JP4081161B2 - 光学活性化合物の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メラトニン受容体親和性を有する医薬の合成中間体として有用な光学活性アミン誘導体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メラトニン受容体親和性などの生理作用を有するベンゾシクロアルケン誘導体が、例えば特開平8−134030号公報(WO 96/08466号公報)に記載され、該公報の実施例65〜68および70にその光学活性化合物が開示されている。該光学活性化合物の製造法については、高速液体クロマトグラフィーを用いる方法が記載されている。
メラトニン様作用特性を有するエチルアミド誘導体は、例えば特開平8−268987号公報(EP−0728738号公報)に記載され、該公報の実施例36〜39にD−またはL−酒石酸を用いる光学分割法が記載されている。
メラトニン受容体親和性を有する三環式アミド化合物は、例えば特開平8−239377号公報(EP−0708099号公報)に記載されているが、該公報には光学活性化合物についての具体的記載はない。
さらに、メラトニン様作用特性を有する化合物は、例えば特開平8−239353号公報(EP−0721938号公報)、特開平8−231530号公報(EP−0721497号公報)、WO 95/29173号公報に記載されているが、光学活性化合物についての具体的記載はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
医薬品として、光学活性体を用いれば、薬効がさらに際だって発揮され、また毒性も軽減されることが予想される。光学活性体を得るための一般的な方法として、以下の方法があげらるが工業的実施に不適当である。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる光学分割により光学異性体を得る方法では、大量処理は困難であり、製造コストも高く、工業的製造法としては適していない。
また、D−またはL−酒石酸を用いる光学分割法では、理論収率が最大でも50%止まり、即ち最大でも50%の原料しか利用できず、また操作も繁雑であるため工業的製造法としては好ましくない。
従って、メラトニン受容体親和性などの生理作用を有する医薬の合成中間体として有用な光学活性アミン誘導体の製造法として、収率、純度、簡便性などの条件を満たす工業的大量規模での生産に適した効率良い製造法の確立が切望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、遷移金属−光学活性ホスフィン錯体を用いる不斉還元反応を用いて光学活性アミン誘導体の不斉合成方法を検討したところ、触媒量のルテニウム−光学活性ホスフィン錯体を用いた場合、効率的に目的とする光学活性体が得られることを見出し、これに基づいてさらに鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、
(1)式
【化5】
または式
【化6】
〔式中、R1は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示し、Bは水素原子または酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子を介して結合する基を、Tは式−(CH2)m−(式中、mは1ないし4の整数を示す)で表わされる基をそれぞれ示し、環Aは置換基を有していてもよく、さらに1個の5ないし6員環と縮合環を形成していてもよい。〕で表される化合物またはその塩を、遷移金属−光学活性ホスフィン錯体存在下に、不斉水素化反応に付すことを特徴とする式
【化7】
〔式中の各記号は前記と同意義を、*は不斉炭素原子を示す。〕で表される化合物の光学活性体またはその塩の製造法、
【0006】
(2)遷移金属−光学活性ホスフィン錯体が、BINAPを含有する触媒である前記(1)記載の光学活性体またはその塩の製造法、
(3)遷移金属−光学活性ホスフィン錯体が、式[Ru−(R)または(S)−R−BINAPXAr]Y、[Ru−(R)または(S)−R−BINAPX2]、[Ru−(R)または(S)−R−BINAP(OCOR)2]あるいは[Ru−(R)または(S)−R−BINAPX2]2NEt3[式中、Xはハロゲン原子を、Yはハロゲン原子またはBF4、BPh4(Phはベンゼンを示す)を示し、Rはメチルもしくはトリフルオロメチル基、Arは芳香環を示す]で表わされる錯体である前記(1)記載の製造法、
(4)遷移金属−光学活性ホスフィン錯体がRu(OCOCH3)2[(R)−BINAP]である前記(3)記載の製造法、
(5)(E)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ −2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イリデン)アセトアミドあるいは2−(1,6−ジヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)アセトアミドを移金属−光学活性ホスフィン錯体存在下に、不斉水素化反応に付し、(S)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)アセトアミドを製造する前記(1)記載の製造法、
【0007】
(6)式
【化8】
〔式中、R1は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を、Bは水素原子または酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子を介して結合する基を、Tは式−(CH2)m−(式中、mは1ないし4の整数を示す)で表される基をそれぞれ示し、環Aは置換基を有していてもよく、さらに1個の5ないし6員環と縮合環を形成していてもよい。*は不斉炭素原子を示す。〕で表される化合物の光学活性体またはその塩。
(7)R1は水素原子を、A環は酸素原子を含有する5員環を形成している場合を示す前記(1)記載の光学活性体またはその塩、および
(8)(S)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)アセトアミドである前記(6)記載の光学活性体またはその塩である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、式(I)で表される化合物の光学活性体は、下記の式(Ia)
【化9】
または(Ib)
【化10】
で表わされる。
本願で示される1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フランは下記の式
【化11】
で示され、1,6−ジヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フランは、下記の式
【化12】
で示される。
【0009】
上記式中、R1で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基などが挙げられ、炭素数1−20のものが好ましく、具体的には、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基およびアリール基などが挙げられる。
該「アルキル基」としてはC1-16アルキル基などが挙げられ、なかでもC1-6アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチルおよびへキシルなど)、より好ましくはC1-4アルキル基が挙げられる。
該「アルケニル基」としては、C2-16アルケニル基などが挙げられ、なかでもC2-6アルケニル基(例えばビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、ブテニルおよびイソブテニルなど)、より好ましくはC2-4アルケニル基が挙げられる。
該「アルキニル基」としては、C2-16アルキニル基などが挙げられ、なかでもC2-6アルキニル基(例えばエチニル、プロパルギルおよび1−プロピニルなど)、より好ましくはC2-4アルキニル基が挙げられる。
該「シクロアルキル基」としては、C3-16シクロアルキル基などが挙げられ、なかでもC3-6シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなど)、より好ましくはC3-4シクロアルキル基が挙げられる。
該「アリール基」としては、C6-14アリール基(例えばフェニル、キシリル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、1−インデニルおよび1−アンスリルなど)、より好ましくはフェニル基などが挙げられる。
【0010】
