JP4086982B2 - N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドの製造法 - Google Patents

N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド(以下DAAMと略す)の製造法に関するもので、不純物として含まれるアクリルアミド(以下AAmと略す)濃度が0.10重量%以下の高純度なDAAMの製造法に関する。本発明により得られたDAAMは、塗料用樹脂、ヘヤースプレー用樹脂、感光性樹脂、接着剤用樹脂などを製造するのに有用である。
【0002】
【従来の技術】
アセトン又はダイアセトンアルコールとアクリロニトリル及び硫酸を反応させた後、加水分解及び中和して得た粗DAAMを含有する有機層からAAmを除く方法としては特公昭61−26986号公報に記載されるように、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの15〜25%水溶液で加水分解した後、減圧蒸留する方法があるが、この条件で得られる製品には0.2〜0.4重量%のアクリルアミドが含有される(後述、試験例1参照)。
【0003】
また特開平10−7634号公報に記載されるように、アクリルアミドに対して1.2〜6当量倍の5〜50%水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液を用いて、60〜100℃で加水分解する方法があるが、追試した結果、この条件で加水分解した後、減圧蒸留で得られるDAAM中には最大量0.14重量%のAAmが含有され、0.10重量%以下にすることは困難であり、高温でアルカリ加水分解したために、得られた製品は着色がひどく実用に耐えるものではなかった(後述、試験例2参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
DAAM中の不純物であるAAmは発ガン性の化合物で、欧州のEINECSリストではカテゴリー2(発ガン性が多分にありそうな物質)に属しており、これを含まない(AAm0.10重量%以下)高純度のDAAMが求められていた。
本発明は、製品中のAAm濃度が0.10重量%以下の高純度DAAMの製造法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究の結果、アセトンまたはダイアセトンアルコールとアクリロニトリル及び硫酸を反応させた後、加水分解及び中和して得た粗DAAM中に含まれる低沸成分を除去した有機層に、空気バブリングをしながら、アルカリ性水溶液存在下に加水分解して、共存するAAmを除去した後、減圧下で蒸留することで、効果的にAAmを0.10重量%以下にできることを見いだし本発明を完成するに至った。即ち本発明は、1. アセトンまたはダイアセトンアルコールとアクリロニトリル及び硫酸を反応させた後、加水分解及び中和して得た粗N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド中に含まれる低沸成分を除去して酸化メシチルの濃度を3重量%以下とした有機層を、30L/h・L以上の分子状酸素含有ガスと接触させながらアルカリ性水溶液存在下に加水分解して、共存するアクリルアミドを除去した後、中和し、減圧下で蒸留することを特徴とするN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドの製造法。である。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明ではアセトン又はダイアセトンアルコールと硫酸を反応させ、加水分解、中和して粗DAAMを得るが、この工程は常法に従って行えばよい。
【0007】
粗DAAMを含む有機層は、蒸留でDAAMと分離できないアセトン系の縮合物を除去するために、水に不溶で且つDAAMを溶解しない有機溶剤で抽出される。抽剤としてはヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、ペンタン、石油エーテル、ナフサ等の飽和炭化水素、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
なおこの工程の際、塩析・真空蒸発濃縮等の後工程を必要としない程度の、少量の水を添加することができる。
【0008】
次いで低沸成分の除去を行う。低沸成分としては未反応原料のアセトン、アクリロニトリル、アセトンの縮合で生成した酸化メシチル、抽剤として用いたシクロヘキサン等であり、除去後の濃度は酸化メシチルで3重量%以下、その他成分は0.5重量%以下とする。低沸成分の除去が不十分で、その濃度が酸化メシチルで3重量%を越え、その他成分で0.5重量%を越えて残存した場合、アルカリ加水分解で十分にAAmを低減することが困難である。低沸成分の除去方法は何ら限定されるものではない。例えば、有機層を重合禁止剤であるハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジンなどの存在下に減圧蒸留しても良いし、または放散塔において空気との接触で除去してもよい。さらにはタンク内に貯留した有機層に空気を吹き込むことで低沸成分を空気同伴させて除去することも可能である。
【0009】
