JP4086093B2 - 4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体の製造方法 - Google Patents

4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体の新規な製造方法に関する。詳しくは、4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸を出発原料とし、4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸アジド及び4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートを経由し、4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体を高収率で簡便且つ安価に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体は医薬品の合成中間体としての有用性が報告されており、例えば、(S)−2−[[4−トランス−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−カルバモイル]−ピロリジンは、抗血栓薬の合成における重要な中間体として使用される(WO97/05158)。
【0003】
従来、4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体を合成する幾つかの方法が知られている。その一つは、シクロヘキサンカルボン酸誘導体をアジドアジドリン酸ジフェニルと反応させ、対応するカルボン酸アジド誘導体を得、このカルボン酸アジド誘導体の転位反応により対応するシクロヘキシルイソシアナート誘導体へ導き、このシクロヘキシルイソシアナート誘導体にアルコキシ基を求核付加させる方法である(Bioorg.Med.Chem.Lett.,7,67(1997))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートへの求核付加反応においては反応性の低い場合があり、例えば、下記一般式(6)
【0005】
【化9】
Figure 0004086093
【0006】
において、R4 としてt−ブチル基のようなかさ高い置換基を導入する場合には、一般に用いられる反応条件、例えば、トリエチルアミン等の有機塩基を用いる条件下では目的とする4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体を収率よく得ることはできない。これらの場合には、求核試薬としてリチウム t−ブトキシドなどの金属アルコキシドを用いると収率よく目的物が得られることが報告されているが、これらの試薬は高価でかつ禁水条件が必要であり、その工業的製造においては問題となる(Bioorg.Med.Chem.Lett.,,67(1997))。
【0007】
本発明の課題は、4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸を出発原料として、4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸アジド及び4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートを経由し、4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体を高収率で簡便且つ安価に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体の製造方法について種々の検討を行った結果、4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸を出発原料とし、そのカルボキシル基を適当な方法で活性化した後アジド類と反応させて4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸アジドに導き、さらに4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートに変換した後、これを酸性条件下、アルコールと反応させることにより4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体が高収率で簡便且つ安価に得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。本製造方法においては、下記一般式(6)において、R4 として、例えば、t−ブチル基のようなかさ高い置換基を導入する場合においても容易に反応が進行し、目的物を高収率をもって得ることができる。
即ち、本発明の要旨は
(a) 一般式(1)
【0009】
【化10】
Figure 0004086093
【0010】
{式中、R1 は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキルオキシ基、一般式(2)
【0011】
【化11】
Figure 0004086093
【0012】
(式中、mは0、1または2を表し、R2 は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表す)、または一般式(3)
【0013】
【化12】
Figure 0004086093
【0014】
(式中、nは1または2を表し、R2 は一般式(2)で定義した通りであり、R3 は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基を表す)を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸のカルボキシル基を活性化した後、アジド類と反応させ、一般式(4)
【0015】
【化13】
Figure 0004086093
【0016】
(式中、R1 は一般式(1)で定義した通りである)で表される4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸アジドを得、
(b)得られた4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸アジドを、一般式(5)
【0017】
【化14】
Figure 0004086093
【0018】
(式中、R1 は一般式(1)で定義した通りである)で表される4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートに変換し、
(c)得られた4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートを酸性条件下、アルコールと反応させ、一般式(6)
【0019】
【化15】
Figure 0004086093
【0020】
(式中、R1 は一般式(1)で定義した通りであり、R4 は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基を表す)で表される4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体を製造する方法に存する。
【0021】
