JP4080776B2 - 生分解性貼合材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性貼合材に関する。さらに詳しくは、本発明は、包装用材料、ラベル用材料、印刷用材料、建材用材料、文具用材料、情報記録用材料、日用品用材料、その他の分野において好適に利用可能な、金属薄膜層を有する生分解性貼合材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、包装用材料、ラベル用材料、印刷用材料、建材用材料、文具用材料、情報記録用材料、日用品用材料、その他の多くの産業分野において、耐久性、バリア性、意匠性の向上などを目的として、紙にプラスチックフィルムをラミネートした貼合紙が大量に用いられている。
【0003】
しかしながら、近年の環境問題に対する意識の高まりから、物性の異なる紙とプラスチックフィルムなどは分別して回収し、リサイクルまたは廃棄処分を行う必要性が指摘されている。しかし、貼合紙のように複数の物性の異なる物質が強固に積層された工業資材を回収時に分別するには多大な労力と経費が必要であり現実的でない。
【0004】
そのため、回収時の労力などの削減を考慮して、あらかじめ積層界面において容易に分離または剥離ができるように設計することも考えられた。しかし、そのような工夫の施された貼合紙に印刷、裁断、ラミネートなどの後工程を施した場合、あるいは使用中に経時的に界面密着強度が劣化した場合には、そのような貼合紙は層間剥離するおそれがあるという問題があった。
【0005】
そこで、貼合紙などの回収時に分別回収を行う必要がないように、プラスチックフィルムとして生分解性プラスチックフィルムを用いることが考えられ、現在多くの分野で研究開発にむけての努力が行なわれている。
【0006】
一般的に生分解性プラスチックフィルムは燃焼カロリーが低いため、紙とともに焼却処分しても焼却炉を損傷するなどといった問題は少なく、有害ガスなどの環境汚染物質の排出も少ない。さらに紙とともにコンポスト化した場合には、堆肥として再利用することも可能である。
【0007】
ここで、貼合紙などの製造工程においては、一般的に、貼合用のどちらか一方の基材に、グラビアコーター、リバースコーター、マルチコーターなどの塗工機を用いて、乾燥膜厚が0.1〜30μmの範囲となるように接着剤を塗布する。
【0008】
そして、紙と生分解性フィルムとを積層する場合には、燃焼カロリーが低く、かつ燃焼した場合に有害物質を排出しない接着剤、あるいは分解した場合に有害物質を排出しない生分解性接着剤が必要であるため、一般的に貼合紙などにおいて使用されるアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、酢酸ビニル系などの系統の接着剤は使用できないという問題がある。
【0009】
そのため、上記に挙げたような多くの産業分野において、非生分解性の接着剤を用いることなく各層が貼合された生分解性貼合材の開発が、強く要望されているのが現状である。
【0010】
実際、関係各方面で、そのような生分解性貼合材の研究開発に多大な努力が払われている。たとえば、特開平7−44104号公報には、生分解性の接着剤を用いた生分解性ラベルに関する技術が開示されている。この公報に開示されている技術においては、基材フィルムとしては生分解性樹脂であるポリエステル系樹脂、天然高分子、微生物生産プラスチック、およびポリ乳酸系樹脂が使用されている。また、生分解性の樹脂としては、加工性、生産性、各種力学特性、印刷適性などの面からラベル用基材フィルムとしてはポリ乳酸系の生分解性樹脂を用いることが好ましいとしている。
【0011】
しかし、近年、プラスチックフィルムを紙などの基材に積層した貼合材には、ガスバリア性や意匠性の向上を目的として、金属薄膜層が積層される場合が増えつつある。そして、このような金属薄膜層を有する貼合材においても、環境問題に対する意識の向上に伴い、やはり生分解性を付与することを求める傾向が、上記に挙げたような多くの産業分野において、近年強まりつつある。
【0012】
実際、関係各方面で、そのような金属薄膜層を有する生分解性貼合材の研究開発も行なわれるようになりつつある。
【0013】
具体的には、生分解性プラスチックフィルムに真空蒸着法などにより金属薄膜層を形成する方法が提案されている。しかし、生分解性プラスチックフィルムに金属薄膜層を形成する場合において、一般的な真空蒸着法による場合は生分解性プラスチックフィルムと金属薄膜層との密着性が低いという問題がある。
【0014】
たとえば、特開平7−44104号公報においても、金属薄膜層を有する生分解性貼合材についての記載が存在する。しかしながら、この公報には、金属薄膜層を有する生分解性貼合材についての実施例は挙げられておらず、その層間接着強度も測定されていない。そのため、この公報に開示されている技術を用いた貼合紙においても、生分解性プラスチックフィルムと金属薄膜層との密着性が低いという問題を克服できたとは言えない。
【0015】
また、特開平8−290526号公報には、アルミニウム−生分解性プラスチック積層体に関する技術が開示されている。しかし、この公報においても、アルミニウム−生分解性プラスチックの層間接着強度は測定されていない。そのため、この公報に開示されている技術を用いたアルミニウム−生分解性プラスチック積層体においても、生分解性プラスチックフィルムとアルミニウムとの密着性が低いという問題を克服できたとは言えない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、関係各方面の多大なる研究開発努力にも関わらず、金属薄膜層と生分解性フィルム層と紙とを有する生分解性貼合材であって、金属薄膜層と生分解性フィルム層および紙との層間接着強度が高く、かつ生分解性に優れた生分解性貼合材は、未だ公知の技術とはなっていない。
【0017】
そこで、上記の現状に基づき、本発明の課題は、金属薄膜層と生分解性フィルム層と紙とを有する生分解性貼合材であって、金属薄膜層と生分解性フィルム層および紙との層間接着強度が高く、かつ生分解性に優れた生分解性貼合材を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決するために、我々は既に、金属薄膜層と生分解性プラスチックフィルム間にアンカー剤層を設けて密着性を改善した生分解性フィルム積層体について、特願2001−253809において開示している。
