JP4080677B2 - (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸エステルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの意)の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸とアルコールとを共沸脱水溶剤として機能する有機溶剤に溶解させ、重合禁止剤及び酸性触媒存在下、必要に応じて微量の空気を導入しながらエステル化反応を行ない、反応終了後、未反応の(メタ)アクリル酸と酸性触媒をアルカリ水で中和して除去し、その後必要に応じて水洗を数回繰返した後、回収した油層から重合禁止剤存在下、有機溶剤を減圧留去することで、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを得る方法が知られている。
【0003】
有機溶剤を減圧除去するには、目的とする(メタ)アクリル酸エステルの熱重合を避けるため、60℃〜95℃の比較的低い温度で実施せざるを得ないため、有機溶剤留去には非常に長い時間を必要とし、生産性が低くコスト上の不利があった。
【0004】
この問題を解決するため、従来、残存溶剤濃度が10〜30重量%になった頃から系内に大量の空気を導入し、これにより溶剤の留去を促進する方法がとられてきた。
【0005】
しかしながら、この方法においては、製品が空気酸化によって着色し、製品の利用上好ましくなく、また時間の短縮の効果も十分ではないという問題点があった。
【0006】
また、特開平7−206769号公報には、系内に水を添加し共沸により溶媒を留去する方法が提案されている。しかしながらこの方法においては、系内において有機溶媒の蒸発潜熱に水の蒸発潜熱が加算されることから、外部から与えるべき熱量が従来より多く必要となり、製造設備的に高価となり製造コスト的に不利であった。また、十分な熱量を与えることができない場合には、水添加の効果が相殺され、時間短縮の効果は十分でないという問題点があった。
【0007】
[発明の目的]
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、(メタ)アクリル酸エステルの製造において、エステル化反応時に使用した溶媒を短時間で効率よく留去でき、製品の着色を抑え、製造時間(工程)時間が短縮されることにより当該(メタ)アクリル酸エステルの大量生産が可能となる製造方法を提供するところにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものである。すなわち、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、油層からトルエンを減圧蒸留により留去する工程を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、油層からトルエンを留去する工程が、油層中に減圧水蒸気を導入しながらトルエンを減圧蒸留する工程を含み、上記油層中に導入する減圧水蒸気は、大気圧以上の圧力を有する加圧水蒸気を別途作り、これを細管内を通過させながら次第に減圧せしめたものであり、残存トルエン量が(メタ)アクリル酸エステル100重量部に対して50〜10重量部となった時点から減圧水蒸気を導入し、当該減圧水蒸気の導入量が残存トルエン量の5〜228重量%であり、かつ、当該減圧水蒸気の蒸気圧が300mmHg以下であるものとする
【0009】
【発明の実施の形態】
[(メタ)アクリル酸エステルの製造]
(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、直接エステル化方法、エステル交換方法、酸化クロライド方法などの方法がある。
【0010】
直接エステル化方法とは、簡単に説明すれば、(メタ)アクリル酸と高沸点のアルコールとを脱水共沸溶媒の存在下でエステル化反応させ、アルカリ水溶液で中和した後、水層を分離するとともに油層を回収し、回収した油層から有機溶媒を減圧蒸留により留去するという方法である。
【0011】
エステル交換方法とは、簡単に説明すれば、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとを水酸化リチウム等のアルカリ触媒下、エステル交換を行ない、(メタ)アクリル酸エステルの粗製物を得る。反応に溶媒を使用することもある。蒸留ができないエステルの場合、前記の粗製物を水洗精製するため、溶媒を加え、油水分離で行なうという方法である。
