JP2004018409A - ペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法 - Google Patents

ペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法 Download PDF

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pentaerythritol
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Seiichi Tanabe
田辺 誠一
Takatsune Yanagida
柳田 高恒
Kazuyuki Tando
丹藤 和志
Koichi Imamura
今村 公一
Shinichi Ando
安藤 真一
Yutaka Takeya
竹谷 豊
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Teijin Ltd
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Teijin Chemicals Ltd
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Abstract

【課題】工業的に有利な生産性に優れた方法でかつ保存安定性に優れた高純度のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法及び好適な回収方法を提供する。
【解決手段】三塩化リンとペンタエリスリトールから得られる式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液を、不活性雰囲気下で40〜120℃に加熱し、次いで、塩化水素捕捉剤としての有機塩基化合物の存在下、温度−20℃から100℃の条件下で、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液と式(2)で示されるアラルキルアルコールとを不活性雰囲気下で反応させることを特徴とする式(3)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
Figure 2004018409

Figure 2004018409

Figure 2004018409

[式中、Ar,ArおよびArは、炭素数6〜20のアリール基である。また、R、R、RおよびRは、水素原子もしくは炭素数6〜20のアリール基、または炭素数1〜20の炭化水素基である。]
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法に関する。更に詳しくは、難燃剤、結晶核剤、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤として使用できるペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、アリールオキシ基がリン原子と結合しているペンタエリスリトールジホスファイトは酸化防止剤、或いはUV光安定剤として実用化されており、その多岐にわたる製造方法も多数の特許、文献に記載されている。例えば、米国特許5,308,901号には該アリールオキシ基が2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルオキシ基であるペンタエリスリトールジホスファイトの合成法として、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルジクロロホスファイトとペンタエリスリトールとの反応例が示されている。他の例として、米国特許5,917,076号には該アリールオキシ基が2,4−ジ−t−ブチルフェニルオキシ基であるペンタエリスリトールジホスファイトの合成法として、3,9−ジクロロペンタエリスリトールジホスファイトと2,4−ジ−t−ブチルフェノールとの反応例が示されている。3,9−ジクロロペンタエリスリトールジホスファイトは三塩化リンとペンタエリスリトールから合成することができ、例えば米国特許5,103,035号、特公昭61−165397号に述べられている。また他の例としてUS3205250号には該アリールオキシ基がフェニルオキシ基であるペンタエリスリトールジホスファイトの合成法として、トリフェニルホスファイトとペンタエリスリトールとのエステル交換による反応例が示されている。
【0003】
しかしながら本発明の特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスファイトに関しては、該化合物自体の安定性が悪く必ずしも従来通りの製造方法ではかかる該化合物を高収率で回収できないという問題があった。また同様に該化合物自体の安定性が悪いため、保存中に変性する事例が多く、保存性を高めるような知見は殆ど無いに等しい状況であった。従って、該化合物の製造法に関しては、実質的に検討がなされておらず、製造法の詳細や収率および純度向上方法について記載した文献等がなく、工業的な製造法の見地からも種々の問題が内在していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、工業的に有利な生産性に優れた方法でかつ保存安定性に優れた高純度のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法及び好適な回収方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記目的を達成すべく誠意検討した結果、特定の製造方法、及び回収方法により高純度でかつ保存安定性にも優れるペンタエリスリトールジホスファイトが高収率で得られることを見出し本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、三塩化リンとペンタエリスリトールから得られる下記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液を、不活性雰囲気下で40〜120℃に加熱し、次いで、塩化水素捕捉剤としての有機塩基化合物の存在下、温度−20℃から100℃の条件下で、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液と下記式(2)で示されるアラルキルアルコールとを不活性雰囲気下で反応させることを特徴とする下記式(3)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法を提供するものである。