R1で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」が有していてもよい置換基としては、例えば(1)ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、(2)ニトロ基、(3)シアノ基、(4)ヒドロキシル基、(5)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、4.4,4−トリフルオロブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6−トリフルオロヘキシルなど)、(6)C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなど)、(7)アミノ基、(8)モノ−C1-6アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノなど)、(9)ジ−C1-6アルキルアミノ基(例、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなど)、(10)カルボキシル基、(11)C1-6アルキル−カルボニル基(例、アセチル、プロピオニルなど)、(12)C1-6アルコキシ−カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニルなど)、(13)カルバモイル基、(14)モノ−C1-6アルキルカルバモイル基(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイルなど)、(15)ジ−C1-6アルキルカルバモイル基(例、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイルなど)、(16)C6-10アリールカルバモイル基(例、フェニルカルバモイル、ナフチルカルバモイルなど)、(17)C6-10アリール基(例、フェニル、ナフチルなど)、(18)C6-10アリールオキシ基(例、フェニルオキシ、ナフチルオキシなど)、(19)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルカルボニルアミノ基(例、アセチルアミノ、トリフルオロアセチルアミノなど)などが挙げられる。
該「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」は、前記の置換基を、炭化水素基の置換可能な任意の位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合は各置換基は同一または異なっていてもよい。
【0011】
R1で示される「置換基を有していてもよい複素環基」における「複素環基」としては、例えば炭素原子以外に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれた1種または2種のへテロ原子を1ないし4個(好ましくは1ないし3個)含む5ないし14員(好ましくは5ないし10員、より好ましくは5ないし7員、さらに好ましくは5または6員)の単環式ないし3環式(好ましくは単環式または2環式)の複素環基などが挙げられる。
該「複素環基」としては例えば、(i)炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等から選ばれたヘテロ原子を1ないし4個含む5員環基(例、2−または3−チエニル、2−または3−フリル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2−または3−ピロリジニル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソオキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、3−または4−ピラゾリジニル、2−、4−または5−イミダゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1H−または2H−テトラゾリル等)、
(ii)炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等から選ばれたへテロ原子を1ないし4個含む6員環基(例、2−、3−または4−ピリジル、N−オキシド−2−、3−または4−ピリジル、2−、4−または5−ピリミジニル、N−オキシド−2−、4−または5−ピリミジニル、チオモルホリニル、モルホリニル、ピペリジノ、2−、3−または4−ピペリジル、チオピラニル、1,4−オキサジニル、1,4−チアジニル、1,3−チアジニル、ピペラジニル、トリアジニル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、N−オキシド−3−または4−ピリダジニル等)、
【0012】
(iii)炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等から選ばれたヘテロ原子を1ないし4個含む2環性または3環性縮合環基(好ましくは、上記(i)の5員環基または上記(ii)の6員環基が炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等から選ばれるヘテロ原子を1個ないし4個含んでいてもよい5または6員環基1個ないし2個と縮合して形成される縮合環基)(例、インドリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、インドリジニル、キノリジニル、1,8−ナフチリジニル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、アクリジニル、フエナントリジニル、クロマニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル等)等が挙げられる。
【0013】
該「置換基を有していてもよい複素環基」における「複素環基」が有していてもよい置換基としては、例えば(1)ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、(2)C1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等)、(3)C3-6シクロアルキル基(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、(4)C2-6低級アルキニル基(例、エチニル、1−プロピニル、プロパルギル等)、(5)C2-6アルケニル基(例、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル等)、(6)C7-11アラルキル基(例、ベンジル、α−メチルベンジル、フェネチル等)、(7)アリール基(例、フェニル、ナフチル等、好ましくはフェニル基)、(8)C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ等)、(9)C6-10アリールオキシ基(例、フェノキシ等)、(10)C1-6アルカノイル基(例、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル等)、(11)ベンゾイル基、(12)ナフトイル基、(13)C1-6アルカノイルオキシ基(例、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ等)、(14)C1-6アリールカルボニルオキシ基(例、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等)、(15)カルボキシル基、(16)C1-6アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル等)、(17)C7-11アラルキルオキシカルボニル(例、ベンジルオキシカルボニル等)、(18)カルバモイル基、(19)モノ−、ジ−またはトリ−ハロゲノ−C1-4アルキル基(例、クロロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル等)、(20)オキソ基、(21)アミジノ基、(22)イミノ基、(23)アミノ基、(24)モノ−C1-4アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ等)、(25)ジ−C1-4アルキルアミノ基(例、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ等)、(26)炭素原子と1個の窒素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等から選ばれたヘテロ原子を1ないし3個含んでいてもよい3ないし6員の環状アミノ基(例、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イミダゾリジニル、ピペリジル、モルホリニル、ジヒドロピリジル、ピリジル、N−メチルピペラジニル、N−エチルピペラジニル等の3ないし6員の環状アミノ基等)、(27)C1-3アルキレンジオキシ基(例、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ等)、(28)ヒドロキシル基、(29)ニトロ基、(30)シアノ基、(31)メルカプト基、(32)スルホ基、(33)スルフィノ基、(34)ホスホノ基、(35)スルファモイル基、(36)モノ−C1-6アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N−プロピルスルファモイル、N−イソプロピルスルファモイル、N−ブチルスルファモイル等)、(37)ジ−C1-6アルキルスルファモイル基(例、N,N−ジメチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジブチルスルファモイル等)、(38)C1-6アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ等)、(39)C6-10アリールチオ基(例、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、(40)C1-6アルキルスルフィニル基(例、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル等)、(41)C6-10アリールスルフィニル基(例、フェニルスルフィニル、ナフチルスルフィニル等)、(42)C1-6アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル等)、(43)C6-10アリールスルホニル基(例、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル等)等が挙げられる。
【0014】
該「置換基を有していてもよい複素環基」の「複素環基」は、前記の置換基を、複素環基上の置換可能な任意の位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合は各置換基は同一または異なっていてもよい。
上記窒素原子を介して結合する基としては、例えば(1)ニトロ基、(2)式 −NR2R3〔式中、R2は水素,炭化水素基、炭化水素−オキシ基,アシル基,ヒドロキシル基、複素環基,−SOp−R4(式中、pは1〜2の整数を、R4は炭化水素基を示す)で表わされる基を、R3は水素または炭化水素基を示す〕で表される基、(3)窒素原子に結合手を有する複素環基などが挙げられ、式 −NR2R3で表わされる基は環状アミノ基を形成してもよい。上記各基は、置換されていてもよい。
上記の炭化水素基としては、たとえば、上記した「置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」と同様のものが挙げられる。炭化水素基における置換基は、上記したものと同様のものが挙げられる。
上記の炭化水素基の置換基は、さらに置換基を1〜3個、さらに好ましくは1〜2個有していてもよく、該さらに有していてよい置換基としては、例えば、(1)ヒドロキシ、(2)アミノ、(3)C1-4アルキル基(例、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)、(4)ハロゲン(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、(5)C1-4アルキルチオ(例、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、t−ブチルチオなど)、(6)C1-3アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシなど)などを有していてもよい。
上記のアシル基としては、C1-10のものが好ましく、その例としては例えば、アルカノイル、アルコキシ−カルボニル、アリール−カルボニル、アラルキル−カルボニル、アリールオキシ−カルボニル、アラルキルオキシ−カルボニル等が挙げられる。
【0015】
アルカノイルとしては、C1-8のものが好ましく、その例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、オクタノイルなどが挙げられる。アルコキシ−カルボニルとしてはC1-8のものが好ましく、その例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニルなどが挙げられる。アリール−カルボニルとしては、C7-15のものが好ましく、その例としては、ベンゾイル、フェネチル−カルボニルなどが挙げられる。アラルキル−カルボニルとしては、C8-16のものが好ましく、その例としては、ベンジルカルボニルなどが挙げられる。アリールオキシ−カルボニルとしては、C7-15のものが好ましく、その例としては、フェノキシカルボニルなどが挙げられる。アラルキルオキシ−カルボニルとしては、C8-16のものが好ましく、その例としては、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。
該アシル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記した炭化水素基の置換基と同様のものが挙げられる。
上記複素環基としては、例えば、酸素原子,硫黄原子または窒素原子のヘテロ原子を1〜4個含む5〜8員の複素環状基またはその縮合複素環基が挙げられる。
このような複素環基としては、上記したものと同様のものが挙げられる。
上記置換されていてもよい複素環基における複素環基の好ましいものとしては、例えば、イミダゾリル,オキサゾリル,イソオキサゾリル,チアゾリル,1,4−チアジニル,イミダゾリニルなどが挙げられる。
【0016】
該複素環基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記したものと同様のものが挙げられる。
上記置換基は、さらに置換基を1〜3個、さらに好ましくは1〜2個有していてもよく、該さらに置換されている基としては、例えば、C1-3アルキル,トリフルオロメチル、C1-3アルコキシ,ハロゲン,ニトロもしくはスルファモイル、C1-3アルコキシ−カルボニル,チオメチルなどが挙げられる。
上記窒素原子に結合手を有する複素環基としては、前記した複素環基において窒素原子を含むものであって、窒素原子に結合手を有するものが挙げられる。なかでも、1H−1−ピロリル,1−イミダゾリル,ピラゾリル,インドリル,1H−1−インダゾリル,7−プリニル,1−ピロリジニル,1−ピロリニル,1−イミダゾリジニル,ピラゾリジニル,ピペラジニル,ピラゾリニル,1−ピペリジニル,4−モルフォリニル,4−チオモルフォリニル,キノリル,イソキノリル等が好ましい。
該窒素原子に結合手を有する複素環基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記した複素環基の置換基と同様のものが挙げられる。
上記環状アミノとしては、酸素原子,硫黄原子および窒素原子から選ばれた原子をさらに1個有していてもよい5〜7員の含窒素環状基が挙げられる。その例としては、例えば、ピロリジニル,ピロリニル,ピロリル,ピラゾリジニル,ピラゾリニル,ピラゾリル,イミダゾリジニル,イミダゾリニル,イミダゾリル,1,2,3−トリアジニル,1,2,3−トリアゾリジニル,1,2,3−トリアゾリル,1,2,3,4−テトラゾリル,ピペリジニル,ピペラジニル,アゼピニル、ヘキサメチレンアミノ,オキサゾリジノ,モルホリノ,チアゾリジノまたはチオモルホリノが挙げられる。なかでも、5〜6員のものが好ましく、例えば、ピロリジニル,ピラゾリニル,ピラゾリル,ピペリジニル,ピペラジニル,モルホリノ,チオモルホリノが好ましい。
上記含窒素環状アミノ基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、C1-6アルキル,C6-14アリール,C7-10アラルキル,ベンツヒドリル,C1-6アルキル−カルボニル,C6-14アリール−カルボニル,C1-6アルコキシ−カルボニルが挙げられる。好ましい置換基としては、C1-6アルキルが挙げられ、なかでもC1-3アルキルがさらに好ましい。
上記置換基は、さらに置換基を1〜3個、さらに好ましくは1〜2個有していてもよく、該さらに有していてもよい置換基としては、例えば、C1-3アルキル,トリフルオロメチル、C1-3アルコキシ,ハロゲン,ニトロもしくはスルファモイル、C1-3アルコキシ−カルボニル,チオメチルなどが挙げられる。
【0017】
上記酸素原子を介して結合する基としては、例えば−O−R5(式中、R5は水素原子、炭化水素基、アシル基、複素環基を示し、これらは置換基を有していてもよい。)で表わされる基が挙げられる。
該炭化水素基、アシル基、複素環基としては、上記したものと同様のものが挙げられる。
該酸素原子を介して結合する基としては、なかでも、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、複素環オキシが好ましい。
これらの基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、前記した窒素原子を介する基における置換基と同様のものが挙げられる。
