JP4081944B2 - 色分解画像修正方法、チャート、インクジェットプリンタ、色分解画像修正装置および記録媒体 - Google Patents
色分解画像修正方法、チャート、インクジェットプリンタ、色分解画像修正装置および記録媒体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色分解画像修正方法、チャート、インクジェットプリンタ、色分解画像修正装置および記録媒体に関し、特に、高彩度色材を用いた画像出力装置で目標色を再現する色材を決定する際の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常のイエローY,マゼンタM,シアンC,スミKといった色材以外の、いわゆる高彩度色材(特色)を用いたプリンタでは色材数が多く、目標色を再現するための色材の割合を決定することが難しいという問題があった。
【0003】
また、実用的な範囲での測定数で、このような色材数が多いプリンタの特性推定が可能な方法が望まれていた。
また、インクジェットプリンタでは色材数を増やすことが容易であり、多くの色材でも体系的な手法により求めることができる手法が望まれていた。
【0004】
(1)特願平5−36814号公報に記載の技術は、CMYKを色材として用いるプリンタの色分解画像修正方法について、前色域を、Kを含む3色で表される3次元の色域に分割して制限を加えて、目標色に対するCMYKの組み合わせを求めるようにしていた。これは、CMYKの4色のままでは任意の色を唯一に再現する組み合わせが存在しないためである。
【0005】
(2)また、CMYKの4色以外に高彩度色材(特色)としてオレンジOとグリーンGとを組み合わせて用いるプリンタの色域について論述したものとして、「HIFI Color Printing within a Color Management System」M.Mahy and D.D.Bear, The Fifth Color Imaging Conference: Color Science, Systems, and Applications, pp.277-283(1997) が存在している。なお、この論文においては、測色特性の推定には、解析モデルを使用している。
【0006】
(3)そして、CMYKを色材として用いる場合に、Kの量が増えてくるに従って測定点を減らすということについて、特開平2−86388号公報に記載されている。
【0007】
(4)また、3色プリンタの場合に測色調整する方法については、「Colorimetric calibration in electronic imaging devices using a look-up-table model and interpolations」 Po-Chieh Hung, Journal of Electronic Imaging 2(1), 53-61(1993)に記載されている。
【0008】
(5)また、CMYKの色域と他の3色による色域で構成される全色域を、なるべく特色を用いる方法・なるべく特色を用いないで出力する方法に関し、本件出願人は特願平10−196004号として提案を行っている。
【0009】
(6)また、色材量を制限するため、N入力−N出力の関数を利用して、実際の色材の上限を決定する方法に関し、本件出願人は特願平10−196005号として提案を行っている。
【0010】
(7)さらに、CMYKと特色との組み合わせでミニマム・HiFiカラー(Min HFC)、マキシマム・HiFiカラー(Max HFC)に関する手法が、P.C. Hung Colorimetric Calibration for High Quality Color Printers, PPIC/JH: Pan-Pacific Imaging Conference/Japan Hardcopy '98 pp.147-150(1998)に提案されている。
【0011】
【解決しようとする課題】
以上説明した従来技術は、それぞれ以下に述べるような問題を有している。
上記(1)の手法では、使用できる対象が4色のプリンタに限定され、CMY以外の高彩度色材(特色)を用いたときには対応することができなかった。
【0012】
また、上記(2)の手法では、CMYKOGの中からの任意の4色を取り出して色域を演算し、使用する色材を決定していたため、候補が複雑になるにもかかわらず、実行条件が開示されていなかった。また、測色特性の推定は、解析モデルを利用しているため、オフセット印刷などの明確な面積変調タイプのみが対象となっており、実質的にインクジェットプリンタなどには応用することができなかった。
【0013】
また、上記(3)の手法では、4色プリンタの場合が記載されているが、色材を多くすれば測定点が増えることになり実用的でなくなる。
また、上記(4)の手法についても、3色プリンタの例が記載されているが、色材を多くすれば測色調整をする測定点が増えて実用的でなくなる。
【0014】
また、上記(5)の手法については、CMYK以外では3色色域との組み合わせになっており、一部の色域が使用できなくなっていた。
また、上記(6)の手法については、CMYKと特色との組み合わせに応用する際の使用方法が具体的に示されていなかった。
【0015】
また、上記(7)の手法については、
CMYK,RMYK,GCYK,BMCKの組み合わせ、または、RYK,YGK,GCK,CBK,BMK,MRK,の組み合わせに限定されたそれぞれ、Min HFC、Max HFCが公開されたが、Kの使用方法を自由に選択することができなかった。
【0016】
すなわち、以上のようなことから、
・特色を用いた色再現で色再現を単純化することができなかった
・特色を用いた色再現で色材量を自由に制限することができなかった
・キャラクタライゼーションのための測色点が多数必要であった
・特色を用いた色再現で色材残量などを考慮して色材量を設定することができなかった
・耐久性がある顔料を用いたインクジェットプリンタでは、色域が狭かった
・各色で淡色インクを用いると色域を拡大することが可能であるが、ヘッドが大型化し、色再現の計算量も膨大になる
といった問題が生じている。
【0017】
本発明は、従来のCMYK色域内の色再現手法と組み合わせ、それよりも色域が広い範囲に対して、適切な特色の利用手法を実現することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決する本発明は以下に説明するようなものである。
(1)請求項1記載の発明は、電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材(特色)およびスミKを用いて再現するための色分解画像修正方法であって、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、前記分割色域とは異なる分割色域であって、Kおよび、任意の3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域との組み合わせで、かつ、いずれかの分割色域を生成する有彩色のいずれかがC、MおよびYを含む合成色域を用いて、前記目標色に対応する原色量の組合せを前記分割色域で求め、前記原色量の組合せに基づいて画像出力に用いられる色材の組み合わせを求めることを特徴とする色分解画像修正方法である。