【0012】
酸化クロライド方法とは、簡単に説明すれば、(メタ)アクリル酸クロライドとアルコールとを水酸化ナトリウム等のアルカリ、又は有機アミンを脱塩酸剤として用いてエステル化を行ない、(メタ)アクリル酸エステルの粗製物を得る方法であり、反応溶媒としてトルエンなどの溶剤を使用する方法である。
【0013】
いずれの方法においても、製造工程において、回収した油層から有機溶媒を留去する必要があり、この工程が完結することにより、最終的に目的とする(メタ)アクリル酸エステルが得られる。
【0014】
なお、以下、上記した直接エステル化方法に基づいて説明する。
【0015】
[アルコール]
本発明において(メタ)アクリル酸エステルの製造に用いられるアルコールとしては、水酸基を1個または2個以上有する、沸点が高沸点、すなわち180℃以上の(あえて上限をいえば、当該化合物の分解温度まで)のアルコールであれば特に制限なく使用できる。また、アルコールの誘導体としてアルキレンオキサイドを付加させた化合物なども用いることができる。これらアルコールは1種類を単独に使用しても良く、または2種類以上を組合わせて使用しても良い。
【0016】
たとえば、フェニルグリコール及び同族体、メトキシグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAのアルキレングリコール付加体、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン及びこれらのアルキレンオキサイド付加体などが例示される。
【0017】
[(メタ)アクリル酸]
アルコールとエステル化反応して(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に用いる(メタ)アクリル酸の使用量は、アルコールの水酸基1当量に対して(メタ)アクリル酸を1〜2倍当量であり、好ましくは、1.1〜1.5倍量である。1当量未満ではエステル化反応時間が長くなり、また得られる(メタ)アクリル酸エステル中に高分子量物等が増大するなど好ましくない。また、2倍当量を超える(メタ)アクリル酸を用いる場合には、反応に寄与しない過剰の(メタ)アクリル酸が残存することとなり、経済的にも不利であり、また反応粗製物から未反応(メタ)アクリル酸を除去する煩雑さを生じるため、好ましくない。
【0018】
[触媒]
エステル化反応の酸触媒としては従来公知の各種のものを使用できる。例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などをあげることができる。また、その使用量としては原料アルコールと(メタ)アクリル酸の合計100重量部に対して1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部を使用する。
【0019】
[有機溶媒]
エステル化反応に使用される有機溶媒(溶剤)としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、キシレン等が例示され、その1種類単独、または2種以上を組合わせで用いることができる。
【0020】
[エステル化反応条件]
エステル化反応の反応温度は、60〜140℃程度であり、好ましくは70〜130℃とされる。60℃未満では反応時間が長くなり、また140℃を超える温度では重合等の不具合を生じ、副生成物が多くなることから好ましくない。
【0021】
エステル化反応時に、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止する目的で、重合禁止剤が使用される。たとえば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノン、パラベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノールなど公知の重合禁止剤が例示できる。また、微量の酸素、または空気を反応液中に微細な気泡として導入しても良い。
【0022】
エステル化反応は、水の留出が無くなるまで行われ、反応時間としては、5〜20時間程度である。反応終了後、反応粗製物中に含まれる触媒、過剰の(メタ)アクリル酸を除去するため、アルカリ水溶液で中和し、水層を除去、必要に応じて、食塩水にて水洗を行ない、水層を除去して油層を得る。