【0019】
この出願において開示されている生分解性フィルム積層体は、金属薄膜層と生分解性フィルム層とを有する生分解性フィルム積層体であって、金属薄膜層と生分解性フィルム層との層間接着強度が高く、かつ生分解性の優れた生分解性フィルム積層体である。
【0020】
しかし、前記出願において開示されている技術は、生分解性フィルム積層体に関する技術である。そのため、この技術を、金属薄膜層と生分解性フィルム層と紙とを有する生分解性貼合材であって、金属薄膜層と生分解性フィルム層および紙との層間接着強度が高く、かつ生分解性に優れた生分解性貼合材に適用するためには、生分解性の接着剤を用いて、生分解性フィルム積層体と、紙との間で高い層間接着強度を実現する必要があった。
【0021】
ここで、本発明者らは、熟慮の末、上記の課題を解決するには、生分解性フィルム積層体と、紙との間に、層間接着強度および生分解性に優れ、塗布性の良好な、ポリ乳酸系樹脂組成物をバインダとする接着剤層を設ければよいとの着想を得た。そして、そのような特性を有するポリ乳酸系樹脂組成物をバインダとする接着剤を見出すべく、多様な組成のポリ乳酸系樹脂をバインダとする接着剤を用いて、多くの種類の生分解性貼合材の作製を行ない、層間接着強度や生分解性などを評価して、鋭意検討を重ねた。
【0022】
そして、検討の末に、本発明者らは、特定の組成を有するポリ乳酸系樹脂組成物をバインダとする接着剤は、生分解性に優れ、生分解性フィルム積層体と、紙との間に塗布して生分解性貼合材を作製した場合における塗布性および層間接着強度も優れていることを見出した。
【0023】
さらに、本発明者らは、前記ポリ乳酸系樹脂組成物をバインダとする接着剤に特定の架橋剤を配合することにより、さらに生分解性フィルム積層体と、紙との層間接着強度が高まることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
すなわち、本発明の生分解性貼合材は、生分解性フィルム層(A)に生分解性アンダーコート層(B)を介して金属薄膜層(C)が積層された生分解性フィルム積層体に、生分解性接着剤層(D)を介して紙(E)が積層された生分解性貼合材であって、生分解性アンダーコート層(B)は、乳酸残基を80〜100モル%の範囲で含み、L−乳酸残基とD−乳酸残基とのモル比(L/D)が1〜20の範囲にあるポリエステル樹脂(BP)を含む樹脂組成物からなり、生分解性接着剤層(D)は、乳酸残基を60〜80モル%の範囲で含み、L−乳酸残基とD−乳酸残基とのモル比(L/D)が1〜9の範囲にあるポリエステル樹脂(DP)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする生分解性貼合材である。
【0025】
ここで、本発明の生分解性貼合材は、前記生分解性フィルム積層体の金属薄膜層側(C)に、生分解性接着剤層(D)を介して紙(E)が積層された生分解性貼合材であることが好ましい。
【0026】
また、ポリエステル樹脂(BP)は、還元粘度が0.3〜1.0dl/gの範囲にあることが望ましい。さらに、ポリエステル樹脂(BP)は、ガラス転移温度が25〜55℃の範囲にあることが推奨される。
【0027】
そして、ポリエステル樹脂(DP)は、還元粘度が0.3〜1.0dl/gの範囲にあることが好ましい。さらに、ポリエステル樹脂(DP)は、ガラス転移温度が−10〜20℃の範囲にあることが推奨される。
【0028】
また、ポリエステル樹脂(BP)は、反応性基および/または極性基を有し、該ポリエステル樹脂中において該反応性基および/または極性基は100〜500当量/106gの割合で含まれることが望ましい。
【0029】
さらに、ポリエステル樹脂(DP)も、反応性基および/または極性基を有し、該ポリエステル樹脂中において該反応性基および/または極性基は100〜500当量/106gの割合で含まれることが推奨される。
【0030】
そして、これらの反応性基および/または極性基は、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、およびこれらの塩よりなる群から選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0031】
また、ポリエステル樹脂(BP)は、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ホルムアルデヒド樹脂よりなる群から選ばれる一種以上で架橋されていることが望ましい。
【0032】
さらに、ポリエステル樹脂(DP)も、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ホルムアルデヒド樹脂よりなる群から選ばれる一種以上で架橋されていることが推奨される。
【0033】
そして、この生分解性アンダーコート層(B)におけるポリエステル樹脂(BP)の含有率は、50〜100質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
また、この生分解性接着剤層(D)におけるポリエステル樹脂(DP)の含有率は、50〜100質量%の範囲であることが望ましい。
【0035】
そして、この生分解性フィルム層(A)は、ポリ乳酸系フィルムであることが好ましい。また、この紙(E)は、紙を材質とする基材であることが望ましい。さらに、この金属薄膜層(C)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を材質とする薄膜からなることが推奨される。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0037】
<生分解性貼合材の構造>
本発明の生分解性貼合材は、図1に示すように、生分解性フィルム層1(A)に生分解性アンダーコート層3(B)を介して金属薄膜層5(C)が積層された生分解性フィルム積層体に、生分解性接着剤層7(D)を介して紙9(E)が積層された構造を有する。
【0038】
ここで、一般的な用途においては、本発明の生分解性貼合材の構造は、図1に示すように、前記生分解性フィルム積層体の金属薄膜層5(C)側に、生分解性接着剤層7(D)を介して紙9(E)が積層された構造であることが好ましい。
【0039】
ただし、用途によっては、本発明の生分解性貼合材の構造は、図2に示すように、前記生分解性フィルム積層体の生分解性フィルム層21(A)側に、生分解性接着剤層27(D)を介して紙29(E)が積層された構造であってもよい。
