JP4082062B2 - ジルコニア含有無機繊維及びその製造方法 - Google Patents

ジルコニア含有無機繊維及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐アルカリ性、耐酸化性、触媒機能及び/又は触媒担持機能を有する高強度なジルコニア含有無機繊維並びにその製造方法に関する。詳しくは、力学的特性を負担する中心部(シリカ相又は炭化珪素質相)と各種機能を負担する表層並びにその近傍相のジルコニア相からなり、なお且つ表層に向かった傾斜組成を有する繊維並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保全に対する関心の高まりとともに、有害物質を浄化する触媒やフィルターが求められるようになってきた。
【0003】
自動車エンジン等の内燃機関、工業プラント等から発生する窒素酸化物は人体や環境に有害な大気汚染物質であり、その低減が望まれている。窒素酸化物を除去する技術としてガソリンエンジンでの三元触媒法、工業プラント等でのアンモニアによる選択的接触還元法が実用化されている。
【0004】
また、デーゼルエンジンから排出される黒煙粒子状物質(PM)は、人体に深刻な影響を及ぼすとして最近特に注目されている。PMを捕集する材料としては、炭化ケイ素系繊維からなるフィルターが実用化されている。さらに炭化珪素系繊維表面に触媒成分を担持させることによりPM燃焼や窒素酸化物を低減する試みも行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの環境浄化技術は実用化において様々な問題点を抱えている。窒素酸化物の浄化に関しては、三元触媒法は、ディーゼルエンジン排ガスのように高濃度の酸素が含まれている場合、還元剤(COや炭化水素)の酸化反応が優先的に生じるために適用が難しい。また、アンモニアによる選択的接触還元法では、毒性や腐食性の高いアンモニアガスを取り扱わなければならない。PMに関しては、現状の炭化ケイ素系繊維製のフィルターは捕集効果は大きいものの、繊維に触媒成分を担持させないかぎりPMの燃焼除去を行うことは不可能であり、さらにPMと同時に排出される窒素酸化物を浄化する機能は無い。
また、炭化珪素系繊維は一般に耐アルカリ性に劣り、排ガス中に含まれる微量のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属により腐食を起こす。さらに、触媒成分としてアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物を繊維に担持した場合、繊維の腐食による劣化は非常に著しくなる。
炭化珪素系繊維の代わりに耐アルカリ性に優れたジルコニア繊維を用いれば上記の腐食劣化は改善できると考えられる。しかしながら、現状のジルコニア繊維は、例えばニューセラミックスNo.8、53〜58ページ(1996年)に記載されているように主としてゾルゲル法により合成されており、その引張強度は1GPa未満と非常に低強度であり、実用上の強度が不足している。
さらに、繊維に触媒を担持させるためには、繊維の比表面積が大きい方が望ましいが、その比表面積は10m/g以下と小さい。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、優れた耐アルカリ性、耐酸化性、触媒機能及び/又は触媒担持機能を有する高強度なジルコニア含有無機繊維並びにその製造方法に関するものである。力学的特性を負担する中心部(シリカ相又は炭化珪素質相)と各種機能を負担する表層並びにその近傍相のジルコニア相からなり、なお且つ表層に向かった傾斜組成を有する繊維構造とすることにより、耐アルカリ性、耐酸化性に優れ、高い繊維強度と触媒機能及び/又は触媒担持機能を有する繊維が得られる。
【0007】
すなわち、本発明は、シリカ成分を主体とする第1相とジルコニアからなる第2相との複合酸化物相からなる繊維であって、繊維の表層に向かってZrの存在割合が傾斜的に増大していることを特徴とするジルコニア含有無機繊維に関するものである。
また、本発明は、炭化珪素を主体とする第1相とジルコニアからなる第2相との複合相からなる繊維であって、繊維の表層に向かってZrの存在割合が傾斜的に増大していることを特徴とするジルコニア含有無機繊維に関するものである。
