JP4084140B2 - ペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法に関する。更に詳しくは、塩化水素捕捉剤として回収が容易な有機塩基化合物を用いた工業的に有利で経済的に優れたペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、アリールオキシ基がP原子と結合しているペンタエリスリトールジホスファイトは酸化防止剤、或いはUV光安定剤として実用化されており、その多岐にわたる製造方法も多数の特許、文献に記載されている。例えば、該アリールオキシ基が2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルオキシ基であるペンタエリスリトールジホスファイトの合成法として、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルジクロロホスファイトとペンタエリスリトールとの反応例が示されている(特許文献1参照)。他の例として、該アリールオキシ基が2,4−ジ−t−ブチルフェニルオキシ基であるペンタエリスリトールジホスファイトの合成法として、3,9−ジクロロペンタエリスリトールジホスファイトと2,4−ジ−t−ブチルフェノールとの反応例が示されている(特許文献2参照)。また他の例として、該アリールオキシ基がフェニルオキシ基であるペンタエリスリトールジホスファイトの合成法として、トリフェニルホスファイトとペンタエリスリトールとのエステル交換による反応例が示されている(特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、本発明の特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスファイトに関しては、該化合物自体の安定性が悪く、従来通りの製造方法では高収率で回収できないという問題があった。塩化水素捕捉剤として、有機塩基化合物の共存下、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと対応するアルコールを反応させることで、ペンタエリスリトールジホスファイトの回収率は向上するが、大量の塩化水素塩が副生するため、ペンタエリスリトールジホスファイトを単離するためには、濾過工程での該塩化水素塩の除去が必須であった。ペンタエリスリトールジホスファイトの生産コストを下げるためには、該塩化水素塩から有機塩基化合物を回収することが必要であり、これは通常、該塩化水素塩をアルカリ水溶液に溶解又は接触させた後、有機塩基化合物を抽出、濾過、蒸留等の複数の分離操作を行うことにより達成されていた。しかしながら、これまでのところ、複雑な回収工程のために回収コストが高くなり、工業的に簡単で効率的に有機塩基化合物を回収するという観点では不十分であった。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第5308901号明細書
【特許文献2】
米国特許第5917076号明細書
【特許文献3】
米国特許第3205250号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、工業的に有利な簡単な方法で、且つ経済的に優れた方法で、特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスファイトを製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記目的を達成すべく誠意検討した結果、塩化水素捕捉剤として特定の水に対する溶解度の低い有機塩基化合物を用いることによって、ペンタエリスリトールジホスファイトが高収率で得られ、さらに、有機塩基化合物の塩から工業的に容易な方法で有機塩基化合物が回収できることを見出し本発明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトと、下記式(2)で示されるアラルキルアルコールを、塩化水素捕捉剤として、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンまたはトリブチルアミンである有機塩基化合物の存在下に反応させることを特徴とする下記式(5)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法を提供するものである。
【0008】
【化8】
【0009】
【化9】
【0010】
[式中、Ar1は、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、Z1は式(3)または式(4)で示される基である。]
【0011】
【化10】
【0012】
[式中、R1およびR2は同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]
【0013】
【化11】
【0014】
[式中、R3、R4、R5およびR6は同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、炭素数7〜30の置換もしくは非置換のアラルキル基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]
【0015】
【化12】
【0016】
[式中、Ar2およびAr3は、式(2)のAr 1 で示される基である。Z2およびZ3は、式(2)のZ 1 で示される基である。]
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明におけるペンタエリスリトールジホスファイトとしては、前記式(5)においてAr2、Ar3が、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、各種クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基等であり、Z2およびZ3が前記式(3)または前記式(4)で示される。
【0022】
前記式(3)においてR 1 およびR 2 が、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、各種クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基等であり、前記式(4)においてR 3 、R 4 、R 5 およびR 6 が、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、各種クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、1−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基等である化合物を挙げる事ができる。
