、上記した熱媒制御部からのヘッダ部16とヘッダ部17とが、熱媒往き用と熱媒戻り用の2本の架橋ポリエチレン製で外径が10.5mmの熱媒導管18によって繋がれている。この熱媒導管18は、配管敷設用補助部材A、B、Cと、熱媒導管ガイド溝が刻設されているダミーマットDとによって配置・固定されている。部屋10内の床暖房用マット11および上記配管敷設用補助部材A、B、CおよびダミーマットD以外の部分には、溝が刻設されていない厚さが12mmのダミーマット13、14、15、および17が敷設されている。
【0041】
図2には、敷設配用補助部材を構成する下側部材A1の一例の拡大平面図を示しており、19、20は角隅部21を中心にして形成された、断面がU字型の溝であり、この溝19、20は幅が10.5mm、深さが10mmとされている。この断面がU字型の溝は、熱媒導管外径(10.7mm)より若干小さくされており、熱媒導管外径の60〜95%の深さとするのは、前記したとおりである。
【0042】
図2と、図3に示した下側部材A1のIII―III部分の縦断側面図で明らかなとおり、下側部材A1のU字型の溝19、20を形成した面には、円弧の中心とした角隅部21とこの角隅部近傍と対角位置の隅部近傍の双方に、角隅部切り欠き用溝22、23が形成されている。円弧中心角隅部21側では、角隅部切り欠き用溝22が最小径のU字型の溝19と交差しない位置に形成され、対角位置の角隅部側では、角隅部切り欠き用溝23が最大径のU字型の溝20と接触しない位置に形成されている。
【0043】
角隅部切り欠き用溝22、23の二本の溝は、相互に平行に形成されており、断面がV字型の溝深部で切り欠かれた(切り取られた)部分の平面形状は、正三角形を呈するように形成するようにされている。また、断面がV字型の溝部分は、敷設作業者が手で折り曲げて、または刃物で容易に切断できる程度に薄くされている。
【0044】
下側部材A1は一方の面が平滑面とされ、この面の反対側に上側に突き出させたリブによって、U字型の溝19、20、角隅部切り欠き用溝22、23と、角隅部切り欠き用溝22、23との二種類の溝のほか、周辺補強用リブ、ビス固定用穴などが形成され、平滑面の裏面とこれらリブに囲まれた残りの部分は空間とされている。リブはそれぞれの機能を果たし、空間部分は原料樹脂の使用量を少なくし、下側部材A1を軽量化するのに役立つ。
【0045】
下側部材A1を図1に示したように二個組み合せれば、熱媒導管が延在する方向を180度変更することができる。図4に示したように二個組み合せれば、90度方向転換する熱媒導管の本数を二倍とすることができる。図4に示した例は、角隅部切り欠き用溝23を切り欠いた下側部材と、角隅部切り欠き用溝22を切り欠いた下側部材とを組み合せた例を示した。
【0046】
図5は、下側部材A1に薄板製蓋A2を被せる状態の一例を示す部分拡大縦断側面図である。薄板製蓋A2の平面形状は、下側部材A1と同じ形状とされ、下側部材A1の上側面に被せた際に、下側部材の断面がU字型の溝19、20に対応した位置に、熱媒導管外径の20〜5%の深さとした断面が浅いU字型とされた溝27と、角隅部切り欠き用溝に対応した位置に、角隅部切り欠き用溝22a、23aがそれぞれ形成されてなる。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る配管敷設用補助部材は、床暖房用マットと実質的同一厚さの下側部材と上側薄板製蓋とより構成されているので、下側部材の断面がU字状の溝に熱媒導管を埋設した際に、熱媒導管が断面がU字状の溝から飛び出したりすることがなく、敷設作業を迅速に行うことができる。
2.本発明に係る配管敷設用補助部材は、円弧の中心とした角隅部とこの角隅部近傍と対角位置の隅部近傍の双方に、角隅部切り欠き用溝が形成されているので、敷設現場の広さに応じて、角隅部切り欠き用溝を切り欠いて複数の配管敷設用補助部材を組み合せることができるので、敷設作業を円滑に行うことができる。3.本発明に係る配管敷設用補助部材は、下側部材と薄板製蓋とを合成樹脂を原料として射出成形法で製造したものであると、生産性、寸法精度、強度などに優れ、U字型溝が破損することが少ない。
