JP4080673B2 - 眼鏡レンズの吸着方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に眼鏡レンズ(以下、レンズという)の縁摺り加工のためにレンズの加工中心等を決定し、この加工中心に加工治具を取付けるレンズ用レイアウト・ブロック装置に用いて好適な眼鏡レンズの吸着方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、レンズ玉型(未加工の眼鏡レンズ)を眼鏡フレームの枠形状に適合した形状に加工する場合、その前工程として処方レンズの光学中心、外径、アイポイント位置、レンズ度数、乱視軸等の光学特性を確認し、このレンズ情報とレンズ枠形状データおよび装用者の処方データから加工中心およびレンズに対する加工治具(通称レンズホルダと呼ばれる)の取付角度等を決定する(光学的レイアウト)。次に、これに基づいてレンズホルダの中心をレンズの加工中心に位置付けし、レンズホルダをレンズに取付ける(ブロック)。レンズの加工中心は、レンズが累進多焦点レンズまたは多焦点レンズの場合、レンズのアイポイント位置である。加工する際は、装用者の瞳孔中心(アイポイント)とレンズのアイポイント位置が一致するようにレンズの外周を砥石またはカッタによって縁摺り加工し、眼鏡フレームの枠形状に整合した形状にする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来はレンズの縁摺り加工のための前工程であるレンズの光学的レイアウトおよびブロックを作業者が専用の装置を用いて手作業によって行っていた。しかしながら、このような作業は著しく非能率的で生産性が低く、省力化の大きな障害となっていた。また、レンズを汚したり、傷つけたり、破損したりしないようにその取扱いに細心の注意を払う必要があるため、作業者の負担が大きいという問題もあった。
【0004】
このため、最近ではレンズの光学的レイアウトとレンズホルダによるレンズのブロックを自動的に行うことにより作業能率を向上させるようにした、単焦点レンズ用と、累進多焦点および多焦点レンズ用のレイアウト・ブロック装置(ABS;Auto Blocker for Single Visoion Lens 、ABM;Auto Blocker forMultifocus Lens)の開発が要請されている。
【0005】
この場合、特に装置設計に当たっては、光学レイアウトおよびブロックを良好かつ的確に行ううえでレンズの保持、搬送、レンズホルダの装着等が重要な課題となる。すなわち、レンズを保持する場合、レンズの外周をロボットハンドで保持する方法と、吸着手段によって凸面を吸着保持する方法が考えられる。ロボットハンドによって外周を保持する方法は、凸面を汚したり、傷つけない点で優れているが、楕円形等の円形以外のレンズに適用することができないため、実用的ではない。一方、凸面を吸着保持する方法は、1つの吸着手段によってレンズを吸着保持する方法と、複数個の吸着手段によって複数の被吸着位置を吸着する方法が考えられる。1つの吸着手段によって吸着保持する場合は、加工中心を吸着するため、レンズホルダをレンズの加工中心に取付けたり、レンズの厚さを測定する場合に吸着手段が邪魔になるため好ましくない。複数個の吸着手段によって吸着保持する場合は、外周寄りを保持することにより、レンズホルダのレンズへの取付け、レンズの厚さ測定を良好に行うことができる利点がある。しかし、累進多焦点レンズや多焦点レンズを吸着保持する場合は、凸面が非球面であるため、安定かつ確実に保持することが難しいという問題が生じる。すなわち、凸面が非球面のレンズは厚みおよび凸面の高さが部分的に異なるため、吸着手段をレンズの凸面に押し付けたとき、高さの差によりレンズホルダの押付力にばらつきが生じる。このため、吸着手段を真空排気したとき押付力が小さいレンズと吸着手段との間から空気が漏れて全ての吸着手段の吸着保持力を等しくすることができず、吸着保持不良となる。
【0006】
