JP4087021B2 - 転回機構を備えた四輪車両 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、小さな回転半径で転回することができる四輪車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
四輪車両には回転半径という車両性能を示すパラメータがあり、この回転半径が小さいほどUターン等の転回運転の際にいわゆる小回りが利くことになる。
回転半径の改善を図ることができる従来の四輪車両としては、4WS(四輪操舵)を採用した車両が知られている。この4WSとはステアリングホイールの操作に連動して前輪だけでなく後輪の操舵角度(舵角)を制御するシステムであり、後輪に舵角が付くことにより回転半径を減少させることができる。
【0003】
また、回転半径の改善としては第5輪方式が知られている。これは四輪の他に第5輪を床下に格納し、転回時に第5輪を他の車輪より若干突出させて車体を持ち上げ、第5輪を駆動することにより車両を転回させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、4WSは回転半径の減少には効果的であるものの、特有の振り出し現象を実用上支障がない範囲に抑えるためには舵角が制限されるので、回転半径の減少にも限界があるという問題点があった。第5輪方式の場合には、高い効果が期待できるものの、転回運転中には三輪状態となり、車両が不安定となることや機構が複雑になり易く、また車輪を含む機構を収めるためのスペースが大きくなってしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、省スペースの比較的簡単な転回機構で回転半径を十分に減少させて転回することができる四輪車両を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の転回機構を備えた四輪車両は、前後の左右輪のうちの駆動源による走行トルクが伝達されない一方の左右輪を地面に垂直な軸を中心に回転自在とする回転支持手段と、前後の左右輪のうちの他方の左右輪の車両走行用回転軸間の中央点付近を中心として一方の左右輪の地面に垂直な軸を通る円弧の接線方向に沿った角度位置に一方の左右輪を固定する回転位置固定手段と、回転位置固定手段によって固定された回転位置にて他方の左右輪各々に互いに異なる回転方向の回転トルクを与えて車体を他方の左右輪の車両走行用回転軸間の中央点付近を中心として転回させる転回駆動手段と、を備え、転回駆動手段は、車体の転回時にデファレンシャル内の2つのピニオンを回転自在に支持するケースを固定させる手段と、デファレンシャル内の一方のサイドギアを回転駆動するモータとを有することを特徴としている。
【0007】
かかる本発明の四輪車両によれば、駆動源による走行トルクが伝達されない一方の左右輪を地面に垂直な軸を中心に回転自在とし、車体転回時には他方の左右輪の車両走行用回転軸間の中央点付近を中心として一方の左右輪の地面に垂直な軸を通る円弧の接線方向に沿った角度位置に一方の左右輪を固定するので、比較的簡単かつ小さな回転機構を得ることができる。また、他方の左右輪の回転軸の中央点付近を中心として一方の左右輪の地面に垂直な軸を通る円弧の半径が車体転回時の回転半径となるので、その回転半径は極めて小さいものとなる。更に、一方の左右輪の固定角度位置にて他方の左右輪各々に互いに異なる回転方向の回転トルクを与えるので、車体を容易に転回させることができる。
【0008】
また、転回駆動手段は、デファレンシャル内の2つのサイドギアを回転自在に支持するケースを固定した状態でその2つのサイドギアのいずれか一方を回転駆動するモータを有するので、他方の左右輪の回転軸の中央点付近を中心として車体を確実に転回させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明による転回機構を備えた四輪車両の概略的構造を示し、車両の前後の4つのタイヤ11〜14の断面を含む水平面から見たものである。この車両はFF(前輪駆動)の車両であり、車体1の前部に配置されたエンジン本体2が駆動軸3aを介して左の前ホイール4を、また駆動軸3bを介して右の前ホイール5を各々回転駆動するようになっている。左右の前タイヤ11,12の内側の前ホイール4,5はナックル6,7、ナックルアーム8,9及びタイロッド10からなるステアリング機構と結合している。
【0010】