【0019】
請求項20記載の発明は、電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材およびスミKを用いて再現するための色分解画像修正装置であって、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、前記分割色域とは異なる分割色域であって、Kおよび、任意の3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域との組み合わせで、かつ、いずれかの分割色域を生成する有彩色のいずれかがC、MおよびYを含む合成色域を用いて、前記目標色に対応する原色量の組合せを前記分割色域で求め、前記原色量の組合せに基づいて色材の組み合わせを求める処理手段を備える、ことを特徴とする色分解画像修正装置である。
【0020】
この発明では、特色を使用した場合の色域を4色の色域の組み合わせの色域に分解するため、従来の4色プリンタに対する手法を利用することができる。そして、各色域にKの設定を与えたり、特色の使用方法の設定を与えたりすることで、色材の組み合わせの自由度を高めることができる。
【0021】
(2)請求項2記載の発明は、前記合成色域は、前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた合成色域である、ことを特徴とする請求項1記載の色分解画像修正方法である。
請求項21記載の発明は、前記処理手段は、前記合成色域として、前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた合成色域を用いる、ことを特徴とする請求項20記載の色分解画像修正装置である。
【0022】
この発明では、上記(1)に加え、特色を用いた色域だけでは再現できない色域を作成することができ、また、従来のコストの低いCMYKの色材を利用できるようになる。
【0023】
(3)請求項3記載の発明は、前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域には、1色の特色と、その他の有彩色2色との組み合わせによる色域が含まれる、ことを特徴とする請求項1記載の色分解画像修正方法である。
【0024】
請求項22記載の発明は、前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域には、1色の特色と、その他の有彩色2色との組み合わせによる色域が含まれる、ことを特徴とする請求項20記載の色分解画像修正装置である。
【0025】
この発明では、上記(1)に加え、CMYK色域と同じ測色点を供給することができ、測色を簡略化することができる。
(4)請求項4記載の発明は、前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域には、2色の特色と、その他の有彩色1色との組み合わせによる色域が含まれる、ことを特徴とする請求項1記載の色分解画像修正方法である。
【0026】
請求項23記載の発明は、前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域には、2色の特色と、その他の有彩色1色との組み合わせによる色域が含まれる、ことを特徴とする請求項20記載の色分解画像修正装置である。
【0027】
この発明では、上記(1)に加え、高明度、高彩度付近の色を再現できる効率的な組み合わせを実現することができる。
(5)請求項5記載の発明は、色材量を制限するステップを有する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の色分解画像修正方法である。
【0028】
請求項24記載の発明は、前記処理手段は、色材量を制限する手段を有する、ことを特徴とする請求項20乃至請求項23のいずれかに記載の色分解画像修正装置である。
【0029】
この発明では、上記(1)〜(4)に加え、色材量を制限できることで、プリンタや受像メディアの最大色材量に合わせた色材量の制限が可能になる。
(6)請求項6記載の発明は、CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域、を用いて、画像出力に用いられる色材の組み合わせを求める、ことを特徴とする請求項1記載の色分解画像修正方法である。
【0030】
請求項25記載の発明は、CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域、を前記処理手段が用いる色域として指定可能な指示手段を有する、ことを特徴とする請求項21記載の色分解画像修正装置である。
【0031】
この発明では、色材の自由な設定が可能になる。すなわち、グレー付近でのKの使い方を指定可能であるため、グレーを安定させることが可能になる。また、高彩度付近での特色の使い方を指定可能であるため、コストに鑑みて特色の使用を削減することも可能になる。このため、Max BlackかつMin HFCといった使い方も可能になる。
【0032】
(7)請求項7記載の発明は、CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域に基づいて、作成された色変換テーブルを複数備えており、色材の残量により前記色変換テーブルを切り替える、ことを特徴とする請求項6記載の色分解画像修正方法である。
【0033】
請求項26記載の発明は、前記処理手段は、CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域に基づいて、作成された色変換テーブルを複数備えており、色材の残量により前記色変換テーブルを切り替える、ことを特徴とする請求項25記載の色分解画像修正装置である。
【0034】
この発明では、色材の残量により効率的な色材の使い方を変更することが可能になる。
(8)請求項8記載の発明は、CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域に基づいて、作成された色変換テーブルを複数備えており、入力された色分解画像信号の彩度情報に基づいて前記色変換テーブルを切り替える、ことを特徴とする請求項6記載の色分解画像修正方法である。
【0035】
請求項27記載の発明は、前記処理手段は、CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域に基づいて、作成された色変換テーブルを複数備えており、入力された色分解画像信号の彩度情報に基づいて前記色変換テーブルを切り替える、ことを特徴とする請求項25記載の色分解画像修正装置である。
【0036】
この発明では、入力された色分解画像信号の彩度情報に応じて、効率的な色材の使い方を変更することが可能になる。
(9)請求項9記載の発明は、前記色変換テーブルにスムージングを行う、ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の色分解画像修正方法である。
【0037】
請求項28記載の発明は、前記処理手段は、前記色変換テーブルにスムージングを行う、ことを特徴とする請求項26または請求項27に記載の色分解画像修正装置である。
【0038】