【0040】
<生分解性フィルム層(A)>
本発明に用いる生分解性フィルム層(A)は、生分解性を有する限り、特に限定されず、どのような生分解性の材質から形成されていてもよい。ここで、生分解性とは、分解の一過程において、生物の代謝が関与して、低分子量化合物に変換する性質をいう。
【0041】
本発明に用いる生分解性フィルム層(A)の材質の具体例としては、(a)3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸との直鎖状ポリエステル樹脂、(b)グルコースの乳酸発酵などによって得られるラクチドを開環重合することにより製造される生分解性を有するポリ乳酸系樹脂、(c)澱粉、多糖類、キチンなどの天然高分子から製造される生分解性樹脂、(d)ε−カプロラクトンの開環重合によって得られる生分解性ポリカプロラクトン系樹脂、(e)ポリビニルアルコールあるいはその変性物である生分解性樹脂、(f)ポリエーテル、ポリアクリル酸、エチレン・一酸化炭素共重合体、脂肪族ポリエステル・ポリアミド共重合体、脂肪族ポリエステル・ポリオレフィン共重合体、脂肪族ポリエステル・芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族ポリエステル・ポリエーテル共重合体などの生分解性樹脂、(g)ポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリグリコリッドあるいはこれらの誘導体などの生分解性樹脂、(h)澱粉と変性ポリビニルアルコールなどとのポリマーアロイ、(i)澱粉とポリエチレンとのポリマーアロイ、(j)シラン澱粉とポリエチレンとの混合樹脂組成物、(k)ポリカプロラクトンとポリエチレンのポリマーアロイなどが挙げられる。これらの生分解性の材質の中でも、特にラクチドを開環重合することにより製造される生分解性を有するポリ乳酸系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0042】
ここで、本発明に用いる生分解性フィルム(A)としてポリ乳酸系フィルムを用いる場合には、ポリ−L−乳酸系フィルムを用いることが好ましい。そして、本発明に用いるポリ−L−乳酸系フィルムにおいては、L−乳酸残基とD−乳酸残基のうち、L−乳酸残基の含有率は97モル%以上の光学純度であることが好ましく、99モル%以上の光学純度であることがさらに好ましい。
【0043】
なお、本明細書において、ポリ乳酸系フィルムとは、ポリ乳酸系樹脂を主要な材質とするフィルム状の構造体を示すものとする。
【0044】
また、本発明の生分解性貼合紙において、紙(E)と反対側の表面に生分解性フィルム層(A)が形成された場合には、生分解性フィルム層(A)の表面に印刷層が形成される場合がある。この際に用いる印刷インクとしては、自然環境下に放置されても問題のないものであれば、特に限定はされないが、生分解性を有する印刷インクを用いることが好ましい。
【0045】
そして、この場合、生分解性フィルム層(A)にポリ乳酸系フィルムを用いたときには、印刷インクとしてポリ乳酸系樹脂組成物からなるバインダを含有する印刷インクを使用することが、インク密着性、生分解性の面からは好ましい。
【0046】
また、この場合、生分解性フィルム層(A)と印刷層との密着性を向上させるために、生分解性フィルム層(A)の表面に、印刷インクの受容性の高い材質からなる易接コートをさらに設けてもかまわない。
【0047】
さらに、この場合、生分解性フィルム層(A)の表面を印刷インキの受容性が高まるように加工したものを用いてもよい。たとえば、(i)ポリ乳酸系フィルムを発泡させて微細な孔を多数設け、この微細孔によって印刷インキの受容性を改善させたもの、(ii)溶剤溶解性の微粉末を混合して製膜したポリ乳酸系フィルムから微粉末を溶剤により溶解除去し、こうして除去された微粉末存在部位を微細な孔として、この微細孔によって印刷インキの受容性を改善させたもの、あるいは、(iii)微粉末を混合して製膜したポリ乳酸系フィルムを延伸し、この延伸によって微粉末とポリ乳酸系フィルムとの間に微細な亀裂を生ぜしめ、この微細な亀裂によって印刷インキの受容性を改善させたもの、などが好適に利用できる。
【0048】
そして、本発明に用いる生分解性フィルム層(A)の膜厚は、特に限定されず、用途に応じて適宜変更することが可能ではあるが、通常は、0.1μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることがより好ましい。また、この膜厚は、200μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることがより好ましい。
【0049】
この膜厚が0.1μm未満の場合には、フィルムの強度が低下する傾向があり、この膜厚が200μmを超えると、フィルムが硬くなり、柔軟性が低下する傾向がある。
【0050】
また、本発明の生分解性貼合紙において、紙(E)と反対側の表面に生分解性フィルム層(A)が形成された場合には、金属薄膜層の金属光沢が外観上明瞭に認識でき、優れた意匠性が感じられるようにするためには、生分解性フィルム層(A)は透明性を有することが好ましい。もっとも、本発明の生分解性貼合紙の意匠のデザイン上において特に透明性が要求されない場合には、生分解性フィルム層(A)は特に透明性を有する必要はない。
【0051】
<生分解性アンダーコート層(B)>
本発明に用いる生分解性アンダーコート層(B)は、特定の性質を有する生分解性のポリエステル樹脂(本明細書において、ポリエステル樹脂(BP)とも呼称する)を含む樹脂組成物からなることが必要である。そして、この樹脂組成物は、生分解性を有する樹脂組成物である必要があり、燃焼あるいは分解後に有害物質を排出しないものが好ましい。
【0052】
ここで、このポリエステル樹脂(BP)は、乳酸残基の含有率が80モル%以上であることが好ましく、特に85モル%以上であることがより好ましい。また、この含有率は当然ながら100モル%以下である。この含有率が80モル%未満の場合には、生分解性が低下する傾向がある。
【0053】
また、このポリエステル樹脂(BP)は、L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が1以上であることが好ましい。また、このモル比(L/D)は、20以下であることが好ましく、特に9以下であることがより好ましい。