本発明の好ましい実施の態様としては、R4 が置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基である上記の方法;出発原料としてR1 が(S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基である一般式(1)の化合物を用い、反応生成物としてR1 が(S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基、R4 がt−ブチル基である一般式(6)の化合物を得る上記の方法;出発原料としてR1 がベンジルオキシ基である一般式(1)の化合物を用い、反応生成物としてR1 がベンジルオキシ基、R4 がt−ブチル基である一般式(6)の化合物を得る上記の方法;出発原料としてR1 がt−ブトキシ基である一般式(1)の化合物を用い、反応生成物としてR1がt−ブトキシ基、R4 がベンジル基である一般式(6)の化合物を得る上記の方法が挙げられる。
また、本発明の別の実施態様としては(S)−2−[[4−トランス−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−カルバモイル]−ピロリジン−1−カルボン酸 ベンジルエステル;一般式(1)
【0022】
【化16】
Figure 0004086093
【0023】
{式中、R1 は一般式(2)
【0024】
【化17】
Figure 0004086093
【0025】
(式中、mは0、1または2を表し、R2 は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリールオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表す)を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸が挙げられる。
【0026】
【本発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法は、次の反応スキーム1のように表わされる。
【0027】
【化18】
Figure 0004086093
【0028】
[式中、R1 は一般式(1)で定義した通りであり、R4 は一般式(6)で定義した通りである。]
1 で定義される炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、n−ヘプチル基、1,1−ジエチルプロピル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。炭素数3〜10のシクロアルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリールオキシ基としてはフェノキシ基、トリルオキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、1−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、ナフチルメトキシ基、1−ナフチルエトキシ基等が挙げられる。
【0029】
2 で定義される炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、および炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としてはR1 で挙げたものと同様に基が挙げられる。
【0030】
3 で定義される炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、n−ヘプチル基、1,1−ジエチルプロピル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0031】
4 で定義される炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数7〜12のアラルキル基としてはR3 で挙げたものと同様に基が挙げられる。
なお、前記一般式の置換基の定義において『置換基を有していてもよい』とある置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;クロロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜6のシクロアルコキシ基;フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ニトロフェニル基、ナフチル基、メトキシナフチル基、クロロナフチル基等の炭素数6〜13のアリール基;フェノキシ基、トリルオキシ基、メトキシフェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜13のアリールオキシ基;ベンジル基、1−フェニルエチル基、トリルメチル基、メトキシフェニルメチル基、フルオロフェニルメチル基、クロロフェニルメチル基、ブロモフェニルメチル基、ニトロフェニルメチル基、ナフチルメチル基、メトキシナフチルメトキシ基等の炭素数7〜14のアラルキル基;ベンジルオキシ基、1−フェニルエトキシ基、トリルメトキシ基、ナフチルメトキシ基等の炭素数7〜14のアラルキルオキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0032】
本発明において、R1 としては好ましくは置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよいアリルオキシ基、置換されていてもよい炭素数7〜12のアラルキルオキシ基、一般式(2)、特に好ましくはt−ブトキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基、(4−メトキシ)ベンジルオキシ基、2−(1−t−ブトキシカルボニル)ピロリジル基、2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基、2−[1−(4−メトキシ)ベンジルオキシカルボニル]ピロリジル基、2−(1−アリルオキシカルボニル)ピロリジル基、最も好ましくはベンジルオキシ基、2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基である。
【0033】
2 としては好ましくは置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよいアリルオキシ基、置換されていてもよい炭素数7〜12のアラルキルオキシ基、特に好ましくはt−ブトキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基、(4−メトキシ)ベンジルオキシ基、最も好ましくはベンジルオキシ基である。
4 としては好ましくはt−ブチル基、1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の置換されていてもよい炭素数4〜10の3級アルキル基、1−メチル−1−フェニルエチル基等の置換されていてもよい炭素数9〜12の3級アラルキルオキシ基、特に好ましくはt−ブチル基である。
【0034】
以下、本発明の製造方法について各工程毎に述べる。
出発原料である4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸は、一般式(1)で表される化合物である。これらの原料については、第4版実験化学講座,22,230(1992)等に記載の既知の方法又はそれに準ずる方法により容易に合成することができる。
