JP4085894B2 - 液体噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット式記録装置等に組込むことにより、良好な機能を果たす液体噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体をノズルから液滴として吐出させる液体噴射装置は、種々な液体を対象にしたものが知られているが、そのなかでも代表的なものとしてインクジェット式記録装置をあげることができる。そこで、ここではインクジェット式記録装置に例をとって従来技術の説明をする。
【0003】
インクジェット式記録装置は、少なくとも記録ヘッドの移動領域で記録担体を平坦にするためにプラテンと、記録担体の幅方向に往復移動するキャリッジ上に搭載された記録ヘッドとを備え、プラテンに支持された記録担体に記録ヘッドからインク滴を吐出しながら画像等のデータを記録し、1行分の記録を終了した後に所定量の紙送りを行ない、その後に次の行のデータを記録するという動作を繰り返すように構成されている。
【0004】
ところが、印刷の際に、紙サイズの設定を間違えたり、印刷データよりもサイズが小さい記録担体が装填された場合、さらには記録用紙全体に画像を印刷するため、印刷データを若干拡大して記録する、いわゆる縁無し印刷が行われた場合等のように、記録担体からそれた外側にも印刷が及ぶことになり、プラテンがインクにより汚染される。この結果、つぎの記録担体が装填されると、その裏面がプラテンに付着したインクにより汚染されるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−301201号公報
【特許文献2】
特開2002−86757号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような問題を解決するために、記録担体からそれたインク滴を吸収することが知られているが、吸収したインクがインク吸収体の表面にインクカス(残留固形物)として残存して、記録用紙の裏面を汚染するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、噴射された液体による汚染を可能な限り少なくすることができる液体噴射装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成するために、本発明の液体噴射装置においては、液滴を噴射させる液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから噴射された液滴のうち液滴が付着する目的物からそれた液滴を吸収する受容部材とが対をなしている液体噴射装置であって、前記受容部材は、前記液体噴射ヘッドから噴射された液滴を受ける受容層と、前記受容層の液体を吸収し拡散させる拡散層とにより構成される単一の材料で一体につくられ、前記拡散層は、前記受容部材が保持部材に配置された際に、前記保持部材の底面の一部に突出する加圧部材に前記受容部材の一部が相対的に加圧されることにより、前記拡散層の密度が前記受容層の密度よりも大きく設定されることで前記加圧部材近傍に形成され、前記加圧部材は、前記保持部材の底面に対して水平方向の断面形状が略円形状に隆起し、前記加圧部材の頂部の周縁部に環状の突条を形成し、前記環状の突条の中央部に液体排出用の流路が配置され、前記保持部材の底面には、前記加圧部材の近傍に前記流路とは異なる液体排出用の流路が配置されているを要旨とする。
【0010】
さらに、前記液体排出用の流路は、廃液タンクに連通されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記受容層が収容される空間と前記拡散層が収容される空間は、インクジェット式記録装置のプラテンに形成されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記液体排出用の流路は、インクジェット式記録装置のプラテンに形成されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、少なくとも前記受容層が顔料インクの顔料を透過させることができる密度とされていることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記受容部材に、浸透溶剤を含浸させたことを特徴とする。
【0015】
さらに、前記受容部材に、不揮発性溶剤を含浸させたことを特徴とする。
【0016】
さらに、前記受容部材に、噴射される液体の比重よりも小さな比重の不揮発性溶剤を含浸させたことを特徴とする。
【0018】
本発明の液体噴射装置において、上記液体排出用の流路が、インクジェット式記録装置のプラテンに形成されている場合には、拡散層で保持されている廃インク量が飽和状態になると、廃インクの自重で上記流路を経て廃インクタンクに貯留され、受容層に到達したインク滴は受容層から拡散層を経由して順調に廃インクタンクへ流下し、廃インクの異常な滞留によって受容層や拡散層の機能に支障を生じるようなことがない。
【0019】
本発明の液体噴射装置において、少なくとも上記受容層が顔料インクの顔料を透過させることができる密度とされている場合には、受容層における流路断面積が顔料の粒径よりも大きく設定されているので、いわゆる顔料詰りによって受容層のインク流下機能を損なうことがなく、本来の受容層としての機能が健全に果たされる。
【0020】
本発明の液体噴射装置において、上記受容部材を加圧部材で加圧することにより上記拡散層が形成されている場合には、受容部材の加圧されていない部分すなわち受容層から、加圧された部分すなわち拡散層に近づくにつれて、液体の流路面積が次第に小さくなるので、受容層を流下してきた液体は、拡散層に近づくにつれて液体の毛細管力が大きくなる。このため、液体は拡散層に向って積極的に誘導される現象を呈し、これによって受容層で受け止められた液滴は直ちに受容層の表面から拡散層の方へ流下する。
【0021】
すなわち、受容層に浸透して流下した液体は、密度の大きな拡散層に到達し、この密度の大きな拡散層では、拡散層中に縦横に存在する多数の液体の流路が、それぞれ小さな流路面積を有する状態になっているので、液体の表面張力で流路の途中に停滞する現象が拡散層の全域で発生し、液体は拡散層に含浸した状態で保持される。この保持量が増量してきてそれ以上保持できなくなると、液体の自重で廃液タンク等に流下する。したがって、受容層に停滞する液体が著しく少なくなるので、受容層の表面には液状の「濡れ」状態や乾燥後の残留固形物の量が可及的に少なくなり、受容層の表面近傍に存在するもの、例えば、印刷用紙等を汚したりすることが防止できる。そして、受容部材に拡散層としての機能を果たす密度の大きな部分が、受容部材を加圧部材で加圧することによって形成されるので、受容部材の中に拡散層を配置することが簡単に行なえる。
【0022】
本発明の液体噴射装置において、上記加圧部材が、上記受容部材を保持する保持部材に突出した状態で配置されている場合には、上記保持部材に受容部材を保持するときに、突出状態の加圧部材で受容部材が相対的に加圧されるので、受容部材の保持動作、例えば、溝状の保持部材内に受容部材を挿入するだけで、拡散層が簡単に形成できる。また、加圧部材が突出構造物であるから、加圧部材の突出量や突出範囲を加減することにより、拡散層の配置範囲や密度状態等を所定の状態に設定して、拡散層の機能を最適化することが行ないやすくなる。
【0023】
本発明の液体噴射装置において、上記加圧部材の近傍に液体排出用の流路が配置されている場合には、加圧部材によって加圧部材の近傍に拡散層が形成され、この拡散層で保持されている液体量が飽和状態になると、液体の自重で加圧部材の近傍に配置された上記流路を経て外部、例えば、廃液タンクに貯留される。このように、加圧部材と液体排出用の流路との相対位置を近づけて設定し、受容層に到達した液滴は、受容層から拡散層を経て上記液体排出用の流路へと誘導され、スムーズに廃液タンク等へ流下し、液体の異常な滞留によって受容層や拡散層の機能に支障を来すことがない。
【0024】
本発明の液体噴射装置において、上記受容部材が、単一の材料で一体につくられている場合には、上記単一の材料に対して加圧部材が押し付けられるので、単一の材料とされた受容部材に圧縮率の大小の差ができる。したがって、単一の材料において、圧縮率の大きな部分が拡散層として機能し、圧縮率の小さな部分が受容層として機能し、1片(いわゆるワンピース)の材料に加圧部材を作用させるだけで、このような両機能が簡単な構成で確保できる。
【0025】
本発明の液体噴射装置において、上記受容部材が、多層構造とされている場合には、受容層にとって最適な密度の層を形成し、また、加圧部材による拡散層の形成にとって最適な密度の層を形成できるので、受容層と拡散層とを最適な積層条件のもとで形成でき、すぐれた各層の機能が的確にえられる。
【0026】
本発明の液体噴射装置において、上記受容部材に浸透溶剤を含浸させた場合には、例えば、インクジェット式記録装置のインクのような液体の表面張力を、界面活性剤等の浸透溶剤で低下させるので、受容部材内を流下する液体の流動性が促進される。したがって、受容部材に飛来した液滴は迅速に拡散層に誘導され、受容部材の表面近傍に残留する液体の量が問題にならないレベルとなる。
【0027】
本発明の液体噴射装置において、上記受容部材に、不揮発性溶剤を含浸させた場合には、例えば、インクジェット式記録装置のインクのような液体を希釈化するので、液体の乾燥を防止するとともに、液体の流動性が一層促進されて拡散層への集中性が向上する。したがって、受容部材に飛来した液滴は迅速に拡散層に誘導され、受容部材の表面近傍に残留する液体の量が問題にならないレベルとなる。
【0028】
本発明の液体噴射装置において、上記受容部材に、噴射される液体の比重よりも小さな比重の不揮発性溶剤を含浸させた場合には、比重の大きな液体が優先的に受容部材を流下し、比重の小さな不揮発性溶剤は受容部材に含浸されて停滞しているので、液体の流下の途上で液体に対して希釈化の作用がなされる。したがって、液体の乾燥を防止するとともに、液体の流動性が一層促進されて拡散層への集中性が向上する。よって、受容部材に飛来した液滴は迅速に拡散層に誘導され、受容部材の表面近傍に残留する液体の量が問題にならないレベルとなる。
【0029】
本発明の液体噴射装置において、上記液体噴射ヘッドがインクジェット式記録装置の記録ヘッドとして用いられている場合には、上記受容層のインク濡れ状態やインク乾燥後の残留固形物の量が実質的に問題にならないレベルになるので、記録担体の裏面が受容層の表面近傍を通過しても、記録担体を汚すようなことが防止できる。特に、従来は、記録担体は湾曲した形態で送り込まれてくるので、記録担体と受容層の表面までの距離を大きく設定していた。このような距離の設定は、記録ヘッドのノズル開口から受容層までの間隔を過大にすることとなり、そのために吐出されたインク滴は受容層に到達するまでに空中に浮遊状態となり、それが機内に漂ってインクカートリッジ,プラテン,可動機構部等に付着して作動不良の原因になる恐れがあった。しかし、本発明においては、上述のような受容層と拡散層の機能により、上記動作不良等の問題が解消できる。