【0054】
このモル比(L/D)が1未満の場合には、D−乳酸残基が過剰となって製造コストが高くなるという傾向がある。また、このモル比が20を超えると、メチルエチルケトン(MEK)などの汎用溶剤に対する溶解性が不足し、コーティング適性が低下する傾向がある。
【0055】
なお、本発明に用いるポリエステル樹脂(BP)のL−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)の値は、使用するラクチド(乳酸の2量体)や乳酸の旋光度を測定することにより求めた値である。また、モル比(L/D)の値は、ポリエステル樹脂(BP)の旋光度を測定することによっても求めることができる。
【0056】
さらに、このポリエステル樹脂(BP)は、還元粘度が0.3dl/g以上であることが好ましく、特に0.4dl/g以上であることがより好ましい。また、この還元粘度は1.0dl/g以下であることが好ましい。
【0057】
この還元粘度が0.3dl/g未満の場合には、金属薄膜層(C)との接着強度が不足する傾向がある。また、この還元粘度が1.0dl/gを超えると、溶剤に溶解した際の溶液の粘度が高くなりすぎて、コーティング適性不良が発生する傾向がある。
【0058】
なお、本発明に用いるポリエステル樹脂(BP)の還元粘度の値は、サンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃で、ウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
【0059】
さらに、このポリエステル樹脂(BP)は、ガラス転移温度が25℃以上であることが好ましく、特に30℃以上であることがより好ましい。また、このガラス転移温度は55℃以下であることが好ましく、特に50℃以下であることがより好ましい。
【0060】
このガラス転移温度が25℃未満の場合には、金属薄膜層(C)と生分解性フィルム層(A)との良好な接着強度が得られない傾向があり、このガラス転移温度が55℃を超えると、柔軟性が低下する傾向がある。
【0061】
なお、本発明に用いるポリエステル樹脂(BP)のガラス転移温度の値は、DSC法により求めた値である。
【0062】
そして、このポリエステル樹脂(BP)は、反応性基および/または極性基を有することが好ましい。このように反応性基および/または極性基を有することにより、架橋剤との反応性を付与したり、接着強度を向上させるという効果を得ることができるためである。
【0063】
ここで、反応性基とは、イソシアネート基や、グリシジル基、メラミン樹脂などと反応できる性質を有する官能基を示す。
【0064】
そして、このポリエステル樹脂(BP)の有する反応性基および/または極性基は、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、およびこれらの塩よりなる群から選ばれる一種以上であることが特に好ましい。
【0065】
また、このポリエステル樹脂(BP)中における、この反応性基および/または極性基の含有率は、100当量/106g以上であることが好ましい。また、この含有率は、500当量/106g以下であることが好ましく、特に400当量/106g以下であることがより好ましい。
【0066】
この含有率が100当量/106g未満の場合には、架橋反応が不足したり、接着強度が低下する傾向があり、この含有率が500当量/106gを超えると、耐水性が低下する傾向がある。
【0067】
また、このポリエステル樹脂(BP)は、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ホルムアルデヒド樹脂よりなる群から選ばれる一種以上で架橋されていることが好ましい。このように架橋されることにことにより、この上に金属層を設け、さらにその上に接着剤層を設けた際に、接着剤層を塗工する際の耐溶剤性が向上するという効果を得ることができるためである。
【0068】
ここで、ポリエステル樹脂(BP)100質量部に対する架橋剤の配合量は、0.5質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることがより好ましい。また、この配合量は、30質量部以下であることが好ましく、特に25質量部以下であることがより好ましい。
【0069】
この配合量が0.5質量部未満の場合には、架橋が不足し、耐溶剤性が低下する傾向があり、この配合量が30質量部を超えると、接着強度が低下する傾向がある。
【0070】
さらに、本発明に用いる生分解性アンダーコート層(B)は、ポリエステル樹脂(BP)以外にも、本発明の特性を損なわない範囲内で必要に応じて他の成分を含有していてもよく、たとえば、粘度調整剤、劣化防止剤、着色料などを含有していてもよい。
【0071】
そして、本発明に用いる生分解性アンダーコート層(B)における上記のような性質を有するポリエステル樹脂(BP)の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、特に60質量%以上であることがより好ましい。また、この含有率は、当然に100質量%以下である。この含有率が50質量%未満の場合には、アンダーコート層としての特性が低下する傾向がある。
【0072】
そして、上記のような性質を有する生分解性のポリエステル樹脂(BP)を含む樹脂組成物からなる生分解性アンダーコート層(B)の膜厚は、特に限定されず、用途に応じて適宜変更することが可能ではあるが、通常は、0.01μm以上であることが好ましい。また、この膜厚は、2.0μm以下であることが好ましい。
【0073】
この膜厚が0.01μm未満の場合には、生分解性フィルム層(A)と金属薄膜層(C)との密着強度が十分に得られないという傾向があり、この膜厚が2.0μmを超えると、生分解性フィルム層(A)と金属薄膜層(C)との密着強度はそれ以上ほとんど増加することはなく、かえってコスト的にも不利となる傾向がある。
【0074】
また、本発明の生分解性貼合材において、金属薄膜層の金属光沢が外観上明瞭に認識でき、優れた意匠性が感じられるようにするためには、生分解性アンダーコート層(B)は透明性を有することが好ましい。もっとも、本発明の生分解性貼合材の意匠上においてさらに特殊な意匠性が要求される場合には、生分解性アンダーコート層(B)には、着色剤や意匠性を出すための添加物などを加えることができる。
