JP4084050B2 - 光モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信システム等に用いられる光モジュールに関するものである。
【0002】
【背景技術】
光通信において、光の分岐や光スイッチ、波長合分波等の機能を持つ光部品が広く用いられている。光部品は、様々に形成されているが、中でも基板上に光導波路の回路を形成した光導波路回路を有する光部品は、その集積性、量産性から期待されている。なお、光導波路回路は、従来、シリコンや石英等の基板上に石英系の材料等から成る光導波路の回路を設けて形成していたが、最近では、基板や光導波路の形成領域をポリイミド系の材料を用いた光導波路回路も形成されるようになった。
【0003】
図6、図7は、それぞれ、光導波路回路の例を示す図であり、これらの光導波路回路は、基板11上に導波路形成領域10を形成して成る。
【0004】
図6は、光導波路の回路として、1×8光分岐導波路回路を形成した光導波路回路の構成例を示すものである。図7は、光導波路の回路としてアレイ導波路回折格子の回路を形成した光導波路回路の構成例を示す。アレイ導波路回折格子は、波長多重通信用として用いられており、その回路構成も様々なものが提案されている。
【0005】
図6に示すように、1×8光分岐導波路回路は1本の光入力導波路12と8本の光出力導波路16とを有しており、光入力導波路12と光出力導波路16との間に複数の分岐部17を有している。
【0006】
また、図7に示すように、アレイ導波路回折格子の回路は、少なくとも1本の光入力導波路12と、該光入力導波路12の出力端に接続された第1のスラブ導波路13と、該第1のスラブ導波路13の出力端に接続されたアレイ導波路14と、該アレイ導波路14の出力端に接続された第2のスラブ導波路15と、該第2のスラブ導波路15の出力端に接続されて複数並設された光出力導波路16を有している。
【0007】
前記アレイ導波路14は、第1のスラブ導波路13から導出された光を伝搬するものであり、複数のチャンネル導波路14aを並設して形成されており、隣り合うチャンネル導波路14aの長さは互いに設定量(ΔL)異なっている。
【0008】
なお、光出力導波路16は、例えばアレイ導波路回折格子によって分波あるいは合波される互いに異なる波長の信号光の数に対応させて設けられるものであり、アレイ導波路14を構成するチャンネル導波路14aは、通常、例えば100本といったように多数設けられる。ただし、図7においては、図の簡略化のために、これらのチャンネル導波路14a、光出力導波路16および光入力導波路12の各々の本数を簡略的に示してある。
【0009】
アレイ導波路回折格子の回路において、例えば図7に示すように、1本の光入力導波路12に波長多重光が導入されると、この波長多重光は光入力導波路12を通って第1のスラブ導波路13に導入され、その回折効果によって広がってアレイ導波路14に入力し、アレイ導波路14を伝搬する。
【0010】
このアレイ導波路14を伝搬した光は、第2のスラブ導波路15に達し、さらに、光出力導波路16に集光されて出力されるが、アレイ導波路14の全てのチャンネル導波路14aの長さが互いに異なることから、アレイ導波路14を伝搬した後に個々の光の位相にずれが生じ、このずれ量に応じて集束光の波面が傾き、この傾き角度により集光する位置が決まる。したがって、異なる光出力導波路16から、それぞれ異なる波長の光を出力することができる。
【0011】
例えば図8に示すように、上記アレイ導波路回折格子の回路や光分岐導波路回路を備えた光導波路回路を有する光部品1は、パッケージ2内に収容され、光モジュールとして用いられる。なお、同図の(a)は光モジュールの斜視図、同図の(b)は光モジュールをその上部から内部を透かして見た図、同図の(c)は同図の(b)のA−A断面図である。
【0012】
同図に示す光モジュールは、光部品1の一端側に接続された第1光ファイバ3(3a)と、光部品1の他端側に接続された第2光ファイバ3(3b)とを有している。これらの光ファイバ3(3a,3b)は、それぞれ、一端側が光部品1に接続され、他端側がパッケージ2からパッケージ外部に引き出されている。光ファイバ3(3a,3b)は、パッケージ2に接着剤23により固定されている。
【0013】
第1、第2光ファイバ3a,3bは、それぞれ、例えば複数の光ファイバを並列配設して成る光ファイバテープにより形成されており、光ファイバテープの接続端面には光ファイバアレイ21が設けられている。第1、第2光ファイバ3a,3bと光部品1との接続、すなわち、光ファイバアレイ21と光部品1との接続は接着剤を用いた接着剤固定により行なわれている。
【0014】
また、光部品1の接続端面にはチップ上板20が貼り付けられ、光部品1と第1、第2光ファイバ3a,3bのそれぞれの端部の光ファイバアレイ21との接続をより安定なものとしている。
【0015】