駆動軸3a,3bには図2に示すようにデファレンシャル95が設けられており、デファレンシャル95のケース95aに固定されたリングギア96が駆動ギア97と噛合している。駆動ギア97はエンジン本体2によって回転駆動される。リングギア96の歯部には図示しない機構によってストッパ101が係合可能にされており、リングギア96にストッパ101が係合したときにはリングギア96の回転が強制的に停止されるようになっている。ストッパ101は後述の図6に示すストッパ駆動装置102によって駆動されることによりリングギア96との係合を行う。
【0011】
また、駆動軸3aにはギア98が駆動軸3aと共に回転するように取り付けられている。ギア98には駆動ギア99が噛合している。駆動ギア99はモータ100によって回転駆動される。モータ100は車体1を転回させるための駆動源であり、車体1の左転回の場合に正回転し、右転回の場合に逆回転する。
一方、左右の後タイヤ13,14の内側の左右の後ホイール15,16は回転自在にされている。後ホイール15の中心にはフランジ状のハブ21が設けられており、そのハブ21は図3及び図4に具体的に示すようにベアリング22によって回転自在に支持されている。
【0012】
ナックル24の下部のリング形状の欠けた部分は支持部24cであり、トレーリングアーム30のねじ部30aに対して回動自在に結合している。すなわち、支持部24cの貫通孔24dにはトレーリングアーム30のねじ部30aが下方から挿入され、そのねじ部30aにはナット30bが螺合している。このナックル24とトレーリングアーム30との回動自在な結合により後ホイール15は地面に垂直な軸を中心にして回動できるようになっている。
【0013】
また、ナックル24にはベアリング22がワッシャー27を介してボルト28,29よって締結されている。ナックル24には2つのナックルアーム24a,24bが外周部から伸長しており、ナックルアーム24aの先端にはショックアブソーバ31が結合している。ナックルアーム24bはL字形状であり、ナックルアーム24bには転回機構の接続アーム32の一端が結合している。接続アーム32はその結合点を中心にして平面的に回動自在にされている。
【0014】
図3に特に示すように、ハブ21には更にブレーキディスク33が固定され、ブレーキキャリパー35がナックル24に固定され、図示しないブレーキペダルの操作に応じてブレーキディスク33とブレーキキャリパー35とが接触して制動力が発生するように動作するようになっている。
図3及び図4には左の後輪部分だけを示したが、右の後輪部分は左の後輪部分と対称に形成されている。
【0015】
転回機構は、図1に示したように、上記の左の接続アーム32の他、右の接続アーム40、2つの油圧シリンダ41,42、2つのロッド43,44及び2つのリム45,46を備えている。油圧シリンダ41,42は互いに平行な状態で車体1に固定され、後述の図5に示すように、内部のピストン47,48が車体1の前後方向に摺動するようにされている。ロッド43,44は対応する油圧シリンダ41,42内を通過している。リム45,46はストッパをなす棒状のものである。リム45の一端には接続アーム32の他端が平面的に回動自在に結合し、一端には接続アーム40の他端が平面的に回動自在に結合している。リム45,46は互いに平行に配置され、その間にロッド43,44が位置している。ロッド43,44各々の一端はリム45に固着され、他端はリム46に固着されている。油圧シリンダ41,42内のピストン47,48にはロッド43,44が貫通して結合しており、ピストン47,48の移動と共にロッド43,44が連動するようになっている。
【0016】
油圧シリンダ41,42各々にはピストン47,48を境として両側に油室41a,41b,42a,42bが形成され、その油室各々に油入出口が形成されている。
通常モードではピストン47,48は後述の後輪操舵系によって油圧シリンダ41,42内で車両後方側に位置し、それに連動して後タイヤ13,14は直進状態となる。ターンモードではピストン47,48は後輪操舵系によって油圧シリンダ41,42内で車両前方側に位置し、それに連動して後タイヤ13,14は後述するが、ハの字状態となる。
【0017】