【0035】
工程(a):一般式(1)の化合物のカルボキシル基を既知の方法またはそれに準ずる方法にて活性化した後、アジド類と反応させて、一般式(4)の化合物を得る。カルボキシル基の活性化の方法としては、混合酸無水物法、酸塩化物法、N,N’−シクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水型縮合剤を用いる方法などを用いることができる。アジド類としては、アジ化ナトリウム、アジドリン酸ジフェニル、アジドトリメチルシランなどを用いることができ、好ましくはアジ化ナトリウムである。
【0036】
反応は、適当な有機溶媒中で行われることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステル類、アセトニトリル、プロピオンニトリル等の有機ニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。これらは単独又は混合溶媒として使用され、好ましくはテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン−ジクロロメタン混合溶媒、テトラヒドロフラン−ジクロロメタン−アセトン混合溶媒である。反応は−78〜100℃、好ましくは−40〜0℃の温度で、1分〜48時間、好ましくは5分〜2時間程度行われる。反応終了後は、通常既知の分離精製、例えば、濃縮、抽出等を行い、次の工程(b)に使用するが、分離精製を行うことなく、そのまま次の工程(b)に使用することもできる。
【0037】
工程(b):工程(a)で得られた一般式(4)の化合物を、反応温度0〜240℃、好ましくは20〜120℃にて一般式(5)の化合物へと変換する。
反応は、水又は適当な有機溶媒中で行われることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオンニトリル等の有機ニトリル類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。これらは単独又は混合溶媒として使用され、好ましくはテトラヒドロフラン−アセトン混合溶媒、テトラヒドロフラン−アセトン−ジクロロメタン混合溶媒である。反応は5分〜24時間、好ましくは30分〜6時間程度行われる。反応終了後は、通常既知の分離精製、例えば、濃縮、抽出等を行い、次の工程(c)に使用するが、分離精製を行うことなく、そのまま次の工程(c)に使用することもできる。
【0038】
工程(c):工程(b)で得られた化合物(5)を、酸性条件下、アルコール類と反応させて一般式(6)の化合物を得る、反応は適当な有機溶媒中で行われることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステル類、アセトニトリル、プロピオンニトリル等の有機ニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等のエーテル類等が挙げらる。これらは単独又は混合溶媒として使用され、好ましくはトルエン−ジクロロメタン混合溶媒、トルエン−クロロホルム混合溶媒、トルエン−ジクロロメタン−アセトン混合溶媒、トルエン−ジクロロメタン−アセトン−テトラヒドロフラン混合溶媒、トルエン−ジクロロメタン−クロロホルム混合溶媒である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール類、2,2,2−トリクロロエタノール等のハロゲン化脂肪族アルコール類、ベンジルアルコール、(4−メトキシ)ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類、アリルアルコール等が挙げられ、好ましくはt−ブタノール、ベンジルアルコール、(4−メトキシ)ベンジルアルコール、アリルアルコールである。これらは0.5〜100当量、好ましくは1〜5当量の範囲で使用されるが、これらを単独に溶媒として用いて、または他の有機溶媒との混合溶媒として用いて反応を行うこともできる。
【0039】
添加する酸としては、例えば、塩化水素、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸類、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、メタンスルホン酸クロリド、酢酸クロリド、塩化チオニル、オキシ塩化リン等の酸塩化物類、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等の金属塩化物、クロロトリメチルシラン等の塩化有機珪素類が挙げられるが、好ましくは、塩化水素、塩化アルミニウム、クロロトリメチルシランが本発明による方法に使用される。これらの添加物は、一般式(5)の化合物に対して0.01〜10当量、好ましくは0.1〜1.5当量の範囲で使用される。反応は、−20℃〜溶媒還流温度、好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは35〜39℃の温度で30分〜5日間、好ましくは2〜6時間程度行われる。反応終了後は、既知の分離精製、例えば、濃縮、抽出、再結晶等を行い、良好な純度で一般式(6)の化合物を得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
製造例1
(S)−2−[(4−トランス−カルボキシシクロヘキシル)−メチルカルバモイル]−ピロリジン−1−カルボン酸 ベンジルエステルの合成
(L)−Z−プロリン70.0gをジクロロメタン560mLに溶解し、N,N−ジメチルホルムアミド9mLを加えて−20℃に冷却した。これに塩化チオニル27mLを加えて、2.5時間加熱還流した。この溶液を110mLまで濃縮し、テトラヒドロフラン305mLを加えて再度230mLまで濃縮した。得られた溶液を、4−トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸48.5g、水酸化カリウム20.3g及び炭酸カリウム58gを含む水390mLに、内温0〜10℃にて滴下し、滴下終了後この温度でさらに1.5時間撹拌した。テトラヒドロフラン180mL及びジクロロメタン410mLを加えた後、濃塩酸81mLを水390mLに溶解した溶液を加えた。有機層を分液し、水層をテトラヒドロフラン8mLとジクロロメタン32mLの混合溶媒で2回再抽出した。有機層を、濃塩酸3.9mL及び塩化ナトリウム11.6gを水160mLに溶解した溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を370mLまで濃縮し、トルエン1170mLを加えた後、再度溶媒を1070mLまで濃縮した。得られた溶液にヘプタン10mLを加えて、15℃で2時間撹拌した後、さらにヘプタン16mLを加えて3時間撹拌した。結晶をろ取し、60℃、約10mmHgにて減圧乾燥し、表題化合物104gを得た(収率95%)。
【0041】
1H−NMR(CDCl3 ,ppm)
0.94(m,2H),1.40(m,3H),1.75(m,2H),1.94(m,4H),2.20(m,2H),2.35(m,1H),3.07(m,2H),3.51(m,2H),4.35(m,1H),5.16(bs,2H),6.25,6.84(bs,bs,1H),7.34(m,5H).
