JP4087025B2 - セルロース系繊維/ポリ乳酸繊維混紡糸の製造方法 - Google Patents

セルロース系繊維/ポリ乳酸繊維混紡糸の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロース系繊維とポリ乳酸繊維とを用いた混紡糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、多くの合成繊維が生産され、天然繊維と共にそれぞれの繊維特性に合わせて種々の分野に使用されてきたが、その繊維特性は特定の用途においては所望の要件を充足しておらず、これらの繊維を混紡・混繊、あるいは交撚・交織し、新たな特性を付与して、それらの用途に応じてきた。
【0003】
綿,絹(絹紡用),羊毛等の天然繊維と、合成繊維のカットファイバーやフィラメントを紡績過程中で混ぜ合わせ、加撚して混紡糸を製造する手段もまたその一例であり、その製造方法も既に各種のものが知られている。
【0004】
ところが、近年環境保護の立場から各種の家庭用繊維製品、特に衣料品の再利用が叫ばれると共に、再利用不可能な製品では微生物の働きによって完全に分解する生分解性素材の利用や、焼却時に大気汚染の少ない素材の利用が社会的に求められている。
【0005】
一般に、再利用不可能な繊維製品の廃棄方法としては埋め立てや焼却処分が利用される。混紡用素材のうち、天然繊維は自然環境下、土中等の微生物により徐々に分解して最終的には消失し、また焼却も容易であるので使用後の放置や焼却においても大気汚染や環境破壊の心配はない。
【0006】
しかし、従来使用されている混紡用合繊素材であるナイロン,ポリエステル,アクリル等の繊維は微生物で分解されず、またこの様な素材は化学的にも安定しているので合繊綿の部分が長期間にわたって土中にそのままいつまでも残り、その結果環境上の問題を引き起こしている。
【0007】
さらに、これらの合繊繊維部分を焼却処理した際は、燃焼時の発熱量が高いため焼却炉の寿命を短くするばかりでなく、ポリアクリロニトリル系合繊素材の場合にはシアンガスの様な有害ガスを発生する恐れもある。
【0008】
この様に、現在使用されている混紡糸において構成素材の一方に合繊素材を使用した場合は、使用後の破棄処分時に環境保護上の各種の支障を生じており、上記問題点を解消し、含有する合繊素材が本来保有する性能を損なわず、しかも廃棄時には土中や活性汚泥中、コンポスト中にて比較的短時間のうちに分解し、また焼却時には有害ガスを発生させず、さらには燃焼熱がセルロース並に低く高温ガスの発生を抑制することのできる新規な混紡糸が開発されてきた。
【0009】
例えば、ポリヒドロキシブチレート(以下PHBと記す)、ポリカプロラクトン(以下PCLと記す)、ボリ乳酸等の溶融形成可能なポリマーから得られた繊維等が知られているが、製造コストの高価なPHBや融点の低いPCL(融点60℃)に比べ、ポリ乳酸の場合、製造コストが安価で、175℃と比較的高い融点を持つため、繊維形成性ポリマーとして最も適切であると考えられている。しかしながら、ポリ乳酸繊維をセルロース系繊維と混紡する際、物性値の違い等により、均質な紡績糸を安定して製造することが困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、均質なセルロース系繊維/ポリ乳酸繊維混紡糸を、安定して製造する方法の提供を目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、セルロース系繊維とポリ乳酸繊維とを用いてNS番手(英式綿番手)の精紡糸を紡出するにあたり、撚係数KRで粗紡したNR番手の混紡粗糸を用いて精紡することを特徴とする混紡糸の製造方法によって解決される(粗糸撚係数KRは下記式(1)、粗糸番手NRは下記式(2)を満足するものとする)。
【0013】
1.72 − 9NS -0.8 ≦ KR ≦ 1.84 − 14NS -1.0 ・・・式(1)
0.028NS − 0.09 ≦ NR ≦ 0.032NS − 0.08 ・・・式(2)
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の混紡糸には、上述の様にセルロース系繊維とポリ乳酸繊維を用いるものであり、上記セルロース系繊維としては、綿,レーヨン,テンセル(コートルズ・ファイバーズ・ホールディングス・リミテッド社の登録商標)等が、使用できる。
【0015】
また、上述の様に、生分解性を有する合成繊維としては、特開平7−305227号公報等で開示されるポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ボリ乳酸等の溶融形成可能なポリマーから得られた繊維が挙げられるが、上記PHBは、同公報記載の通り、製造コストが高過ぎるだけでなく、微生物による生合成のためにポリマーの採取や精製に多大のエネルギーを要し、且つ分子量や結晶性を制御することが困難なために成型の困難さや成型品の物性制御上に難点があり、工業的に安価に用途に応じた性能、成型性を与えることが難しい。
【0016】
さらに、PCLは融点が60℃と低すぎるために使用中のクリープが大きく、製品の形態安定性の維持に欠けたり使用温度により強度が極端に低下する等事実上重大な問題点を有している。
【0017】
これに対して、ポリ乳酸は比較的原料コストが安く、融点も175℃で十分な耐熱性を有する熱可塑性樹脂であって、前述の如く、溶融成型可能で且つ製造上も比較的低コストであるので、本発明の混紡糸用として最も適切なポリマーである。
【0018】