図5は油圧シリンダ41,42の油圧回路及び電気回路を含む後輪操舵系を示している。油圧回路は、油タンク51、油圧ポンプ52、モータ53及び電磁バルブ54を有している。モータ53は油圧ポンプ52を駆動するものである。油タンク51内の油は油圧ポンプ52によって吐出されて電磁バルブ54に供給される。電磁バルブ54は電磁バルブ54からの油入口と油タンク51への油出口とを有している。また、電磁バルブ54は油圧シリンダ41,42各々の油室41a,41b,42a,42bと個別に接続した4ポートを有している。電磁バルブ54のソレノイド54aの非励磁状態では油入口が油室41a,42aからの2ポートと内部で連通すると共に油出口が油室41b,42bからの2ポートと連通し、電磁バルブ54のソレノイド54aの励磁状態では油入口が油室41b,42bからの2ポートと内部で連通すると共に油出口が油室41a,42aからの2ポートと連通するように切り換え動作する。なお、油タンク51、油圧ポンプ52、電磁バルブ54及び油圧シリンダ41,42間の配管は図5には実線で示しているだけで、符号では示していない。
【0018】
モータ53の駆動と電磁バルブ54のソレノイド54aの励磁及び非励磁とは後輪舵角コントローラ60によって制御される。後輪舵角コントローラ60はマイクロコンピュータからなり、プログラムに従って動作する。後輪舵角コントローラ60にはターンモードを操作によって指令するモードスイッチ61及びリム45,46の位置を検出するリムセンサ62,63が接続されている。リムセンサ62はリム45が油圧シリンダ41,42と近接した位置にあるときターン位置信号を発生し、リムセンサ63はリム46が油圧シリンダ41,42と近接した位置にあるとき直進位置信号を発生する。また、後輪舵角コントローラ60にはランプ49及びブザー50が接続され、ランプ49はターンモード中に点滅又は点灯し、ブザー50はターンモード中に間欠又は連続の警報音を発生する。更に、後輪舵角コントローラ60には車両の変速機(図示せず)のシフト位置がP(パーキング)レンジであることを示すPレンジ信号が供給される。
【0019】
上記したモータ100は、電源電圧、回転方向を指定する正逆回転信号、回転速度を指定するスピード信号、ブレーキを指示するブレーキ信号及び回転を禁止するリセット信号を入力するようにされ、これらの電源電圧及び信号はターンコントローラ70によって各々制御される。
図6はモータ100の駆動制御系を示している。この駆動制御系にはターンコントローラ70の他にリレーユニット71、スピード調整ボリューム72、ブレーキ調整ボリューム73、左右のターンスイッチ74,75及びブレーキスイッチ76が備えられている。ターンコントローラ70はマイクロコンピュータから構成されている。左右のターンスイッチ74,75及びブレーキスイッチ76は操作したときだけオンとなるスイッチである。
【0020】
リレーユニット71はリレーコイル81、リレースイッチ82、ダイオード83、抵抗84及びフューズ85からなる。リレーコイル81及び抵抗84は直列に接続され、ターンコントローラ70から出力されるモータメイン信号がリレーコイル81及び抵抗84に供給されると、リレーコイル81が励磁されるようになっている。リレースイッチ82とダイオード83とは並列に接続され、その並列回路の一端はフューズ85を介して電源であるバッテリー86の正端子に接続され、他端はモータ100の電源電圧の正入力端に接続されている。モータ100の電源電圧の負入力端はバッテリー86の負端子にアース接続されている。
【0021】
正逆回転信号、スピード信号、ブレーキ信号及びリセット信号はターンコントローラ70から発生される。正逆回転信号及びリセット信号はそのままモータ100に供給される。スピード信号はスピード調整ボリューム72を介してモータ100に供給され、ブレーキ信号はブレーキ調整ボリューム73を介してモータ100に供給される。スピード調整ボリューム72及びブレーキ調整ボリューム73各々は操作に応じてスピード信号のレベル及びブレーキ信号のレベルを調整する。
【0022】
左右のターンスイッチ74,75及びブレーキスイッチ76各々の一端には高レベルに対応する電圧Vccが印加され、左右のターンスイッチ74,75各々の他端はターンコントローラ70に接続されている。ブレーキスイッチ76の他端は左右のターンスイッチ74,75各々の他端と間にダイオード87,88が接続され、ダイオード87,88はブレーキスイッチ76のオン時には左右のターンスイッチ74,75各々の他端のレベルを高レベルにするように設けられている。
【0023】
ターンコントローラ70には上記のPレンジ信号が供給される他、後輪舵角コントローラ60から転回舵角制御の完了を示す操舵完了信号が供給される。