パッケージ2はパッケージ本体2aと蓋部2bを有している。パッケージ2は、主に、アルミニウムやステンレス等の金属やプラスチックにより形成されており、パッケージ2内に光部品1および光部品1と光ファイバ3(3a,3b)との接続部を収容することにより、これらを保護している。
【0016】
ところで、光モジュールは、例えば0℃〜70℃といった温度範囲で使用されることを前提とするため、その温度範囲内で特性が変化しないことが要求されている。そのため、アレイ導波路回折格子をはじめとし、温度変化が光学特性に大きな影響を与える光部品1に関しては、温度調節が必要となる。
【0017】
そこで、図8に示すような光モジュールにおいて、パッケージ2内にヒーター等の温度調節素子(図示せず)を設け、光部品1を例えば70〜80℃といった一定の値に加熱保持する方式を適用した構成が使用されている。このような温度調節素子を設けた光モジュールにおいては、温度調節素子の消費電力をできるだけ小さくすることが求められている。例えば使用温度範囲内において、最大消費電力を5W以下にすることが求められている。
【0018】
この低消費電力を実現するために、様々なパッケージ構造が考案されている。例えば、特開平11―014844号公報には、「ヒーター加熱導波路の実装方法およびそのパッケージ」という名称の発明が提案されている。この提案は、1〜4本の支柱を介して光部品をパッケージ内に浮かせて収容する構成を提案している。
【0019】
この提案は、支柱固定面の面積を0.03〜1.0cm2とし、光部品と支柱との接触面積および支柱とパッケージとの接触面積を小さくして、光部品からパッケージ側への熱伝導量を小さくすることにより、ヒーターの消費電力を小さくする方法を提案している。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、光通信システム装置に組み込まれる光モジュールには、その寸法(厚み)を小さくすることが要求されている。そこで、本発明者は、この要求に合わせて、図9に示すような、パッケージ2の厚み(図9に示すA)を、システム側の要求値である12mm以下に小さくした光モジュール試作することにした。
【0021】
この試作光モジュールは、特開平11―014844号公報の構成を適用した光モジュールであり、光導波路チップ9と均熱板12と温度調節素子5を順に重ね合わせて形成されている。
【0022】
温度調節素子5はヒーターにより形成されている。均熱板12には白金抵抗素子が取り付けており、白金抵抗素子は光部品1の温度を検出するために設けられている。均熱板12の下部側には、その四隅に支柱30を設けている。光導波路チップ9の上面とパッケージ2の蓋部2bとの間の空気層の厚み(同図のB)および、均熱板12の下面とパッケージ2のパッケージ本体2aとの間の空気層の厚み(同図のB′)は、共に2mmである。
【0023】
表1に、この試作光モジュールの部品構成を示す。なお、表1における白金抵抗素子の抵抗は0℃における値、支柱のサイズは、1本の支柱30の上面と均熱板12との接触面積を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
この光モジュールの温度調節素子5の消費電力を測定したところ、例えば環境温度を0℃、光モジュールの設定温度を80℃にしたときの消費電力は5.31Wとなり、システム側から要求されている値である5Wを越えてしまった。
【0026】
なお、図9に示す構成においても、パッケージ2のパッケージ本体2aと蓋部2bを形成する壁厚を変えずに、例えば光導波路チップ9の上面とパッケージ2との間の空気層の厚み(同図のB)および、均熱板12の下面とパッケージ2との間の空気層の厚み(同図のB′)を共に7mmとすれば、上記消費電力を5W以下に小さくできる。
【0027】
しかし、この光モジュールは厚みが22mmと大きくなり、システム側から要求されている小型化の要求、つまり、図9のAに示したようなパッケージ2の厚みを12mm以下に薄くする要求を満たすことができない。
【0028】
また、光モジュールには、光ファイバ3(3a,3b)が引っ張られても、挿入損失等の光学特性が変化しないことを要求される。しかしながら、従来の光モジュールにおいて、光ファイバ3(3a,3b)は接着剤23によってパッケージ2に固定されており、光ファイバ3(3a,3b)が引っ張られると、その応力がパッケージ2内の光ファイバ3(3a,3b)や光ファイバ3(3a,3b)と光部品1との接続部に付与されてしまう。
【0029】
また、光モジュールのパッケージ2は金属やプラスチック等の線膨張係数が大きい材料により形成されており、温度変化によって、光部品1の構成部材や光ファイバ3(3a,3b)よりも大きく伸縮し、この伸縮に伴い、パッケージ2に固定されている光ファイバ3(3a,3b)に応力が付与される。そうすると、この応力は、光ファイバ3(3a,3b)と接着固定されている光部品1にも付与されてしまう。
【0030】