この発明では、色域間の接続部分での急激な色材量の変化を小さくし、プリンタの変動による疑似輪郭の発生を抑えることが可能になる。
(10)請求項10記載の発明は、前記スムージングにより発生した誤差を別の色変換テーブルにより補正する、ことを特徴とする請求項9記載の色分解画像修正方法である。
【0039】
請求項29記載の発明は、前記処理手段は、スムージングにより発生した誤差を別の色変換テーブルにより補正する、ことを特徴とする請求項28記載の色分解画像修正装置である。
【0040】
この発明では、スムージングによる色誤差を再びプリント調整することで、スムーズでありながら測色誤差の少ない色再現が可能になる。
(11)請求項11記載の発明は、測色用のチャートであって、請求項1乃至請求項5のいずれかの色分解画像修正方法により作られる組み合わせの色の出力により作成されたことを特徴とするチャートである。
【0041】
この発明では、4色用のチャートの拡張によって特色を利用したチャートを作成することができるため、4色用の測色手法を用いることができる。
(12)請求項12記載の発明は、測色用のチャートであって、請求項1乃至請求項5のいずれかの色分解画像修正方法により作られる組み合わせの色の出力であって、重複する部分が除外されて作成されたことを特徴とするチャートである。
【0042】
この発明では、4色用のチャートの拡張によって特色を利用したチャートを作成することができるだけでなく、重複部分が除外されているため、測色を簡略化することができる。
【0043】
(13)請求項13記載の発明は、電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材(特色)およびスミKの中から、Kと特色を含む3色の有彩色を用いて再現するための測色用のチャートであって、互いに異なる組み合わせの前記チャートの間において、同じ色として重複する色票が除外されていることを特徴とするチャートである。
【0044】
この発明では、重複部分が除外されているため、測色を簡略化することができる。
(14)請求項14記載の発明は、電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材(特色)およびスミKの中から、Kと特色を含む3色の有彩色を用いて再現するための測色用のチャートであって、特色を含むチャートでは特色を含まないチャートよりも色票が少ない、ことを特徴とするチャートである。
【0045】
この発明では、特色を含むチャートでは特色を含まないチャートよりも色票が少なくなっている部分があるため、測色を簡略化することができる。
(15)請求項15記載の発明は、電気信号として入力された色分解画像信号に応じて画像記録するインクジェットプリンタにおいて、前記色分解画像信号を前記請求項1乃至請求項10の色分解画像修正方法により修正する色分解画像修正装置を有することを特徴とするインクジェットプリンタである。
【0046】
この発明では、CMYK以外に特色用のヘッドを設けることで実現でき、安定した色再現を行うことが可能になる。
(16)請求項16記載の発明は、前記インクジェットプリンタであって、顔料による色材を用いたことを特徴とする請求項15記載のインクジェットプリンタである。
【0047】
この発明では、耐久性はあるが色域が狭い問題を有する顔料を用いても、十分な色域で色再現を行うことが可能になる。
(17)請求項17記載の発明は、Kについて少なくとも2種類の濃度の色材を用いることを特徴とする請求項15記載のインクジェットプリンタである。
【0048】
この発明では、最低限のインクやヘッドの追加により、一番目に付きやすいグレー付近でのざらつき感を減らすことが可能になる。
(18)請求項18記載の発明は、Kをなるべく使用するよう調整されたことを特徴とする請求項17記載のインクジェットプリンタである。
【0049】
この発明では、最低限のインクやヘッドの追加により、一番目に付きやすいグレー付近でのざらつき感を安定して減らすことが可能になる。また、色域が広い範囲に対して最低限の特色の利用で済ませることが可能になる。
【0050】
(19)請求項19記載の発明は、前記色分解画像修正方法の実行と並行して、色域マッピング後の色座標を保持しておき、この色座標を再現する他の機器の色材量の組み合わせを求める、ことを特徴とする請求項1乃至請求項10記載の色分解画像修正方法である。
【0051】
この発明では、色材用の色に分解することなくプルーフ用のテーブルを作成することが可能になり、その際の計算量を減らすことができる。
(20)請求項30記載の発明は、電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材(特色)およびスミKを用いて再現するための色分解画像修正処理プログラムが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体であって、前記色分解画像修正処理プログラムは、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、前記分割色域とは異なる分割色域であって、Kおよび、任意の3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域との組み合わせで、かつ、いずれかの分割色域を生成する有彩色のいずれかがC、MおよびYを含む合成色域を用いて、前記目標色に対応する原色量の組合せを前記分割色域で求め、前記原色量の組合せに基づいて色材の組み合わせを求めるステップを含んでいる、ことを特徴とするコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【0052】
この発明では、特色を使用した場合の色域を4色の色域の組み合わせの色域に分解するため、従来の4色プリンタに対する手法を利用することができる。そして、各色域にKの設定を与えたり、特色の使用方法の設定を与えたりすることで、色材の組み合わせの自由度を高めることができる。
【0053】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態例の色分解画像修正方法、チャート、インクジェットプリンタ、色分解画像修正装置および記録媒体について、図面を参照しつつ説明を行なう。
【0054】
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態例の色分解画像修正方法を実行するための色分解画像修正装置1の全体について説明を行なう。なお、ここに示す実施の形態例では、シアンC,マゼンタM,イエローY,スミK以外に高彩度色材(特色)としてレッドR,グリーンG,ブルーBの3色を用いる場合を示す。なお、高彩度色材については、ここに示す色やその色数に限定されるものではない。
【0055】
ここで、10はアドレス信号形成手段であり、外部から供給される三種の入力信号のそれぞれについて入力レベルに応じたアドレス信号を形成するものであって、入力信号の各色(各成分)ごとにルックアップテーブル11〜13で構成されている。なお、ルックアップテーブル11〜13のそれぞれには、制御手段としてのコントローラ50から1ビットの振り分け信号が供給されている。
【0056】
なお、ここでの三種の入力信号は、CMYやRGBといった色分解画像信号のほか、L*a*b*やXYZであってもよい。