また、レンズホルダをレンズに取付けるとき、レンズの凸面でレンズホルダによって保持される部分が水平で傾かないようにレンズを保持する必要がある。何故なら、レンズホルダを弾性シールを介して凸面に上方から押し付けたとき、その押圧力によってレンズが動いて保持される部分が水平でなくなると、弾性シールが保持される部分に片当たりして位置ずれを起こし、レンズのアイポイントとレンズホルダの中心が相対的に位置ずれし、レンズのブロッキング精度を低下させるからである。
【0007】
したがって、ABS、ABM装置の実用化を実現するためには、レンズの保持、搬送、レンズホルダの装着等を良好かつ的確に行い得るようにした吸着方法およびその装置の開発が急務とされる。
【0008】
本発明は上記した従来の問題および要請に応えるためになされたもので、その目的とするところは、凸面が非球面のレンズあるいは楕円形等の円形以外のレンズであってもレンズの保持、搬送、レンズホルダの装着等を良好かつ的確に行い得るようにした眼鏡レンズの吸着方法およびその装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、上下動自在なフレームにそれぞれ上下動自在に、かつ同一円周上に略等間隔おいて位置するように配設された3〜4個からなる吸着手段と、これらの吸着手段をそれぞれ復帰方向に付勢する付勢手段と、前記各吸着手段に対応して設けられ各吸着手段が眼鏡レンズの凸面外周寄りの被吸着位置に押し付けられたことをそれぞれ検出する複数個のセンサとを備え、前記吸着手段によって前記眼鏡レンズを吸着保持する方法であって、前記フレームの下降に伴って前記眼鏡レンズの前記被吸着位置の表面高さが最も高い表面部分に対応する吸着手段が押し付けられると、当該吸着手段のセンサが押し付けられたことを検知し、この検知信号を制御部が確認することにより前記フレームをさらに所定量下降させて残り全ての吸着手段を前記眼鏡レンズの凸面に押し付け、全ての吸着手段が眼鏡レンズに押し付けられたことをセンサが検知すると、この検知信号を制御部が確認して全ての吸着手段を真空排気して前記眼鏡レンズを吸着保持させ、しかる後前記フレームを上昇復帰させるようにしたものである。
また、本発明は、前記によって吸着保持される眼鏡レンズは凸面が非球面形状のレンズからなり、
前記フレームが上昇復帰すると、前記眼鏡レンズを吸着保持した各吸着手段は、前記付勢手段による付勢力によって元の取付位置に下降復帰することにより、前記眼鏡レンズの凸面を水平な状態にするものである。
【0010】
また、本発明は、上下動自在なフレームにそれぞれ上下動自在に、かつ同一円周上に略等間隔おいて位置するように配設された3〜4個からなる吸着手段と、これらの吸着手段をそれぞれ復帰方向に付勢する複数個の付勢手段と、前記各吸着手段に対応して設けられ各吸着手段が眼鏡レンズの凸面外周寄りの被吸着位置に押し付けられたことを検出する複数個のセンサとを備え、前記フレームは、下降して眼鏡レンズの被吸着位置の表面高さが最も高い表面部分に対応する吸着手段を押し付けると、さらに所定量下降して残り全ての吸着手段を前記眼鏡レンズの凸面に押し付けるものである。
さらに、本発明は、前記吸着手段が吸着保持する眼鏡レンズは凸面が非球面形状のレンズからなり、
前記眼鏡レンズを吸着保持した吸着手段は、前記フレームの上昇復帰にともない、前記付勢手段による付勢力によって元の取付位置に下降復帰することにより、前記眼鏡レンズの凸面を水平な状態にするものである。
【0011】
本発明において、複数個の吸着手段はフレームが下降するとレンズの凸面の異なった被吸着位置に押し付けられ、この状態で真空排気されることによりレンズを吸着保持する。レンズの凸面が非球面の場合、吸着手段は被吸着位置の高さの差によって接触するタイミングにずれが生じ、被吸着位置の高さが高い順にレンズに押し付けられることになる。最先の吸着手段が凸面に押し付けられると、当該吸着手段はフレームに対して上下動自在であるため付勢手段に抗して上昇する。この上昇により当該吸着手段のセンサがONとなって吸着手段がレンズの凸面に押し付けられたことを検出する。そして、このセンサの検知信号に基づいてフレームをさらに所定量下降させて残り全ての吸着手段を凸面に押し付ける。このため、これらの吸着手段も付勢手段に抗して上昇し、この上昇により対応するセンサがONとなって吸着手段がレンズに押し付けられたことを検出する。付勢手段は、略等しい押圧力で各吸着手段をレンズに押し付ける。全てのセンサがONとなって全ての吸着手段がレンズに押し付けられたことが検出されると、吸着手段を真空排気し、吸着手段によってレンズの凸面を吸着保持する。この後、フレームを上昇させると、吸着手段は付勢手段によって元の取付位置に下降復帰し、吸着保持しているレンズの凸面を水平な状態にする。