【0023】
なかでも、Ar2およびAr3がフェニル基、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 およびR 6 がそれぞれ水素原子、メチル基またはフェニル基である化合物が好ましい。
【0024】
具体的には、3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−メチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((3−メチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−メチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4−ジメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((3,5−ジメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4,6−トリメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0025】
3,9−ビス(((2−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4,6−トリ−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0026】
3,9−ビス(((2−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0027】
3,9−ビス(((4−ビフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((1−ナフチル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−ナフチル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((1−アントリル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−アントリル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((9−アントリル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0028】
3,9−ビス((1−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−フェニルプロピル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((ジフェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((トリフェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0029】
3−(フェニルメチル)オキシ−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−(ジフェニルメチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0030】
3−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(ジフェニルメチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(ジフェニルメチル)オキシ−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(ジフェニルメチル)オキシ−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0031】
3,9−ビス((2−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(2−メチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(3−メチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(4−メチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(2,4−ジメチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(2,6−ジメチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(3,5−ジメチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(2,4,6−トリメチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0032】
3,9−ビス((2−(2−tert−ブチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(4−tert−ブチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0033】
3,9−ビス((2−(4−ビフェニル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(1−ナフチル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(2−ナフチル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(1−アントリル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(2−アントリル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−(9−アントリル)エチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0034】