図7は車両内におけるモードスイッチ61、ターンスイッチ74,75及びブレーキスイッチ76の配置位置を示している。モードスイッチ61はフロントパネル91の中央部に設けられ、ターンスイッチ74,75及びブレーキスイッチ76はステアリングホイール92に一体に設けられている。また、モードスイッチ61の周囲にはランプ49による点灯又は点滅表示がされるようになっている。
【0024】
次に、上記した転回機構の動作について後輪操舵コントローラ60及びターンコントローラ70のプログラム処理動作に従って説明する。後輪舵角コントローラ60は後輪操舵ルーチンを実行し、ターンコントローラ70は転回制御ルーチンを実行する。
後輪舵角コントローラ60は、後輪操舵ルーチンにおいて図8に示すように先ず、モードスイッチ61がオンであるか否かを判別する(ステップS1)。モードスイッチ61がオンとなると、Pレンジ信号が供給されたか否かを判別する(ステップS2)。このステップS2は車両が停止した状態であるか否かを判別するためのものである。Pレンジ信号が供給された場合には変速機のシフト位置がPレンジにあるので、転回舵角制御を開始することができる状態にある。
【0025】
ステップS2の実行後、後輪舵角コントローラ60はモータ53を駆動して油圧ポンプ52を作動させ(ステップS3)、電磁バルブ54のソレノイド54aを励磁駆動する(ステップS4)。また、ランプ49を点滅駆動すると共にブザー50に間欠の警報音を発生させる(ステップS5)。ステップS3及びS4の実行により、油圧ポンプ52によって油タンク51内の油を吐出し、その吐出油が電磁バルブ54を介して油圧シリンダ41,42各々の油室41b,42bに供給される。一方、油圧シリンダ41,42各々の油室41a,42aは電磁バルブ54を介して油タンク51に連通し、油室41a,42a内の油が電磁バルブ54を介して油タンク51に戻る状態となる。よって、油圧ポンプ52による油タンク51内からの吐出油は油室41b,42bに供給されることにより油室41b,42bの容積を大きくするように作用し、ピストン47,48を油室41a,42a側に押圧する。ピストン47,48が油室41a,42a側に移動することにより、ロッド43,44及びリム45,46が連動して車両前方に移動する。
【0026】
リム45が車両前方に移動するに従って左右のナックルアーム24b,36bが左右の接続アーム32,40を介して車両前方に引っ張られるので、ナックル24,36の支持軸(図1の符号A)を中心にして左右の後ホイール15,16が矢印の方向に回動する。すなわち、後ホイール15,16だけでなく、後タイヤ13,14及びナックル24,36を含む後輪部分が回動する。
【0027】
左右の後ホイール15,16の回動中にはランプ49が点滅駆動され、ブザー50が間欠の警報音を発生する。
後輪舵角コントローラ60はステップ5の実行後、ターン位置信号が発生したか否かを判別する(ステップS6)。リム45が油圧シリンダ41,42に近接した位置まで移動すると、リムセンサ62がターン位置信号を発生する。このターン位置信号が発生されるとき、左右の後ホイール15,16全体は図9に示すようにハの字状態となる。この状態では左右の後ホイール15,16は前ホイール4,5の回転軸の中央を中心点(図1の符号B)とした図1の符号Aを通る円弧の接線方向に沿った角度位置に定められている。図9の破線C,Dが接線位置である。符号Aで示す点は車両左側ではトレーリングアーム30のネジ部30aの位置であり、ナックル24と左の後ホイール15の回転中心軸とが交差する位置であり、車両右側でも同様でありナックル36と右の後ホイール16の回転中心軸ととが交差する位置である。
【0028】
ターン位置信号が発生すると、後輪舵角コントローラ60はモータ53の駆動を停止して油圧ポンプ52の作動を停止させ(ステップS7)、ターンコントローラ70に対して後輪操舵完了信号を発生する(ステップS8)。また、ランプ49を点灯駆動すると共にブザー50に連続音を発生させ(ステップS9)、後輪操舵フラグFを1に等しくさせる(ステップS10)。後輪操舵フラグFの初期値は0である。
【0029】