【0018】
上記硫黄原子を介して結合する基としては、例えば−S(O)w−R6(式中、R6は水素原子、炭化水素基、複素環基を示し、wは0〜2の整数を示す。)で表わされる基が挙げられる。
該炭化水素基、複素環基としては、上記したものと同様のものが挙げられる。
該硫黄原子を介して結合する基としては、なかでも、メルカプト、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、複素環チオが好ましい。
これらの基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、前記した窒素原子を介する基における置換基と同様のものが挙げられる。
上記R1としては、とりわけ、水素原子が好ましく、Bとしては−NR2R3で示される基が最も好ましい。
【0019】
R2およびR3で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」としては、R1で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」として例示したものと同様なものが拳げられるが、好ましいものとしては、例えばC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなど)、C2-6アルケニル基(例、ビニルなど)、C2-6アルキニル基(例、エチニルなど)、C3-6シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)およびC6-10アリール基(例、フェニルなど)など、特にアルキル基(例、メチルなどのC1-6アルキル基など)およびシクロアルキル基(例えば、シクロプロピルなどのC3-6シクロプロピルなど)などが挙げられる。これら「アルキル基」、「アルケニル基」、「アルキニル基」、「シクロアルキル基」、「アリール基」は、例えばフッ素などのハロゲン原子などを1個ないし5個、好ましくは1個ないし3個有していてもよい。
R2およびR3は、例えばそれぞれ水素原子または(i)置換基を有していてもよいアルキル基、(ii)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、(iii)置換基を有していてもよいアルケニル基、(iv)置換基を有していてもよいアリール基などが好ましい。
該「アルキル基」としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、へキシルなどのC1-6アルキル基などが好ましい。該「シクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-6シクロアルキル基などが好ましい。該「アルケニル基」としては、例えばビニル、1−プロペニル、ブテニルなどのC2-6アルケニル基などが好ましい。該「アリール基」としては、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどのC6-10アリール基などが好ましい。これら例示した基が有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子などが挙げられ、その個数は1個ないし5個である。
R2およびR3としては、水素原子またはハロゲン原子でそれぞれ1〜4個置換されていてもよい i)C1-6アルキル基、ii)C3-6シクロアルキル基、iii)C2-6アルケニル基、iv)C6-10アリール基などで好ましく、とりわけ、例えばハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例えば、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、4,4,4−トリフルオロブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6−トリフルオロヘキシルなど)、C3-6シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)などが好ましい。
R2およびR3としてさらに好ましくは、水素原子またはハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基などが挙げられる。
【0020】
上記式中、環Aにおける置換基としては、例えば(1)ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、(2)置換基を有していてもよい炭化水素基、(3)置換基を有する水酸基(好ましくは、置換基を有していてもよいC1-6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシなど)、(4)水酸基、(5)置換基を有していてもよいアミノ基、(6)アミド基〔(例えば、アセトアミドなどのC1-6アシルアミノ基(好ましくは、C1-5アルカノイルアミノなど)〕など、(7)C1-6アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシなど)などが挙げられる。環Aは、これら置換基から選ばれる1ないし4個、好ましくは1ないし3個の置換基をその環上の置換可能な任意の位置に有していてもよい。
上記環Aの置換基における「置換基を有していてもよい炭化水素基」としては、R1で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」として例示したものと同様のものが挙げられる。
上記環Aの置換基における「置換基を有する水酸基」は、水酸基の水素原子の代わりに、例えば上記R1で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」として例示したものと同様の「置換基を有していてもよい炭化水素基」などで置換された水酸基を示し、例えば置換基を有していてもよいアルキル基などで置換された水酸基などが好ましい。該「アルキル基」としては、C1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルなど)などが挙げられ、該「アルキル基」が有していてもよい置換基としては、例えば前記R1で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」が有していてもよい置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
上記の「置換基を有していてもよいアミノ基」は、置換基として例えば前記R1で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」などを1個ないし2個有していてもよいアミノ基などが挙げられる。該「アミノ基」が有していてもよい置換基の好ましいものとしては、例えば置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基などが挙げられる。該「C1-6アルキル基」、「C6-10アリール基」が有していてもよい置換基としては、前記R1で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」が有していてもよい置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。これら「炭化水素基」、「水酸基」、「アミノ基」が有する置換基の数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
【0021】
環Aにおける置換基の好ましいものとしては、例えばハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素など)、ハロゲン原子などで置換されていてもよいC1-6アルキル基(例えば、メチル、エチルなど)、C6-10アリール基などで置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基など)、水酸基およびモノ−C1-6アルキルアミノ基が好ましく、環Aは、これら置換基から選ばれた1個ないし3個(とりわけ1個)の置換基で置換されていることが好ましい。環Aは、さらに1個の5または6員環と縮合環を形成していてもよい。該「5または6員環」としては、環Aと縮合することにより環A上の炭素原子と共に形成される、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を1個含んでいてもよい5または6員ヘテロ環、好ましくは酸素原子を1個含む5または6員ヘテロ環が挙げられる。