そうすると、この応力の影響により、特に、光部品1と光ファイバ3(3a,3b)との接続部の挿入損失増大を招くことになった。
【0031】
また、上記応力付与によって、光部品1と光ファイバ3(3a,3b)との接続部の破壊が生じたり、場合によっては光部品1が均熱板12からはがれてしまったりすることもあり、繰り返しの温度変化で光モジュールの性能低下、寿命の短縮が生じるといった問題が生じた。
【0032】
本発明は上記従来の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、消費電力が小さく小型であり、パッケージ外部からの光ファイバへの引っ張り応力や使用温度変化に伴うパッケージの熱伸縮の影響を受けても特性劣化等が生じにくい光モジュールを提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明は、パッケージ本体とその蓋部とにより構成されたパッケージと、該パッケージ内に収容された光部品とを有し、前記パッケージ本体の底壁の内面と前記蓋部の内面のそれぞれ対向する位置から光部品保持部がパッケージ内に向けて突出形成され、前記光部品は前記それぞれ対向し合うパッケージ本体側の光部品保持部と蓋部側の光部品保持部とによって線接触状態で挟まれて保持されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0034】
また、第2の発明は、上記第1の発明の構成に加え、前記光部品保持部の先端面は斜面により形成され、前記光部品保持部の突出先端側の斜面が光部品の外形のエッジ部に線接触して光部品が光部品保持部により挟まれて保持されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0035】
さらに、第3の発明は、上記第1または第2の発明の構成に加え、前記光部品の温度を調節する温度調節素子を有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0036】
さらに、第4の発明は、上記第3の発明の構成に加え、前記温度調節素子の消費電力を5W以下とした構成をもって課題を解決する手段としている。
【0037】
さらに、第5の発明は、上記第4の発明の構成に加え、前記光部品保持部は熱伝導率が0.9W/(m・K)以下の部材により形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0038】
さらに、第6の発明は、上記第1乃至第5のいずれか一つの発明の構成に加え、前記光部品には少なくとも1本の光ファイバの一端側が接続されて該光ファイバの他端側は前記パッケージからパッケージ外部に引き出されており、前記パッケージの光ファイバ引き出し領域には前記パッケージに抜け止め状態で光ファイバ引き留め部材が配置され、該光ファイバ引き留め部材に前記光ファイバが固定されており、前記光ファイバ引き留め部材と前記パッケージとが光ファイバ長手方向に相対移動可能と成している構成をもって課題を解決する手段としている。
【0039】
さらに、第7の発明は、上記第1乃至第6のいずれか一つの発明の構成に加え、前記光部品は基板上に光導波路の回路を形成した光導波路回路を有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、本実施形態例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【0041】
図1の(a)〜(c)には、本発明に係る光モジュールの一実施形態例の要部構成が示されている。同図の(a)は、本実施形態例の光モジュールを、上部から内部を透かして見た図である。同図の(b)は図1の(a)のA−A断面図、同図の(c)は図1の(a)のB−B断面図である。
【0042】
これらの図に示すように、本実施形態例の光モジュールは、パッケージ2と、該パッケージ2内に固定されずに収容された光部品1を有している。光部品1は、図7に示したような、基板11上にアレイ導波路回折格子の回路を形成した光導波路回路である。
【0043】
パッケージ2はポリフェニレンサルファイド樹脂により形成されている。パッケージ2はパッケージ本体2aと蓋部2bを有しており、パッケージ2のサイズは、127mm×58mm×12mmである。
【0044】
パッケージ2内には光部品保持部7が設けられており、図1の(c)に示すように、光部品保持部7はパッケージ2の内壁側から光部品1のエッジ部側に向けて突出形成されている。これらの光部品保持部7の突出先端側がそれぞれ、同図に示すC部で、光部品1のエッジ部に線接触している(C部において、紙面に垂直な線で接触している)。
【0045】
このように、本実施形態例では、光部品1がパッケージ2内に収容された光部品保持部7に線接触で保持されていることを特徴としている。光部品保持部7は、熱伝導率が0.9W/(m・K)以下であるポリフェニレンサルファイド樹脂の部材により形成されている。
【0046】