ステップS1でモードスイッチ61がオフと判別した場合には後輪操舵フラグFが1であるか否かを判別する(ステップS11)。後輪操舵フラグFが0に等しい場合には本ルーチンの動作を終了する。一方、後輪操舵フラグFが1に等しい場合にはハの字状態に転回舵角制御された左右の後ホイール15,16を元の直進舵角に戻すためにモードスイッチ61がオフにされた場合であるので、転回停止指令信号をターンコントローラ70に対して発生し(ステップS12)、モータ53を駆動して油圧ポンプ52を作動させ(ステップS13)、電磁バルブ54のソレノイド54aの励磁駆動を停止する(ステップS14)。また、ランプ49を点滅駆動すると共にブザー50に間欠音を発生させる(ステップS15)。ステップS13及びS14の実行により、油圧ポンプ52によって油タンク51内の油を吐出し、電磁バルブ54内部の通路が切り換えられるので、その吐出油が電磁バルブ54を介して油圧シリンダ41,42各々の油室41a,42aに供給される。一方、油圧シリンダ41,42各々の油室41b,42bは電磁バルブ54を介して油タンク51に連通し、油室41b,42b内の油が電磁バルブ54を介して油タンク51に戻る状態となる。よって、油圧ポンプ52による油タンク51内からの吐出油は油室41a,42aに供給されることにより油室41a,42aの容積を大きくするように作用し、ピストン47,48を油室41b,42b側に押圧する。ピストン47,48が油室41b,42b側に移動することにより、ロッド43,44及びリム45,46が連動して車両後方に移動する。
【0030】
リム45が車両後方に移動するに従って左右のナックルアーム24b,36bが左右の接続アーム32,40を介して車両後方に押圧されるので、ナックル24,36の支持軸を中心にして左右の後ホイール15,16が車両直進方向に向くように回動する。すなわち、後ホイール15,16だけでなく、後タイヤ13,14及びナックル24,36を含む後輪部分が回動する。
【0031】
左右の後ホイール15,16の回動中にはランプ49が点滅駆動され、ブザー50が間欠の警報音を発生する。
後輪舵角コントローラ60はステップS15の実行後、直進位置信号が発生したか否かを判別する(ステップS16)。リム46が油圧シリンダ41,42に近接した位置まで移動すると、リムセンサ63が直進位置信号を発生する。この直進位置信号が発生されるとき、左右の後ホイール15,16全体は図1に示すように元の直進状態に戻る。
【0032】
直進位置信号が発生すると、後輪舵角コントローラ60は油圧ポンプ52の駆動を停止し(ステップS17)、ランプ49及びブザー50の駆動を停止し(ステップS18)、後輪操舵フラグFを0に等しくさせる(ステップS19)。
ターンコントローラ70は転回制御ルーチンにおいて、図10に示すように、先ず、操舵完了信号が発生したか否かを判別する(ステップS21)。後輪舵角コントローラ60が上記のステップS8で操舵完了信号を発生すると、その操舵完了信号がターンコントローラ70に供給される。
【0033】
ターンコントローラ70は操舵完了信号が供給されると、リセット信号を解除し(ステップS22)、ストッパ駆動装置102を介してストッパ101を作動させる(ステップS23)。モータ100には通常、ターンコントローラ70からリセット信号が供給されており、モータ100は回転禁止状態にあるので、リセット信号の供給を停止してモータ作動待機状態とする。また、ストッパ101の作動によりストッパ101がリングギア96と係合してリングギア96が回転しないようにケース95aと共に固定される。
【0034】
ターンコントローラ70はステップS23の実行後、ターンスイッチがオンであるか否かを判別する(ステップS24)。左右のターンスイッチ74,75の少なくとも一方がオンである場合には、いずれのターンスイッチがオンであるかを判別する(ステップS25)。左ターンスイッチ74のみがオンの場合には、モータ100を正回転駆動し(ステップS26)、右ターンスイッチ75のみがオンの場合には、モータ100を逆回転駆動し(ステップS27)、左右のターンスイッチ74,75が共にオンの場合にはモータ100へブレーキ信号を供給する(ステップS28)。左右のターンスイッチ74,75の両方がオフである場合にはブレーキスイッチ76がオンであるか否かを判別する(ステップS29)。ブレーキスイッチ76がオンである場合にはステップS28に進んでモータ100へブレーキ信号を供給する。モータ100へブレーキ信号が供給されることによりモータ100の回転に制動が掛かる。
【0035】