吸着手段としては3つ以上であることが望ましい。好ましくは4つである。付勢手段としては引張りコイルばね等が用いられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る眼鏡レンズ用吸着装置と位置関係を示す図、図2は同眼鏡レンズ用吸着装置の要部の平面図、図3は図2のIII −III 線断面図、図4はレンズブロック直前の状態を示す図、図5(a)、(b)、(c)はレンズ載置台の平面図、断面図および底面図、図6はレンズ保持装置の断面図である。本実施の形態においては、プラスチック製の累進多焦点レンズと多焦点レンズの光学的レイアウトおよびブロックを自動的に行うABM装置の眼鏡レンズ用吸着装置に適用した例を示す。
【0013】
図1において、1は眼鏡レンズ用吸着装置、2は未加工のプラスチック製の眼鏡レンズ(以下の説明においては、レンズ、被検レンズともいう)、3はレンズメータの機能を備えた光学測定ユニット(以下、略称してレンズメータという)、A1 はブロック位置、A2 は原点位置、A3 はレンズメータ3のマーク検出位置、A4 は高さ兼度数測定位置である。眼鏡レンズ用吸着装置1は、ブロック位置A1 に供給される未検査の被検レンズ2を吸着保持してマーク検出位置A3 と高さ兼度数測定位置A4 に順次搬送し、レンズメータ3によるレンズ2の光学特性の測定が終了すると、レンズ2を再び元のブロック位置A1 に戻すもので、水平面内において直交する2方向(X,Y方向)にそれぞれ独立して移動自在な2つのテーブル、すなわちXテーブル4およびYテーブル5を備えている。
【0014】
前記レンズメータ3は、マーク検出用の光学系、度数測定用の光学系および高さ測定装置10を備え、被検レンズ2の凹面高さ、レンズ度数、光学中心、乱視軸等を測定し、光学的レイアウトを行い、レンズ枠形状データに基づいてレンズホルダ6のレンズ2に対する取付位置、角度等を算出し決定し、その結果を制御部に出力するように構成されている。
【0015】
前記ブロック位置A1 、原点位置A2 、マーク検出位置A3 および高さ兼度数測定位置A4 は、X方向に延在する同一直線上に位置している。ブロック位置A1 は、被検レンズ2が供給される位置であるとともに、光学特性の測定が終わったレンズ2に対してレンズホルダ6(図4)を弾性シール7を介して取付ける位置である。この位置には、後述するレンズ載置台8が設けられている。原点位置A2 は、後述する吸着手段の初期位置である。マーク検出位置A3 は、レンズ2に形成されているマークを撮像し、そのマーク位置を画像処理によって検出し、このマーク情報からレンズ2の幾何学中心、アイポイントの位置等を算出するための位置であり、後述するレンズ保持装置9が設けられている。この場合、レンズ2のマークはレンズの種類によってその形態が異なり、累進多焦点レンズの場合は、凸面aに形成されている隠しマークと称するマーク、加入度数を表示する数字およびレンズの種類を表示するマークの検出を行い、多焦点レンズの場合は小玉の上縁をマークとして検出する。高さ兼度数測定位置A4 は、レンズ2の凹面高さとレンズ度数(遠用度数)を測定する位置であり、前記高さ測定装置10(後述する)が設けられている。
【0016】
図1、図2および図3において、前記Xテーブル4は、Yテーブル5の上面に設置した前後一対のガイドレール11とボールねじ12に沿って移動自在に配設され、図示しないXテーブル用ステッピングモータによって駆動されるように構成されている。前記ボールねじ12の一端には歯付プーリ13が取付けられており、この歯付プーリ13に前記Xテーブル用ステッピングモータの回転がタイミングベルトを介して伝達されるように構成されている。