【0075】
また、生分解性アンダーコート層(B)の形成方法は、特に限定されず、公知のコーティング方法を用いて、生分解性のポリエステル樹脂(BP)などを溶剤に溶解させた溶液を、生分解性フィルム(A)上にコーティングして乾燥させることにより形成することができる。
【0076】
生分解性アンダーコート層(B)の形成の際に用いるコーティング方法の具体例としては、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、エアドクターコーターなどの塗工機を用いた一般的なコーティング方法が挙げられる。
【0077】
<金属薄膜層(C)>
本発明に用いる金属薄膜層(C)は、特に限定されず、用途に応じて適宜適した材質を選択することが可能であるが、通常の用途であれば、一般的に真空蒸着法やスパッタリング法による金属薄膜層の形成の際に用いられる材質である、アルミ、銀、金、クロム、銅などを用いることが好ましい。
【0078】
また、本発明に用いる金属薄膜層(C)としては、これらの材質の中でも、アルミニウムまたはアルミニウム合金を材質とする薄膜を用いることが、生産性および製造コストの面からは特に好ましい。
【0079】
そして、本発明に用いる金属薄膜層(C)の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜変更することが可能であるが、通常の用途であれば、この金属薄膜層(C)の厚みは、10nm以上であることが好ましい。また、この厚みは、100nm以下であることが好ましい。
【0080】
この厚みが10nm未満の場合には、金属光沢およびガスバリア性が低下する傾向があり、本発明の生分解性貼合材の材料として用いるには好ましくない場合がある。また、この厚みが100nmを超えると、生分解性フィルム層(A)と金属薄膜層(C)との密着強度が低下する傾向があり、製造コストも高くなる場合がある。
【0081】
また、本発明に用いる金属薄膜層(C)の製造方法は、の形成方法は、特に限定されず、公知の製膜技術を用いて形成することができるが、たとえば、真空蒸着法やスパッタリング法などの公知の製膜技術によって形成することができる。
【0082】
<生分解性接着剤層(D)>
本発明に用いる生分解性接着剤層(D)は、特定の性質を有する生分解性のポリエステル樹脂(本明細書において、ポリエステル樹脂(DP)とも呼称する)を含む樹脂組成物からなることが必要である。そして、この樹脂組成物は、生分解性を有する樹脂組成物である必要があり、燃焼あるいは分解後に有害物質を排出しないものが好ましい。
【0083】
ここで、このポリエステル樹脂(DP)は、乳酸残基の含有率が60モル%以上であることが好ましく、特に65モル%以上であることがより好ましい。また、この含有率は80モル%以下であることが好ましく、特に75モル%以下であることが好ましい。この含有率が60モル%未満の場合には、生分解性が低下する傾向があり、この含有率が80モル%を超えると、接着強度が低下する傾向がある。
【0084】
また、このポリエステル樹脂(DP)は、L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が1以上であることが好ましい。また、このモル比(L/D)は、9以下であることが好ましい。
【0085】
このモル比(L/D)が1未満の場合には、D−乳酸残基が過剰となって製造コストが高くなる傾向がある。また、このモル比が9を超えると、メチルエチルケトン(MEK)などの汎用溶剤に対する溶解性が不足し、コーティング適性が低下する傾向がある。
【0086】
なお、本発明に用いるポリエステル樹脂(DP)のL−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)の値は、使用するラクチド(乳酸の2量体)や乳酸の旋光度を測定することにより求めた値である。また、モル比(L/D)の値は、ポリエステル樹脂(DP)の旋光度を測定することによっても求めることができる。
【0087】
さらに、このポリエステル樹脂(DP)は、還元粘度が0.3dl/g以上であることが好ましく、特に0.4dl/g以上であることがより好ましい。また、この還元粘度は1.0dl/g以下であることが好ましい。
【0088】
この還元粘度が0.3dl/g未満の場合には、金属薄膜層(C)および紙(E)との接着強度が不足する傾向がある。また、この還元粘度が1.0dl/gを超えると、溶剤に溶解した際の溶液の粘度が高くなりすぎて、コーティング適性不良が発生する傾向がある。
【0089】
なお、本発明に用いるポリエステル樹脂(DP)の還元粘度の値は、サンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃で、ウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
【0090】
さらに、このポリエステル樹脂(DP)は、ガラス転移温度が−10℃以上であることが好ましい。また、このガラス転移温度は20℃以下であることが好ましい。
【0091】
このガラス転移温度が−10℃未満の場合には、金属薄膜層(C)と紙(E)との良好な接着強度が得られない傾向があり、このガラス転移温度が20℃を超えると、本発明の生分解性貼合材の柔軟性が低下する傾向がある。
【0092】
なお、本発明に用いるポリエステル樹脂(DP)のガラス転移温度の値は、DSC法により求めた値である。
【0093】
そして、このポリエステル樹脂(DP)は、反応性基および/または極性基を有することが好ましい。このように反応性基および/または極性基を有することにより、架橋剤との反応性を付与したり、接着強度を向上させるという効果を得ることができるためである。
【0094】
ここで、反応性基とは、イソシアネート基や、グリシジル基、メラミン樹脂などと反応できる性質を有する官能基を示す。
【0095】
そして、このポリエステル樹脂(DP)の有する反応性基および/または極性基は、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、およびこれらの塩よりなる群から選ばれる一種以上であることが特に好ましい。
【0096】
また、このポリエステル樹脂(DP)中における、この反応性基および/または極性基の含有率は、100当量/106g以上であることが好ましい。また、この含有率は、500当量/106g以下であることが好ましく、特に400当量/106g以下であることがより好ましい。