【0023】
得られた油層から有機溶媒を留去するために、減圧下、60〜95℃で加熱攪拌し行なう。(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止するために微量の酸素、または空気を導入しても良い。比較的低温での操作のため、残存溶媒量が(メタ)アクリル酸エステル100重量部に対して40〜10重量部になった時点から、溶媒の回収速度が低下する。
【0024】
[減圧水蒸気]
本発明においては、溶媒の回収速度が遅くなった時点から、残存溶媒量の10〜228重量%に相当する減圧水蒸気を溶媒を含む(メタ)アクリル酸エステル中に導入しながら、溶媒の留出を促進させる。なお、本発明においては、有機溶媒の留出初期から減圧水蒸気を導入してもかまわないが、(メタ)アクリル酸エステル100重量部に対して、40〜10重量部になった時点から導入することが効果的である。すなわち、40重量部を超える場合には、溶媒を気化するための熱量確保に、加熱設備への過剰投資が必要となり、また10重量部未満の場合は、トータルの溶媒留去時間が長くなり、本願発明の効果が不十分となる。
【0025】
本発明にいう減圧水蒸気とは、大気圧(760mmHg)より低い圧力を有する水蒸気のことであり、減圧水蒸気が示す温度を釜内の液温により近づけるという理由で、好ましくは600mmHg以下、より好ましくは500mmHg以下、さらに好ましくは300mmHg以下、さらに好ましくは150mmHg以下の蒸気圧を示す気体状の水のことである。減圧蒸気を得る手段としては特に限定されないが、例えば、大気圧以上の圧力を有する加圧水蒸気をオリフィス管やニードルバルブを通じて、所望の減圧度の系へ導くことによって得られる。
【0026】
減圧水蒸気の導入量としては特に限定はないが、残存有機溶媒量の10〜200重量%であることが好ましい。10重量%未満の場合、十分な効果が得られない可能性があり、200重量%を超える場合、製品中に水分として残存し、水を除去するための時間が掛かり過ぎるという可能性がある。なお、好ましい範囲は20〜120重量%である。
【0027】
溶媒を留去した後に、残液をろ過して、無色または淡黄色透明な(メタ)アクリル酸エステルを得る。
【0028】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル製造における溶媒留去に要する時間は、従来10〜15時間必要であったものが、4〜6時間に短縮される。より具体的には、有機溶媒の最終残存濃度0.1重量%までの減圧留去に要する時間を10時間以内、さらには9時間以内、さらには8時間以内とすることができる。
【0029】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
分水器付コンデンサー、温度計、空気吹き込み管、及び気密攪拌装置を備えたグラスライニング製の300L容量の反応釜にポリエチレングリコール(MW=400)85kg、トルエン100kg、パラトルエンスルホン酸6kg、ハイドロキノン0.15kg、及びアクリル酸37kgを仕込み、空気を吹き込みながらジャケットに蒸気を通して加熱攪拌を行なった。反応液温(反応温度)102℃で水が留出し始め、約8時間後、123℃で水の留出が終了し30℃以下まで冷却した。留出した水から算出したエステル化の反応率は99.5%であった。
【0031】
この反応液に、アルカリ水を徐々に加え、40℃以下にて中和し、過剰のアクリル酸、触媒を水槽に抽出し、下層水を除去した。続いて、10%食塩水20kgを仕込み、攪拌・静置後、下層水を除去し、トルエン100kgを含む油層180kgを得た。コンデンサー、温度計、水蒸気吹き込み管、空気吹き込み管、及び気密攪拌装置を備えたグラスライニング製の300L容量の蒸留釜に、上記で得た油層を仕込み、70℃の温水をジャケットに通水しながら、内温70℃、真空度100〜30mmHgで減圧下、トルエンを留出させた。
【0032】
残存トルエン20%となった時点(アクリル酸エステル100重量部に対して25重量部に相当する)から2kg/cm(約130℃)の加圧水蒸気をニードルバルブを通じて30mmHgの減圧系内に10kg/Hrの速度で2時間吹き込み、合計20kg(残存溶媒量の100重量%)導入した。導入終了から30分後、残存トルエンを確認したところ、0.1重量%であった。トルエン留去開始から4.5時間を要した。