【0017】
前記Yテーブル5は、架台17上に設置した左右一対のガイドレール15とボールねじ16に沿って移動自在に配設され、図示しないYテーブル用ステッピングモータによって駆動されるように構成されている。
【0018】
前記Xテーブル4の上面には、左右一対の側板20と、上下動自在なZ軸テーブル21と、Z軸テーブル用ステッピングモータ22と、このステッピングモータ22の回転を前記Z軸テーブル21に伝達するねじ棒23等が配設されている。前記ステッピングモータ22は、Xテーブル4の上面に下向きに設置され、その出力軸24がXテーブル4の下方に突出して歯付プーリ25を有し、このプーリ25と前記ねじ棒23の下端に設けた歯付プーリ26にタイミングベルト27が張設されている。前記ねじ棒23は、下端部が前記Xテーブル4に設けた軸受28によって回転自在に軸支され、上端側に前記Z軸テーブル21の下面側に取付けたナット29が螺合している。
【0019】
前記Z軸テーブル21は、前記側板20に近接して対向する一対の側壁21Aを一体的に有し、リニアガイド30によって上下動自在に保持されている。
【0020】
前記Z軸テーブル21の下面先端部には、フレーム31の基端部31Aが複数個の止めねじ33によって固定されている。フレーム31の先端部31Bは、平面視コ字状に形成されることにより前後に対向する水平な一対の腕部31a,31bと、これらの腕部の一端を連結する連結部31cとからなり、各腕部31a,31bの対向する内側面に前記レンズ2の凸面aの外周寄りを吸着保持する吸着手段35がそれぞれ2個ずつ配設されている。
【0021】
前記吸着手段35は、図3および図4に示すように吸引筒37の下端側に一体的に取付けられたゴム等の弾性材からなる吸着パッド38とを有し、前記腕部31a,31bに対して上下動自在に配設したスライド部材36に取付けられている。また、吸着手段35は、図示しない真空ポンプに配管を介して接続されている。前記スライド部材36は、前記腕部31a,31bに取付けたガイドレール39に上下動自在に取付けられ、付勢手段としての引張りコイルばね40によって下方に付勢されていることにより、上端が通常腕部31a,31bの上面に圧接されている。なお、4つの吸着手段35は、前記先端部31Bの略中央を中心O(図2)とする仮想の同一円周上に略等間隔おいて位置するように前記各腕部31a,31bに取付けられている。前記中心Oから吸着手段35までの距離Rは、度数測定、厚さ測定およびレンズホルダ6の装着の妨げとならないように十分大きく設定されている。
【0022】
さらに、前記各腕部31a,31bには、それぞれ2個ずつ合計4個のセンサ43が前記各吸着手段35に対応して固定されている。このセンサ43は、前記吸着手段35がレンズ2の凸面aに押し付けられたことを検出するもので、発光ダイオード44と受光ダイオード45(図4)を備え、これら両ダイオード間に前記スライド部材36に折り曲げ形成した折曲片46が通常上方から挿入されることにより発光ダイオード44から出た光を遮り、センサ43をOFFの状態に保持している。なお、各センサ43の検出信号は、ABM装置の制御部に送出される。
【0023】
図4において、前記レンズホルダ6は金属製の円筒体からなり、先端面に凹球面状のレンズ保持面50を有し、レンズ2を保持するときこのレンズ保持面50に予め薄いリング状の弾性シール7を貼着しておき、この弾性シール7をレンズ2の凸面aに押し付けて貼着する。レンズ保持面50には、弾性シール7との密着結合力を高めるとともに弾性シール7の回転を防止するために断面形状が三角形からなる多数の微小な突状体51が全周にわたって放射状に形成されている。弾性シール7の両面には、粘着剤が塗布されている。なお、このようなレンズホルダ6は、従来から周知である(例:実開平6−24854号公報、特願平11−224598号等)。
【0024】
図4および図5において、前記ブロック位置A1 に配設した前記レンズ載置台8は、基台55上に設置された金属製の円筒体56と、この円筒体56の上端開口部に取付けられたゴム等の弾性材からなるリング57とを備え、このリング57の上に前記レンズ2が凹面b側を下にして載置されるように構成されている。また、レンズ載置台8の内部には、レンズ支持機構58が組み込まれている。