20は色再現情報記憶手段であり、色再現すべく入力される三種の入力信号により形成される色空間を複数の空間領域に分割し、その空間領域での組み合わせに対する色再現情報が格納されている。ここでは、三種の入力信号を3色の特色を含んだCMYKRGB合計7色の信号として出力すべく、CMYKRGBに対応したルックアップテーブル21〜27により構成されている。
【0057】
重み係数記憶手段25は入力された色分解画像信号に基づいていろ色再現情報記憶手段20より選択される複数の色再現情報のそれぞれに対する重み付け情報を記憶しており、必要に応じて重み係数を出力する。
【0058】
30は掛け算手段と割り算手段とからなる処理手段であり、前記色再現情報記憶手段20からの色再現情報と前記重み係数記憶手段25からの重み係数とを掛け算し、その値を累積することにより、最終的に得ようとするCMYKRGBの修正色分解画像信号それぞれを得るものである。このため、掛算器31a〜37aと、累算器31b〜37bにより構成されている。
【0059】
40は出力手段であり、処理手段30からの修正色分解画像信号(累算出力)それぞれをラッチ41〜47によりラッチして出力するものである。この際に必要となるラッチパルスはコントローラ50により生成される。また、ユーザの指示は指示手段60を介してコントローラ50に入力される。
【0060】
ここで、図1の色再現情報記憶手段20に入れるデータの求め方として、本実施の形態例では、N色から適切な3色ないしは4色を選択して複数の分割色域を作り、これらを組み合せた合成色域を利用して色再現する分割法を用いる。
【0061】
この場合において、同じ色を再現する場合でもできるだけ特色を用いて再現する組み合せをMaximum HFC(以下、Max HFC)と呼び、できるだけ特色を用いずに再現する組み合せをMinimum HFC(以下、Min HFC)と呼ぶ。これは4色の色再現問題で、既知の手法であるMaximum Black(以下、Max Black)とMinimum Black(以下、Max Black)の考え方を拡張したものである。
【0062】
特色の色再現:
ところで、特色の典型的な選択方法は、CMYKに加え、BGRなどの二次色の原色を付け加えることである。色数が増えると測色特性を得るための測色点(characterization data)が級数的に増える問題がある。特色をBGRとした場合、合計の色数は7色となるため、単純には各色中間レベル数の7乗もの測色点を必要とする。
【0063】
例えば各色5点ずつの中間レベルであれば、7色では、57=78125にもなり、自動測定装置を用いたとしても実用的な測色点数とはいえない。さらに、この場合、すべての色を同時に用いる組み合せを含むが、各色インク1色を100%としたとき、総インク量を700にして用いることは、記録紙の乾燥時間などの問題から現実的ではない。
【0064】
なお、本願明細書においては、MNと表記しているばあいは、MのN乗であることを意味している。
そこで最大4色の組み合せとして分割色域を作り、この組み合わせで全色域を構成することを考える。ただし、最大インク量が400%でも乾燥やインク吸収量を考えるとまだ多過ぎることが知られている。印刷では300〜400%と言われ、吸収容量の少ないメディアを用いたインクジェットプリンタは200%前後になる。既にKを含む4色では色材量制限が利用できることから、Kと有彩色3色の組み合せによる分割法を考察する。
【0065】
無彩色Kを含む合計N色とすると、分割法による組み合せ数Mは、
M=((N−1)!)/((N−4)!3!)
で示される。
【0066】
特色としてBGRを用いたときにはN=7になるので、20の分割色域ができる。
その中から、CMYK色域およびその他の組み合わせで高明度付近の色域を再現できるもの(hi-fi色域と呼ぶ)は、YRMK,YGCK,MBCK,RKGK,GCBK,BMRK,の各分割色域からの組み合わせになる。
【0067】
なお、特色の色域を明確にするため、印刷のCMYK原色の反射率およびCRTのBGR原色の反射率換算の分光反射率をもった色材を仮定し、また、濃度加法則で計算して、特色を用いたプリンタの特性をCMYKRGBの各色材を用いて調べたところ、以下のことが判明した。
【0068】
ここで、組み合わせた場合に最大の色域を確保できる組み合わせとしては、
・YRMK,YGCK,MBCKの分割色域を合成して得た合成色域A、
・RKGK,GCBK,BMRKの分割色域を合成して得た合成色域B、
の2つであることが明らかになった。
【0069】
これらの、YRMK,YGCK,MBCKの分割色域を合成して得た合成色域Aと、RKGK,GCBK,BMRKの分割色域を合成して得た合成色域Bとにおいて、3色域の合成色域では高明度の色域は再現できるが、低明度の色域は完全に再現できないことが判明した。全色域を再現するためにはより多くの分割色域を必要とするが、もともと特色の使用目的が高明度高彩度部分の色域拡大にあること、暗部のわずかな違いであることから、以後、この3色域による合成色域を対象として説明する。
【0070】
次に、この2種類の合成色域のいずれを用いるか決める上で、以下の分割色域の性質を考慮する:
・hi-fi色域でMin Blackを指定するといずれの分割色域も縮退してしまい(後述)、高彩度付近のみの色域となるため低彩度のCMYK色域を必要とする。
・合成色域Aは、Min HFCとする場合にCMYK色域の境界面と同じ、例えば、W−Y−M−YMを4頂点とする面が存在するのに対し、合成色域Bの組み合せではこの面に対応する組み合せが存在しない。
・合成色域Bは合成色域Aに比ベCMYK色域と共通な色票が少ないため、測色点を減らしにくい。
【0071】
以上の性質から、以後、特色を用いた4色からなる3つの色域が合成された合成色域Aと、CMYK色域とを組み合せた、合計4つの色域でできる合成色域を用いることが望ましい。
【0072】
手順:
ここで、あらかじめMax Black/Min BlackおよびMax HFC/Min HFCを限定しない特色色再現の手順を以下に示す。
【0073】
ステップ1:
まず、上述した合成色域Aについてのチャート(カラーパッチ)を作成する。ここでは、基本となるCMYKの色域と、YRMK,YGCK,MBCKの分割色域を合成して得た合成色域Aとから構成されたチャートを作成する。ここで、図2はCMYKのチャートを示し、図3はYRMKのチャートを示し、図4はYGCKのチャートを示し、図5はMBCKのチャートを示している。このようなチャートを用いることで、従来の4色用のチャートの拡張によって特色を利用したチャートを作成することができるため、4色用の測色手法を用いることができるようになる。
【0074】
ステップ2:
CMYK色域と合成色域Aの3色域の格子点に対する測色値を得る。ここで各色域の格子点数としては、312(=53+53+33+33+23)程度を用いる。すなわち、上述した図2〜図5のチャートの格子点全てでは測定点数が多いため、CMYKのチャートに関しては図6に示すようにして312個の測色値を得る。図3乃至図5に示した他の色域についても同様である。
【0075】
測定点数を減らすには、
▲1▼暗くなるにしたがって、色のステップ(色票)を減らす(図6参照)。