ステップS24〜S29の動作によって、左ターンスイッチ74がオン操作されると、ターンコントローラ70から正回転を指定する正逆回転信号がモータ100に供給され、その正逆回転信号に応じてモータ100が正回転する。モータ100の正回転は駆動ギア99、ギア98を介して駆動軸3aに伝達されるので、駆動軸3aが回転して左の前ホイール4を図11の矢印Xの如く回転させる。また、駆動軸3aの回転によりデファレンシャル95内の一方のサイドギア95bが回転し、その回転は2つのピニオン95c,95dによって他方のサイドギア95eに逆回転となって伝達される。よって、他方のサイドギア95eは駆動軸3bを介して右ホイール5を図11の矢印Yの如く左ホイール4の回転方向とは逆方向に回転させる。よって、左の前ホイール4は車両を前進させる方向に、右の前ホイール5は車両を後退させる方向に回転するので、前ホイール4,5の回転軸の中央を中心点(図1の符号B)として車体1は左転回し、回転自在な後ホイール15,16はそれに従って回転する。
【0036】
一方、右ターンスイッチ75がオン操作されると、ターンコントローラ70から逆回転を指定する正逆回転信号がモータ100に供給され、その正逆回転信号に応じてモータ100が逆回転する。モータ100の逆回転は駆動ギア99、ギア98を介して駆動軸3aに伝達されるので、駆動軸3aが回転して左の前ホイール4を図11の矢印Xの方向とは逆方向に回転させる。また、駆動軸3aの回転によりデファレンシャル95内の一方のサイドギア95bが回転し、その回転は2つのピニオン95c,95dによって他方のサイドギア95eに逆回転となって伝達される。よって、他方のサイドギア95eは駆動軸3bを介して右ホイール5を図11の矢印Yの方向とは逆方向に回転させる。よって、左の前ホイール4は車両を後退させる方向に、右の前ホイール5は車両を前進させる方向に回転するので、前ホイール4,5の回転軸の中央を中心点(図1の符号B)として車体1は右転回し、回転自在な後ホイール15,16はそれに従って回転する。
【0037】
ブレーキスイッチ76がオン操作されると、ターンコントローラ70からモータ100にブレーキ信号が供給され、モータ100の回転が制動される。また、左ターンスイッチ74及び右ターンスイッチ75が共にオン操作された場合にも同様に、モータ100にはブレーキ信号が供給され、モータ100は制動状態となる。
【0038】
上記したモータ100の正又は逆回転駆動の際にはターンコントローラ70からモータメイン信号がリレーユニット71に供給される。リレーユニット71においては、モータメイン信号に応じてリレーコイル81が励磁され、リレースイッチ83がオンとなる。リレースイッチ83のオンによってバッテリー86の正端子からフューズ85、リレースイッチ83、モータ100、そしてバッテリー86の負端子に電流が流れ込む。これにより、モータ100にはバッテリー86の出力電圧が印加され、モータ100は正回転又は逆回転するのである。
【0039】
ステップS26,S27又はS28の実行後、ターンコントローラ70は転回停止指令信号が供給されたか否かを判別する(ステップS30)。ステップS29にてブレーキスイッチ76がオフである場合もステップS30を実行する。モードスイッチ61がオフに操作されたため後輪舵角コントローラ60が上記のステップS12で転回停止指令信号を発生すると、その転回停止指令信号がターンコントローラ70に供給される。転回停止指令信号が供給されないならば、ステップS24に戻って上記の動作を繰り返す。一方、転回停止指令信号が供給されたならば、車両の転回は終了であるので、リセット信号をモータ100に供給し(ステップS31)、ストッパ駆動装置102によるストッパ101の作動を停止させ(ステップS32)、そして、本ルーチンを終了する。リセット信号がモータ100に供給されることによりモータ100はいわゆるロックされて回転停止状態となる。また、ストッパ101の作動停止によりストッパ101とリングギア96との係合が解かれてリングギア96が駆動ギア97の回転によってケース95aと共に回転可能にされる。
【0040】
運転者は転回するためには先ず、変速機をPレンジに操作することでターンモードが許可され、その後、モードスイッチ61をオン操作することになる。そうすると、ターンモードとなり、車両直進方向に向いていた左右の後ホイール15,16が上下方向を軸として回動を開始する。この回動中にはランプ49が点滅し、ブザー50が間欠の警報音を発生する。左右の後ホイール15,16が図10に示したようにハの字状態となると、ランプ49が点灯状態となり、ブザー50が連続の警報音を発生する。運転者はランプ49の点灯又はブザー50の連続の警報音によって転回操作できる状態になったことを認識する。
【0041】