【0007】
【化4】
Figure 2004018409
【0008】
【化5】
Figure 2004018409
【0009】
[式中、Arは、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]
【0010】
【化6】
Figure 2004018409
【0011】
[式中、ArおよびArは、同一または異なっていてもよく、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]
本発明の該ペンタエリスリトールジホスファイトとしては、一般式(3)においてAr、Arが、フェニル基、各種キシリル基、各種トルイル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等であり、R、R、RおよびRが、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、各種クメニル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等である化合物を挙げる事ができる。好ましくは、Ar、Arが、フェニル基、R、R、RおよびRが、水素原子、メチル基、フェニル基である。
【0012】
本発明のペンタエリスリトールジホスファイトとして、具体的には、3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−メチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((3−メチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−メチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4−ジメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((3,5−ジメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4,6−トリメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4,6−トリ−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−ビフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((1−ナフチル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−ナフチル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((1−アントリル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−アントリル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((9−アントリル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−メチル−1−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((ジフェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((トリフェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−(ジフェニルメチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(ジフェニルメチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(ジフェニルメチル)オキシ−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(ジフェニルメチル)オキシ−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0013】
特に、3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((ジフェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
【0014】
本発明に用いられる三塩化リンは、その純度が98%以上であることが望ましい。高純度の三塩化リンは、例えば市販品を不活性雰囲気下で蒸留することにより得られる。三塩化リンの純度はガスクロマトグラフィーで定量することができ、またJIS K8404−1887に示される様に、化学反応での定量が可能である。
【0015】
本発明のペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成に用いられるペンタエリスリトールは、その純度が98%以上であり、かつ、含水率が1000ppm以下であることが望ましい。高純度のペンタエリスリトールは、主として市販品を水から再結晶して、高分子量の不純物を除去することにより得ることができる。また、低含水率のペンタエリスリトールは、反応に用いる直前に加熱乾燥させることにより得ることができる。ペンタエリスリトールの純度はガスクロマトグラフィーで定量可能であり、JIS K1510−1993に示される様に、化学反応での定量化も可能である。ペンタエリスリトールの含水率は、カールフィッシャー法で定量可能であり、前記JIS規格に示されている乾燥減量からも定量が可能である。
【0016】
本発明のペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成におけるペンタエリスリトールに対する三塩化リンのモル比は、195モル%〜240モル%が好ましい。より好ましくは200モル%〜220モル%である。
【0017】