通常、綿紡績は、大きく、混打綿→梳綿→練篠→粗紡→精紡といった工程に分けられるが、本発明の混紡糸を製造するにあたっては、(1)混打綿工程でセルロース系繊維とポリ乳酸繊維の原綿塊を混ぜ合わせた後、梳綿工程,練篠工程に供給してスライバーとする方法、(2)セルロース系繊維とポリ乳酸繊維をそれぞれ単独で混打綿及び梳綿工程に供給せしめた後、練篠工程で両者を混ぜ合わせてスライバーとする方法、の二通りが可能である。
【0019】
この様にして、練篠工程を経て得た混紡スライバーを、続いて粗紡工程に供給して粗糸を紡出するものであるが、このときの粗糸の撚数及び番手を、下記式(1)及び式(2)を満足するように設定する(番手は英式綿番手)。
【0020】
1.72 − 9NS -0.8 ≦ KR ≦ 1.84 − 14NS -1.0 ・・・式(1)
0.028NS − 0.09 ≦ NR ≦ 0.032NS − 0.08 ・・・式(2)
【0021】
また、粗糸の撚数TRは、下記式(3)より算出されるため、求められる精紡糸番手と粗糸の番手,撚数,撚係数は下記表1の様になる。なお、下表には精紡糸番手が10〜150番手の場合のみ記す。
R = KR×NR 1/2 ・・・式(3)
【0022】
【表1】
Figure 0004087025
【0023】
粗糸の撚係数が上記式(1)で定義される範囲より小さい場合、各単繊維の引っ掛かりが弱いため糸切れが発生しやすくなり、また逆に大きい場合、応力が局所的に集中しやすくなり、糸の均質性を損なうという問題があるため、粗糸の撚係数は上記式(1)の範囲が好適である。また、精紡工程におけるドラフト率を35〜45倍とした場合において、粗糸撚係数が式(1)の範囲である場合に好ましい粗糸番手は式(2)の様になるのである。
【0024】
そして、上記の様にして得た粗糸を精紡工程に供給し、35〜45倍にドラフトして撚りをかけることにより、NS番手の所望の精紡糸が得られるのである。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、本実施例において「%」とあるのはことわりのない限り「重量%」を意味する。
【0026】
重量平均分子量120,000、融点が175℃である生分解性組成物のポリ乳酸を230℃で溶融し、孔径0.2mm、孔数48個を有する紡糸ノズルより空中に押し出して紡糸し、1.5dのポリ乳酸繊維フィラメントを得た後、該ポリ乳酸繊維フィラメントを38mmの繊維長に切断してポリ乳酸繊維ステーブル・ファイバーを得た。該ステーブル・ファイバーの強度は4.0g/d、伸度は35%、弾性率は520kg/mm2であった。
【0027】
そして、該ポリ乳酸繊維ステーブル・ファイバー50%と平均繊維長38mmの綿50%からなる原綿塊を混打綿工程に供給してラップ状態に形成せしめた後、梳綿工程(カーディング)にてカードスライバーとし、さらに該カードスライバー8本を練篠機に供給し、さらに一旦練篠工程を経たスライバー8本を再度練篠機に供給して併合数64(=8×8)のスライバーとした。
【0028】
続いて、上記のセルロース系繊維及びポリ乳酸繊維混スライバーを用い、異なる条件で粗紡を行った。
【0029】
まず、上記の混紡スライバーを用いて、式(1)及び式(2)共に満足する粗紡条件;撚係数1.26、1.04番手の粗糸を紡出し(撚数TR=1.29tpi)、これを粗糸Aとした。
【0030】
次に、上記と同様の混紡スライバーを用いて、式(1)は満足するが式(2)を満足しない条件;撚係数1.26で、1.3番手の粗糸(粗糸番手>0.032×40−0.08)を紡出し(撚数TR=1.44tpi)、これを粗糸Bとした。
【0031】
また、上記と同様の混紡スライバーを用いて、式(2)は満足するが式(1)を満足しない条件;撚係数1.20(粗糸撚係数<1.72−9×40-0.8)で1.04番手の粗糸を紡出し(撚数TR=1.22tpi)、これを粗糸Cとした。
【0032】
続いて、上記粗糸A,粗糸B及び粗糸Cを用い、それぞれドラフト率40倍、撚数24tpiで精紡し、40番手の精紡糸A,精紡糸B及び精紡糸Cを得た。このとき、粗糸Cを精紡機に供給し運転する際、粗糸の糸切れが頻繁に発生し、操業性に著しい支障を来した。
【0033】
次に、上記の精紡糸A及び精紡糸B(何れも40番手)を使い、それぞれの精紡糸100%からなる経130本/インチ、緯70本/インチの平織物;布帛A及び布帛Bを製織したところ、布帛Bは糸(精紡糸B)の太さにムラがあり、生地の薄いところやネップ等の不良箇所が観察された。なお、精紡糸Cは、上述の様に糸切れが多発し、十分な品質の製品が得られなかったので、布帛Cを製織することができなかった。
【0034】
以下、それぞれの製品について、精紡時の操業性、並びに精紡糸及び布帛の外観の状態を表2として示す。
【0035】
【表2】
Figure 0004087025
【0036】
【発明の効果】
以上の説明の様に、本発明の紡績方法によれば、セルロース系繊維とポリ乳酸繊維を用いて、高品質且つ均質な混紡糸を、安定して供給することが可能になるという効果を奏するのである。

Claims (1)

  1. セルロース系繊維とポリ乳酸繊維とを用いてNS番手(英式綿番手)の精紡糸を紡出するにあたり、撚係数KRで粗紡したNR番手の混紡粗糸を用いて精紡することを特徴とする混紡糸の製造方法(粗糸撚係数KRは下記式(1)、粗糸番手NRは下記式(2)を満足するものとする)。
    1.72 − 9NS -0.8 ≦ KR ≦ 1.84 − 14NS -1.0 ・・・式(1)
    0.028NS − 0.09 ≦ NR ≦ 0.032NS − 0.08 ・・・式(2)
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