R1は水素原子または置換基を有していてもよいC1-10炭化水素基を、Bは式−NR2R3(式中、R2およびR3は、同一または異なって、水素または置換基を有していてもよいC1-10炭化水素基を示す)で表わされる基を、Tは式−(CH2)m'−(式中、m'は1または2を示す)で表わされる基をそれぞれ示し、環Aは5員環との縮合環を形成している場合を示す化合物(I)の光学活性体またはその塩が好ましく、さらに、R1は水素原子またはC1-6アルキル基を、Bは式−NR2'R3'(式中、R2'およびR3'は、同一または異なって、水素またはハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(特に、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキル基を示す)で表わされる基を、Tは−CH2−をそれぞれ示し、環Aは酸素を含有する5員環との縮合環を形成していてもよい場合を示す化合物(I)の光学活性体またはその塩が好ましい。
【0022】
本発明に用いることのできる、遷移金属-光学活性ホスフィン錯体としては、BINAPを含有する触媒が挙げられ、例えばルテニウム-光学活性ホスフィン錯体などが挙げられる。触媒として用いることのできるルテニウム−光学活性ホスフィン錯体には、特開昭61−63690号公報記載の下記一般式
〔Ru−(R−BINAP)XpYq〕tZj
〔式中、R−BINAPは式
【化13】
で表される光学活性な三級ホスフィンを意味し、Rは水素原子またはメチル基を意味し、(Rが水素原子の場合は2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチルを意味し、Rがメチル基の場合は2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチルを意味する)Xはハロゲン原子を、Yは置換基を有していても良いベンゼンまたはアセトニトリル、ZはN(C2H5)3またはCH3CO2を示し、ZがN(C2H5)3である場合、p=1,q=0,r=1,t=2、ZがCH3CO2である場合、p=0,q=0,r=2,t=1、Yがベンゼンである場合、p=2,q=1,r=0,t=1、である〕で表されるもの、更に、光学活性な三級ホスフィンとしては特公平7−68260号公報記載の下記一般式(II)
【化14】
式中、Rは低級アルキル基を意味し(Rがメチル基の場合は2,2'−ビス[ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチルを意味する)また、更に特公平4−139140号公報記載の下記一般式(12)
【化15】
2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’、6,6'、7,7'、8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチルで表されるものがある。前記のルテニウム−光学活性ホスフィン錯体中の光学活性な三級ホスフィンには(R)、(S)の光学異性体が存在するが、目的化合物の立体配置により適宜選択することができる。すなわち、(S)配置の一般式(7a)を得るためには、(R)の光学活性ホスフィンを用い、また、(R)配置の一般式(7b)を得るためには、(S)の光学活性ホスフィンを用いればよい。
【0023】
ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体の好ましい例としてはルテニウムと(R)配置または(S)配置のどちらか一方の光学活性ホスフィンからなる以下の錯体が挙げられる。本明細書において、Etはエチル基を示す。
ビス[[(R)または(S)−[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル]]ジクロロルテニウム]トリエチルアミン:以下[RuCl2[(R)または(S)−(BINAP)]]2NEt3と略す。
ビス[[(R)または(S)−[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル]]ジクロロルテニウム]トリエチルアミン:以下[RuCl2[(R)または(S)−(p−トリル−BINAP)]]2NEt3と略す。
ビス[[(R)または(S)−[2,2'−ビス(ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル]]ジクロロルテニウム]トリエチルアミン:以下[RuCl2[(R)または(S)−(3,5−キシリル−BINAP)]]2NEt3と略す。
ビス[[(R)または(S)−[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル]]ジクロロルテニウム]トリエチルアミン:以下[RuCl2[(R)または(S)−(H8−BINAP)]]2NEt3と略す。
[(R)または(S)−[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル]]ルテニウムジアセテ−ト:以下Ru(CH3CO2)2[(BINAP)]と略す。
[(R)または(S)−[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル]]ルテニウムジアセテ−ト:以下Ru(CH3CO2)2[(R)または(S)−(p−トリル−BINAP)]と略す。
[(R)または(S)−[2,2'−ビス[ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ−1,1'−ビナフチル]]ルテニウムジアセテ−ト:以下Ru(CH3CO2)2[(R)または(S)−(3,5−キシリル−BINAP)]と略す。
[(R)または(S)−[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル]]ルテニウムジアセテ-ト:以下Ru(CH3CO2)2[(R)または(S)−(H8−BINAP)]と略す。
【0024】
(R)配置または(S)配置の光学活性ホスフィンを用いた以下のルテニウム−光学活性ホスフィン錯体も使用可能である。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]クロリド:以下[RuCl(BINAP)(ベンゼン)]Clと略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]クロリド:以下[RuCl(p−トリル−BINAP)(ベンゼン)]Clと略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]クロリド:以下[RuCl(3,5−キシリル−BINAP)(ベンゼン)]Clと略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]クロリド:以下[RuCl(H8−BINAP)(ベンゼン)]Clと略す。
[ルテニウムブロモ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]ブロミド:以下[RuBr(BINAP)(ベンゼン)]Brと略す。
[ルテニウムブロモ[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]ブロミド:以下[RuBr(p−トリル−BINAP)(ベンゼン)]Brと略す。
[ルテニウムブロモ[2,2'−ビス(ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)] ブロミド:以下[RuBr(3,5−キシリル−BINAP)(ベンゼン)]Brと略す。
[ルテニウムブロモ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)] ブロミド:以下[RuBr(H8−BINAP)(ベンゼン)]Brと略す。
[ルテニウムヨード[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]ヨージド:以下[RuI(BINAP)(ベンゼン)]Iと略す。
[ルテニウムヨード[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]ヨージド:以下[RuI(p−トリル−BINAP)(ベンゼン)]Iと略す。
【0025】
[ルテニウムヨード[2,2'−ビス(ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)] ヨージド:以下[RuI(3,5−キシリル−BINAP)(ベンゼン)]Iと略す。
[ルテニウムヨード[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)] ヨージド:以下[RuI(H8−BINAP)(ベンゼン)]Iと略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]クロリド:以下[RuCl(BINAP)(p−シメン)]Clと略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]クロリド:以下[RuCl(p−トリル−BINAP)(p−シメン)]Clと略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]クロリド:以下[RuCl(3,5−キシリル−BINAP)(p−シメン)]Clと略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]クロリド:以下[RuCl(H8−BINAP)(p−シメン)]Clと略す。