【0008】
このジルコニア含有無機繊維において、シリカ成分を主体とする第1相は、非晶質であっても結晶質であっても良く、またシリカと固溶体或いは共融点化合物を形成し得る金属元素或いは金属酸化物を含有していても良い。シリカと固溶体を形成し得る金属元素(A)あるいはその酸化物がシリカと特定組成の化合物を形成し得る金属元素(B)としては特に限定されるものではないが、例えば(A)としてチタン、また(B)としてアルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、リチウム、ナトリウム、バリウム、カルシウム、ホウ素、亜鉛、ニッケル、マンガン、マグネシウム、鉄等があげられる。
また、このジルコニア含有無機繊維において、炭化珪素を主体とする第1相は、非晶質であっても結晶質であっても良い。
【0009】
シリカ成分又は炭化珪素を主体とする第1相は、本発明で得られる繊維の内部相を形成しており、力学的特性を負担する重要な役割を演じている。繊維全体に対する第1相の存在割合は98〜40重量%であることが好ましく、目的とする第2相の機能を十分に発現させ、なお且つ高い力学的特性をも発現させるためには、第1相の存在割合を50〜95重量%の範囲内に制御することが好ましい。
【0010】
一方、第2相を構成するジルコニアは、本発明では目的とする機能を発現させる上で重要な役割を演じるものであるが、非晶質でも結晶質でも良く、さらにカルシウムやイットリウムなどを固溶させたものでも良い。この繊維の表層部を構成する第2相の存在割合は、2〜60重量%が好ましく、その機能を十分に発現させ、また高強度をも同時に発現させるには5〜50重量%の範囲内に制御することが好ましい。この第2相を構成するZrの存在割合は、繊維の表面に向かって傾斜的に増大しており、その組成の傾斜が明らかに認められる領域の厚さは5〜500nmの範囲に制御することが好ましいが、繊維直径の約1/3に及んでも良い。尚、本発明において、第1相及び第2相の「存在割合」とは、第1相を構成する成分と第2相を構成する成分全体、即ち繊維全体に対する第1相の成分及び第2相の成分の重量%を意味している。
【0011】
本発明のジルコニア含有無機繊維の比表面積は、1m/g以上、好ましくは、5m/g超である。比表面積が1m/g未満であると、十分な触媒性能が得られないし、また触媒担持性能も不十分であるので好ましくない。
【0012】
次に、本発明で得られるジルコニア含有無機繊維の製法について説明する。
本発明においては、主として一般式
【化2】
Figure 0004082062
(但し、式中のRは水素原子、低級アルキル基又はフェニル基を示す。)で表される主鎖骨格を有する数平均分子量が200〜10,000のポリカルボシランを、一般式、Zr(OR’)n或いはZrR”m(R’は炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはフェニル基、R”はアセチルアセトナート、mとnは1より大きい整数)を基本構造とする有機ジルコニウム化合物で修飾した構造を有する変性ポリカルボシラン、或いは変性ポリカルボシランと有機ジルコニウム化合物との混合物を溶融紡糸し、不融化処理後、酸化雰囲気中又は不活性雰囲気中で焼成することによりジルコニア含有無機繊維が得られる。このとき、焼成の雰囲気を酸化雰囲気とすることにより第1相はシリカを主成分とする酸化物相となり、また不活性雰囲気とすることにより第1相は炭化珪素質相となる。
【0013】
本発明の方法の第1工程は、ジルコニア含有無機繊維を製造するための出発原料として使用する数平均分子量が1,000〜50,000の変性ポリカルボシランを製造する工程である。上記変性ポリカルボシランの基本的な製造方法は、特開昭56−74126号に極めて類似しているが、本発明では、その中に記載されている官能基の結合状態を注意深く制御する必要がある。これについて以下に概説する。
【0014】
出発原料である変性ポリカルボシランは、主として一般式
Figure 0004082062