▲2▼分割色域のチャート(図2〜図5)の間で、重複色票を削除する(不図示)。
▲3▼特色増加のときのステップ数を減らす。たとえば、図3でRが5ステップ(R=0,64,128,192,255)あるのを3ステップ(R=0,128,255)に減らす(図7参照)。
【0076】
この場合、4色用のチャートの拡張によって特色を利用したチャートを作成することができるだけでなく、重複部分が除外され、さらに特色のステップ数が削減されており、測色を簡略化することができる。
【0077】
ステップ3:
それぞれのデータを補間し、4つの色立体についてLUTモデル(n4のシステム値入力で、均等色空間の座標であるLCC出力を持つLUT)を作成する。
【0078】
ステップ4:
目標とする機器のLUTモデル(m3のシステム値入力で、LCC出力を持つ)を作成する。
【0079】
ステップ5:
目標とする機器の各LCC値を4つの色域について探索し、色域マッピングを行うための圧縮直線(L*軸からの放射線)の最も外側の値を求める。
【0080】
ステップ6:
色域マッピング方法に従い、目標横器のLCC値に村応するマッピング先LCC値を決定する。
【0081】
ステップ7:
それぞれの色域で対応する原色量の組み合わせ(以後、原色量と呼ぶ)を求める。同時に色域内外を判定する。
【0082】
ステップ8:
(a)Min HFCの場合:CMYK色域内にある場合は、この原色量を与える。CMYK色域外の場合には、いずれかのhi-fi色域にあるはずなので、それを探して原色量を与える。
(b)Max HFCの場合:hi-fi色域で色域内になるものを選び、その色度点を与える。シャドー部でいずれのhi-fi色域にも属さない場合は、CMYK色域の原色量を与える。なお、各分割色域内で計算は、Min Black、Max Blackの指定に従い、原色量を算出する。
【0083】
ステップ9:
これを目標槻器のLUTモデルの格子点すべてについて行い、目標機器から出力機器への関係を作るデバイスリンクプロファイルを作る。
【0084】
そして、以上のステップ1〜ステップ9のようにして求められた特色色再現のための色再現情報が、色再現情報記憶手段20(ルックアップテーブル21〜27)に記憶される。
【0085】
以上の手順のようにすることで、特色を使用した場合の色域を4色の色域の組み合わせの色域に分解するため、従来の4色プリンタに対する手法を利用することができる。そして、各色域にKの設定を与えたり、特色の使用方法の設定を与えたりすることで、色材の組み合わせの自由度を高めることができる。
【0086】
また、以上のように、特色を用いた色域と従来のCMYKの色域との両方を含めるようにしたことで、特色を用いた色域だけでは再現できない色域を作成することができ、また、従来のコストの低いCMYKの色材を利用できるようになる。
【0087】
なお、本実施の形態例で生成される色域には、少なくとも1色の特色と、その他の2色との組み合わせによる色域が含まれる(上述の合成色域A)ため、CMYK色域と同じ測色点を供給することができ、測色を簡略化することができる。
【0088】
また、別の実施の形態例で生成される色域には、少なくとも2色の特色と、その他の1色との組み合わせによる色域が含まれる(上述の合成色域B)ため、高明度、高彩度付近の色を再現できる効率的な組み合わせを実現することができる。
【0089】
また、本実施の形態例では、色材量を制限するステップまたは手段を有することで、色材量を制限でき、プリンタや受像メディアの最大色材量に合わせた色材量の制限が可能になる。
【0090】
また、本実施の形態例では、色材の設定方法として、グレー付近でのKの使い方、および、高彩度付近での特色の使い方が指定可能であることを特徴としている。すなわち、CMYK色域と各hi-fi色域で、それぞれKの使用方法が選べ、さらにCMYK色域、hi-fi色域の使用方法によりバリエーションが生じる。
【0091】
すなわち、
・CMYK色域のKの使用方法(Max Black/Min Black/Smoothest Black)
・各hi-fi色域のKの使用方法(Max Black/Min Black)
・上記色域同士の使用方法(Max HFC/Min HFC)
について、それぞれを組み合わせろと、数多くの選択肢が発生する。実用的には、グレー付近のKの取り扱い、また、高い彩度付近での特色の取り扱いのそれぞれについて選択肢を与えることで十分であろう。この取り扱いの選択肢をまとめると、図8に示すようになる。
【0092】
ここでは、指示手段60(図1参照)を介したユーザの指定により、パターン1〜パターン4が考えられる。この実施の形態例では、色材の自由な設定が可能になる。すなわち、グレー付近でのKの使い方を指定可能であるため、グレーを安定させることが可能になる。また、高彩度付近での特色の使い方を指定可能であるため、コストに鑑みて特色の使用を削減することも可能になる。このため、Max BlackかつMin HFCといった使い方も可能になる。
【0093】
また、本発明の実施の形態例では、以上のような色材の設定のために作成された色変換テーブル(図1におけるLUT)を複数備えており、色材の残量により切り替える、ことを特徴としている。例えば2種類のR1(第1の赤)とR2(第2の赤)を用いた場合、YR1MKとYR2MKの2つの色立体が発生する。このとき、この2の色立体は明らかにオーバーラップするため、その部分の色座標の再現時にはいずれの色域を利用するかを決定する必要がある。この場合、どちらかに優先順位をつけ、双方の色立体に含まれている場合には優先順位の高い色の組み合せを割り振る。現実的には、色材価格の低い方を優先したり、優先順位を変えた2種類のLUTをつくっておき色材の残量で切りかえるなどの利用方法が考えられる。この結果、色材の残量により効率的な色材の使い方を変更することが可能になる。
【0094】
また、本発明の実施の形態例では、以上のような色材の設定のために作成された色変換テーブル(図1におけるLUT)を複数備えており、入力された色分解画像信号の絵柄の種類により切り替える、ことも可能である。なお、ここで「絵柄」とは、画像に含まれる高彩度の面積の大小などを意味する。たとえば、グレー成分が多ければ、CMYKの色材を用いるようにし、高彩度であれば特色の色材を用いるようにする。この結果、入力された色分解画像信号の絵柄に応じて、効率的な色材の使い方を変更することが可能になる。
【0095】
また、本発明の実施の形態例では、以上のような色材の設定のために作成された色変換テーブル(図1におけるLUT)を複数備えており、スムージングを行う、ことを特徴としている。
【0096】
すなわち、本手法では分割法の問題点がそのまま残り、組み合わせた色域境界で滑らかな原色量の変化が保証されないため、プリンタの特性変動時に疑似輪郭の要因となる問題がある。4色の場合は全ての特性が測定できたため、Smoothest Black法で目標色を保証しながら色立体間の接続が滑らかになるようにすることができた。しかし、hi-fi印刷の場合、色材数が多すぎて、すべての特性を測定できないため、目標色を維持することができない。
【0097】