本発明のペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成に使用する溶媒としては、炭化水素、ハロゲン含有炭化水素および含酸素炭化水素からなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる不活性溶媒が挙げられる。かかる溶媒はペンタエリスリトール、三塩化リン及び/又は有機窒素含有塩基化合物と反応しない不活性な溶媒であれば良い。中でも反応の進行を潤滑にし、原料、及び、反応生成物が溶解するものが望ましい。更には本発明で得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液または懸濁液を原料とする反応においても不活性なものが好ましい。
【0018】
この様なものとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸エチル、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。好ましくは、ヘキサン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。更に好ましくは、ヘキサン、ドデカン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが挙げられる。
【0019】
これらの溶媒の含水率は1000ppm以下であることが望ましい。この含水率以上では、原料の三塩化リンの加水分解が、特に加熱条件下では促進することが認められるため好ましくない。かかる観点から、反応系の含水率としては、500ppm以下、さらに望ましくは、200ppm以下が好ましい。
【0020】
本発明のジクロロホスファイトの合成を効率よく進行させるためには、触媒が必要である。かかる触媒として、リン−塩素結合と反応しない有機塩基化合物が好ましく用いられる。本発明に用いられるリン−塩素結合と反応しない有機塩基化合物とは、例えば窒素−水素結合及び、または酸素−水素結合を有しない有機塩基化合物である。これらの結合を有しないとは、該化合物中の窒素−水素結合及び酸素−水素結合量が5000ppm以下好ましくは1000ppm以下さらに好ましくは500ppm以下しか含まれていないということである。
【0021】
本発明のペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成におけるリン−塩素結合と反応しない有機塩基化合物としては、脂肪族又は芳香族の、非環状又は環状アミン類、アミド類が挙げられる。これらの化合物の一例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、メチルジエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリフェネチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラエチルメタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、1−メチルピロール、1−エチルピロール、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、オキサゾール、チアゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−メチルピラゾール、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、N,N−ジエチル−4−アミノピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、キヌクリジン、キナゾリン、9−メチルカルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルプロパンアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドンなどが挙げられる。
【0022】
中でもトリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−メチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、4−ビニルピリジンとスチレンの共重合体が好ましく、特にトリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。また、上記の化合物がポリマー中に化学的に結合された化合物でもよい。例えばポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジンとスチレンの共重合体などが挙げられる。該有機塩基化合物は単一の化合物として用いるだけでなく、二種以上からなる混合物として用いることもできる。
【0023】
該有機塩基化合物の存在割合は、三塩化リンに対して0.1モル%〜100モル%である。実用上、この量比は、1〜20モル%が望ましい。
【0024】
本発明のペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成における反応系内の温度は、−10℃〜90℃、より好ましくは、0℃〜80℃になるように保つことが好ましい。
【0025】
本発明のペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成においては、三塩化リンとペンタエリスリトールとの反応方法として様々な方法が適用できる。例えばペンタエリスリトールの懸濁液に三塩化リンを滴下する、三塩化リンにペンタエリスリトールの懸濁液を滴下する、三塩化リンにペンタエリスリトール粉末を添加した後に溶媒を添加する等の方法が挙げられる。中でも、ペンタエリスリトールの懸濁液に三塩化リンを滴下することが作業効率の点から好ましい。
【0026】
本発明のペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成では、ペンタエリスリトールに対して4倍モル量の塩化水素が発生する。よってこのペンタエリスリトールジクロロホスファイトを反応中間体として使用する際は、過剰の塩化水素を除去することが必要となる。
【0027】
本発明では、次の反応に移行するに際して、不活性雰囲気下で、事前に該溶液または懸濁液を40〜120℃、さらに好ましくは、50〜100℃で加熱処理することで、過剰の塩化水素を除去することができる。更に、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトを溶液または懸濁液から単離せずに、そのまま次の反応に用いることで、不安定なペンタエリスリトールジクロロホスファイトの分解を抑制することができる。
【0028】