低沸成分を除去された有機層は、分子状酸素含有ガスとの接触下でアルカリ加水分解を行う。分子状酸素含有ガスを使用することにより、アルカリ加水分解で発生するアンモニアガスを積極的に系外に追い出し、AAmを加水分解する反応を促進させる効果とDAAMの重合防止効果が得られる。
加水分解時に接触させる分子状酸素含有ガス量は、仕込み有機層に対し30L/h・L以上であり、好ましくは60〜180L/h・Lである。分子状酸素含有ガスとしては、空気が最も安価で有利であるが、窒素及び酸素の混合ガス、更には空気を窒素又は酸素で希釈したものなど、分子状酸素含有ガスであれば特に限定されない。
またアルカリ加水分解反応液と分子状酸素含有ガスとの接触方法は、通常釜内装置された空気導入管から効率の良い接触となるようにスパージャリングなどを使用して実施される。強力な剪断効果のある撹拌装置を使用している場合は、単管から釜内に吹き込むだけでも良い。更には釜から反応液を一部連続的に抜き出して、放散塔内で分子状酸素含有ガスと接触させた後反応釜へ戻す方法でも可能である。
【0010】
アルカリは、有機層に含まれるAAmに対して通常4〜10当量倍、好ましくは5〜7当量倍の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを、通常5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%の水溶液にして用いる。加水分解反応の温度は50〜70℃、好ましくは55〜65℃、時間は0.5〜4h、好ましくは1〜1.5hで行う。高温で長時間アルカリ加水分解を行うと、蒸留後の製品の着色がひどく実用に耐えないため望ましくない。
【0011】
減圧蒸留に供される有機層中にはAAmはほとんど含んでおらず、かつ抽出において高沸点のアセトン系縮合物は除かれているので、極めて簡単な減圧蒸留で精製可能である。従って単蒸留または1〜2段程度の段数の蒸留塔で、減圧蒸留すればよい。蒸留時にはハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジンなどの重合禁止剤を添加するのが好ましい。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明の主旨をこえない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例における分析はガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーにより行った。
【0013】
(粗DAAMの合成)
1Lの三つ口フラスコに硫酸2.3molを仕込み、攪拌しながらアセトン2.2mol、アクリロニトリル1molの混合液を滴下ロートより滴下した。この間、温度は20℃を越えないように氷水で冷却しながら行った。滴下終了後、40℃で2時間、更に50℃で2時間反応させた。反応液を350gの水に滴下し、更に25%アンモニア水313gを徐々に加え中和した。この間、温度は40℃以下に保った。中和後、室温で静置し、下層の水層と上層の有機層とに分離し、有機層を得た。
得られた有機層にシクロヘキサン140gと水50gを加え、充分に攪拌混合後、室温にて静置し、下層の有機層と上層のシクロヘキサン層とに分離し、有機層200gを得た。分析の結果、DAAM120g、AAm5gを含む有機層であることを確認した。なお、シクロヘキサン層は蒸留して、シクロヘキサンを回収した。
【0014】
実施例1
上記で得た有機層に40℃で6時間、空気バブリング(120L/h・L)し、低沸物を除去した。ガスクロ分析の結果、酸化メシチル1.92重量%を検出したが、その他低沸成分は不検出であった。次いで低沸物が除去された有機層140gに、15%水酸化ナトリウム水溶液110g(アクリルアミドに対し6倍mol)を加え、空気バブリング(120L/h・L)しながら攪拌下、60℃で1時間加水分解した。反応後、室温で静置し、下層の水層と上層の有機層に分離した。有機層は50%硫酸水溶液で中和した後、重合禁止剤としてフェノチアジン100mg、ハイドロキノン30mgを加え、1mmHgの減圧下蒸留してDAAMを得た。
収量100.1g(精製工程収率83.4%)、純度99.50%、AAm0.05%、高沸成分0.41%、APHA35
【0015】
実施例2
アルカリ加水分解時の空気バブリング量を50L/h・Lにした以外は実施例1と全く同様にして精製を行った。
収量101.0g(精製工程収率84.2%)、純度99.45%、AAm0.07%、高沸不純物0.44%、APHA40
【0016】
比較例1
空気バブリングによる低沸除去を行わなかった以外は実施例1と全く同様にして精製を行った。
収量101.4g(精製工程収率84.5%)、純度99.32%、AAm0.21%、高沸不純物0.43%、APHA35
【0017】
実施例3
アルカリ加水分解時の水酸化ナトリウムモル比8倍にした以外は実施例1と全く同様にして精製を行った。
収量99.4g(精製工程収率82.8%)、純度99.53%、AAm0.04%、高沸不純物0.40%、APHA60
【0018】
比較例2
アルカリ加水分解時の空気バブリング量を20L/h・Lにした以外は実施例1と全く同様にして精製を行った。
収量99.8g(精製工程収率83.2%)、純度99.35%、AAm0.14%、高沸不純物0.45%、APHA45
【0019】
比較例3
アルカリ加水分解時の水酸化ナトリウムモル比3倍にした以外は実施例1と全く同様にして精製を行った。