3,9−ビス((2−フェニルプロピル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−メチル−2−フェニルプロピル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,2−ジフェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,2,2−トリフェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−フェニル−2−プロピル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1,2−ジフェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1,3−ジフェニル−2−プロピル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((3−フェニル−2−ブチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(2−フェニルエチル)オキシ−9−(2−(2,6−ジメチルフェニル)エチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(2−フェニルエチル)オキシ−9−(2−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0035】
特に、3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((ジフェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
【0036】
本発明において、前記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトは、例えば、米国特許第5,103,035号明細書や特公昭61−165397号公報に記載されているとおり、三塩化リンとペンタエリスリトールとから製造することができる。生成したペンタエリスリトールジクロロホスファイトは、反応終了後の溶液または懸濁液から単離してアラルキルアルコールとの反応に用いてもよいが、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの保存安定性の観点から、溶液または懸濁液のままアラルキルアルコールとの反応に用いることが好ましい。
【0037】
本発明において、該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと反応させるアラルキルアルコールとしては、前記式(2)においてAr1が、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、各種クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基等であり、Z1が前記式(3)または前記式(4)で示され、前記式(3)においてR1およびR2が、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、各種クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基等であり、前記式(4)においてR3、R4、R5およびR6が、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、各種クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、1−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基等である化合物を挙げる事ができる。なかでもAr1がフェニル基、R1、R2、R3、R4、R5およびR6がそれぞれ水素原子、メチル基またはフェニル基である化合物が好ましい。
【0038】
具体的には、ベンジルアルコール、(2−メチルフェニル)メチルアルコール、(3−メチルフェニル)メチルアルコール、(4−メチルフェニル)メチルアルコール、(2,4−ジメチルフェニル)メチルアルコール、(2,6−ジメチルフェニル)メチルアルコール、(3,5−ジメチルフェニル)メチルアルコール、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチルアルコール、(2−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(4−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4−ジ−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4,6−トリ−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、
【0039】
(2−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(4−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(4−ビフェニル)メチルアルコール、(1−ナフチル)メチルアルコール、(2−ナフチル)メチルアルコール、(1−アントリル)メチルアルコール、(2−アントリル)メチルアルコール、(9−アントリル)メチルアルコール、
【0040】
1−フェニルエチルアルコール、1−フェニルプロピルアルコール、ジフェニルメチルアルコール、トリフェニルメチルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、2−(2−メチルフェニル)エチルアルコール、2−(3−メチルフェニル)エチルアルコール、2−(4−メチルフェニル)エチルアルコール、2−(2,4−ジメチルフェニル)エチルアルコール、2−(2,6−ジメチルフェニル)エチルアルコール、2−(3,5−ジメチルフェニル)エチルアルコール、2−(2,4,6−トリメチルフェニル)エチルアルコール、
【0041】