【0030】
本発明の液体噴射装置において、上記受容部材が収容される空間が、インクジェット式記録装置のプラテンに形成されている場合には、記録ヘッドと受容層との距離を可及的に短縮することができて、記録担体等の目的物をそれたインク滴が確実に受容層に吸収され、上記のようなインク滴の浮遊による問題の発生を予防することができる。また、プラテンは一般に合成樹脂で成形されているので、上記受容部材を収容する空間の成形がプラテンの成形時に簡単にできて、製作面でも有利である。
【0031】
本発明の液体噴射装置において、上記空間内に向って上記加圧部材が突出した状態で配置されている場合には、上記空間内に受容部材を挿入するときに、突出状態の加圧部材で受容部材が相対的に加圧されるので、受容部材の挿入動作だけで、拡散層が簡単に形成できる。また、加圧部材が突出構造物であるから、加圧部材の突出量や突出範囲を加減することにより、拡散層の機能を最適化することが行ないやすくなる。
【0032】
本発明の液体噴射装置において、上記液体排出用の流路が、インクジェット式記録装置のプラテンに形成されている場合には、拡散層で保持されている廃インク量が飽和状態になると、廃インクの自重で上記流路を経て外部、例えば、廃インクタンクに貯留される。受容層に到達した液滴は、受容層から拡散層を経て上記液体排出用の流路へと誘導され、スムーズに廃液タンク等へ流下し、液体の異常な滞留によって受容層や拡散層の機能に支障を生じるようなことがない。
【0033】
本発明の液体噴射装置において、上記受容部材が顔料インクの顔料を透過させることができる密度とされている場合には、少なくとも加圧部材で加圧されていない受容層における流路断面積が、顔料の粒径よりも大きく設定されているので、いわゆる顔料詰りによって受容層のインク流下機能を損なうことがなく、本来の受容層としての機能が健全に果たされる。
【0034】
上記課題を達成するために、本発明の液体噴射装置においては、液滴を噴射させる液体噴射ヘッドと、上記液体噴射ヘッドから噴射された液滴のうち液滴が付着する目的物からそれた液滴を吸収する吸収部材とが対をなしている液体噴射装置であって、上記吸収部材の一部に高密度部分が形成され、上記高密度部分の近傍に液体排出用の流路が配置されていることを要旨とする。
【0035】
すなわち、本発明の液体噴射装置は、上記吸収部材の一部に高密度部分が形成され、上記高密度部分の近傍に液体排出用の流路が配置されている。
【0036】
上記高密度部分以外の部分すなわち低密度部分から高密度部分に近づくにつれて、吸収部材の密度が次第に大きくなるので、上記低密度部分を流下してきた液体は、高密度部分に近づくにつれて液体の毛細管力が大きくなる。このため、液体は高密度部分に向って積極的に誘導される現象を呈し、これによって低密度部分で受け止められた液滴は直ちに低密度部分の表面から高密度部分の方へ流下する。
【0037】
すなわち、低密度部分に浸透して流下した液体は、高密度部分に到達し、この密度の大きな高密度部分では、高密度部分中に縦横に存在する多数の液体の流路が、それぞれ小さな流路面積を有する状態になっているので、液体の表面張力で流路の途中に停滞する現象が高密度部分の全域で発生し、液体は高密度部分に含浸した状態で保持される。この保持量が増量してきてそれ以上保持できなくなると、液体の自重で廃液タンク等に流下する。したがって、低密度部分とくにその表面近傍に停滞する液体が著しく少なくなるので、低密度部分の表面には液状の「濡れ」状態や乾燥後の残留固形物の量が可及的に少なくなり、低密度部分の表面近傍に存在するもの、例えば、印刷用紙等を汚したりすることが防止できる。
【0038】
そして、上記のように、高密度部分で保持されている液体量が飽和状態になると、液体の自重で高密度部分の近傍に配置された上記液体排出用の流路を経て外部、例えば、廃液タンクに貯留される。このように、高密度部分と液体排出用の流路との相対位置を近づけて設定し、上記低密度部分に到達した液滴は低密度部分から高密度部分を経て上記液体排出用の流路へと誘導され、スムーズに廃液タンク等へ流下し、液体の異常な滞留によって低密度部分や高密度部分の機能に支障を来すことがない。
【0039】
本発明の液体噴射装置において、上記高密度部分が、上記吸収部材の密度が徐々に大きくなるように変化して形成されている場合には、吸収部材の均一な密度部分すなわち上記低密度部分の液体流路の面積が高密度部分に近づくにつれて次第に小さくなり、高密度部分において所定の最小化された流路面積となっている。上記低密度部分を流下してきた液体は、高密度部分に近づくにつれて液体の毛細管力が大きくなる。このため、液体は高密度部分に向って積極的に誘導される現象を呈し、これによって低密度部分で受け止められた液滴は直ちに低密度部分の表面から高密度部分の方へ流下する。とくに、上記液体の流路面積は、低密度部分から高密度部分にかけて徐々に小さくなっていて、いわゆる流路面積の急変箇所がないので、高密度部分において大きくなる毛細管力によって誘導される液体の移動が円滑に行なわれる。
【0040】
本発明の液体噴射装置において、上記高密度部分が、加圧部材で上記吸収部材を部分的に加圧して形成されている場合には、吸収部材の加圧されていない部分すなわち上記低密度部分から加圧された部分すなわち高密度部分に近づくにつれて、液体の流路面積が次第に小さくなるので、低密度部分を流下してきた液体は、高密度部分に近づくにつれて液体の毛細管力が大きくなる。このため、液体は高密度部分に向って積極的に誘導される現象を呈し、これによって低密度部分で受け止められた液滴は直ちに低密度部分の表面から高密度部分の方へ流下する。したがって、低密度部分とくにその表面近傍に停滞する液体が著しく少なくなるので、低密度部分の表面には液状の「濡れ」状態や乾燥後の残留固形物の量が可及的に少なくなり、低密度部分の表面に接触するもの、例えば、印刷用紙等を汚したりすることが防止できる。そして、吸収部材に高密度部分としての機能を果たす密度の大きな部分が、吸収部材を加圧部材で加圧することによって形成されるので、吸収部材の中に高密度部分を配置することが簡単に行なえる。
【0041】
本発明の液体噴射装置において、上記加圧部材が、上記吸収部材を保持する保持部材に突出した状態で配置されている場合には、上記保持部材に吸収部材を保持するときに、突出状態の加圧部材で吸収部材が相対的に加圧されるので、吸収部材の保持動作、例えば、溝状の保持部材内に吸収部材を挿入するだけで、高密度部分が簡単に形成できる。また、加圧部材が突出構造物であるから、加圧部材の突出量や突出範囲を加減することにより、高密度部分の密度状態等を所定の状態に設定して、高密度部分の機能を最適化することが行ないやすくなる。
【0042】
本発明の液体噴射装置において、上記吸収部材が、単一の材料で一体につくられている場合には、上記単一の材料に対して加圧部材が押し付けられるので、単一の材料とされた吸収部材に圧縮率の大小の差ができる。したがって、単一の材料において、圧縮率の大きな部分が高密度部分として機能し、圧縮率の小さな部分が低密度部分として機能し、1片(いわゆるワンピース)の材料に加圧部材を作用させるだけで、このような両機能が簡単な構成で確保できる。
【0043】
本発明の液体噴射装置において、上記吸収部材が、多層構造とされている場合には、低密度部分にとって最適な密度の層を形成し、また、加圧部材による高密度部分の形成にとって最適な密度の層を形成できるので、低密度部分と高密度部分とを最適な積層条件のもとで形成でき、すぐれた各層の機能が的確にえられる。
【0044】
本発明の液体噴射装置において、上記吸収部材に浸透溶剤を含浸させた場合には、例えば、インクジェット式記録装置のインクのような液体の表面張力を、界面活性剤等の浸透溶剤で低下させるので、吸収部材内を流下する液体の流動性が促進される。したがって、吸収部材に飛来した液滴は迅速に拡散層に誘導され、吸収部材の表面近傍に残留する液体の量が問題にならないレベルとなる。
【0045】
本発明の液体噴射装置において、上記吸収部材に、不揮発性溶剤を含浸させた場合には、例えば、インクジェット式記録装置のインクのような液体を希釈化するので、液体の乾燥を防止するとともに、液体の流動性が一層促進されて高密度部分への集中性が向上する。したがって、吸収部材に飛来した液滴は迅速に高密度部分に誘導され、吸収部材の表面近傍に残留する液体の量が問題にならないレベルとなる。
【0046】
本発明の液体噴射装置において、上記吸収部材に、噴射される液体の比重よりも小さな比重の不揮発性溶剤を含浸させた場合には、比重の大きな液体が優先的に吸収部材を流下し、比重の小さな不揮発性溶剤は吸収部材に含浸されて停滞しているので、液体の流下の途上で液体に対して希釈化の作用がなされる。したがって、液体の乾燥を防止するとともに、液体の流動性が一層促進されて高密度部分への集中性が向上する。よって、吸収部材に飛来した液滴は迅速に高密度部分に誘導され、吸収部材の表面近傍に残留する液体の量が問題にならないレベルとなる。
【0047】
本発明の液体噴射装置において、上記液体噴射ヘッドがインクジェット式記録装置の記録ヘッドとして用いられている場合には、上記低密度部分のインク濡れ状態やインク乾燥後の残留固形物の量が実質的に問題にならないレベルになるので、記録担体の裏面が低密度部分の表面に接触しても、記録担体を汚すようなことが防止できる。特に、従来は、記録担体は湾曲した形態で送り込まれてくるので、記録担体と低密度部分の表面までの距離を大きく設定していた。このような距離の設定は、記録ヘッドのノズル開口から低密度部分までの間隔を過大にすることとなり、そのために吐出されたインク滴は低密度部分に到達するまでに空中に浮遊状態となり、それが機内に漂ってインクカートリッジ,プラテン,可動機構部等に付着して作動不良の原因になる恐れがあった。しかし、本発明においては、上述のような低密度部分と高密度部分の機能により、上記動作不良等の問題が解消できる。
【0048】
本発明の液体噴射装置において、上記吸収部材が収容される空間は、インクジェット式記録装置のプラテンに形成されている場合には、記録ヘッドと低密度部分との距離を可及的に短縮することができて、記録担体等の目的物をそれたインク滴が確実に低密度部分に吸収され、上記のようなインク滴の浮遊による問題の発生を予防することができる。また、プラテンは一般に合成樹脂で成形されているので、上記低密度部分や高密度部分を収容する空間の成形がプラテンの成形時に簡単にできて、製作面でも有利である。
【0049】