【0025】
前記レンズ支持機構58は、レンズ載置台8上に載置されたレンズ2を前記吸着手段35によって押圧し吸着保持するとき、およびレンズホルダ6によるブロッキング時にレンズ2の傾きを防止し凸面aを水平に保持させるために用いられるもので、同一平面上で交差する2本の軸(カルダン軸)64,65を用いて揺動板60と首振り環61を直交する2方向に揺動自在に支持する機構(ジンバル機構)を採用している。揺動板60は円板状に形成されており前記基台55の下方に配置され、外周が首振り環61によって取り囲まれ、さらにその外周を固定リング62によって取り囲んでいる。2本の軸のうち第1の軸64は首振り環61の内面に対向して設けた一対の水平な支持ピンからなり、前記揺動板60を揺動自在に軸支している。第2の軸65は固定リング62の内面に対向して設けた一対の水平な支持ピンからなり、前記首振り環61を前記揺動板60の揺動方向と直交する方向に揺動自在に軸支している。前記固定リング62は、前記基台55に対して固定されている。
【0026】
また、前記レンズ支持機構58は、前記揺動板60の上に上下動自在に配設された3本のサポート66を備えている。これらのサポート66は全て同一長さで、前記揺動板60の中心を中心とする同一円周上に周方向に等距離離間して配置され、前記基台55に設けた挿通孔67を摺動自在に貫通している。各サポート66の上端部は、前記円筒体56を通り前記リング57の内部で上端開口部付近に位置している。
【0027】
図6において、前記マーク検出位置A3 に配設した前記レンズ保持装置9は、両端が開放するレンズ支持筒70を備え、このレンズ支持筒70の内部を真空ポンプ71によって真空排気することにより、被検レンズ2の凹面bの中央をレンズ支持筒70の上面に吸着固定するように構成されている。レンズ支持筒70は、累進多焦点レンズの隠しマーク、加入度数を表示する数字、識別マークおよび多焦点レンズの小玉の投影の妨げにならないように、十分に小さい外径(例えば8mmφ)を有し、集光レンズ72の上面中央に立設されている。前記集光レンズ72は他の集光レンズ73とともに鏡筒74内にシール部材を介して組み込まれており、これら両レンズ72,73および鏡筒74によって囲まれた密閉空間が真空吸引室75を形成し、前記真空ポンプ71に配管を介して接続されている。前記集光レンズ72は中央に形成された貫通孔76を有し、この貫通孔76によって前記レンズ支持筒70の内部と前記真空吸引室75を連通させている。
【0028】
図3において、前記高さ兼度数測定位置A4 に配設した前記高さ測定装置10は、上面が凸状の球面に形成され下面が開放する異径の円筒体79を備え、この円筒体79を上下動可能な可動プレート80の上に複数個の止めねじ81によって固定している。また、円筒体79の上面で軸心から所定距離離間した位置には、図示しない度数測定用光源からの光83を透過させる4つの小孔82が同一円周上に周方向に等間隔おいて形成されている。円筒体79の中心から各小孔82までの距離は、2mm程度である。
【0029】
前記可動プレート80は、下面外周部が複数本の支持ピン84によって支持され、中央に前記度数測定用光源からの光83が透過する挿通孔86を有している。前記支持ピン84は、基台55に設けた挿通孔87を摺動自在に貫通し、圧縮コイルばね88によって上方に付勢されており、下端側には前記挿通孔87から上方に抜けるのを防止する止め輪89が装着されている。また、前記基台55の下面側には、前記円筒体79の下降を検出するセンサ90が配設されている。なお、前記円筒体79はレンズ度数の測定時においてレンズ2の下面を支持するレンズ支持台として用いられる。
【0030】
次に、上記した眼鏡レンズ用吸着装置1によるレンズの吸着保持、搬送、ブロッキング動作について説明する。