IR(KBr,cm-1
3355,3293,2932,1703,1653,1568,1447,1408.
白色固体、融点131.8−132.5°C
【0042】
実施例1
(S)−2−[[4−トランス−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−カルバモイル]−ピロリジン−1−カルボン酸 ベンジルエステルの合成
(S)−2−[(4−トランス−カルボキシシクロヘキシル)−メチルカルバモイル]−ピロリジン−1−カルボン酸 ベンジルエステル60gをアセトン200mL、THF200mL、ジクロロメタン200mLの混合溶媒に溶解し、トリエチルアミン18.7gを加えた。この溶液に、クロロギ酸エチル18.1gをTHF60mLに溶解した溶液を−20℃にて滴下した。溶媒の一部を留去した後、アセトン200mLを加え、ここにアジ化ナトリウム15.0gを水120mLに溶解した溶液を0℃にて滴下し、滴下終了後、0℃にてさらに2時間撹拌した。溶媒の一部を留去し、この溶液を氷水400mLに注ぎ、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し濾別した後、溶媒の一部を留去し、トルエン400mLを加え、約400mLまで再度濃縮した。この溶液を80℃にて1時間撹拌後、30℃にて、t−ブタノール18gをジクロロメタン20mLに溶解した溶液を加え、次いで4規定塩化水素−酢酸エチル溶液20mLをジクロロメタン20mLに溶解した溶液を加えた。反応終了後、活性炭を加えて攪拌した後、これを濾別し濾液を濃縮した。得られた濃縮残渣をエタノール−水より再結晶して、表題化合物66gを得た(収率93%)。
【0043】
1H−NMR(DMSO−d6 ,ppm)
0.86(m,2H),1.05(m,2H),1.25(m,1H),1.58(s,9H),1.60−1.88(m,7H),2.17(m,1H),2.83(m,2H),3.14(m,1H),3.43(m,2H),4.17(m,1H),5.02(d,J=16.3Hz,1H),5.03(d,J=16.3Hz,1H),6.65(m,1H),7.25−7.40(m,5H),7.90(m,1H).
IR(KBr,cm-1
3250,2910,1718,1687,1659,1549,1520,1417,1352.