まず、分割されたCMYK色域及び、hi-fi色域でのSmoothest Blackの適用を考察する。CMYK色域に対しては、Smoothest Blackを適用可能であるが、hi-fi色域内では次の問題が発生し、適用ができない。すなわち、hi-fi色域ではMax Blackに比べて、Min Black時の色域体積が大きく減少する。
【0098】
この状況を図9に示す。CMYK色域では色域が凸のためMin Black,Max Blackともに同一体積(図9(a),(b))だったが、色域形状が凹になるhi-fi色域では同一体積が保証されない(図9(b)(c))。
【0099】
このためMin HFC時のCMYK色域についてはSmoothest Blackが適用可能なものの、hi-fi色域内、CMYK色域間では滑らかな接続が保証されない。
そこで、出来上がったLUTを単純に直接スムージングした時の色変化を調べた。そして、色変換テーブルに対し、この出力を次式で平均する。
【0100】
【数1】
【0101】
ここで、SはLUTの出力でCMYKBGRのいずれかとする。
k,j,iはLUTのグリッドの座標で、範囲は、0〜L-1とする(LはLUTの格子点数)。ただし、k+kk,j+jj,i+iiが0未満、または、L-1を超える場合には、その軸方向のデータは平均化データとして参入しない。これにより色域の縮小を防ぐ。
【0102】
以上の式により平均化されたLUTの出力から、前述のプリンタモデルを用いて色座標を計算し、元のLUTから計算された色座標と比較する。平均化回数と、白−黒、シアン−赤マゼンタ−緑、黄−青のグラデーションの原色量の変化(黄−青のみ)と平滑化による誤差増加は図10のようになる。
【0103】
これを見ると部分的に大きな誤差が発生している。この理由は青付近でもともと誤った色が算出されたためで、平滑化がこの誤った色を消す効果を果たしているためと考えられる。しかし、この特異点を除けば、同プリンタシステムにおいては最大色差5程度を許すと、図11に示すように原色量の変化が明確に滑らかになることが分かる。なお、この誤差を補正する必要があれば、ここで作成したLUTを「接続関数」として用い、再プリントして、微調整用LUTを作成することで精度向上が可能である。このような実施の形態例では、色域間の接続部分での急激な色材量の変化を小さくし、プリンタの変動による疑似輪郭の発生を抑えることが可能になる。
【0104】
なお、ここで、「接続関数」とは、図12に示すように、予め少ない変数との接続関数を決定して、架空の3色ないしは4色プリンタを構成し、それに対して従来の色再現の手法を適用するためのものである。
【0105】
すなわち、図12に示す例では、100は入力信号(L*a*b*、RGB、XYZなど)から修正された色分解画像信号(CMYKRGB)への変換を行う最終的なプロファイルであり、変換テーブルとしてのプロファイルを保持するプロファイル保持部110と、接続関数を備えたLUT120とを備えている。また、200はN色のプリンタであり、ここではCMYKRGBの7色の色材で画像形成を行うものである。そして、前記接続関数120とプリンタ200とにより、仮想のプリンタ300が構成されている。
【0106】
<その他の実施の形態例>
▲1▼インクジェットプリンタへの応用:
以上説明した色分解画像修正方法または色分解画像修正装置をインクジェットプリンタに提要することで、CMYK以外に特色用のヘッドを設けることで実現でき、安定した色再現を行うことが可能になる。
【0107】
また、本発明を適用したインクジェットプリンタでは、顔料による色材を用いることが好ましい。この場合は、耐久性はあるが色域が狭い問題を有する顔料を用いても、十分な色域で色再現を行うことが可能になる。
【0108】
また、本発明を適用したインクジェットプリンタでは、Kについて少なくとも2種類の濃度の色材を用いることが好ましい。このようにすることで、最低限のインクやヘッドの追加により、一番目に付きやすいグレー付近でのざらつき感を減らすことが可能になる。また、そのようなインクジェットプリンタでは、Max BlackのようにKをなるべく使用するよう調整されていることが好ましい。これにより、最低限のインクやヘッドの追加により、一番目に付きやすいグレー付近でのざらつき感を安定して減らすことが可能になる。また、色域が広い範囲に対して最低限の特色の利用で済ませることが可能になる。また、Kに加え、もしくは、Kの代わりに、高濃度の特色(たとえばB)について2種類の濃度の色材を用いるようにしても、同様な効果が得られる。
【0109】
▲2▼カラープルーフへの応用:
なお、本発明において、以上説明した色分解画像修正処理の実行と並行して、色域マッピング後の色座標を保持しておき、この色座標を再現する他の機器(CRTディスプレイやプリンタ)の色材量の組み合わせを求める、ことも好ましい。この手法では、色材用の色に分解するすることなくプルーフ用のテーブルを作成することが可能になり、その際の計算量を減らすことができる。たとえば、従来はL*a*b*からN色(たとえば、7色)のデータに変換し、そのN色のデータからさらにRGBの3色のデータを求めるようにしていたが、この手法ではL*a*b*を色域マッピングして生成したL*′a*′b*′を保持しておき、そこからCRTディスプレイであればRGBの値を求めればよい。
【0110】
▲3▼処理プログラムへの応用:
なお、以上説明した色分解画像修正処理のプログラム、すなわち、電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材(特色)およびスミKを用いて再現するための色分解画像修正処理プログラムであって、前記色分解画像修正処理プログラムは、Kおよび、有彩色の3色により生成される複数の色域を組み合わせて、実際に用いられる色材の組み合わせを求めるステップと、特色の使用方法かKの設定方法のいずれかまたは両方が与えられるステップと、を含むものが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体も、本発明の一部を構成している。
【0111】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明によれば、以下のような効果が得られる。
(1)請求項1と請求項20記載の発明では、特色を使用した場合の色域を4色の色域の組み合わせの色域に分解するため、従来の4色プリンタに対する手法を利用することができる。そして、各色域にKの設定を与えたり、特色の使用方法の設定を与えたりすることで、色材の組み合わせの自由度を高めることができる。
【0112】
(2)請求項2と請求項21に記載の発明では、特色を用いた色域だけでは再現できない色域を作成することができ、また、従来のコストの低いCMYKの色材を利用できるようになる。
【0113】
(3)請求項3と請求項22に記載の発明では、CMYK色域と同じ測色点を供給することができ、測色を簡略化することができる。
(4)請求項4と請求項23に記載の発明では、高明度、高彩度付近の色を再現できる効率的な組み合わせを実現することができる。
【0114】
(5)請求項5と請求項24に記載の発明では、色材量を制限できることで、プリンタや受像メディアの最大色材量に合わせた色材量の制限が可能になる。
(6)請求項6と請求項25に記載の発明では、色材の自由な設定が可能になる。すなわち、グレー付近でのKの使い方を指定可能であるため、グレーを安定させることが可能になる。また、高彩度付近での特色の使い方を指定可能であるため、コストに鑑みて特色の使用を削減することも可能になる。このため、Max BlackかつMin HFCといった使い方も可能になる。