【0033】
この残液をろ過後、製品として淡黄色透明液体76kg得た。得られた製品の色相APHAは10、酸価は0.10mgKOH/g、水分は0.02%であった。
【0034】
[実施例2]
実施例1と同じ反応釜に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均EO付加モル数10)88kg、トルエン134kg、パラトルエンスルホン酸5.8kg、ハイドロキノン0.2kg、メタクリル酸29kgを仕込み、空気を吹き込みながら、ジャケットに蒸気を通して加熱攪拌を行なった。反応液温(反応温度)107℃で水が留出し始め、約10時間後、122℃で水の留出が終了し30℃以下まで冷却した。留出した水から算出したエステル化の反応率は99.0%であった。
【0035】
この反応液に、アルカリ水を徐々に加え、40℃以下にて中和し、過剰のメタクリル酸、触媒を水槽に抽出し、下層水を除去した。続いて、10%食塩水20kgを仕込み、攪拌・静置後、下層水を除去し、トルエン134kg含む油層220kgを得た。コンデンサー、温度計、水蒸気吹き込み管、空気吹き込み管、及び気密攪拌装置を備えたグラスライニング製の300L容量の蒸留釜に、上記で得た油層を仕込み、70℃の温水をジャケットに通水しながら、内温70℃、真空度100〜30mmHgで減圧下、トルエンを留出させた。
【0036】
残存トルエン25%(メタクリル酸エステル100重量部に対して33重量部に相当)となった時点から2kg/cm(約130℃)の加圧水蒸気をニードルバルブを通して、約50mmHgの系内に7kg/Hrの速度で2.5時間吹き込み、合計17.5kg(残存溶媒量の82重量%)導入した。導入終了から30分後、残存トルエンを確認したところ、0.1重量%であった。トルエン留去開始から5時間を要した。
【0037】
この残液をろ過して、製品として淡黄色透明液体85kgを得た。得られた製品の色相APHAは20、酸価は0.05mgKOH/g、水分は0.01%であった。
【0038】
[実施例3]
実施例1と同じ反応釜に、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物(平均EO付加モル数3)70kg、トルエン138kg、パラトルエンスルホン酸7kg、ハイドロキノン0.2kg、アクリル酸68kgを仕込み、空気を吹き込みながら、ジャケットに蒸気を通して加熱攪拌を行なった。反応液温(反応温度)110℃で水が留出し始め、約5時間後、125℃で水の留出が終了し30℃以下まで冷却した。留出した水から算出したエステル化の反応率は99.4%であった。
【0039】
この反応液に、アルカリ水を徐々に加え、40℃以下にて中和し、過剰のアクリル酸、触媒を水槽に抽出し、下層水を除去した。続いて、10%食塩水20kgを仕込み、攪拌・静置後、下層水を除去し、トルエン138kg含む油層240kgを得た。コンデンサー、温度計、水蒸気吹き込み管、空気吹き込み管、及び気密攪拌装置を備えたグラスライニング製の300L容量の蒸留釜に、上記で得た油層を仕込み、70℃の温水をジャケットに通水しながら、内温70℃、真空度100〜30mmHgで減圧下、トルエンを留出させた。
【0040】
残存トルエン10%(アクリル酸エステル100重量部に対して10重量部に相当)となった時点から1.5kg/cmの加圧水蒸気をニードルバルブを通じて、50mmHgの系内に10kg/Hrの速度で2時間吹き込み、合計20kg(残存溶媒量の20重量%)導入した。導入終了から30分後、残存トルエンを確認したところ、0.1重量%であった。トルエン留去開始から5時間を要した。
【0041】
この残液をろ過して、製品として淡黄色透明液体100kgを得た。得られた製品の色相APHAは10、酸価は0.1mgKOH/g、水分は0.02%であった。
【0042】
[実施例4]
実施例1と同じ反応釜に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均EO付加モル数4)100kg、トルエン100kg、パラトルエンスルホン酸6kg、ハイドロキノン0.15kg、アクリル酸43kgを仕込み、空気を吹き込みながら、ジャケットに蒸気を通して加熱攪拌を行なった。反応液温(反応温度)110℃で水が留出し始め、約4時間後、123℃で水の留出が終了し、30℃以下まで冷却した。留出した水から算出したエステル化の反応率は99.7%であった。