光部品1は光部品保持部7により上下両側から支持される態様で保持されており、光部品1の表面(図1(b)、(c)における光部品1の上側の面)とパッケージ2の蓋部2bとの間隔は2mm、光部品1の基板側の面(図1(b)、(c)における光部品1の下側の面)とパッケージ本体2aとの間隔は2mmである。
【0047】
図2の(a)は、光部品保持部7による光部品1の保持形態を斜視図により示す図であり、この図に示すように、それぞれ光部品保持部7は斜面9を有するブロック形状の保持部材8(8a〜8h)により形成されている。なお、図2の(b)には、1つの保持部材8の斜視図が示されており、このように、保持部材8は7面体である。
【0048】
図2の(a)に示す、保持部材8(8a〜8d)の上面18はパッケージ2(同図には図示せず)の蓋部2bの内壁に接着固定され、保持部材8(8e〜8h)の底面19はパッケージ2のパッケージ本体2aの内壁に接着固定されている。
【0049】
そして、それぞれの保持部材8(8a〜8h)はパッケージ2の内壁側から光部品1のエッジ部側に向けて突出形成され、前記上面18および底面19の反対側に形成された斜面9が、チップ上板20を含む光部品1のエッジ部に線接触している。この線接触領域は、図2の(c)の太線で示す領域Cであり、接触線長は5mmである。
【0050】
図1に示すように、光部品1の基板側の面には、光部品1の温度を調節する温度調節素子5が設けられており、温度調節素子5は光部品1と直接接合されている。また、光部品1の表面側には測温体40が設けられて接着固定されている。これらの温度調節素子5や測温体40を設けることにより、本実施形態例は、光部品1を例えば70〜80℃といった一定温度に保つことができる。
【0051】
温度調節素子5は、シリコンラバーヒーターにより形成されており、その電気抵抗値は3Ω、サイズは30mm×20mm×2mmである。測温体40は白金抵抗素子であり、0℃における電気抵抗値が100Ω、サイズは1.6mm×3.2mm×1.0mmである。
【0052】
光部品1には、少なくとも1本(ここでは2本)の光ファイバ3(3a,3b)の一端側が接続されており、これらの光ファイバ3(3a,3b)の他端側は前記パッケージ2からパッケージ外部に引き出されている。
【0053】
第1光ファイバ3aは光部品1の一端側に接続され、第2光ファイバ3bは光部品1の他端側に接続されており、第1光ファイバ3aがパッケージ2の一端側から引き出され、第2光ファイバ3bがパッケージ2の他端側から引き出されている。第1、第2光ファイバ3(3a,3b)は、それぞれ、8本の光ファイバ心線を並列配設して成る光ファイバテープである。
【0054】
パッケージ2の光ファイバ引き出し領域にはパッケージ2に抜け止め状態で光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)が配置されている。光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)は、いずれも図3に示す形状を有している。光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)とパッケージ2とは、X方向、Y方向にそれぞれ若干の間隔を介して配置されている。
【0055】
前記光ファイバ3(3a,3b)は、それぞれ、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)に挿通され、接着剤23により固定されている。図1の(b)に示すように、接着剤23は光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)の長手方向のほぼ全領域に設けられているが、接着剤23は光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)の長手方向の一部に設けられていてもよい。第1光ファイバ3aが第1光ファイバ引き留め部材4aに固定され、第2光ファイバ3bが第2光ファイバ引き留め部材4bに固定されている。
【0056】
第1光ファイバ引き留め部材4(4a)と第2光ファイバ引き留め部材4(4b)は、それぞれ光ファイバ長手方向(図のZ方向)に互いに間隔を介した位置において光ファイバ長手方向と交わる方向に張り出した第1鍔部4a1,4b1と第2鍔部4a2,4b2とを有し、これら第1鍔部4a1,4b1と第2鍔部4a2,4b2とによって前記パッケージ2の光ファイバ引き出し領域の壁を両側から間隔を介して挟む態様と成している。
【0057】
上記構成によって、本実施形態例では、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)と前記パッケージ2とが光ファイバ長手方向に相対移動可能と成し、かつ、前記の如く、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)がパッケージ2に抜け止め状態で配置されている。