【0097】
この含有率が100当量/106g未満の場合には、架橋反応が不足したり、接着強度が低下する傾向があり、この含有率が500当量/106gを超えると、耐水性が低下する傾向がある。
【0098】
また、このポリエステル樹脂(DP)は、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ホルムアルデヒド樹脂よりなる群から選ばれる一種以上で架橋されていることが好ましい。このように架橋されることにより、クリープによるずれが少なくなり、高温時の接着強度低下が少なくなるという効果を得ることができるためである。
【0099】
ここで、ポリエステル樹脂(DP)100質量部に対する架橋剤の配合量は、0.5質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることがより好ましい。また、この配合量は、30質量部以下であることが好ましく、特に25質量部以下であることがより好ましい。
【0100】
この配合量が0.5質量部未満の場合には、架橋による効果が得られない傾向があり、この配合量が30質量部を超えると、接着強度が低下する傾向がある。
【0101】
さらに、本発明に用いる生分解性接着剤層(D)は、ポリエステル樹脂(DP)以外にも、本発明の特性を損なわない範囲内で必要に応じて他の成分を含有していてもよく、たとえば、粘度調整剤、劣化防止剤、着色料、タッキファイヤーなどを含有していてもよい。
【0102】
そして、本発明に用いる生分解性接着剤層(D)における上記のような性質を有するポリエステル樹脂(DP)の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、特に60質量%以上であることがより好ましい。また、この含有率は、当然に100質量%以下である。この含有率が50質量%未満の場合には、接着剤層としての特性が低下する傾向がある。
【0103】
そして、上記のような性質を有する生分解性のポリエステル樹脂(DP)を含む樹脂組成物からなる生分解性接着剤層(D)の膜厚は、特に限定されず、用途に応じて適宜変更することが可能ではあるが、通常は、0.1μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることがより好ましい。また、この膜厚は、30μm以下であることが好ましく、特に20μm以下であることがより好ましい。
【0104】
この膜厚が0.1μm未満の場合には、紙(E)と金属薄膜層(C)との密着強度が十分に得られないという傾向があり、この膜厚が30μmを超えると、紙(E)と金属薄膜層(C)との密着強度はそれ以上ほとんど増加することはなく、かえってコスト的にも不利となる傾向がある。
【0105】
また、生分解性接着剤層(D)の形成方法は、特に限定されず、公知のコーティング方法を用いて、生分解性のポリエステル樹脂(DP)などを溶剤に溶解させた溶液を、生分解性フィルム層(A)に生分解性アンダーコート層(B)を介して金属薄膜層(C)が積層された生分解性フィルム積層体上、または紙(E)上にコーティングして乾燥させることにより形成することができる。
【0106】
なお、本発明の生分解性貼合材の製造工程においては、生分解性のポリエステル樹脂(DP)を含有する生分解性接着剤を、前記生分解性フィルム積層体上または紙(E)上のどちらに塗布して生分解性接着剤層(D)を形成してもよいが、生産性、加工性などの面からは、前記生分解性フィルム積層体上に塗布することが好ましい。
【0107】
生分解性接着剤層(D)の形成の際に用いるコーティング方法の具体例としては、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、エアドクターコーターなどの塗工機を用いた一般的なコーティング方法が挙げられる。
【0108】
<紙(E)>
本発明に用いる紙(E)は、燃焼あるいは分解を受けた場合に有害ガスなどの環境汚染物質の排出がないものであれば、特に限定されず、用途に応じて適宜適した材質を選択することが可能であるが、中でも、再生パルプや再生セルロースからなる紙が特に好ましい。
【0109】
そして、本発明に用いる紙(E)の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜変更することが可能であるが、通常の用途であれば、この紙(E)の厚みは、5μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることがより好ましい。この厚みが5μm未満の場合には、強度が低下する傾向があり、本発明の生分解性貼合材の材料として用いるには好ましくない場合がある。
【0110】
生分解性フィルム層(A)に生分解性アンダーコート層(B)を介して金属薄膜層(C)が積層された生分解性フィルム積層体と、紙(E)との、生分解性接着剤層(D)を介した貼合方法としては、十分な強度を持って貼合することができる貼合方法であれば、特に限定はされず、たとえば、圧着ロールを用いたドライラミネート法、セミドライラミネート法、ウエットラミネート法などの貼合方法が挙げられる。
【0111】
前記生分解性フィルム積層体と、紙(E)とを貼合する際においては、特に紙(E)が紙を材質とする薄膜である場合には、貼合工程において紙(E)にカールが生じることにより加工性が低下する傾向がある。そのため、あらかじめ水、イソプロピルアルコールなどの極性溶剤をグラビアコーターなどで紙(E)に塗工し、カール止め加工を施しておくことにより、紙(E)にカールが生じることを防ぐことが好ましい。
【0112】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0113】
<ポリエステル樹脂の製造例1>
L−ラクチド700質量部、DL−ラクチド300質量部、重合度が10であるポリグリセリン(ダイセル化学工業(株)製、PGL10:水酸基濃度850KOHmg/g)10質量部、および開環重合触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート1質量部を4つ口フラスコに仕込んだ。次いで、この液を窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより、開環重合させた。
【0114】