【0043】
この反応液に、アルカリ水を徐々に加え、40℃以下にて中和し、過剰のアクリル酸、触媒を水槽に抽出し、下層水を除去した。続いて、10%食塩水20kgを仕込み、攪拌・静置後、下層水を除去し、トルエン100kg含む油層208kgを得た。
【0044】
コンデンサー、温度計、水蒸気吹き込み管、空気吹き込み管、及び気密攪拌装置を備えたグラスライニング製の300L容量の蒸留釜に、上記で得た油層を仕込み、70℃の温水をジャケットに通水しながら、内温70℃、真空度100〜30mmHgで減圧下、トルエンを留出させた。
【0045】
残存トルエン33%(アクリル酸エステル100重量部に対して50重量部に相当)となった時点から2.0kg/cmの加圧水蒸気をニードルバルブを通して、80mmHgの系内に40kg/Hrの速度で3時間吹き込み、合計120kg(残存溶媒量の228重量%)導入した。導入終了時から30分後、残存トルエンを確認したところ0.1重量%であった。トルエン留去開始から5.5時間を要した。
【0046】
この残液をろ過して、製品として淡黄色透明液体107kgを得た。得られた製品の色相APHAは15、酸価は0.09mgKOH/g、水分は0.05%であった。
【0047】
[実施例5]
実施例1と同じ反応釜に、ポリエチレングリコール(MW=300)80kg、トルエン130kg、パラトルエンスルホン酸6kg、ハイドロキノン0.2kg、及びアクリル酸46kgを仕込み、空気を吹き込みながらジャケットに蒸気を通して加熱攪拌を行なった。反応液温(反応温度)105℃で水が留出し始め、約9時間後、120℃で水の留出が終了し、30℃以下まで冷却した。留出した水から算出したエステル化の反応率は99.4%であった。
【0048】
この反応液に、アルカリ水を徐々に加え、40℃以下にて中和し、過剰のアクリル酸、触媒を水槽に抽出し、下層水を除去した。続いて、10%食塩水20kgを仕込み、攪拌・静置後、下層水を除去し、トルエン130kgを含む油層217kgを得た。
【0049】
コンデンサー、温度計、水蒸気吹き込み管、空気吹き込み管、及び気密攪拌装置を備えたグラスライニング製の300L容量の蒸留釜に、上記で得た油層を仕込み、70℃の温水をジャケットに通水しながら、内温70℃、真空度100〜30mmHgで減圧下、トルエンを留出させた。
【0050】
残存トルエン33%(アクリル酸エステル100重量部に対して50重量部に相当する)となった時点から2.0kg/cmの加圧水蒸気をニードルバルブを通じて75mmHgの系内に1kg/Hrの速度で2時間吹き込み、合計2kg(残存溶媒量の5重量%)導入した。導入終了から120分後、残存トルエンを確認したところ、0.1重量%であった。トルエン留去開始から6時間を要した。
【0051】
この残液をろ過後、製品として淡黄色透明液体87kg得た。得られた製品の色相APHAは10、酸価は0.14mgKOH/g、水分は0.02%であった。
【0052】
[実施例6]
実施例1と同じ反応釜に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均EO付加モル数4)100kg、トルエン100kg、パラトルエンスルホン酸6kg、ハイドロキノン0.15kg、アクリル酸43kgを仕込み、空気を吹き込みながら、ジャケットに蒸気を通して加熱攪拌を行なった。反応液温(反応温度)110℃で水が留出し始め、約4時間後、123℃で水の留出が終了し、30℃以下まで冷却した。留出した水から算出したエステル化の反応率は99.7%であった。
【0053】
この反応液に、アルカリ水を徐々に加え、40℃以下にて中和し、過剰のアクリル酸、触媒を水槽に抽出し、下層水を除去した。続いて、10%食塩水20kgを仕込み、攪拌・静置後、下層水を除去し、トルエン100kg含む油層208kgを得た。
【0054】
コンデンサー、温度計、水蒸気吹き込み管、空気吹き込み管、及び気密攪拌装置を備えたグラスライニング製の300L容量の蒸留釜に、上記で得た油層を仕込み、70℃の温水をジャケットに通水しながら、内温70℃、真空度200〜100mmHgで減圧下、トルエンを留出させた。
【0055】