[ルテニウムブロモ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]ブロミド:以下[RuBr(BINAP)(p−シメン)]Brと略す。
[ルテニウムブロモ[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]ブロミド:以下[RuBr(p−トリル−BINAP)(p−シメン)]Brと略す。
[ルテニウムブロモ[2,2'−ビス(ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]ブロミド:以下[RuBr(3,5−キシリル−BINAP)(p−シメン)]Brと略す。
[ルテニウムブロモ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]ブロミド:以下[RuBr(H8−BINAP)(p−シメン)]Brと略す。
【0026】
[ルテニウムヨード[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]ヨージド:以下[RuI(BINAP)(p−シメン)]Iと略す。
[ルテニウムヨード[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](p−シメン)]ヨージド:以下[RuI(p−トリル−BINAP)(p−シメン)]Iと略す。
[ルテニウムヨード[2,2'−ビス(ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](p−シメン)] ヨージド:以下[RuI(3,5−キシリル−BINAP)(p−シメン)]Iと略す。
[ルテニウムヨード[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ-1,1'−ビナフチル](p−シメン)] ヨージド:以下[RuI(H8−BINAP)(p−シメン)]Iと略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]テトラフルオロボレート:以下[RuCl(BINAP)(ベンゼン)]BF4と略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]テトラフルオロボレート:以下[RuCl(p−トリル−BINAP)(ベンゼン)]BF4と略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)] テトラフルオロボレート:以下[RuCl(3,5−キシリル−BINAP)(ベンゼン)]BF4と略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)] テトラフルオロボレート:以下[RuCl(H8−BINAP)(ベンゼン)]BF4と略す。
[ルテニウムクロロ2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]テトラフェニルボレート:以下[RuCl(BINAP)(ベンゼン)]B(ベンゼン)4と略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)]テトラフェニルボレート:以下[RuCl(p−トリル−BINAP)(ベンゼン)]B(ベンゼン)4と略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)] テトラフェニルボレート:以下[RuCl(3,5−キシリル−BINAP)(ベンゼン)]B(ベンゼン)4と略す。
[ルテニウムクロロ[2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル](ベンゼン)] テトラフェニルボレート:以下[RuCl(H8−BINAP)(ベンゼン)]B(ベンゼン)4と略す。
【0027】
RuCl2(BINAP)(DMF)2、
[RuCl2(BINAP)(DMF)]n、
RuCl2(p−トリル−BINAP)(DMF)2、
[RuCl2(p−トリル−BINAP)(DMF)]n、
RuCl2(3,5−キシリル−BINAP)(DMF)2、
[RuCl2(3,5−キシリル−BINAP)(DMF)]n、
RuCl2(H8-BINAP)(DMF)2、
[RuCl2(H8−BINAP)(DMF)]n、
[RuCl(BINAP)(DMF)3]Cl、
[Ru(BINAP)(DMF)4]Cl2、
[RuCl(p−トリル−BINAP)(DMF)3]Cl、
[Ru(p−トリル−BINAP)(DMF)4]Cl2、
[RuCl(3,5−キシリル−BINAP)(DMF)3]Cl、
[Ru(3,5−キシリル−BINAP)(DMF)4]Cl2、
[RuCl(H8−BINAP)(DMF)3]Cl、
[Ru(H8−BINAP)(DMF)4]Cl2。
【0028】
[上記式中、Ruはルテニウムを、Bはボランを、CH3CO2は酢酸イオンを、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを、NEt3はトリエチルアミンを、nは1ないし3の整数を、BINAPは2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチルそれぞれ表わす。]
遷移金属−光学活性ホスフィン錯体として好ましいものとしては、式[Ru−(R)または(S)−R−BINAPXAr]Y、[Ru−(R)または(S)−R−BINAPX2]、[Ru−(R)または(S)−R−BINAP(OCOR)2]あるいは[Ru−(R)または(S)−R−BINAPX2]2NEt3[式中、Xはハロゲン原子を、Yはハロゲン原子またはBF4、BPh4(Phはベンゼンを示す)を示し、Rはメチルもしくはトリフルオロメチル基、Arは芳香環を示す]であるもの、式[Ru−(R)または(S)−R−BINAP)XpYq]tZj〔式中、Xはハロゲン原子を、Yは置換基を有していても良いベンゼンまたはアセトニトリル、ZはN(C2H5)3またはCH3CO2を示し、ZがN(C2H5)3である場合、p=1,q=0,r=1,t=2、ZがCH3CO2である場合、p=0,q=0,r=2,t=1、Yがベンゼンである場合、p=2,q=1,r=0,t=1、を示す〕で表わされるものが好ましく、さらに[Ru−(R)または(S)−R−BINAP)XpYq]tZjで示される遷移金属−光学活性ホスフィン錯体がRu(OCOCH3)[(R)-BINAP]であるものが挙げられる。
上記式中、Arで表される芳香環としては、例えば、ベンゼン、メシチレン、p−シメン、安息香酸エチルなどが挙げられる。
上記式中、XもしくはYで示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素が挙げられる。
【0029】
本発明方法は化合物(II)若しくは(III)またはその塩を遷移金属−光学活性ホスフィン錯体存在下に、不斉水素化反応に付すことにより行なわれる。
本反応は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、例えばトルエン,ベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル,酢酸n−プロピル,酢酸n−ブチル等の脂肪族エステル類,イソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類,ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類などがあげられる。これらは単独で用いても、また2種以上の混合溶媒として用いても差し支えがない。溶媒として好ましくはアルコール類、更に好ましくはメタノールが挙げられる。
本反応において、反応液中の原料化合物(基質)の濃度は約1〜500mg/ml、好ましくは約100〜300mg/mlである。加える遷移金属−光学活性ホスフィン触媒の量は基質1mmolに対して約0.001mmol〜0.5mmol、好ましくは約0.01mmol〜0.1mmolである。反応温度は約15から100℃、さらに好ましくは約50から80℃である。水素気圧は約5〜100atm、さらに好ましくは約50〜100atmである。反応時間は約1時間から48時間、さらに好ましくは約1時間から6時間である。反応液中に、所望により、ルイス酸、鉱酸などの酸を添加してもよい。
本発明方法において、化合物(II)もしくは化合物(III)から、化合物(Ia)もしくは(Ib)ヘの変換率は、以下の方法で求めることができる。例えば反応後の反応液を適当量サンプリングし、適当なキラルカラム(例えば Ceramospher Chiral RU-1(資生堂))などを用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、化合物(II)、(III)、(Ia)もしくは(Ib)のそれぞれの量を測定することができる。上記の反応によって得られた反応液から、公知の方法、例えば溶媒抽出,転溶,晶出,再結晶,クロマトグラフィーなどによって化合物(Ia)あるいは(Ib)を得ることができる。