眼鏡レンズ用吸着装置1が初期状態にあるとき、吸着手段35は原点位置A2 の上方に待機している。この状態において、ABM装置に供給された被検レンズ2を適宜な搬送ロボットによって搬送し、ブロック位置A1 のレンズ載置台8上に載置する。被検レンズ2がレンズ載置台8上に載置されると、Xテーブル用ステッピングモータの駆動によってXテーブル4を移動させ、原点位置A2 に待機している吸着手段35をブロック位置A1 の上方に移動させる。そして、Xテーブル4がその位置で停止すると、Z軸テーブル用ステッピングモータ22を駆動してZ軸テーブル21を下降させ、吸着手段35を被検レンズ2の凸面aに押し付けて吸着保持する(図4)。
【0031】
レンズ2の吸着保持に当たっては、フレーム31を徐々に下降させていき、4つの吸着手段35をレンズ2の凸面aに押し付ける。このとき、レンズ2は凸面aが例えば非球面からなる累進多焦点レンズまたは多焦点レンズでは曲率が一定でないので、各吸着手段35によって吸着保持される被吸着位置の表面高さがそれぞれ異なり、高さが最も高い表面部分に対応する吸着手段35が当該表面部分に先ず接触してレンズ2を押圧する。このため、当該吸着手段35のスライド部材36が引張りコイルばね40に抗して上昇し、折曲片46が当該吸着手段35に対応するセンサ43の発光ダイオード44と受光ダイオード45の間から上方に待避する。したがって、当該吸着手段35のセンサ43は、発光ダイオード44から出た光を受光ダイオード45が受光することによりON状態となって吸着手段35がレンズ2の凸面aに押し付けられたことを検知し、この検知信号を制御部に送出する。制御部はセンサ43からの検知信号を確認すると、前記フレーム31をさらに所定量(約3〜7mm程度で、レンズ曲面での各吸着点の高さ補正が可能な量)下降させて残り3個の吸着手段35をレンズ2の凸面aに押し付け接触させる。このため、これら3個の吸着手段35のセンサ43もON状態になって吸着手段35が凸面aに押し付けられたことを検知し、この検知信号を制御部に送出する。制御部は全てのセンサ43がON状態になったことを確認すると、真空ポンプを作動させて全ての吸着手段35を真空排気する。これにより、吸着手段35はレンズ2を吸着保持する。
【0032】
この場合、吸着手段35はフレーム31に対して上下動自在に配設され、引張りコイルばね40によるばね力によってレンズ2の凸面aに押し付けられているので、厚さの差により表面高さが異なっていても全ての吸着手段35を略一定の押圧力で押し付けることができる。したがって、レンズ2の吸着保持が良好でレンズの破損を防止することができる。
【0033】
また、レンズ載置台8はレンズ支持機構58(図5)を備えているので、レンズ2を吸着手段35に対して水平に吸着保持させることができる。すなわち、吸着手段35をレンズ2に押し付けるとリング57が圧縮されるため、レンズ2の凹面bがサポート66に押し付けられる。このとき、レンズ2が傾くと、傾き側とは反対側のサポート66が押し下げられることにより、揺動板60および首振り環61が揺動してサポート66の高さを全て等しい高さとし、レンズ2の傾きを補正する。したがって、レンズ2は水平な状態で吸着保持される。
【0034】
吸着手段35によるレンズ2の吸着保持が終了すると、Z軸テーブル用ステッピングモータ22を駆動してフレーム31を上昇させ、レンズ2をレンズ載置台8の上方に持ち上げる。レンズ2をレンズ載置台8の上方に持ち上げると、全ての吸着手段35は引張りコイルばね40の力によって引き下げられて元の同一高さに戻る。この状態でXテーブル4を駆動して吸着保持しているレンズ2をレンズメータ3のマーク検出位置A3 の上方に搬送し、レンズ保持装置9の上に載置し、吸着手段35による保持を解除する(図6)。そして、真空ポンプ71によって真空排気室75およびレンズ支持筒70の内部を真空排気し、レンズ2をレンズ支持筒70の上面に吸着固定する。
【0035】
次いで、レンズ2のマーク検出を行う。このマーク検出は、先ず光源からの光78によってレンズ2を上方から照射して凸面a側表面の画像を撮像装置によって撮像する。次に、この撮像された画像を画像処理装置に取り込んで画像処理することにより、マークを検出しその位置を算出する。さらに、その位置情報からレンズ2の幾何学中心、遠用度数測定位置、アイポイントの位置等を演算処理することにより求める。そして、この求めたレンズ情報とレンズ枠形状データおよび装用者の処方データから加工中心およびレンズに対するレンズホルダの軸線回りの取付け角度等を決定する。