【0058】
第1光ファイバ引き留め部材4(4a)と第2光ファイバ引き留め部材4(4b)には、第1鍔部4a1,4b1にそれぞれ隣接して光ファイバ引き出し部4a3,4b3が設けられ、光ファイバ引き出し部4a3は接着剤によって第1鍔部4a1に固定され、光ファイバ引き出し部4b3は接着剤によって第1鍔部4b1に固定されている。
【0059】
光ファイバ引き出し部4a3,4b3はバイトン(ゴム)により形成されており、第1、第2光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)の光ファイバ引き出し部4a3,4b3を除く部分は、ポリフェニレンサルファイド樹脂により形成されている。
【0060】
第1鍔部4a1,4b1はパッケージ2の外部に、第2鍔部4a2,4b2はパッケージ2の内部にそれぞれ配置されている。第1光ファイバ引き留め部材4aの第1鍔部4a1とパッケージ2との間隔はd1、第1光ファイバ引き留め部材4aの第2鍔部4a2とパッケージ2との間隔はd2、第2光ファイバ引き留め部材4bの第2鍔部4b2とパッケージ2との間隔はd3、第2光ファイバ引き留め部材4bの第1鍔部4b1とパッケージ2との間隔はd4である。
【0061】
上記間隔d1、d2、d3、d4の値は、いずれも変数であり、これらの間隔の関係は、d1>d3、かつ、d4>d2と成している。なお、光モジュール作製時において、d1、d2、d3、d4の値はそれぞれ、0.5mm、0.5mm、0、1.0mmとしており、第1、第2光ファイバ引き留め部材4a,4bの移動可能距離は0.5mmである。
【0062】
本実施形態例において、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)とパッケージ2との間隔を上記のように形成することによって、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)とパッケージ2との相対移動範囲が、光ファイバ3(3a,3b)に引っ張り応力を加えたときに該引っ張り応力が光部品1および光部品1と光ファイバ3(3a,3b)との接続部に付与されることを抑制できる範囲と成している。
【0063】
また、本実施形態例では、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)とパッケージ2との間隔を上記のように形成することにより、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)とパッケージ2との相対移動範囲が、使用温度範囲内の温度変化に伴うパッケージ2の熱伸縮によるパッケージ2と光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)との相対変位量より大きく形成されている。
【0064】
なお、光ファイバ3(3a,3b)のパッケージ2からの引き出し部において、上記のように、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)を設け、この光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)とパッケージ2との間隔を上記のように形成する構成は、本出願人が以前に提案した特願2001−306524(未だ公開になっていない)に記載されている。
【0065】
また、上記光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)の配設構成による作用、効果は、この提案に詳細に記載されている通りであり、本明細書においては、上記構成による作用、効果の詳細説明は省略する。
【0066】
ところで、本発明者は、上記構成を決定する際、光部品保持部7の材質を変えて光部品保持部7の熱伝導率を様々に変え、光部品保持部7の熱伝導率と温度調節素子5の消費電力との関係を測定した。
【0067】
その結果、図4に示すように、パッケージ2の厚み(図1の(c)のA)を12mmと薄型にして温度調節素子5の消費電力を5W以下に小さくするためには、熱伝導率が0.9W/(m・K)以下の材質によって光部品保持部7を形成する必要があることが分かった。そこで、本実施形態例では、光部品保持部7の材質を、熱伝導率が0.9W/(m・K)以下のポリフェニレンサルファイド樹脂により形成した。
【0068】
なお、本実施形態例の光モジュールの使用温度範囲は0℃〜70℃であり、温度調節素子5によって調節する光部品1の設定温度は70℃〜80℃である。
【0069】
本実施形態例は、以上のように構成されており、光部品1がパッケージ2内に設けられた光部品保持部7に線接触で保持されているので、温度調節素子5により加熱した光部品1の熱が光部品1からパッケージ2側へ伝導する割合を小さくすることができる。したがって、光部品1を効率的に加熱保温することができ、温度調節素子5の消費電力を小さくすることができる。