そこで、運転者が左ターンスイッチ74をオン操作すると、モータ100が正回転して前ホイール4,5を互いに逆回転させる。左の前ホイール4は車両を前進させる方向に、右の前ホイール5は車両を後退させる方向に回転するので、後ホイール15,16も追従して回転して車両を左転回させる。右ターンスイッチ75をオン操作すると、モータ100が逆回転して前ホイール4,5を互いに逆回転させる。左の前ホイール4は車両を後退させる方向に、右の前ホイール5は車両を前進させる方向に回転するので、後ホイール15,16も追従して回転して車両を右転回させる。運転者は転回を停止させるためにはブレーキスイッチ76又は左右のターンスイッチ74,75の両方をオン操作させる。これによりモータ100には制動が掛かり、モータ100の回転、すなわち後ホイール15,16の回転が停止される。
【0042】
運転者は車両が所望の転回をした場合にはモードスイッチ61をオフ操作させる。モードスイッチ61のオフによりランプ49が点滅し、ブザー50が間欠の警報音を発生する。そして、ハの字状になっている左右の後ホイール15,16が上下方向を軸として車両直進方向に向くように回動を開始する。左右の後ホイール15,16が元の車両直進方向に向くと、ランプ49が点灯を停止し、ブザー50が連続の警報音の発生を停止する。運転者はランプ49の点灯停止又はブザー50の連続の警報音の発生停止によってターンモードが終了し通常モードとなったことを認識することになる。
【0043】
なお、上記した実施例において、ナックル24とトレーリングアーム30との係合部分が一方の左右ホイールを地面に垂直な軸を中心に回転自在とする回転支持手段を構成し、油圧シリンダ41,42、ロッド43,44、リム45,46及び接続アーム32,40からなる部分が回転位置固定手段を構成する。また、モータ100が一方の左右ホイールに回転トルクを与えて車体を転回させる転回駆動手段に相当する。
【0044】
上記した実施例においては、自動変速機を搭載した車両について説明したため、ステップS2では変速機のシフト位置がPレンジであることが判別されるが、手動変速機の場合にはニュートラルレンジであること、或いはサイドブレーキが作動されたことを判別すれば良い。また、ステップS2ではシフト位置がPレンジ又はニュートラルレンジにあり、かつサイドブレーキが作動していることを判別しても良い。
【0045】
更に、上記した実施例においては、前輪駆動の車両のためターンモード時に後車輪をハの字状に回動したが、後輪駆動の車両の場合には前ホイールをハの字状に回動することになる。その場合には後ホイールの回転軸上であってその後ホイール間の中央を中心点とした円弧の接線方向に沿った角度位置に前ホイールは固定される。
【0046】
また、上記した実施例においては、左右輪を一対のシリンダの同時押しタイプとしたが、左右輪を個別に駆動するようにしても良いし、或いは車両横方向に駆動力を与えるものでも良い。例えば、左右のナックルアーム24b,36b各々をリム45やアーム32,40を介さずに直接押すものでも良い。また、差動ラックを用いる等の様々な方法によって駆動力を与えることができる。
【0047】
なお、上記した転回制御ルーチンにおいては、手操作のブレーキスイッチ76を設けた場合について説明したが、ブレーキスイッチ76を設けないで、図12に示すように、ステップS24で左右のターンスイッチ74,75が共にオフの場合、又はステップS25で左右のターンスイッチ74,75が共にオンの場合にはターンコントローラ70はステップS33に進んでモータ100の駆動を停止することによりモータ100への電流供給を停止させても良い。すなわち、モータ100の駆動を停止して走行抵抗により車両が停止されるのである。更に、このときに所望の位置に車両を停止させるために上記したブレーキペダルの操作に応じて転回時の制動を掛けるようにしても良い。ブレーキペダルが操作されると、左後輪ではブレーキディスク33とブレーキキャリパー35との接触が生じ、右後輪でも図示していないブレーキディスクとブレーキキャリパーとの接触が生じて後ホイール15,16の回転に制動が掛けられる。これはターンコントローラ70とは別の制御系で行うことができる。
【0048】
また、ブレーキスイッチ76をブレーキペダルの操作に連動してオンするものとしても良い。この場合にはブレーキペダルの操作に応じてブレーキスイッチ76がオンし、これにより図10に示したようにステップS28に進んでモータ100の回転に制動が掛けられる。
更に、上記したように転回停止のためのブレーキペダルの操作中にはモータ100に微弱電流を流しても良い。これは、自動変速機のクリープトルクの如きトルクを転回停止制御中に掛けることによりブレーキペダルによる微妙な制動を行うものである。