得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液の31PNMRスペクトルにおいて、4ppm〜10ppmに観測されるピークは少ない方がよい。該ピークが多くなると、ペンタエリスリトールジクロロホスファイト及び、アルキルアルコールとの反応の結果得られるペンタエリスリトールジホスファイトの保存安定性が悪くなるので好ましくない。具体的には該ピークの面積強度比が全ピークに対して10%以下が好ましい。より好ましくは、5%以下、更に好ましくは1%以下であるのがよい。
【0029】
本発明において、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと反応させるアラルキルアルコールとしては、一般式(2)においてArが、フェニル基、各種キシリル基、各種トルイル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等であり、RおよびRが、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、各種クメニル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等である化合物を挙げる事ができる。好ましくは、Arが、フェニル基、R、Rが、水素原子、メチル基、フェニル基である。
【0030】
特に、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと反応させるアラルキルアルコール類の具体例として、ベンジルアルコール、(2−メチルフェニル)メチルアルコール、(3−メチルフェニル)メチルアルコール、(4−メチルフェニル)メチルアルコール、(2,4−ジメチルフェニル)メチルアルコール、(2,6−ジメチルフェニル)メチルアルコール、(3,5−ジメチルフェニル)メチルアルコール、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチルアルコール、(2−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(4−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4−ジ−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4,6−トリ−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(4−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(4−ビフェニル)メチルアルコール、(1−ナフチル)メチルアルコール、(2−ナフチル)メチルアルコール、(1−アントリル)メチルアルコール、(2−アントリル)メチルアルコール、(9−アントリル)メチルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、1−メチル−1−フェニルエチルアルコール、ジフェニルメチルアルコール、トリフェニルメチルアルコールが挙げられる。中でも、ベンジルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、ジフェニルメチルアルコールが好ましい。
【0031】
該アラルキルアルコールは単一の化合物として用いるだけでなく、二種以上からなる混合物として用いることもできる。
【0032】
該アラルキルアルコールの使用量は、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対し180モル%〜250モル%である。好ましくは185モル%〜220モル%である。更に好ましくは190モル%〜210モル%である。該アラルキルアルコールの使用量が180モル%未満だと該アラルキルアルコールの不足分以上に目的物のペンタエリスリトールジホスファイトの回収率が大きく低下する。該アラルキルアルコールの使用量が250モル%を超えると過剰のアラルキルアルコールを回収する工程や廃棄処理する工程の負荷が大きくなり、工業的に好ましくない。
【0033】
本発明における式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトと式(2)で示されるアラルキルアルコールとを反応させる際に用いる有機塩基化合物は、上述と同様にリン−塩素結合と反応しない有機塩基化合物である。該有機塩基化合物はペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成時に触媒として用いられるものと同一でも異なっていても良く、好適には同一の有機塩基化合物である。
【0034】
式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトと式(2)で示されるアラルキルアルコールとを反応させる際に用いる該有機塩基化合物は、式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対して180モル%〜400モル%用いることが好ましい。
【0035】
本発明の該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと該アラルキルアルコールとの反応においては、該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液もしくは懸濁液に用いている溶媒とは別に、反応に関与しない不活性な溶媒を追加して用いてもよい。該溶媒としては特に限定しないが、例を挙げれば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸エチル、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。
【0036】
好ましくは、ヘキサン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。更に好ましくは、ヘキサン、ドデカン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが挙げられる。これらの溶媒は単一又は二種以上の混合物として用いることができる。
【0037】