その後、この液から残留ラクチドを減圧下留去させることにより、ポリエステル樹脂(I)を得た。得られたポリエステル樹脂(I)の特性値の分析結果を表1に示す。
【0115】
<ポリエステル樹脂の製造例2>
L−ラクチド240質量部、DL−ラクチド240質量部、カプロラクトン320質量部、重合度が10であるポリグリセリン(PGL10)8質量部、オクチル酸スズ0.1質量部を4つ口フラスコに仕込んだ。次いで、この液を窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより、開環重合させた。
【0116】
その後、この液から残留ラクチドを減圧下留去させることにより、ポリエステル樹脂(II)を得た。得られたポリエステル樹脂(II)の特性値の分析結果を表1に示す。
【0117】
【表1】
Figure 0004080776
【0118】
<アンダーコート剤の製造例>
ポリエステル樹脂(I)10質量部を、酢酸エチル400質量部に溶解させ、そこへ、脂肪族イソシアネート(商品名TPA−100、旭化成工業(株)製)1質量部、ジブチルスズラウレート0.1質量部を配合することにより、アンダーコート剤(I)を得た。
【0119】
また、同様にして、ポリエステル樹脂(I)10質量部を、酢酸エチル400質量部に溶解させ、そこへ、ジブチルスズラウレート0.1質量部を配合することにより、架橋剤を含有しないアンダーコート剤を得た。
【0120】
さらに、同様にして、市販の非生分解性樹脂である共重合ポリエステル(東洋紡績(株)製、バイロン200)10質量部を、酢酸エチル400質量部に溶解させ、そこへ、脂肪族イソシアネート(旭化成工業(株)製、TPA−100)1質量部、ジブチルスズラウレート0.1質量部を配合することにより、市販の非生分解性樹脂を用いたアンダーコート剤を得た。
【0121】
<接着剤の製造例>
ポリエステル樹脂(II)240質量部を、MEK380質量部、トルエン380質量部に溶解させ、そこへ脂肪族イソシアネート(TPA−100)を10質量部、ジブチルスズラウレート1質量部を配合することにより、接着剤(II)を得た。
【0122】
また、同様にして、ポリエステル樹脂(II)240質量部を、MEK380質量部、トルエン380質量部に溶解させ、そこへジブチルスズラウレート1質量部を配合することにより、架橋剤を含有しない接着剤を得た。
【0123】
さらに、同様にして、市販の非生分解性樹脂である共重合ポリエステル(東洋紡績(株)製、バイロン300)240質量部を、MEK380質量部、トルエン380質量部に溶解させ、そこへ脂肪族イソシアネート(TPA−100)を10質量部、ジブチルスズラウレート1質量部を配合することにより、市販の非生分解性樹脂を用いた接着剤を得た。
【0124】
<実施例1>
厚さ25μmのポリL−乳酸フィルムの片面に、上記のアンダーコート剤を乾燥膜厚が0.02μmになるようにグラビアコーターにて塗布し、乾燥、硬化させることにより、アンダーコート処理ポリL−乳酸フィルム(I)を得た。
【0125】
次いで、アンダーコート処理ポリL−乳酸フィルム上に膜厚が45nmになるようにアルミニウム蒸着を実施し、アルミニウム蒸着ポリL−乳酸フィルム(I)を得た。
【0126】
続いて、アルミニウム蒸着ポリL−乳酸フィルム(I)のアルミニウム蒸着面に上記の接着剤を乾燥膜厚7μmになるように塗布し、単位面積当たりの質量65g/m2、厚さ150μmのコート紙をドライラミネート法により貼り合わせ、図1に示す実施の形態と同様の構造を有する貼合材(I)を得た。
【0127】
<実施例2>
実施例1と同様にして、アルミニウム蒸着ポリL−乳酸フィルム(I)を作製し、アルミニウム蒸着ポリL−乳酸フィルム(I)の非アルミニウム蒸着面に上記の接着剤を乾燥膜厚7μmになるように塗布し、単位面積当たりの質量65g/m2、厚さ1μmのコート紙をドライラミネート法により貼り合わせ、図2に示す実施の形態と同様の構造を有する貼合材(II)を得た。
【0128】
<実施例3>
架橋剤を含有しないアンダーコート剤および架橋剤を含有しない接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、図1に示す実施の形態と同様の構造を有する貼合材(III)を得た。
【0129】
<比較例1>
アンダーコート剤を用いなかったことを除いては、実施例1と同様にして、図3に示す構造を有する貼合材(IV)を得た。
【0130】
<比較例2>
市販の非生分解性樹脂を用いたアンダーコート剤および市販の非生分解性樹脂を用いた接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、図1に示す実施の形態と同様の構造を有する貼合材(V)を得た。
【0131】
ここで、上記の実施例および比較例の貼合材の構造と用いたポリエステル樹脂の種類を、下記の表2にまとめる。
【0132】
【表2】
Figure 0004080776
【0133】
<性能評価>
上記のようにして得られた貼合材(I)〜(V)について、生分解性、金属光沢、接着強度について、それぞれ下記の測定方法に基づいて測定および評価した。結果を表3に示す。
【0134】
(i)生分解性の評価方法
得られた貼合材をコンポスター中に入れ、30日後に貼合材の形態(分解の速度)を目視にて観察して生分解性を評価した。
【0135】
(ii)金属光沢の評価方法
得られた貼合材を目視にて観察し、下記の基準に基づいて貼合材の金属光沢を評価した。
◎:金属光沢が非常に鮮やかである
○:金属光沢が鮮やかである
△:金属光沢が少し曇っている
×:金属光沢がほとんど感じられない
(iii)接着強度の測定方法
得られた貼合紙をはさみで切り、端部を3回折曲げた後に、折曲げた部位を拡大鏡を用いて目視にて観察し、下記の基準に基づいて接着強度を評価した。
◎:剥れが全く認められない
○:剥れがほとんど認められない
△:少し剥れが認められる
×:ほとんど剥れてしまっている
【0136】
【表3】
Figure 0004080776
【0137】
上記の表3の結果から、実施例1〜3において得られた貼合材は、金属光沢、接着強度の面において、市販の非生分解性樹脂を用いたアンダーコート剤および市販の非生分解性樹脂を用いた接着剤を使用した比較例2で得られた従来公知の貼合材と比べてほぼ同等であることから、工業用資材として好適に用いる上で十分な水準であると判断される。
【0138】