(但し、式中のRは水素原子、低級アルキル基又はフェニル基を示す。)で表される主鎖骨格を有する数平均分子量が200〜10,000のポリカルボシランと、一般式Zr(OR’)n或いはZrR”m(R’は炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはフェニル基、R”はアセチルアセトナート、mとnは1より大きい整数)を基本構造とする有機ジルコニウム化合物とから誘導されるものである。
【0015】
ここで、本発明の傾斜組成を有する繊維を製造するには、上記有機ジルコニウム化合物の一部のみがポリカルボシランと結合を形成する緩慢な反応条件を選択する必要がある。その為には280℃以下、好ましくは250℃以下の温度で不活性ガス中で反応させる必要がある。この反応条件では、上記有機ジルコニウム化合物はポリカルボシランと反応したとしても、1官能性重合体として結合(即ちペンダント状に結合)しており、大幅な分子量の増大は起こらない。この有機ジルコニウム化合物が一部結合した変性ポリカルボシランは、ポリカルボシランと有機ジルコニウム化合物の相溶性を向上させる上で重要な役割を演じる。
【0016】
尚、2官能以上の多くの官能基が結合した場合は、ポリカルボシランの橋掛け構造が形成されると共に顕著な分子量の増大が認められる。この場合は、反応中に急激な発熱と溶融粘度の上昇が起こる。一方、上記1官能しか反応せず未反応の有機ジルコニウム化合物が残存している場合は、逆に溶融粘度の低下が観察される。
【0017】
本発明では、未反応の有機ジルコニウム化合物を意図的に残存させる条件を選択することが望ましい。本発明では、主として上記変性ポリカルボシランと未反応状態の有機ジルコニウム化合物或いは2〜3量体程度の有機ジルコニウム化合物が共存したものを出発原料として用いるが、変性ポリカルボシランのみでも、極めて低分子量の変性ポリカルボシラン成分が含まれる場合は、同様に本発明の出発原料として使用できる。
【0018】
本発明の方法の第2工程においては、前記第1工程で得られた変性ポリカルボシラン、或いは変性ポリカルボシランと低分子量の有機ジルコニウム化合物の混合物を溶融させて紡糸原液を造り、場合によってはこれをろ過してミクロゲル、不純物等の紡糸に際して有害となる物質を除去し、これを通常用いられる合成繊維紡糸用装置により紡糸する。紡糸する際の紡糸原液の温度は原料の変性ポリカルボシランの軟化温度によって異なるが、50〜200℃の温度範囲が有利である。上記紡糸装置において、必要に応じてノズル下部に加湿加熱筒を設けても良い。尚、繊維径は、ノズルからの吐出量と紡糸機下部に設置された高速巻き取り装置の巻き取り速度を変えることにより調整される。
【0019】
本発明の方法の第2工程は、前記溶融紡糸の他に、前記第1工程で得られた変性ポリカルボシラン、或いは変性ポリカルボシランと低分子量の有機ジルコニウム化合物の混合物を、例えばベンゼン、トルエン、キシレンあるいはその他該変性ポリカルボシランと低分子量有機ジルコニウム化合物を溶融することのできる溶媒に溶解させ、紡糸原液を造り、場合によってはこれをろ過してマクロゲル、不純物等紡糸に際して有害な物質を除去した後、前記紡糸原液を通常用いられる合成繊維紡糸装置により乾式紡糸法により紡糸し、巻き取り速度を制御して目的とする繊維を得ることができる。
【0020】
これらの紡糸工程において、必用ならば、紡糸装置に紡糸筒を取り付け、その筒内の雰囲気を前記溶媒のうち少なくとも1つの気体との混合雰囲気とするか、或いは空気、不活性ガス、熱空気、熱不活性ガス、スチーム、アンモニアガス、炭化水素ガス、有機ケイ素化合物ガスの雰囲気とすることにより、紡糸筒中の繊維の固化を制御することができる。
【0021】
次に本発明の方法の第3工程においては、前記紡糸繊維を酸化雰囲気中で、張力または無張力の作用の下で予備加熱を行い、前記紡糸繊維の不融化を行う。この工程は、後工程の焼成の際に繊維が溶融せず、且つ隣接繊維と接着しないことを目的として行うものである。処理温度並びに処理時間は、組成により異なり、特に規定しないが、一般に50〜400℃の範囲内で、数時間〜30時間の処理上条件が選択される。また、上記酸化雰囲気中には、水分、窒素酸化物、オゾン等、紡糸繊維の酸化力を高めるものが含まれていても良く、酸素分圧を意図的に変えても良い。
【0022】