本発明における有機塩基化合物の存在下において式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液または懸濁液と式(2)で示されるアラルキルアルコールとを反応させる方法は特に限定されない。例えば、該有機塩基化合物と該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液または懸濁液とを混合し、該アラルキルアルコールを添加して反応させても良いし、該アラルキルアルコールに、該有機塩基化合物と該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとの混合溶液又は懸濁液を添加しても良い。また、該有機塩基化合物と該アラルキルアルコールとの混合物に該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液または懸濁液を添加する方法、該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液または懸濁液に、該有機塩基化合物と該アラルキルアルコールとの混合物を添加する方法等が挙げられる。
【0038】
該アラルキルアルコールと該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとの反応における温度条件は−20℃〜100℃の範囲である。更に好ましくは、−10℃〜80℃である。−20℃未満だと反応速度が低下し、生産効率の低下をまねき好ましくない。一方、100℃を越えた温度で反応させると目的物の分解等で目的物の回収率低下を引き起こすので好ましくない。また、反応は常圧下に行なうことが好ましい。
【0039】
該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと該アラルキルアルコールとの反応時間はとくに規定しないが、1分〜500分かけて反応させるのが好ましい。更に好ましくは5分〜300分である。1分未満で反応させると単位時間当りの発熱量が大きく、反応温度を制御することが困難となるだけでなく、熱交換器や冷却器等の設備負荷が大きくなり好ましくない。一方、500分を越えた時間での反応は生産効率の観点から好ましくない。
【0040】
本発明のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法における反応系内の含水率は2000ppm以下が好ましい。より好ましくは1000ppm以下であり、更に好ましくは500ppm以下であり、特に好ましくは300ppm以下である。反応系内の含水率が2000ppmを越えるとペンタエリスリトールジクロロホスファイトと水との反応で副生成物が生成する割合以上に目的物の回収率低下の割合が大きくなるので好ましくない。
【0041】
本発明において、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成時及びペンタエリスリトールジホスファイトの合成時は不活性雰囲気下に保つことが必要である。不活性雰囲気とは本発明で用いる三塩化リン、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールジクロロホスファイト、アラルキルアルコール、有機塩基化合物や目的物のペンタエリスリトールジホスファイトを変性しうる酸素ガス、湿気、塩素ガス等が無い状態の事である。かかる目的のためには、反応系内を窒素、アルゴン等の不活性気体で置換後、反応を不活性雰囲気下にて行えばよい。また、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成時においては、該不活性気体が反応系外に出ることで、発生する塩化水素を除去できるので、不活性気体を反応系内に滞留させるよりも反応系内を流す方が好ましい。
【0042】
本発明におけるペンタエリスリトールジホスファイトの回収方法としては、反応系内で副生した塩化水素塩を反応系外に除去した後、アルカリ水溶液で洗浄処理する方法が挙げられる。また本発明のペンタエリスリトールジホスファイトの回収操作は不活性雰囲気下で行う事が好ましい。
【0043】
塩化水素塩の除去方法としては、溶媒の使用の有無や目的物の性質等、様々な条件に依存するため一概には言えないが、一例を挙げると、反応溶媒としてトルエンを使用した場合、通常、副生した塩化水素塩はトルエンに実質的に不溶となるため、ろ過等の操作で取り除く事ができる。
【0044】
塩化水素塩の除去後の洗浄に用いるアルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液が好ましいが、状況に応じて水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液や炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩の水溶液も好適に用いる事ができる。アルカリ水溶液の濃度については特に限定はしないが、洗浄後のアルカリ水溶液のpHが7以上であることが好ましい。またペンタエリスリトールジホスファイトのアルカリ水溶液洗浄後は、必ずしも必須ではないが、更に水洗浄を行いペンタエリスリトールジホスファイト中の残留アルカリ成分等を減らした方が好ましい。
【0045】
本発明で得られたペンタエリスリトールジホスファイト化合物、好適には上記洗浄処理を施したペンタエリスリトールジホスファイト化合物は溶液状態で得られる。また、かかる溶液から溶媒を除去し粉粒体等の固形物として得ることができる。
【0046】
本発明で得られたペンタエリスリトールジホスファイト化合物溶液または固形物は、いずれにしてもアラルキルアルコールの含有量は少ない方がよく、多くなるとペンタエリスリトールジホスファイトの保存安定性が悪くなる。具体的には本発明のペンタエリスリトールジホスファイト化合物に対しアラルキルアルコール含有率は5000ppm以下であることが好ましい。より好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下である。
【0047】
また、本発明で得られたペンタエリスリトールジホスファイト化合物の31P NMRスペクトルにおいて、4ppm〜10ppmに観測されるピークは少ない方がよく、該ピークが多くなると、ペンタエリスリトールジホスファイト化合物溶液または固形物の保存安定性が悪くなるので好ましくない。具体的には該4ppm〜10ppmに観測されるピークの面積強度比がペンタエリスリトールジホスファイト化合物の全ピークに対して2%以下であることが好ましい。より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。