【0036】
マーク検出が終了すると、吸着手段35によってレンズ2を再び吸着保持して高さ兼度数測定位置A4 の上方に搬送し、図3に示す高さ測定装置10の円筒体79の上面に押し付け、レンズ2の凹面bの高さを測定し、次いでこの位置で度数を測定する。
【0037】
レンズの度数測定はレンズの裏面を基準にして測定することがJISの規格によって決められている。しかし、レンズの裏面は凹面に形成されているので、レンズの測定中心部においてプラス強度のレンズとマイナス強度のレンズとではレンズの測定位置の高さが異なる。例えば、プラス15ディオプターのレンズとマイナス15ディオプターのレンズとでは、高さの差が約8mmとなる。その結果、度数測定時に基準位置に誤差が生じ、測定度数に誤差が生じる。したがって、先ず高さ測定装置10によってレンズ2の凹面bの高さを測定し、凹面bを集光レンズ91の焦点と一致させる必要がある。
【0038】
高さ測定装置10によるレンズ2の凹面bの高さ測定は、Z軸テーブル用ステッピングモータ22の駆動によって吸着手段35を所定の基準高さ位置から下降させてレンズ2を円筒体79の上面に接触させたとき、凹面bの高さによって接触するまでの時間が異なるため、前記ステッピングモータ22の駆動開始から、レンズ2によって円筒体79および支持ピン84が押し下げられ、センサ90が支持ピン84を検出するまでの時間、前記ステッピングモータ22に加えられるパルスの数をカウントすることにより行うことができる。この場合、凹面bの高さが高いレンズほどパルス数は増加する。測定に際しては、レンズ2の凹面bで遠用度数測定位置が円筒体79の4つの小孔72と対応するようにX,Y方向に位置決めして円筒体79の上面にレンズ2を押し付け、センサ90が支持ピン84を検出するまでレンズ2を押し下げる。レンズ2の凹面bの高さの測定が終了すると、凹面bがレンズ91の焦点位置となるようにレンズ2の高さを調整する。
【0039】
レンズ2の凹面bの高さを測定基準高さに一致させると、この状態でレンズ度数(遠用度数)の測定を行う。度数測定は、度数測定用光学系の光源を点灯し、その光83をレンズ2の下方から照射することにより行う。
【0040】
レンズ度数の測定が終了すると、吸着手段35を再び上昇させて吸着保持しているレンズ2をブロック位置A1 の上方に搬送する。このとき、Xテーブル4およびYテーブル5を移動調整してレンズ2の加工中心(アイポイント)がレンズ載置台8の中心と略一致するように位置決めする。また、レンズ2をレンズ載置台8の上面から数mm浮いた状態とする。
【0041】
次に、レンズホルダ6をレンズ2の上方に搬送して中心をレンズ2の加工中心に位置付け、レンズホルダ6を上方から垂直に下降させてレンズ2の凸面aに押し付け、その下降押圧力で吸着手段35によるレンズ2の吸着保持を解除し、レンズ載置台8に接触、押圧しながらレンズ2を下方から弾性シール7に貼着させる。このときも、レンズ支持機構58(図5)によって下方からレンズ2を支持することで、レンズ2が傾いて取付けられることがなく、レンズ2のブロッキングを良好に行うことができる。
【0042】
レンズホルダ6が弾性シール7を介してレンズ2を吸着保持すると、吸着保持が解除された状態をセンサで確認し、吸着手段35を再び原点位置A2に復帰させる。そして、レンズホルダ6を搬送ロボットにより縁摺り加工装置に搬送してレンズ2の縁摺り加工を行う。
【0043】
なお、上記した実施の形態においてはABM装置に適用した例を示したが、本発明はこれに何等特定されるものではなく、ABS装置にも適用することができる。その場合、単焦点レンズは、マークや小玉を備えていないので、マーク検出を行う必要がない。
また、上記した実施の形態においては吸着手段35を好ましい個数とし4個用いた例を示したが、本発明はこれに限らず3個以上であればよい。
【0044】
【発明の効果】