ところで、原料中に含まれる低分子量物の割合によっては、紡糸繊維の軟化温度が50℃を下回る場合もあり、その場合は、あらかじめ上記処理温度よりも低い温度で、繊維表面の酸化を促進する処理を施す場合もある。尚、同第3工程並びに第2工程の際に、原料中に含まれている低分子量化合物の繊維表面へのブリードアウトが進行し、目的とする傾斜組成の下地が形成されるものと考えている。
【0023】
次に本発明の方法の第4工程においては、前記不融化した繊維を、張力または無張力下で、500〜1800℃の温度範囲で酸化雰囲気中において焼成し、目的とする、シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とジルコニア相(第2相)との複合相からなり、表層に向かってZrの存在割合が傾斜的に増大するジルコニア含有無機繊維を得る。
【0024】
また、この第4工程において、不活性雰囲気で焼成を行うことができる。前記不融化した繊維を、張力または無張力下で、500〜2000℃の温度範囲で不活性雰囲気中において焼成し、目的とする、炭化珪素質相(第1相)とジルコニア相(第2相)との複合相からなり、表層に向かってZrの存在割合が傾斜的に増大するジルコニア含有無機繊維を得る。
【0025】
本発明により、目的とする傾斜組成からなるジルコニア含有無機繊維の生成過程を、図1に模式的に示す。
【0026】
本発明のジルコニア含有無機繊維は、例えば、有害物質除去フィルターとして使用される。有害物質除去フィルターは、本発明のジルコニア含有無機繊維の織布から製造される。
織布の編織形式については特別の制限は無く、平織、朱子織、模紗織、綾織、からみ織、袋織、フェルト等のそれ自体公知の編織形式であることができる。この織布の目付け10〜500g/mである。この目付けを調整することにより濾過性能を調整することができる。フィルター形状は、平面状でも良いし、また円筒状、封筒状、円錐状等の種々の形態でもよい。
【0027】
また、前記フィルターを構成するジルコニア含有無機繊維の一部を、他の無機繊維、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等で構成してもよい。例えば、触媒機能を発揮する部分をジルコニア含有無機繊維で構成し、それ以外の部分をガラス繊維等の安価な繊維で構成することもできる。
【0028】
さらに、前記フィルターを構成するジルコニア含有無機繊維にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物等の黒煙粒子状物質(PM)除去触媒を担持させてもよい。
触媒を担持させる方法としては、所定の組成になるように調整した硝酸塩や酢酸塩の混合水溶液にフィルターを浸漬させ、ゆっくり水を蒸発させる単純担持法、該水溶液にフィルターを浸漬させた後、引き上げ、乾燥、焼成する工程を繰り返す繰り返し担持法等がある。
【0029】
【発明の効果】
本発明のジルコニア含有無機繊維は、シリカ成分又は炭化珪素を主体とする第1相とジルコニアからなる第2相との複合相からなるため、耐アルカリ性、耐酸化性に優れ、高い強度と触媒機能及び/又は触媒担持機能を有している。このジルコニア含有無機繊維の織布から製造されるフィルターは、通常のセラミックスにように脆く壊れることがなく耐久性に優れ、有害物質の除去性能にも優れる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
参考例1
5リットルの三口フラスコに無水トルエン2.5リットルと金属ナトリウム400gとを入れ窒素ガス気流下でトルエンの沸点まで加熱し、ジメチルジクロロシラン1リットルを1時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間加熱還流し沈殿物を生成させた。この沈殿をろ過し、まずメタノールで洗浄した後、水で洗浄して、白色粉末のポリジメチルシラン420gを得た。
ポリジメチルシラン250gを水冷還流器を備えた三口フラスコ中に仕込み、窒素気流下、420℃で30時間加熱反応させて数平均分子量が1200のポリカルボシランを得た。
【0031】
実施例1