2−(2−tert−ブチルフェニル)エチルアルコール、2−(4−tert−ブチルフェニル)エチルアルコール、2−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)エチルアルコール、2−(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)エチルアルコール、2−(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)エチルアルコール、2−(4−ビフェニル)エチルアルコール、2−(1−ナフチル)エチルアルコール、2−(2−ナフチル)エチルアルコール、2−(1−アントリル)エチルアルコール、2−(2−アントリル)エチルアルコール、2−(9−アントリル)エチルアルコール、
【0042】
2−フェニルプロピルアルコール、2−メチル−2−フェニルプロピルアルコール、2,2−ジフェニルエチルアルコール、2,2,2−トリフェニルエチルアルコール、1−フェニル−2−プロピルアルコール、1,2−ジフェニルエチルアルコール、1,3−ジフェニル−2−プロピルアルコール、3−フェニル−2−ブチルアルコールなどが挙げられる。
【0043】
なかでも、ベンジルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、ジフェニルメチルアルコール、2−フェニルエチルアルコールが好ましい。
【0044】
該アラルキルアルコールは単一の化合物として用いるだけでなく、二種以上からなる混合物として用いることもできる。
【0045】
該アラルキルアルコールの使用量は、該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対し180モル%〜250モル%が好ましい。より好ましくは185モル%〜220モル%であり、更に好ましくは190モル%〜210モル%である。該アラルキルアルコールの使用量が180モル%未満では、該アラルキルアルコールの不足分以上に目的物のペンタエリスリトールジホスファイトの回収率が大きく低下する。該アラルキルアルコールの使用量が250モル%を超えると過剰のアラルキルアルコールを回収する工程や廃棄処理する工程の負荷が大きくなる。
【0046】
本発明に用いられる有機塩基化合物は、20℃、1気圧における水に対する溶解度が1重量%以下の有機塩基化合物が好ましく、0.1重量%以下の有機塩基化合物がさらに好ましい。水に対する有機塩基化合物の溶解度は、水と有機塩基化合物を接触させた後、水層をガスクロマトグラフィーにより分析し、有機塩基化合物量を求め算出することができる。有機塩基化合物として、20℃、1気圧における水に対する溶解度が1重量%以下の有機塩基化合物を用いると、反応により副生した有機塩基化合物の塩から有機塩基化合物を工業的に簡単な設備により回収することが容易であり、また回収コストが安価となり経済的で好ましい。なお、本発明の反応で副生する有機塩基化合物の塩としては、そのほとんどが塩酸塩であり、一部ホスホン酸塩やリン酸塩がある。
【0047】
20℃、1気圧における水に対する溶解度が1重量%以下の有機塩基化合物として、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンが、ペンタエリスリトールジホスファイトの収率が高く、且つ有機塩基化合物の塩からの有機塩基化合物の回収が容易であり好ましい。
【0048】
また、該有機塩基化合物は単一の化合物として用いるだけでなく、二種以上からなる混合物として用いることもできる。
【0049】
該有機塩基化合物の使用量は、該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと該アラルキルアルコールとの反応により発生する塩化水素1当量に対して、0.8〜2.0当量で用いることが好ましい。より好ましくは0.9〜1.5当量であり、更に好ましくは0.95〜1.25当量である。該有機塩基化合物の使用量が0.8当量未満では、該有機塩基化合物の不足分以上に目的物のペンタエリスリトールジホスファイトの回収率が大きく低下する。該有機塩基化合物の使用量が2.0当量を超えると過剰の有機塩基化合物を回収する工程や廃棄処理する工程の負荷が大きくなる。
【0050】
本発明の反応は、不活性雰囲気下で行うことが望ましい。不活性雰囲気とはペンタエリスリトールジホスファイトを変性しうる酸素ガス、湿気等が実質的に無い状態の事である。系内の酸素濃度について具体的には5%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは100ppm以下であることが望ましい。具体的な例としては、反応系内を窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換後、該不活性ガス雰囲気下で反応を行う方法等が挙げられる。該酸素濃度はJIS B 7983に規定のジルコニア式分析法等で測定する事ができる。
【0051】
また本発明のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法においては、反応に関与しない不活性な溶媒を用いることが好ましい。該溶媒としては、副生した有機塩基化合物の塩が溶解せず、生成したペンタエリスリトールジホスファイトが溶解するものが好ましい。使用した有機塩基化合物と生成したペンタエリスリトールジホスファイトの性状によるため、一概に言えないが、例を挙げれば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸エチル、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。なかでも、ヘキサン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が好ましく、特に、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましい。
【0052】