【0048】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を詳述するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各種特性の測定は以下の方法で行った。
(1)原料および生成物の純度
Varian社製300MHzNMR測定装置を用い、重クロロホルムもしくは重ジメチルスルホキシドを溶媒とし、室温にて31P NMR測定を行いスペクトル中の全ピークに対する目的物のピークの相対強度から求めた。
(2)含水率
三菱化学株式会社製 電量滴定式水分測定装置 CA−06型を用いて電量滴定により試薬の含水率を求めた。使用したそれぞれの試薬の含水率とその使用量から反応系内の含水率を求めた。
(3)アラルキルアルコール残量
HPLC装置としてWaters社製Separations Module2690、検出器としてWaters社製Dual λ AbsorbanceDetecter 2487、カラムとして野村化学製ODS−7を3本、溶離液として乾燥アセトニトリル、測定温度40℃にてHPLC測定を行い、アラルキルアルコールのピーク強度からアラルキルアルコールの残量を求めた。
(4)純度保持率
目的化合物を乾燥窒素雰囲気下にて密封し、2週間静置した後に純度を31P NMR測定により求め、次式により純度保持率を求めた。
純度保持率=[保存後の純度]/[保存前の純度]×100
また、実施例に用いた試薬類は和光純薬株式会社の特級品を適宜乾燥して用いた。
【0049】
[実施例1]
滴下漏斗、撹拌翼、還流冷却管、窒素注入口を取り付けた500mLの三口フラスコに乾燥窒素を流しながらオイルバスで120℃に加熱し、反応器中の水を除去した。乾燥窒素を流しながら反応器を室温まで冷却した後、ペンタエリスリトール27.38g(201.1mmol)、ピリジン0.79g(10.0mmol)、トルエン80mLを三口フラスコに加えた。乾燥窒素気流下、室温で滴下漏斗より三塩化リン57.01g(415.2mmol)を約20分かけて滴下し、そのまま1時間攪拌した。その後60℃に加熱し、更に30分攪拌した後室温まで放冷した。発生する塩化水素は、還流冷却管を通して反応系外の水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。
【0050】
生じた白色懸濁液について31P NMRを測定したところ、3,9−ジクロロ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(以下、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと呼ぶ)が97%の選択率で検出された。
【0051】
続いて、該白色懸濁液に、トルエン80mL、ピリジン33.66g(425.5mmol)を加えた。乾燥窒素気流下、15℃で、ベンジルアルコール43.36g(401.0mmol)とトルエン41mLの溶液を約50分かけて滴下し、20℃で30分攪拌した。ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対するピリジン量比、ベンジルアルコール量比はそれぞれ218モル%、206モル%である。また、用いた試薬の含水率、使用量から反応系内の含水率は11ppmと見積もられた。
【0052】
生じた白色懸濁液について31P NMRを測定したところ、3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(以下、ペンタエリスリトールジベンジルホスファイトと呼ぶ)が95%の選択率で検出された。
【0053】
反応混合物をグラスフィルターを用いて乾燥窒素気流下でろ過し、グラスフィルター上の白色固体をトルエンで洗浄することで濾液を得た。窒素雰囲気下、この濾液を0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液400mLで1回、同量の純水で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムを用いて溶液を乾燥した。乾燥窒素気流下で硫酸マグネシウムを濾別した後、濾液をエバポレーターで濃縮したところ、白色固体が得られた。この白色固体を60℃にて8時間真空乾燥し、78.8gの白色粉末を得た。31P NMR測定により、得られた白色粉末はペンタエリスリトールジベンジルホスファイトであることがわかった。収率は原料のペンタエリスリトールに対して95%であり、31P NMR測定による純度は97%、4ppm〜10ppmのピークの強度比は0.5%であった。生成物中のベンジルアルコール残量は100ppmであった。得られた化合物の純度保持率は100%であった。
【0054】
以上のように、本発明の方法により目的物であるペンタエリスリトールジホスファイトを高純度・高収率で得ることができることが分かる。また、得られた生成物は保存安定性にも優れていることが分かる。
【0055】
[実施例2]
滴下漏斗、撹拌翼、還流冷却管、窒素注入口を取り付けた500mLの三口フラスコに乾燥窒素を流しながらオイルバスで120℃に加熱し、反応器中の水を除去した。乾燥窒素を流しながら反応器を室温まで冷却した後、ペンタエリスリトール27.31g(200.6mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド0.79g(10.8mmol)、キシレン80mLを三口フラスコに加えた。乾燥窒素気流下、室温で滴下漏斗より三塩化リン57.00g(415.1mmol)を約20分かけて滴下し、そのまま1時間攪拌した。その後60℃に加熱し、更に30分攪拌した後室温まで放冷した。発生する塩化水素は、還流冷却管を通して反応系外の水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。
【0056】
生じた白色懸濁液について31P NMRを測定したところ、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトが97%の選択率で検出された。
【0057】
続いて、該白色懸濁液に、キシレン80mL、トリエチルアミン43.39g(428.8mmol)を加えた。乾燥窒素気流下、15℃で、1−フェニルエチルアルコール49.38g(404.2mmol)とキシレン44mLの溶液を約50分かけて滴下し、20℃で30分攪拌した。ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対するN,N−ジメチルホルムアミド量比、1−フェニルエチルアルコール量比はそれぞれ220モル%、208モル%である。また、用いた試薬の含水率、使用量から反応系内の含水率は18ppmと見積もられた。