参考例1の方法により合成されたポリカルボシラン16gにトルエン100gとテトラブトキシジルコニウム64gを加え、100℃で1時間予備加熱させた後、150℃までゆっくり昇温してトルエンを留去させてそのまま5時間反応させ、更に250℃まで昇温して5時間反応して変性ポリカルボシランを合成した。この変性ポリカルボシランに意図的に低分子量の有機金属化合物を共存させる目的で5gのテトラブトキシジルコニウムを加えて、変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物を得た。
【0032】
この変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物をトルエンに溶解させたのちガラス製の紡糸装置に仕込み、内部を十分に窒素置換してから昇温してトルエンを留去させて、180℃で溶融紡糸を行った。
紡糸繊維を、空気中、段階的に150℃まで加熱し不融化させた後、1200℃の空気中で1時間焼成を行いジルコニア含有無機繊維を得た。
【0033】
得られたジルコニア含有繊維(平均直径:10μm)は、X線回折の結果、非晶質シリカとジルコニアからなっており、繊維全体のZr/Si(モル比)は0.20であった。また、EPMAによる構成原子の分布状態を調べたところ、最外周部から1μmの領域でZr/Si(モル比)=0.85、最外周から3〜4μmの領域でZr/Si(モル比)=0.18、中心部でZr/Si=0.05と、表面に向かってジルコニウムが増大する傾斜組成になっていることを確認した。この繊維の引張強度は2.0GPaで、従来知られているゾルゲル法により得られたジルコニア繊維に比べて極めて高強度であった。また、この繊維の比表面積は10m/gであった。また、PHILIPS製の全自動蛍光X線分析装置(PW2400)を用いて測定した繊維全体におけるジルコニアの存在割合は20重量%であった。
【0034】
このジルコニア含有無機繊維をニードルパンチによりフェルト形状へと加工し、直径200mm、長さ500mmの円筒形のフィルターを作製した。
このフィルターの外側から100ppmNO、10%Oの混合ガスを300ppmのプロパン(還元剤)とともに10リットル/分の流量で流した。このときフィルターの内側面に電気ヒーターを設置し、フィルターの温度を600℃に保持した。フィルター通過後のガスをサンプリングしてNO濃度を化学発光法で測定したところ1ppm以下であった。
【0035】
また、ディーゼルエンジンからの排ガスを15リットル/分の流量で30分間このフィルターに通過させたところ、排ガス中の黒煙粒子状物質(PM)は95%捕集された。PMを捕集したフィルターを大気中1000℃で30分間加熱することによりPMを酸化除去し、フィルターを再生した。再生後のフィルターに損傷は認められなかった。
【0036】
実施例2
実施例1で作製したフィルター表面にPM除去触媒としてカリウム塩−酸化コバルト触媒を、硝酸カリウムと硝酸コバルトの水溶液にフィルターを浸漬した後、空気中600℃で焼成することにより担持させた。ディーゼルエンジンからの排ガスを15リットル/分の流量で30分間700℃に保持したフィルターに通過させたところ、排ガス中の黒煙粒子状物質(PM)は97%以上除去された。試験後のフィルターを観察したところ、腐食などの劣化は認められなかった。
【0037】
実施例3
実施例1で得られた不融化繊維を1400℃のアルゴンガス中で1時間焼成し、ジルコニア含有無機繊維を得た。得られたジルコニア含有繊維(平均直径:10μm)は、X線回折の結果、非晶質の炭化珪素とジルコニアからなっており、繊維全体のZr/Si(モル比)は0.20であった。また、EPMAによる構成原子の分布状態を調べたところ、最外周部から1μmの領域でZr/Si(モル比)=0.75、最外周から3〜4μmの領域でZr/Si(モル比)=0.20、中心部でZr/Si=0.10と、表面に向かってジルコニウムが増大する傾斜組成になっていることを確認した。この繊維の引張強度は2.2GPaで、従来知られているゾルゲル法により得られたジルコニア繊維に比べて極めて高強度であった。また、この繊維の比表面積は80m/gであった。また、PHILIPS製の全自動蛍光X線分析装置(PW2400)を用いて測定した繊維全体におけるジルコニアの存在割合は22重量%であった。
【0038】
このジルコニア含有無機繊維をニードルパンチによりフェルト形状へと加工し、直径200mm、長さ500mmの円筒形のフィルターを作製した。