【0030】
本発明方法に用いられる原料化合物および本発明方法により製造される化合物の塩としては、例えば無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属との塩;アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩など)などの無機塩、アンモニウム塩など、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩などの無機塩または、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩などの有機塩が挙げられる。
【0031】
本発明方法において用いられる原料化合物である化合物(II)若しくは(III)はたとえば(E)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イリデン)酢酸若しくは2−(1,6−ジヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)酢酸をオキサリルクロライドを用いて酸クロライドへ導いたのちアンモニアにてアミドへと誘導することにより得ることができる。あるいは(E)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イリデン)アセトニトリルを過酸化水素の存在下、アルカリ性条件で部分加水分解することにより得ることができる。あるいは上記の方法に準じる方法によって製造することができる。
【0032】
本発明方法で得られるインダン誘導体の光学活性体は、医薬または医薬の合成原料として有用であり、例えば式
【化16】
で示される優れたメラトニン受容体親和性、特にメラトニン受容体作動活性を示す化合物〔(S)−N−〔2−1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル〕プロピオンアミド〕を製造するための合成中間体として用いることができる。
【0033】
上記メラトニン受容体親和性、特にメラトニン受容体作動活性を示す化合物を製造する方法としては、例えば化合物(I)を還元反応に付し、次いで、カルボン酸誘導体を反応させることにより行なうことができる。
還元反応においては、例えばボラン、ボラン硫化メチル錯塩、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムなどのハイドライド試薬を触媒として用いて行う。
この際、添加剤の存在が好ましい場合がある。添加剤としては、例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、四塩化チタン、塩化アルミニウムなどのルイス酸、酢酸、メタンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。好ましくは、水素化ホウ素ナトリウムと三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体である。
溶媒としては、反応を阻害しないものであれば、特に限定されないが、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、トルエン、ベンゼンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
反応温度は0〜50℃が好ましく、反応時間は0.5〜48時間が好ましい。
【0034】
カルボン酸誘導体を反応させるには、原料化合物にカルボン酸の反応性誘導体を、縮合剤の存在下に反応させることにより行われる。カルボン酸の反応性誘導体としては、塩化プロピオニル、無水プロピオン酸、プロピオン酸活性エステル、プロピオン酸活性チオエステル等が挙げられ、塩基存在下に反応させることができる。
塩基としては、トリエチルアミン,トリメチルアミン,ピリジン,ジメチルアミノピリジンなど第3級アミンあるいは炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸水素ナトリウムなど塩類が挙げられる。
また、反応性誘導体を用いるかわりにカルボン酸あるいはその塩を縮合剤存在下に原料化合物と反応させてもよい。縮合剤としては、例えばN,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのN,N'−ジ置換カルボジイミド類,N,N'−カルボニルジイミダゾールなどのアゾライド類,オキシ塩化リンなどの脱水剤、2−クロロメチルピリジニウムヨージドなどの2−ハロゲノピリジニウム塩が挙げられる。
溶媒として、THF,ジエチルエーテルなどのエーテル類,トルエン,ベンゼンなどの炭化水素類,ジクロロメタン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが用いられる。
本反応温度は、約0.5〜50℃である。反応時間は約5分〜5時間である。
【0035】
上記化合物(V)またはその誘導体は、メラトニン受容体に対し高い親和性を示し、また毒性が低く、かつ、副作用も少ないため、医薬品として有用である。
本発明の一般式(Ia)あるいは(Ib)で表される光学活性化合物は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスタ-、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)に対して、メラトニンアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し、メラトニン受容体親和性組成物、特にメラトニン受容体作動組成物またはメラトニン受容体拮抗組成物として有用であり、生体リズム調節障害などのメラトニンにより影響される可能性のある疾患、例えば睡眠覚醒リズム障害、時差ボケ(jet lag)、三交替勤務等による体調の変調、季節的憂鬱病、生殖および神経内分泌疾恵、老人性痴呆、アルツハイマ-病、老化に伴う各種障害(例えば、老化防止など)、脳循環障害、ストレス、てんかん、痙攣、不安、うつ病、パ-キンソン病、高血症、緑内症、癌、不眠症、糖尿病などの予防・治療に使用でき、さらに、免疫調節、向知能、精神安定または排卵調整(例、避妊)に対しても有効であり、例えば生体リズム調節剤、好ましくは睡眠障害治療剤(例えば、睡眠導入剤など)、睡眠覚醒リズム調節剤(睡眠覚醒リズム調整作用も含む)、時間帯域変化症候群、いわゆる時差ボケ(jet lag)治療剤等として用いられる。
上記化合物(V)又はその誘導体は、毒性が低く、そのままあるいは自体公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体を混合した医薬組成物、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤、(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤、貼布剤など、さらにはチューインガム等として、経口的または非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。化合物(V)又はその誘導体の製剤中の含有量は、製剤全体の約0.01ないし100重量%である。該投与量は、投与対象、投与ルート、疾患などによっても異なるが、例えば睡眠障害治療剤として、成人に対し、経口的として投与する場合、有効成分である化合物(V)として約0.0005ないし2mg/kg体重、好ましくは約0.001ないし1mg/kg体重、さらに好ましくは約0.01ないし0.5mg/kg体重であつて、1日1ないし数回に分けて投与することができる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例および参考例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない限り変化させても良い。
以下において、化学収率は、単離収率または高速液体クロマトグラフィーで得られた収率である。
光学活性体の光学純度(不斉収率)は鏡像体過剰率(%ee)で評価した。該鏡像体過剰率は、以下に示す条件下での高速液体クロマトグラフィーを用い、次式により求めた。
鏡像体過剰率(%ee)=100×[(R)−(S)]/[(R)+(S)]
[式中、(R)及び(S)は鏡像体の絶対配置、および各鏡像体の高速液体クロマトグラフィーにおける面積を示す]
高速液体クロマトグラフィー:
カラム:Ceramospher Chiral RU−1(資生堂株式会社製、粒径:5μm,カラム径4.6mm,カラム長250mm)
移動層:メタノール
流 速:0.7ml/mim
温 度:50℃
検 出:UV290nm
本文中で用いられている略号は下記の意味を示す。
s:シングレット(singlet)