本発明における有機塩基化合物の存在下において、前記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトと前記式(2)で示されるアラルキルアルコールとを反応させる方法は特に限定されない。該有機塩基化合物と該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとの混合物に該アラルキルアルコールを添加して反応させてもよいし、該アラルキルアルコールに該有機塩基化合物と該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとの混合物を添加してもよい。該有機塩基化合物と該アラルキルアルコールとの混合物に該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトを添加してもよいし、該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに該有機塩基化合物と該アラルキルアルコールとの混合物を添加して反応させてもよい。
【0053】
また、反応の際に該ペンタエリスリトールジクロロホスファイト、該アラルキルアルコール、該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと該有機塩基化合物との混合物、または該アラルキルアルコールと該有機塩基化合物との混合物はそのまま反応に用いてもよく、反応系に不活性な溶媒に溶解もしくは分散させて用いてもよい。また、該有機塩基化合物もしくはその分散液またはその溶液に、該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトもしくはその分散液またはその溶液と、該アラルキルアルコールもしくはその分散液またはその溶液を添加することで反応させることもできる。
【0054】
本発明の該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと該アラルキルアルコールとの反応における温度条件は、−20℃〜100℃の範囲が好ましい。この温度範囲では、ペンタエリスリトールジホスファイトの分解が少なく、反応速度の低下が少なく、生産効率に優れる。更に好ましくは、−10℃〜80℃であればよい。
【0055】
本発明の該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと該アラルキルアルコールとの反応時間は、1分〜500分が好ましい。更に好ましくは5分〜300分である。1分未満で反応させると単位時間当りの発熱量が大きく、反応温度を制御することが困難となり、また、熱交換器や冷却器等の設備負荷が大きくなる。一方、500分を越えた時間での反応は生産効率の観点から不利となる。
【0056】
本発明の反応において、反応系内の含水率は2000ppm以下が好ましい。より好ましくは1000ppm以下であり、更に好ましくは500ppm以下であり、特に好ましくは300ppm以下である。反応系内の含水率が2000ppmを越えるとペンタエリスリトールジクロロホスファイトと水との反応で副生成物が生成する割合以上に目的物の回収率低下の割合が大きくなる。
【0057】
本発明の反応で生成したペンタエリスリトールジホスファイトは、反応系内で副生した有機塩基化合物の塩を反応系外に除去することによって回収できる。また、さらに必要に応じて、アルカリ水溶液で洗浄することによって精製できる。
【0058】
有機塩基化合物の塩の除去方法としては、1μm〜100μmのフィルターを使用した自然濾過、加圧濾過、減圧濾過および遠心濾過が好ましく用いられる。これらは、本発明の反応に使用した溶媒や有機塩基化合物、生成したペンタエリスリトールジホスファイトの種類に応じて選定される。
【0059】
ペンタエリスリトールジホスファイトの洗浄に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液が好ましく、状況に応じて水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液や炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩の水溶液も好適に用いる事ができる。アルカリ水溶液の濃度については特に限定はしないが、洗浄後のアルカリ水溶液のpHが7.5〜13.8であることが好ましい。
【0060】
また本発明のペンタエリスリトールジホスファイトの回収操作は不活性雰囲気下で行う事が好ましい。不活性雰囲気とはペンタエリスリトールジホスファイトを変性しうる酸素ガス、湿気等が実質的に無い状態の事である。系内の酸素濃度について具体的には5%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは100ppm以下であることが望ましい。具体的な例としては、反応系内を窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換後、該不活性ガス雰囲気下で反応を行う方法等が挙げられる。該酸素濃度はJIS B 7983に規定のジルコニア式分析法等で測定する事ができる。
【0061】
本発明で得られたペンタエリスリトールジホスファイト中のアラルキルアルコールの含有量は少ない方がよく、多くなるとペンタエリスリトールジホスファイトの保存安定性が悪くなる傾向にある。具体的には本発明のペンタエリスリトールジホスファイトに対しアラルキルアルコール含有率は5000ppm以下が好ましい。より好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下である。
【0062】
本発明で得られたペンタエリスリトールジホスファイトの31P NMRスペクトルにおいて、4ppm〜10ppmに観測されるピークは少ない方がよく、該ピークが多くなると、ペンタエリスリトールジホスファイトの保存安定性が悪くなる。具体的には該ピークの面積強度比が全ピークに対して5%以下が好ましい。より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。
【0063】
また、本発明の反応で副生した有機塩基化合物の塩から、有機塩基化合物の回収する方法としては、濾別した有機塩基化合物の塩をアルカリ水溶液で中和し、アルカリ水層から分離する方法が挙げられる。
【0064】
中和に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液が好ましく、状況に応じて炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩の水溶液も好適に用いる事ができる。アルカリ水溶液の濃度については特に限定はしないが、処理後のアルカリ水溶液のpHが7.5〜13.8であることが好ましい。
【0065】