このフィルターの外側から100ppmNO、10%Oの混合ガスを還元剤なしで、10リットル/分の流量で流した。このときフィルターの内側面に電気ヒーターを設置し、フィルターの温度を600℃に保持した。フィルター通過後のガスをサンプリングしてNO濃度を化学発光法で測定したところ30ppm以下となっており、繊維によってNOガスが吸着されていた。
また、このフィルターの外側から100ppmNO、10%Oの混合ガスを300ppmのプロパン(還元剤)とともに10リットル/分の流量で流した。このときフィルターの内側面に電気ヒーターを設置し、フィルターの温度を600℃に保持した。フィルター通過後のガスをサンプリングしてNO濃度を化学発光法で測定したところ1ppm以下であった。
【0039】
また、ディーゼルエンジンからの排ガスを15リットル/分の流量で30分間このフィルターに通過させたところ、排ガス中の黒煙粒子状物質(PM)は96%捕集された。PMを捕集したフィルターを大気中1000℃で30分間加熱することによりPMを酸化除去し、フィルターを再生した。再生後のフィルターに損傷は認められなかった。
【0040】
実施例4
実施例3で作製したフィルター表面に実施例2と同じ方法でPM除去触媒としてカリウム塩−酸化コバルト触媒を担持させた。ディーゼルエンジンからの排ガスを15リットル/分の流量で30分間700℃に保持したフィルターに通過させたところ、排ガス中の黒煙粒子状物質(PM)は99%以上除去された。試験後のフィルターを観察したところ、腐食などの劣化は認められなかった。
【0041】
実施例5
実施例4でカリウム塩―酸化コバルト触媒を担持させたフィルターを空気中800℃で100時間熱処理し、フィルターの耐久性を調べた。耐久試験後のフィルターから繊維を取り出し、電子顕微鏡で観察したところ、繊維に劣化は認められなかった。
【0042】
比較例1
ニューセラミックスNo.8、53〜58ページ(1996年)に記載の方法に従い、ジルコニウムテトラプロポキシドを主原料としてジルコニアゾルを作製し、これを紡糸し、1000℃の空気中で1時間焼成することによりジルコニア繊維を得た。得られた繊維(平均直径13μm)は、X線回折の結果、ジルコニアのみからなっていた。この繊維の引張強度は0.7GPaであり、また、比表面積は5m/gであった。実施例1〜4に記載のNOx除去試験及びPM除去試験を行うために、この繊維をニードルパンチによりフェルト形状に加工しようとしたところ、繊維が脆弱でフェルトへの加工は不可能であった。
【0043】
比較例2
市販の炭化珪素系繊維のフェルトを用いて直径200mm、長さ500mmの円筒形のフィルターを作製した。このフィルターの外側から100ppmNO、10%Oの混合ガスを300ppmのプロパン(還元剤)とともに10リットル/分の流量で流した。このときフィルターの内側面に電気ヒーターを設置し、フィルターの温度を600℃に保持した。フィルター通過後のガスをサンプリングしてNO濃度を化学発光法で測定したところ100ppm以下であり、NOの減少は認められなかった。
【0044】
また、ディーゼルエンジンからの排ガスを15リットル/分の流量で30分間このフィルターに通過させたところ、排ガス中の黒煙粒子状物質(PM)は95%捕集された。PMを捕集したフィルターを大気中1000℃で30分間加熱することによりPMを酸化除去し、フィルターを再生した。再生後のフィルターを観察したところ、排ガス中に含まれるアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物により、繊維に腐食と酸化が認められた。
【0045】
比較例3
比較例2で作製した炭化珪素系繊維のフィルター表面に実施例2と同じ方法でPM除去触媒としてカリウム塩−酸化コバルト触媒を担持させた。ディーゼルエンジンからの排ガスを15リットル/分の流量で30分間700℃に保持したフィルターに通過させたところ、排ガス中の黒煙粒子状物質(PM)は98%以上除去された。しかしながら、試験後のフィルターを観察したところ、触媒成分のカリウム塩により、繊維が著しく腐食している様子が認められた。
【0046】
比較例4