本発明の液体噴射装置において、上記空間内に向って上記加圧部材が突出した状態で配置されている場合には、上記空間内に吸収部材を挿入するときに、突出状態の加圧部材で吸収部材が相対的に加圧されるので、吸収部材の挿入動作だけで、高密度部分が簡単に形成できる。また、加圧部材が突出構造物であるから、加圧部材の突出量や突出範囲を加減することにより、高密度部分の密度状態等を所定の状態に設定して、高密度部分の機能を最適化することが行ないやすくなる。
【0050】
本発明の液体噴射装置において、上記液体排出用の流路が、インクジェット式記録装置のプラテンに形成されている場合には、高密度部分で保持されている廃インク量が飽和状態になると、廃インクの自重で上記流路を経て外部、例えば、廃インクタンクに貯留される。低密度部分に到達した液滴は低密度部分,高密度部分および上記液体排出用の流路を経由して順調に廃インクタンク等へ流下し、インクの異常な滞留によって低密度部分や高密度部分の機能に支障を生じるようなことがない。
【0051】
本発明の液体噴射装置において、上記吸収部材が顔料インクの顔料を透過させることができる密度とされている場合には、少なくとも加圧部材で加圧されていない低密度部分における流路断面積が、顔料の粒径よりも大きく設定されているので、いわゆる顔料詰りによって低密度部分のインク流下機能を損なうことがなく、本来の低密度部分としての機能が健全に果たされる。
【0052】
【発明の実施の形態】
図示の実施の形態は、本発明の液体噴射装置をインクジェット式記録装置に適用した場合であり、以下、これに基づいて説明する。
【0053】
図1は、本発明の液体噴射装置が適用されるインクジェット式記録装置の一実施例を、ケースカバー1を開放して印刷機構部を示すものであって、インクカートリッジ2,3や記録ヘッド10を搭載したキャリッジ4の移動経路に対向する位置にはプラテン5が、またプラテン5を挟むように、記録用紙Pの排出方向の上流側に第1の紙押えローラ6と、第2の紙押えローラ7が配置されている。
【0054】
図中符号20は、インク吸収機能を有する受容部材で、図2に示したようにプラテン5の少なくとも非印刷領域となる部分に形成された窓5a、5aに対向するように配置され、その下面を図3に示したように支持部材8により支持され、また支持部材8は、下部に配置された廃インクタンク9に対向する領域にはインク排出用の流路となる窓8a、8aが形成されている。
【0055】
上記受容部材20は、図4(イ)に示したように、記録担体Pの裏面と接触または接触する可能性があるとともに、インク滴を受ける受容層21と、受容層21のインクを吸収し、拡散させる拡散層22との少なくとも2層を備えた構造として構成され、上記受容層21の密度と拡散層22の密度は拡散層22の方が大きく設定されている。なお、受容層21が上側に配置され、その下側に拡散層22が配置されていて、インクが流下するようになっている。
【0056】
受容部材20を構成する材料としては、多孔質材料,フェルト材等いろいろなものが採用できる。図4の場合は連続気泡の発泡材料(スポンジ状)であり、受容層21の密度は拡散層22の密度よりも小さくしてある。受容層21中に縦横に存在する多数のインクの流路が、それぞれ大きな流路面積を有する状態になっているので、インクの表面張力で流路の途中に停滞するような現象が発生せず、円滑に流下して行く。このために、受容層21の表面には液状の濡れ状態や乾燥後の残留固形物の量が可及的に少なくなり、受容層21の表面に接触するもの、例えば、印刷用紙等を汚したりすることが防止できる。
【0057】
また、拡散層22の密度は受容層21の密度よりも大きくしてある。拡散層22中に縦横に存在する多数のインクの流路が、それぞれ小さな流路面積を有する状態になっているので、インクの表面張力で流路の途中に停滞する現象が拡散層22の全域で発生し、インクは拡散層22に含浸した状態で保持される。この保持量が増量してきてそれ以上保持できなくなると、インクの自重で廃インクタンク9等に流下する。
【0058】
上記の発泡材料に代えて、受容層21として撥水性に優れた高分子材料の網状シートを、また拡散層22として多孔質シートを用い、受容層21の密度を拡散層22のそれよりも小さく設定することができる。したがって、インクが表面張力で流路の途中に停滞しない現象に加えて、撥水現象により網状シートへのインク粘着がほとんどないので、受容層21におけるインクの流下性が促進される。そして、拡散層22の多孔質シートにおいて高いインク保持性が発揮される。このような受容層21と拡散層22を重ねた状態で所定の間隔で離散的にパンチング加工や溶着、さらには接着剤により固定して構成されている。
【0059】
また、他の材料として受容層21は、フッソ樹脂からなる多孔質シートにより構成され、特に顔料インクを対象とする場合には、顔料の粒度よりも大きな孔径の細孔を備えたものが使用されている。さらに、拡散層22は、インク溶媒に対する吸収特性が高い材料、例えばフエルト材、親水性高分子多孔質シートが使用されている。
【0060】
以上のように、受容層21は低密度材料を用いてつくられ、他方、拡散層22は高密度材料を用いてつくられ、上記受容層21と拡散層22とが積層された状態で配置されている。したがって、受容層21の適正な低密度状態を選定された低密度材料でつくり、また、拡散層22の適正な高密度状態を選定された高密度材料でつくるものであり、両層21,22の密度状態が適正に設定され、上記のような受容層21と拡散層22とのそれぞれの機能が的確に果たされる。
【0061】
この実施の形態において、記録担体Pを装填して印刷を開始すると、図3に示したように記録ヘッド10から印刷データに対応してインク滴が吐出され、記録担体Pに印刷データに対応したドットが形成される。このときに、記録ヘッド10からのインク滴が、記録担体Pの領域外に吐出されると、ここに配置された受容部材20に着弾する。
【0062】
受容部材20に着弾したインクKは、受容層21に受け止められた後、重力により下層の拡散層22に移動して拡散層22に吸収され(図4(ロ))、拡散層22を水平方向に浸透する(図4(ハ))。この水平方向への浸透により、特定領域にインクが滞ることがなく、受容層21は、インク濡れや乾燥固形物の残留がなく速やかに乾燥する。したがって、新たな記録担体Pが装填された場合にも、記録担体Pをインクで汚染することなく印刷を実行することができる。
【0063】
一方、インク量が拡散層22で保持しきれない程度に達すると、拡散層22のインクは重力により、支持部材8の窓8aから下方に落下し、廃インクタンク9に収容される。
【0064】
上記液体噴射ヘッドがインクジェット式記録装置の記録ヘッド10として用いられることにより、受容層21のインク濡れ状態やインク乾燥後の残留固形物の量が実質的に問題にならないレベルになるので、記録担体Pの裏面が受容層21の表面に接触しても、記録担体Pを汚すようなことが防止できる。特に、従来は、記録担体Pは湾曲した形態で送り込まれてきて、その先端部が受容層21の表面をこするようにして接触し上記のような汚れを来すので、記録担体Pと受容層21の表面までの距離を大きく設定していた。このような距離の設定は、記録ヘッド10のノズル開口から受容層21までの間隔を過大にすることとなり、そのために吐出されたインク滴は受容層21に到達するまでに空中に浮遊状態となり、それが機内に漂ってインクカートリッジ2,3,プラテン5,可動機構部等に付着して作動不良の原因になる恐れがあった。しかし、本発明においては、上述のような受容層21と拡散層22の機能により、上記作動不良等の問題が解消できる。
【0065】
なお、上述の実施の形態においては、受容層21及び拡散層22をそれぞれ1層構造として構成しているが、図5(イ)に示したようにそれぞれの層21−1,21−2または拡散層だけを複数の層22−1、22−2として構成することもできる。特に、拡散層を複数の層22−1,22−2で構成するとともに、受容層21から離れた層22−2の毛細管力、またはインク吸収力を受容層21側の層22−1よりも大きくすることにより、受容層21とインクを保持している拡散層22−2との距離を確保し、かつインクを確実に下方に移動させて汚染を確実に防止することができる。
【0066】
また、図5(ロ)に示したように、撥インク性を備え、かつインクを通過させることができる網目状のシート23Aからなる受容層21によりインク吸収剤組成物24Aを薄板状に包装しても同様の作用を奏する。
【0067】
図6,図7,図8は、本発明の液体噴射装置の第2の実施の形態を示す。
【0068】
この実施の形態は、プラテン5の各構造部に受容部材20を組込んだ場合である。図6はプラテン5の構造を示す平面図であり、このプラテン5は縁なし印刷用として準備されたものである。記録担体Pは図6の上から下に向かって移動するように案内される。プラテン5は、長尺な本体13に記録ヘッド10の主走査方向に吐出されたインク滴を受ける2本の受け溝14,15が形成されている。これら受け溝14,15が形成されていない箇所の本体13には、その上面部16,17に多数のガイドリブ18,19が形成されている。上記ガイドリブ18,19は、記録担体Pを裏面側から支持しながらその移動を案内するもので、記録担体Pがその自重やインク滴の吐出衝撃等で変形しないようにするために、所定の間隔で多数配列されている。なお、プラテン5は、合成樹脂材料、例えば、ポリプロピレンを用いて樹脂成形がなされている。
【0069】
図6の上方から記録担体Pが副走査方向に移動してきてその前端縁23が受け溝14にさしかかると、主走査方向に往復移動する記録ヘッド10から上記前端縁23を越えてインク滴が吐出され、前端縁23から縁なし印刷が開始される。それに引き続いて、記録ヘッド10の主走査方向の往復移動と記録担体Pの副走査方向の移動が継続されて、記録担体P全体の縁なし印刷が進行する。
【0070】
このような印刷記録動作が終了間近になると、記録担体Pの後端縁24が受け溝15を通過しているときに、主走査方向に往復移動する記録ヘッド10から上記後端縁24を越えてインク滴が吐出されて、後端縁24側の縁なし印刷が完了する。上記前端縁23および後端縁24を越えて吐出されたインク滴は、各受け溝14,15に配置された受容部材20で受止められて、インク滴の散逸が防止されている。
【0071】
図6に示す実施の形態では、上面部16を除く受け溝14,15に受容部材20が配置されているもので、図6の〔7〕−〔7〕断面と〔8〕−〔8〕断面をそれぞれ図7と図8に基づいて説明する。受け溝14,15によって形成された細長い凹部の下層側にシート状の拡散層22が敷き詰められ、上層側にシート状の受容層21が敷き詰められている。拡散層22の下側には廃インク排出用の流路8aが長方形の開口の状態で設けられている。また、図8の断面箇所においては、上面部16を避けて受容層21と拡散層22が配置され、各拡散層22の下側に流路8aがあけてある。各流路8aの下側には廃インクタンク9が配置されている。なお、符号25が廃インクタンク9内に収容されたインク吸収材である。また、図7に2点鎖線で示すように、インクを拡散層22からインク吸収材25へ導くためのガイド部材26を設けて、円滑にインクを廃インクタンク9へ導くこともできる。それ以外は、上記実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0072】