【0070】
また、本実施形態例によれば、光部品保持部7は光部品1の四隅のエッジ部に線接触しているので、光部品保持部7と光部品1との接触部を温度調節素子5による加熱部中心から遠ざけることができ、より一層の低消費電力化を可能としている。
【0071】
実際に、本発明者が、環境温度0℃の雰囲気下に本実施形態例の光モジュールを配置し、温度調節素子5の設定温度を80℃としてその消費電力を測定したところ、3.82Wであった。このように、本実施形態例の光モジュールは、システム側からの要求である、パッケージ厚(図1の(c)のA)が12mmと薄型で、かつ、消費電力5W以下を達成する要求を達成できた。
【0072】
なお、本実施形態例において、光部品保持部7は、熱伝導率が0.9W/(m・K)以下の小さい値であるポリフェニレンサルファイド樹脂の保持部材8(8a〜8h)により形成されているので、光部品1を効率的に加熱保温することができ、図4に示したように、温度調節素子5の消費電力を5W以下に小さくすることができた。
【0073】
また、本実施形態例は、光ファイバ3(3a,3b)のパッケージ2からの引き出し部に光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)を設け、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)とパッケージ2との間隔を上記のようにd1>d3、かつ、d4>d2として、適宜形成することによって、以下の効果を奏する。
【0074】
つまり、第2光ファイバ3(3b)に、図1の(a)、(b)の右側に向けた引っ張り応力が加えられると、光ファイバ3(3a,3b)と光部品1が、パッケージ2に対して、これらの図の右側に相対移動するが、第2光ファイバ引き留め部材4(4b)の第2鍔部4b2がパッケージ2に引っかかると、それ以上移動できなくなる。
【0075】
そして、このとき、第1光ファイバ引き留め部材4(4a)の第1鍔部4a1とパッケージ2との間隔d1>0であるため、光部品1および光部品1と光ファイバ3(3a,3b)との接続部に応力が付与されることはなく、光部品1の挿入損失などの光学特性は変化しない。
【0076】
また、第1光ファイバ3(3a)に、図1の(a)、(b)の左側に向けた引っ張り応力を加えると、この引っ張り応力に応じて、光ファイバ3(3a,3b)と光部品1が、パッケージ2に対して、これらの図の左側に相対移動するが、第1光ファイバ引き留め部材4(4a)の第2鍔部4a2がパッケージ2に引っかかると、それ以上移動できなくなる。
【0077】
そして、このとき、第2光ファイバ引き留め部材4(4b)の第1鍔部4b1とパッケージ2との間隔d4>0であるため、光部品1および光部品1と光ファイバ3(3a,3b)との接続部に応力が付与されることはなく、光部品1の挿入損失などの光学特性は変化しない。
【0078】
したがって、本実施形態例は、光ファイバ3(3a,3b)に加えられた引っ張り応力がパッケージ2内の光部品1や光部品1と光ファイバ3(3a,3b)の接続部に加えられることを抑制でき、光部品1の光学特性の変化を抑制することができる。
【0079】
実際に、光モジュールの光ファイバ3(3a,3b)を、パッケージ2の光ファイバ引き出し口から100mm離れたところを持って60秒間15Nの荷重で引っ張る試験を行なったところ、表2に示す結果が得られた。
【0080】
【表2】
【0081】
なお、表2は、応力付与中の挿入損失の変動(増大)を示している。この表から明らかなように、本実施形態例は、光ファイバ3(3a,3b)のパッケージ2からの引き出し口に、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)を設ける上記構成により、引っ張り力が光部品1や光部品1と光ファイバ3(3a,3b)の接続部に全く加わらず、光部品1の挿入損失の変動は起こらない。
【0082】
また、本実施形態例の光モジュールは、パッケージ2が使用温度範囲内の温度変化に伴って熱伸縮したときには、パッケージ2と光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)とが相対移動するので、上記パッケージ2の熱伸縮に伴い、パッケージ2からパッケージ2内の光部品1や光部品1と光ファイバ3(3a,3b)との接続部に応力が加わることはない。
【0083】
さらに、本実施形態例によれば、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)の光ファイバ引き出し部(4a3,4b3)がバイトン(ゴム)により形成されているので、光ファイバ3(3a,3b)に横曲げが加えられても、その横曲げによる損失増大を抑制できる。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態例に限定されることはなく、様々な実施の態様を採り得る。例えば、上記実施形態例では、光部品保持部7をパッケージ2の内壁側から光部品1のエッジ部側に向けて突出形成し、光部品保持部7の突出先端側を光部品1のエッジ部に線接触させたが、光部品保持部7の配設形態、形状、数等は特に限定されるものではなく適宜設定されるものである。