【0115】
(7)請求項7と請求項26に記載の発明では、色材の残量により効率的な色材の使い方を変更することが可能になる。
(8)請求項8と請求項27に記載の発明では、入力された色分解画像信号の絵柄に応じて、効率的な色材の使い方を変更することが可能になる。
【0116】
(9)請求項9と請求項28に記載の発明では、色域間の接続部分での急激な色材量の変化を小さくし、プリンタの変動による疑似輪郭の発生を抑えることが可能になる。
【0117】
(10)請求項10と請求項29に記載の発明では、スムージングによる色誤差を再びプリント調整することで、スムーズでありながら測色誤差の少ない色再現が可能になる。
【0118】
(11)請求項11記載の発明では、4色用のチャートの拡張によって特色を利用したチャートを作成することができるため、4色用の測色手法を用いることができる。
【0119】
(12)請求項12記載の発明では、4色用のチャートの拡張によって特色を利用したチャートを作成することができるだけでなく、重複部分が除外されているため、測色を簡略化することができる。
【0120】
(13)請求項13記載の発明では、重複部分が除外されているため、測色を簡略化することができる。
(14)請求項14記載の発明では、特色を含むチャートにおいて特色を含まないチャートよりも色票が少なくなっている部分があるため、測色を簡略化することができる。
【0121】
(15)請求項15記載の発明では、インクジェットプリンタに、CMYK以外に特色用のヘッドを設けることで実現でき、安定した色再現を行うことが可能になる。
【0122】
(16)請求項16記載の発明では、インクジェットプリンタにおいて、耐久性はあるが色域が狭い問題を有する顔料を用いても、十分な色域で色再現を行うことが可能になる。
【0123】
(17)請求項17記載の発明では、インクジェットプリンタにおいて、最低限のインクやヘッドの追加により、一番目に付きやすいグレー付近でのざらつき感を減らすことが可能になる。
【0124】
(18)請求項18記載の発明では、インクジェットプリンタにおいて、最低限のインクやヘッドの追加により、一番目に付きやすいグレー付近でのざらつき感を安定して減らすことが可能になる。また、色域が広い範囲に対して最低限の特色の利用で済ませることが可能になる。
【0125】
(19)請求項19記載の発明では、色材用の色に分解することなくプルーフ用のテーブルを作成することが可能になり、その際の計算量を減らすことができる。
【0126】
(20)請求項30記載の発明では、特色を使用した場合の色域を4色の色域の組み合わせの色域に分解するため、従来の4色プリンタに対する手法を利用することができる。そして、各色域にKの設定を与えたり、特色の使用方法の設定を与えたりすることで、色材の組み合わせの自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例の色分解画像修正方法、チャート、インクジェットプリンタ、色分解画像修正装置および記録媒体で使用する装置の電気的構成を機能ブロックごとに示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態例のチャートの一例を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態例のチャートの一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態例のチャートの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態例のチャートの一例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態例のチャートの一例を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態例のチャートの一例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態例における色材の組み合わせの例を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態例における色域体積の様子を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態例における平滑化による誤差増加の様子を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態例におけるスムージング回数による誤差変化の様子を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態例における接続関数の説明をする説明図である。
【符号の説明】
10 アドレス信号形成手段
20 色再現情報記憶手段
25 重み係数記憶手段
30 処理手段
40 出力手段
50 コントローラ
60 指示手段
Claims (30)
- 電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材(特色)およびスミKを用いて再現するための色分解画像修正方法であって、
Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、前記分割色域とは異なる分割色域であって、Kおよび、任意の3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域との組み合わせで、かつ、いずれかの分割色域を生成する有彩色のいずれかがC、MおよびYを含む合成色域を用いて、前記目標色に対応する原色量の組合せを前記分割色域で求め、前記原色量の組合せに基づいて画像出力に用いられる色材の組み合わせを求めることを特徴とする色分解画像修正方法。 - 前記合成色域は、前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた合成色域である、
ことを特徴とする請求項1記載の色分解画像修正方法。 - 前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域には、1色の特色と、その他の有彩色2色との組み合わせによる色域が含まれる、
ことを特徴とする請求項1記載の色分解画像修正方法。 - 前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域には、2色の特色と、その他の有彩色1色との組み合わせによる色域が含まれる、
ことを特徴とする請求項1記載の色分解画像修正方法。 - 色材量を制限するステップを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の色分解画像修正方法。 - CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域、
を用いて、画像出力に用いられる色材の組み合わせを求める、