d:ダブレット(doublet)
t:トリプレット(triplet)
q:カルテット(quartet)
m:マルチプレット(multiplet)
【0037】
実施例1
(S)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)アセトアミドの製造:
【化17】
2−(1,6−ジヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)アセトアミド(214mg,0.996mmol)およびRu(OCOCH3)2[(R)−BINAP](42mg, 49.9μmol)を、脱気した無水エタノール70mlに溶解しオートクレーブ中で、水素気圧100atm、50℃で6時間撹拌した。この反応液をキラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、(S)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)アセトアミドの不斉収率は92%eeで、化学収率は92%であった。
反応混合物を減圧下で濃縮乾固し、粗結晶249.7mgを得た。このうち136mgを薄層クロマトグラフィーによる精製に付し、標記化合物105.5mgを得た。
融点:218℃
1H-NMR(400MHz DMSO-d6)δppm:1.7(1H,m), 2.0-2.2(2H,m), 2.4(1H,m), 2.7(1H,m), 2.8(1H,m), 3.0(1H,m), 3.2(1H,m), 4.5(2H,m), 6.5(1H,d,J=7.8Hz), 6.8(1H,s), 6.9(1H,d,J=7.8Hz), 7.3(1H,s)
IR(KBr)νmax:3400、3200、2950、1665 (cm-1)
【0038】
実施例2
(S)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)アセトアミドの製造:
2−(1,6−ジヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)アセトアミド(202mg,0.938mmol)およびRu2Cl4 [(R)−BINAP]2(NEt3)(83mg, 49.9μmol)を、脱気した無水エタノール70mlに溶解しオートクレーブ中で、水素気圧100atm、70℃で6時間撹拌した。この反応液をキラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、標記化合物の不斉収率は97%eeで、化学収率は21%であった。
【0039】
実施例3
(S)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)アセトアミドの製造:
2−(1,6−ジヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)アセトアミドと(E)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イリデン)アセトアミドとの7:3混合物(2.15g,10mmol)、Ru(OCOCH3)2[(R)−BINAP](400mg,476μmol)およびメタノール−水(95/5)70mlを加えて得られた溶液をオートクレーブに移し、水素気圧100atm、70℃で6時間撹拌した。キラルカラムを用いた高速クロマトグラフィーによる分析の結果、標記化合物の不斉収率は87%eeであった。
この反応液を減圧下で濃縮乾固し、酢酸エチル20mlを加えて懸濁したのち濾過し、10mlの酢酸エチルで洗浄した。得られた結晶は1.96gであった。(収率90%)
【0040】
参考例1
2−(1,6−ジヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)アセトアミドの製造:
【化18】
ジメチルスルホキシド25ml,水30mlの溶液に、2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イリデン)アセトニトリル(1.14g, 5.93mmol)と水酸化カリウム(5.0g, 89mmol)を添加した。これに30%過酸化水素水を徐々に滴下し、室温下で撹拌した。3時間後、酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮乾固した。得られた粗結晶を酢酸エチルより再結晶し、標記化合物0.395gを得た。(収率32%)
融点:204℃
1H-NMR(400MHz DMSO-d6)δppm:3.39(2H,s), 3.40(2H,t,J=8.6Hz), 3.58(2H,s), 4.60(2H,t,J=8.6Hz), 5.37(1H,s,br), 5.67(1H,s,br), 6.51(1H,s), 6.70(1H,d,J=7.9Hz), 7.20(1H,d,J=7.9Hz)
IR(KBr)νmax :3400、3200、1650 (cm-1)
【0041】
参考例2
(S)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)エタンアミン塩酸塩の製造:
【化19】
乾燥テトラヒドロフラン25mlに三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(3.47ml、27.6mmol)を加え、−10℃まで冷却した。これに水素化ホウ素ナトリウム(1.04g,27.6mmol)を加え、室温まで昇温させ、1時間撹拌した。この液を0℃まで冷却し、(S)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)アセトアミド(1.0g,4.6mmol)を添加した。添加終了後、室温まで昇温させ24時間撹拌した。減圧下で濃縮し、酢酸エチルに溶解し、1規定塩酸25mlを加えた。酢酸エチルを減圧下留去した後、50〜60℃に加温し、イソプロピルエーテルで洗浄した。濃縮乾固して標記化合物(塩酸塩)0.70gを得た。(収率63%)
融点:270℃
1H-NMR(400MHz DMSO-d6)δppm:1.65-1.75(2H,m), 2.1-2.2(2H,m), 2.6-2.8(4H,m), 3.05-3.2(3H,m), 4.5(2H,m), 6.5(1H,d,J=7.8Hz), 6.8(1H, d,J=7.8Hz ), 6.9(1H,d,J=8.0Hz), 8.1(2H,br,s)
IR(KBr) νmax :2920、2000 (cm-1)
【0042】
参考例3
(S)−N−〔2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)エチル〕プロピオンアミドの製造:
【化20】
(S)−2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)エタンアミンの塩酸塩(0.5g, 2.09mmol)をテトラヒドロフランに20mlに懸濁し、更にトリエチルアミン(0.58ml,4.18mmol)を加え、10℃以下に冷却した。ついで、塩化プロピオニル(0.37ml,4.18mmol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。この後、水5mlを加え、テトラヒドロフランを減圧下留去した。酢酸エチルに溶解し、10%食塩水で2回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥したあと、活性炭で脱色し、濃縮して析出した結晶を濾取して、標記化合物を得た。収量は0.32gであった。(収率59%)高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、鏡像体である(R)−N−〔2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ〔5,4−b〕フラン−8−イル)エチル〕プロピオンアミドの存在は認められなかった。
融点:99℃
1H-NMR(400MHz DMSO-d6)δppm:1.1(3H,t,J=7.6Hz), 1.65(H,m), 1.85(2H,m), 2.0(1H,m), 2.15(2H,q,J=7.5Hz), 2.2-2.3(1H,m), 2.75(1H,m), 2.9(1H,m), 3.0-3.4(5H,m), 4.5-4.6(2H,m), 5.4(1H,br), 6.2(1H,d,J=7.8Hz), 6.9(1H,d,J=7.8Hz)
IR(KBr) νmax :3300、 2900、 1750、1550 (cm-1)
【0043】
【発明の効果】
本発明の製造法によれば、インダン誘導体の光学異性体を高純度、高収率かつ簡便な方法で、効率よく工業的大量規模で製造することができる。
Claims (2)
- 式
- 遷移金属−光学活性ホスフィン錯体がRu(OCOCH3)2[(R)−BINAP]である請求項1記載の製造法。
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