収量101.3g(精製工程収率84.4%)、純度99.23%、AAm0.30%、高沸不純物0.42%、APHA30
【0020】
試験例1
1Lの三つ口フラスコに硫酸2.3molを仕込み、攪拌しながらアセトン2.2mol、アクリロニトリル1molの混合液を滴下ロートより滴下した。この間、温度は20℃を越えないように氷水で冷却しながら行った。滴下終了後、40℃で2時間、更に50℃で2時間反応させた。反応液を350gの水に滴下し、更に25%アンモニア水313gを徐々に加え中和した。この間、温度は40℃以下に保った。中和後、室温で静置し、下層の水層と上層の有機層とに分離し、有機層を得た。
この有機層250gを水350ml(350g)で抽出し、抽出水層と抽出残渣有機層を分離した。抽出残渣有機層は更に繰り返し2回水抽出し、各回の抽出水層を1つに合わせた。得られた抽出水層に試薬1級n−ヘキサン40mlを加え、激しく混合撹拌した後、静置し、清澄な下層水層を分離した。
得られた水層に芒硝150gを加え40℃に加熱して溶解した。塩析された有機層を分離し、これに48%苛性ソーダ22ml、水51mlを加え、激しく撹拌しながら60℃で1時間加熱した。加熱後静置して下層のアルカリ水層を分離し、上層有機層は希硫酸でpH7〜7.5に中和した。
得られた有機層に重合禁止剤フェノチアジン250mg、ハイドロキノン125mgを加え、1mmHgの減圧下蒸留してDAAM105gを得た。
純度99.25%、AAm0.31%、高沸不純物0.40%、APHA60であった。
【0021】
試験例2
1Lの三つ口フラスコに硫酸2.3molを仕込み、攪拌しながらアセトン2.2mol、アクリロニトリル1molの混合液を滴下ロートより滴下した。この間、温度は20℃を越えないように氷水で冷却しながら行った。滴下終了後、40℃で2時間、更に50℃で2時間反応させた。反応液を350gの水に滴下し、更に25%アンモニア水313gを徐々に加え中和した。この間、温度は40℃以下に保った。中和後、室温で静置し、下層の水層と上層の有機層とに分離し、有機層を得た。
この有機層250gに15%水酸化ナトリウム77g(AAmに対して2倍モル)を加え、80℃で1時間撹拌した。冷却して反応液を室温で静置し、水層と有機層とに分離した。有機層に10%硫酸溶液を加えて中和した後、静置して水層を除去し有機層を取得した。この有機層にシクロヘキサン230gを加えて激しく撹拌した後、静置して2層に分離した。下層の有機層は、フェノチアジン160mg、ハイドロキノン80mgを加え、60℃で簡単に低沸成分を除去した後、1mmHgの減圧下蒸留してDAAM130gを得た。
純度99.4%、AAm0.14%、高沸不純物0.48%、APHA90であった。
【0022】
実施例の結果を表1に示す。本発明の製造法は、従来の方法と比較し、AAmを低減できることが明らかである。
【0023】
【表1】
Figure 0004086982
【0024】
【発明の効果】
本発明の製造法は、特にアルカリ性水溶液存在下に加水分解する工程において、30L/h・L以上の分子状酸素含有ガス接触下で行うことにより、工程中に発生するアンモニアガスを積極的に系外に追い出し、AAmを加水分解する反応を促進する作用効果を有する。
さらに予め粗N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド中に含まれる低沸成分を除去する工程との併用により、アクリルアミド濃度0.10重量%以下のN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドが得られる。

Claims (4)

  1. アセトンまたはダイアセトンアルコールとアクリロニトリル及び硫酸を反応させた後、加水分解及び中和して得た粗N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド中に含まれる低沸成分を除去して酸化メシチルの濃度を3重量%以下とした有機層を、30L/h・L以上の分子状酸素含有ガスと接触させながらアルカリ性水溶液存在下に加水分解して、共存するアクリルアミドを除去した後、中和し、減圧下で蒸留することを特徴とするN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドの製造法。
  2. 低沸成分を除去した有機層中に残留する低沸成分が、シクロヘキサン、アセトン、アクリロニトリルでは0.5重量%以下、酸化メシチルでは3重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドの製造法。
  3. アルカリ加水分解を、50〜70℃の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1記載のN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドの製造法。
  4. アルカリ加水分解を、アクリルアミドに対して4〜10当量倍の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの含有する5〜25%水溶液の存在下で行うことを特徴とする請求項1記載のN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドの製造法。
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