アルカリ水層から有機塩基化合物を分離する方法は、有機塩基化合物の性状によって異なる。例えば、有機塩基化合物が常温で液体の場合は、静置によって分液するため容易に分離可能である。この時、必要ならば、有機塩基化合物と任意に混和し、水に対する溶解度が低い溶媒を使用してもよい。該溶媒として、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。
【0066】
一方、有機塩基化合物が常温で固体の場合は、濾過によって容易に分離可能である。
【0067】
本発明によって回収された有機塩基化合物は、高純度で含水量が低いため、本発明の反応にそのまま再使用することができる。また、回収された有機塩基化合物は、必要ならば蒸留、脱水等、さらに精製して本発明の反応に再使用することができる。かかる回収した有機塩基化合物を用いて製造したペンタエリスリトールジホスファイトは、市販の高純度の有機塩基化合物を用いて製造したペンタエリスリトールジホスファイトと同等の品質となる。したがって、工業的に生産性や環境面から回収した有機塩基化合物が好適に使用される。
【0068】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を詳述するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
(1)中間体(ペンタエリスリトールジクロロホスファイト)および生成物(ペンタエリスリトールジホスファイト)の純度
Varian社製300MHzNMR測定装置を用い、重クロロホルムを溶媒とし、室温にて31P NMR測定を行い、得られたスペクトル中の全ピ−クに対する目的物ピ−クの相対面積強度比から求めた。
(2)有機塩基化合物の純度
島津製ガスクロマトグラフィー(GC−14A)を用い、検出器としてFID、カラムとしてPEG−20Mを用いてGC測定を行い、目的物ピ−クの面積強度比から純度を求めた。
【0069】
実施例で使用した各試薬は以下に示したとおりである。
(1)ペンタエリスリトール
広栄化学工業株式会社のペンタリット−S(純度99.4%)を、予め乾燥させたものを使用した。含水率は38ppmであった。
(2)三塩化リン
キシダ化学株式会社から購入した純度99%以上の三塩化リンを、予め窒素気流下で蒸留したものを用いた。
(3)ベンジルアルコール
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は三菱化学株式会社製 電量滴定式水分測定装置 CA−06型を用いてカールフィッシャー法により求めた。含水率は5ppmであった。
(4)ピリジン
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は三菱化学株式会社製 電量滴定式水分測定装置 CA−06型を用いてカールフィッシャー法により求めた。含水率は15ppmであった。
(5)N,N−ジメチルアニリン
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は三菱化学株式会社製 電量滴定式水分測定装置 CA−06型を用いてカールフィッシャー法により求めた。含水率は3ppmであった。
(6)トリブチルアミン
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は三菱化学株式会社製 電量滴定式水分測定装置 CA−06型を用いてカールフィッシャー法により求めた。含水率は2ppmであった。
(7)トルエン
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は三菱化学株式会社製 電量滴定式水分測定装置 CA−06型を用いてカールフィッシャー法により求めた。含水率は2ppmであった。
【0070】
[実施例1]
(a)ペンタエリスリトールジホスファイトの合成
撹拌装置、還流冷却管、滴下漏斗、オイルバスを備えた1L三つ口フラスコに、ペンタエリスリトール54.5g(400mmol)、ピリジン1.6g(20mmol)、トルエン160mLを仕込んだ。窒素気流下、室温で滴下漏斗より三塩化リン113.3g(825mmol)を30分かけて滴下し、その後60℃に加熱し、30分更に反応させた。発生する塩化水素は、還流冷却管を通して反応系外の水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。その後放冷し、生じた白色懸濁液について31P NMRを測定したところ、式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトが97%の選択率で検出された。
【0071】
続いて、該白色懸濁液に、トルエン160mL、N,N−ジメチルアニリン101.8g(840mmol)を加えた。窒素気流下、15℃で、ベンジルアルコール86.5g(800mmol)とトルエン80mLの溶液を約1時間かけて滴下し、20℃で30分攪拌した。生じた白色懸濁液について31P NMRを測定したところ、3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(以下、ペンタエリスリトールジベンジルホスファイトと呼ぶ)が93%の選択率で検出された。
【0072】
反応混合物をグラスフィルターを用いて窒素気流下でろ過し、グラスフィルター上の白色固体を400mLのトルエンで洗浄することで約150gの白色固体と濾液を得た。窒素雰囲気下、この濾液を1Nの水酸化ナトリウム水溶液800mLで1回、同量の純水で2回洗浄した後、10gの硫酸マグネシウムを用いて溶液を乾燥した。窒素気流下で硫酸マグネシウムを濾別した後、濾液をエバポレーターで濃縮し、60℃にて8時間真空乾燥した。31P NMR測定したところ、ペンタエリスリトールジベンジルホスファイトであることがわかった。収量は151.5gであり、収率は原料のペンタエリスリトールに対して93%であり、31P NMR測定による純度は96%であった。
(b)有機塩基化合物の回収
次に、濾別した白色固体に1Nの水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを加えて溶解させた。分液後上層を取り出し、13kPaで減圧蒸留したところ、純度99%のN,N−ジメチルアニリンが97.5g(回収率96%)で得られた。
(c)回収アミンの再使用
得られたN,N−ジメチルアニリン97.5gを用いて、(a)と同様の仕込モル比及び操作でペンタエリスリトールジベンジルホスファイトの製造を行ったところ、純度97%のペンタエリスリトールジベンジルホスファイトが92%の回収率で得られた。