上記構成により、上述のように受容層21で吸収されたインクは速やかに拡散層22へ流下され、さらに流路8aを経て廃インクタンク9内に貯留される。この実施の形態においては、プラテン5の受け溝14,15の全域にわたって受容部材20が配置されているので、記録担体Pの大きさがいろいろと変わっても、そのサイズに適応したインク滴の吸収作用がえられる。上記インク排出用の流路8aはインクジェット式記録装置のプラテン5に形成されているので、拡散層22で保持されている廃インク量が飽和状態になると、廃インクの自重で上記流路8aを経て廃インクタンク9に貯留され、受容層21に到達したインク滴は受容層21から拡散層22を経由して順調に廃インクタンク9へ流下し、廃インクの異常な滞留によって受容層21や拡散層22の機能に支障を生じるようなことがない。それ以外は、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0073】
図9は、本発明の液体噴射装置の第3の実施の形態を示す。
【0074】
この実施の形態のものは、受容層21と拡散層22は単一のスポンジ材料27で一体につくられ、拡散層22が収容される空間28の開口寸法は、受容層21が収容される空間29の開口寸法よりも小さく設定されている場合である。そして、この両空間28,29に1片(いわゆるワンピース)のスポンジ材料27を押込んである。なお、上記の「開口寸法」は空間の平面形状が四角い場合には、例えば、空間28の縦寸法が5mm,横寸法が7mm、空間29の縦寸法が8mm,横寸法が10mmのように寸法差が付与してある。また、空間が溝状である場合には、溝幅を例えば、5mmに対して10mmにする。さらに、空間が円形や楕円の場合にも直径や長径,短径に寸法差を付与する。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0075】
上記両空間28,29における上記単一のスポンジ材料27の圧縮率に大小の差ができるので、拡散層22が収容される空間28ではスポンジ材料27が受容層21の密度よりも大きな密度状態になり、他方、受容層21が収容される空間29ではスポンジ材料27が拡散層22の密度よりも小さな密度状態になり、上記のような受容層21と拡散層22とのそれぞれの機能が的確に果たされる。また、1片(いわゆるワンピース)の材料27を上記両空間28,29に押込むだけで所定の密度差がえられるので、構造が簡素化され、製作面でも有利である。さらに、両空間28,29の開口寸法やスポンジ材料27の自由状態における密度等を適宜選定することにより、受容層21と拡散層22の各密度を最適化することができる。
【0076】
受容層21が収容される空間29と拡散層22が収容される空間28が、インクジェット式記録装置のプラテン5に形成されているので、記録ヘッド10と受容層21との距離を可及的に短縮することができて、記録担体P等の目的物をそれたインク滴が確実に受容層21に吸収され、上記のようなインク滴の浮遊による問題の発生を予防することができる。また、プラテン5は一般に合成樹脂で成形されているので、上記受容層21や拡散層22を収容する空間29,28の成形がプラテン5の成形時に簡単にできて、製作面でも有利である。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0077】
図10は、本発明の液体噴射装置の第4の実施の形態を示す。
【0078】
この実施の形態のものは、受容層21と拡散層22は、それぞれ略同一密度のスポンジ材料片30と31を用いてつくられ、拡散層22が収容される空間28の開口寸法は、受容層21が収容される空間29の開口寸法よりも小さく設定されている場合である。なお、2つのスポンジ材料片30,31が密着しているので、図10には両片30,31の境界線32が図示されている。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0079】
上記空間28,29の開口寸法をスポンジ材料27の性状に合わせて設定することにより、適正な密度差が形成できて、上記のような受容層21と拡散層22とのそれぞれの機能が的確に果たされる。また、受容層21のスポンジ材料片30と拡散層22のスポンジ材料片31を別々に製作し、各空間28,29の容積を適宜選定することにより、例えば、受容層21は表面の濡れ状態や乾燥後の残留固形物の量を実質的に問題にならない材料量(ボリューム)とすることができ、さらに、拡散層22には十分な液体保持能力を有する材料量(ボリューム)とすることができ、両受容層21と拡散層22との機能をより一層的確に発揮させることができる。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0080】
さらに、図示していないが、受容層21用の空間と拡散層22用の空間の大きさや形状を任意に選定するとともに、受容層21の材料の密度と拡散層22の材料の密度も任意に選定することにより、各空間の大きさと各材料密度を自由に組合わせて最適の受容部材20の機能をえることができる。
【0081】
図11および図12は、本発明の液体噴射装置の第5の実施の形態を示す。
【0082】
この実施の形態のものは、受容部材20を加圧部材33で加圧することにより、拡散層22が形成されている場合である。上記加圧部材33は、プラテン5の底面34から上方に突出している部材であり、水平方向の断面形状が略円形とされ、また、その頂面は丸みを帯びた形状とされている。したがって、断面円形のピンが底面34から起立した状態となっている。そして、加圧部材33の近傍にインク排出用の流路35が配置されている。上記流路35の配置の仕方にはいろいろな形態があるが、加圧部材33の周囲近傍の底面34に加圧部材33と同心円上に配列されている(図15参照)。上記流路35はプラテン5の支持部材8を上下方向に貫通している穴であり、上記インク吸収材25の上側に開口している。
【0083】
上記受容部材20としては、前述のように、連続気泡の発泡材料(スポンジ)であり、加圧部材33により加圧されると、図12に示すように変形する。図12(A)は、加圧部材33で加圧された受容部材20全体の変形状態を示している。(A)に示すように、受容部材20の上層域20Aにおいては、各気泡に変形が認められない。中層域20Bにおいては、各気泡にわずかな圧縮変形が上方に認められ、下方へ行くにしたがってその圧縮変形の度合いが大きくなっている。下層域20Cにおいては、圧縮変形が著しくなり、加圧部材33に接触している部位の圧縮変形が最大変形を呈している。上記のような圧縮度合いの変化により、受容部材20の加圧されていない部分すなわち受容層21から加圧された部分すなわち拡散層22に近づくに連れて、インクの流路面積が次第に小さくなっている。
【0084】
図12(B)は、上層域20Aの部分を拡大した断面図、同図(C)は下層域20Cの部分を拡大した断面図である。上層域20Aは各気泡が圧縮されていないので、この部分のインクの流路面積は大きな状態であり、また、流路面積が大きいことからインクの毛細管力はほとんど現われない。ついで、各気泡の圧縮変形が徐々に大きくなって(C)に示すように、下層域20Cのように最も押し潰された状態になると、各気泡は偏平な形状となる。したがって、インクの流路面積が最も小さな状態になり、これにともなってインクの毛細管力が大きく現われるようになる。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0085】
この例では、受容部材20の加圧されていない部分すなわち受容層21から加圧された部分すなわち拡散層22に近づくにつれて、インクの流路面積が次第に小さくなるので、受容層21を流下してきたインクは、拡散層22に近づくにつれてインクの毛細管力が大きくなる。このため、インクは拡散層22に向って積極的に誘導される現象を呈し、これによって受容層21で受け止められたインク滴は直ちに受容層21の表面から拡散層22の方へ流下する。したがって、受容層21とくにその表面近傍に停滞するインクが著しく少なくなるので、受容層21の表面には液状の「濡れ」状態やインク乾燥後の残留固形物の量が可及的に少なくなり、受容層21の表面近傍を通過する記録担体P等を汚したりすることが防止できる。そして、受容部材20に拡散層22としての機能を果たす密度の大きな部分が、受容部材20を加圧部材33で加圧することによって形成されるので、受容部材20の中に拡散層22を配置することが簡単に行なえる。
【0086】
上記加圧部材33の近傍にインク排出用の流路35が配置されている。そして、加圧部材33によって加圧部材33の近傍に拡散層22が形成され、この拡散層22で保持されているインク量が飽和状態になると、インクの自重で加圧部材33の近傍に配置された上記流路35を経て、廃インクタンク9に貯留される。このように、加圧部材33とインク排出用の流路35との相対位置を近づけて設定し、受容層21に到達したインク滴は受容層21から拡散層22を経て上記インク排出用の流路35へと誘導され、スムーズに廃インクタンク9等へ流下し、インクの異常な滞留によって受容層21や拡散層22の機能に支障を来すようなことがない。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0087】
図13〜図17は、本発明の液体噴射装置の第6の実施の形態を示す。
【0088】
この実施の形態は、縁なし印刷において、記録担体Pを超えて吐出されたインク滴が到達する受容部材20の到達領域36を対象にして、インクを積極的に吸収し処理をするものである。
【0089】
図13において、到達領域36は、ハッチングが施された領域であり、副走査方向で見て記録担体Pの前端縁23を超えて吐出されたインク滴は、受け溝14に沿った領域36Aに受け止められる。そして、主走査方向で見て記録担体Pの横側縁37を越えて吐出されたインク滴は、横側縁37に添った領域36Bに受け止められる。さらに、副走査方向で見て記録担体Pの後端縁24を超えて吐出されたインク滴は、受け溝15に沿った領域36Cに受け止められる。
【0090】