【0085】
例えば図5に示すように、パッケージ2(同図には図示せず)内に、斜面9a,9bを有する形状の光部品保持部7を設け、この斜面9a,9bの稜線を光部品1の基板面に線接触させてもよい。このように、本発明の光モジュールは、パッケージ2内に設けた光部品保持部7によって光部品1を線接触で保持すればよい。
【0086】
また、上記実施形態例では、光部品保持部7はパッケージ2の内壁に接着固定されていたが、光部品保持部7は必ずしもパッケージ2の内壁に接着固定するとは限らず、例えば光部品保持部7をパッケージ2と一体的に形成してもよい。
【0087】
さらに、上記実施形態例では、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)を図3に示したような形状とし、その第1鍔部(4a1,4b1)と第2鍔部(4a2,4b2)をポリフェニレンサルファイド樹脂により形成し、光ファイバ引き出し部(4a3,4b3)はバイトンにより形成したが、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)の形状や形成材料は特に限定されることはなく適宜設定されるものである。
【0088】
さらに、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)と光ファイバ3(3a,3b)の固定は、必ずしも接着剤23により行なうとは限らず、両者を固定できるものであればよい。
【0089】
さらに、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)の大きさ、形成方法等は特に限定されるものでなく適宜設定されるものであり、例えばプラスチック材料の光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)を、光ファイバ3(3a,3b)と一体的に成形して形成してもよい。
【0090】
さらに、上記実施形態例では、光ファイバ3(3a,3b)のパッケージ2からの引き出し部に光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)を設けたが、光ファイバ引き留め部材4(4a,4b)を省略し、光ファイバ3(3a,3b)をパッケージ2に固定する構成としてもよい。この場合でも、光部品1を光部品保持部7により線接触で保持する構成を適用することにより、消費電力が小さい小型の光モジュールを実現できる。
【0091】
さらに、上記実施形態例では、光部品1の両端側に光ファイバ3(3a,3b)を接続したが、光部品1の一端側にのみ光ファイバ3を接続してもよい。
【0092】
さらに、上記実施形態例では、光ファイバ3(3a,3b)は光ファイバテープとしたが、本発明の光モジュールに適用される光ファイバは1本の光ファイバとしてもよい。
【0093】
さらに、上記実施形態例では、光部品1は、アレイ導波路回折格子の回路を有する光導波路回路の光部品1としたが、本発明の光モジュールに適用される光部品は特に限定されるものではなく適宜設定されるものであり、例えば1×8光導波路回路を有する光導波路回路としてもよい。
【0094】
また、光導波路回路以外の光部品を適用して光モジュールを形成してもよい。光部品の例としては、光ファイバ型カプラ、光ファイバグレーティング、といった光ファイバを主とした光部品、光学結晶、多層膜フィルタを用いた光部品等がある。
【0095】
さらに、上記実施形態例では、温度調節素子5はヒーターを有する構成としたが、温度調節素子5は、例えばペルチェ素子等を有する構成等、様々な構成が適用できる。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、パッケージ内に収容された光部品は、パッケージ内に設けられた光部品保持部に線接触で保持されているので、光部品からパッケージ側への熱伝導を小さくすることができる。したがって、光部品の温度調節を効率的に行うことができ、温度調節のための消費電力を小さくすることができる。
【0097】
また、本発明において、光部品保持部はパッケージの内壁側から光部品のエッジ部側に向けて突出形成され、前記光部品保持部の突出先端側が光部品のエッジ部に線接触している構成によれば、光部品保持部と光部品との接触部を光部品の中心から遠ざけることができる。したがって、光部品の温度調節をより一層効率的に行うことができ、温度調節のための消費電力を小さくすることができる。
【0098】
さらに、本発明において、光部品の温度を調節する温度調節素子を有する構成によれば、上記効果によって、温度調節素子により、小さい消費電力で光部品の温度を調節することができ、例えば光部品が温度に依存して特性が変化する光部品であっても、その特性を維持することができる。