【0049】
また、図10の転回制御ルーチンにおいては、ステップS22におけるリセット信号の解除後に、ステップS23にてストッパ101を作動させているが、例えば、自動変速機のシフトレバーをPレンジに操作した時点でストッパ101を作動させても良し、サイドブレーキに連動させてストッパ101を作動させても良い。すなわち、車両の停止が検知されたときにはストッパ101を作動させて良いのである。
【0050】
【発明の効果】
以上の如く、本発明の四輪車両によれば、駆動源による走行トルクが伝達されない一方の左右輪を地面に垂直な軸を中心に回転自在とし、車体転回時には他方の左右輪の回転軸間の中央点付近を中心として一方の左右輪の地面に垂直な軸を通る円弧の接線方向に沿った角度位置に一方の左右輪を固定するので、比較的簡単かつ小さな回転機構を得ることができる。また、他方の左右輪の回転軸間の中央点付近を中心として一方の左右輪の地面に垂直な軸を通る円弧の半径が車両転回時の回転半径となるので、その回転半径は極めて小さいものとなる。更に、デファレンシャル内の2つのサイドギアを回転自在に支持するケースを固定した状態でその2つのサイドギアのいずれか一方を回転駆動するモータを有するので、他方の左右輪の回転軸の中央点付近を中心として車体を確実に転回させることができる。よって、本願発明による四輪車両は小回りが利くので、縦列駐車、車庫入れ及びUターン等の車両の転回を要する運転が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例として四輪車両の概略構造を示す図である。
【図2】前輪駆動機構を概略的に示す図である。
【図3】後輪部分を具体的に示す断面図である。
【図4】図3の後輪部分の組立図である。
【図5】油圧回路及び電気回路を含む後輪操舵系を示す図である。
【図6】駆動制御系を示す回路図である。
【図7】スイッチ及びランプの配置を示す図である。
【図8】後輪操舵ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】ターンモード時の後輪の状態を示す図である。
【図10】転回制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】転回時の前輪駆動機構の状態を概略的に示す図である。
【図12】転回制御ルーチンの他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車体
2 エンジン本体
3a,3b 駆動軸
4,5 前ホイール
6,7,24,36 ナックル
11,12 前タイヤ
13,14 後タイヤ
15,16 後ホイール
21,34 ハブ
30 トレーリングアーム
32,40 接続アーム
33 ブレーキディスク
45,46 リム
47,48 ピストン
52 油圧ポンプ
53,100 モータ
54 電磁バルブ
74,75 ターンスイッチ
76 ブレーキスイッチ
95 デファレンシャル
Claims (3)
- 前後の左右輪のうちの駆動源による走行トルクが伝達されない一方の左右輪を地面に垂直な軸を中心に回転自在とする回転支持手段と、
前記前後の左右輪のうちの他方の左右輪の車両走行用回転軸間の中央点付近を中心として前記一方の左右輪の地面に垂直な軸を通る円弧の接線方向に沿った角度位置に前記一方の左右輪を固定する回転位置固定手段と、
前記回転位置固定手段によって固定された回転位置にて前記他方の左右輪各々に互いに異なる回転方向の回転トルクを与えて車体を前記他方の左右輪の車両走行用回転軸間の中央点付近を中心として転回させる転回駆動手段と、を備え、
前記転回駆動手段は、前記車体の転回時にデファレンシャル内の2つのピニオンを回転自在に支持するケースを固定させる手段と、前記デファレンシャル内の一方のサイドギアを回転駆動するモータとを有することを特徴とする転回機構を備えた四輪車両。 - 前記一方の左右輪を車両走行時の直進位置と前記接線方向に沿った角度位置との間において前記地面に垂直な軸を中心にして回動させる駆動手段を含むことを特徴とする請求項1記載の転回機構を備えた四輪車両。
- 前記回転支持手段は、前記一方の左右輪の地面に垂直な軸において前記一方の左右輪をナックルを介して回転自在に支持するトレーリングアームを有することを特徴とする請求項1記載の転回機構を備えた四輪車両
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