図14は、図13の〔14〕−〔14〕断面図であり、図15は、図14の受容部材20を除去して示した平面図である。上記プラテン5には受け溝14,15等が形成された細長い一種の容器のような空間を有している。このような空間を有したプラテン5に受容部材20を押し込むようになっている。したがって、プラテン5は、受容部材20を保持する「保持部材」としての機能をも果たしている。また、ここでは、受容部材20は単一の材料で一体に作られたものである。しかし、受容部材20をプラテン5の上記空間の形状に応じて複数個に分割して配置してもよい。さらに、受容部材20は、顔料タイプのインクの顔料を透過させることができる密度とされている。
【0091】
上記到達領域36Aの下位に加圧部材33や流路35が配置されている。図15に示すように、受け溝14すなわち領域36A側に配置された流路35は、流路断面の形状が円弧型とされており、4つの円弧型の流路35が円形をなす状態で突起状の加圧部材33を包囲した状態になっている。他方、受け溝15すなわち領域36C側に配置された流路35は、流路断面の形状が円形とされており、4つの円形の流路35が1つの突起状の加圧部材33を包囲した状態で配置されている。受容部材20を受け溝14,15にやや圧縮状態で押し込むと、受容部材20の下側の部分が加圧部材33により相対的に加圧されて、拡散層22が形成される。なお、上記のように、受容部材20をやや圧縮状態で押し込むのは、受容部材20が輸送中等において受け溝14,15から容易に抜けたりしないようにするためであり、拡散層22の加圧状態を調整するような性格のものではない。
【0092】
図16は、図13の〔16〕−〔16〕断面図であり、図17は、図16の受容部材20を除去して示した平面図である。そして、この例は、記録担体Pの幅が図13に示した記録担体Pの幅よりも大きいときに対応できるもので、大幅の記録担体Pは、〔16〕−〔16〕断面線付近までその幅がおよんでいる。上記断面線〔16〕−〔16〕に沿って存在している領域36Bの下位に加圧部材33や流路35が配置されている。図17に示すように、この例では、加圧部材33が4本起立させてあり、その各々の周囲に、図15に示した流路35と同様に、円弧型の流路35が円形をなす状態で突起状の加圧部材33を包囲している。受容部材20を受け溝14,15にやや圧縮状態で押し込むと、受容部材20の下側の部分が加圧部材33により相対的に加圧されて、拡散層22が形成される。図17の例では、加圧部材33が4本起立しているので、拡散層22は各加圧部材33を中心にして、4箇所に形成される。なお、上記のように、受容部材20をやや圧縮状態で押し込むのは、受容部材20が輸送中等において受け溝14,15から容易に抜けたりしないようにするためであり、拡散層22の加圧状態を調整するような性格のものではない。
【0093】
上記受容部材20には、受容部材20の機能を向上させるために、浸透溶剤あるいは不揮発性溶剤を含浸させてある。浸透溶剤としては界面活性剤等が用いられ、不揮発性溶剤としてはグリセリン,オイル等が用いられている。また、上記不揮発性溶剤の比重を、吐出されるインクの比重よりも小さく設定することが好適である。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0094】
上記構成により、保持部材であるプラテン5の空間に受容部材20を押し込むだけで、突出状態の加圧部材33で受容部材20が相対的に加圧される。したがって、受容部材20の保持動作、例えば、受け溝14,15内に受容部材20を挿入するだけで、拡散層22が簡単に形成できる。また、加圧部材33が突出構造物であるから、加圧部材33の突出量や突出範囲を加減することにより、拡散層22の配置範囲や密度状態等を所定の状態に設定して、拡散層22の機能を最適化することが行ないやすくなる。
【0095】
上記単一の材料とされた受容部材20に対して加圧部材33が押し付けられるので、受容部材20に圧縮率の大小の差ができる。したがって、単一の材料において、圧縮率の大きな部分が拡散層22として機能し、圧縮率の小さな部分が受容層21として機能し、1片(いわゆるワンピース)の材料に加圧部材33を作用させるだけで、このような両機能が簡単な構成で確保できる。
【0096】
上記受容部材20に界面活性剤等の浸透溶剤を含浸させることにより、インクの表面張力を低下させるので、受容部材20内を流下するインクの流動性が促進される。したがって、受容部材20に飛来したインク滴は迅速に拡散層22に誘導され、受容部材20の表面近傍に残留するインクの量が問題にならないレベルとなる。
【0097】
上記受容部材に、グリセリンやオイル等の不揮発性溶剤を含浸させることにより、インクを希釈化するので、インクの乾燥を防止するとともに、インクの流動性が一層促進されて拡散層22への集中性が向上する。したがって、受容部材20に飛来したインク滴は迅速に拡散層22に誘導され、受容部材20の表面近傍に残留するインクの量が問題にならないレベルとなる。
【0098】
特に、上記受容部材20に、吐出されるインクの比重よりも小さな比重の不揮発性溶剤を含浸させることにより、比重の大きなインクが優先的に受容部材20を流下し、比重の小さな不揮発性溶剤は受容部材20に含浸されて停滞しているので、インクの流下の途上でインクに対して希釈化の作用がなされる。したがって、インクの乾燥を防止するとともに、インクの流動性が一層促進されて拡散層22への集中性が向上する。よって、受容部材20に飛来したインク滴は迅速に拡散層22に誘導され、受容部材20の表面近傍に残留するインクの量が問題にならないレベルとなる。
【0099】
上述した例では、上記インク噴射ヘッドをインクジェット式記録装置の記録ヘッド10に適用しているため、上記受容層21のインク濡れ状態やインク乾燥後の残留固形物の量が実質的に問題にならないレベルになるので、記録担体Pの裏面が受容層21の近傍を通過しても、記録担体Pを汚すようなことが防止できる。特に、従来は、記録担体Pは湾曲した形態で送り込まれてくるので、記録担体Pと受容層21の表面までの距離を大きく設定していた。このような距離の設定は、記録ヘッド10のノズル開口から受容層21までの間隔を過大にすることとなり、そのために吐出されたインク滴は受容層21に到達するまでに空中に浮遊状態となり、それが機内に漂ってインクカートリッジ,プラテン,可動機構部等に付着して動作不良の原因になる恐れがあった。しかし、本発明においては、上述のような受容層21と拡散層22の機能により、上記動作不良等の問題が解消できる。
【0100】
上記受容部材20が収容される空間(受け溝14,15等)が、インクジェット式記録装置のプラテン5に形成されているので、記録ヘッド10と受容層21との距離を可及的に短縮することができて、記録担体P等の目的物をそれたインク滴が確実に受容層21に吸収され、上記のようなインク滴の浮遊による問題の発生を予防することができる。また、プラテン5は一般に合成樹脂で成形されているので、上記受容部材20を収容する空間の成形がプラテン5の成形時に簡単にできて、製作面でも有利である。
【0101】
上記空間(受け溝14,15等)内に向って上記加圧部材33が突出した状態で配置されているので、上記空間(受け溝14,15等)内に受容部材20を挿入するときに、突出状態の加圧部材33で受容部材20が相対的に加圧されるので、受容部材20の挿入動作だけで、拡散層22が簡単に形成できる。また、加圧部材33が突出構造物であるから、加圧部材33の突出量や突出範囲を加減することにより、拡散層22の機能を最適化することが行ないやすくなる。
【0102】
上記液体排出用の流路35が、インクジェット式記録装置のプラテン5に形成されているので、拡散層22で保持されている廃インク量が飽和状態になると、廃インクの自重で上記流路35を経て、廃インクタンク9に貯留される。受容層21に到達したインク滴は受容層21,拡散層22および上記インク排出用の流路35を経由して順調に廃インクタンク9等へ流下し、インクの異常な滞留によって受容層21や拡散層22の機能に支障を生じるようなことがない。
【0103】
プラテン5は上記のように合成樹脂で成型されるので、突出構造の加圧部材33やその近傍に配置される流路35も容易に成型でき、製造上の合理化が促進できる。
【0104】
上記受容部材20が顔料インクの顔料を透過させることができる密度とされているので、少なくとも加圧部材33で加圧されていない受容層21における流路断面積が、顔料の粒径よりも大きく設定され、いわゆる顔料詰りによって受容層21のインク流下機能を損なうことがなく、本来の受容層21としての機能が健全に果たされる。
【0105】
図18は、本発明の液体噴射装置の第7の実施の形態を示す。
【0106】
この実施の形態は、受容部材20を多層構造にした場合である。図示の例は2層構造であり、インクの流路面積を大きく設定した上層部材20Aと、上記流路面積と略同じかまたはそれよりも若干小さくした流路面積の下層部材20Bとが積層されている。加圧部材33は上記下層部材20Bに対して加圧機能を果たしている。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0107】
上記構成により、受容層21にとって最適な密度の層を上層部材20Aにおいて形成し、また、加圧部材による拡散層22の形成にとって最適な密度の層を下層部材20Bにおいて形成できるので、受容層21と拡散層22とを最適な積層条件のもとで形成でき、すぐれた各層21,22の機能が的確にえられる。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0108】
図19および図20は、本発明の液体噴射装置の第8の実施の形態を示す。
【0109】
この実施の形態は、底面34から隆起させた加圧部材33が平面的に見て円形とされ、その頂部の周縁部に環状の突条33Aが形成され、上記環状の突条33Aの中央部にインク排出用の流路35が設けられている。また、加圧部材33の周囲に、加圧部材33を包囲する形状の環状の凹溝34Aが設けられ、上記凹溝34Aの底部に複数の流路35が設けられている。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0110】
上記構成により、拡散層22から流出したインクは、突条33Aの内側においては中央の流路35からか排出される。また、加圧部材33の周囲においては、拡散層22から流出したインクが凹溝34Aに流下し、複数の流路35から排出される。このように、拡散層22から流出したインクは、凹形状である突条33Aの内側や凹溝34Aに集中するので、円滑に各流路35から排出される。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0111】
図21および図22は、本発明の液体噴射装置の第9の実施の形態を示す。
【0112】
この実施の形態は、受け溝14,15の底面34の端部に段形状の加圧部材33を複数配置したもので、上記加圧部材33に隣接した状態で流路35が形成されている。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0113】