【0058】
生じた白色懸濁液について31P NMRを測定したところ、3,9−ビス((1−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(以下、ペンタエリスリトールジメチルベンジルホスファイトと呼ぶ)が96%の選択率で検出された。
【0059】
反応混合物をグラスフィルターを用いて乾燥窒素気流下でろ過し、グラスフィルター上の白色固体をトルエンで洗浄することで濾液を得た。窒素雰囲気下、この濾液を0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液400mLで1回、同量の純水で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムを用いて溶液を乾燥した。乾燥窒素気流下で硫酸マグネシウムを濾別した後、濾液をエバポレーターで濃縮したところ、白色固体が得られた。この白色固体を60℃にて8時間真空乾燥し、80.2gの白色粉末を得た。31P NMR測定により、得られた白色粉末はペンタエリスリトールジメチルベンジルホスファイトであることがわかった。収率は原料のペンタエリスリトールに対して95%であり、31P NMR測定による純度は92%、4ppm〜10ppmのピークの強度比は0.3%であった。生成物中のベンジルアルコール残量は150ppmであった。得られた化合物の純度保持率は100%であった。
【0060】
以上のように、本発明の方法により目的物であるペンタエリスリトールジホスファイトを高純度・高収率で得ることができることが分かる。また、得られた生成物は保存安定性にも優れていることが分かる。
【0061】
[比較例1]
実施例1と同様の試薬を用い、同様の操作でペンタエリスリトールジクロロホスファイトを合成した後、生成した白色懸濁液を乾燥窒素気流下濾過することにより、純度96%のペンタエリスリトールジクロロホスファイトを42.74g、原料のペンタエリスリトールに対する回収率80%で単離した。
【0062】
単離したペンタエリスリトールジクロロホスファイトを用いて、実施例1と同様にベンジルアルコールとの反応を行った結果、64.3gの目的化合物を得た。原料のペンタエリスリトールに対する回収率は、78%と低下した。
【0063】
[比較例2]
実施例1と同様の試薬を用い、同様の操作でペンタエリスリトールジクロロホスファイトを合成した後、乾燥窒素気流下で加熱を行わなかった。この時、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトは97%の選択率で検出されていた。
【0064】
続いて、実施例1と同様に、ベンジルアルコールとの反応を行った結果、65.0gの目的化合物を得た。原料のペンタエリスリトールに対する回収率は、79%と低下した。
【0065】
[比較例3]
実施例1において、ハロゲン化水素の捕捉剤としてNaOH16.7g(417mmol)を仕込んだこと以外は実施例1と同様に反応を行った。ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対するNaOH量比は214モル%である。反応の結果、目的化合物は全く得られなかった。
【0066】
[比較例4]
溶媒として、実施例1と同量のキシレンを用い、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとベンジルアルコールとの反応を130℃で行ったこと以外は、実施例1に従った。その結果、65.7gの目的化合物を得た。原料のペンタエリスリトールに対する回収率は、80%と低下した。
【0067】
[参考例1]
吸湿したペンタエリスリトール(含水率10000ppm)を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの懸濁液を得た。該懸濁液の31P NMRスペクトルを測定したところ、4ppm〜10ppmのピークの面積強度比が全ピークに対して14.0%であった。この懸濁液に、実施例1と同様にベンジルアルコールを加えて反応を行った結果、57.5gの目的化合物を得た。原料のペンタエリスリトールに対する回収率は、70%と低下した。
【0068】
[参考例2]
実施例1において、三塩化リンとペンタエリスリトールからペンタエリスリトールジクロロホスファイトを合成するに際し、ピリジンの代わりに塩化マグネシウムを触媒として用いたところ、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの選択率が低下し、39%で検出された。
【0069】
[参考例3]
実施例1において、三塩化リンとペンタエリスリトールからペンタエリスリトールジクロロホスファイトを合成するに際し、トルエンの代わりにメタノールを用いたところ、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトは検出されなかった。
【0070】
[参考例4]
実施例1において、ベンジルアルコールの量を86.4g(799mmol)とした以外は実施例1と同様に反応を行った。ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対するベンジルアルコール量比は410モル%である。反応の結果、73.9gの目的化合物を得た。原料のペンタエリスリトールに対する回収率は、90%と低下した。また、生成物中のベンジルアルコール量は6000ppmと非常に多く残存していた。純度保持率は88%と低下し、保存安定性が悪いことが分かった。
【0071】
[参考例5]
ピリジンを19.5g(247mmol)を仕込んだこと以外は実施例1と同様に反応を行った。ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対するピリジン量比は126モル%である。反応の結果、32.8gの目的化合物を得た。収率は40%と大きく低下した。
【0072】
[参考例6]
水を混入させたベンジルアルコールを用いた以外は実施例1と同様の試薬を用い、反応装置に試薬を加えた。反応系内の含水率は5000ppmと見積もられた。
【0073】
実施例1と同様にして、反応、回収操作を行い73.1gの目的化合物を得た。原料のペンタエリスリトールに対する回収率は、89%と低下した。
【0074】
[参考例7]