上記したように本発明に係る眼鏡レンズの吸着方法およびその装置は、フレームの下降に伴って最先の吸着手段がレンズの凸面に押し付けられると、当該吸着手段のセンサが押し付けられたことを検知し、この検知信号を制御部が確認するとさらに前記フレームを所定量下降させて全ての吸着手段を前記レンズの凸面に押し付け、これにより全てのセンサが押し付けられたことを検知し、この検知信号を制御部が確認すると全ての吸着手段を吸引状態にして前記レンズを吸着保持し、しかる後前記フレームを上昇させるように構成したので、全ての吸着手段の吸着保持力を略一定にすることができる。したがって、レンズの吸着保持が確実で、レンズホルダをレンズ凸面に押し付けたときにレンズが位置ずれせず、ブロッキング精度を高めることができ、特に非球面からなる累進多焦点レンズや多焦点レンズの縁摺り加工のためにレンズの加工中心を決定し、この加工中心にレンズホルダを自動的に取付ける装置に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る眼鏡レンズ用吸着装置と位置関係を示す図である。
【図2】 同眼鏡レンズ用吸着装置の要部の平面図である。
【図3】 図2のIII −III 線断面図である。
【図4】 レンズブロック直前の状態を示す図である。
【図5】 (a)、(b)、(c)はレンズ載置台の平面図、断面図および底面図である。
【図6】 レンズ保持装置の断面図である。
【符号の説明】
1…眼鏡レンズ用吸着装置、2…レンズ、4…Xテーブル、5…Yテーブル、10…高さ測定装置、31…フレーム、35…吸着手段、36…スライド部材、40…引張りコイルばね、39…ガイドレール、43…センサ。
Claims (4)
- 上下動自在なフレームにそれぞれ上下動自在に、かつ同一円周上に略等間隔おいて位置するように配設された3〜4個からなる吸着手段と、これらの吸着手段をそれぞれ復帰方向に付勢する付勢手段と、前記各吸着手段に対応して設けられ各吸着手段が眼鏡レンズの凸面外周寄りの被吸着位置に押し付けられたことをそれぞれ検出する複数個のセンサとを備え、前記吸着手段によって前記眼鏡レンズを吸着保持する方法であって、
前記フレームの下降に伴って前記眼鏡レンズの前記被吸着位置の表面高さが最も高い表面部分に対応する吸着手段が押し付けられると、当該吸着手段のセンサが押し付けられたことを検知し、この検知信号を制御部が確認することにより前記フレームをさらに所定量下降させて残り全ての吸着手段を前記眼鏡レンズの凸面に押し付け、全ての吸着手段が眼鏡レンズに押し付けられたことをセンサが検知すると、この検知信号を制御部が確認して全ての吸着手段を真空排気して前記眼鏡レンズを吸着保持させ、しかる後前記フレームを上昇復帰させることを特徴とする眼鏡レンズの吸着方法。 - 前記吸着手段によって吸着保持される眼鏡レンズは凸面が非球面形状のレンズからなり、
前記フレームが上昇復帰すると、前記眼鏡レンズを吸着保持した各吸着手段は、前記付勢手段による付勢力によって元の取付位置に下降復帰することにより、前記眼鏡レンズの凸面を水平な状態にすることを特徴とする請求項1記載の眼鏡レンズの吸着方法。 - 上下動自在なフレームにそれぞれ上下動自在に、かつ同一円周上に略等間隔おいて位置するように配設された3〜4個からなる吸着手段と、これらの吸着手段をそれぞれ復帰方向に付勢する複数個の付勢手段と、前記各吸着手段に対応して設けられ各吸着手段が眼鏡レンズの凸面外周寄りの被吸着位置に押し付けられたことを検出する複数個のセンサとを備え、
前記フレームは、下降して眼鏡レンズの被吸着位置の表面高さが最も高い表面部分に対応する吸着手段を押し付けると、さらに所定量下降して残り全ての吸着手段を前記眼鏡レンズの凸面に押し付けることを特徴とする眼鏡レンズ用吸着装置。 - 前記吸着手段が吸着保持する眼鏡レンズは凸面が非球面形状のレンズからなり、
前記眼鏡レンズを吸着保持した吸着手段は、前記フレームの上昇復帰にともない、前記付勢手段による付勢力によって元の取付位置に下降復帰することにより、前記眼鏡レンズの凸面を水平な状態にすることを特徴とする請求項3記載の眼鏡レンズ用吸着装置。
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