上記構成により、段形状の加圧部材33に沿って形成された拡散層22から流出したインクは、流路35が加圧部材33に隣接しているので、円滑に流路35へ誘導され、確実なインク排出が実現する。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0114】
図23および図24は、本発明の液体噴射装置の第10の実施の形態を示す。
【0115】
この実施の形態は、図13に示した上記到達領域36において、領域36Aまたは36Cと領域36Bとが交差している箇所で受け止められたインクを重点的に吸収し排出するものである。このように交差している箇所に対するインクの量は他の箇所よりも多いので、そのような現象に対応させてある。なお、図23,図24においては、領域36Aと領域36Bの交差箇所についてのみ図示し、領域36Cと領域36Bとの交差箇所については、インク滴が集中する現象が同じなので、図示を省略してある。また、図23,図24には、受容部材20は図示していない。
【0116】
すなわち、図23において、ピン形状の加圧部材33が交差箇所38に密集した状態で配置されている。この例では、加圧部材33が4本接近させて配置され、その近傍に多数の流路35が配置されている。また、図24においては、上記4本のピン形状の加圧部材33に代えて、L型の突条とされた加圧部材33が配置され、その近傍に多数の流路35が配置されている。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0117】
上記構成により、大量のインクが集中して受け止められる交差箇所38付近であっても、交差箇所38付近には他の箇所よりも拡散層22が密集した状態で形成されているので、インクは滞ることなく円滑に排出される。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0118】
上記各実施の形態においては、受容層21と拡散層22を個別の吸収部材で形成したり、受容部材20を加圧部材33で加圧して、受容層21と拡散層22を形成したりすることを前提にしたものであるが、以下に説明する実施の形態は、略均一な吸収部材の一部に高密度部分が形成され、上記高密度部分の近傍に液体排出用の流路が配置されていることを前提にしたものである。なお、上記高密度部分等を前提にした実施の形態は、上記各実施の形態におけるインクジェット式記録装置において実施されるものである。
【0119】
上記略均一な吸収部材の一部に高密度部分が形成され、上記高密度部分の近傍に液体排出用の流路が配置されていることを前提にした実施の形態は、図11〜図24に示されている。
【0120】
本発明の液体噴射装置の第11の実施の形態は、図11および図12に示されている。
【0121】
この実施の形態のものは、略均一な密度とされた吸収部材20の一部に高密度部分22を形成し、上記高密度部分22の近傍にインク排出用の流路35が配置されている。上記吸収部材20は、上記各実施の形態と同様に、連続気泡を有するスポンジ状の発泡材料で構成されている。
【0122】
上記高密度部分22を形成するために加圧部材33が用いられる。上記加圧部材33で吸収部材20の一部を加圧することにより、高密度部分22が形成される。上記加圧部材33は、プラテン5の底面34から上方に突出している部材であり、水平方向の断面形状が略円形とされ、また、その頂面は丸みを帯びた形状とされている。したがって、断面円形のピンが底面34から起立した状態となっている。そして、加圧部材33の近傍にインク排出用の流路35が配置されている。上記流路35の配置の仕方にはいろいろな形態があるが、加圧部材33の周囲近傍の底面34に加圧部材33と同心円上に配列されている(図15参照)。上記流路35はプラテン5の支持部材8を上下方向に貫通している穴であり、上記インク吸収材25の上側に開口している。
【0123】
上記吸収部材20としては、前述のように、連続気泡を有するスポンジ状の発泡材料であり、加圧部材33により加圧されると、図12に示すように変形する。図12(A)は、加圧部材33で加圧された吸収部材20全体の変形状態を示している。(A)に示すように、吸収部材20の上層域20Aにおいては、各気泡に変形が認められない。中層域20Bにおいては、各気泡にわずかな圧縮変形が上方に認められ、下方へ行くにしたがってその圧縮変形の度合いが大きくなっている。下層域20Cにおいては、圧縮変形が著しくなり、加圧部材33に接触している部位の圧縮変形が最大変形を呈している。上記のような圧縮度合いの変化により、吸収部材20の加圧されていない部分すなわち低密度部分21から加圧された部分すなわち高密度部分22に近づくにつれて、インクの流路面積が次第に小さくなっている。
【0124】
図12(B)は、上層域20Aの部分を拡大した断面図、同図(C)は下層域20Cの部分を拡大した断面図である。上層域20Aは各気泡が圧縮されていないので、この部分のインクの流路面積は大きな状態であり、また、流路面積が大きいことからインクの毛細管力はほとんど現われていない。ついで、各気泡の圧縮変形が徐々に大きくなって(C)に示すように、下層域20Cのように最も押し潰された状態になると、各気泡は偏平な形状となる。したがって、インクの流路面積が最も小さな状態になり、これにともなってインクの毛細管力が大きく現われるようになる。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0125】
上記高密度部分22以外の部分すなわち低密度部分21から高密度部分22に近づくにつれて、吸収部材20の密度が次第に大きくなるので、上記低密度部分21を流下してきたインクは、高密度部分22に近づくにつれてインクの毛細管力が大きくなる。このため、インクは高密度部分22に向って積極的に誘導される現象を呈し、これによって低密度部分21で受け止められたインク滴は直ちに低密度部分21の表面から高密度部分22の方へ流下する。
【0126】
すなわち、低密度部分21に浸透して流下したインクは、高密度部分22に到達し、この高密度部分22では、高密度部分22中に縦横に存在する多数のインクの流路が、それぞれ小さな流路面積を有する状態になっているので、インクの表面張力で流路の途中に停滞する現象が高密度部分22の全域で発生し、インクは高密度部分22に含浸した状態で保持される。この保持量が増量してきてそれ以上保持できなくなると、インクの自重で廃インクタンク9等に流下する。したがって、低密度部分21とくにその表面近傍に停滞するインクが著しく少なくなるので、低密度部分21の表面には液状の「濡れ」状態や乾燥後の残留固形物の量が可及的に少なくなり、低密度部分21の表面に接触する印刷用紙等を汚したりすることが防止できる。
【0127】
そして、上記のように、高密度部分22で保持されているインク量が飽和状態になると、インクの自重で高密度部分22の近傍に配置された上記インク排出用の流路35を経て廃インクタンク9に貯留される。このように、高密度部分22とインク排出用の流路35との相対位置を近づけて設定し、上記低密度部分21に到達したインク滴は低密度部分21,高密度部分22および上記インク排出用の流路35を経由して順調に廃インクタンク9等へ流下し、インクの異常な滞留によって低密度部分21や高密度部分22の機能に支障を来すことがない。
【0128】
上記吸収部材20の均一な密度部分の液体流路が、その流路面積が徐々に小さくなって上記高密度部分22の液体流路に連通しているので、吸収部材20の均一な密度部分すなわち上記低密度部分21の液体流路の面積が高密度部分22に近づくにつれて次第に小さくなり、高密度部分22において所定の最小化された流路面積となっている。上記低密度部分21を流下してきたインクは、高密度部分22に近づくにつれてインクの毛細管力が大きくなる。このため、インクは高密度部分22に向って積極的に誘導される現象を呈し、これによって低密度部分21で受け止められたインク滴は直ちに低密度部分21の表面から高密度部分22の方へ流下する。とくに、上記インクの流路面積は、低密度部分21から高密度部分22にかけて徐々に小さくなっていて、いわゆる流路面積の急変箇所がないので、高密度部分22において大きくなる毛細管力によって誘導されるインクの移動が円滑に行なわれる。
【0129】
上記高密度部分22が、加圧部材33で上記吸収部材20を部分的に加圧して形成されている。これにより、吸収部材20の加圧されていない部分すなわち上記低密度部分21から、加圧された部分すなわち高密度部分22に近づくにつれて、インクの流路面積が次第に小さくなるので、低密度部分21を流下してきたインクは、高密度部分22に近づくにつれてインクの毛細管力が大きくなる。このため、インクは高密度部分22に向って積極的に誘導される現象を呈し、これによって低密度部分21で受け止められたインク滴は直ちに低密度部分21の表面から高密度部分22の方へ流下する。したがって、低密度部分21とくにその表面近傍に停滞するインクが著しく少なくなるので、低密度部分21の表面には液状の「濡れ」状態や乾燥後の残留固形物の量が可及的に少なくなり、低密度部分21の表面近傍を通過する印刷用紙等を汚したりすることが防止できる。そして、吸収部材20に高密度部分22としての機能を果たす密度の大きな部分が、吸収部材20を加圧部材33で加圧することによって形成されるので、吸収部材20の中に高密度部分22を配置することが簡単に行なえる。
【0130】
本発明の液体噴射装置の第12の実施の形態は、図13〜図17に示されている。
【0131】
この実施の形態は、縁なし印刷において、記録担体Pを超えて吐出されたインク滴が到達する吸収部材20の到達領域36を対象にして、インクを積極的に吸収し処理をするものである。
【0132】
図13において、到達領域36は、ハッチングが施された領域であり、副走査方向で見て記録担体Pの前端縁23を超えて吐出されたインク滴は、受け溝14に沿った領域36Aに受け止められる。そして、主走査方向で見て記録担体Pの横側縁37を越えて吐出されたインク滴は、横側縁37に添った領域36Bに受け止められる。さらに、副走査方向で見て記録担体Pの後端縁24を超えて吐出されたインク滴は、受け溝15に沿った領域36Cに受け止められる。
【0133】
図14は、図13の〔14〕−〔14〕断面図であり、図15は、図14の吸収部材20を除去して示した平面図である。上記プラテン5には受け溝14,15等が形成された細長い一種の容器のような空間を有している。このような空間を有したプラテン5に吸収部材20を押し込むようになっている。したがって、プラテン5は、吸収部材20を保持する「保持部材」としての機能を果たしている。また、ここでは、吸収部材20は単一の材料で一体に作られたものである。しかし、吸収部材20をプラテン5の上記空間の形状に応じて複数個に分割して配置してもよい。さらに、吸収部材20は、顔料タイプのインクの顔料を透過させることができる密度とされている。