残存トルエン20%(アクリル酸エステル100重量部に対して25重量部に相当)となった時点から2.0kg/cmの加圧水蒸気をニードルバルブを通して、170mmHgの系内に15kg/Hrの速度で2時間吹き込み、合計30kg(残存溶媒量の110重量%)導入した。導入終了時から120分後、残存トルエンを確認したところ、0.1重量%であった。トルエン留去開始から8時間を要した。
【0056】
この残液をろ過して、製品として淡黄色透明液体106.7kgを得た。得られた製品の色相APHAは15、酸価は0.13mgKOH/g、水分は0.06%であった。
【0057】
[比較例1]
実施例1の対照実験として、次のような比較実験を行なった。すなわち、残存トルエン19%となった時点で、水蒸気の代わりに、導入空気量を実施例1に対して5倍量の0.5L/分として減圧蒸留を続けた。13時間後、残存トルエンを確認したところ、0.13%であった。
【0058】
この残液をろ過して、製品として黄色透明液体76kgを得た。得られた製品の色相APHAは200、酸価は0.15mgKOH/g、水分は0.01%であった。
【0059】
[比較例2]
実施例1の対照実験として、次のような比較実験を行なった。すなわち、残存トルエン20%となった時点で、水蒸気を導入せず、かつ空気の導入量増やさず、減圧蒸留を続けた。15時間後、残存トルエンを確認したところ、0.15%であった。
【0060】
この残液をろ過して、製品として黄色透明液体76kgを得た。得られた製品の色相APHAは25、酸価は0.1mgKOH/g、水分は0.01%であった。
【0061】
[比較例3]
実施例2の対照実験として、次のような比較実験を行なった。すなわち、残存トルエン25%となった時点で、水蒸気の代わりに常温の水37kgを添加して減圧蒸留を続けた。水を添加した段階で、系内の液温が急激に低下した。その後、徐々にもとの温度に戻り(約5時間を要した)、減圧蒸留を続けた。12時間後、残存トルエンを確認したところ、0.12%であった。
【0062】
この残液をろ過して、製品として黄色透明液体84kgを得た。得られた製品の色相APHAは250、酸価は0.1mgKOH/g、水分は0.01%であった。
【0063】
[比較例4]
実施例3の対照実験として、次のような比較実験を行なった。すなわち、残存トルエン9%となった時点で、水蒸気の代わりに水20kgを添加して減圧蒸留を続けた。水を添加した段階で、系内の液温が急激に低下した。その後、徐々にもとの温度に戻り(約5時間を要した)、減圧蒸留を続けた。14時間後、残存トルエンを確認したところ、0.1%であった。
【0064】
この残液をろ過して、製品として黄色透明液体101kgを得た。得られた製品の色相APHAは150、酸価は0.1mgKOH/g、水分は0.01%であった。
【0065】
以上の実験結果を下記[表1]及び[表2]にまとめる。
【0066】
【表1】
Figure 0004080677
【0067】
【表2】
Figure 0004080677
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、エステル化反応時に使用した溶媒を短時間で効率よく留去でき、製品の着色を抑え、製造時間(工程)時間が短縮される。そして、製造時間(工程)時間が短縮されることにより、(メタ)アクリル酸エステルの大量生産が可能となる。

Claims (1)

  1. 油層からトルエンを減圧蒸留により留去する工程を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、
    前記油層からトルエンを留去する工程が、前記油層中に減圧水蒸気を導入しながら前記トルエンを減圧蒸留する工程を含み、
    前記油層中に導入する減圧水蒸気は、大気圧以上の圧力を有する加圧水蒸気を別途作り、これを細管内を通過させながら次第に減圧せしめたものであり、
    残存トルエン量が(メタ)アクリル酸エステル100重量部に対して50〜10重量部となった時点から前記減圧水蒸気を導入し、
    当該減圧水蒸気の導入量が残存トルエン量の5〜228重量%であり、
    かつ、当該減圧水蒸気の蒸気圧が300mmHg以下である
    ことを特徴とする、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
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