比較例3でカリウム塩―酸化コバルト触媒を担持させたフィルターを空気中800℃で100時間熱処理し、フィルターの耐久性を調べた。耐久試験後のフィルターから繊維を取り出し、電子顕微鏡で観察したところ、繊維は元の繊維形状をとどめないほど著しく劣化していた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明における目的とする傾斜組成からなるジルコニア含有無機繊維の生成過程を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施例3で得られた繊維の表面から内部に向っての組成の変化をオージェ電子分光スペクトルにより調べた結果を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施例3で得られた繊維の断面を示す図面に代える走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、本発明の実施例3で得られた繊維の表面付近の断面を示す図面に代える走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、本発明の実施例4で得られた触媒担持繊維の断面を示す図面に代える走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、本発明の実施例4で得られた触媒担持繊維の表面付近の断面を示す図面に代える走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、本発明の比較例3で得られた触媒担持繊維の断面を示す図面に代える走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、本発明の比較例3で得られた触媒担持繊維の表面付近の断面を示す図面に代える走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、本発明の実施例5の耐久試験後の繊維の断面を示す図面に代える走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、本発明の比較例4の耐久試験後の繊維の断面を示す図面に代える走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. シリカ成分を主体とする第1相とジルコニアからなる第2相との複合酸化物相からなる繊維であって、繊維の表層に向かってZrの存在割合が傾斜的に増大していることを特徴とするジルコニア含有無機繊維。
  2. 炭化珪素を主体とする第1相とジルコニアからなる第2相との複合相からなる繊維であって、繊維の表層に向かってZrの存在割合が傾斜的に増大していることを特徴とするジルコニア含有無機繊維。
  3. 繊維全体に対する第1相の存在割合が98〜40重量%、ジルコニアの存在割合が2〜60重量%である請求項1又は2に記載のジルコニア含有無機繊維。
  4. 繊維の比表面積が1m/g以上である請求項1〜3に記載のジルコニア含有無機繊維。
  5. 主として一般式
    Figure 0004082062
    (但し、式中のRは水素原子、低級アルキル基又はフェニル基を示す。)で表される主鎖骨格を有する数平均分子量が200〜10,000のポリカルボシランを、一般式Zr(OR’)n或いはZrR”m(R’は炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはフェニル基、R”はアセチルアセトナート、mとnは1より大きい整数)を基本構造とする有機ジルコニウム化合物で修飾した構造を有する変性ポリカルボシラン、或いは変性ポリカルボシランと有機ジルコニウム化合物との混合物を溶融紡糸し、不融化処理後、酸化雰囲気中あるいは不活性雰囲気中で焼成することを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア含有無機繊維の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載のジルコニア含有無機繊維の表面に触媒を担持させてなるジルコニア含有無機繊維。
  7. 請求項1又は2に記載のジルコニア含有無機繊維の織布からなることを特徴とする有害物質除去フィルター。
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