ことを特徴とする請求項1記載の色分解画像修正方法。 - CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域に基づいて、作成された色変換テーブルを複数備えており、色材の残量により前記色変換テーブルを切り替える、
ことを特徴とする請求項6記載の色分解画像修正方法。 - CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域に基づいて、作成された色変換テーブルを複数備えており、入力された色分解画像信号の彩度情報に基づいて前記色変換テーブルを切り替える、
ことを特徴とする請求項6記載の色分解画像修正方法。 - 前記色変換テーブルにスムージングを行う、
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の色分解画像修正方法。 - 前記スムージングにより発生した誤差を別の色変換テーブルにより補正する、
ことを特徴とする請求項9記載の色分解画像修正方法。 - 測色用のチャートであって、請求項1乃至請求項5のいずれかの色分解画像修正方法により作られる組み合わせの色の出力により作成されたことを特徴とするチャート。
- 測色用のチャートであって、請求項1乃至請求項5のいずれかの色分解画像修正方法により作られる組み合わせの色の出力であって、重複する部分が除外されて作成されたことを特徴とするチャート。
- 電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材(特色)およびスミKの中から、Kと特色を含む3色の有彩色を用いて再現するための測色用のチャートであって、
互いに異なる組み合わせの前記チャートの間において、同じ色として重複する色票が除外されていることを特徴とするチャート。 - 電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材(特色)およびスミKの中から、Kと特色を含む3色の有彩色を用いて再現するための測色用のチャートであって、
特色を含むチャートでは特色を含まないチャートよりも色票が少ない、
ことを特徴とするチャート。 - 電気信号として入力された色分解画像信号に応じて画像記録するインクジェットプリンタにおいて、
前記色分解画像信号を前記請求項1乃至請求項10の色分解画像修正方法により修正する色分解画像修正装置を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 前記インクジェットプリンタであって、
顔料による色材を用いたことを特徴とする請求項15記載のインクジェットプリンタ。 - Kについて少なくとも2種類の濃度の色材を用いることを特徴とする請求項15記載のインクジェットプリンタ。
- Kをなるべく使用するよう調整されたことを特徴とする請求項17記載のインクジェットプリンタ。
- 前記色分解画像修正方法の実行と並行して、色域マッピング後の色座標を保持しておき、
この色座標を再現する他の機器の色材量の組み合わせを求める、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10記載の色分解画像修正方法。 - 電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材およびスミKを用いて再現するための色分解画像修正装置であって、
Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、前記分割色域とは異なる分割色域であって、Kおよび、任意の3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域との組み合わせで、かつ、いずれかの分割色域を生成する有彩色のいずれかがC、MおよびYを含む合成色域を用いて、前記目標色に対応する原色量の組合せを前記分割色域で求め、前記原色量の組合せに基づいて色材の組み合わせを求める処理手段を備える、
ことを特徴とする色分解画像修正装置。 - 前記処理手段は、前記合成色域として、前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた合成色域を用いる、
ことを特徴とする請求項20記載の色分解画像修正装置。 - 前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域には、1色の特色と、その他の有彩色2色との組み合わせによる色域が含まれる、
ことを特徴とする請求項20記載の色分解画像修正装置。 - 前記Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域には、2色の特色と、その他の有彩色1色との組み合わせによる色域が含まれる、
ことを特徴とする請求項20記載の色分解画像修正装置。 - 前記処理手段は、色材量を制限する手段を有する、ことを特徴とする請求項20乃至請求項23のいずれかに記載の色分解画像修正装置。
- CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域と、を前記処理手段が用いる色域として指定可能な指示手段を有する、
ことを特徴とする請求項21記載の色分解画像修正装置。 - 前記処理手段は、CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域に基づいて、作成された色変換テーブルを複数備えており、色材の残量により前記色変換テーブルを切り替える、
ことを特徴とする請求項25記載の色分解画像修正装置。 - 前記処理手段は、CMYKの色域を除く前記合成色域、または、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、CMYKの色域とを組み合わせた前記合成色域に基づいて、作成された色変換テーブルを複数備えており、入力された色分解画像信号の彩度情報に基づいて前記色変換テーブルを切り替える、
ことを特徴とする請求項25記載の色分解画像修正装置。 - 前記処理手段は、前記色変換テーブルにスムージングを行う、
ことを特徴とする請求項26または請求項27に記載の色分解画像修正装置。 - 前記処理手段は、スムージングにより発生した誤差を別の色変換テーブルにより補正する、
ことを特徴とする請求項28記載の色分解画像修正装置。 - 電気信号として入力された色分解画像信号を修正して目標色をシアンC,マゼンタM,イエローY,高彩度色材(特色)およびスミKを用いて再現するための色分解画像修正処理プログラムが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記色分解画像修正処理プログラムは、Kおよび、特色を含む3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域と、前記分割色域とは異なる分割色域であって、Kおよび、任意の3色の有彩色により生成される少なくとも1つの分割色域との組み合わせで、かつ、いずれかの分割色域を生成する有彩色のいずれかがC、MおよびYを含む合成色域を用いて、前記目標色に対応する原色量の組合せを前記分割色域で求め、前記原色量の組合せに基づいて色材の組み合わせを求めるステップを含んでいる、
ことを特徴とするコンピュータ読取可能な記録媒体。
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