【0099】
さらに、本発明において、温度調節素子の消費電力を5W以下とした構成によれば、光通信システム側から要求されている低消費電力化を実現することができる。
【0100】
さらに、本発明において、光部品保持部は、熱伝導率が0.9W/(m・K)以下の部材により形成されている構成によれば、光部品からパッケージ側への熱伝導をさらにより一層小さくすることができ、光部品の温度調節をより一層効率的に行うことができ、温度調節のための消費電力を小さくすることができる。
【0101】
さらに、本発明において、光部品に接続された光ファイバの引き出し領域において、パッケージに抜け止め状態で配置された光ファイバ引き留め部材に光ファイバが固定され、光ファイバ引き留め部材と前記パッケージとは光ファイバ長手方向に相対移動可能と成しているので、例えば光ファイバに引っ張り応力が加えられたときには、光ファイバと光部品は、光ファイバ引き留め部材と共にパッケージに対して光ファイバ長手方向に相対移動することができる。
【0102】
そのため、この構成の発明は、外力やパッケージの温度変化に伴う膨張収縮等に伴って、パッケージ内の光部品や光部品と光ファイバとの接続部に引っ張り応力が加えられることを抑制できる。
【0103】
さらに、本発明において、光部品は基板上に光導波路の回路を形成した光導波路回路を有する構成によれば、光導波路回路に形成する様々な回路構成を適宜設定することにより、光の分岐、合分波等、様々な機能を有する光モジュールを正確に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光モジュールの一実施形態例を示す要部構成図である。
【図2】上記実施形態例の光モジュールにおける光部品保持部と、その光部品保持形態の説明図である。
【図3】上記実施形態例の光モジュールに適用されている光ファイバ引き留め部材を示す説明図である。
【図4】光部品保持部の熱伝導率と温度調節素子の消費電力との関係を示すグラフである。
【図5】本発明に係る光モジュールの他の実施形態例における光部品保持部と、その光部品保持形態の説明図である。
【図6】1×8光導波路回路を有する光導波路回路の例を示す説明図である。
【図7】アレイ導波路回折格子の回路を有する光導波路回路の例を示す説明図である。
【図8】従来の光モジュールの構成例を示す説明図である。
【図9】従来提案されている光モジュールの構成例を断面図により示す説明図である。
【符号の説明】
1 光部品
2 パッケージ
3 光ファイバ
3a 第1光ファイバ
3b 第2光ファイバ
4 光ファイバ引き留め部材
4a 第1光ファイバ引き留め部材
4b 第2光ファイバ引き留め部材
4a1,4b1 第1鍔部
4a2,4b2 第2鍔部
5 温度調節素子
7 光部品保持部
8,8a〜8h 保持部材
9,9a,9b 斜面
Claims (7)
- パッケージ本体とその蓋部とにより構成されたパッケージと、該パッケージ内に収容された光部品とを有し、前記パッケージ本体の底壁の内面と前記蓋部の内面のそれぞれ対向する位置から光部品保持部がパッケージ内に向けて突出形成され、前記光部品は前記それぞれ対向し合うパッケージ本体側の光部品保持部と蓋部側の光部品保持部とによって線接触状態で挟まれて保持されていることを特徴とする光モジュール。
- 光部品保持部の先端面は斜面により形成され、前記光部品保持部の突出先端側の斜面が光部品の外形のエッジ部に線接触して光部品が光部品保持部により挟まれて保持されていることを特徴とする請求項1記載の光モジュール。
- 光部品の温度を調節する温度調節素子を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の光モジュール。
- 温度調節素子の消費電力を5W以下としたことを特徴とする請求項3記載の光モジュール。
- 光部品保持部は熱伝導率が0.9W/(m・K)以下の部材により形成されていることを特徴とする請求項4記載の光モジュール。
- 光部品には少なくとも1本の光ファイバの一端側が接続されて該光ファイバの他端側は前記パッケージからパッケージ外部に引き出されており、前記パッケージの光ファイバ引き出し領域には前記パッケージに抜け止め状態で光ファイバ引き留め部材が配置され、該光ファイバ引き留め部材に前記光ファイバが固定されており、前記光ファイバ引き留め部材と前記パッケージとが光ファイバ長手方向に相対移動可能と成していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の光モジュール。
- 光部品は基板上に光導波路の回路を形成した光導波路回路を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の光モジュール。
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