【0073】
[実施例2]
(a)ペンタエリスリトールジホスファイトの合成
撹拌装置、還流冷却管、滴下漏斗、オイルバスを備えた1L三つ口フラスコに、ペンタエリスリトール54.5g(400mmol)、ピリジン1.6g(20mmol)、トルエン160mLを仕込んだ。窒素気流下、室温で滴下漏斗より三塩化リン115.0g(837mmol)を30分かけて滴下し、その後60℃に加熱し、30分更に反応させた。発生する塩化水素は、還流冷却管を通して反応系外の水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。その後放冷し、生じた白色懸濁液について31P NMRを測定したところ、式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトが95%の選択率で検出された。
【0074】
続いて、該白色懸濁液に、トルエン160mL、トリブチルアミン156.5g(844mmol)を加えた。窒素気流下、15℃で、ベンジルアルコール87.0g(805mmol)とトルエン80mLの溶液を約1時間かけて滴下し、20℃で30分攪拌した。生じた白色懸濁液について31P NMRを測定したところ、ペンタエリスリトールジベンジルホスファイトが91%の選択率で検出された。
【0075】
反応混合物をグラスフィルターを用いて窒素気流下でろ過し、グラスフィルター上の白色固体を400mLのトルエンで洗浄することで約200gの白色固体と濾液を得た。窒素雰囲気下、この濾液を1Nの水酸化ナトリウム水溶液800mLで1回、同量の純水で2回洗浄した後、10gの硫酸マグネシウムを用いて溶液を乾燥した。窒素気流下で硫酸マグネシウムを濾別した後、濾液をエバポレーターで濃縮し、60℃にて8時間真空乾燥した。31P NMR測定したところ、ペンタエリスリトールジベンジルホスファイトであることがわかった。収量は149.5gであり、収率は原料のペンタエリスリトールに対して91%であり、31P NMR測定による純度は97%であった。
(b)有機塩基化合物の回収
次に、濾別した白色固体に1Nの水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを加えて溶解させた。分液後上層を取り出し、13kPaで減圧蒸留したところ、純度99%のトリブチルアミンが150.0g(回収率96%)で得られた。
(c)回収アミンの再使用
得られたトリブチルアミン150.0gを用いて、(a)と同様の仕込モル比及び操作でペンタエリスリトールジベンジルホスファイトの製造を行ったところ、純度97%のペンタエリスリトールジベンジルホスファイトが91%の回収率で得られた。
【0076】
[比較例1]
(a)ペンタエリスリトールジホスファイトの合成
実施例1と同様に、式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトを合成し、97%の選択率で得た。
【0077】
続いて、N,N−ジメチルアニリンの代わりにピリジンを用いて、実施例1と同様の操作でペンタエリスリトールジベンジルホスファイトを合成したところ、純度96%のペンタエリスリトールジベンジルホスファイトが93%の回収率(152.5g)で得られた。また、約110gのピリジン塩が白色固体として濾別された。
(b)有機塩基化合物の回収
次に、実施例1と同様に、濾別した白色固体に1Nの水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを加えて溶解させたところ、混和し、静置しても二層に分離せず、ピリジンは回収できなかった。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、有機塩基化合物の回収が容易で回収率が高く、さらに回収した有機塩基化合物を用いても市販品の有機塩基化合物を用いた場合と同等の純度のペンタエリスリトールジホスファイトが同等の収率で得られるため、本発明の製造方法は極めて生産性に優れ、環境面およびコスト面からも有利であることは明らかであり、工業的に優れた製造方法である。
Claims (4)
- 下記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトと、下記式(2)で示されるアラルキルアルコールを、塩化水素捕捉剤として、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンまたはトリブチルアミンである有機塩基化合物の存在下に反応させることを特徴とする下記式(5)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
- 下記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトと、下記式(2)で示されるアラルキルアルコールを、塩化水素捕捉剤として、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンまたはトリブチルアミンである有機塩基化合物の存在下に反応させ、反応混合物から濾別した有機塩基化合物の塩をアルカリ水溶液で中和し、分離した有機塩基化合物を回収し、回収した有機塩基化合物をペンタエリスリトールジホスファイトの製造に再使用することを特徴とする下記式(5)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
- 前記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトと前記式(2)で示されるアラルキルアルコールとの反応により発生する塩化水素1当量に対して、該有機塩基化合物を0.8〜2.0当量使用する請求項1または2記載のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
- 式(2)においてAr 1 はフェニル基であり、式(3)においてR 1 およびR 2 は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、式(4)においてR 3 、R 4 、R 5 およびR 6 は水素原子、メチル基またはフェニル基である請求項1または2記載のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
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