【0134】
上記到達領域36Aの下位に加圧部材33や流路35が配置されている。図15に示すように、受け溝14すなわち領域36A側に配置された流路35は、流路断面の形状が円弧型とされており、4つの円弧型の流路35が円形をなす状態で突起状の加圧部材33を包囲した状態になっている。他方、受け溝15すなわち領域36C側に配置された流路35は、流路断面の形状が円形とされており、4つの円形の流路35が1つの突起状の加圧部材33を包囲した状態で配置されている。吸収部材20を受け溝14,15にやや圧縮状態で押し込むと、吸収部材20の下側の部分が加圧部材33により相対的に加圧されて、高密度部分22が形成される。なお、上記のように、吸収部材20をやや圧縮状態で押し込むのは、吸収部材20が輸送中等において受け溝14,15から容易に抜けたりしないようにするためであり、吸収部材20の加圧状態を調整するような性格のものではない。
【0135】
図16は、図13の〔16〕−〔16〕断面図であり、図17は、図16の吸収部材20を除去して示した平面図である。そして、この例は、記録担体Pの幅が図13に示した記録担体Pの幅よりも大きいときに対応できるもので、大幅の記録担体Pは、〔16〕−〔16〕断面線付近までその幅がおよんでいる。上記断面線〔16〕−〔16〕に沿って存在している領域36Bの下位に加圧部材33や流路35が配置されている。図17に示すように、この例では、加圧部材33が4本起立させてあり、その各々の周囲に図15に示した流路35と同様に、円弧型の流路35が円形をなす状態で突起状の加圧部材33を包囲している。吸収部材20を受け溝14,15にやや圧縮状態で押し込むと、吸収部材20の下側の部分が加圧部材33により相対的に加圧されて、高密度部分22が形成される。なお、上記のように、吸収部材20をやや圧縮状態で押し込むのは、吸収部材20が輸送中等において受け溝14,15から容易に抜けたりしないようにするためであり、高密度部分22の加圧状態を調整するような性格のものではない。
【0136】
上記吸収部材20には、吸収部材20の機能を向上させるために、浸透溶剤あるいは不揮発性溶剤を含浸させてある。浸透溶剤としては界面活性剤等が用いられ、不揮発性溶剤としてはグリセリン,オイル等が用いられている。また、上記不揮発性溶剤の比重を、吐出されるインクの比重よりも小さく設定することが好適である。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0137】
上記構成により、保持部材であるプラテン5の空間に吸収部材20を押し込むだけで、突出状態の加圧部材33で吸収部材20が相対的に加圧されるので、吸収部材20の保持動作、例えば、受け溝14,15内に吸収部材20を挿入するだけで、高密度部分22が簡単に形成できる。また、加圧部材33が突出構造物であるから、加圧部材33の突出量や突出範囲を加減することにより、高密度部分22の配置範囲や密度状態等を所定の状態に設定して、高密度部分22の機能を最適化することが行ないやすくなる。
【0138】
上記単一の材料とされた吸収部材20に対して加圧部材33が押し付けられるので、吸収部材20に圧縮率の大小の差ができる。したがって、単一の材料において、圧縮率の大きな部分が高密度部分22として機能し、圧縮率の小さな部分が低密度部分21として機能し、1片(いわゆるワンピース)の材料に加圧部材33を作用させるだけで、このような両機能が簡単な構成で確保できる。
【0139】
上記吸収部材20に界面活性剤等の浸透溶剤を含浸させることにより、インクの表面張力を低下させるので、吸収部材20内を流下するインクの流動性が促進される。したがって、吸収部材20に飛来したインク滴は迅速に高密度部分22に誘導され、吸収部材20の表面近傍に残留するインクの量が問題にならないレベルとなる。
【0140】
上記吸収部材に、グリセリンやオイル等の不揮発性溶剤を含浸させることにより、インクを希釈化するので、インクの乾燥を防止するとともに、インクの流動性が一層促進されて高密度部分22への集中性が向上する。したがって、吸収部材20に飛来したインク滴は迅速に高密度部分22に誘導され、吸収部材20の表面近傍に残留するインクの量が問題にならないレベルとなる。
【0141】
特に、上記吸収部材20に、吐出されるインクの比重よりも小さな比重の不揮発性溶剤を含浸させることにより、比重の大きなインクが優先的に吸収部材20を流下し、比重の小さな不揮発性溶剤は吸収部材20に含浸されて停滞しているので、インクの流下の途上でインクに対して希釈化の作用がなされる。したがって、インクの乾燥を防止するとともに、インクの流動性が一層促進されて高密度部分22への集中性が向上する。よって、吸収部材20に飛来したインク滴は迅速に高密度部分22に誘導され、吸収部材20の表面近傍に残留するインクの量が問題にならないレベルとなる。
【0142】
上述した例では、上記インク噴射ヘッドをインクジェット式記録装置の記録ヘッド10に適用しているため、上記低密度部分21のインク濡れ状態やインク乾燥後の残留固形物の量が実質的に問題にならないレベルになるので、記録担体Pの裏面が低密度部分21の表面近傍を通過しても、記録担体Pを汚すようなことが防止できる。特に、従来は、記録担体Pは湾曲した形態で送り込まれてくるので、記録担体Pと低密度部分21の表面までの距離を大きく設定していた。このような距離の設定は、記録ヘッド10のノズル開口から低密度部分21までの間隔を過大にすることとなり、そのために吐出されたインク滴は低密度部分21に到達するまでに空中に浮遊状態となり、それが機内に漂ってインクカートリッジ,プラテン,可動機構部等に付着して動作不良の原因になる恐れがあった。しかし、本発明においては、上述のような低密度部分21と高密度部分22の機能により、上記動作不良等の問題が解消できる。
【0143】
上記吸収部材20が収容される空間(受け溝14,15等)が、インクジェット式記録装置のプラテン5に形成されているので、記録ヘッド10と低密度部分21との距離を可及的に短縮することができて、記録担体P等の目的物をそれたインク滴が確実に低密度部分21に吸収され、上記のようなインク滴の浮遊による問題の発生を予防することができる。また、プラテン5は一般に合成樹脂で成形されているので、上記吸収部材20を収容する空間の成形がプラテン5の成形時に簡単にできて、製作面でも有利である。
【0144】
上記空間(受け溝14,15等)内に向って上記加圧部材33が突出した状態で配置されているので、上記空間(受け溝14,15等)内に吸収部材20を挿入するときに、突出状態の加圧部材33で吸収部材20が相対的に加圧されるので、吸収部材20の挿入動作だけで、高密度部分22が簡単に形成できる。また、加圧部材33が突出構造物であるから、加圧部材33の突出量や突出範囲を加減することにより、高密度部分22の機能を最適化することが行ないやすくなる。
【0145】
上記インク排出用の流路35が、インクジェット式記録装置のプラテン5に形成されているので、高密度部分22で保持されている廃インク量が飽和状態になると、廃インクの自重で上記流路35を経て外部、例えば、廃インクタンク9に貯留される。低密度部分21に到達したインク滴は低密度部分21,高密度部分22および上記インク排出用の流路35を経由して順調に廃インクタンク9等へ流下し、インクの異常な滞留によって低密度部分21や高密度部分22の機能に支障を来すことがない。
【0146】
プラテン5は上記のように合成樹脂で成型されるので、突出構造の加圧部材33やその近傍に配置される流路35も容易に成型でき、製造上の合理化が促進できる。
【0147】
上記吸収部材20が顔料インクの顔料を透過させることができる密度とされているので、少なくとも加圧部材33で加圧されていない低密度部分21における流路断面積が、顔料の粒径よりも大きく設定され、いわゆる顔料詰りによって低密度部分21のインク流下機能を損なうことがなく、本来の低密度部分21としての機能が健全に果たされる。
【0148】
本発明の液体噴射装置の第13の実施の形態は、図18に示されている。
【0149】
この実施の形態は、吸収部材20を多層構造にした場合である。図示の例は2層構造であり、インクの流路面積を大きく設定した上層部材20Aと、上記流路面積と略同じかまたはそれよりも若干小さくしたインクの流路面積を有する下層部材20Bとが積層されている。加圧部材33は上記下層部材20Bに対して加圧機能を果たしている。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0150】
上記構成により、低密度部分21にとって最適な密度の層を上層部材20Aにおいて形成し、また、加圧部材による高密度部分22の形成にとって最適な密度の層を下層部材20Bにおいて形成できるので、低密度部分21と高密度部分22とを最適な積層条件のもとで形成でき、すぐれた各部分21,22の機能が的確にえられる。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0151】
本発明の液体噴射装置の第14の実施の形態は、図19および図20に示されている。
【0152】
この実施の形態は、底面34から隆起させた加圧部材33が平面的に見て円形とされ、その頂部の周縁部に環状の突条33Aが形成され、上記環状の突条33Aの中央部にインク排出用の流路35が設けられている。また、加圧部材33の周囲に、加圧部材33を包囲する形状の環状の凹溝34Aが設けられ、上記凹溝34Aの底部に複数の流路35が設けられている。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0153】
上記構成により、高密度部分22から流出したインクは、突条33Aの内側においては中央の流路35から排出される。また、加圧部材33の周囲においては、高密度部分22から流出したインクが凹溝34Aに流下し、複数の流路35から排出される。このように、高密度部分22から流出したインクは、凹形状である突条33Aの内側や凹溝34Aに集中するので、円滑に各流路35から排出される。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0154】
本発明の液体噴射装置の第15の実施の形態は、図21および図22に示されている。
【0155】
この実施の形態は、受け溝14,15の底面34の端部に段形状の加圧部材33を複数配置したもので、上記加圧部材33に隣接した状態で流路35が形成されている。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0156】