また、上記の表3の結果から、実施例1〜3において得られた貼合材は、金属薄膜層を除くフィルム、アンダーコート層、接着材層、紙の全てが生分解性を有するため、従来公知の貼合材である比較例2と比べて、著しく優れた生分解性を有することがわかる。
【0139】
さらに、上記の表3の結果から、本発明に用いるアンダーコート層(B)は、本発明の生分解性貼合材に用いる生分解性フィルム層(A)と金属薄膜層(C)との層間接着強度に顕著な効果を与えるものと判断される。
【0140】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0141】
【発明の効果】
上記の結果より、本発明の生分解性貼合材は、金属薄膜層と生分解性フィルム層と紙とを有する生分解性貼合材であって、金属薄膜層と生分解性フィルム層および紙との層間接着強度が高く、かつ生分解性に優れた生分解性貼合材であるといいえる。
【0142】
そして、本発明の生分解性貼合材は、全ての層間において優れた接着強度を示すため、印刷、裁断、ラミネートなどの後工程の実施などの原因、または使用中の経時的劣化などの原因により、層間剥離するといった不具合が生じる事が少なく、工業用資材として使用する場合に非常に有用である。
【0143】
また、本発明の生分解性貼合材は、金属薄膜層(C)が設けられているため、優れた意匠性を実現することができるという利点を有する。
【0144】
加えて、本発明の生分解性貼合材は、優れた層間接着強度を示し、なおかつ金属薄膜層(C)を除く全ての層が生分解性であるため、紙をはじめとする紙(E)と他の層とを分離することなくコンポスト化する事により、容易に堆肥化して再利用することも可能である。
【0145】
さらには、本発明の生分解性貼合材は、アンダーコート層(B)および接着剤層(D)において、低燃焼カロリーであるポリ乳酸系樹脂を主要な成分として含んでいるため、紙と共に焼却処分しても焼却炉を痛めることが少なく、有害ガスなどの環境汚染物質の排出が少ないという点でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の生分解性貼合材の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】 本発明の生分解性貼合材の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図3】 生分解性貼合材の比較例の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1,21,31 生分解性フィルム層、3,23 生分解性アンダーコート層、5,25,35 金属薄膜層、7,27,37 生分解性接着剤層、9,29,39 紙。

Claims (11)

  1. 生分解性フィルム層(A)に生分解性アンダーコート層(B)を介して金属薄膜層(C)が積層された生分解性フィルム積層体に、生分解性接着剤層(D)を介して紙(E)が積層された生分解性貼合材であって、生分解性アンダーコート層(B)は、乳酸残基を80〜100モル%の範囲で含み、L−乳酸残基とD−乳酸残基とのモル比(L/D)が1〜20の範囲にあるポリエステル樹脂(BP)を含む樹脂組成物からなり、生分解性接着剤層(D)は、乳酸残基を60〜80モル%の範囲で含み、L−乳酸残基とD−乳酸残基とのモル比(L/D)が1〜9の範囲にあるポリエステル樹脂(DP)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする生分解性貼合材。
  2. 前記生分解性フィルム積層体の金属薄膜層側(C)に、生分解性接着剤層(D)を介して紙(E)が積層されたことを特徴とする請求項1に記載の生分解性貼合材。
  3. ポリエステル樹脂(BP)は、還元粘度が0.3〜1.0dl/gの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性貼合材。
  4. ポリエステル樹脂(BP)は、ガラス転移温度が25〜55℃の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性貼合材。
  5. ポリエステル樹脂(DP)は、還元粘度が0.3〜1.0dl/gの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性貼合材。
  6. ポリエステル樹脂(DP)は、ガラス転移温度が−10〜20℃の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性貼合材。
  7. ポリエステル樹脂(BP)は、反応性基および/または極性基を有し、該ポリエステル樹脂中において該反応性基および/または極性基は100〜500当量/106gの割合で含まれることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の生分解性貼合材。
  8. ポリエステル樹脂(DP)は、反応性基および/または極性基を有し、該ポリエステル樹脂中において該反応性基および/または極性基は100〜500当量/106gの割合で含まれることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の生分解性貼合材。
  9. 反応性基および/または極性基は、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、およびこれらの塩よりなる群から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項7または8に記載の生分解性貼合材。
  10. ポリエステル樹脂(BP)は、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ホルムアルデヒド樹脂よりなる群から選ばれる一種以上で架橋されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の生分解性貼合材。
  11. ポリエステル樹脂(DP)は、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ホルムアルデヒド樹脂よりなる群から選ばれる一種以上で架橋されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の生分解性貼合材。
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