実施例1と同様にして、ペンタエリスリトールジベンジルホスファイトを合成した後、反応混合物にトルエン200mLを加えてから、窒素雰囲気下純水400mLで3回洗浄した。洗浄により白色沈殿は消滅し、トルエン溶液を得た。硫酸マグネシウムを用いて溶液を乾燥し、窒素気流下で硫酸マグネシウムを濾別した後、濾液をエバポレーターで濃縮したところ、白色固体が得られた。この白色固体を60℃にて8時間真空乾燥し、69.8gの目的化合物を得た。収率は85%と低下した。31P NMRスペクトルにおける4ppm〜10ppmのピークの強度比は4.1%であり、生成物中のベンジルアルコール残量は15000ppmであった。この得られた化合物の純度保持率は85%と低下した。
【0075】
以上のように、本発明の製造方法および好適な回収方法により高純度かつ保存安定性に優れるペンタエリスリトールジホスファイトが高収率で得られることは明らかである。
【0076】
【発明の効果】
本発明は、工業的に有利な生産性に優れた方法でかつ保存安定性に優れた高純度のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法及びその好適な回収方法を提供する。

Claims (10)

  1. 三塩化リンとペンタエリスリトールから得られる下記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液を、不活性雰囲気下で40〜120℃に加熱し、次いで、塩化水素捕捉剤としての有機塩基化合物の存在下、温度−20℃から100℃の条件下で、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液と下記式(2)で示されるアラルキルアルコールとを不活性雰囲気下で反応させることを特徴とする下記式(3)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
    Figure 2004018409
    Figure 2004018409
    [式中、Arは、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]
    Figure 2004018409
    [式中、ArおよびArは、同一または異なっていてもよく、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]
  2. 請求項1において、三塩化リンとペンタエリスリトールから得られるペンタエリスリトールジクロロホスファイト溶液又は懸濁液に使用される溶媒が、炭化水素、ハロゲン含有炭化水素および含酸素炭化水素からなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる不活性溶媒である請求項1記載のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
  3. 請求項1において、三塩化リンとペンタエリスリトールから得られるペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液に対して、31P NMRスペクトルを測定した時、4ppm〜10ppmのピークの面積強度比が全ピークに対して10%以下である請求項1記載のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
  4. 請求項1において、有機塩基化合物を前記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成時に触媒として使用し、該有機塩基化合物がリン−塩素結合と反応しない有機塩基化合物である請求項1記載のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
  5. 請求項1において、前記式(3)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトの合成時に使用される有機塩基化合物がリン−塩素結合と反応しない有機塩基化合物であり、かつ、該有機塩基化合物を前記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対して180モル%〜400モル%用いる請求項1記載のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
  6. 請求項1において、前記式(2)で示されるアラルキルアルコールを前記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対して180モル%〜250モル%用いる請求項1記載のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
  7. 請求項1において、前記式(2)で示されるアラルキルアルコールと前記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトとの反応系の含水率が2000ppm以下である請求項1記載のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
  8. 請求項1において、前記式(2)で示されるアラルキルアルコールと前記式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトとの反応混合物から、副生物である塩化水素塩を除去した後、アルカリ水溶液で洗浄処理し、前記式(3)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトを回収する請求項1記載のペンタエリスリトールジホスファイトの製造方法。
  9. 前記式(3)で示されるペンタエリスリトールジホスファイト化合物の溶液または固形物であって、該ペンタエリスリトールジホスファイト化合物に対してアラルキルアルコールの含有率が5000ppm以下であることを特徴とするペンタエリスリトールジホスファイト化合物。
  10. 前記式(3)で示されるペンタエリスリトールジホスファイト化合物の溶液または固形物であって、該ペンタエリスリトールジホスファイト化合物の31P NMRスペクトルにおける4ppm〜10ppmのピークの面積強度比が全ピークに対して2%以下であることを特徴とするペンタエリスリトールジホスファイト化合物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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