上記構成により、段形状の加圧部材33に沿って形成された高密度部分22から流出したインクは、流路35が加圧部材33に隣接しているので、円滑に流路35へ誘導され、確実なインク排出が実現する。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0157】
本発明の液体噴射装置の第16の実施の形態は、図23および図24に示されている。
【0158】
この実施の形態は、図13に示した上記到達領域36において、領域36Aまたは36Cと領域36Bとが交差している箇所で受け止められたインクを重点的に吸収し排出するものである。このように交差している箇所に対するインクの量は他の箇所よりも多いので、そのような現象に対応させた実施の形態とされている。なお、図23,図24においては、領域36Aと領域36Bの交差箇所についてのみ図示し、領域36Cと領域36Bとの交差箇所については、インク滴が集中する現象が同じなので、図示を省略してある。また、図23,図24には、吸収部材20は図示していない。
【0159】
すなわち、図23において、ピン形状の加圧部材33が交差箇所38に密集した状態で配置されている。この例では、加圧部材33が4本接近させて配置され、その近傍に多数の流路35が配置されている。また、図24においては、上記4本のピン形状の加圧部材33に代えて、L型の突条とされた加圧部材33が配置され、その近傍に多数の流路35が配置されている。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0160】
上記構成により、大量のインクが集中して受け止められる交差箇所38付近であっても、交差箇所38付近には他の箇所よりも高密度部分22が密集した状態で形成されているので、インクは滞ることなく円滑に排出される。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0161】
上記各実施の形態は、インクジェット式記録装置を対象にしたものであるが、本発明によってえられた液体噴射装置は、インクジェット式記録装置用のインクだけを対象にするのではなく、グルー,マニキュア,導電性液体(液体金属)等を噴射することができる。さらに、上記実施の形態では、液体の一つであるインクを用いたインクジェット式記録ヘッドについて説明したが、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド,液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド,有機ELディスプレー,FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド,バイオチップ製造に用いられる生体有機噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッド全般に適用することも可能である。
【0162】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、上記液体噴射ヘッドから噴射された液滴は、先ず、密度の小さな受容層に付着する。この受容層は密度の小さな形態であるから、受容層中に縦横に存在する多数の液体の流路が、それぞれ大きな流路面積を有する状態になっているので、液体の表面張力で流路の途中に停滞するような現象が発生せず、円滑に流下して行く。このために、受容層の表面には液状の「濡れ」状態や乾燥後の残留固形物の量が可及的に少なくなり、受容層の表面に接触するもの、例えば、印刷用紙等を汚したりすることが防止できる。
【0163】
さらに、上記のようにして受容層に浸透して流下した液体は、密度の大きな拡散層に到達する。密度の大きな拡散層では、拡散層中に縦横に存在する多数の液体の流路が、それぞれ小さな流路面積を有する状態になっているので、液体の表面張力で流路の途中に停滞する現象が拡散層の全域で発生し、液体は拡散層に含浸した状態で保持される。この保持量が増量してきてそれ以上保持できなくなると、液体の自重で廃液タンク等に流下する。
【0164】
上記高密度部分以外の部分すなわち低密度部分から高密度部分に近づくにつれて、吸収部材の密度が次第に大きくなるので、上記低密度部分を流下してきた液体は、高密度部分に近づくにつれて液体の毛細管力が大きくなる。このため、液体は高密度部分に向って積極的に誘導される現象を呈し、これによって低密度部分で受け止められた液滴は直ちに低密度部分の表面から高密度部分の方へ流下する。
【0165】
すなわち、低密度部分に浸透して流下した液体は、高密度部分に到達し、この密度の大きな高密度部分では、高密度部分中に縦横に存在する多数の液体の流路が、それぞれ小さな流路面積を有する状態になっているので、液体の表面張力で流路の途中に停滞する現象が高密度部分の全域で発生し、液体は高密度部分に含浸した状態で保持される。この保持量が増量してきてそれ以上保持できなくなると、液体の自重で廃液タンク等に流下する。したがって、低密度部分とくにその表面近傍に停滞する液体が著しく少なくなるので、低密度部分の表面には液状の「濡れ」状態や乾燥後の残留固形物の量が可及的に少なくなり、低密度部分の表面近傍を通過するもの、例えば、印刷用紙等を汚したりすることが防止できる。
【0166】
そして、上記のように、高密度部分で保持されている液体量が飽和状態になると、液体の自重で高密度部分の近傍に配置された上記液体排出用の流路を経て外部、例えば、廃液タンクに貯留される。このように、高密度部分と液体排出用の流路との相対位置を近づけて設定し、上記低密度部分に到達した液滴は低密度部分から高密度部分を経て上記液体排出用の流路へと誘導され、スムーズに廃液タンク等へ流下し、液体の異常な滞留によって低密度部分や高密度部分の機能に支障を生じるようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体噴射装置が適用されるインクジェット記録装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】同上記録装置の紙送り機構近傍の上面の構造を示す図である。
【図3】同上液体噴射装置が配置された印刷領域を示す図である。
【図4】図(イ)乃至(ハ)は、それぞれ受容部材のインク吸収状態を模式的に示す断面図と、インクを吸収した状態を示す図である。
【図5】図(イ),(ロ)は、それぞれ受容部材の他の構造例を模式的に示す断面図である。
【図6】プラテンの平面図である。
【図7】図6の〔7〕−〔7〕断面図である。
【図8】図6の〔8〕−〔8〕断面図である。
【図9】他の実施の形態を示す断面図である。
【図10】さらに、他の実施の形態を示す断面図である。
【図11】さらに、他の実施の形態を示す断面図である。
【図12】スポンジの変形状態を示す断面図である。
【図13】プラテンの平面図である。
【図14】図13の〔14〕−〔14〕断面図である。
【図15】図14のものの平面図である。
【図16】図13の〔16〕−〔16〕断面図である。
【図17】図16のものの平面図である。
【図18】多層構造の断面図である。
【図19】他の加圧部材を示す断面図である。
【図20】図19のものの平面図である。
【図21】さらに、他の加圧部材を示す断面図である。
【図22】図21のものの平面図である。
【図23】加圧部材の配置変形例を示す平面図である。
【図24】加圧部材の他の配置変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
1 ケースカバー
2,3 インクカートリッジ
4 キャリッジ
5 プラテン
5a 窓
6,7 紙押えローラ
8 支持部材
8a 窓,流路
9 廃インクタンク
10 記録ヘッド,インク噴射ヘッド
13 本体
14,15 受け溝
16,17 上面部
18,19 ガイドリブ
20 受容部材,吸収部材
20A 上層部材,上層域
20B 下層部材,中層域
20C 下層域
21 受容層,低密度部分
22 拡散層,高密度部分
23 前端縁
24 後端縁
37 横側縁
23A 網目状のシート
24A インク吸収剤組成物
25 インク吸収材
26 ガイド部材
27 スポンジ材料
28,29 空間
30,31 スポンジ材料片
32 境界線
33 加圧部材
33A 突条
34 底面
34A 凹溝
35 インク排出用の流路
36 到達領域
36A 領域
36B 領域
36C 領域
38 交差箇所
P 記録担体
K インク
Claims (8)
- 液滴を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドから噴射された液滴のうち液滴が付着する目的物からそれた液滴を吸収する受容部材とが対をなしている液体噴射装置であって、
前記受容部材は、前記液体噴射ヘッドから噴射された液滴を受ける受容層と、前記受容層の液体を吸収し拡散させる拡散層とにより構成される単一の材料で一体につくられ、
前記拡散層は、前記受容部材が保持部材に配置された際に、前記保持部材の底面の一部に突出する加圧部材に前記受容部材の一部が相対的に加圧されることにより、前記拡散層の密度が前記受容層の密度よりも大きく設定されることで前記加圧部材近傍に形成され、
前記加圧部材は、前記保持部材の底面に対して水平方向の断面形状が略円形状に隆起し、
前記加圧部材の頂部の周縁部に環状の突条を形成し、前記環状の突条の中央部に液体排出用の流路が配置され、
前記保持部材の底面には、前記加圧部材の近傍に前記流路とは異なる液体排出用の流路が配置されている、
ことを特徴とする液体噴射装置。 - 前記液体排出用の流路は、廃液タンクに連通されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。
- 前記受容層が収容される空間と前記拡散層が収容される空間は、インクジェット式記録装置のプラテンに形成されている請求項1または2記載の液体噴射装置。
- 前記液体排出用の流路は、インクジェット式記録装置のプラテンに形成されている請求項1乃至3記載のいずれか一項に液体噴射装置。
- 少なくとも前記受容層が顔料インクの顔料を透過させることができる密度とされている請求項1乃至4記載のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
- 前記受容部材に、浸透溶剤を含浸させた請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
- 前記受容部材に、不揮発性溶剤を含浸させた請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
- 前記受容部材に、噴射される液体の比重よりも小さな比重の不揮発性溶剤を含浸させた請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
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