【0044】
実施例2
4−トランス−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシルメタンカルバミド酸 ベンジルエステルの合成
4−トランス−カルボキシシクロヘキシルメタンカルバミド酸 ベンジルエステル60gをアセトン350mL、ジクロロメタン50mLの混合溶媒に溶解し、トリエチルアミン29.1gを加えた。この溶液に、クロロギ酸エチル24.6gをジクロロメタン30mLに溶解した溶液を−20℃にて滴下した。15分間撹拌した後、アジ化ナトリウム20.1gを水150mLに溶解した溶液を0℃にて滴下し、滴下終了後、0℃にてさらに1時間撹拌した。溶媒の一部を留去して得られた溶液を水に注ぎ、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し濾別した後、溶媒の一部を留去し、トルエンを加えて再度溶媒の一部を留去した。この溶液にトルエン400mLを加えて、80〜100℃にて1時間撹拌後、30℃にて、t−ブタノール23gをジクロロメタン30mLに溶解した溶液を加え、次いで4規定塩化水素−酢酸エチル溶液4mLをジクロロメタン50mLに溶解した溶液を加えた。反応終了後、ジクロロメタン400mLを加え、この溶液に活性炭を加えて攪拌した後、これを濾別し濾液を濃縮した。この残渣にトルエンを加えて再度濃縮した。得られた濃縮残渣をトルエン−ヘキサンより再結晶して、表題化合物58.3gを得た(収率73%)。
【0045】
1H−NMR(CDCl3 ,ppm)
1.04(m,4H),1.25(m,1H),1.44(s,9H),1.78(m,2H),2.02(m,2H),3.03(m,2H),3.34(m,1H),4.36(m,1H),4.80(m,1H)、5.09(s,2H),7.35(m,5H).
【0046】
実施例3
4−トランス−(ベンジルオキシカルボニルアミノシクロヘキシル)−メタンカルバミド酸 t−ブチルエステルの合成
4−トランス−(カルボキシシクロヘキシル)−メタンカルバミド酸 t−ブチルエステル32.7gをTHF400mLに溶解し、トリエチルアミン17.9gを加えた。この溶液に、クロロギ酸エチル16.5gをTHF50mLに溶解した溶液を0℃にて滴下した。滴下終了後、溶媒の一部を留去し、アセトン100mLを加え、次いでアジ化ナトリウム12.4gを水100mLに溶解した溶液を0℃にて滴下し、滴下終了後、室温にてさらに1時間撹拌した。この溶液を水に注ぎ、クロロホルムにて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥しこれを濾別した後、トルエン300mLを加え、約300mLまで濃縮した。この溶媒交換操作をもう1度繰り返した後、得られた溶液にトルエン400mLを加えて、1時間加熱還流した。室温にてベンジルアルコール17gを加え、次いで4規定塩化水素−酢酸エチル溶液1mLをジクロロメタン50mLに溶解した溶液を加えた。反応終了後、クロロホルムを加えて攪拌した後、不溶成分を濾別し、溶媒を留去した。得られた濃縮残渣をトルエン−ヘキサンより再結晶して、表題化合物41.1gを得た(収率89%)
【0047】
1H−NMR(CDCl3 ,ppm)
1.07(m,4H),1.25(m,1H),1.48(s,9H),1.78(m,2H),2.04(m,2H),2.97(m,2H),3.44(m,1H),4.59(m,2H),5.08(s,2H),7.37(m,5H).
【0048】
【発明の効果】
医薬品の合成中間体として有用である4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体を高収率で簡便且つ安価に製造することができる。

Claims (2)

  1. (a)一般式(1)
    Figure 0004086093
    {式中、R1 (S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸のカルボキシル基を活性化した後、アジド類と反応させ、一般式(
    Figure 0004086093
    {式中、R1 (S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸アジドを得、(b)得られた4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸アジドを、一般式(
    Figure 0004086093
    {式中、R1 (S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートに変換し、(c)得られた4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートを酸性条件下、アルコールと反応させ、一般式(
    Figure 0004086093
    {式中、R1 (S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基を表し、4 炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有している炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、または置換基を有している炭素数7〜12のアラルキル基を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体を製造する方法。
  2. (a)一般式(1)
    Figure 0004086093
    {式中、R 1 は(S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸のカルボキシル基を活性化した後、アジド類と反応させ、一般式(2)
    Figure 0004086093
    {式中、R 1 は(S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸アジドを得、(b)得られた4−トランス置換−シクロヘキサンカルボン酸アジドを、一般式(3)
    Figure 0004086093
    {式中、R 1 は(S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートに変換し、(c)得られた4−トランス置換−シクロヘキシルイソシアナートを酸性条件下、アルコールと反応させ、一般式(4)
    Figure 0004086093
    {式中、R 1 は(S)−2−(1−ベンジルオキシカルボニル)ピロリジル基を表し、R 4 はt−ブチル基を表す}で表される4−トランス置換−シクロヘキシルアミン誘導体を製造する方法。
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