4.本発明に係る配管敷設用補助部材は、下側部材の平滑にされた下側面に両面接着テープを貼着したときは、下側部材を敷設場所に配置する際に、敷設場所で煩雑な位置の微調整を行う必要がなく、敷設作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る配管敷設用補助部材と、連絡管ガイドマットを用いて構成された暖房可能な床の一例の平面略図である。
【図2】 敷設配用補助部材を構成する下側部材の一例の拡大平面図である。
【図3】 図2に示した下側部材のIII―III部分の縦断側面図である。
【図4】 下側部材を二個組み合せ状態の一例の平面略図である。
【図5】 下側部材に薄板製蓋を被せる状態の一例を示す部分拡大縦断側面図である。
【符号の説明】
10:部屋
11:床暖房用マット
12、13、14、15、16: ダミーマット
17a、17b:ヘッダ部
18:熱媒導管
19、20:U字型の溝
21:円弧の中心となる角隅部
22、23、22a、23a:角隅部切り欠き用溝
24、25:ビス固定用穴
26:補強用リブ
27、27:浅いU字型の溝
A、B、C:配管敷設用補助部材
D:連絡管ガイド用マット
A1:下側部材
Aa:平滑面
A2:上側薄板製蓋

Claims (9)

  1. 床暖房用マットを構成する板状体の周縁部に配置されたヘッダ部と、熱媒制御部とを繋ぐ熱媒導管を湾曲させて配置・固定するための配管敷設用補助部材において、この配管敷設用補助部材は、床暖房用マットと実質的に同一厚さの平面形状が略正方形とし、この下側部材の上側面には、熱媒導管外径とほぼ同一ないし若干小さい幅で、熱媒導管外径以上の深さとして、長さ方向に直角に切断した際の断面がU字型とされた少なくとも二本の溝が、下側部材の一の隅近傍を中心とした円弧状に形成され、かつ、円弧の中心とした角隅部とこの角隅部近傍と対角位置の隅部近傍の双方に、角隅部切り欠き用溝が形成されてなることを特徴とする、配管敷設用補助部材。
  2. 配管敷設用補助部材が、合成樹脂を原料として射出成形法で製造されたものである、請求項1に記載の配管敷設用補助部材。
  3. 角隅部切り欠き用溝が、長さ方向に直角に切断した際の深部断面がV字型とされてなる、請求項1または請求項2に記載の配管敷設用補助部材。
  4. 床暖房用マットを構成する板状体の周縁部に配置されたヘッダ部と、熱媒制御部とを繋ぐ熱媒導管を湾曲させて配置・固定するための配管敷設用補助部材において、この配管敷設用補助部材は下側部材と上側薄板製蓋とより構成されてなり、下側部材は、床暖房用マットと実質的に同一厚さの平面形状が略正方形とし、この下側部材の上側面には、熱媒導管外径とほぼ同一ないし若干小さい幅で、熱媒導管外径の80〜95%の深さとして、長さ方向に直角に切断した際の断面がU字型とされた少なくとも二本の溝が、下側部材の一の隅近傍を中心とした円弧状に形成され、かつ、円弧の中心とした角隅部とこの角隅部近傍と対角位置の隅部近傍の双方に、角隅部切り欠き用溝が形成されてなり、上側薄板製蓋は、下側部材に上側から被せた際に、下側部材の断面がU字型の溝に対応した位置に、熱媒導管外径の20〜5%の深さとした断面が浅いU字型とされた溝と、角隅部切り欠き用溝に対応した位置に、角隅部切り欠き用溝がそれぞれ形成されてなることを特徴とする、配管敷設用補助部材。
  5. 下側部材と上側薄板製蓋は、合成樹脂を原料として射出成形法で製造されたものである、請求項4に記載の配管敷設用補助部材。
  6. 下側部材と上側薄板製蓋の双方の角隅部切り欠き用溝が、長さ方向に直角に切断した際の深部断面がV字型とされてなる、請求項4または請求項5に記載の配管敷設用補助部材。
  7. 下側部材と上側薄板製蓋の双方の角隅部切り欠き用溝が、それぞれ相互に平行にされてなる,請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の配管敷設用補助部材。
  8. 下側部材と上側薄板製蓋には、下側部材の上側面に上側薄板製蓋を被せた際に対応する位置に、それぞれビス固定用穴が設けられてなる、請求項4ないし請求項7のいずれか一項に記載の配管敷設用補助部材。
  9. 下側部材は、下側面が平滑にされ、かつ、両面接着テープが貼着されてなる、請求項4ないし請求項8のいずれか一項に記載の配管敷設用補助部材。
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